説明

無線ネットワークシステム

【課題】無線ネットワークシステムにおいて無線送受信装置の消費電力を抑えながら、大容量の送信であっても送信途中でのデータ喪失を回避する。
【解決手段】無線ネットワークシステムは、無線親機22とセンサー30が取り付けられる無線子機20との間を複数の無線中継機21を多段に経由して、IEEE802.15.4で規定される通信方式で通信する。無線子機はセンサーからRS485等ののシリアル通信でデータを取得し、無線親機は、複数の中継機が備える記憶手段の記憶容量に応じたパケット容量を無線子機に制御指令として送信する。無線子機はこの送信されたパケット容量にシリアル通信で取得したセンサーデータ51a〜51cを分割して中継機へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線ネットワークシステムに係り、特に大容量のデータを送信するのに好適な無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場等においてエネルギー消費量を監視してCOを削減することや、温湿度および圧力、振動、音等を監視して機器の異常を早期または事前に検出すること、人間や積荷の位置を追跡して状況を把握すること等のために、無線センサーネットワークシステムが用いられている。特に、監視範囲が広大な場合等には、有線ネットワークであれば構築に多大な費用と工程が必要となるので、無線センサーネットワークが優位である。
【0003】
ところで、無線ネットワークの構築においては、分散配置した各無線送受信装置に確実に電源を供給できることと、確実にデータを送受信することが必要になる。電源供給においては、特に電池を使用する場合に低消費電力であることが求められる。そこで、無線送受信装置における電力消費量の割合が大きい無線送受信状態での低消費電力化が試みられている。
【0004】
例えば特許文献1に記載の無線ネットワークシステムでは、通信量を少なくして消費電力を抑えている。具体的には、各センサーが収集した全データを送信するのではなく、全データの中から一定周期でサンプリングしたデータだけを、無線親機に送信している。そして、ユーザーが細かい変動を確認したいときだけ、サンプリング速度を上げて無線親機にデータを集めている。これにより、無線送受信装置の通信量を低減させ、消費電力を抑制している。
【0005】
また他の例として、特許文献2にネットワークシステムに用いるセンサデバイスが記載されている。この公報に記載のセンサデバイスでは、種々の外部アプリケーションに対応したデータとするために、センサデバイスがデータ変換機能とメモリ手段とを有し、伝送レートにあわせてデータの一部をメモリ手段に記憶しておき後で送信できるように構成されている。その際、測定したデータを圧縮したり暗号化することも可能になっている。データを圧縮して送信すれば、通信量が低減し消費電力も低下する。
【0006】
一方、無線ネットワークシステムに求められる他の課題であるデータ送受信の高信頼化のために、例えば特許文献3に記載のように、センサーが取得したデータを無線親機に接続したサーバのデータベースに時系列で保存することが試みられている。このシステムでは、受信されたデータに欠損があった場合、ユーザーの要求により、NULL値や直前の送信データ、前後関係から予測したデータを送信して欠損を補完し、データの信頼度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−169888号公報
【特許文献2】特開2005−31826号公報
【特許文献3】特開2009−171497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載の無線ネットワークシステムでは、サンプリングによりデータ量を減少させてデータ通信量を小さくしている。しかしながら、サンプリング速度を遅くできないセンサーしか使えない計測に対しては効果が激減する。また、無線ネットワークシステムでは、センサーが検出したデータを送信する場合、計測要求コマンドに応じてセンサーが計測してデータを取得し、取得したデータを親機側に送信している。その際、データの送信が成功するまで、数度のデータ送信を繰り返すこともある。
【0009】
特に大容量のデータを通信する場合には、予期せぬ理由により通信途中でデータ通信が途絶したりデータの欠損が生じたりすることがある。その場合には、再度計測要求コマンドを指令してセンサーが取得したデータを再送信させる。最悪の場合には、この手順を繰り返す。その結果、通信時間が延び無線送受信による消費電力が増加する。
【0010】
また、データを圧縮して送信することを可能にした特許文献2に記載のセンサデバイスを無線ネットワークシステムに用いた場合、取得したデータをメモリ手段に記憶せずに送信できるまで圧縮できれば、円滑な通信が可能になる。しかしながら、圧縮しても送信可能な最大容量を超えると、以下に述べる不具合が発生する。
【0011】
