説明

無線基地局装置のリンク確立方法

【課題】接続されているRETやTMA等の二次局を高速で検索することができ、二次局とのリンクの確立を高速で行うことができる無線基地局装置のリンク確立方法を提供する。
【解決手段】固有IDにおける1桁目を検査対象桁に指定し、当該検査対象桁にセットする数値を変更させながらXIDコマンドを順次送信し、送信したXIDコマンドに対応したXIDレスポンスを周辺機器3a〜3fのいずれか1台から受信した場合には、当該周辺機器を検出し、送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを周辺機器3a〜3fの内の複数台から受信した場合には、XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置を記憶すると共に、検査対象桁を次の桁に繰り上げてXIDコマンド送信ステップを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続されている二次局(Secondary Station)を検索してリンクを確立する無線基地局装置のリンク確立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線端末との間で無線通信を行うための無線基地局には、アンテナの仰角を制御するRET(電動リモートチルトユニット)やアンテナからの信号を増幅するTMA(タワーマウントアンプ)等の周辺機器が設けられており、RETやTMA等の周辺機器は、無線基地局と光ファイバで接続された送受信増幅器(RRH:Remote Radio Head)等の無線基地局装置によって監視、制御されるように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。無線基地局装置は、一次局(Primary Station)として、RETやTMA等の周辺機器は二次局としてそれぞれ位置づけられ、一次局である無線基地局装置は、二次局であるRETやTMAをHDLC(High-Level Data Link Control)のNRM(Normal Response Mode)にて監視、制御を行う。
【0003】
無線基地局装置は起動時に、RETまたはTMAに対し電源制御を実施すると共に、XID(Exchange ID)コマンド・アンド・レスポンス(一次局から二次局への要求コマンドと二次局から一次局への応答レスポンス)によって、アドレス割り当て、HDLCのパラメータ、AISG(Antenna Interface Standards Group)プロトコルのバージョン、3GPP(3rd Generation Partnership Project)プロトコルのバージョン等が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−188766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一次局である無線基地局装置は、さらに上位装置から事前にシステムパラメータで入手することで配下の二次局であるRETやTMAの検索も可能ではあるが、無線基地局装置を単独の製品として位置づけた場合は無線基地局装置単独で配下の二次局を検索する機能を搭載することで上位装置に依存しない形態が確立できる。
【0006】
しかしながら、配下に接続されている二次局を検索する具体的なデバイススキャンの手順が、AISG規格や3GPPの規程には記載はされておらず、デバイススキャン方法が確立されていないという問題点があった。
【0007】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接続されているRETやTMA等の二次局を高速で検索することができ、二次局とのリンクの確立を高速で行うことができる無線基地局装置のリンク確立方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る無線基地局装置のリンク確立方法は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
請求項1記載の無線基地局装置のリンク確立方法は、周辺機器に設定されている固有IDに基づいて前記周辺機器を検索してリンクを確立する無線基地局装置のリンク確立方法であって、前記固有IDにおける1桁目を検査対象桁に指定し、当該検査対象桁にセットする数値を変更させながらXIDコマンドを順次送信するXIDコマンド送信ステップと、送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを1台の前記周辺機器から受信した場合には、当該周辺機器を検出する検出ステップと、送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを複数台の前記周辺機器から受信した場合には、前記XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置を記憶すると共に、前記検査対象桁を次の桁に繰り上げて前記XIDコマンド送信ステップを実行させる衝突検出ステップと、検索した前記周辺機器の前記固有IDを用いてリンクを確立させるリンク確立ステップとを有することを特徴とする。
