無線リソース割り当て方法および基地局
【課題】ボトルネックになり易い無線アクセスネットワーク側で各ユーザに対する上限帯域規制を行い、移動体通信システム全体として、リソースの有効活用を行う。
【解決手段】基地局は、複数の端末からまたは複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、各端末に対する無線リソースの割り当てが設定した上限値を超えないように無線リソースの割り当てを行う。
【解決手段】基地局は、複数の端末からまたは複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、各端末に対する無線リソースの割り当てが設定した上限値を超えないように無線リソースの割り当てを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信技術に関し、特に基地局と端末間の無線区間において、各端末に割当てる帯域を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話のパケット通信で採用されている課金方式には、(1)定額制、(2)二段階定額制、(3)従量制、(4)上限パケット数以下は従量制でパケット数が上限パケット数を超えると定額制が適用される方式 などがある。このうち、(2)二段階定額制は、第一の上限パケット数までは第一の定額料金が設定され、第一のパケット数以上第二のパケット数までは従量制の料金設定となり、さらに第二のパケット数以上通信を行なった場合には、第二の定額料金が適用される方式である。具体的には、ユーザにはまず低い方の第一の定額料金が適用され、第一の上限パケット数まで通信し放題となる。第一の上限パケット数を超えると従量制料金に切り替わり、利用実績に応じて課金される。従量制料金の上限パケット数(第二のパケット数)に達すると再び定額制が適用され、いくら通信しても第二の定額料金以上は課金されない。
【0003】
このように、(1)定額制、(2)二段階定額制、(4)上限パケット数を超えると定額制が適用される方式 といった、月額利用料に上限が設定されている定額制を組み込んだ課金方式が多く採用されている。定額制は、大量に通信を行っても、一定額以上課金されないため、個々のユーザの通信料は増加してきており、さらには大量通信ユーザ(いわゆるヘビーユーザ)が、他の通信へ及ぼす影響も問題となってきている。
【0004】
非特許文献1は、ヘビーユーザに対し、通信速度の制限を行うものであるが、従来このようなヘビーユーザに対する帯域規制は、移動体通信システムを構成するハードウェアの制約から、ゲートウェイ装置などのコアネットワーク側の機器で行われていた。
【0005】
一方、第3.9世代の移動体通信システムの1つの方式であるLTEでは、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が用いられ、上りリンクについてはSC−FDMA(Single−Carrier Frequency Division Multiple Access)が用いられる。LTEシステムでは、同一セル内の各ユーザへの上りリンクと下りリンクの双方向通信方式としては、周波数分割多重(FDM)又は時間分割多重(TDM)が用いられる。
【0006】
LTEの無線フレームは、時間領域における時間長が10msである。この無線フレームは、時間長1msの10個のサブフレームから構成され、サブフレーム単位に誤り訂正などが行われるため、1msが基本の伝送時間間隔として定義されている。サブフレームは、連続する2つのスロットに分解され、下りリンクでは、1スロット(0.5ms)は7OFDMシンボルで構成される。
【0007】
一方、周波数領域は、各ユーザに割り当てられた帯域に応じた数のサブキャリアが割り当てられる。LTEでは、12サブキャリア(15kHz×12=180kHz)×7シンボルをリソースブロックと呼んで、伝送の基本単位としている。前述のサブフレームは、連続する2つのリソースブロックから構成されることになる。また、1サブキャリア×1シンボルが、個別に変調される基本単位で、リソースエレメントとよばれる。上りリンクにおいても、下りリンクと同様に、時間長0.5ms×帯域幅180kHzを1リソースブロックとしてユーザへの割り当て(スケジューリング)を行う。
【0008】
スケジューリングに適用されるアルゴリズムとして、プロポーショナルフェアネス等のアルゴリズムがある。プロポーショナルフェアネスではユーザ毎の無線リソースの割り当てを機会均等を確保したうえで、無線状況が良好なときに多くのスロットの割り当てを行うように制御する。プロポーショナルフェアネスの具体的な実現方法のひとつとしては、ユーザの過去のスループットの平均値及び瞬時値の比率を算出し、その比率の大小に基づいてユーザと無線リソースの割り当てを計画する技術が特許文献1に記載されている。プロポーショナルフェアネススケジューリングについては、特許文献1の他、非特許文献2に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2009/131099
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】1xEV−DO:効率性向上策を駆使し,携帯データ通信で初の定額制を実現(中)−技術の広場:ITpro :渡辺、松田
【非特許文献2】A.Jalali, R.Padovani, and R.Pankaj, “Data throughput of CDMA−HDR a high efficiency−high data rate personal communication wireless system,” IEEE Proc. VTC Spring 2000, pp.1854−1858, May 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
背景技術で述べたように、従来の移動体通信システムにおいては、各ユーザへ割り当てる帯域に上限値を設定し、その上限値以下の帯域を各ユーザに割り当てる制御は、コアネットワーク側の装置、例えばゲートウェイで行われ、無線アクセスネットワーク側の基地局には、各ユーザに割り当てる帯域を上限値以下に制御するための制御手段がなかった。そのため、ゲートウェイ装置で帯域規制が行なわれると、そうとは知らずに無線状況がよいユーザの無線端末が送信した上りデータが、無線基地局までは到達したものの、ゲートウェイ装置で行なわれている帯域規制のために破棄されてしまうという問題が発生する。破棄されたデータについては、TCP/IP等の再送制御が発生するので、無線アクセスネットワーク側のトラフィックが再送により増加し無線端末の通信レートが急激に低下してしまうという問題点があった。
【0012】
逆に、下りリンクの帯域がコアネットワーク側のゲートウェイ装置などで規制されると、無線アクセスネットワーク側の無線リソースが有効に活かされないという問題点があった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ボトルネックになり易い無線アクセスネットワーク側で各ユーザに対する上限帯域規制を行えるようにし、移動体通信システム全体として、リソースの有効活用を行うことができるようにすることを目的とする。その為、端末から送られた上りデータが基地局まで到達しても、呼単位に帯域規制されているGWで破棄されることがあり、これによりTCP/IP等の再送が発生し通信レートが急激に低下していた。
