説明

無線基地局装置およびそのリソース割り当て方法

【課題】メッセージ処理を削減することにより、より処理能力の高い無線基地局装置を安価に提供することである。
【解決手段】呼処理制御機能部と複数の信号処理カードを有する信号処理機能部との間のメッセージ交換によりリソース割り当てカードを決定する無線基地局装置であって、前記呼処理制御機能部から前記信号処理機能部の前記複数の信号処理カードのそれぞれに対してリソース割り当て要求を送信し、該リソース割り当て要求に対するリソース割り当て応答が前記複数の信号処理カードのそれぞれから来た順番を記憶し、該順番に基づいてリソース割り当てを行う信号処理カードを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線基地局装置およびそのリソース割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1に記載のような従来の無線基地局装置の動作を図6のタイムチャートを参照して説明する。
【0003】
図6において、呼接続要求が呼処理制御機能部4に与えられると呼処理制御機能部4は、リソース割り当て要求メッセージ1を信号処理カード1、信号処理カード2および信号処理カード3にマルチキャスト送信する。
【0004】
リソース割り当て要求を受信した信号処理カード1、信号処理カード2および信号処理カード3は自カード内に空きリソースがあるかを検索し、呼処理制御機能部4に対しリソース割り当て応答メッセージ2a〜2cを送信する。このとき、各信号処理カード1、2および3内では、既に割り当てられている呼に関する処理よりも空きリソースの検索処理のタスク優先度を低く設定しておくことにより、リソース割り当て応答の返送時間に処理負荷に応じた差が発生することになる。すなわち、処理負荷の軽い信号処理カードからのリソース割り当て応答が最も早く返送されることになる。
【0005】
リソース割り当て応答2a〜2cを受信した呼処理制御機能部4は、最も早くリソース割り当て応答を受信した信号処理カード3に対しリソース割り当て処理メッセージ3を送信し、リソース割り当てを行う。
【0006】
次に呼接続要求が呼処理制御機能部4に与えられたときには、前記と同じ手順を再度実行することによりリソース割り当て処理を行う(11〜13)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−238214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような従来の無線基地局装置においては、次のような課題があった。
【0009】
第1の課題は、連続する呼接続要求に対して、個別にメッセージ交換を実施しているため、装置あたりのリソース数が多くなるとメッセージ処理負荷が増大し、呼処理能力を上げることが困難であることである。
【0010】
すなわち、従来の無線基地局装置におけるリソース割り当て方法は、呼の割り当てのたびに信号処理機能部への要求と応答のメッセージ処理を行うことにより、連続する呼の割り当てを処理していた。
【0011】
しかし、近年の移動体通信の高速、大容量化にともない、1台の無線基地局装置に実装される信号処理機能部のリソース数が増大し、メッセージ処理の負荷が大きくなってきている。そのため、無線基地局装置の処理性能を上げることが困難になっていた。
【0012】
本発明は上記の点にかんがみてなされたもので、その目的は、メッセージ処理を削減することにより、より処理能力の高い無線基地局装置を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するにあたり、本発明は、呼処理制御機能部にメッセージ到着順序を記憶する機能を持たせることにより、リソース割り当て時のメッセージ処理を削減し、処理性能の高い無線基地局装置を安価に提供する。
【0014】
すなわち、本発明は、移動体通信に用いられる無線基地局装置において、複数の信号処理機能部への呼の割り当て方法を呼処理制御機能部と信号処理機能部間のメッセージ交換により実行する際に、呼処理制御機能部が信号処理機能部からのメッセージ到着順序を一定時間記憶し、その記憶内容により呼の割り当て先となる信号処理機能部を決定することにより、呼の割り当て時のメッセージ処理を軽減したことを特徴とする無線基地局装置に関するものである。
【0015】
図1において、無線基地局装置1は上位の基地局制御装置2を介してネットワークと接続され、無線回線を通じて携帯端末3への呼接続サービスを提供する。無線基地局装置1は、呼処理制御機能部4、信号処理機能部5、伝送路処理機能部6、無線処理機能部7から構成される。呼処理制御機能部4は、携帯端末3からの呼接続要求に応じて、信号処理機能部5のリソースを呼に割り当てる処理を行う。信号処理機能部5は、3枚の信号処理カード51〜53により構成され、携帯端末3から受信した信号の復号および携帯端末に送信する信号の符号化処理を行う。また、信号処理カード51〜53は自カード内のリソースを管理し、呼処理制御機能部4からの要求に応じて、割り当て可否を応答する機能を持つ。伝送路処理機能部6は、ATMまたはIP伝送路を用いて基地局制御装置2との通信を行う。無線処理機能部7は、例えば3GPPで標準化されるW−CDMAの無線方式を用いて携帯端末3との通信を行う。
【0016】
