説明

無線式巻上機及びその制御方法

【課題】無線操作ペンダントを使用した巻上機において、巻上機本体に異常が発生した場合、作業者に巻上機本体の状態を正確に知らしめ、適切かつ迅速な対応処置を取らせることを可能にする。
【解決手段】本発明の無線式巻上機1は、所定の荷を保持して巻き上げ、かつ、巻き降ろすための巻上機構50と、巻上機構50を駆動するモータ54と、モータ54の動作を制御する制御回路58と、巻上機本体5の動作状態を検出する状態検出手段とを有する巻上機本体5と、作業者による巻上機構50に対する動作指令を与えるための無線操作ペンダント2とを備える。巻上機本体5と無線操作ペンダント2に、無線データの送受信が可能な無線送受信回路61、31が設けられ、無線操作ペンダント2において、巻上機本体5の状態検出手段にて得られ無線操作ペンダント2に無線送信された巻上機本体5の状態を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の荷を保持して巻き上げ、かつ、巻き降ろすための巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の巻上機としては、有線式操作ペンダントを使用したものが広く知られている。
従来の有線式操作ペンダントを使用した巻上機では、上昇又は下降ボタンを押下したとき何らかの原因でモータが動作しなかった場合、操作ペンダントの作業者には巻上機が動作しない原因が分からないため、即座に原因を取り除き対処することができない。
【0003】
このような問題を解決するため、本出願人は、有線式操作ペンダントに状態表示ランプを装備し、巻上機本体に異常等が発生した場合に、異常内容を上記状態表示ランプで表示するような巻上機を提案した(特許文献1参照)。
【0004】
図7及び図8に示すように、この従来技術の操作ペンダント110には、電源ランプ111、上昇ボタン112、下降ボタン113、状態表示ランプ114が設けられている。
一方、巻上機本体120は、商用電源回路121を有し、モータ電源回路122を介してモータ駆動回路123に電流を供給してモータ124を駆動するように構成されている。
そして、作業者が操作ペンダント110を操作することにより、接続ケーブル115を介して巻上機本体120の制御回路128に対して各動作指令を出力して、モータ124の回転を制御し巻取機構125によってワイヤ126を巻き取り又は繰り出すことによって、ワイヤ126の先端部に設けられたフック127によって荷を昇降させる。
【0005】
この有線式操作ペンダント110を使用した巻上機101の場合、上述した状態表示機能を備えることにより、巻上機101に異常などが発生した場合、作業者に装置の状態を正確に知らしめることができるため、適切かつ迅速な対応処置を取ることが可能になる。
【0006】
一方、従来、図9に示すように、無線操作ペンダントを使用した巻上機も知られている。
この巻上機201の無線操作ペンダント210は、バッテリ電源回路213に接続された制御回路212を有し、ボタン211を押下した場合に、制御回路212がボタン押下情報を読み取り、さらにID番号記憶回路214から当該装置のID番号を読み出し、読み取ったボタン押下データとID番号を組み合わせて無線送信データを作成し、無線操作ペンダント210内の無線送信回路215を起動しアンテナ216を介して同データを巻上機本体220に無線送信する。
【0007】
巻上機本体220は、商用電源回路225を有し、モータ電源回路226を介してモータ駆動回路227に電流を供給してモータ228を動作させるように構成されている。そして、モータ228によって回転駆動される巻取機構229によってワイヤ230を巻き取り又は繰り出し、ワイヤ230の先端部に設けられたフック231によって荷を昇降させる。
【0008】
そして、無線操作ペンダント210から送信された無線データをアンテナ221を介して無線受信回路222が受信すると、制御回路223がID番号記憶回路224に記憶されているID番号を読み出し、受信したID番号と記憶されているID番号が一致している場合には、受信した無線データを有効データとしてID番号記憶回路224に格納し、受信した無線データの中のボタンを押下データに基づいてモータ駆動回路の制御を行う。
【0009】
このように従来の無線操作ペンダント210を使用した巻上機201では、無線データの通信方向は無線操作ペンダント210→巻上機本体220に通信されるだけ十分巻上機としても機能を果たすことができている。
【0010】
しかし、この従来技術の場合、巻上機本体220側に異常等が発生して正常な動作ができない場合、巻上機本体220から離れた位置で無線操作ペンダント210を操作している作業者は、巻上機本体220側で発生している異常状態を知ることができない。
【0011】
このように巻上機本体220に異常が発生し、無線操作ペンダント210からのボタン操作で巻上機201が動作しない場合、無線操作ペンダント210を操作している作業者は高い位置に取り付けられている巻上機本体220を一旦地面に降ろして不具合原因を調査し取り除く必要がある。
【0012】
無線式操作ペンダント210では、巻上機本体220に発生している問題を表示させることができないため、巻上機本体220の動作不具合の原因を究明することは容易ではなかった。