圧縮してもデータ量が大容量であれば、一度の通信で送れる量だけに分割して送信するしかない。ところで、無線ネットワークシステムでは多数の無線送受信装置が分散配置されていて、この分散配置された多数の無線送受信装置を多段の中継機として用いて親機へとデータを送信するメッシュトポロジーが採用される。メッシュトポロジーを採用すると、パケットを分割して送信する際に、分割したパケットが中継途中に失われる恐れが生じる。その理由は、分割パケットを次々に送ることにより、途中の中継機でパケットが衝突するからである。
【0012】
すなわち、多数の中継機が同時に分割データを通信していると、異なる分割データが同一の中継機に送信されて衝突が生じる。そこでこの衝突を防止するため、公知の技術として、CSMA/CA方式という通信方法が用いられる。CSMA/CA方式では、無線チャンネルが一定以上空いていることを確認し、ランダムな長さの時間待ちした後、パケットを送信してデータの衝突を回避する。
【0013】
ところが、CSMA/CA方式を用いても衝突によるデータ喪失が避けられない事態が生じる。例えば3段中継してセンサー側端末から親機にデータを3分割して送信する場合、初段の中継機は分割の第1のデータを2段目の中継機へ送信終了しても、2段目の中継機が3段目の中継機へ第1のデータを送信完了するまでは、第2のデータを受信し終えてもCSMA/CA方式により待ち状態になる。
【0014】
一方、初段の中継機へ送信するセンサー側端末は第3のデータが送信可能であり初段の中継機が待ち状態であるのがCSMA/CA方式によるものであるのを知らず、第3のデータを初段の中継機へ送信する。その結果、初段の中継機では、第2のデータと第3のデータの両方が送信されたことになり、初段中継機では記憶容量不足により、一部のデータまたは全部のデータが喪失される。
【0015】
また、特許文献3に記載の無線ネットワークでは、欠落したデータをNULL値や直前の送信データ、前後関係から予測したデータで保管している。しかしながら、今データはあくまでも保管データであり、センサーデバイス等が取得した正確なデータではなく、欠落した区間でデータの急激な変化等があっても親機では検出できない。
【0016】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は無線ネットワークシステムにおいて無線送受信装置の消費電力を抑えながら、大容量の送信であっても送信途中でのデータ喪失を回避することにある。本発明の他の目的は、無線ネットワークシステムにおいて、消費電力の低減とデータ通信及びデータの信頼性の向上を両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する本発明の特徴は、無線親機とセンサーが取り付けられる無線子機との間を複数の無線中継機を多段に経由して通信する無線ネットワークシステムにおいて、無線子機はセンサーからシリアル通信でデータを取得し、無線親機は、複数の中継機が備える記憶手段の記憶容量に応じたパケット容量を無線子機に制御指令として送信し、無線子機はこの送信されたパケット容量にシリアル通信で取得したセンサーデータを分割して中継機へ送信することにある。
【0018】
そしてこの特徴において、無線親機と無線子機間の中継機を経由する通信はIEEE802.15.4で規定される通信方式であり、センサーと無線子機との通信はシリアル通信方式であり、親機からの制御指令を受信した後に、無線子機がセンサーからデータ取得ミスしたら、無線子機は無線親機と通信することなくセンサーとの間で、データ取得成功の判断が下されるまで、データ取得を繰り返すのが望ましい。また、データ取得成功の判断に、シリアル通信における文字数およびビット反転を含むのがよい。
【0019】
上記特徴において、データ取得成功の判断が下されたときに無線子機は、先に無線親機から送られた制御指令に基づいて、無線中継機にセンサーデータを送信するのがよく、無線子機は分割したデータを、予め定めた一定の時間間隔で送信するようにしてもよい。
【0020】
さらに、無線子機はセンサーデータを圧縮した後、無線親機からの制御指令に含まれるパケット容量に従って圧縮データを分割して送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば無線ネットワークシステムにおいて、センサーの取得データをシリアル通信で無線送受信装置に送信し、無線送受信装置が必要データ部分だけを抽出した後に抽出したデータを中継機の記憶容量に応じたパケットに分割し、分割パケットを1個ずつ中継機に送信し、その際、中継機が隣り合う中継機に各分割パケットを中継するのに要する時間間隔をおいて無線送受信装置が送信するので、無線送受信装置の消費電力を抑えながら、大容量の送信であっても送信途中でのデータ喪失を回避できる。また、消費電力の低減とデータ通信及びデータの信頼性の向上を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る無線センサーネットワークシステムの一実施例のシステム図である。
【図2】図1に示した無線センサーネットワークシステムにおけるセンサーとの通信方法を説明する図である。
