説明

無線周波数識別のために使用される選択的クローキング回路及びRFIDタグのクローキング方法

【課題】タグをクローキングすることを可能にするが、それがクローキングされているときもなお問い合わせを受ける。
【解決手段】RFIDタグ10のアンテナ42に対する出力38は、RFIDチップによって生成された論理コマンドCLOAKに応答して動作状態にされる直列スイッチによって、RFIDチップの平衡回路から切断される。スイッチを動作状態にすることは、RFIDタグの入力32を切断することなしに、RFIDタグのアンテナに対する出力34を切断する。従って、アンテナに対する出力は、RF問い合わせフィールドにおける残りのRFIDタグを識別できるようにするために十分な時間だけ切断される。しかしながら、アンテナの入力は接続されたままであり、クローキング期間30を含む任意の時間28において、タグのクローキングを解除することができかつ選択的にそれの信号を出力することを可能にするコマンドを受信することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数識別タグ又はラベルに関し、特に、RFIDトランスポンダの読み取り動作を援助するために用いられるクローキング(cloaking;電磁気的な隠蔽)回路に関する。
【背景技術】
【0002】
参照によってここに含まれた特許文献1において、RFIDチップによって生成された論理コマンドCLOAK(クローク)に応答して動作状態にされる直列のスイッチによりRFIDチップの平衡回路(balance)から切断される、RFIDタグ又はラベルのアンテナが説明されている。スイッチを活性化状態(又は動作状態)にすることは、RFIDタグのアンテナをRFIDチップの残りの部分から切断し、アンテナ端子間にわたる高インピーダンスの抵抗として作用する。RC回路は、CLOAK信号を活性化することによって充電され、その後、高インピーダンスの直列のアンチヒューズ漏れトランジスタ(antifuse leakage transistor)によって決定されるように、予め決められたRC時間期間の間に放電する。従って、アンテナは、RF問い合わせフィールドにおける残りのRFIDタグが識別されることを可能にするのに十分な時間だけ切断される。その一方、RFIDチップとそれの装荷物又は負荷物からアンテナを切断することは、予め決められた時間期間の間にRFIDタグを問い合わせの領域から電磁気的に除去するように、それの吸収及び散乱の実効開口をゼロ近くまで低下させる。ゆえに、問い合わされたタグは切断されたままであり、残りのタグに問い合わせるために用いられるRFフィールドに対して不干渉のままである。信号発生の手段としてか又はアンテナ共振構造に蓄えられたエネルギーを除去するためかのいずれかとして、アンテナを少なくとも部分的に短絡することによってタグのアンテナを離調することも知られている。
【特許文献1】米国特許第5,963,144号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、教示されていることは、タグへの電力が除去されている時間中であってもRFIDチップのフロントエンドを切断することである。このことは、データパス及び/又は電力入力に対する回路を開くことによって達成されうる。残念ながら、このことは、チップがクローク状態にあるときに読み取り機がタグと通信できないということを意味する。
【0004】
一例として、コンベヤのベルト上において、20秒間のクローク時間を有するタグに対して問い合わせが実行され、次いで当該タグがクローキングされるという場合がある。しかしながら、その後に、タグがコンベヤベルトの下流側に向かって搬送されるとき、ただし20秒間の時間期間以内に、ラベルを読み取る必要性のある場合がある。
【0005】
必要とされるものは、タグをクローキングすることを可能にするが、それがクローキングされているときもなお問い合わせを受けることが可能な回路及び方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アンテナを有しかつクローキングされるRFIDタグの改良物であって、スイッチと、上記スイッチに接続された論理回路とを備えた改良物として画成される。上記論理回路又はゲートは、通常動作の間にアンテナを介して信号を伝送する(又は通信する)ことを可能にし、それによってアンテナを介したRFIDタグからの信号の出力を可能にし、クローキング期間の間には、RFID出力を非動作状態(ディスエーブル)にする。RFIDタグのクローキングにも拘らずコマンド信号が連続的に受信可能であるように、RFIDタグには受信方向の接続(receiving connection)が提供される。
【0007】
RFIDタグは入力回路を含む。受信方向の接続は、スイッチの動作によって遮断されることのない、アンテナと入力回路との間の電気的な接続である。この電気的な接続は、アンテナと入力回路との間に接続されたダイオードを備える。スイッチは、アンテナと接地との間を接続する、スイッチングトランジスタのような接地スイッチである。スイッチは、通常動作の間の信号に従ってアンテナを選択的に接地することによって、アンテナを介して信号を伝送する。論理回路は、通常動作の間に、スイッチに信号を接続してアンテナを接地し、クローキング動作の間にスイッチからの信号を遮断する。さらに、クローキング動作の間には、アンテナを介してRFID回路に電力が供給される。
【0008】
本発明は以上の動作を実行するための方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以上に要約された本発明は添付の図面を参照し、これらの図面では、同様の構成要素は同様の参照番号で表されている。
【0010】