逆に、下りデータは有線区間で規制されると、無線のリソースが有効に活かされていなかった。
本発明では、ボトルネックになり易い無線区間で帯域規制を行うことにより、システム全体としてのリソースの有効活用を行う。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明においては、複数の端末と無線によりデータの送受信を行う基地局における複数の端末への無線リソースの割り当てにおいて、基地局が複数の端末からまたは複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、各無線リソース割り当ての上限値から既に割り当てをおこなった無線リソース値を減算し、各端末に対する無線リソースの割り当てが前記設定した上限値を超えないように各端末に対する無線リソースの割り当てを行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一般にコアネットワーク側よりもボトルネックになりやすい無線アクセスネットワーク側で各無線端末に割り当て可能な上限帯域の制御を行うことにより、無線アクセスネットワークにおいて割り当てられた帯域と、コアネットワーク側で制限されている帯域の違いにより発生する再送処理による輻輳を抑えることができる。また、各ユーザの規制条件により、きめ細かい上限帯域の制御を行うことができ、無線リソースを無駄なく割り当てることが可能となる。本発明によれば、基地局において上限帯域を制御するので、コアネットワーク側の例えばゲートウェイ装置で行われる上限帯域規制で廃棄されるようなパケットを基地局が送信することをなくすことができる。
【0016】
さらには、基地局毎にその基地局の状況に応じて、帯域規制を行う時間帯、帯域規制の規制値を、ユーザ毎にきめ細かく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例における移動体通信システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明の一実施例における基地局の構成を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例における呼接続処理のシーケンスを説明する図である。
【図4】課金サーバの帯域規制情報テーブルの一例を示す図である。
【図5】基地局の帯域規制情報テーブルの一例を示す図である。
【図6】基地局の帯域規制時間テーブルの一例を示す図である。
【図7】基地局の通信規格(通信方式)毎の最大送信可能データ量テーブルの一例を示す図である。
【図8】本発明の一実施例における帯域規制値の判定処理内容を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の一実施例における下りリンクのスケジューリング処理を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例における上りりリンクのスケジューリング処理を説明するフローチャートである。
【図11】発明の一実施例における、下りリンクのスロットの割り当て例である。
【図12】本発明の一実施例における、上りリンクのスロットの割り当て例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例における移動体通信システムの構成図を示す図である。
図1において、UE1、UE2、..UEnは基地局5に接続する端末である。基地局5は、LANスイッチ4を介してゲートウェイ(GW)1、課金サーバ2などと接続されている。端末は、GWを介して、IP網との通信を行う。ここでは、説明の便宜上、すべての端末は基地局のセクタ内に在圏しているものとする。本実施例では、以下に説明する構成により、端末毎に個別に無線区間の帯域規制値の設定が可能である。
【0019】
図2は、本発明の一実施例における基地局の構成を説明する図である。
基地局は、図1で示した、LANスイッチ、GWなどを接続する中継網10から受信した下りトラヒックデータを、網インタフェース11を経て、受信し、データバッファ12に蓄える。本実施例では、基地局は、下りトラフィックデータの他、課金サーバから、呼毎の帯域規制情報、帯域オーバ状態が発生したことを通知するアラーム等を網インターフェースを介して受信する。本実施例の以下の説明においては、呼毎、端末毎、ユーザ毎は、ほぼ同義として用いている。課金サーバから受信したそれらの情報は、帯域規制情報判定部15に入力される。帯域規制情報判定部15では、課金サーバ2から受信した呼毎の帯域規制情報、GWなどから受信した帯域オーバ発生を通知するアラーム、基地局の帯域規制時間テーブルに帯域規制を行う時間帯が設定されていれば、その規制時間の情報の内容を判定し、呼毎の規制値を決定する。帯域規制情報判定部15で決定された呼の規制値と、アンテナ17から受信した無線信号に基づいて無線品質情報判定部16で判定した無線品質情報に基いて、基地局内のスケジューラ13でスケジューリングを行う。基地局は、下りデータの場合はスケジューリング結果に基づいて端末毎に無線リソースを割当てて、基地局から端末に対して送信する。端末から基地局に送信する上りデータについては、基地局は、端末にスケジューリング結果であるリソース割り当て情報を報知情報で各端末に通知する。
【0020】
図3は本発明の一実施例における呼接続処理のシーケンスを示す図である。
端末からの呼接続要求S101には、端末のユーザID、端末の通信規格(通信方式)などの情報が含まれている。呼接続要求S101を受信後、基地局は、課金サーバに端末のユーザIDを通知し、課金サーバに対して、端末の帯域規制情報の入手要求S102を行う。課金サーバはユーザIDに対応する帯域規制情報を基地局に通知する(S103)。課金サーバから端末の帯域規制情報を受信した基地局は、基地局内のメモリ(図2の基地局の構成例では帯域規制情報判定部内15のメモリ)に格納する(S104)。
【0021】
基地局は、帯域規制情報、GWなどから帯域オーバ発生アラームを受信していればそのアラームの内容、基地局にあらかじめ設定されている帯域規制時間のテーブルの情報に基いて、帯域規制情報の判定を行い、帯域規制値を決定する(S105)。本実施例では、帯域オーバ発生アラームは、帯域のオーバ状況によって、軽度の帯域オーバ発生アラームと、重度の帯域オーバ発生アラームの2種類のアラームが用意されている。また、各基地局が持つ帯域規制時間のテーブルには、保守装置などからあらかじめ、基地局毎に、帯域規制を行うべき時間帯が通知されて設定されている。ステップ105の帯域規制情報の判定処理については、図8、図9で説明する。帯域規制情報の判定処理が行なわれ、帯域規制値が設定された後、設定された帯域規制値、端末と基地局間の無線通信品質にもとづいてスケジューリングが行なわれ、通信が開始される。
