説明

無線基地局及び通信制御方法

【課題】TDD無線通信システムにおいて、上りのスループット低下を抑制しつつ、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができるようにする。
【解決手段】eNBは、PDSCHリソースと、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複するPUSCHリソースと、の対をUEに割り当て、当該PUSCHリソースを用いてUEから送信されたDMRSに基づいて、当該PDSCHリソースに対して適用すべきアンテナウェイトを導出する。eNBは、他のUEによる上りデータ送信の必要が生じたことに応じて、PUSCHリソースの割り当てを他のUEに変更した場合に、当該PUSCHリソースよりも過去の時間帯で且つ当該PDSCHリソースと重複する周波数帯でUEから送信された過去上り参照信号に基づいて、アンテナウェイトを導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDD無線通信システムにおいて、アダプティブアレイ制御を使用して無線通信を行う無線基地局及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(Third Generation Partnership Project)において規格が策定されているLTE(Long Term Evolution)に準拠する無線通信システム(LTEシステム)では、無線基地局と無線端末との間の無線通信において、無線基地局が無線リソースの割り当てを行っている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、時分割複信(TDD)方式のLTEシステム(以下、「TD−LTEシステム」と称する)では、周波数利用効率を高めると共に無線通信の品質を改善すべく、アレイアンテナを用いたアダプティブアレイ制御を無線基地局に導入することが検討されている。
【0004】
アダプティブアレイ制御は、自局配下の無線端末に対して当該アレイアンテナの指向性パターンのピークを向けるビームフォーミングと、他の無線基地局配下の無線端末に対して当該アレイアンテナの指向性パターンのヌルを向けるヌルステアリングと、を含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP TS 36.211 V8.7.0 “Physical Channels and Modulation”, MAY 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TD−LTEシステムにおいては、以下の手法でアダプティブアレイ制御を実現することが想定される。
【0007】
無線基地局は、上り参照信号を伝送するための上り無線リソースと、当該上り無線リソースと周波数帯の重複する下り無線リソースと、の対を無線端末に割り当てる。そして、当該無線端末から受信した上り参照信号に基づいて、当該無線端末に対して指向性パターンのピークを向けるようにアンテナウェイトを算出することによって、ビームフォーミングを行う。
【0008】
一方、他の無線基地局は、当該無線端末から受信した上り参照信号に基づいて、当該無線端末に対して指向性パターンのヌルを向けるようにアンテナウェイトを導出することによって、ヌルステアリングを行う。
【0009】
このように、アンテナウェイトの算出に使用する上り無線リソースと当該アンテナウェイトが適用される下り無線リソースとを無線端末毎に対称的に割り当てることによって、TD−LTEシステムにおけるアダプティブアレイ制御が実現される。
【0010】
しかしながら、このような方法では、上り無線リソースがアンテナウェイトの算出のために消費されてしまい、無線端末からの上りデータ(上りユーザデータ)の送信が必要な場合に、当該無線端末に対して上りデータ伝送用の上り無線リソースを割り当てることができなくなる事態が生じ得るため、上りのスループットが低下するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、TDD無線通信システムにおいて、上りのスループット低下を抑制しつつ、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる無線基地局及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0013】
本発明に係る無線基地局の特徴は、TDD無線通信システム(TD−LTEシステム10)において、アダプティブアレイ制御を使用して無線通信を行う無線基地局(eNB100−1)であって、下り無線リソース(PDSCHリソース)と、当該下り無線リソースと周波数帯が重複する上り無線リソース(PUSCHリソース)と、の対を無線端末に割り当てるリソース割当部(リソース割当部121)と、前記上り無線リソースを用いて前記無線端末から送信された上り参照信号(DMRS)に基づいて、前記下り無線リソースに対して適用すべきアンテナウェイト(下りウェイト)を導出するウェイト導出部(ウェイト導出部122)と、を有し、前記リソース割当部は、他の無線端末による上りデータ送信の必要が生じたことに応じて、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを他の無線端末に変更し、前記ウェイト導出部は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てが前記他の無線端末に変更された場合には、前記対をなす上り無線リソースよりも過去の時間帯で且つ前記下り無線リソースと重複する周波数帯で前記無線端末から送信された過去上り参照信号、又は前記対をなす上り無線リソースの時間帯で且つ前記下り無線リソースと隣接する周波数帯で前記無線端末から送信された隣接上り参照信号に基づいて、前記アンテナウェイトを導出することを要旨とする。ここで、「導出」とは、アンテナウェイトの「算出」に限らず、記憶部(メモリ)からのアンテナウェイトの「取得」も含む。
【0014】
このような特徴によれば、アンテナウェイトの導出に使用する上り無線リソースと当該アンテナウェイトが適用される下り無線リソースとを無線端末に対称的に割り当てる場合においても、他の無線端末からの上りデータ(上りユーザデータ)の送信が必要な場合には、当該上り無線リソースの割り当てを当該他の無線端末に変更することで、当該他の無線端末が上りデータを送信できるため、上りのスループット低下を抑制できる。
【0015】
また、当該上り無線リソースの割り当てを当該他の無線端末に変更しても、過去上り参照信号又は隣接上り参照信号に基づいてアンテナウェイトを導出することで、アンテナウェイトの精度を担保できるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0016】
よって、上述した特徴によれば、TDD無線通信システムにおいて、上りのスループット低下を抑制しつつ、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0017】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上述した特徴において、前記リソース割当部は、さらに、上りデータ専用のデータ専用上り無線リソースを割り当て可能であることを要旨とする。