本発明では、リソース割り当て処理のメッセージ到着順序を呼処理制御機能部で一定時間記憶し、その記憶内容により呼の割り当て先となる信号処理機能部を決定することにより、呼の割り当て時のメッセージ処理を軽減したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メッセージ処理の負荷を低減しているので、より処理能力の高い無線基地局装置を安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
[実施例の構成の説明]
図1を参照すると、本発明の一実施例としての無線基地局装置が示されている。
【0020】
図1において、無線基地局装置1は上位の基地局制御装置2を介してネットワークと接続され、無線回線を通じて携帯端末3へのサービスを提供する。
【0021】
無線基地局装置1は、呼処理制御機能部4、信号処理機能部5、伝送路処理機能部6、無線処理機能部7から構成される。
【0022】
呼処理制御機能部4は、携帯端末3からの呼接続要求に応じて、信号処理機能部5のリソースを呼に割り当てる処理を行う。
【0023】
信号処理機能部5は、3枚の信号処理カード51〜53により構成され、携帯端末3から受信した信号の復号および携帯端末に送信する信号の符号化処理を行う。また、信号処理カード51〜53は、自カード内のリソースを管理し、呼処理制御機能部4からの要求に応じて、割り当て可否を応答する機能を持つ。
【0024】
伝送路処理機能部6は、ATMまたはIP伝送路を用いて基地局制御装置2との通信を行う。無線処理機能部7は、例えば3GPPで標準化されるW−CDMAの通信方式を用いて携帯端末3との通信を行う。
[実施例の動作の説明]
次に図1の無線基地局装置の動作について、図2に示すタイムチャートおよび図3に示すリソース割り当て応答記憶内容を参照しながら説明する。
【0025】
図において、呼接続要求が呼処理制御機能部4に与えられると呼処理制御機能部4は、リソース割り当て要求メッセージ1を信号処理カード1、信号処理カード2および信号処理カード3にマルチキャスト送信する(T0)。
【0026】
リソース割り当て要求を受信した信号処理カード1、信号処理カード2および信号処理カード3は自カード内に必要な空きリソースがあるかを検索し、呼処理制御機能部に対しリソース割り当て応答メッセージ2a〜2cを送信する(T1〜T3)。このとき、各信号処理カード内では既に割り当てられている呼に関する処理よりも空きリソースの検索処理のタスク優先度を低く設定しておくことにより、リソース割り当て応答の返送時間に処理負荷に応じた差が発生することになる。すなわち、処理負荷の軽い信号処理カードからのリソース割り当て応答が最も早く返送されることになる。
【0027】
リソース割り当て応答2a〜2cを受信した呼処理制御機能部4は、リソース割り当て応答を受信するたびに、図3のT1〜T3のようにリソース割り当て応答を送信した信号処理カード番号を順番に記憶する。その後、呼処理制御機能部4はリソース割り当て応答記憶を参照し、最も早くリソース割り当て応答を受信した信号処理カード3に対しリソース割り当て処理メッセージ3を送信し、リソース割り当てを行うとともにリソース割り当て応答記憶から、信号処理カード3のエントリを削除する(T4)。
【0028】
次に呼接続要求が呼処理制御機能部4に与えられた時には、リソース割り当て応答記憶を参照し、残っているエントリがある場合には、その中で最も早くリソース割り当て処理メッセージを受信した信号処理カード1に対しリソース割り当て処理メッセージ4を送信しリソース割り当てを行うことができる(T5)。
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、メッセージ処理の負荷を低減しているので、より処理能力の高い無線基地局装置を安価に構成することができる。
【実施例2】
【0030】
次に本発明の他の実施例の動作を図4に示すタイムチャートおよび図5に示すリソース割り当て応答記憶内容を使用して説明する。
【0031】
本実施例では、リソース割り当て応答メッセージに空きリソース数を追加することにより、呼の種別により必要なリソース数の異なる場合のリソース割り当てを実現している。
【0032】
図において、必要リソース数2の呼接続要求が呼処理制御機能部4に与えられると呼処理制御機能部4は、リソース割り当て要求メッセージ1を信号処理カード1、信号処理カード2および信号処理カード3にマルチキャスト送信する(T0)。
【0033】
リソース割り当て要求を受信した信号処理カード1、信号処理カード2および信号処理カード3は自カード内に空きリソースがあるかを検索し、呼処理制御機能部に対し空きリソース数を内包したリソース割り当て応答メッセージ2a〜2cを送信する(T1〜T3)。このとき、各信号処理カード内では既に割り当てられている呼に関する処理よりも空きリソースの検索処理のタスク優先度を低く設定しておくことにより、リソース割り当て応答の返送時間に処理負荷に応じた差が発生することになる。すなわち、処理負荷の軽い信号処理カードからのリソース割り当て応答が最も早く返送されることになる。
【0034】
リソース割り当て応答2a〜2cを受信した呼処理制御機能部4は、リソース割り当て応答を受信するたびに、図5のT1〜T3のようにリソース割り当て応答を送信した信号処理カード番号および空きリソース数を順番に記憶する。
【0035】
その後、呼処理制御機能部4はリソース割り当て応答記憶を参照し、呼を割り当てるのに必要な空きリソースを持つ中で最も早くリソース割り当て応答を受信した信号処理カード1に対しリソース割り当て処理メッセージ3を送信し、リソース割り当てを行うとともにリソース割り当て応答記憶内の信号処理カード1のエントリから割り当てたリソース数を減算する(T4)。
