説明

無線基地局

【課題】屋内にGPSアンテナが配置された場合でも、GPS衛星からの軌道情報を受信することができる無線基地局を提供する。
【解決手段】GPSモジュール11は、複数のアンテナ1,2のいずれかで受信した軌道情報に基づいて、基準時刻信号を生成する。RFスイッチ12は、複数のGPSアンテナ1,2で受信した軌道情報のうちのいずれかをGPSモジュール11へ出力する。マップ情報記憶部27、28は、GPSアンテナごとに、GPS衛星からの軌道情報が受信可能な天空上の位置を定めたマップ情報を記憶する。アンテナ選択部24は、マップ情報に基づいて、現在または現在以降の時刻において、GPSアンテナごとに、軌道情報が受信できるGPS衛星の個数を判断し、判断した個数に基づいて、RFスイッチ12から軌道情報を出力させるGPSアンテナを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線基地局に関し、特にGPS衛星からの信号に基づいて時刻の同期をとる無線基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
無線基地局は送受信のタイミングをそろえるために、タイミング取得器としてGPSモジュールを備えている。GPSモジュールは、GPSアンテナを介して天空にある複数のGPS衛星からの情報を取得し、その情報から正しい場所および時間を算出し、それによりタイミング信号を出力している。
【0003】
正しいタイミング信号を作成するためには4個以上のGPS衛星からの情報が必要であり、またその情報も正確なものが求められる。そのため、GPSアンテナは一般的に屋外の天空の見通しの良い場所に設置される。
【0004】
GPSモジュールが設置された場所でGPS衛星が幾つ受信できるかを算出する方法が特許文献1(特開平8−285933号公報)に記載されている。この方法を使用すると、任意の時間に可視できるGPS衛星数を計算することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−285933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方式では、設置場所が全天見渡し可能な場合であることを前提としている。屋内にGPSアンテナを配置する場合では、実際には見えない衛星まで含めて衛星数をカウントすることになる。
【0007】
たとえば、図13(a)に示すように、屋内にGPSアンテナを配置する場合は、一般にGPSアンテナは窓際に配置される。建物に遮られている場所や、窓の外のビルなどがが障害物となる。その結果、図13(b)に示すように、障害物に遮られた方向からGPS衛星の軌道情報を受信することができなくなる。
【0008】
図14の場合には、GPSモジュールは、予測時間において4個のGPS衛星G1〜G4が可視できると算出されるが、そのうちG3、G4のGPS衛星は障害物で隠れてしまい、実際に見えることができるのはGPS衛星G1、G2のみである。
【0009】
それゆえに、本発明の目的は、屋内にGPSアンテナが配置された場合でも、GPS衛星からの軌道情報を受信することができる無線基地局を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の無線基地局は、GPS衛星からの軌道情報を受信する複数のGPSアンテナと、複数のアンテナのいずれかで受信した軌道情報に基づいて、基準時刻信号を生成するGPS受信部と、複数のGPSアンテナで受信した軌道情報のうちのいずれかをGPS受信部へ出力するスイッチと、GPSアンテナごとに、GPS衛星からの軌道情報が受信可能な天空上の位置を定めたマップ情報を記憶する記憶部と、マップ情報に基づいて、現在または現在以降の時刻において、GPSアンテナごとに、軌道情報が受信できるGPS衛星の個数を判断し、判断した個数に基づいて、スイッチから軌道情報を出力させるGPSアンテナを選択するアンテナ選択部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、屋内にGPSアンテナが配置された場合でも、GPS衛星からの軌道情報を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の無線基地局システムの構成を表わす図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【図3】受信履歴情報の具体例を表わす図である。