さらに、請求項2記載の無線基地局装置のリンク確立方法は、リンクが確立した前記周辺機器の前記固有IDを記憶する固有ID記憶ステップを有することを特徴とする。
さらに、請求項3記載の無線基地局装置のリンク確立方法は、リンクが切断され、リンク断状態の前記周辺機器に対して、前記XIDコマンド送信ステップ、前記検出ステップ及び前記衝突検出ステップを実行することなく、前記固有ID記憶ステップによって記憶した前記固有IDを用いてリンクを再確立させるリンク再確立ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の無線基地局装置のリンク確立方法は、上位装置からの二次局情報が無くとも、一次局である無線基地局装置で二次局であるRETやTMA等の周辺機器を検索でき、XIDレスポンスの衝突を利用することで接続されている二次局を高速で検索することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る無線基地局システムの実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す無線基地局装置のハードウェアの構成を示すハードウェア構成図である。
【図3】図1に示す無線基地局装置のソフトウェアの構成を示すソフトウェア構成図である。
【図4】本発明に係る無線基地局装置のデバイススキャン対象のデータ構成を示す図である。
【図5】本発明に係る無線基地局装置のデバイススキャン方法のロジックを説明するための説明図である。
【図6】本発明に係る無線基地局装置のデバイススキャン方法を説明するための説明図である。
【図7】本発明に係る無線基地局装置のデバイススキャン方法を説明するための説明図である。
【図8】従来の無線基地局装置におけるリンク復旧動作を示すシーケンス図である。
【図9】本発明に係る無線基地局装置におけるリンク復旧動作を示すシーケンス図である。
【図10】本発明に係る無線基地局装置における意図的なリンク断動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な本実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
本実施の形態が用いられる無線基地局システムは、図1を参照すると、無線端末との間で無線通信を行うための無線基地局1と、無線基地局1に光ファイバで接続された無線基地局装置2と、無線基地局装置2に接続された6台の周辺機器3a〜3fで構成されている。無線基地局装置2は、一次局(Primary Station)として、周辺機器3a〜3fは二次局(Secondary Station)としてそれぞれ位置づけられ、無線基地局1は、無線基地局装置2の上位装置として位置づけられる。
【0012】
無線基地局装置2は、送受信増幅器(RRH:Remote Radio Head)等のプログラム制御によって動作する装置であり、ハードウェア構成は、図2に示すように、CPU21と、ROM22と、RAM23と、DSP(Digital Signal Processor)24と、FPGA(Field Programmable Gate Array)25とがバス26によって接続されている。また、ソフトウェア構成は、図3に示すように、図2に示すハードウェア構成上で、HDLC(High-Level Data Link Control)/NRM(Normal Response Mode)、HDLC NRM Manager及び様々なアプリケーションが動作されるようになっている。
【0013】
無線基地局装置2は、配下の二次局、すなわち接続されている周辺機器3a〜3fを検索する機能を有し、接続されている周辺機器3a〜3fをHDLC/NRMにて監視、制御を行うように構成されている。まず、Layer2のリンク確立前に、配下に接続されている周辺機器3a〜3fをXID(Exchange ID)コマンド・アンド・レスポンス(一次局から二次局への要求コマンドと二次局から一次局への応答レスポンス)を用いたデバイススキャンで検索する。その後、XIDコマンド・アンド・レスポンスによって、アドレス割り当てと、HDLCのパラメータと、AISG(Antenna Interface Standards Group)プロトコルのバージョンと、3GPP(3rd Generation Partnership Project)プロトコルのバージョンが決定され、一次局である無線基地局装置2と二次局である周辺機器3a〜3fとのリンクが確立される。