【0022】
その後、通信中に、GWなどから帯域重度オーバアラーム通知、帯域軽度オーバアラーム通知、帯域オーバアラーム解除通知を受信した場合や、または帯域規制時間テーブルに設定された、帯域規制の開始時刻、帯域規制の終了時刻となった時に(S108)、割り込み処理S109が発生し、再度帯域規制情報判定処理を行い、帯域規制値を更新、解除する(S110)。
【0023】
図4は、課金サーバの帯域規制情報テーブルの一例を示す図である。
図4の課金サーバの帯域規制情報テーブルには、端末毎(縦軸)に最大スループットに対する帯域規制情報が格納されている。帯域規制情報は、通常時と、帯域軽度アラーム通知時、帯域重度アラーム通知時の3通り設定されている。これらの帯域規制情報は、ユーザの契約情報や、前月の通信量、あるいは当月の通信量に応じて設定され課金サーバのテーブルに格納される。このテーブルは、課金サーバで管理する前述のユーザの契約情報や、前月の通信量、あるいは当月の通信量などに基いて自動生成してもよいし、外部から設定してもよい。
【0024】
図5に、基地局における帯域規制情報テーブルの一例を示す。
基地局の帯域規制情報テーブルには、基地局が課金サーバより入手した端末ごとの帯域規制情報を格納している。基地局は、呼接続要求があった端末毎に、呼接続要求に含まれる通信規格(通信方式)情報および課金サーバより入手した帯域規制情報を格納する。
【0025】
次に、基地局の帯域規制時間テーブルについて説明する。
図6は、基地局の帯域規制時間テーブルの一例を示す図である。
基地局の帯域規制時間テーブルには、帯域規制の開始時刻と終了時刻を指定して設定されている。この帯域規制時間の情報は、保守装置から各基地局に対してあらかじめ設定しておく。帯域規制の開始時刻、終了時刻で規定される帯域規制の時間帯は、図6に示すように複数設けてもよい。
【0026】
図7は、基地局の通信規格ごとの最大送信データ情報を格納したテーブルの一例を示す図である。
基地局は、基地局がサポートしている通信規格(通信方式)毎に、その通信規格において、端末が送信可能な最大送信可能データ量の情報を、テーブル格納して持っている。
【0027】
次に、帯域規制情報の判定処理の内容を説明する。
図8は、本発明の一実施例における基地局の帯域機情報判定処理の内容を説明するフローチャートである。
図8は、図3のシーケンス中の帯域規制情報判定S105あるいはS110における処理内容を示している。基地局は、端末からの呼接続要求時に課金サーバからその端末の帯域規制情報を入手して基地局の帯域規制情報テーブルに格納した後、現在の時刻が保守装置からあらかじめ設定された帯域規制時間帯内かどうかの判定を行う(S201)。
帯域規制時間帯内であればS202に進み、基地局の帯域規制情報テーブルに格納された帯域規制時間帯における帯域規制情報を読み出し、Aに代入する。ステップ201で、現在の時刻が帯域規制時間帯外であると判定した場合には、ステップ203の処理に進みAに1を代入する。
【0028】
帯域規制時間帯であるかどうかの判定後、帯域オーバの発生を通知するアラームの有無を確認する。軽度な帯域オーバが発生していることを示す帯域軽度オーバアラームが通知されている状況では、ステップ205に進み、基地局の帯域規制情報判定部のテーブルに格納された帯域軽度アラーム通知時の帯域規制情報を読み出し、Bに代入する。重度の帯域オーバが発生していることを示す帯域重度オーバアラームが通知されている状況では、ステップ206に進み、基地局の帯域規制情報判定部のテーブルに格納された帯域重度アラーム通知時の帯域規制情報を読み出し、Bに代入する。帯域オーバアラームが通知されていない状況では、ステップ207に進み、Bに1を代入する。
【0029】
次に、ステップ208において、AとBを比較して、最小値である方の値を帯域規制値として設定する。すなわち、図4ないし図6で示した帯域規制情報が課金サーバや基地局に設定されている場合には、帯域規制間帯で帯域オーバ発生アラームが通知されていない状況では、B = 1となり、Aの帯域規制時間帯の帯域規制値が最小値となり、Aに代入された値が有効になり、帯域規制値の判定結果として設定される。
一方で帯域規制時間帯ではないが、帯域オーバ発生アラームが通知されている場合、A = 1となり、Bの帯域オーバアラーム帯域規制値が最小値となり、それが有効になる、帯域規制値の判定結果として設定される。
また、帯域規制時間帯でありかつ帯域オーバ発生アラームも通知されている場合は、最小値に設定することで、規制の厳しい方の値が採用される。
【0030】
図9は本発明の一実施例における下りリンクのスケジューラ処理のフローチャートである。
基地局は、下りリンクのデータをGWから受信し、いったんバッファに保持する(S301)。下りリンクのスケジューリングでは、呼ごとの、残下り送信許可データ量を設定する。残下り送信許可データ量は、通信規格上の単位時間当たりの下りリンクの最大送信可能データ量に、図8のステップ208で決定した帯域規制値を乗算したものである。単位時間当たりの下り最大送信可能データ量は、図5に示したテーブルに格納された端末の通信規格(通信方式)の情報と、図7の通信規格における下り最大送信可能データ量から算出する。
【0031】
その後、以下の処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。本例では、単位時間は1秒としている。
まずは、無線品質情報、残データ量、QoS情報を元に、既存のスケジューリングアルゴリズムにより、リソースの割り当を行う。
GWから受信データがない場合、あるいは該当リソースブロックではいずれのユーザも十分な無線品質を得ることができず、割り当てユーザが存在しない場合は、そのリソースブロックを空きリソースブロックS306とする。バッファのデータがあり、対象リソースブロックにユーザ割り当てある場合、帯域規制呼かどうかの判定を行う。
呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量>0の場合は、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S309)。呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量=0の場合には、その呼にはリソース割り当てを行なわない。
呼が下り帯域規制対象呼ではない場合には、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S309)。ここまでの処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。
スロット内の全リソースブロックへのリソース割り当て完了しらた、スロットにリソース割り当てに従って下りデータを設定して、下りスロットを端末へ送信する。
残下り送信許可データ量は、単位時間経過ごとに初期化する。
【0032】
図10は本発明の一実施例における上りリンクのスケジューリング処理を説明するフローチャートである。