【図4】マップ情報の具体例を表わす図である。
【図5】アンテナ選択の例を説明するための図である。
【図6】図2の無線基地局の全体の動作手順を表わすフローチャートである。
【図7】図6のステップS106のエージング処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【図8】図7のステップS107のアンテナ選択処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【図10】図9の無線基地局の全体の動作手順を表わすフローチャートである。
【図11】図10のステップS406のエージング処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【図12】図10のステップS407のアンテナ仰角制御処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【図13】屋内にGPSアンテナを配置する場合の問題を説明するための図である。
【図14】屋内にGPSアンテナを配置する場合の問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態の無線基地局システムの構成を表わす図である。
【0014】
図1を参照して、この無線基地局システムは、フレーム同期をGPSで取得する複数の無線基地局から構成される。
【0015】
この無線基地局システムは、複数の無線基地局5a〜5mと、アシストサーバ3からなる。複数の無線基地局5a〜5mおよびアシストサーバ3との間は、有線のネットワーク8で接続されている。複数の無線基地局5a〜5mおよびアシストサーバ3は、それぞれGPSモジュール11a〜11m,6を備える。GPSモジュール11a〜11mは、それぞれ2個のGPSアンテナ1a,2a〜1m,2mによって、GPS衛星群(32個のGPS衛星)7に属する複数のGPS衛星からの航法メッセージ(軌道情報)を受信する。GPSモジュール6もは、GPSアンテナ4によって、GPS衛星群(32個のGPS衛星)7に属する複数のGPS衛星からの航法メッセージ(軌道情報)を受信する。
【0016】
(無線基地局の構成)
図2は、本発明の第1の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【0017】
図2を参照して、この無線基地局5は、GPSアンテナ1と、GPSアンテナ2と、RFスイッチ12と、GPSモジュール11と、データ取得部15と、ネットワークインタフェース16と、アシスト情報取得部17と、アシスト情報記憶部19と、衛星データ記憶部20と、アシスト情報転送部18と、受信履歴作成部22と、GPSアンテナ1受信履歴記憶部25と、GPSアンテナ2受信履歴記憶部26と、マップ情報作成部23と、GPSアンテナ1マップ情報記憶部27と、GPSアンテナ2マップ情報記憶部28と、配置座標記憶部21と、アンテナ選択部24と、無線通信部13と、無線アンテナ14とを備える。
【0018】
RFスイッチ12は、GPSアンテナ1からの航法メッセージをGPSモジュール11へ出力するか、GPSアンテナ2からの航法メッセージをGPSモジュール11へ出力するかを切替える。
【0019】
GPSモジュール11は、GPSアンテナ1またはGPSアンテナ2を通じて航法メッセージを受信する。
【0020】
航法メッセージは、これを送信したGPS衛星の軌道情報(エフェメリス)と、全GPS衛星の軌道情報(アルマナック)とを含む。アルマナックは、全GPS衛星のおおまかな位置情報を含む。エフェメリスは、これを送信したGPS衛星の正確な位置情報と、これを送信した時刻情報とを含む。
【0021】
GPSモジュール11は、アルマナックと、自装置の位置および概略の時刻に基づいて、可視位置にあるGPS衛星を選択する。GPSモジュール11は、選択したGPS衛星からの航法メッセージのうちの、エフェメリスを受信する。GPSモジュール11は、選択したGPS衛星からの航法メッセージのうちの、エフェメリスが受信できない場合には、アシストサーバ3から受信したアシスト情報に含まれる、アシストサーバ3で受信した選択したGPS衛星のエフェメリスを用いて、選択した衛星のエフェメリスの受信感度を増加させることによって、選択した衛星のエフェメリスを受信する。