【図3】図1に示した無線センサーネットワークシステムが備える無線送受信装置のブロック図である。
【図4】図1に示した無線センサーネットワークシステムが備える無線親機からの送信内容を説明する図である。
【図5】図1に示した無線センサーネットワークシステムが備える無線送受信装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1に示した無線センサーネットワークシステムが備える無線親機の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係る無線センサーネットワークシステムの他の実施例のシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明に係る無線センサーネットワークシステムの一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、無線センサーネットワークシステム200のシステム図である。本無線センサーネットワークシステム200は、無線端末である1台の無線送受信装置20と親機22との間で情報を送受信している。そして、シリアル通信手段(例えばRS485方式)のシリアル通信手段を用いてセンサー30と通信する端末側の無線送受信装置20と、親機22との間には、多数の中継機21が分散配置されている。
【0024】
ここで、RS485方式のシリアル通信を用いると、無線中継機21や無線送受信装置20を32台接続することが可能である。なお、シリアル通信はRS485に限るものではなく、RS232やICも使用可能である。この多数分散配置された中継機21を用いて無線多段中継することにより、いわゆるメッシュトポロジーなシステムになっている。
【0025】
この図1に示した無線センサーネットワークシステム200では、無線送受信装置20は中継機21cと通信可能であるが、無線送受信装置20から中継機21bへ電波が届く範囲には配置されていないので、無線送受信装置20と中継機21bとは直接通信が不可能である。そこで、無線送受信装置20から送信される送信パケットは、まず中継機21cへ送信され、中継機21cが受信する。
【0026】
中継機21cは、無線送受信装置20からのパケットの受信を完了すると、中継機21bへ送信を開始する。以下、この手順を中継機21b、21a、…(図中大括弧内に示したように多数の中継機21、21、…)の順に繰り返し、最終的に親機22までパケットを送信する。なお、各中継機21には記憶手段が備えられている。
【0027】
このような状況で、中継機21や無線送受信装置20が一度に送信を行うとデータが衝突する。この衝突を防止するために、CSMA/CA方式を用いて無線チャンネルが所定量以上空いていることを確認し、ランダムな長さの時間待ちをした後、データを送信する。CSMA/CA方式を用いた具体的な方法を、以下に説明する。
【0028】
端末に位置する無線送受信装置20は、センサーが取得したデータに制御信号を加えた総パケットを、事前に把握する。その方法としては、予め取得データを親機22から指定することにより、親機22側で総パケットを把握して、無線受信装置20に分割指示する。または、無線送受信装置20自身が取得データ量および自身に記憶すべきデータ量を求めて、総パケットを求める。
【0029】
総パケットが求められたら、親機22の指令または自己20の演算により、送信可能容量を超えたパケット51を、パケット51a、51b、51cに分割し、無線送受信装置20にパケット51a、51b、51c単位で記憶する。無線親機22からの指示により、または予め定めた時刻に到達したら、無線送受信装置20は親機22にパケット51aから順に、パケット51b、51cを中継機21c、21b、…を経由して送信する。
【0030】
ここで、中継機21bが分割したパケット51aを中継機21aに送信しているのであれば、中継機21bは無線チャンネルを使っていてビジーの状態である。中継機21cから、中継機21bへ後続のパケット51bを送信することが不可能であるので、CSMA/CA方式にしたがい後続のパケット51bの送信をランダムな時間だけ待たせる。
【0031】
一方、無線送受信装置20へは中継機21bの電波が届かないので、中継機21cがCSMA/CA方式に従って送信を遅らせている情報は、無線送受信装置には送られない。そのため、無線送受信装置20は後続のパケット51cを中継機21cへ送信する。無線送受信装置20が分割したパケット51cを送信すると、中継機21cは以前に受信したパケット51bを送信待ちしているので、中継機21cには以前のパケット51bと新たなパケット51cとが並存し、中継機21cの記憶容量を超えたパケットを受信しなければならなくなる。その結果、新たに送信されたパケット51cが失われるという事態が生じる。
【0032】
また中継機21cが、分割したパケット51bを送信しているときに、無線送受信装置20から後続の分割パケット51cが送信されると、中継機21cは同時に送信と受信することが不可能であるから、後続の分割パケット51cが失われるという事態が生じる。このように、単にCSMA/CA方式を用いただけでは、データの衝突およびそれによるデータの喪失が避けられない。この不具合を回避する方法については、後述する。
