説明

無線フィールド機器

【課題】充電回数が有限の二次電池を不要にできる無線フィールド機器を提供すること。
【解決手段】パイプ内部を流れる被測定流体の物理量を測定する測定モジュールおよび外部と無線通信を行う無線モジュールが組み込まれた無線フィールド機器において、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスと、前記被測定流体の物理量を電気エネルギーに変換して出力する物理量電気エネルギー変換手段と、この物理量電気エネルギー変換手段から出力される電気エネルギーで前記エネルギー蓄積・供給デバイスを充電する蓄電部、を設けたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィールド機器に無線通信手段が組み込まれた無線フィールド機器に関し、詳しくは、その電源制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、たとえば上下水道施設におけるケーブル配線を敷設できないような場所、たとえばマンホール設備には、水が流れるパイプに無線通信機能を備えた流量計が無線フィールド機器として取り付けられている。
【0003】
そして作業者は、データ収集や設備点検などにあたり、ハンドヘルド端末を無線通信機として操作し、マンホール内の流量計との間で無線通信によるデータの授受を行う。
【0004】
ここで、フィールド機器とは、圧力計,差圧計,温度計,レベル計,流量計などの各種伝送器や、バルブポジショナなどプロセスに直結して測定や制御(バルブポジショナ)を行うものをいう。なお、バルブポジショナ以外は、(工業用)発信器とも呼ばれる。
【0005】
また、これらフィールド機器からの信号を受けて指示,記録,制御などを行う指示計,記録計,調節計,分散形制御システム,警報器などをシステム機器といい、これらシステム機器は、上記の発信器という概念に対して受信器とも呼ばれる。
【0006】
ところで、無線フィールド機器は、前述のように通常の配線が困難な場所に配置することを前提にしているので、電池で動作する方式が考えられている。
【0007】
図6は、従来の無線フィールド機器の一例を示す構成説明図であり、磁界中を導電性液体が流れることにより流れと直角の方向に流速に比例した起電力を生じるファラデーの法則を利用した電磁流量計の例を示している。
【0008】
図6において、たとえばステンレスなどで形成された非磁性のパイプ1の内部には、導電性の被測定液体が矢印Aの方向に流れる。パイプ1の外側には、パイプ1を挟むようにして矢印Bで示す直径方向に磁力線を生成するための励磁コイル2、3が設けられるとともに、励磁コイル2、3で生成される磁力線とほぼ直交するように起電力を検出するための検出電極4、5が設けられている。
【0009】
流量測定無線伝送部6は、内蔵されている充電不可能な一次電池7で駆動されるものであり、励磁コイル2、3を励磁して検出電極4、5により検出される起電力に基づき被測定液体の流量を測定する測定モジュールおよびその測定結果を外部に無線伝送する無線モジュールが組み込まれている。
【0010】
流量測定無線伝送部6を駆動する一次電池7は消耗品であるが、寿命が尽きて流量測定無線伝送部6を駆動できなくなってから交換するのでは、流量測定の連続性が保証できなくなり遅すぎる。
【0011】
そこで、一次電池7の残量エネルギーを定期的に確認するために電源監視部8を設けているが、この電池残量確認においても電池エネルギーを消費し、その結果を無線で送信して状況を伝えるにも電池エネルギーを消費することになる。
【0012】
図7は、従来の無線フィールド機器の他の例を示す構成説明図であり、流量測定無線伝送部6を充電可能な二次電池9で駆動するものである。この二次電池9は、パイプ1の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部10の電気エネルギーにより、充電部11を介して充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
特許文献1には、配管の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部の電気エネルギーにより、フィールド機器を駆動する二次電池を充電するように構成された無線機能を有するフィールド機器の技術が記載されている。
【0014】
【特許文献1】特開2008−301675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、二次電池の充電回数は有限であり、フィールド機器の使用環境によっては比較的短期間で交換しなければならないこともある。
【0016】
本発明は、このような課題を解決するもので、その目的は、充電回数が有限の二次電池を不要にできる無線フィールド機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、
パイプ内部を流れる被測定流体の物理量を測定する測定モジュールおよび外部と無線通信を行う無線モジュールが組み込まれた無線フィールド機器において、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスと、
前記被測定流体の物理量を電気エネルギーに変換して出力する物理量電気エネルギー変換手段と、
この物理量電気エネルギー変換手段から出力される電気エネルギーで前記エネルギー蓄積・供給デバイスを充電する蓄電部、
を設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、
パイプ内部を流れる被測定流体の物理量を測定する測定モジュールおよび外部と無線通信を行う無線モジュールが組み込まれた無線フィールド機器において、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる一次電池と、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスと、
前記被測定流体の物理量を電気エネルギーに変換して出力する物理量電気エネルギー変換手段と、
この物理量電気エネルギー変換手段から出力される電気エネルギーで前記エネルギー蓄積・供給デバイスを充電する蓄電部と、