基地局は、端末からの上りリンクのリソース割り当て要求を受信し、保持する(S401)。基地局は、呼ごとの、残上り送信許可データ量を設定する。残上り送信許可データ量(初期値)は、規格上(通信方式)の単位時間当たりの上り最大送信可能データ量に、図8のステップ208で決定した帯域規制値を乗算したものである。規格上(通信方式)の単位時間当たりの上り最大送信可能データ量は、図5のテーブルに存在する端末の通信規格(通信方式)と図7の通信規格に対する上り最大送信可能データ量から算出する。
【0033】
その後、以下の処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。
まず、無線品質情報、残データ量、QoS情報を元にした既存のスケジューリングアルゴリズムにより、リソース割り当てを行う。該当リソースブロックではいずれのユーザも十分な無線品質を得ることができず、割り当てユーザが存在しない場合は、そのリソースブロックを空きリソースブロックS406とする。スケジューリングによりユーザに割当てたリソースブロックについてはステップ407の帯域規制呼であるかどうかの判定を行う。
呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量>0の場合は、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S409)。呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量=0の場合には、その呼にはリソース割り当てを行なわない。
呼が下り帯域規制対象呼ではない場合には、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S409)。ここまでの処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。
【0034】
スロット内の全リソースブロックのリソース割当てが完了したら、端末に割り当て情報を報知情報で通知する(S411)。この報知情報に従って、端末は上り情報を割り当てられたリソースブロックに格納して、基地局に送信する。基地局は、端末から上りリンクのデータを受信して、GWに送信する。
基地局は、単位時間経過ごとに残上り送信許可データ量を初期化する。
【0035】
図11に、従来のスケジューラで生成した、下りリンクのリソース割り当ての例と、本実施例の下りリンクのリソース割り当て例を示す。
図11(a)に示す従来の帯域規制は、GWで行われているため、帯域規制を行っている呼については、基地局が受信するデータ量が減少する。そのため、無線リソースに空きがあるにもかかわらず、割り当てがされていないスロットが多い。
図11(b)に示す本実施例の帯域規制では、基地局のスケジューラで帯域規制することにより、より無線リソースの空きを少なくし、無線のリソースを有効活用できる。
【0036】
図12に、従来のスケジューラで生成した、上りリンクのリソース割り当ての例と、本実施例の上りリンクのリソース割り当て例を示す。
有線区間での許容帯域以上のデータがスロットに割り当てられている場合、GWでのデータ破棄が発生する可能性があり、データの破棄が発生した場合は再送が発生し効率が悪かった。
図12(b)は、本実施例のスケジューラで生成した、上りリンクのリソース割り当ての例である。本実施例のようにスケジューラで有線区間での帯域状況を考慮し無線リソースの割当てを行うことで、GWでのデータの破棄を減らし、再送処理による通信レートの低下を防ぐことができる。
【0037】
以上説明した実施例を用いると、基地局のスケジューラでリソースを割り当てる際に、帯域規制処理も行うことができる。一般に有線区間よりもボトルネックになりやすい無線区間で帯域規制を行うことにより、再送処理による輻輳を抑え、また、端末の規制条件によりきめ細かい制御を行うことで無線リソースは無駄なく割り当てることが可能である。帯域規制量は、最大スループットに対する比率で決定することが可能であり、カタログ等に、規制状況における最大スループットの上限値を載せることが可能になる。さらにまた、GWやLANスイッチなどの装置から基地局に対して有線区間のネットワークのトラヒック状況を通知することで上りデータを無線区間で帯域規制を実施し、有線区間で輻輳が発生した場合のトラヒックを抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ゲートウェイ
2 課金サーバ
3 IP網
4 LANスイッチ
5 基地局
6 端末
10 中継網
11 網インタフェース
12 データバッファ
13 スケジューラ
14 無線処理部
15 帯域規制情報判定部
16 無線品質情報判定部
17 アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信技術に関し、特に基地局と端末間の無線区間において、各端末に割当てる帯域を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話のパケット通信で採用されている課金方式には、(1)定額制、(2)二段階定額制、(3)従量制、(4)上限パケット数以下は従量制でパケット数が上限パケット数を超えると定額制が適用される方式 などがある。このうち、(2)二段階定額制は、第一の上限パケット数までは第一の定額料金が設定され、第一のパケット数以上第二のパケット数までは従量制の料金設定となり、さらに第二のパケット数以上通信を行なった場合には、第二の定額料金が適用される方式である。具体的には、ユーザにはまず低い方の第一の定額料金が適用され、第一の上限パケット数まで通信し放題となる。第一の上限パケット数を超えると従量制料金に切り替わり、利用実績に応じて課金される。従量制料金の上限パケット数(第二のパケット数)に達すると再び定額制が適用され、いくら通信しても第二の定額料金以上は課金されない。
【0003】
このように、(1)定額制、(2)二段階定額制、(4)上限パケット数を超えると定額制が適用される方式 といった、月額利用料に上限が設定されている定額制を組み込んだ課金方式が多く採用されている。定額制は、大量に通信を行っても、一定額以上課金されないため、個々のユーザの通信料は増加してきており、さらには大量通信ユーザ(いわゆるヘビーユーザ)が、他の通信へ及ぼす影響も問題となってきている。
【0004】
非特許文献1は、ヘビーユーザに対し、通信速度の制限を行うものであるが、従来このようなヘビーユーザに対する帯域規制は、移動体通信システムを構成するハードウェアの制約から、ゲートウェイ装置などのコアネットワーク側の機器で行われていた。
【0005】
一方、第3.9世代の移動体通信システムの1つの方式であるLTEでは、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が用いられ、上りリンクについてはSC−FDMA(Single−Carrier Frequency Division Multiple Access)が用いられる。LTEシステムでは、同一セル内の各ユーザへの上りリンクと下りリンクの双方向通信方式としては、周波数分割多重(FDM)又は時間分割多重(TDM)が用いられる。
【0006】