【0018】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上述した特徴において、前記リソース割当部は、前記データ専用上り無線リソースが全て割り当て済みである場合で、且つ前記他の無線端末による上りデータ送信の必要が生じた場合に、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを前記他の無線端末に変更することを要旨とする。
【0019】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上述した特徴において、前記無線端末の移動速度に関する情報を取得する移動速度取得部をさらに有し、前記ウェイト導出部は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てが前記他の無線端末に変更された場合で、且つ前記無線端末の移動速度が高速であるとみなされる場合には、前記隣接上り参照信号に基づいて前記アンテナウェイトを導出することを要旨とする。
【0020】
本発明に係る無線基地局の他の特徴は、上述した特徴において、前記無線端末との間の周波数選択性フェージングに関する情報を取得する周波数選択性フェージング取得部をさらに有し、前記ウェイト導出部は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てが前記他の無線端末に変更された場合で、且つ前記無線端末との間の周波数選択性フェージングが大きいとみなされる場合には、前記過去上り参照信号に基づいて前記アンテナウェイトを導出することを要旨とする。
【0021】
このような特徴によれば、無線端末との間の周波数選択性フェージングが大きい場合には、隣接上り参照信号に基づいてアンテナウェイトを導出すると当該アンテナウェイトの精度が低いものとなることから、過去上り参照信号に基づいてアンテナウェイトを導出することで、アンテナウェイトの精度を担保できるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0022】
本発明に係る通信制御方法の特徴は、TDD無線通信システムにおいて、アダプティブアレイ制御を使用して無線通信を行う無線基地局における通信制御方法であって、下り無線リソースと、当該下り無線リソースと周波数帯が重複する上り無線リソースと、の対を無線端末に割り当てるリソース割当ステップと、前記上り無線リソースを用いて前記無線端末から送信された上り参照信号に基づいて、前記下り無線リソースに対して適用すべきアンテナウェイトを導出するウェイト導出ステップと、を有し、前記無線基地局は、前記リソース割り当てステップにおいて、他の無線端末による上りデータ送信の必要が生じたことに応じて、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを他の無線端末に変更し、前記無線基地局は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを前記他の無線端末に変更した場合には、前記ウェイト導出ステップにおいて、前記対をなす上り無線リソースよりも過去の時間帯で且つ前記下り無線リソースと重複する周波数帯で前記無線端末から送信された過去上り参照信号、又は前記対をなす上り無線リソースの時間帯で且つ前記下り無線リソースと隣接する周波数帯で前記無線端末から送信された隣接上り参照信号に基づいて、前記アンテナウェイトを導出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、TDD無線通信システムにおいて、上りのスループット低下を抑制しつつ、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる無線基地局及び通信制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態〜第5実施形態に係るTD−LTEシステムの構成図である。
【図2】第1実施形態〜第3実施形態に係るeNBのブロック図である。
【図3】第1実施形態〜第5実施形態に係るTD−LTEシステムで使用される無線フレームの構成を説明する。
【図4】第1実施形態に係るリソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るPUSCHリソース割り当て処理フローのフロー図である。
【図6】第1実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。
【図7】第2実施形態に係るリソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作を説明するための図である。
【図8】第2実施形態に係るPUSCHリソース割り当て処理フローのフロー図である。
【図9】第3実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。
【図10】第4実施形態に係るeNBのブロック図である。
【図11】第4実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。
【図12】第5実施形態に係るeNBのブロック図である。
【図13】第5実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照して、本発明の第1実施形態〜第5実施形態、及びその他の実施形態を説明する。以下の各実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0026】
(1)第1実施形態
(1.1)無線通信システムの構成
図1は、本実施形態に係るTD−LTEシステム10の構成図である。TD−LTEシステム10は、複信方式としてTDD方式が採用されるとともに、下り(DL:Downlink)の無線通信にはOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)、上り(UL:Uplink)の無線通信にはSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用される。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係るTD−LTEシステム10は、無線基地局(eNB:evolved NodeB)100−1と、eNB100−1に隣接して設置されているeNB100−2と、eNB100−1配下の無線端末(UE:User Equipment)200−1と、eNB100−1配下のUE200−2と、eNB100−2配下のUE300−1と、を有する。
【0028】
なお、eNB100−1配下のUE200を2つ図示しているが、実際には、より多くの数のUE200(UE200−3、UE200−4、…)がeNB100−1配下にあるとする。また、eNB100−2配下のUE300−1を1つ図示しているが、実際には、より多くの数のUE300(UE300−2、UE300−3、…)がeNB100−2配下にあるとする。
【0029】
