説明

無線基地局装置及び無線通信方法

【課題】効率的に通信品質を向上することができる無線基地局装置を提供する。
【解決手段】無線基地局装置は、無線端末A,B,Cとの間で無線通信を行う複数の無線部R1,R2と、無線部R1,R2を制御する制御部Gとを具備し、無線部R1,R2は、無線端末A,B,Cからの電波の状態を測定する端末電波状態測定部12と、端末電波状態測定部12による測定結果を電波情報として制御部Gへ送信する電波情報送信部13とを備え、制御部Gは、無線部R1,R2からの電波情報に基づいて無線端末A,B,Cに対して複数の無線部を連携させて通信する連携通信を適用するか否かを決定する連携AAS(Adaptive array Antenna System)適用端末決定部21を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線端末との間で無線通信を行う無線基地局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PHSシステムではマイクロセル方式を採っており、セル半径の小さい基地局を多数配置することで無線リソースを効率よく使って通信を行うことができる。近年では基地局の制御部と無線部を分離した分離型基地局が用いられており、無線部のみを増設することで通信エリアを広げている。また、一つの制御部で複数の無線部を収容することで各無線部を連携させることが容易であり、制御部と無線部の一体型では困難だった機能を実現できるようになっている。
【0003】
上記連携を行い、微弱な電波状態の端末に対して通信品質を上げる技術として連携AAS(Adaptive array Antenna System)がある。連携AASでは端末が送信する電波を複数の無線部で受信する。各無線部の受信電波を制御部で合成することで通信品質を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−231984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、複数の無線部にて同一端末からの無線を受信すると無条件で連携AASを行うため、実際には連携AASが不要な場合、必要な場合など連携AASが効果的に働く端末を決定することができなかった。連携AASが不要な場合に連携AASを行うと複数の無線部が使用されるため、無駄な無線リソースを使用することになる。また、連携AASが必要な場合に連携AASを行わないと通信品質を向上することができない。
【0006】
本実施形態の目的は、効率的に通信品質を向上することができる無線基地局装置及び無線通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る無線基地局装置は、無線端末との間で無線通信を行う複数の無線部と、前記無線部を制御する制御部とを具備する無線基地局装置であって、前記無線部は、前記無線端末からの電波の状態を測定する測定手段と、前記測定手段による測定結果を電波情報として前記制御部へ送信する送信手段とを備え、前記制御部は、前記無線部からの前記電波情報に基づいて前記無線端末に対して複数の前記無線部を連携させて通信する連携通信を適用するか否かを決定する決定手段を備えるものである。
【0008】
本実施形態に係る無線通信方法は、無線端末との間で無線通信を行う複数の無線部と、前記無線部を制御する制御部とを具備する無線基地局装置に用いられる無線通信方法であって、前記無線部において、前記無線端末からの電波の状態を測定し、前記測定された結果を電波情報として前記制御部へ送信し、前記制御部において、前記無線部からの前記電波情報に基づいて前記無線端末に対して複数の前記無線部を連携させて通信する連携通信を適用するか否かを決定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】無線部の受信電波状態の一例を示す図。
【図2】本実施形態に係る無線基地局装置の構成を示す図。
【図3】連携AAS適用端末決定部の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る無線基地局装置及び無線通信方法を説明する。
【0011】
図1は、無線部の受信電波状態の一例を示す図である。無線部R1,R2にはそれぞれ端末から電波を受信できないエリアと受信電波状態の良くないエリアと受信電波状態の良いエリアの3つのエリアがある。無線部R1,R2は、後述する端末電波状態測定部を備えているため、上記3つのエリアを認識することができる。
【0012】