【0014】
周辺機器3a〜3fは、アンテナの仰角を制御するRET(電動リモートチルトユニット)やアンテナからの信号を増幅するTMA(タワーマウントアンプ)等である。なお、本実施の形態では、無線基地局装置2に6台の周辺機器3a〜3fが接続されるように構成したが、無線基地局装置2に接続させる周辺機器の台数は何台であっても良い。
【0015】
次に、無線基地局装置2による周辺機器3a〜3fに対するデバイススキャンのロジックについて図4及び図5を参照して説明する。
周辺機器3a〜3fには、図1及び図4を参照すると、2桁のベンダーコードと、17桁のシリアルナンバーとからなる19桁の固有ID(UniqueID)がそれぞれ設定されている。図5を参照すると、無線基地局装置2は、図4に示すようなXIDコマンドの送信フレーム内の19オクテットからなるデータ構成に固有IDをセットし(ステップS1)、XIDコマンドを二次局に対して送信する。XIDコマンドを受け取った周辺機器3a〜3fは、固有IDの照合を行い(ステップS2)、照合結果を判断する(ステップS3)。照合結果がOK、すなわち固有IDが一致した場合には、周辺機器3a〜3fは、無線基地局装置2にXIDレスポンスを通知し、照合結果がNG、すなわち固有IDが不一致の場合には、XIDレスポンスを通知せず無応答とする(ステップS4)。XIDレスポンスを受け取った無線基地局装置2は、XIDレスポンスを通知してきた周辺機器3a〜3fのいずれかを検出することができる(ステップS5)。
【0016】
次に、無線基地局装置2が制御する具体的なデバイススキャン方法について図6及び図7を参照して説明する。
無線基地局装置2は、検査対象オクテットを「0xFF」にてマスク指定とすると共に、検査対象のオクテットにセットする値を「0、1、2〜8、9」と巡回させながら、XIDコマンドを周辺機器3a〜3fに送信し、周辺機器3a〜3fからのXIDレスポンスの受信を待機する。このように検査対象オクテットをマスク指定とすることは、固有IDにおける検査対象桁を指定することになり、固有IDが桁毎に照合されることになる。所定時間以内に周辺機器3a〜3fの内の1台からXIDレスポンスを受信した場合には、XIDレスポンスを通知してきた周辺機器3a〜3fのいずれかを検出する。また、所定時間以内に周辺機器3a〜3fの内の複数台からXIDレスポンスを受信した場合には、XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置、すなわち検査対象オクテットにセットした数値を記憶する。さらに、所定時間以内にXIDレスポンスを受信できなかった場合には、タイムアウトと認識し、セットする値をインクリメントして次のXIDコマンドを送信する。このようにして検査対象オクテットを変えながら接続されている全ての周辺機器3a〜3fが検出されるまでデバイススキャンを実施する。
【0017】
ついで、簡単検出例としてベンダーコード「KE」と、シリアルナンバー「00000000000000003」とからなる固有IDを有する1台の周辺機器3gが無線基地局装置2に接続されている例について図6を参照して説明する。
(1)無線基地局装置2は、0オクテットを検査対象オクテットとしてマスク指定すると共に、0オクテットのデータ「0x00」をセットしたXIDコマンドを周辺機器3gに送信する。
(2)周辺機器3gは、0オクテットのデータ、すなわち固有IDの1桁目が「0x03」なので、照合結果がNGとなってXIDレスポンスを通知せず無応答になる。
(3)無線基地局装置2は、タイムアウトを認識し、0オクテットを検査対象オクテットとしてマスク指定すると共に、0オクテットのデータ「0x01」をセットしたXIDコマンドを周辺機器3gに送信する。
(4)周辺機器3gは、0オクテットのデータが「0x03」なので、照合結果がNGとなってXIDレスポンスを通知せず無応答。
(5)無線基地局装置2は、タイムアウトを認識し、0オクテットを検査対象オクテットとしてマスク指定すると共に、0オクテットのデータ「0x02」をセットしたXIDコマンドを周辺機器3gに送信する。
(6)周辺機器3gは、0オクテットのデータが「0x03」なので、照合結果がNGとなってXIDレスポンスを通知せず無応答。
(7)無線基地局装置2は、タイムアウトを認識し、0オクテットを検査対象オクテットとしてマスク指定すると共に、0オクテットのデータ「0x03」をセットしたXIDコマンドを周辺機器3gに送信する。
(8)周辺機器3gは、0オクテットのデータが「0x03」なので、照合結果がOKとなってXIDレスポンスを無線基地局装置2に通知する。