ここで、本発明は添付の図面において視覚化され、本発明とその様々な実施形態は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【0011】
本発明において、チップは読み取り機からの情報を受信しているときであってさえも応答できなくなるように、チップの出力は非動作状態にされる。そのような方式の利点は、クローク状態を克服してクローク期間の間でもタグ10が応答することを可能にしうるようなコマンドを導入できるということにある。クローク状態にあるいかなるタグ10もまだ検出されないならば、チップを動作状態にする通常のコマンドもなお用いられる。
【0012】
この改良物について議論する前に、まず、クローキングされたRFIDタグ10の動作に関するいくつかの基本的な背景情報について一般的に考察する。回路又はRFIDタグ10をクローキングする場合、実際上は、タグのアンテナ42をタグ10の残りの部分から切断する。この実際上の切断は、RFIDタグ10上の回路によって実行され、上記回路は、(1)各アンテナ端子と、タグ10を備えたチップの論理回路との間の直列のスイッチを形成し、(2)RFフィールドにおいて残りのタグを識別するために必要とされる時間と比較して十分な非常に長い時間期間の間、スイッチを開状態、又はアンテナが切断された状態に保持する手段を提供するように設計される。時間期間は、タグ10の電力が除去されているときであってさえもその機能を実行し続ける抵抗−キャパシタ回路の電圧の減衰によって決定される。説明される実施形態では、これらの長いRC時間コストの遅延を達成するために、高抵抗値の抵抗器としてアンチヒューズ構造が用いられる。以下に開示される本発明に係る改良なしには、RFIDタグ10のアンテナ42は、RFフィールドへの電力供給が存在しない場合であってかつRC遅延時間が終了(タイムアウト)するまで、電力オン/オフのサイクルの間に、切断されたままであるか、又は高インピーダンスが装荷されたままになる。時間遅延は、RFIDタグ10を製造する際に利用された正確な処理パラメータに依存し、典型的には2乃至100秒の範囲になりうる。
【0013】
このタイムアウト期間の間、RFIDチップによってアンテナ42の各端子に接続されたインピーダンスは、アンテナ42の回路が実際上に開かれたものとみなされるように、十分に高くなるまで増大される。このことは、アンテナ42とRFIDタグ10との両方において、RFエネルギーの吸収と反射を低下させる。また、このことは、各端子が回路において開かれているアンテナ42はいずれも、RFの問い合わせ及び電力フィールドに対して吸収及び散乱の最小の実効開口を有しているという、アンテナ理論の新規なアプリケーションに相当する。
【0014】
本発明に係るRFIDシステムの性能の優位点は、アンテナ42が実際上切断されている時間中に、タグ10がRFフィールドにおいてより見えにくくなり(すなわち電磁気的により検出しづらくなり)、あるいはクローキングされるということにある。クローキングされたアンテナ42は、他のタグと干渉する程度がより低くなり、次いで、これら他のタグに対して問い合わせ又は識別処理が実行される。さらに、各タグが順に識別されるとき、識別されたタグ自体をクローキングするように指示するために、符号化された信号が送信される。ゆえに、このことは、クローキングされた状態にあるときに、問い合わせ領域にある残りのタグを読み取るために、RFフィールドにおけるより多くのエネルギーを利用可能にできる。RFIDシステムの読み取り範囲内にある多数のタグを読み取って識別する全体的な容量は、この概念を適用する結果として大幅に改善される。
【0015】
次に、図1において、RFIDタグに含まれる回路10によって示されたように、上で説明されたクローキングシステムの改良物について考察する。通常動作(クロークが動作状態にされていないとき)において、論理積(AND)ゲート16の入力に接続された“クロークバー(cloak bar)”ノード12はハイレベルになる。ノード14における“出力”が(典型的には1乃至2マイクロ秒の間)ハイレベルになるときはいつでも、タグのアンテナが接続される入力パッド18は、短絡される。言い換えると、出力ノード14とクロークバーノード12との両方がハイレベルのときには、論理積ゲート16は、トランジスタ20のゲートに接続されたハイレベルの出力を有し、次いで、トランジスタ20は、パッド18を、ダイオード49を介して接地パッド22に接続する。このことは、パッド18に接続されかつ接地されたタグのアンテナ42からの後方散乱された信号が生成されるようにし、次いで上記後方散乱された信号がRFID読み取り機によって検出されるようにする。
【0016】
図2は、関連した信号のタイミングチャートであり、ここでは、入力信号の包絡線が線32で示され、ノード14における出力が線34で示され、クロークバーが線36で示されている。パルス38で示されたようにノード14において出力がハイレベルになっている通常動作28の間は、パット18上に後方散乱されたパルス40が提供され、すなわち、アンテナ42が瞬間的に接地される。しかしながら、クローキングされた期間30の間には、出力パルス38はアンテナ42から遮断される。クロークモード(クロークが動作状態にされているとき)において、“クロークバー”ノード12はローレベルになる。ゆえに、論理積ゲート16の出力は常にローレベルであり、RFIDタグ10から後方散乱された信号は存在しえない。
【0017】