LTEの無線フレームは、時間領域における時間長が10msである。この無線フレームは、時間長1msの10個のサブフレームから構成され、サブフレーム単位に誤り訂正などが行われるため、1msが基本の伝送時間間隔として定義されている。サブフレームは、連続する2つのスロットに分解され、下りリンクでは、1スロット(0.5ms)は7OFDMシンボルで構成される。
【0007】
一方、周波数領域は、各ユーザに割り当てられた帯域に応じた数のサブキャリアが割り当てられる。LTEでは、12サブキャリア(15kHz×12=180kHz)×7シンボルをリソースブロックと呼んで、伝送の基本単位としている。前述のサブフレームは、連続する2つのリソースブロックから構成されることになる。また、1サブキャリア×1シンボルが、個別に変調される基本単位で、リソースエレメントとよばれる。上りリンクにおいても、下りリンクと同様に、時間長0.5ms×帯域幅180kHzを1リソースブロックとしてユーザへの割り当て(スケジューリング)を行う。
【0008】
スケジューリングに適用されるアルゴリズムとして、プロポーショナルフェアネス等のアルゴリズムがある。プロポーショナルフェアネスではユーザ毎の無線リソースの割り当てを機会均等を確保したうえで、無線状況が良好なときに多くのスロットの割り当てを行うように制御する。プロポーショナルフェアネスの具体的な実現方法のひとつとしては、ユーザの過去のスループットの平均値及び瞬時値の比率を算出し、その比率の大小に基づいてユーザと無線リソースの割り当てを計画する技術が特許文献1に記載されている。プロポーショナルフェアネススケジューリングについては、特許文献1の他、非特許文献2に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2009/131099
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】1xEV−DO:効率性向上策を駆使し,携帯データ通信で初の定額制を実現(中)−技術の広場:ITpro :渡辺、松田
【非特許文献2】A.Jalali, R.Padovani, and R.Pankaj, “Data throughput of CDMA−HDR a high efficiency−high data rate personal communication wireless system,” IEEE Proc. VTC Spring 2000, pp.1854−1858, May 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
背景技術で述べたように、従来の移動体通信システムにおいては、各ユーザへ割り当てる帯域に上限値を設定し、その上限値以下の帯域を各ユーザに割り当てる制御は、コアネットワーク側の装置、例えばゲートウェイで行われ、無線アクセスネットワーク側の基地局には、各ユーザに割り当てる帯域を上限値以下に制御するための制御手段がなかった。そのため、ゲートウェイ装置で帯域規制が行なわれると、そうとは知らずに無線状況がよいユーザの無線端末が送信した上りデータが、無線基地局までは到達したものの、ゲートウェイ装置で行なわれている帯域規制のために破棄されてしまうという問題が発生する。破棄されたデータについては、TCP/IP等の再送制御が発生するので、無線アクセスネットワーク側のトラフィックが再送により増加し無線端末の通信レートが急激に低下してしまうという問題点があった。
【0012】
逆に、下りリンクの帯域がコアネットワーク側のゲートウェイ装置などで規制されると、無線アクセスネットワーク側の無線リソースが有効に活かされないという問題点があった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ボトルネックになり易い無線アクセスネットワーク側で各ユーザに対する上限帯域規制を行えるようにし、移動体通信システム全体として、リソースの有効活用を行うことができるようにすることを目的とする。その為、端末から送られた上りデータが基地局まで到達しても、呼単位に帯域規制されているGWで破棄されることがあり、これによりTCP/IP等の再送が発生し通信レートが急激に低下していた。
逆に、下りデータは有線区間で規制されると、無線のリソースが有効に活かされていなかった。
本発明では、ボトルネックになり易い無線区間で帯域規制を行うことにより、システム全体としてのリソースの有効活用を行う。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明においては、複数の端末と無線によりデータの送受信を行う基地局における複数の端末への無線リソースの割り当てにおいて、基地局が複数の端末からまたは複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、各無線リソース割り当ての上限値から既に割り当てをおこなった無線リソース値を減算し、各端末に対する無線リソースの割り当てが前記設定した上限値を超えないように各端末に対する無線リソースの割り当てを行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一般にコアネットワーク側よりもボトルネックになりやすい無線アクセスネットワーク側で各無線端末に割り当て可能な上限帯域の制御を行うことにより、無線アクセスネットワークにおいて割り当てられた帯域と、コアネットワーク側で制限されている帯域の違いにより発生する再送処理による輻輳を抑えることができる。また、各ユーザの規制条件により、きめ細かい上限帯域の制御を行うことができ、無線リソースを無駄なく割り当てることが可能となる。本発明によれば、基地局において上限帯域を制御するので、コアネットワーク側の例えばゲートウェイ装置で行われる上限帯域規制で廃棄されるようなパケットを基地局が送信することをなくすことができる。
【0016】
さらには、基地局毎にその基地局の状況に応じて、帯域規制を行う時間帯、帯域規制の規制値を、ユーザ毎にきめ細かく制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例における移動体通信システムの構成を説明する図である。
【図2】本発明の一実施例における基地局の構成を説明する図である。
【図3】本発明の一実施例における呼接続処理のシーケンスを説明する図である。
【図4】課金サーバの帯域規制情報テーブルの一例を示す図である。
【図5】基地局の帯域規制情報テーブルの一例を示す図である。
【図6】基地局の帯域規制時間テーブルの一例を示す図である。
【図7】基地局の通信規格(通信方式)毎の最大送信可能データ量テーブルの一例を示す図である。
【図8】本発明の一実施例における帯域規制値の判定処理内容を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の一実施例における下りリンクのスケジューリング処理を説明するフローチャートである。
【図10】本発明の一実施例における上りりリンクのスケジューリング処理を説明するフローチャートである。
【図11】発明の一実施例における、下りリンクのスロットの割り当て例である。