(9)無線基地局装置2は、1台の周辺機器3gからXIDレスポンスを受信することで、周辺機器3gを検出してデバイススキャンを終了する
本例では、XIDコマンドの送信回数は、4回となり、デバイススキャン周期を200msとすると、0.8秒間でデバイススキャンが終了することになる。
【0018】
ついで、図1に示すように6台の周辺機器3a〜3fが無線基地局装置2に接続されている例について図7を参照して説明する。
(1)無線基地局装置2は、0オクテットを検査対象オクテットとしてマスク指定すると共に、0オクテットのデータ「0x00」〜「0x07」をセットしたXIDコマンドを周辺機器3a〜3fに順次送信する。
(2)周辺機器3a〜3fには、0オクテットのデータ、すなわち固有IDの1桁目が「0x00」〜「0x07」のものは存在しないので、全ての周辺機器3a〜3fにおいて照合結果がNGとなってXIDレスポンスが通知される無応答になる。
(3)無線基地局装置2は、タイムアウトを認識し、0オクテットを検査対象オクテットとしてマスク指定すると共に、0オクテットのデータ「0x08」をセットしたXIDコマンドを周辺機器3a〜3fに送信する。
(4)周辺機器3b、3d、3fは、0オクテットのデータが「0x08」なので、照合結果がOKとなってXIDレスポンスを無線基地局装置2に通知する。
(5)無線基地局装置2は、周辺機器3b、3d、3fからXIDレスポンスを受信することになり、XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置、すなわち検査対象オクテット(0オクテット)にセットした数値「0x08」を記憶すると共に、検査対象オクテットを次のオクテット(1オクテット)に繰り上げる。
(6)1オクテット以降も同様にデバイススキャンを実施する。なお、1オクテット以降のデバイススキャンにおいては、図7に示すように、先に照合したオクテットにXIDレスポンスの衝突が検出された衝突位置がセットされ、検査対象オクテットと、先に照合したオクテットとがマスク指定されて照合される。例えば、検査対象オクテットが3オクテットである場合には、0オクテットに「0x08」が、1、2オクテットに「0x09」がそれぞれセットされ、0〜3オクテットが指定される。
(7)その結果、図7に示すように、無線基地局装置2は、周辺機器3f、3d、3b、3e、3c、3aの順に検出してデバイススキャンを終了する。
なお、矢印Aで示すように、検査対照オクテットがシリアルナンバーの最終桁である最終オクテット(16オクテット)であり、セットしたデータが「0x09」まで達した場合には、無線基地局装置2は、検査対照オクテットを固有IDの1桁目である最初の0オクテットに初期化して、記憶しているデータ「0x08」をセットしたXIDコマンドを送信する。このように衝突の検出によって記憶しているデータはデバイススキャンの間はクリアされることなく、電源OFF時のみにクリアされる。
本例では、XIDコマンドの送信回数は、196回となり、デバイススキャン周期を200msとすると、39.2秒間でデバイススキャンが終了することになる。
【0019】
このようにデバイススキャンが終了して二次局(周辺機器3a〜3f)が検出、すなわち二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDが取得されると、無線基地局装置2と検出された周辺機器3a〜3fとの間でXIDコマンド・アンド・レスポンスがそれぞれ実施され、リンクが確立される。
図8に示す(b)リンク断状態を参照すると、一次局(無線基地局装置2)は、固有IDを用いたXIDコマンド・アンド・レスポンスである、(1)アドレス割り当てコマンド・アンド・レスポンスと、(2)HDLCパラメータコマンド・アンド・レスポンスと、(3)AISGプロトコルバージョンコマンド・アンド・レスポンスと、(4)3GPPプロトコルバージョンコマンド・アンド・レスポンスを実施する。
(1)アドレス割り当てコマンド・アンド・レスポンス
本コマンド・アンド・レスポンスは、デバイススキャンが完了し、固有IDが取得された二次局(周辺機器3a〜3f)に対してアドレス割り当てを一次局(無線基地局装置2)から実施する。アドレス割り当てコマンドの設定によって、本コマンド以降で使用するHDLC個別アドレスが二次局(周辺機器3a〜3f)に付与される。
(2)HDLCパラメータコマンド・アンド・レスポンス
本コマンド・アンド・レスポンスは、リンク確立後に一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)とで使用する各々のパラメータ(例えば、データ受信バッファサイズや送信バッファサイズ等)の設定を実施する。
(3)AISGプロトコルバージョンコマンド・アンド・レスポンス