前記エネルギー蓄積・供給デバイスにより駆動され、前記一次電池の出力電圧が前記エネルギー蓄積・供給デバイスの出力電圧よりも低下したら前記測定モジュールおよび無線モジュールを前記エネルギー蓄積・供給デバイスで駆動するように切り換える駆動源切換手段、
を設けたことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の無線フィールド機器において、
前記物理量電気エネルギー変換手段は、磁界中を導電性液体が流れることにより発生する起電力を利用した電磁流量測定手段であることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の無線フィールド機器において、
前記物理量電気エネルギー変換手段は、前記被測定流体の流れに基づく前記パイプの振動を電気エネルギー変換する振動発電手段であることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項1または2記載の無線フィールド機器において、
前記物理量電気エネルギー変換手段は、前記被測定流体の流れに基づく圧力の変化を電気エネルギーに変換する圧電手段であることを特徴とする。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1または2記載の無線フィールド機器において、
前記物理量電気エネルギー変換手段は、円周方向に沿って所定の磁極に着磁された着磁円筒が前記被測定流体の流れに基づいて前記パイプ内で回転するように構成された回転発電手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
これらにより、無線通信手段が組み込まれた無線フィールド機器において、充電回数が制限される二次電池を不要にできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示す構成説明図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す構成説明図である。
【図5】図4の回転発電部の具体例を示す構成説明図である。
【図6】従来の無線フィールド機器の一例を示す構成説明図である。
【図7】従来の無線フィールド機器の他の例を示す構成説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の一実施例を示す構成説明図であり、図6および図7と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、蓄電部12は、電気二重層と呼ばれる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスで構成されていて、たとえばスーパーキャパシタという商品名で市販されている。
【0026】
このデバイスは、大容量かつ低等価直列抵抗を有するものであり、基本セル(キャパシタ素子)を複数接続することにより所望の使用電圧が得られる。充放電が原理的に無制限で、秒単位の急速充放電が可能であり、低温環境に強く、環境負荷を軽減できる。
【0027】
蓄電部12は、励磁コイル2、3が励磁されることにより検出電極4、5で検出される被測定流体の物理量の一種である流量に関連した起電力により電荷が蓄積されて充電される。蓄電部12の出力端子は、切換スイッチ13の一方の固定接点に接続されている。
【0028】
切換スイッチ13は、流量測定無線伝送部6の駆動電源を切り換えるものであり、他方の固定接点には一次電池7の出力端子が接続され、可動接点は流量測定無線伝送部6に接続されている。
【0029】
駆動源切換制御部14は、切換スイッチ13の可動接点を切換駆動するものであり、蓄電部12の出力電圧で駆動される。すなわち、駆動源切換制御部14には一次電池7の出力電圧と蓄電部12の出力電圧を監視する機能が設けられていて、一次電池7の出力電圧が蓄電部12の出力電圧よりも低下したことを検出すると、流量測定無線伝送部6を蓄電部12の出力電圧で駆動するように切換スイッチ13の可動接点を切換駆動する。
【0030】
また、駆動源切換制御部14は、一次電池7の出力電圧が蓄電部12の出力電圧よりも低下したことを検出すると、流量測定無線伝送部6に一次電池7の出力電圧低下を警告するアラーム信号を出力する。流量測定無線伝送部6は、一次電池7の出力電圧低下を警告するアラーム信号が入力されると、オペレータに一次電池7の交換を促すためのメッセージを図示しない表示部に表示したり、外部に無線伝送する。
【0031】
このように構成することにより、一次電池7の出力電圧低下に伴う無線フィールド機器の測定不能状態を回避できるとともに、一次電池7の交換時期到来をオペレータに確実に通知でき、無線フィールド機器を用いて構築されるプラント制御システムの安定操業が実現できる。
【0032】
図2は、本発明の他の実施例を示す構成説明図である。図2の例では、蓄電部12は、被測定流体の物理量の一種である被測定流体の流れに伴うパイプ1の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部10の電気エネルギーにより充電される。
【0033】
このような構成によれば、パイプ1の外壁に必要に応じて振動発電部10を取り付ることができるので、既存の無線フィールド機器に、蓄電部12と切換スイッチ13と駆動源切換制御部14を組み合わせた電源補助機能として追加することができる。
【0034】
また、図1の構成のように被測定流体が導電性液体に限定されることはなく、各種の流体の測定に有効である。
【0035】
図3も、本発明の他の実施例を示す構成説明図である。図3の例では、蓄電部12は、被測定流体の物理量の一種である被測定流体の圧力の変化を電気エネルギーに変換する圧電変換部15から変換出力される電気エネルギーにより充電される。圧電変換部15は、内壁に圧電素子が設けられていてパイプ1の内部を流れる被測定流体が導入される球体15aおよびこの球体15aとパイプ1を連通させる直管15bとで構成されている。
【0036】
このような構成も、パイプ1の外壁に必要に応じて圧電変換部15を取り付ることができるので、既存の無線フィールド機器に、蓄電部12と切換スイッチ13と駆動源切換制御部14を組み合わせた電源補助機能として追加することができる。