各UE200は、eNB100−1によって形成されるセルをサービングセルとしており、eNB100−1によって無線リソースが割り当てられる。各UE300は、eNB100−2によって形成されるセルをサービングセルとしており、eNB100−2によって無線リソースが割り当てられる。無線リソースは、12個の連続するサブキャリアからなるリソースブロック(RB)により構成される。
【0030】
詳細には、各eNB100は、配下のUEに対して、上り制御データ用のPUCCH(Physical Uplink Control Channel)リソースと、上りユーザデータ用のPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)リソースと、下り制御データ用のPDCCH(Physical Downlink Control Channel)リソースと、下りユーザデータ用のPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)リソースと、を割り当てる。PUCCHリソース、PUSCHリソース、PDCCHリソース、PDSCHリソースのそれぞれは、1又は複数のRBにより構成される。
【0031】
各UE200及び各UE300は、サービングセルから割り当てられたPUSCHリソースを用いて、上りユーザデータ及び/又は復調参照信号(DMRS)を送信する。DMRSは、PUSCHの同期検波のための既知信号系列である。また、各UE200及び各UE300は、所定の周期でサウンディング参照信号(SRS)を送信する。SRSは、上りのチャネル品質を測定するための既知信号系列である。さらに、各UE200及び各UE300は、上りユーザデータの送信が必要である場合に、サービングセルに対してPUSCH割当要求を送信する。
【0032】
TD−LTEシステム10は、アレイアンテナを用いたアダプティブアレイ制御が各eNB100に導入されている。
【0033】
eNB100−1は、PDSCHリソースと、当該PDSCHリソースと周波数帯の重複するPUSCHリソースと、の対を各UE200に割り当てる。eNB100−1は、各UE200が当該PUSCHリソースを用いて送信するDMRSに基づいてアンテナウェイトを算出することで、各UE200に対してアレイアンテナの指向性パターンのピークを向けるビームフォーミングを行う。また、eNB100−1は、eNB100−2配下の各UE300から受信するDMRSに基づいてアンテナウェイトを算出することで、各UE300に対してアレイアンテナの指向性パターンのヌルを向けるヌルステアリングを行う。eNB100−1は、そのような指向性パターンにより、PDSCHリソースを用いて下りユーザデータを送信する。アンテナウェイトは、上り用のアンテナウェイトである上りウェイトと、下り用のアンテナウェイトである下りウェイトと、を含む。
【0034】
同様にして、eNB100−2は、PDSCHリソースと、当該PDSCHリソースと周波数帯の重複するPUSCHリソースと、の対を各UE300に割り当てる。eNB100−2は、各UE300が当該PDSCHリソースを用いて送信するDMRSに基づいてアンテナウェイトを算出することで、各UE300に対してアレイアンテナの指向性パターンのピークを向けるビームフォーミングを行う。また、eNB100−2は、eNB100−1配下の各UE200から受信するDMRSに基づいてアンテナウェイトを算出することで、各UE200に対してアレイアンテナの指向性パターンのヌルを向けるヌルステアリングを行う。eNB100−2は、そのような指向性パターンにより、PDSCHリソースを用いて下りデータを送信する。
【0035】
このように、アンテナウェイトの算出に使用するPUSCHリソースと当該アンテナウェイトが適用されるPDSCHリソースとをUE毎に対称的に割り当てることによって、TD−LTEシステム10におけるアダプティブアレイ制御が実現される。
【0036】
(1.2)無線基地局の構成
図2は、本実施形態に係るeNB100−1のブロック図である。eNB100−2はeNB100−1と同様に構成されるため、各eNB100を代表してeNB100−1の構成を説明する。
【0037】
図2に示すように、eNB100−1は、複数のアンテナ素子A1〜ANと、無線受信部110と、制御部120と、無線送信部130と、記憶部140と、ネットワーク通信部150と、を有する。
【0038】
複数のアンテナ素子A1〜ANは、アレイアンテナを構成し、無線信号の送受信に使用される。
【0039】
無線受信部110は、複数のアンテナ素子A1〜AN毎に受信信号が入力される。無線受信部110は、制御部120から上りウェイトが入力される。無線受信部110は、複数のアンテナ素子A1〜AN毎の受信信号に対して上りウェイトを乗算した後に合成する重み付け処理を行い、重み付け後の受信信号を制御部120に出力する。また、無線受信部110は、受信信号の増幅や、無線周波数(RF)帯からベースバンド(BB)帯への受信信号の変換(ダウンコンバート)等を行う。
【0040】
制御部120は、eNB100−1の各種の機能を制御する。制御部120は、リソース割当部121及びウェイト導出部122を含む。
【0041】
リソース割当部121は、自eNB配下の各UE200に対する無線リソース割り当てを行う。詳細には、リソース割当部121は、SRS用のSRSリソースと、PUCCHリソースと、PUSCHリソースと、PDCCHリソースと、PDSCHリソースと、を各UE200に割り当てる。
【0042】
リソース割当部121は、無線受信部110が受信するPUSCH割当要求に基づいて、上りユーザデータの発生有無をUE200毎に判断する。上りユーザデータが発生した場合には、リソース割当部121は、当該PUSCH割当要求を送信したUE200に対してPUSCHリソースを割り当てる。これに対し、上りユーザデータが発生していないUE200については、当該UE200に割り当てられるPDSCHリソースと周波数帯が重複するPUSCHリソースを割り当てる。
【0043】
リソース割当部121は、PUCCHリソース、PUSCHリソース、PDCCHリソース、PDSCHリソースについては、サブフレーム毎に割り当てを行い、割り当て情報をPDCCHによりUE200に通知するよう制御する。なお、SRSリソースについては、仕様上、サブフレーム毎の割り当て変更ができないため、割り当てを設定又は変更する必要が生じた場合に限り、割り当てパラメータを上位レイヤのシグナリングによりUE200に通知する。
【0044】
ウェイト導出部122は、無線受信部110が受信したDMRSに基づいて上りウェイトと下りウェイトとを導出する。詳細には、ウェイト導出部122は、自eNB配下のUE200からのDMRSと、他eNB配下のUEからのDMRSと、に基づいて、自eNB配下のUE200に対してピークを向け、かつ他eNB配下のUEに対してヌルを向けるための上りウェイト及び下りウェイトをRB毎に導出する。
【0045】
ウェイト導出部122は、UE200のPDSCHリソースに適用する下りウェイトを導出するに当たり、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複する当該UE200のPUSCHリソースが存在する場合、すなわち、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複するDMRSを受信している場合には、当該DMRSに基づいて下りウェイトを算出する。そして、ウェイト導出部122は、算出した下りウェイトを無線送信部130に出力するとともに、当該下りウェイトを、当該PUSCHリソース(DMRS)の周波数帯情報及びUE識別情報と対応付けて記憶部140に記憶させる。また、ウェイト導出部122は、適宜、SRSに基づいて下りウェイトを算出し、当該下りウェイトを、当該SRSの周波数帯情報及びUE識別情報と対応付けて記憶部140に記憶させる。