【図12】本発明の一実施例における、上りリンクのスロットの割り当て例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例における移動体通信システムの構成図を示す図である。
図1において、UE1、UE2、..UEnは基地局5に接続する端末である。基地局5は、LANスイッチ4を介してゲートウェイ(GW)1、課金サーバ2などと接続されている。端末は、GWを介して、IP網との通信を行う。ここでは、説明の便宜上、すべての端末は基地局のセクタ内に在圏しているものとする。本実施例では、以下に説明する構成により、端末毎に個別に無線区間の帯域規制値の設定が可能である。
【0019】
図2は、本発明の一実施例における基地局の構成を説明する図である。
基地局は、図1で示した、LANスイッチ、GWなどを接続する中継網10から受信した下りトラヒックデータを、網インタフェース11を経て、受信し、データバッファ12に蓄える。本実施例では、基地局は、下りトラフィックデータの他、課金サーバから、呼毎の帯域規制情報、帯域オーバ状態が発生したことを通知するアラーム等を網インターフェースを介して受信する。本実施例の以下の説明においては、呼毎、端末毎、ユーザ毎は、ほぼ同義として用いている。課金サーバから受信したそれらの情報は、帯域規制情報判定部15に入力される。帯域規制情報判定部15では、課金サーバ2から受信した呼毎の帯域規制情報、GWなどから受信した帯域オーバ発生を通知するアラーム、基地局の帯域規制時間テーブルに帯域規制を行う時間帯が設定されていれば、その規制時間の情報の内容を判定し、呼毎の規制値を決定する。帯域規制情報判定部15で決定された呼の規制値と、アンテナ17から受信した無線信号に基づいて無線品質情報判定部16で判定した無線品質情報に基いて、基地局内のスケジューラ13でスケジューリングを行う。基地局は、下りデータの場合はスケジューリング結果に基づいて端末毎に無線リソースを割当てて、基地局から端末に対して送信する。端末から基地局に送信する上りデータについては、基地局は、端末にスケジューリング結果であるリソース割り当て情報を報知情報で各端末に通知する。
【0020】
図3は本発明の一実施例における呼接続処理のシーケンスを示す図である。
端末からの呼接続要求S101には、端末のユーザID、端末の通信規格(通信方式)などの情報が含まれている。呼接続要求S101を受信後、基地局は、課金サーバに端末のユーザIDを通知し、課金サーバに対して、端末の帯域規制情報の入手要求S102を行う。課金サーバはユーザIDに対応する帯域規制情報を基地局に通知する(S103)。課金サーバから端末の帯域規制情報を受信した基地局は、基地局内のメモリ(図2の基地局の構成例では帯域規制情報判定部内15のメモリ)に格納する(S104)。
【0021】
基地局は、帯域規制情報、GWなどから帯域オーバ発生アラームを受信していればそのアラームの内容、基地局にあらかじめ設定されている帯域規制時間のテーブルの情報に基いて、帯域規制情報の判定を行い、帯域規制値を決定する(S105)。本実施例では、帯域オーバ発生アラームは、帯域のオーバ状況によって、軽度の帯域オーバ発生アラームと、重度の帯域オーバ発生アラームの2種類のアラームが用意されている。また、各基地局が持つ帯域規制時間のテーブルには、保守装置などからあらかじめ、基地局毎に、帯域規制を行うべき時間帯が通知されて設定されている。ステップ105の帯域規制情報の判定処理については、図8、図9で説明する。帯域規制情報の判定処理が行なわれ、帯域規制値が設定された後、設定された帯域規制値、端末と基地局間の無線通信品質にもとづいてスケジューリングが行なわれ、通信が開始される。
【0022】
その後、通信中に、GWなどから帯域重度オーバアラーム通知、帯域軽度オーバアラーム通知、帯域オーバアラーム解除通知を受信した場合や、または帯域規制時間テーブルに設定された、帯域規制の開始時刻、帯域規制の終了時刻となった時に(S108)、割り込み処理S109が発生し、再度帯域規制情報判定処理を行い、帯域規制値を更新、解除する(S110)。
【0023】
図4は、課金サーバの帯域規制情報テーブルの一例を示す図である。
図4の課金サーバの帯域規制情報テーブルには、端末毎(縦軸)に最大スループットに対する帯域規制情報が格納されている。帯域規制情報は、通常時と、帯域軽度アラーム通知時、帯域重度アラーム通知時の3通り設定されている。これらの帯域規制情報は、ユーザの契約情報や、前月の通信量、あるいは当月の通信量に応じて設定され課金サーバのテーブルに格納される。このテーブルは、課金サーバで管理する前述のユーザの契約情報や、前月の通信量、あるいは当月の通信量などに基いて自動生成してもよいし、外部から設定してもよい。
【0024】
図5に、基地局における帯域規制情報テーブルの一例を示す。
基地局の帯域規制情報テーブルには、基地局が課金サーバより入手した端末ごとの帯域規制情報を格納している。基地局は、呼接続要求があった端末毎に、呼接続要求に含まれる通信規格(通信方式)情報および課金サーバより入手した帯域規制情報を格納する。
【0025】
次に、基地局の帯域規制時間テーブルについて説明する。
図6は、基地局の帯域規制時間テーブルの一例を示す図である。
基地局の帯域規制時間テーブルには、帯域規制の開始時刻と終了時刻を指定して設定されている。この帯域規制時間の情報は、保守装置から各基地局に対してあらかじめ設定しておく。帯域規制の開始時刻、終了時刻で規定される帯域規制の時間帯は、図6に示すように複数設けてもよい。
【0026】
図7は、基地局の通信規格ごとの最大送信データ情報を格納したテーブルの一例を示す図である。
基地局は、基地局がサポートしている通信規格(通信方式)毎に、その通信規格において、端末が送信可能な最大送信可能データ量の情報を、テーブル格納して持っている。
【0027】
次に、帯域規制情報の判定処理の内容を説明する。
図8は、本発明の一実施例における基地局の帯域機情報判定処理の内容を説明するフローチャートである。
図8は、図3のシーケンス中の帯域規制情報判定S105あるいはS110における処理内容を示している。基地局は、端末からの呼接続要求時に課金サーバからその端末の帯域規制情報を入手して基地局の帯域規制情報テーブルに格納した後、現在の時刻が保守装置からあらかじめ設定された帯域規制時間帯内かどうかの判定を行う(S201)。
帯域規制時間帯内であればS202に進み、基地局の帯域規制情報テーブルに格納された帯域規制時間帯における帯域規制情報を読み出し、Aに代入する。ステップ201で、現在の時刻が帯域規制時間帯外であると判定した場合には、ステップ203の処理に進みAに1を代入する。
【0028】
帯域規制時間帯であるかどうかの判定後、帯域オーバの発生を通知するアラームの有無を確認する。軽度な帯域オーバが発生していることを示す帯域軽度オーバアラームが通知されている状況では、ステップ205に進み、基地局の帯域規制情報判定部のテーブルに格納された帯域軽度アラーム通知時の帯域規制情報を読み出し、Bに代入する。重度の帯域オーバが発生していることを示す帯域重度オーバアラームが通知されている状況では、ステップ206に進み、基地局の帯域規制情報判定部のテーブルに格納された帯域重度アラーム通知時の帯域規制情報を読み出し、Bに代入する。帯域オーバアラームが通知されていない状況では、ステップ207に進み、Bに1を代入する。