【0037】
また、図3の構成も図1の構成のように被測定流体が導電性液体に限定されることはなく、各種の流体の測定に有効である。
【0038】
図4も、本発明の他の実施例を示す構成説明図である。図4の例では、蓄電部12は、被測定流体の物理量の一種である被測定流体の流速に関連した回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換する回転発電部100から変換出力される電気エネルギーにより充電される。
【0039】
図5は回転発電部100の具体例を示す組立構成説明図であり、(A)は主要部の斜視図、(B)は(A)の大径部における断面図である。パイプ1の電磁流量計の設置部と重ならない一部には大径部1aが形成されていて、その内部には円筒体110が円周方向に回転可能に設けられている。円筒体110の内周には、軸方向に沿って複数本(本実施例では4本)の螺旋状のフィン111〜114が等角度間隔で設けられている。円筒体110の外周は、円周方向に沿って等角度間隔にN極とS極が交互に着磁されている。パイプ1の大径部1aの外周には、複数個(本実施例では4個)の発電用コイル121〜124が等角度間隔で設けられている。これら発電用コイル121〜124の出力は蓄電部12に入力されている。
【0040】
図5の回転発電部100の構成によれば、プロペラのような回転軸がないことから軸受部が不要になり、構成の単純化が図れる。
【0041】
また、円筒体110の内周に設けられている螺旋状のフィン111〜114は、常にすべてが被測定流体の流速に関連した回転運動エネルギーを受けて円筒体110を回転させるので、高い発電効率が得られる。
【0042】
また、円筒体110の内周に設けられている螺旋状のフィン111〜114は、堅固に形成することができる。
【0043】
また、図4の構成も、図1のように被測定流体が導電性液体に限定されることはなく、各種の流体の測定に有効である。
【0044】
なお、上記各実施例では、流量計として電磁流量計の例について説明したが、これに限るものではなく、オリフィスの前後における差圧に基づいて流量を測定する差圧流量計やパイプに振動を与えることによりパイプに生成されるコリオリ力に基づいて質量流量を測定するコリオリ流量計であってもよい。
【0045】
また、上記各実施例では、測定モジュールおよび無線モジュールが組み込まれた流量測定無線測定部を駆動する電源として一次電池とエネルギー蓄積・供給デバイスを切り換える例を示したが、エネルギー蓄積・供給デバイスから十分な駆動出力が得られる場合には一次電池を省略してもよい。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、充電回数が有限の二次電池を不要にできる無線フィールド機器が実現できる。
【符号の説明】
【0047】
1 パイプ
1a 大径部
2、3 励磁コイル
4、5 検出電極
6 流量測定無線伝送部
7 一次電池
10 振動発電部
12 蓄電部
13 切換スイッチ
14 駆動源切換制御部
15 圧電変換部
15a 球体
15b 直管
100 回転発電部
110 円筒体
111 フィン
121〜124 発電用コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ内部を流れる被測定流体の物理量を測定する測定モジュールおよび外部と無線通信を行う無線モジュールが組み込まれた無線フィールド機器において、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスと、
前記被測定流体の物理量を電気エネルギーに変換して出力する物理量電気エネルギー変換手段と、
この物理量電気エネルギー変換手段から出力される電気エネルギーで前記エネルギー蓄積・供給デバイスを充電する蓄電部、
を設けたことを特徴とする無線フィールド機器。
【請求項2】
パイプ内部を流れる被測定流体の物理量を測定する測定モジュールおよび外部と無線通信を行う無線モジュールが組み込まれた無線フィールド機器において、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる一次電池と、
前記測定モジュールおよび無線モジュールを駆動する電源として用いる固体と液体との界面に正負の電荷が蓄えられることを利用したエネルギー蓄積・供給デバイスと、
前記被測定流体の物理量を電気エネルギーに変換して出力する物理量電気エネルギー変換手段と、
この物理量電気エネルギー変換手段から出力される電気エネルギーで前記エネルギー蓄積・供給デバイスを充電する蓄電部と、
前記エネルギー蓄積・供給デバイスにより駆動され、前記一次電池の出力電圧が前記エネルギー蓄積・供給デバイスの出力電圧よりも低下したら前記測定モジュールおよび無線モジュールを前記エネルギー蓄積・供給デバイスで駆動するように切り換える駆動源切換手段、
を設けたことを特徴とする無線フィールド機器。
【請求項3】
前記物理量電気エネルギー変換手段は、磁界中を導電性液体が流れることにより発生する起電力を利用した電磁流量測定手段であることを特徴とする請求項1または2記載の無線フィールド機器。
【請求項4】
前記物理量電気エネルギー変換手段は、前記被測定流体の流れに基づく前記パイプの振動を電気エネルギー変換する振動発電手段であることを特徴とする請求項1または2記載の無線フィールド機器。
【請求項5】
前記物理量電気エネルギー変換手段は、前記被測定流体の流れに基づく圧力の変化を電気エネルギーに変換する圧電手段であることを特徴とする請求項1または2記載の無線フィールド機器。
【請求項6】
前記物理量電気エネルギー変換手段は、円周方向に沿って所定の磁極に着磁された着磁円筒が前記被測定流体の流れに基づいて前記パイプ内で回転するように構成された回転発電手段であることを特徴とする請求項1または2記載の無線フィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−122842(P2012−122842A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273791(P2010−273791)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】