【0033】
図2に、本実施例における通信方法の概要を示す。図2は、無線センサーネットワークシステム200において、上記データ喪失を回避したセンサー30情報の取得手続を示す図である。無線センサーネットワーク200には、図1に示すシステムを用いている。センサー30と無線送受信装置20の間はRS485規格のシリアル通信手段を用いており、必要な情報だけが無線送受信装置20から無線親機22に無線通信されている。この図2の上部は情報伝達系を、下部はタイムチャートを示している。
【0034】
無線通信は以下のように実行される。初めに、無線親機22から複数段の中継機21を介して、センサー30が接続され端末に位置する無線送受信装置20へ、第1回目の無線通信として通信開始要求100が送信される。この通信開始要求100には、無線送受信装置20がセンサー30と通信するのに必要な情報をパケットにした必要情報パケット107が含まれる。この通信開始要求100にしたがって、無線送受信装置20はセンサー30の通信仕様に合わせた通信を実行する。
【0035】
ところで、無線送受信装置20がセンサー情報を入手するために、必要なソフトウェアが無線送受信装置20のROMに、予め記憶されている。そのため、取り付けられるセンサーも未知の状態で作成される無線送受信装置20で、センサー30の機種毎に無線送受信装置20のソフトウェアを変更するのは事実上無理である。
【0036】
そこでこの不具合を回避するため、無線親機22はセンサー30の機種固有の情報をパケットにし、無線送受信装置20に送信する。これが、必要情報パケット107である。一方、無線送受信装置20のROMには、どんなセンサー30が接続されても汎用的に使用できるソフトウェアが書き込まれている。その結果、無線送受信装置20は無線親機22からのパケットを使用することで、ソフトウェアを変更せずに、任意のセンサー30と通信を行うことができる。センサー30との通信が可能になると、センサー30からは通信経路が確保された応答が返送される。
【0037】
その後、無線送受信装置20は、親機22から送信された必要情報パケット107に含まれる計測要求コマンド102の実行時刻に達したら、センサー30との通信により計測を実行し、計測データ103をセンサー30から無線送受信装置20へ送信させる。このセンサー30と無線送受信装置20の間で、何らかの理由により計測データが送信されず失敗106のフラグが立っても、無線送受信装置20は、第1回の無線通信で親機22から送信された必要情報パケットの情報に基づいて、リトライする。これにより、確実に計測データ103をセンサー30から取得するとともに、センサー30へ受信完了104の情報を送り、センサー30からは応答信号105を受信する。
【0038】
ここで、センサー30のデータ取得が成功したか失敗したかを無線送受信装置20が判断するわけであるが、その判断は、センサー30からシリアル通信で送られてきたデータが、正規の長さのデータか、ビット反転が生じていないか等で判断する。このセンサー30からの応答信号105が得られたら、無線送受信装置20は親機22から要求された計測データ等の必要データ108を、親機22へ送信する。
【0039】
2回目の無線通信は、センサー30から返信されたデータから、必要領域を無線送受信装置20が抽出して送信するパケット通信である。このように通信方法を改善すれば、従来6回以上実行されていた親機22と無線送受信装置20との間の無線通信が、2回だけで済むようになり消費電力を低減することができる。
【0040】
図3〜6を図1とともに用いて、データ喪失の回避法を説明する。ここで、図3は無線センサーネットワークシステム200が備える無線送受信装置20のブロック図であり、図4は無線親機22からの送信内容を説明する図、図5は無線送受信装置20の動作を示すフローチャート、図6は無線親機22の動作を示すフローチャートである。
【0041】
ところで、本実施例では、無線送受信装置20と中継機21および各中継機21、21間、最終段中継機21と親機22間には、IEEE802.15.4で規定される通信方式を用いている。このIEEE802.15.4で規定される通信方式は、一度に送信できるデータ容量が250kbpsと、無線LANなどで使用されるIEEE802.11に規定される通信方式の送信可能データ容量54MbpSに比べて小さい。その結果、上記不具合が顕著に発生する。
【0042】
図3において、無線送受信装置20はアンテナ10および無線送受信手段11、中央演算装置12、シリアル通信手段13、電源制御部14を備えている。これら無線送受信手段11および中央演算装置12、シリアル通信手段13、電源制御部14は、中央演算装置12で制御される。
【0043】