本コマンド・アンド・レスポンスは、一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)とで使用される各々のAISGプロトコルのプ口トコルバージョンの交換処理を実施する。
(4)3GPPプロトコルバージョンコマンド・アンド・レスポンス
本コマンド・アンド・レスポンスは、一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)とで使用される3GPPプロトコルのプ口トコルバージョンの交換処理を実施する。
【0020】
次に、一次局(無線基地局装置2)は、リンク確立制御コマンド(SNRM:Set Normal Response Mode)を二次局(周辺機器3a〜3f)に送信する。このリンク確立制御コマンド(SNRM)に対し、二次局(周辺機器3a〜3f)から一次局(無線基地局装置2)に応答レスポンス{UA:Unnumbered Acknowledgement)が正常に返却されると、一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)との間のリンクが確立され、HDLCリンク確立状態に移行される。リンク確立後は、一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)との間で定期的にヘルスチェックコマンド(PR)とヘルスチェックレスポンス(RR)とを交換することでリンク状態が保持される。
【0021】
次に、本実施の形態において、一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクが切断された後、再びリンクを確立させるリンク復旧動作について図8及び図9を参照して詳細に説明する。
一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクが確立している、図8に示す(a)リンク中状態において、一次局(無線基地局装置2)から二次局(周辺機器3a〜3f)に対してデータ送信(Iフレーム)等を行ったにもかかわらず、二次局(周辺機器3a〜3f)から一次局(無線基地局装置2)への送信応答を確認できず無応答である場合には、一次局(無線基地局装置2)は、任意数再送制御を実施する。再送制御にもかかわらず二次局(周辺機器3a〜3f)から応答を確認できない場合には、一次局(無線基地局装置2)は、無応答の二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクを切断し、リンク断状態に移行させる。
【0022】
従来から行われているリンク復旧動作では、まず、図8に示す(b)リンク断状態において、二次局(周辺機器3a〜3f)の存在確認シーケンスが実行される。一次局(無線基地局装置2)は、XIDコマンド・アンド・レスポンスによるデバイススキャンによって二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDを取得する。二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDが取得されると、一次局(無線基地局装置2)は、固有IDを用いたXIDコマンド・アンド・レスポンスによって、二次局(周辺機器3a〜3f)との間で用いるアドレスの割り当てと、HDLCのパラメータと、AISGプロトコルのバージョンと、3GPPプロトコルのバージョンを決定する。次に、一次局(無線基地局装置2)は、二次局(周辺機器3a〜3f)に対して、リンクの確立を要求するリンク確立コマンド(SNRM:Set Normal Response Mode)を送信し、送信したリンク確立コマンド(SNRM)の受け入れを応答するリンク確立レスポンス(UA:Unnumbered Acknowledgement)を二次局(周辺機器3a〜3f)から受信すると、二次局(周辺機器3a〜3f)との間のリンクを確立する。なお、図8に示す(c)リンク中状態において、一次局(無線基地局装置2)は、ヘルスチェックコマンド(RR:Receive Ready)を二次局(周辺機器3a〜3f)に送信し、二次局(周辺機器3a〜3f)からヘルスチェックレスポンス(RR:Receive Ready)を受信することで、二次局(周辺機器3a〜3f)の正常/異常を監視する。
【0023】
ここで、リンク断状態に制御するデバイススキャンに要する時間が問題となる。上述のように本実施の形態のデバイススキャン方法によってデバイススキャンに要する時間を短くすることが可能になるものの、リンク断状態でデバイススキャンを実行すると、リンク断状態からリンク中状態への移行に時間を要し、どうしてもリンク断状態の時間が長くなってしまう。そこで本実施の形態では、一次局(無線基地局装置2)は、RAM23にリンクが切断された二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDを記憶しておくように構成されている。