【0022】
GPSモジュール11は、自局で受信した4個の衛星のエフェメリスと、自装置の位置、および保有している概略の時刻を用いて、正確な基準時刻信号tbを生成する。
【0023】
データ取得部15は、GPSモジュール11が受信した航法メッセージから個々の軌道情報、すなわちアルマナックとエフェメリスを抽出して、衛星データ記憶部20に記憶する。データ取得部15は、アルマナックおよびエフェメリスを衛星データ記憶部20に記憶してから所定時間経過した場合に、データの有効性が失われるため消去する。
【0024】
ネットワークインタフェース16は、アシストサーバ3からのアシスト情報を受信する。
【0025】
アシスト情報取得部17は、ネットワークインタフェース16を介してアシストサーバ3よりアシスト情報を取得し、アシスト情報記憶部19に記憶させる。
【0026】
衛星データ記憶部20は、GPSモジュール11が受信した航法メッセージに含まれるアルマナックとエフェメリスとを記憶する。
【0027】
アシスト情報転送部18は、アシスト情報記憶部19に記憶されているアシスト情報をGPSモジュール11へ転送する。
【0028】
受信履歴作成部22は、所定の期間(たとえば24時間)にわたって、GPSアンテナごとに、GPS衛星からエフェメリスの軌道情報を受信したときのGPS衛星の天空上の位置を表わす仰角と方位角とを記録した受信履歴情報を作成する。
【0029】
GPSアンテナ1受信履歴記憶部25は、GPSアンテナ1の受信履歴情報を記憶する。
【0030】
GPSアンテナ2受信履歴記憶部26は、GPSアンテナ2の受信履歴情報を記憶する。
【0031】
(受信履歴情報)
図3は、受信履歴情報の具体例を表わす図である。
【0032】
図3の受信履歴情報は、エフェメリスの軌道情報を受信した日付、時間、衛星番号、受信レベル、GPSモジュール11で使用されたか否かを表わす使用フラグ、仰角、および方位角を含む。図3の受信履歴情報は、10分ごとに作成されている。
【0033】
マップ情報作成部23は、GPSアンテナごとの受信履歴情報に基づいて、GPSアンテナごとのマップ情報を作成する。マップ情報は、GPSアンテナ1,2からの方位角と仰角とによって定まる天空上の位置とGPSアンテナ1,2との間に障害物があるか否か、すなわち、その天空上の位置からエフェメリスの軌道情報が受信可能であるか否かを定める。具体的には、マップ情報作成部23は、受信履歴情報を仰角と方位角によってソートし、各仰角と方位角において受信レベルが所定値以上であるか否かによって、その仰角と方位角において障害物があるか否かを判断することによって、マップ情報を作成する。
【0034】
GPSアンテナ1マップ情報記憶部27は、GPSアンテナ1のマップ情報を記憶する。GPSアンテナ2マップ情報記憶部28は、GPSアンテナ2のマップ情報を記憶する。
【0035】
(マップ情報)
図4は、マップ情報の具体例を表わす図である。
【0036】
このマップ情報は、方位角ごとに障害物の有無を記述し、障害物がある場合は障害物が占める仰角を記述する。
【0037】
配置座標記憶部21は、自装置の位置座標を記憶する。
アンテナ選択部24は、アルマナックおよび自装置の位置座標に基づいて、現在時刻または現在以降の時刻において、GPS衛星が位置している方位角と仰角とを特定する。アンテナ選択部24は、特定したGPS衛星が位置している方位角と仰角と、マップ情報とに基づいて、GPSアンテナごとに、GPS衛星からのエフェメリスの軌道情報が受信できるか否かを判断する。アンテナ選択部24は、エフェメリスの軌道情報が受信できるGPS衛星の個数が最大のGPSアンテナを選択する。
【0038】
図5は、アンテナ選択の例を説明するための図である。
図5(a)は、GPSアンテナ1におけるGPS衛星の軌道と位置を表わす図である。
【0039】
図5(a)に示すように、GPSアンテナ1は、GPS衛星G1、G2、G3、G4のエフェメリスの軌道情報が受信可能である。
【0040】
図5(b)は、GPSアンテナ2におけるGPS衛星の軌道と位置を表わす図である。
図5(b)に示すように、GPSアンテナ2は、GPS衛星G1、G2のエフェメリス軌道情報が受信可能である。
【0041】
図5の例では、アンテナ選択部24は、受信できるGPS衛星の数が多いGPSアンテナ1を選択し、RFスイッチ12に指示を与える。