端末Aは、無線部R1,無線部R2共に電波状態は良くないエリアなので、無線部R1,R2で連携AASを適用することで電波状態の改善を行う。端末Bは、無線部R2にとって電波状態の良いエリアなので、連携AASを行う必要がなく、無線部R2のみを用いて通信を行うことで通信品質を確保できる。従って、無駄な無線リソースを使用せずに済む。端末Cは、無線部R1の受信電波が他の電波の干渉を受けてしまうエリアにある場合である。無線部R1のみを用いて通信を行った場合、端末Cからの電波の受信電力は強いが、電波の干渉により受信エラー数は高く通信品質が低い状態である。このため、端末Cは無線部R1,R2で連携AASを適用し、電波の干渉の影響を抑え、通信品質の向上を行う。このように、本実施形態では、効率的に無線リソースを使用できるように連携AAS適用端末を決定するものである。
【0013】
(装置構成)
図2は、本実施形態に係る無線基地局装置の構成を示したものである。
【0014】
1つの制御部Gに対して複数個の無線部R1,R2が光ケーブル等で接続されている。端末A,B,Cと無線部R1,R2は無線電波により通信を行う。
【0015】
制御部Gは、連携AAS適用端末決定部21を備えている。無線部R1,R2は、電波受信部11、端末電波状態測定部12、及び電波情報送信部13を備えている。端末電波状態測定部12は受信電力測定部121とFER測定部122とを備えている。受信電力測定部121は、端末A,B,Cからの受信電波の状態の測定を行う。FER測定部122は、受信電波について他の電波干渉等による受信エラー発生数(例えば、フレームエラーレート)を測定する。電波情報送信部13は、端末電波状態測定部12による測定結果を電波情報として制御部Gへ送信する。
【0016】
電波受信部11で端末A,B,Cからの電波を受信すると、端末電波状態測定部12の受信電力測定部121、FER測定部122により電波状態を測定し、端末毎の電波状態の測定結果を電波情報として電波情報送信部13へ送る。連携AAS適用端末決定部21は、電波情報送信部13からの端末毎の電波情報を受信し、端末A,B,Cのそれぞれに対して連携AASを適用すべきかを決定する。連携AAS適用端末決定部21は連携AASを適用すると決定した場合、複数の無線部R1,R2からの受信電波を合成する。連携AAS適用端末決定部21で連携AASを適用しない決定がされた場合、受信電波の合成を行わず、また無線部の電波状態が良くない電波受信部11に対してその端末の電波を受信しないように指示することで、無線リソースの節約を行う。
【0017】
(連携AAS適用端末決定処理)
図3に連携AAS適用端末決定部の処理を示すフローチャートを示す。
【0018】
端末Aに対する最も電波状態が良い無線部R1の電波情報をα、2番目に電波状態が良い無線部R2の電波情報をβとし、無線部R1と無線部R2で連携AASを適用することで得られた合成波をγとする。
【0019】
αに対して受信電力をαPr、フレームエラーレート(FER)をαFとし、同様にβについても受信電力をβPr、FERをβF、γについてのFERをγFとする。
【0020】
無線部R1が連携AASを適用するための端末Aの受信電力の閾値をXPr、FER値の閾値をXFとする。無線部R2が無線部R1との連携AASを適用するための端末Aの受信電力YPrとしFER値はYFとする。また、連携AASを効果的に働かせるため、YPrはXPrに対しての割合が所定の閾値A以上であること、FER値YFはXFとの差が所定の閾値B以下になるように設定する。ZFは連携AAS適用前後でのFERの比で、合成波の状態が良好かどうかを判断するための境界値である。λは連携AASを適用した際に、改善されるべき電波状態の度合を示しており、λよりも改善されない場合は連携AASを適用しないと判断するものとする。
【0021】
以下、図3のフローチャートに従って説明する。連携AAS適用端末決定部21は、端末Aの電波状態の評価を開始すると、各無線部R1,R2からの端末Aの電波情報を収集し、その中で最も良い受信電力を持つ電波情報αを選択する(S11)。
【0022】
例えば、電波情報αを下記式で表わすことができる。下記式のように、受信電力(PR)、FER(F)についてそれぞれ基準値PRS,FSを設定し、基準値からの比をもとにスコアPR/PRS,F/FSを求め、その2つのスコアに対して重み付けしたものの和によって各無線部R1,R2の電波状態を評価する。
【0023】
α=(PR/PRS)×κ−(F/FS)×γ
PR :受信電力
PRS:受信電力基準値
F :FER
FS :FER基準値
κ、γ:各スコアの重み
αPrの評価値が閾値XPr以下の場合は(S11:NO)、電波状態が弱いために連携AASの効果が十分に得られないため、連携AASの適用を行わない(S14)。αPrが閾値XPrよりも大きい場合は(S11:YES)、次の処理(S12)へ進む。
【0024】
αFが閾値XF以下のときは(S12:NO)、無線部R1は受信電力も十分に高く、エラーレートは低く抑えられており良好な通信環境であると考えられるため、連携AASを適用しないと判断する(S14)。一方、αFが閾値XFより大きい場合は(S12:YES)、受信電力は良いが、エラーレートが高いため、連携AASを適用できる他の無線部がないかを探す(S13)。
【0025】