【0024】
図9に示す(d)リンク断状態を参照すると、リンク切断後、リンクが切断された二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDを記憶されている場合には、一次局(無線基地局装置2)は、リンクが切断された二次局(周辺機器3a〜3f)に対して、デバイススキャンを行うことなく、記憶している固有IDを用いて、アドレス割り当てコマンドを二次局(周辺機器3a〜3f)に送信する。そして一次局(無線基地局装置2)は、二次局(周辺機器3a〜3f)からのアドレス割り当てレスポンスが受信されると、デバイススキャンを実行した場合と同様に、HDLCのパラメータと、AISGプロトコルのバージョンと、3GPPプロトコルのバージョンを決定し、リンクを確立させる。なお、図9に示す(a)、(c)リンク中状態の動作は、従来と同様である。
【0025】
また、本実施の形態の一次局(無線基地局装置2)は、意図的に二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクを切断する機能を有する。意図的なリンクの切断は一次局(無線基地局装置2)が自発的に行う場合と、上位装置からの指示で一次局(無線基地局装置2)が行う場合がある。意図的に二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクを切断する理由は、一次局(無線基地局装置2)と二次局(周辺機器3a〜3f)間の回線上のトラフィックを低減させることが大きな目的である。ここでの意図的なリンク断動作について図10を参照して詳細に説明する。
【0026】
一次局(無線基地局装置2)が意図的に二次局(周辺機器3a〜3f)を切断する場面が生じた場合、一次局(無線基地局装置2)は切断コマンド(DISC)を二次局(周辺機器3a〜3f)へ送信する。二次局(周辺機器3a〜3f)は切断コマンド(DISC)を受信すると切断応答レスポンス(UA)を送信する。一次局(無線基地局装置2)は、切断応答レスポンス(UA)を受信することで該当する二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクを切断し、リンク断状態に移行させる。このように意図的に二次局(周辺機器3a〜3f)とのリンクを切断した場合でも、本実施の形態では、一次局(無線基地局装置2)は、リンクが切断された二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDを記憶しているため、図9に示すように、デバイススキャンを行わない方式でリンク再確立を高速に実施することが可能となる。また、リンクの再確立は、一次局(無線基地局装置2)が自発的に行う場合と、上位装置からの指示で行う場合との両方が可能である。
【0027】
以上のように本実施の形態によれば、リンクが切断された二次局(周辺機器3a〜3f)の固有IDを記憶しておくように構成することにより、デバイススキャンを行うことなく、リンク断状態からリンクを再確立させることができ、リンク断状態の時間を最小限に留めることが可能となる。
【0028】
なお、本実施の形態では、固有IDを構成するシリアルナンバーに基づいて照合を行うように構成したが、ベンダーコードを用いて照合を行うように構成しても良く、シリアルナンバーが全て用いても検出できない場合に、ベンダーコードを用いて照合するように構成しても良い。
【0029】
上述の説明のように、無線基地局装置2のデバイススキャン方法にあっては、固有IDにおける1桁目を検査対象桁に指定し、当該検査対象桁にセットする数値を変更させながらXIDコマンドを順次送信し、送信したXIDコマンドに対応したXIDレスポンスを周辺機器3a〜3fのいずれか1台から受信した場合には、当該周辺機器を検出し、送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを周辺機器3a〜3fの内の複数台から受信した場合には、XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置を記憶すると共に、前記検査対象桁を次の桁に繰り上げてXIDコマンド送信ステップを実行することにより、上位装置からの二次局情報が無くとも、一次局である無線基地局装置で二次局である周辺機器を検索でき、XIDレスポンスの衝突を利用することで高速な検索が可能になるという効果を奏する。
【0030】
以上のように、本実施の形態における無線基地局装置2のリンク確立方法は、次のように構成される。