無線親機22は、上記したように、中継機21の記憶容量とセンサー30の機種毎に決められた計測要求コマンドと必要データ領域とをパケット107にし、無線送受信装置20に無線送信する。無線送受信装置20は、センサー20からシリアル通信手段12を用いて取得されるデータの必要部分を抽出してパケットを作成し、中継機21の記憶容量にパケットを分割する。無線送受信装置20は、各パケット51a〜51cのうちの1つだけ無線送信すると、中継機21が分割パケット51a〜51cを中継するのに要する時間を待った後、次の分割パケット51a〜51cを送信することを繰り返す。これにより、分割したパケット51a〜51cが中継途中で失われることを回避できる。
【0044】
なお、端末側の無線送受信装置20には、温度や圧力、振動、騒音等の各種の物理量を計測するセンサー30が接続されている。これら各センサー30の出力は、定期的に検出され、計測データとして、例えばUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、SPI(Serial Peripheral Interface)、I2C(Inter-Integrated Circuit)などで代表されるシリアル通信手段12を通じて無線送受信装置20に送信される。一方、上述したように、無線親機22から無線送受信装置20へ、中継機21が有する記憶手段の記憶容量を最大値とする分割サイズが、パケット40(図2のパケット107に相当)の一部として送信される。
【0045】
このパケット40の例を、図4に示す。図4は、無線親機22から無線送受信装置20に送信されるパケット40の具体的内容例である。パケット40は、制御文字31および計測要求コマンド32、分割サイズ33、必要データ領域指定34、制御文字35から構成されている。ここで計測要求コマンド32はそれぞれのセンサー30毎に決められている。
【0046】
図5を用いて、無線送受信装置20の動作を説明する。図5は、無線親機22から図4に示したパケット40を受信した無線送受信装置20が、センサー30情報を取得して無線送信するフローのフローチャートである。S101において、無線送受信装置20は、無線親機22からパケット40を受け取る。このパケット40には、計測を開始する要求が含まれている。
【0047】
パケット40を受け取った無線送受信装置20は、S102でシリアル通信手段12を用いてセンサー30に計測要求コマンド22を送信する。無線送受信装置20は、S103でセンサー30からシリアル通信手段12によりデータを受信すると、S104で受信データサイズを確認する。さらに、S105で図4に示したパケット40中の必要データ領域指定34からの情報により、シリアル通信手段12を介して入手したセンサー30からのデータから、中央演算装置12が必要データ領域を取り出す。
【0048】
データサイズが分割サイズより小さい場合には1回の送信で済むため、S106で、無線送受信装置20はデータサイズを調べる。データサイズが1回の送信容量内であれば、S107に進んで、無線送受信装置20は、送信パケットの初めと終わりを示す文字をデータ列に付加し、パケットを作成する。
【0049】
S108で無線送受信手段20は、アンテナ10からデータのパケットを隣り合う中継機21cへ送信する。データのパケットの送信が終われば、計測要求を受け付けるスタンバイの状態となる(S109)。
【0050】
一方、S106でデータサイズが分割サイズより大きいと判断したときには、S110へ進んで、データ列にパケットの初めと終わりを示す制御文字を付加して、データのパケットを作成する。このままでは、中継機21cへ送信できないので、S111へ進んで、中継機21の記憶容量以下のサイズにパケットがなるよう、分割サイズ33で示された容量のN個のパケットに分割する。
【0051】
S112へ進み、分割したパケットの1個目を送信する。1個目を送信し終えたら、S113に進んで、所定時間(一定時間)、次のパケットの送信を待機する。所定時間経過したら、パケットの送信回数が分割個数のNに達しているか否かを判断する(S114)。分割個数のNまで達していないときは、S112に戻り、送信と待機を繰り返す。分割個数のNまで達したら、S109に進み、次の計測要求を待つか、計測要求時間に達するのを待つ。または、計測を終了する。以上のフローにおいて、送信待機の時間は、中継機21が分割パケットを中継処理するために要する時間である。
【0052】
図6に、無線親機22の動作を、フローチャートで示す。図示しない上位計算機または上位制御機からユーザーが指定した計測周期を迎えるか、またはユーザーが計測要求を指定すると、S201で無線親機22は図4に示したパケット40を作成する。S202で作成されたパケット40を、中継機21を介して無線送受信装置20に送信する。次いで、S203で無線送受信装置20から送信された複数の分割パケット51a〜51cを受信し、S204で分割されたパケット51a〜51cを結合し、パケット51を復元する。S205で復元されたパケットからセンサーデータを取り出す。センサーデータを取り出した後は、スタンバイ状態となり、ユーザーの指示待ちとなる(S206)。ここで、計測要求コマンド32はセンサー30の種類ごとに変わるが、無線親機22が計測要求コマンドを含む図4のパケットを作成するため、センサー30の種類が何であっても、無線送受信装置20を動作させるソフトウェアを変更する必要はない。