【0042】
無線通信部13は、GPSモジュール11から出力される基準時刻信号tbに同期して、無線アンテナ14から受信した信号および無線アンテナ14から出力する信号の通信処理を行なう。
【0043】
(全体動作)
図6は、図2の無線基地局の全体の動作手順を表わすフローチャートである。
【0044】
まず、GPSモジュール11が起動する(ステップS101)。
次に、GPSモジュール11は、GPSアンテナ1またはGPSアンテナ2を通じて航法メッセージを受信する。データ取得部15は、GPSモジュール11が受信した航法メッセージからアルマナックとエフェメリスを抽出して、衛星データ記憶部20に記憶する。
【0045】
GPSモジュール11は、アルマナックと、自装置の位置および概略の時刻に基づいて、可視位置にあるGPS衛星を選択する。GPSモジュール11は、選択したGPS衛星からの航法メッセージのうちの、エフェメリスを受信する(ステップS102)。
【0046】
次に、アシスト情報取得部17は、ネットワークインタフェース16を通じてアシストサーバ3からアシスト情報を取得して、アシスト情報記憶部19に記憶する(ステップS103)。
【0047】
GPSモジュール11は、選択したGPS衛星からの航法メッセージのうちの、エフェメリスが受信できない場合には、アシストサーバ3から受信したアシスト情報に含まれる、アシストサーバ3で受信した選択したGPS衛星のエフェメリスを用いて、選択した衛星のエフェメリスの受信感度を増加させることによって、選択した衛星のエフェメリスを受信する。GPSモジュール11は、自局で受信した4個の衛星のエフェメリスと、自装置の位置、および保有している概略の時刻を用いて、正確な基準時刻信号tbを生成する(ステップS104)。
【0048】
エージング処理が完了していない場合には(ステップS105でYES)、エージング処理が行なわれる(ステップS106)。
【0049】
次に、アンテナ選択処理が行なわれ(ステップS107)、一定時間ウエイトした後、ステップS103に戻る。
【0050】
(エージング動作)
図7は、図6のステップS106のエージング処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【0051】
変数nが1に設定される(ステップS201)。
RFスイッチ12は、GPSアンテナnからの航法メッセージをGPSモジュール11へ出力する(ステップS202)。GPSモジュール11は、GPSアンテナnからの航法メッセージを受信する。
【0052】
受信履歴作成部22は、GPSアンテナnについて、GPS衛星からエフェメリスの軌道情報を受信したときのGPS衛星の天空上の位置を表わす仰角と方位角とを記録したGPSアンテナnの受信履歴情報を作成し、GPSアンテナn受信履歴記憶部に記憶する(ステップS203)。
【0053】
エージング期間(たとえば24時間)が経過した場合には(ステップS204でYES)、受信履歴作成部22は、GPSアンテナnの受信履歴情報の作成を終了する。マップ情報作成部23は、GPSアンテナnの受信履歴情報に基づいて、GPSアンテナnのマップ情報を作成し、GPSアンテナnマップ情報記憶部に記憶する(ステップS204)。
【0054】
変数nが2でない場合には(ステップS206でNO)、変数nがインクリメントされて、ステップS202に戻る。変数nが2の場合には(ステップS206でYES)、エージング処理が終了する。
【0055】
(アンテナ選択動作)
図8は、図7のステップS107のアンテナ選択処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【0056】
変数iが1に設定される(ステップS301)。
次に、アンテナ選択部24は、アルマナックに基づいて、第i番目のGPS衛星の軌道位置を計算し、第i番目のGPS衛星への仰角Aiと、方位角Biとを特定する(ステップS302)。
【0057】
アンテナ選択部24は、変数iが32でない場合には(ステップS303でNO)、変数iをインクリメントし(ステップS304)、ステップS302に戻る。アンテナ選択部24は、変数iが32の場合には(ステップS303でYES)、変数nを1に設定する(ステップS305)。
【0058】
アンテナ選択部24は、衛星受信数Pnを0に初期化する(ステップS306)。
アンテナ選択部24は、変数iを1に設定する(ステップS307)。