【0036】
次に必要リソース数1の呼接続要求が呼処理制御機能部4に与えられた時には、リソース割り当て応答記憶を参照し、残っているエントリがある場合には、必要な空きリソース数を持つ中で最も早くリソース割り当て処理メッセージを受信した信号処理カード1に対しリソース割り当て処理メッセージ4を送信しリソース割り当てを行うことができる(T5)。
【0037】
また、その基本的構成は前述の通りであるが、信号処理機能部5を構成する信号処理カードの枚数は3枚である必要はなく、信号処理カードのもつリソース数を一定とした場合、信号処理カードの枚数が多くなるほど本発明の効果は大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例としての無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の無線基地局装置の動作を示すタイムチャートである。
【図3】図1の無線基地局装置のリソース割り当て応答記憶内容を示す図である。
【図4】他の実施例の無線基地局装置の動作を示すタイムチャートである。
【図5】他の実施例の無線基地局装置のリソース割り当て応答記憶内容を示す図である。
【図6】従来の無線基地局装置の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1 無線基地局装置
2 基地局制御装置
3 携帯端末
4 呼処理制御機能部
5 信号処理機能部
51 信号処理カード1
52 信号処理カード2
53 信号処理カードn
6 伝送路処理機能部
7 無線処理機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼処理制御機能部と複数の信号処理カードを有する信号処理機能部との間のメッセージ交換によりリソース割り当てカードを決定する無線基地局装置であって、
前記呼処理制御機能部から前記信号処理機能部の前記複数の信号処理カードのそれぞれに対してリソース割り当て要求を送信し、該リソース割り当て要求に対するリソース割り当て応答が前記複数の信号処理カードのそれぞれから来た順番を記憶し、該順番に基づいてリソース割り当てを行う信号処理カードを決定する
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
呼処理制御機能部と複数の信号処理カードを有する信号処理機能部との間のメッセージ交換によりリソース割り当てカードを決定する無線基地局装置であって、
前記呼処理制御機能部から前記信号処理機能部の前記複数の信号処理カードのそれぞれに対してリソース割り当て要求を送信し、該リソース割り当て要求に対するリソース割り当て応答が該信号処理カードの空きリソース数の情報を含み、該リソース割り当て要求に対する前記リソース割り当て応答が前記複数の信号処理カードのそれぞれから来た順番およびそれぞれの空きリソース数を記憶し、該順番および空きリソース数に基づいてリソース割り当てを行う信号処理カードを決定する
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項3】
前記リソース割り当て応答が来た順番が早い信号処理カードから順にリソース割り当てを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の無線基地局装置。
【請求項4】
呼処理制御機能部と複数の信号処理カードを有する信号処理機能部との間のメッセージ交換によりリソース割り当てカードを決定する無線基地局装置のリソース割り当て方法であって、
前記呼処理制御機能部から前記信号処理機能部の前記複数の信号処理カードのそれぞれに対してリソース割り当て要求を送信し、該リソース割り当て要求に対するリソース割り当て応答が前記複数の信号処理カードのそれぞれから来た順番を記憶し、該順番に基づいてリソース割り当てを行う信号処理カードを決定する
ことを特徴とする無線基地局装置のリソース割り当て方法。
【請求項5】
呼処理制御機能部と複数の信号処理カードを有する信号処理機能部との間のメッセージ交換によりリソース割り当てカードを決定する無線基地局装置のリソース割り当て方法であって、
前記呼処理制御機能部から前記信号処理機能部の前記複数の信号処理カードのそれぞれに対してリソース割り当て要求を送信し、該リソース割り当て要求に対するリソース割り当て応答が該信号処理カードの空きリソース数の情報を含み、該リソース割り当て要求に対する前記リソース割り当て応答が前記複数の信号処理カードのそれぞれから来た順番およびそれぞれの空きリソース数を記憶し、該順番および空きリソース数に基づいてリソース割り当てを行う信号処理カードを決定する
ことを特徴とする無線基地局装置のリソース割り当て方法。
【請求項6】
前記リソース割り当て応答が来た順番が早い信号処理カードから順にリソース割り当てを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の無線基地局装置のリソース割り当て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−212925(P2009−212925A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54965(P2008−54965)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】