【0053】
なお上記実施例では、センサー30の取得データをそのまま分割して送信しているが、さらに大容量のデータとなる場合には、データそのものを無線送受信装置20が圧縮し、圧縮後分割して送信してもよい。このようにすれば、非常に大容量の通信でも可能になる。また、上記実施例では無線送受信装置20の送信タイミングを、無線親機22からの指令に合わせているが、送信の開始時期は無線親機22の指令に合わせるとしても、分割した後のデータの送信は、予め定めた一定間隔とするようにしてもよい。この一定間隔時の設定では、予めデータ衝突が生じない間隔を求めておくようにする。
【0054】
図6に示したシステム図を用いて、本発明に係る無線センサーネットワークシステム200の他の実施例を説明する。本実施例が、図1に示す実施例と異なるのは、図1のシステムではセンサー30と無線送受信装置20が一組しかなかったが、本実施例では、無線センサーネットワークシステム200が、センサー30と無線送受信装置20を複数有していることにある。無線送受信装置20は、中継機21と同じ機能も有しており、無線中継することが可能であるから、他の無線送受信装置20に接続されたセンサー30の計測情報も中継することが可能となる。
【0055】
以上説明したように、上記各実施例によれば、センサー30が取得したデータのデータ容量が、各中継機が送信可能なデータ容量よりも大きくても、無線センサーネットワークシステムは低消費電力で、かつ確実にデータを伝達することができる。これにより、データ伝達の信頼度が向上する。また、無線送受信装置のソフトウェアを変更することなく、各種センサーを使用できる。
【符号の説明】
【0056】
10…アンテナ、11…無線送受信手段、12…中央演算装置、12…シリアル通信手段、14…電源制御部、20…無線送受信装置(無線子機)、21、21a〜21c…中継機、22…(無線)親機、 30…センサー、 31…制御文字、32…計測要求コマンド、 33…分割サイズ、34…必要データ領域指定、35…制御文字、40…パケット、51、51a〜51c…分割パケット、100…通信開始要求、101…応答、102…計測要求コマンド、103…計測データ、104…受信完了、105…通信完了、106…失敗、107…必要情報パケット、108…必要データ、200…無線センサーネットワークシステム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線親機とセンサーが取り付けられる無線子機との間を複数の無線中継機を多段に経由して通信する無線ネットワークシステムにおいて、
前記無線子機は前記センサーからのシリアル通信でデータを取得し、前記無線親機は、前記複数の中継機が備える記憶手段の記憶容量に応じたパケット容量を前記無線子機に制御指令として送信し、前記無線子機はこの送信されたパケット容量に前記シリアル通信で取得したセンサーデータを分割して前記中継機へ送信することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項2】
前記無線親機と無線子機間の中継機を経由する通信はIEEE802.15.4で規定される通信方式であり、前記センサーと無線子機との通信はシリアル通信方式であり、前記無線親機からの制御指令を受信した後は、前記無線子機が前記センサーからデータ取得ミスしたら、前記無線子機は前記無線親機と通信することなく前記センサーとの間で、データ取得成功の判断が下されるまで、データ取得を繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項3】
前記データ取得成功の判断に、シリアル通信における文字数およびビット反転を含むことを特徴とする請求項2に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項4】
前記データ取得成功の判断が下されたときに前記無線子機は、先に無線親機から送られた制御指令に基づいて、前記無線中継機にセンサーデータを送信することを特徴とする請求項2に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項5】
前記無線子機が、分割したデータを予め定めた一定の時間間隔で送信することを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。
【請求項6】
前記無線子機はセンサーデータを圧縮した後、前記無線親機からの制御指令に含まれるパケット容量に従って圧縮データを分割して送信することを特徴とする請求項1に記載の無線ネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−89992(P2012−89992A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233586(P2010−233586)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】