【0059】
アンテナ選択部24は、GPSアンテナnのマップ情報を参照して、仰角Aiと、方位角Biに障害物が存在するかどうを調べ、存在しない場合には、衛星受信数Pnをインクリメントする(ステップS309)。
【0060】
アンテナ選択部24は、変数iが32でない場合には(ステップS310でNO)、変数iをインクリメントし(ステップS311)、ステップS308に戻る。アンテナ選択部24は、変数iが32の場合には(ステップS310YES)、さらに、変数nが2でない場合には(ステップS312でNO)、変数nをインクリメントして(ステップS313)、ステップS306に戻り、変数nが2の場合には(ステップS312でYES)、次のステップに移行する。
【0061】
まず、アンテナ選択部24は、衛星受信最大数Maxの値を0に設定し、受信数最大アンテナkの値を0に設定する(ステップS314)。
【0062】
アンテナ選択部24は、変数nを1に設定する(ステップS315)。
衛星受信数nが衛星受信最大数Maxよりも大きいときには(ステップS316でYES)、アンテナ選択部24は、衛星受信最大数Maxの値を衛星受信数Pnに設定し、受信数最大アンテナkの値をnに設定する(ステップS317)。
【0063】
アンテナ選択部24は、変数nが2でない場合には(ステップS318でNO)、変数nをインクリメントして(ステップS319)、ステップS316に戻る。
【0064】
アンテナ選択部24は、変数nが2の場合には(ステップS318でYES)、RFスイッチ12にGPSアンテナkを選択するように指示する。RFスイッチ12は、GPSアンテナkからの航法メッセージをGPSモジュール11に出力する(ステップS320)。
【0065】
(効果)
以上のように、本実施の形態の無線基地局によれば、複数のGPSアンテナを搭載し、多くのGPS衛星から軌道情報を受信できるGPSアンテナを選択して受信するようにするので、屋内にGPSアンテナが配置された場合でも、GPS衛星からの軌道情報を適切に受信することができる。
【0066】
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、第1の実施形態のように、受信できるGPS衛星の数が多くなるように複数のGPSアンテナの中から1つを選択するのではなく、受信できるGPS衛星の数が多くなるようにGPSアンテナの仰角を調整する。これは、GPSアンテナの向き次第でもGPS衛星の受信状況は大きく変化することを考慮したものである。
【0067】
(無線基地局の構成)
図9は、本発明の第2の実施形態の無線基地局の構成を表わす図である。
【0068】
この無線基地局50は、以下の点で第1の実施形態の無線基地局5と相違する。
駆動部52は、サーボモータで構成され、GPSアンテナ1の仰角を調整する。
【0069】
受信履歴作成部54は、所定の期間(たとえば24時間)にわたって、GPSアンテナ1の角度(仰角)ごとに、GPS衛星からエフェメリスの軌道情報を受信したときのGPS衛星の天空上の位置を表わす仰角と方位角とを記録した受信履歴情報を作成する。ここでは、仰角1〜10をそれぞれ0度、10度、20度、30度、40度、50度、60度、70度、80度、90度とする。受信履歴情報の形式は、第1の実施形態と同様であり、エフェメリスの軌道情報を受信した日付、時間、衛星番号、受信レベル、GPSモジュール11で使用されたか否かを表わす使用フラグ、仰角、および方位角を含む。
【0070】
GPSアンテナ仰角1受信履歴記憶部56−1は、GPSアンテナ1の仰角1の受信履歴情報を記憶する。GPSアンテナ仰角10受信履歴記憶部56−2は、GPSアンテナ1の仰角2の受信履歴情報を記憶する。無線基地局は、GPSアンテナ仰角2受信履歴記憶部〜GPSアンテナ仰角9受信履歴記憶部も、同様に備える。
【0071】
マップ情報作成部55は、GPSアンテナ1の仰角ごとの受信履歴情報に基づいて、GPSアンテナ1の仰角ごとのマップ情報を作成する。マップ情報は、GPSアンテナ1からの方位角と仰角とによって定まる天空上の位置とGPSアンテナ1との間に障害物があるか否か、すなわちその天空上の位置からエフェメリスの軌道情報が受信可能であるか否かを定める。
【0072】