【0046】
これに対し、ウェイト導出部122は、UE200のPDSCHリソースに適用する下りウェイトを導出するに当たり、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複する当該UE200のPUSCHリソースが存在しない場合、すなわち、当該PUSCHリソースの割り当てが他のUE200に変更されている場合には、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複する過去のDMRS/SRSに基づく下りウェイトを記憶部140から取得する。
【0047】
無線送信部130は、制御部120から、下りユーザデータを含む送信信号と、下りウェイトとが入力される。無線送信部130は、送信信号を複数のアンテナ素子A1〜AN毎に分配し、各送信信号に対して下りウェイトを乗算する重み付け処理を行い、重み付け後の送信信号を複数のアンテナ素子A1〜ANに出力する。また、無線送信部130は、送信信号の増幅や、BB帯からRF帯への送信信号の変換(アップコンバート)等を行う。
【0048】
記憶部140は、制御部120による制御に用いられる各種情報を記憶する。本実施形態では、記憶部140は、過去のDMRS/SRSに基づき算出された下りウェイトを記憶する。
【0049】
ネットワーク通信部150は、コアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)との通信や隣接eNBとの通信を行う。
【0050】
(1.3)無線基地局の動作
次に、図3〜図6を用いて、本実施形態に係るeNB100−1の動作を説明する。以下においては、eNB100−1が配下の各UE200に対してリソース割り当てを行う動作を説明するが、eNB100−2もeNB100−1と同様の方法で配下の各UE300に対してリソース割り当てを行う。
【0051】
(1.3.1)無線フレーム構成
先ず、図3を用いて、TD−LTEシステム10で使用される無線フレームの構成を説明する。図3は、本実施形態に係るTD−LTEシステム10で使用される無線フレームの構成図である。なお、仕様上、TDD方式の無線フレーム構成(すなわち、サブフレームの構成パターン)は7パターン定められているが、ここでは、その中の1パターンを例に説明する。
【0052】
図3に示すように、1個の無線フレームは、時間軸上で10個のサブフレームによって構成される。各サブフレームは、1msecの時間長であり、時間軸上で2つのスロットにより構成される。また、各サブフレームは、時間軸上で14個のシンボルにより構成される。さらに、各サブフレームは、周波数軸上で50個程度のRBによって構成される。
【0053】
サブフレーム#0、サブフレーム#4、サブフレーム#5、サブフレーム#9のそれぞれは、下り専用のサブフレームである。下り専用のサブフレームは、時間軸上で、先頭部分がPDCCHリソースとして使用される制御領域であり、残りの部分がPDSCHリソースとして使用されるデータ領域である。
【0054】
サブフレーム#2、サブフレーム#3、サブフレーム#7、サブフレーム#8のそれぞれは、上り専用のサブフレームである。上り専用のサブフレームは、周波数軸上で、両端部分がPUCCHリソースとして使用される制御領域であり、残りの部分(中央部分)がPUSCHリソースとして使用されるデータ領域である。DMRSは、PUSCHリソースに含まれる各スロットの4シンボル目に配置される。よって、1つのサブフレームでは、2つのDMRSが送信されることになる。
【0055】
サブフレーム#1、サブフレーム#6のそれぞれは、上りと下りとの切り替えのための特別サブフレームである。特別サブフレームは、下りパイロット時間スロット(DwPTS)と、ガード期間(GP)と、上りパイロット時間スロット(UpPTS)と、を含む。例えば、DwPTSは1シンボル目から11シンボル目までであり、GPは12シンボル目であり、UpPTSは13及び14シンボル目である。なお、仕様上、特別サブフレームの構成(すなわち、特別サブフレームにおけるDwPTS,GP,UpPTSのシンボル数)は複数パターン定められているが、本実施形態では、その中の1パターンを例に説明する。
【0056】
本実施形態では、UpPTSはSRSの送信に使用される。eNB100−1は、UpPTSに含まれる各SRSリソースを配下の各UE200に割り当てる。
【0057】
(1.3.2)リソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作
次に、図4を用いて、本実施形態に係るリソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作を説明する。図4は、本実施形態に係るリソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作を説明するための図である。ここでは、時間軸上でサブフレーム#0〜#30、周波数軸上でRB#0〜#9について、eNB100−1がUE200−1〜UE200−6に対してリソース割り当てを行う動作を説明する。
【0058】
図4に示すように、eNB100−1は、サブフレーム#7のRB#1〜#3からなるPUSCHリソースと、サブフレーム#9のRB#1〜#3からなるPDSCHリソースと、の対をUE200−1に割り当てており、当該PDSCHリソースに適用する下りウェイトを当該PUSCHリソースのDMRSに基づいて算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−1”及び周波数帯情報“RB#1〜#3”と対応付けて記憶する。
【0059】
eNB100−1は、サブフレーム#7のRB#4及び#5からなるPUSCHリソースと、サブフレーム#9のRB#4及び#5からなるPDSCHリソースと、の対をUE200−2に割り当てており、当該PDSCHリソースに適用する下りウェイトを当該PUSCHリソースのDMRSに基づいて算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−2”及び周波数帯情報“RB#4及び#5”と対応付けて記憶する。
【0060】
eNB100−1は、サブフレーム#8のRB#5〜#7からなるPUSCHリソースと、サブフレーム#10及び#11のRB#5〜#7からなるPDSCHリソースと、の対をUE200−3に割り当てており、当該PDSCHリソースに適用する下りウェイトを当該PUSCHリソースのDMRSに基づいて算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−3”及び周波数帯情報“RB#5〜#7”と対応付けて記憶する。
【0061】