(1)、周辺機器に設定されている固有IDに基づいて前記周辺機器を検索してリンクを確立する無線基地局装置のリンク確立方法であって、前記固有IDにおける1桁目を検査対象桁に指定し、当該検査対象桁にセットする数値を変更させながらXIDコマンドを順次送信するXIDコマンド送信ステップと、送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを1台の前記周辺機器から受信した場合には、当該周辺機器を検出する検出ステップと、送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを複数台の前記周辺機器から受信した場合には、前記XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置を記憶すると共に、前記検査対象桁を次の桁に繰り上げて前記XIDコマンド送信ステップを実行させる衝突検出ステップと、検索した前記周辺機器の前記固有IDを用いてリンクを確立させるリンク確立ステップとを有することを特徴とする。
【0031】
(2)、(1)の構成に加えて、リンクが確立した前記周辺機器の前記固有IDを記憶する固有ID記憶ステップを有することを特徴とする。
【0032】
(3)、(2)の構成に加えて、リンクが切断され、リンク断状態の前記周辺機器に対して、前記XIDコマンド送信ステップ、前記検出ステップ及び前記衝突検出ステップを実行することなく、前記固有ID記憶ステップによって記憶した前記固有IDを用いてリンクを再確立させるリンク再確立ステップを有することを特徴とする。
【0033】
)、(1)の構成に加えて、検査対照桁が最終桁であり、セットしたデータが最後の数値まで達した場合には、検査対照オクテットを固有IDの1桁目である最初の0オクテットに初期化して、記憶している衝突位置をセットしたXIDコマンドを送信することを特徴とする。
【0034】
)、()の構成に加えて、2桁以降のデバイススキャンにおいては、先に照合した桁にXIDレスポンスの衝突が検出された衝突位置がセットされ、検査対象桁と、先に照合した桁とがマスク指定されることを特徴とする。
【0035】
)、リンクが切断された周辺機器の固有IDを記憶されている場合には、無線基地局装置は、周辺機器に対してデバイススキャンを実行しないことを特徴とする。
【0036】
なお、本発明が上記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、上記構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付している。
【符号の説明】
【0037】
1 無線基地局
2 無線基地局装置
21 CPU
22 ROM
23 RAM
24 DSP
25 FPGA
26 バス
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g 周辺機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺機器に設定されている固有IDに基づいて前記周辺機器を検索してリンクを確立する無線基地局装置のリンク確立方法であって、
前記固有IDにおける1桁目を検査対象桁に指定し、当該検査対象桁にセットする数値を変更させながらXIDコマンドを順次送信するXIDコマンド送信ステップと、
送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを1台の前記周辺機器から受信した場合には、当該周辺機器を検出する検出ステップと、
送信した前記XIDコマンドに対応したXIDレスポンスを複数台の前記周辺機器から受信した場合には、前記XIDレスポンスの衝突を検出した衝突位置を記憶すると共に、前記検査対象桁を次の桁に繰り上げて前記XIDコマンド送信ステップを実行させる衝突検出ステップと
検索した前記周辺機器の前記固有IDを用いてリンクを確立させるリンク確立ステップとを有することを特徴とする無線基地局装置のリンク確立方法。
【請求項2】
リンクが確立した前記周辺機器の前記固有IDを記憶する固有ID記憶ステップを有することを特徴とする請求項1記載の無線基地局装置のリンク確立方法。
【請求項3】
リンクが切断され、リンク断状態の前記周辺機器に対して、前記XIDコマンド送信ステップ、前記検出ステップ及び前記衝突検出ステップを実行することなく、前記固有ID記憶ステップによって記憶した前記固有IDを用いてリンクを再確立させるリンク再確立ステップを有することを特徴とする請求項2記載の無線基地局装置のリンク確立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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