GPSアンテナ仰角1マップ情報記憶部57−1は、GPSアンテナ1の仰角1のマップ情報を記憶する。GPSアンテナ仰角10マップ情報記憶部57−10は、GPSアンテナ1の仰角10のマップ情報を記憶する。無線基地局は、GPSアンテナ仰角2マップ情報記憶部〜GPSアンテナ仰角9マップ情報記憶部も、同様に備える。
【0073】
アンテナ制御部53は、アルマナックおよび自装置の位置座標に基づいて、現在時刻または現在以降の時刻において、GPS衛星が位置している方位角と仰角とを特定する。アンテナ制御部53は、特定したGPS衛星が位置している方位角と仰角と、マップ情報とに基づいて、GPSアンテナ1の角度(仰角)ごとに、GPS衛星からのエフェメリスの軌道情報が受信できるか否かを判断する。アンテナ制御部53は、エフェメリスの軌道情報が受信できるGPS衛星の個数が最大のGPSアンテナ1の角度(仰角)を選択して、駆動部52に対して選択した仰角にGPSアンテナ1の仰角を調整させる。
【0074】
(全体動作)
図10は、図9の無線基地局の全体の動作手順を表わすフローチャートである。
【0075】
まず、GPSモジュール11が起動する(ステップS401)。
次に、GPSモジュール11は、GPSアンテナ1を通じて航法メッセージを受信する。データ取得部15は、GPSモジュール11が受信した航法メッセージからアルマナックとエフェメリスを抽出して、衛星データ記憶部20に記憶する。
【0076】
GPSモジュール11は、アルマナックと、自装置の位置および概略の時刻に基づいて、可視位置にあるGPS衛星を選択する。GPSモジュール11は、選択したGPS衛星からの航法メッセージのうちの、エフェメリスを受信する(ステップS402)。
【0077】
次に、アシスト情報取得部17は、ネットワークインタフェース16を通じてアシストサーバ3からアシスト情報を取得して、アシスト情報記憶部19に記憶する(ステップS403)。
【0078】
GPSモジュール11は、選択したGPS衛星からの航法メッセージのうちの、エフェメリスが受信できない場合には、アシストサーバ3から受信したアシスト情報に含まれる、アシストサーバ3で受信した選択したGPS衛星のエフェメリスを用いて、選択した衛星のエフェメリスの受信感度を増加させることによって、選択した衛星のエフェメリスを受信する。GPSモジュール11は、自局で受信した4個の衛星のエフェメリスと、自装置の位置、および保有している概略の時刻を用いて、正確な基準時刻信号tbを生成する(ステップS404)。
【0079】
エージング処理が完了していない場合には(ステップS405でYES)、エージング処理が行なわれる(ステップS406)。
【0080】
次に、アンテナ仰角制御処理が行なわれ(ステップS407)、一定時間ウエイトした後、ステップS403に戻る。
【0081】
(エージング動作)
図11は、図10のステップS406のエージング処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【0082】
変数nが1に設定される(ステップS501)。
GPSモジュール11は、GPSアンテナ1を仰角nに調整したときの航法メッセージを受信する(ステップS502)。
【0083】
受信履歴作成部54は、GPSアンテナ1を仰角nに調整したときに、GPS衛星からエフェメリスの軌道情報を受信したときのGPS衛星の天空上の位置を表わす仰角と方位角とを記録したGPSアンテナ1の仰角nの受信履歴情報を作成し、GPSアンテナ仰角n受信履歴記憶部56−nに記憶する(ステップS503)。
【0084】
エージング期間(たとえば24時間)が経過した場合には(ステップS504でYES)、受信履歴作成部54は、GPSアンテナ1の仰角nの受信履歴情報の作成を終了する。マップ情報作成部55は、GPSアンテナ1の仰角nの受信履歴情報に基づいて、GPSアンテナ1の仰角nのマップ情報を作成し、GPSアンテナ仰角nマップ情報記憶部57−nに記憶する(ステップS505)。
【0085】
変数nが2でない場合には(ステップS506でNO)、変数nがインクリメントされて、ステップS502に戻る。変数nが2の場合には(ステップS506でYES)、エージング処理が終了する。
【0086】
(アンテナ仰角制御動作)
図12は、図10のステップS407のアンテナ仰角制御処理の詳細な手順を表わすフローチャートである。
【0087】
変数iが1に設定される(ステップS601)。
次に、アンテナ制御部53は、アルマナックに基づいて、第i番目のGPS衛星の軌道位置を計算し、第i番目のGPS衛星への仰角Aiと、方位角Biとを特定する(ステップS602)。