eNB100−1は、サブフレーム#8のRB#2〜#4からなるPUSCHリソースと、サブフレーム#10及び#11のRB#2〜#4からなるPDSCHリソースと、の対をUE200−5に割り当てており、当該PDSCHリソースに適用する下りウェイトを当該PUSCHリソースのDMRSに基づいて算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−5”及び周波数帯情報“RB#2〜#4”と対応付けて記憶する。
【0062】
eNB100−1は、サブフレーム#12〜#16についても同様にしてリソース割り当てを行う。
【0063】
ここで、eNB100−1は、サブフレーム#11でのUE200−6からのPUSCH割り当て要求に応じて、サブフレーム#17のRB#0〜#4からなるPUSCHリソースをUE200−6に割り当てる。サブフレーム#19のRB#2及び#3からなるPDSCHリソースがUE200−1に割り当てられることから、サブフレーム#17のRB#2及び#3からなるPUSCHリソースは、本来UE200−1に割り当てられるべきPUSCHリソースである。
【0064】
この場合、eNB100−1は、記憶している下りウェイトに対して、UE識別情報“UE200−1”及び周波数帯情報“RB#2及び#3”を検索キーとして検索する。その結果、記憶している下りウェイトの中から、サブフレーム#7のRB#2及び#3に基づいて算出した下りウェイトを取得する。そして、eNB100−1は、取得した下りウェイトを、サブフレーム#19のRB#2及び#3からなるPDSCHリソースに対して適用する。
【0065】
なお、本動作説明では、DMRSに基づいて算出された下りウェイトを記憶するケースを説明したが、SRSに基づいて算出された下りウェイトについても、DMRSに基づいて算出された下りウェイトと同様にして利用してもよい。
【0066】
(1.3.3)PUSCHリソース割り当て処理フロー
次に、図5を用いて、本実施形態に係るPUSCHリソース割り当て処理フローを説明する。図5は、本実施形態に係るPUSCHリソース割り当て処理フローのフロー図である。本フローは各UE200について実施される。
【0067】
図5に示すように、ステップS101において、リソース割当部121は、UE200からのPUSCH割り当て要求を受けているか否かを判定する。
【0068】
UE200からのPUSCH割り当て要求を受けている場合(ステップS101;YES)、ステップS102において、リソース割当部121は、PUSCH割り当て要求に応じてPUSCHリソースを割り当てる。
【0069】
UE200からのPUSCH割り当て要求を受けていない場合(ステップS101;NO)、ステップS103において、リソース割当部121は、当該UE200に割り当てるPDSCHリソースと周波数帯が重複するPUSCHリソースを、当該PDSCHリソースと対をなすPUSCHリソースとして割り当てる。
【0070】
(1.3.4)下りウェイト導出処理フロー
次に、図6を用いて、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローを説明する。図6は、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。本フローは各UE200について実施される。
【0071】
図6に示すように、ステップS201において、ウェイト導出部122は、UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがあるか否かを判定する。
【0072】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがある場合(ステップS201;YES)、ステップS202において、ウェイト導出部122は、当該対をなすPUSCHリソースのDMRSに基づいて下りウェイトを算出する。
【0073】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースが無い場合(ステップS201;NO)、ステップS203において、ウェイト導出部122は、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複する当該UE200の過去のPUSCHリソースのDMRSに基づいて算出された下りウェイトを取得する。
【0074】
(1.4)第1実施形態のまとめ
以上説明したように、TD−LTEシステム10においてアダプティブアレイ制御を使用して無線通信を行うeNB100−1は、PDSCHリソースと、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複するPUSCHリソースと、の対をUE200に割り当てるリソース割当部121と、当該PUSCHリソースを用いてUE200から送信されたDMRSに基づいて、当該PDSCHリソースに対して適用すべき下りウェイトを導出するウェイト導出部122と、を有する。リソース割当部121は、他のUE200による上りユーザデータ送信の必要が生じたことに応じて、PUSCHリソースの割り当てを他のUE200に変更し、ウェイト導出部122は、PUSCHリソースの割り当てが他のUE200に変更された場合には、当該PUSCHリソースよりも過去の時間帯で且つ当該PDSCHリソースと重複する周波数帯でUE200から送信された過去DMRS/SRSに基づいて、アンテナウェイトを導出する。
【0075】
このように、アンテナウェイトの導出に使用するウェイト算出用PUSCHリソースと当該アンテナウェイトが適用されるPDSCHリソースとをUE200に対称的に割り当てる場合であっても、他のUE200からの上りユーザデータの送信が必要な場合には、当該ウェイト算出用PUSCHリソースの割り当てを当該他のUE200に変更することで、当該他のUE200が上りユーザデータを送信できるため、上りのスループット低下を抑制できる。また、当該ウェイト算出用PUSCHリソースの割り当てを当該他のUE200に変更しても、当該PUSCHリソースよりも過去の時間帯で且つ当該PDSCHリソースと重複する周波数帯でUE200から送信された過去DMRS/SRSに基づいてアンテナウェイトを導出することで、アンテナウェイトの精度を担保できるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0076】
(2)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。本実施形態では、TD−LTEシステム10の構成及び無線フレームの構成は第1実施形態と同様であるが、eNB100の動作が第1実施形態とは異なる。
【0077】
本実施形態では、ウェイト算出用PUSCHリソース及びデータ専用PUSCHリソースの2種類のPUSCHリソースを設ける。ウェイト算出用PUSCHリソースは、第1実施形態で説明したPUSCHリソースと同様の取り扱いであるが、データ専用PUSCHリソースは、上りユーザデータ専用のPUSCHリソースである。
【0078】
(2.1)リソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作
次に、図7を用いて、本実施形態に係るリソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作を説明する。図7は、本実施形態に係るリソース割り当て動作及び下りウェイト導出動作を説明するための図である。ここでは、時間軸上でサブフレーム#0〜#30、周波数軸上でRB#0〜#9について、eNB100−1がUE200−1〜UE200−6に対してリソース割り当てを行う動作を説明する。