無線部R1の次に受信電力が高い無線部R2について、βPrが閾値YPrと比べ小さい場合は(S15:NO)、連携AASの効果はあまり得られないと判断し、連携AASを適用しない(S18)。一方、βPrがYPrより大きい場合は(S15:YES)、無線部R2のFERの評価へ処理を進める(S16)。βFと閾値YFを比較し、βFが閾値YF以上の場合は(S16:NO)、無線部R2のエラーレートが高いため、連携AASを使用しないことを決定する(S18)が、βFが閾値YFより小さい場合は(S16:YES)、無線部R1と無線部R2を使って連携AASを試行する(S17)。
【0026】
連携AASを試行して得られる合成波γのFER値γFが無線部R1のみでのαFよりもλよりも改善されていない場合(S19:NO)、連携AASの効果が薄いため、先のS17で試行した連携AASを解除して無線部R1のみで通信を行う(S21)。
【0027】
γFがαFよりλ以上改善されており(S19:YES)、γFの値が閾値ZFより大きい場合(S20:YES)は十分な通信品質を得られない可能性があるため、これ以上連携AASの組合せを試行せず、無線部R1と無線部R2を用いて通信を行う(S23)。γFの値が閾値ZF以下の場合(S20:NO)はさらに別の無線部(例えば、次に電波状態の良い無線部)を用いて連携AASを適用するために、別の無線部の組合せを試行し電波状態の再評価を行う(S22)。再評価されたγが十分な通信品質を確保できていれば、その時点での連携AASを継続して通信を行う。
【0028】
以上述べたように、本実施形態では、連携AASが効果的に働くエリア、効果的に働かないエリアを適切に判断した上で、連携AASを適用するようにしている。このようにすることで、無線リソースを無駄に使用することがなくなり、効率的に通信品質を向上することが可能となる。
【0029】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
R1,R2…無線部、11…電波受信部、12…端末電波状態測定部、121…受信電力測定部、122…FER測定部、13…電波情報送信部、G…制御部、21…連携AAS適用端末決定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末との間で無線通信を行う複数の無線部と、前記無線部を制御する制御部とを具備する無線基地局装置であって、
前記無線部は、
前記無線端末からの電波の状態を測定する測定手段と、
前記測定手段による測定結果を電波情報として前記制御部へ送信する送信手段と
を備え、
前記制御部は、
前記無線部からの前記電波情報に基づいて前記無線端末に対して複数の前記無線部を連携させて通信する連携通信を適用するか否かを決定する決定手段
を備えることを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
前記測定手段は、前記電波の状態として、前記電波の受信電力と、前記電波の受信エラー発生数とを測定することを特徴とする請求項1記載の無線基地局装置。
【請求項3】
前記連携通信を適用する場合に、
前記測定手段は、前記連携通信により得られる合成波の電波の状態を測定し、
前記決定手段は、前記合成波の電波情報に基づいて前記連携通信の適用を継続するか解除するかを評価すること
をさらに特徴とする請求項1記載の無線基地局装置。
【請求項4】
前記決定手段は、前記評価の結果に基づいて別の無線部を用いて前記連携通信を適用するために、前記電波状態を再評価することをさらに特徴とする請求項3記載の無線基地局装置。
【請求項5】
無線端末との間で無線通信を行う複数の無線部と、前記無線部を制御する制御部とを具備する無線基地局装置に用いられる無線通信方法であって、
前記無線部において、
前記無線端末からの電波の状態を測定し、
前記測定された結果を電波情報として前記制御部へ送信し、
前記制御部において、
前記無線部からの前記電波情報に基づいて前記無線端末に対して複数の前記無線部を連携させて通信する連携通信を適用するか否かを決定することを特徴とする無線通信方法。
【請求項6】
前記測定においては、前記電波の状態として、前記電波の受信電力と、前記電波の受信エラー発生数とを測定することを特徴とする請求項5記載の無線通信方法。
【請求項7】
前記連携通信を適用する場合に、
前記測定手段は、前記連携通信により得られる合成波の電波の状態を測定し、
前記決定手段は、前記合成波の電波情報に基づいて前記連携通信の適用を継続するか解除するかを評価すること
をさらに特徴とする請求項5記載の無線基地局方法。
【請求項8】
前記決定手段は、前記評価の結果に基づいて別の無線部を用いて前記連携通信を適用するために、前記電波状態を再評価することをさらに特徴とする請求項7記載の無線基地局方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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