【0088】
アンテナ制御部53は、変数iが32でない場合には(ステップS603でNO)、変数iをインクリメントし(ステップS604)、ステップS602に戻る。アンテナ制御部53は、変数iが32の場合には(ステップS603でYES)、変数nを1に設定する(ステップS605)。
【0089】
アンテナ制御部53は、衛星受信数Pnを0に初期化する(ステップS607)。
アンテナ制御部53は、変数iを1に設定する(ステップS607)。
【0090】
アンテナ制御部53は、GPSアンテナ1の仰角nのマップ情報を参照して、仰角Aiと、方位角Biに障害物が存在するかどうを調べ、存在しない場合には、衛星受信数Pnをインクリメントする(ステップS609)。
【0091】
アンテナ制御部53は、変数iが32でない場合には(ステップS610でNO)、変数iをインクリメントし(ステップS611)、ステップS608に戻る。アンテナ制御部53は、変数iが32の場合には(ステップS610YES)、さらに、変数nが2でない場合には(ステップS612でNO)、変数nをインクリメントして(ステップS613)、ステップS606に戻り、変数nが2の場合には(ステップS612でYES)、次のステップに移行する。
【0092】
まず、アンテナ制御部53は、衛星受信最大数Maxの値を0に設定し、受信数最大アンテナ仰角kの値を0に設定する(ステップS614)。
【0093】
アンテナ制御部53は、変数nを1に設定する(ステップS615)。
衛星受信数nが衛星受信最大数Maxよりも大きいときには(ステップS616でYES)、アンテナ制御部53は、衛星受信最大数Maxの値を衛星受信数Pnに設定し、受信数最大アンテナ仰角kの値をnに設定する(ステップS617)。
【0094】
アンテナ制御部53は、変数nが2でない場合には(ステップS618でNO)、変数nをインクリメントして(ステップS619)、ステップS616に戻る。
【0095】
アンテナ制御部53は、変数nが2の場合には(ステップS618でYES)、駆動部52に対してGPSアンテナ1の仰角がkにするように指示する(ステップS620)。
【0096】
(効果)
以上のように、本実施の形態によれば、屋内にGPSアンテナを配置した場合でもGPS衛星の受信を継続して行なうことができる。
【0097】
以上のように、本実施の形態の無線基地局によれば、GPSアンテナの仰角を調整可能なものとし、多くのGPS衛星から軌道情報を受信できるように仰角を調整するので、屋内にGPSアンテナが配置された場合でも、GPS衛星からの軌道情報を適切に受信することができる。
【0098】
(変形例)
(1) アンテナ選択
本発明の実施形態では、受信できるGPS衛星の数が最大のGPSアンテナ、またはGPSアンテナの仰角を選択したが、これに限定するものではない。
【0099】
受信できるGPS衛星の数が4個以上の任意のGPSアンテナ、またはGPSアンテナの仰角を選択するものとしてもよい。
【0100】
また、受信できるGPS衛星の数が最大でも、4個未満であれば、現在のGPSアンテナ、またはGPSアンテナの仰角の選択状態を変更しないようにしてもよい。
【0101】
(2) 周辺地図からのGPSマップ情報の作成
本発明の実施形態では、受信履歴情報からマップ情報を作成したが、これに限定するものではない。たとえば、地形および障害物の場所を定めた3次元の地図を用いることによって、マップ情報を作成するものとしてもよい。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1,2,1a〜1m,2a〜2m,4 GPSアンテナ、3 アシストサーバ、5,5a〜5m,50 無線基地局、6,11,11a〜11m GPSモジュール、7 GPS衛星群、8 ネットワーク、12 RFスイッチ、13 無線通信部、14 無線アンテナ、15 データ取得部、16 ネットワークインタフェース、17 アシスト情報取得部、18 アシスト情報転送部、20 衛星データ記憶部、21 配置座標記憶部、22 受信履歴作成部,54,23,55 マップ情報作成部、24 アンテナ選択部、25 GPS1アンテナ受信履歴情報記憶部、26 GPS1アンテナ受信履歴情報記憶部、27 GPSアンテナ1マップ情報記憶部、28 GPSアンテナ2マップ情報記憶部、52 駆動部、53 アンテナ制御部、56−1〜56−10 GPSアンテナ仰角1受信履歴記憶部〜GPSアンテナ仰角10受信履歴記憶部、57−1〜57−10 GPSアンテナ仰角1マップ情報記憶部〜GPSアンテナ仰角10マップ情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星からの軌道情報を受信する複数のGPSアンテナと、