【0079】
図7に示すように、eNB100−1は、サブフレーム#8、#13、#18のそれぞれに含まれるRBをデータ専用PUSCHリソースとして使用する。
【0080】
詳細には、eNB100−1は、サブフレーム#1でのUE200−4からのPUSCH割り当て要求に応じて、サブフレーム#8のRB#0〜#7からなるPUSCHリソースをUE200−4に割り当てる。また、eNB100−1は、サブフレーム#1でのUE200−5からのPUSCH割り当て要求に応じて、サブフレーム#8のRB#8及び#9からなるPUSCHリソースをUE200−5に割り当てる。
【0081】
eNB100−1は、サブフレーム#7のRB#1及び#2からなるPUSCHリソースと、サブフレーム#9〜#11のRB#1及び#2からなるPDSCHリソースと、の対をUE200−1に割り当てており、当該PDSCHリソースに適用する下りウェイトを当該PUSCHリソースのDMRSに基づいて算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−1”及び周波数帯情報“RB#1及び#2”と対応付けて記憶する。
【0082】
また、eNB100−1は、サブフレーム#6のRB#3においてUE200−1からのSRSを受信しており、当該SRSに基づいて下りウェイトを算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−1”及び周波数帯情報“RB#3”と対応付けて記憶する。
【0083】
eNB100−1は、サブフレーム#7のRB#3〜#5からなるPUSCHリソースと、サブフレーム#9〜#11のRB#3〜#5からなるPDSCHリソースと、の対をUE200−2に割り当てており、当該PDSCHリソースに適用する下りウェイトを当該PUSCHリソースのDMRSに基づいて算出し、当該下りウェイトをUE識別情報“UE200−2”及び周波数帯情報“RB#3〜#5”と対応付けて記憶する。
【0084】
eNB100−1は、サブフレーム#12〜#16についても同様にしてリソース割り当てを行う。
【0085】
eNB100−1は、サブフレーム#11でのUE200−4からのPUSCH割り当て要求に応じて、サブフレーム#18のRB#0〜#7からなるPUSCHリソースをUE200−4に割り当てる。また、eNB100−1は、サブフレーム#11でのUE200−5からのPUSCH割り当て要求に応じて、サブフレーム#18のRB#8及び#9からなるPUSCHリソースをUE200−5に割り当てる。
【0086】
さらに、eNB100−1は、サブフレーム#11でのUE200−6からのPUSCH割り当て要求に応じて、サブフレーム#17のRB#0〜#4からなるPUSCHリソースをUE200−6に割り当てる。このように、サブフレーム#18のデータ専用PUSCHリソースが全て割り当て済みである場合には、PUSCH割り当て要求に応じてウェイト算出用PUSCHリソースを割り当てる。
【0087】
ここで、サブフレーム#19〜#21のRB#2及び#3からなるPDSCHリソースがUE200−1に割り当てられることから、サブフレーム#17のRB#2及び#3からなるPUSCHリソース(ウェイト算出用PUSCHリソース)は、本来UE200−1に割り当てられるべきPUSCHリソースである。
【0088】
この場合、eNB100−1は、記憶している下りウェイトに対して、UE識別情報“UE200−1”及び周波数帯情報“RB#2及び#3”を検索キーとして検索する。その結果、記憶している下りウェイトの中から、サブフレーム#7のRB#2に基づいて算出した下りウェイト及びサブフレーム#6のRB#3に基づいて算出した下りウェイトを取得する。そして、eNB100−1は、取得した下りウェイトを、サブフレーム#19〜#21のRB#2及び#3からなるPDSCHリソースに対して適用する。
【0089】
(2.2)PUSCHリソース割り当て処理フロー
次に、図8を用いて、本実施形態に係るPUSCHリソース割り当て処理フローを説明する。図8は、本実施形態に係るPUSCHリソース割り当て処理フローのフロー図である。本フローは各UE200について実施される。
【0090】
図8に示すように、ステップS301において、リソース割当部121は、UE200からのPUSCH割り当て要求を受けているか否かを判定する。
【0091】
UE200からのPUSCH割り当て要求を受けていない場合(ステップS301;NO)、ステップS303において、リソース割当部121は、当該UE200に割り当てるPDSCHリソースと周波数帯が重複するPUSCHリソースを、当該PDSCHリソースと対をなすPUSCHリソースとして割り当てる。
【0092】
UE200からのPUSCH割り当て要求を受けている場合(ステップS301;YES)、ステップS302において、リソース割当部121は、データ専用PUSCHリソースに空きがあるか否かを判定する。
【0093】
データ専用PUSCHリソースに空きがある場合(ステップS302;YES)、ステップS304において、リソース割当部121は、PUSCH割り当て要求に応じてデータ専用PUSCHリソースを割り当てる。
【0094】
データ専用PUSCHリソースに空きが無い場合(ステップS302;NO)、ステップS305において、リソース割当部121は、PUSCH割り当て要求に応じてウェイト算出用PUSCHリソースを割り当てる。
【0095】
(2.3)第2実施形態のまとめ
以上説明したように、本実施形態では、リソース割当部121は、上りユーザデータ専用のデータ専用PUSCHリソースを割り当て可能である。このように、上りユーザデータ専用のデータ専用PUSCHリソースを別途設けることで、上り無線リソースがアンテナウェイトの導出のために全て消費されてしまうことを防止できるため、上りのスループット低下を抑制できる。
【0096】
本実施形態では、リソース割当部121は、データ専用PUSCHリソースが全て割り当て済みである場合で、且つ他のUE200による上りユーザデータ送信の必要が生じた場合に、ウェイト算出用PUSCHリソースの割り当てをUE200から他のUE200に変更する。このように、データ専用PUSCHリソースが全て割り当て済みである場合で、且つ他のUE200による上りユーザデータ送信の必要が生じた場合に限り、ウェイト算出用PUSCHリソースの割り当てを他のUE200に変更することで、ウェイト算出用PUSCHリソースを極力確保しておくことができるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0097】
(3)第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。本実施形態では、TD−LTEシステム10の構成及び無線フレームの構成は第1実施形態と同様であるが、eNB100の動作が第1実施形態とは異なる。
【0098】
(3.1)下りウェイト導出処理フロー
次に、図9を用いて、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローを説明する。図9は、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。本フローは各UE200について実施される。