【0029】
次に、ステップ208において、AとBを比較して、最小値である方の値を帯域規制値として設定する。すなわち、図4ないし図6で示した帯域規制情報が課金サーバや基地局に設定されている場合には、帯域規制間帯で帯域オーバ発生アラームが通知されていない状況では、B = 1となり、Aの帯域規制時間帯の帯域規制値が最小値となり、Aに代入された値が有効になり、帯域規制値の判定結果として設定される。
一方で帯域規制時間帯ではないが、帯域オーバ発生アラームが通知されている場合、A = 1となり、Bの帯域オーバアラーム帯域規制値が最小値となり、それが有効になる、帯域規制値の判定結果として設定される。
また、帯域規制時間帯でありかつ帯域オーバ発生アラームも通知されている場合は、最小値に設定することで、規制の厳しい方の値が採用される。
【0030】
図9は本発明の一実施例における下りリンクのスケジューラ処理のフローチャートである。
基地局は、下りリンクのデータをGWから受信し、いったんバッファに保持する(S301)。下りリンクのスケジューリングでは、呼ごとの、残下り送信許可データ量を設定する。残下り送信許可データ量は、通信規格上の単位時間当たりの下りリンクの最大送信可能データ量に、図8のステップ208で決定した帯域規制値を乗算したものである。単位時間当たりの下り最大送信可能データ量は、図5に示したテーブルに格納された端末の通信規格(通信方式)の情報と、図7の通信規格における下り最大送信可能データ量から算出する。
【0031】
その後、以下の処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。本例では、単位時間は1秒としている。
まずは、無線品質情報、残データ量、QoS情報を元に、既存のスケジューリングアルゴリズムにより、リソースの割り当を行う。
GWから受信データがない場合、あるいは該当リソースブロックではいずれのユーザも十分な無線品質を得ることができず、割り当てユーザが存在しない場合は、そのリソースブロックを空きリソースブロックS306とする。バッファのデータがあり、対象リソースブロックにユーザ割り当てある場合、帯域規制呼かどうかの判定を行う。
呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量>0の場合は、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S309)。呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量=0の場合には、その呼にはリソース割り当てを行なわない。
呼が下り帯域規制対象呼ではない場合には、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S309)。ここまでの処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。
スロット内の全リソースブロックへのリソース割り当て完了しらた、スロットにリソース割り当てに従って下りデータを設定して、下りスロットを端末へ送信する。
残下り送信許可データ量は、単位時間経過ごとに初期化する。
【0032】
図10は本発明の一実施例における上りリンクのスケジューリング処理を説明するフローチャートである。
基地局は、端末からの上りリンクのリソース割り当て要求を受信し、保持する(S401)。基地局は、呼ごとの、残上り送信許可データ量を設定する。残上り送信許可データ量(初期値)は、規格上(通信方式)の単位時間当たりの上り最大送信可能データ量に、図8のステップ208で決定した帯域規制値を乗算したものである。規格上(通信方式)の単位時間当たりの上り最大送信可能データ量は、図5のテーブルに存在する端末の通信規格(通信方式)と図7の通信規格に対する上り最大送信可能データ量から算出する。
【0033】
その後、以下の処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。
まず、無線品質情報、残データ量、QoS情報を元にした既存のスケジューリングアルゴリズムにより、リソース割り当てを行う。該当リソースブロックではいずれのユーザも十分な無線品質を得ることができず、割り当てユーザが存在しない場合は、そのリソースブロックを空きリソースブロックS406とする。スケジューリングによりユーザに割当てたリソースブロックについてはステップ407の帯域規制呼であるかどうかの判定を行う。
呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量>0の場合は、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S409)。呼が下り帯域規制対象呼で、その呼の残下り送信許可データ量=0の場合には、その呼にはリソース割り当てを行なわない。
呼が下り帯域規制対象呼ではない場合には、その呼に割当てたデータ量の分、残下り送信許可データ量を減算し、リソース割り当てを実施する(S409)。ここまでの処理をスロット内の全リソースブロックに対し繰り返し行う。
【0034】
スロット内の全リソースブロックのリソース割当てが完了したら、端末に割り当て情報を報知情報で通知する(S411)。この報知情報に従って、端末は上り情報を割り当てられたリソースブロックに格納して、基地局に送信する。基地局は、端末から上りリンクのデータを受信して、GWに送信する。
基地局は、単位時間経過ごとに残上り送信許可データ量を初期化する。
【0035】
図11に、従来のスケジューラで生成した、下りリンクのリソース割り当ての例と、本実施例の下りリンクのリソース割り当て例を示す。
図11(a)に示す従来の帯域規制は、GWで行われているため、帯域規制を行っている呼については、基地局が受信するデータ量が減少する。そのため、無線リソースに空きがあるにもかかわらず、割り当てがされていないスロットが多い。
図11(b)に示す本実施例の帯域規制では、基地局のスケジューラで帯域規制することにより、より無線リソースの空きを少なくし、無線のリソースを有効活用できる。
【0036】
図12に、従来のスケジューラで生成した、上りリンクのリソース割り当ての例と、本実施例の上りリンクのリソース割り当て例を示す。
有線区間での許容帯域以上のデータがスロットに割り当てられている場合、GWでのデータ破棄が発生する可能性があり、データの破棄が発生した場合は再送が発生し効率が悪かった。
図12(b)は、本実施例のスケジューラで生成した、上りリンクのリソース割り当ての例である。本実施例のようにスケジューラで有線区間での帯域状況を考慮し無線リソースの割当てを行うことで、GWでのデータの破棄を減らし、再送処理による通信レートの低下を防ぐことができる。
【0037】