しかしながら、図1に示されたように、入力パッド18は常に、RFIDタグ10の入力段44にダイオード24を介して接続され、タグ10への電力は、タグ電力回路46に接続されたダイオード26から供給され続けている。従って、タグ10の出力がクローキングされているときであってさえも、RFIDタグ10によってコマンドが検出され、読み取られ、かつ処理されうる。ここで、当該改良物を用いると、タグ10は、後に続く読み取り機による問い合わせのために、クローキングされていない状態に変化されることが可能である。クロークバーをハイレベルにし、かつノード14における出力によってアンテナ信号を制御できるようにするために、アンテナ42と、入力パッド18と、ダイオード24を介したタグへの入力回路44とを介して、任意の時刻にコマンドが送信され、検出され、かつ処理されることが可能である。
【0018】
本発明の精神及び範囲から離れることなく、当業者によって多くの改変物及び変形物が作成されうる。ゆえに、説明された実施形態は例示の目的のみで記述されたということと、説明された実施形態は、添付の請求の範囲によって画成される本発明を制限するように解釈されるべきではないということとが理解されなければならない。
【0019】
本発明とその様々な実施形態を説明するために本願明細書において用いられた用語は、それらの用語の一般に定義された語義の意味でのみ理解されるべきではなく、本願明細書における特別な定義によって、一般に定義された語義の範囲を超えた構造、材料又は動作を含むべきである。従って、ある構成要素が、本願明細書のコンテキストにおいて1つよりも多くの語義を含むように理解されうるならば、ある請求項におけるそれの使用は、明細書によって、及びその用語自体によって支持されるすべての可能な語義を包括的に含むように理解されなければならない。
【0020】
ゆえに、添付の請求の範囲に係る用語又は構成要素の定義は、本願明細書において、字義通りに記述された構成要素の組み合わせのみ含むのではなく、実質的に同様の方法で実質的に同様の機能を実行して実質的に同様の結果を得るための、すべての等価な構造、材料又は動作を含むように定義される。ゆえに、この意味で、2つ又はそれよりも多くの構成要素の等価な置き換えが、添付の請求項における構成要素のうちの任意の1つに対して実行可能であること、あるいは、単一の構成要素が、ある1つの請求項における2つ又はそれよりも多くの構成要素に対して置き換え可能であることが企図されている。
【0021】
当業者によって考えられる、既知であるかあるいは将来考案される、請求の範囲における内容からの実質的ではない変化は、請求の範囲内に同様に含まれるものとして明らかに企図される。ゆえに、当業者にとって既知の、あるいは将来知られる明らかな置き換えは、画成された構成要素の範囲内にあると定義される。
【0022】
従って、請求の範囲は、上で特に例示されかつ説明されたもの、概念的に等価なもの、明らかに置き換え可能なもの、また本発明の本質的な着想を本質的に含むものを包含するように理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】クローキング期間の間にコマンド信号が受信可能である状態にRFIDタグが残ったままであり、それに応じてタグがコマンドに基づいて動作状態にされる、説明された実施形態の簡単化された回路図である。
【図2】図1の回路の動作のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0024】
10…RFIDタグ、
12…クロークバーノード、
14…出力ノード、
16…論理積ゲート、
18…入力パッド、
20…トランジスタ、
22…接地パッド、
24,26,49…ダイオード、
28…通常動作、
30…クローキングされた期間、
32…入力信号の包絡線、
34…出力、
38…出力パルス、
40…後方散乱されたパルス、
42…タグのアンテナ、
44…入力段、
46…タグ電力回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、上記アンテナに接続された出力回路と、上記出力回路に接続されて上記出力回路を制御する論理回路と、上記アンテナに接続された入力回路とを備えたRFIDタグであって、
上記出力回路は、通常動作の間に、符号化された識別情報に従って上記アンテナを選択的に接地することによって、上記符号化された識別情報を上記アンテナを介して出力するように構成され、
上記論理回路は、
上記通常動作時において上記出力回路により情報を出力させることと、
クローキング期間として定義された予め決められた時間にわたって、上記アンテナがRFエネルギーの吸収及び反射を低下させているように、上記アンテナに接続されたインピーダンスを増大させることにより、上記出力回路による上記アンテナからの情報の出力を阻止することと
を選択的に実行するように構成され、上記クローキング期間は、いったん上記RFIDタグが上記符号化された識別情報を上記アンテナを介して送信し、読み取り機によって識別されたときに開始され、
上記入力回路は、上記クローキング期間においても、上記アンテナを介してコマンドを受信するように構成されたRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−226277(P2008−226277A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150731(P2008−150731)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【分割の表示】特願2002−562097(P2002−562097)の分割
【原出願日】平成14年1月16日(2002.1.16)
【出願人】(503263436)シングル・チップ・システムズ・コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】SINGLE CHIP SYSTEMS CORPORATION
【Fターム(参考)】