【0099】
図9に示すように、ステップS401において、ウェイト導出部122は、UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがあるか否かを判定する。
【0100】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがある場合(ステップS401;YES)、ステップS402において、ウェイト導出部122は、当該対をなすPUSCHリソースのDMRSに基づいて下りウェイトを算出する。
【0101】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースが無い場合(ステップS401;NO)、ステップS403において、ウェイト導出部122は、当該PDSCHリソースと周波数帯が隣接し、且つ当該PUSCHリソースと同時間帯(同サブフレーム)のPUSCHリソースのDMRSに基づいて下りウェイトを算出する。
【0102】
(3.2)第3実施形態のまとめ
以上説明したように、ウェイト導出部122は、PDSCHリソースと対をなすPUSCHリソースの割り当てが他のUE200に変更された場合には、当該PUSCHリソースの時間帯で且つ当該PDSCHリソースと隣接する周波数帯でUE200から送信された隣接DMRSに基づいて、アンテナウェイトを算出する。このように、当該対をなすPUSCHリソースの割り当てを他のUE200に変更しても、隣接DMRSに基づいてアンテナウェイトを算出することで、アンテナウェイトの精度を担保できるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0103】
(4)第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。
【0104】
(4.1)無線基地局の構成
図10は、本実施形態に係るeNB100−1のブロック図である。図10に示すように、本実施形態に係るeNB100−1は、UE200の移動速度に関する情報を取得する移動速度取得部123をさらに有する点で第1実施形態と異なる。移動速度に関する情報とは、例えば、UE200との間のドップラー周波数の測定値である。あるいは、UE200がGPSを有する場合には、GPSを用いて得られる移動速度情報を使用してもよい。
【0105】
(4.2)下りウェイト導出処理フロー
次に、図11を用いて、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローを説明する。図11は、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。本フローは各UE200について実施される。
【0106】
図11に示すように、ステップS501において、ウェイト導出部122は、UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがあるか否かを判定する。
【0107】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがある場合(ステップS501;YES)、ステップS502において、ウェイト導出部122は、当該対をなすPUSCHリソースのDMRSに基づいて下りウェイトを算出する。
【0108】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースが無い場合(ステップS501;NO)、ステップS503において、ウェイト導出部122は、当該UE200が高速移動しているか否かを判定する。例えば、ウェイト導出部122は、当該UE200との間のドップラー周波数の測定値と閾値との比較により、当該UE200が高速移動しているか否かを判定する。
【0109】
当該UE200が高速移動していると判定した場合(ステップS503;YES)、ステップS504において、ウェイト導出部122は、当該PDSCHリソースと周波数帯が隣接し、且つ当該PUSCHリソースと同時間帯(同サブフレーム)のPUSCHリソースのDMRS(隣接DMRS)に基づいて下りウェイトを算出する。
【0110】
当該UE200が高速移動していないと判定した場合(ステップS503;NO)、ステップS505において、ウェイト導出部122は、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複する当該UE200の過去のPUSCHリソースのDMRS又はSRSに基づいて算出された下りウェイトを取得する。
【0111】
(4.3)第4実施形態のまとめ
以上説明したように、本実施形態では、ウェイト導出部122は、PUSCHリソースの割り当てが他のUE200に変更された場合で、且つUE200の移動速度が高速であるとみなされる場合には、隣接DMRSに基づいてアンテナウェイトを導出する。このように、UE200の移動速度が高速である場合には、過去DMRS/SRSに基づいてアンテナウェイトを導出すると当該アンテナウェイトの精度が低いものとなることから、隣接DMRSに基づいてアンテナウェイトを導出することで、アンテナウェイトの精度を担保できるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0112】
(5)第5実施形態
次に、本発明の第5実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。
【0113】
(5.1)無線基地局の構成
図12は、本実施形態に係るeNB100−1のブロック図である。図12に示すように、本実施形態では、eNB100−1は、UE200との間の周波数選択性フェージングに関する情報を取得する周波数選択性フェージング取得部124をさらに有する点で第1実施形態と異なる。
【0114】
(5.2)下りウェイト導出処理フロー
次に、図13を用いて、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローを説明する。図13は、本実施形態に係る下りウェイト導出処理フローのフロー図である。本フローは各UE200について実施される。
【0115】
図13に示すように、ステップS601において、ウェイト導出部122は、UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがあるか否かを判定する。
【0116】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースがある場合(ステップS601;YES)、ステップS602において、ウェイト導出部122は、当該対をなすPUSCHリソースのDMRSに基づいて下りウェイトを算出する。
【0117】
UE200に割り当てるPDSCHリソースと対をなす当該UE200のPUSCHリソースが無い場合(ステップS601;NO)、ステップS603において、ウェイト導出部122は、当該UE200との間の周波数選択性フェージングが大きいか否かを判定する。例えば、ウェイト導出部122は、当該UE200との間の周波数選択性フェージングの測定値と閾値との比較により、当該UE200との間の周波数選択性フェージングが大きいか否かを判定する。