前記複数のアンテナのいずれかで受信した軌道情報に基づいて、基準時刻信号を生成するGPS受信部と、
前記複数のGPSアンテナで受信した軌道情報のうちのいずれかを前記GPS受信部へ出力するスイッチと、
前記GPSアンテナごとに、前記GPS衛星からの軌道情報が受信可能な天空上の位置を定めたマップ情報を記憶する記憶部と、
前記マップ情報に基づいて、現在または現在以降の時刻において、前記GPSアンテナごとに、軌道情報が受信できるGPS衛星の個数を判断し、前記判断した個数に基づいて、前記スイッチから軌道情報を出力させるGPSアンテナを選択するアンテナ選択部とを備えた無線基地局。
【請求項2】
前記マップ情報は、前記GPSアンテナごとに、前記GPSアンテナからの方位角と仰角とによって定まる天空上の位置と前記GPSアンテナとの間に障害物があるか否かを定め、
前記アンテナ選択部は、現在または現在以降の時刻において、前記GPS衛星が位置している方位角と仰角とを特定し、前記特定したGPS衛星が位置している方位角と仰角と、前記マップ情報とに基づいて、前記GPSアンテナごとに、前記GPS衛星からの軌道情報が受信できるか否かを判断する、請求項1記載の無線基地局。
【請求項3】
前記無線基地局は、さらに、
所定の期間にわたって、前記GPSアンテナごとに、前記GPS衛星から軌道情報を受信したときの前記GPS衛星の天空上の位置を表わす仰角と方位角とを記録した受信履歴情報を作成する受信履歴作成部と、
前記作成されたGPSアンテナごとの受信履歴情報に基づいて、前記GPSアンテナごとの前記マップ情報を作成するマップ情報作成部とを備えた、請求項2記載の無線基地局。
【請求項4】
前記アンテナ選択部は、前記軌道情報が受信できるGPS衛星の個数が最大のGPSアンテナを選択する、請求項1記載の無線基地局。
【請求項5】
GPS衛星からの軌道情報を受信するGPSアンテナと、
前記GPSアンテナの仰角を調整する駆動部と、
複数の仰角のうちのいずれかに調整された前記GPSアンテナが受信した軌道情報に基づいて、基準時刻信号を生成するGPS受信部と、
前記GPSアンテナの複数の仰角ごとに、前記GPS衛星からの軌道情報が受信可能な天空上の位置を定めたマップ情報を記憶する記憶部と、
前記マップ情報に基づいて、現在または現在以降の時刻において、前記GPSアンテナの仰角ごとに、軌道情報が受信できるGPS衛星の個数を判断し、前記判断した個数に基づいて、前記駆動部に対して前記GPSアンテナの仰角を調整させるアンテナ制御部とを備えた無線基地局。
【請求項6】
前記マップ情報は、前記オGPSアンテナの仰角ごとに、前記GPSアンテナからの方位角と仰角とによって定まる天空上の位置と前記GPSアンテナとの間に障害物があるか否かを定め、
前記アンテナ制御部は、現在または現在以降の時刻において、前記GPS衛星が位置している方位角と仰角とを特定し、前記特定したGPS衛星が位置している方位角と仰角と、前記マップ情報とに基づいて、前記GPSアンテナの仰角ごとに、前記GPS衛星からの軌道情報が受信できるか否かを判断する、請求項5記載の無線基地局。
【請求項7】
前記無線基地局は、さらに、
所定の期間にわたって、前記GPSアンテナの仰角ごとに、前記GPS衛星から軌道情報を受信したときの前記GPS衛星の天空上の位置を表わす仰角と方位角とを記録した受信履歴情報を作成する受信履歴作成部と、
前記作成されたGPSアンテナの仰角ごとの受信履歴情報に基づいて、前記GPSアンテナの仰角ごとの前記マップ情報を作成するマップ情報作成部とを備えた、請求項6記載の無線基地局。
【請求項8】
前記アンテナ制御部は、前記駆動部に対して前記軌道情報が受信できるGPS衛星の個数が最大の仰角に前記GPSアンテナの仰角を調整させる、請求項5記載の無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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