以上説明した実施例を用いると、基地局のスケジューラでリソースを割り当てる際に、帯域規制処理も行うことができる。一般に有線区間よりもボトルネックになりやすい無線区間で帯域規制を行うことにより、再送処理による輻輳を抑え、また、端末の規制条件によりきめ細かい制御を行うことで無線リソースは無駄なく割り当てることが可能である。帯域規制量は、最大スループットに対する比率で決定することが可能であり、カタログ等に、規制状況における最大スループットの上限値を載せることが可能になる。さらにまた、GWやLANスイッチなどの装置から基地局に対して有線区間のネットワークのトラヒック状況を通知することで上りデータを無線区間で帯域規制を実施し、有線区間で輻輳が発生した場合のトラヒックを抑えることが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ゲートウェイ
2 課金サーバ
3 IP網
4 LANスイッチ
5 基地局
6 端末
10 中継網
11 網インタフェース
12 データバッファ
13 スケジューラ
14 無線処理部
15 帯域規制情報判定部
16 無線品質情報判定部
17 アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末と無線によりデータの送受信を行う基地局における前記複数の端末への無線リソースの割り当て方法であって、
前記複数の端末からまたは前記複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された前記複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、
さらに、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、
前記複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、前記複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、
各無線リソース割り当ての上限値から既に割り当てをおこなった無線リソース値を減算し、各端末に対する無線リソースの割り当てが前記設定した上限値を超えないように各端末に対する無線リソースの割り当てを行うことを特徴とする無線リソース割り当て方法。
【請求項2】
前記アラーム通知は、輻輳状態が、軽度であることを示すアラームと、輻輳状態が重度であることを示すアラームがあり、輻輳状態に応じて、前記無線リソースの上限値を制御することを特徴とする請求項1記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項3】
前記基地局は、あらかじめ保守装置により設定された規制時間帯の情報が格納されたテーブルを有し、前記規制時間帯の情報が格納されたテーブルを参照し、現在の時刻が規制時間帯内であるかどうかの判定を行い、規制時間帯である場合には、規制時間帯用に設定された規制情報に基いて、無線リソースの上限値を設定することを特徴とする請求項1記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項4】
複数の端末と無線によりデータの送受信を行う基地局であって、
前記複数の端末からまたは前記複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された前記複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、
さらに、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、
前記複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、前記複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、
各無線リソース割り当ての上限値から既に割り当てをおこなった無線リソース値を減算し、各端末に対する無線リソースの割り当てが前記設定した上限値を超えないように各端末に対する無線リソースの割り当てを行うことを特徴とする基地局。
【請求項1】
複数の端末と無線によりデータの送受信を行う基地局における前記複数の端末への無線リソースの割り当て方法であって、
前記複数の端末からまたは前記複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された前記複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、
さらに、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、
前記複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、前記複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、
各無線リソース割り当ての上限値から既に割り当てをおこなった無線リソース値を減算し、各端末に対する無線リソースの割り当てが前記設定した上限値を超えないように各端末に対する無線リソースの割り当てを行うことを特徴とする無線リソース割り当て方法。
【請求項2】
前記アラーム通知は、輻輳状態が、軽度であることを示すアラームと、輻輳状態が重度であることを示すアラームがあり、輻輳状態に応じて、前記無線リソースの上限値を制御することを特徴とする請求項1記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項3】
前記基地局は、あらかじめ保守装置により設定された規制時間帯の情報が格納されたテーブルを有し、前記規制時間帯の情報が格納されたテーブルを参照し、現在の時刻が規制時間帯内であるかどうかの判定を行い、規制時間帯である場合には、規制時間帯用に設定された規制情報に基いて、無線リソースの上限値を設定することを特徴とする請求項1記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項4】
複数の端末と無線によりデータの送受信を行う基地局であって、
前記複数の端末からまたは前記複数の端末への呼接続要求を受信した際に予め設定された前記複数の端末に関する規制情報を受信して記憶し、
さらに、上位のネットワークにおける輻輳状態を示すアラームの有無を確認し、
前記複数の端末に関する規制情報および前記アラームの有無に基いて、前記複数の端末それぞれについて、無線リソース割り当ての上限値を設定し、
各無線リソース割り当ての上限値から既に割り当てをおこなった無線リソース値を減算し、各端末に対する無線リソースの割り当てが前記設定した上限値を超えないように各端末に対する無線リソースの割り当てを行うことを特徴とする基地局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−90224(P2013−90224A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230285(P2011−230285)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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