【0118】
当該UE200との間の周波数選択性フェージングが大きいと判定した場合(ステップS603;YES)、ステップS605において、ウェイト導出部122は、当該PDSCHリソースと周波数帯が重複する当該UE200の過去のPUSCHリソースのDMRS又はSRSに基づいて算出された下りウェイトを取得する。
【0119】
当該UE200との間の周波数選択性フェージングが大きくないと判定した場合(ステップS603;NO)、ステップS604において、ウェイト導出部122は、当該PDSCHリソースと周波数帯が隣接し、且つ当該PUSCHリソースと同時間帯(同サブフレーム)のPUSCHリソースのDMRS(隣接DMRS)に基づいて下りウェイトを算出する。
【0120】
(5.3)第5実施形態のまとめ
以上説明したように、本実施形態では、ウェイト導出部122は、ウェイト算出用PUSCHリソースの割り当てが他のUE200に変更された場合で、且つUE200との間の周波数選択性フェージングが大きいとみなされる場合には、過去DMRS/SRSに基づいてアンテナウェイトを導出する。このように、UE200との間の周波数選択性フェージングが大きい場合には、隣接DMRSに基づいてアンテナウェイトを導出すると当該アンテナウェイトの精度が低いものとなることから、過去DMRS/SRSに基づいてアンテナウェイトを導出することで、アンテナウェイトの精度を担保できるため、アダプティブアレイ制御を良好に機能させることができる。
【0121】
(6)その他の実施形態
上記のように、本発明は各実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0122】
例えば、上述した実施形態では、TD−LTEシステム10に対して本発明を適用する一例を説明したが、TDD方式及びアダプティブアレイ制御を採用する他のシステムに対して本発明を適用してもよい。
【0123】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。
【符号の説明】
【0124】
A1〜AN…アンテナ素子、10…LTEシステム、100…eNB、110…無線受信部、120…制御部、121…リソース割当部、122…ウェイト導出部、123…移動速度取得部、124…周波数選択性フェージング取得部、130…無線送信部、140…記憶部、150…ネットワーク通信部、200,300…UE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD無線通信システムにおいて、アダプティブアレイ制御を使用して無線通信を行う無線基地局であって、
下り無線リソースと、当該下り無線リソースと周波数帯が重複する上り無線リソースと、の対を無線端末に割り当てるリソース割当部と、
前記上り無線リソースを用いて前記無線端末から送信された上り参照信号に基づいて、前記下り無線リソースに対して適用すべきアンテナウェイトを導出するウェイト導出部と、を有し、
前記リソース割当部は、他の無線端末による上りデータ送信の必要が生じたことに応じて、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを他の無線端末に変更し、
前記ウェイト導出部は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てが前記他の無線端末に変更された場合には、前記対をなす上り無線リソースよりも過去の時間帯で且つ前記下り無線リソースと重複する周波数帯で前記無線端末から送信された過去上り参照信号、又は前記対をなす上り無線リソースの時間帯で且つ前記下り無線リソースと隣接する周波数帯で前記無線端末から送信された隣接上り参照信号に基づいて、前記アンテナウェイトを導出することを特徴とする無線基地局。
【請求項2】
前記リソース割当部は、さらに、上りデータ専用のデータ専用上り無線リソースを割り当て可能であることを特徴とする請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記リソース割当部は、前記データ専用上り無線リソースが全て割り当て済みである場合で、且つ前記他の無線端末による上りデータ送信の必要が生じた場合に、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを前記他の無線端末に変更することを特徴とする請求項2に記載の無線基地局。
【請求項4】
前記無線端末の移動速度に関する情報を取得する移動速度取得部をさらに有し、
前記ウェイト導出部は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てが前記他の無線端末に変更された場合で、且つ前記無線端末の移動速度が高速であるとみなされる場合には、前記隣接上り参照信号に基づいて前記アンテナウェイトを導出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の無線基地局。
【請求項5】
前記無線端末との間の周波数選択性フェージングに関する情報を取得する周波数選択性フェージング取得部をさらに有し、
前記ウェイト導出部は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てが前記他の無線端末に変更された場合で、且つ前記無線端末との間の周波数選択性フェージングが大きいとみなされる場合には、前記過去上り参照信号に基づいて前記アンテナウェイトを導出することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の無線基地局。
【請求項6】
TDD無線通信システムにおいて、アダプティブアレイ制御を使用して無線通信を行う無線基地局における通信制御方法であって、
下り無線リソースと、当該下り無線リソースと周波数帯が重複する上り無線リソースと、の対を無線端末に割り当てるリソース割当ステップと、
前記上り無線リソースを用いて前記無線端末から送信された上り参照信号に基づいて、前記下り無線リソースに対して適用すべきアンテナウェイトを導出するウェイト導出ステップと、を有し、
前記無線基地局は、前記リソース割り当てステップにおいて、他の無線端末による上りデータ送信の必要が生じたことに応じて、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを他の無線端末に変更し、
前記無線基地局は、前記対をなす上り無線リソースの割り当てを前記他の無線端末に変更した場合には、前記ウェイト導出ステップにおいて、前記対をなす上り無線リソースよりも過去の時間帯で且つ前記下り無線リソースと重複する周波数帯で前記無線端末から送信された過去上り参照信号、又は前記対をなす上り無線リソースの時間帯で且つ前記下り無線リソースと隣接する周波数帯で前記無線端末から送信された隣接上り参照信号に基づいて、前記アンテナウェイトを導出することを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−30859(P2013−30859A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163736(P2011−163736)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】