【特許文献1】特開2007−1667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、無線操作ペンダントを使用した巻上機において、巻上機本体に異常が発生した場合、作業者に巻上機本体の状態を正確に知らしめ、適切かつ迅速な対応処置を取らせることを可能にした巻上機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、所定の荷を保持して巻き上げ、かつ、巻き降ろすための巻上機構と、前記巻上機構を駆動する駆動モータと、前記駆動モータの動作を制御する制御手段と、当該巻上機本体の動作状態を検出する状態検出手段とを有する巻上機本体と、作業者による前記巻上機構に対する動作指令を前記制御手段に与えるための操作部とを備え、前記巻上機本体と前記操作部のそれぞれに、無線によるデータの送受信が可能な無線送信回路及び無線受信回路が設けられ、前記操作部には、前記巻上機本体の状態検出手段にて得られ前記操作部に無線送信された結果に基づいて当該巻上機本体の状態を表示する状態表示器が設けられている無線式巻上機である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記巻上機本体と前記操作部とには、前記無線送信回路及び前記無線受信回路のうちのいずれか一方の機能を有効にし且つ他方の機能を無効にするための送受信切換スイッチがそれぞれ設けられているものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2のいずれか1項記載の発明において、前記操作部の状態表示器が、点滅周期を変更して点灯可能な状態表示ランプを有し、前記巻上機本体の動作状態を検出した結果に基づいて前記状態表示ランプを所定の周期で点滅させるように構成されているものである。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の発明において、前記状態表示器が、鳴音周期を変更して鳴音可能な状態通知ブザーを有し、当該装置の動作状態を検出した結果に基づいて前記状態通知ブザーを所定の周期で鳴音させるように構成されているものである。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の無線式巻上機を制御する方法であって、前記操作部から押下ボタン無線データを送信し、前記巻上機本体において当該押下ボタン無線データを受信する際に、前記状態検出手段にて得られた結果に基づいて当該巻上機本体が正常に動作しないと判断した場合には、当該巻上機本体から当該巻上機本体の状態を示す情報を含む本体状態データを送信し、前記操作部において前記本体状態データを受信して、当該操作部の状態表示器において当該本体状態データに対応する表示を行うステップを有する無線式巻上機の制御方法である。
請求項6記載の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の無線式巻上機を制御する方法であって、前記操作部から押下ボタン無線データを送信し、前記巻上機本体において当該押下ボタン無線データを受信する際に、前記状態検出手段にて得られた結果に基づいて当該巻上機本体が正常に動作しないと判断した場合には、前記巻上機本体の無線送信回路の機能を有効にし且つ無線受信回路の機能を無効にして、当該巻上機本体から当該巻上機本体の状態を示す情報を含む本体状態データを送信するステップと、前記操作部の無線受信回路の機能を有効にし且つ無線送信回路の機能を無効にして、当該操作部において前記本体状態データを受信し、当該操作部の状態表示器において当該本体状態データに対応する表示を行うステップを有する無線式巻上機の制御方法である。
【0015】
本発明において、「状態表示器」とは、視覚のみならず、聴覚又は触覚等によって、巻上機に発生する種々の異常を作業者に正確に知らせる機能を有するものとする。
本発明の場合、操作部及び巻上機本体とに、無線データの送受信が可能な無線送信回路及び無線受信回路が設けられ、さらに操作部には状態表示器が設けられていることから、巻上機本体に種々の異常が発生した場合に、作業者は巻上機本体の状態を正確に知ることができ、これにより適切かつ迅速な対応処置を取らせることが可能になる。
また、本発明によれば、巻上機の修理又はメンテナンスを行う場合において、異常が発生している箇所を正確に特定できるため、修理、メンテナンスがしやすくなる。
【0016】
本発明において、巻上機本体と操作部とに、無線送信回路及び無線受信回路のうちのいずれか一方の機能を有効にし且つ他方の機能を無効にするための送受信切換スイッチがそれぞれ設けられていれば、例えば、操作部から押下ボタン無線データを送信し、巻上機本体において押下ボタン無線データを受信する際、状態検出手段にて得られた結果に基づいて巻上機本体が正常に動作しないと判断した場合に、巻上機本体の無線送信回路の機能を有効にし且つ無線受信回路の機能を無効にして、巻上機本体から巻上機本体の状態を示す情報を含む本体状態データを送信する一方で、操作部の無線受信回路の機能を有効にし且つ無線送信回路の機能を無効にして、操作部において本体状態データを受信し、操作部の状態表示器において本体状態データに対応する表示を行うことによって、作業者に対して巻上機本体の状態を確実且つ迅速に知らせることができる。
【0017】
本発明において、状態表示器が、点滅周期を変更して点灯可能な状態表示ランプを有し、当該巻上機本体の動作状態を検出した結果に基づいて状態表示ランプを所定の周期で点滅させるように構成されている場合には、1つの状態表示ランプで複数の装置状態を表示することができ、装置構成の簡素化を図ることが可能になる。
【0018】
一方、本発明において、状態表示器が、鳴音周期を変更して点灯可能な状態通知ブザーを有し、当該装置の動作状態を検出した結果に基づいて状態通知ブザーを所定の周期で鳴音させるように構成されている場合には、状況に応じて素早く装置の状態を作業者に知らせることができ、また、1つの状態表示ブザーで複数の装置状態を表示することができるので、装置構成の簡素化を図ることが可能になる。
さらに、音によって装置の状態を知らせることから、巻上機を設置した現場において装置の異常が発生した場合に、例えば携帯電話等を用いてメンテナンス担当者に当該装置の状態を直接知らせることができ、これにより適切かつ迅速な対応処置を取らせることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、巻上機本体に異常などが発生した場合、作業者に巻上機本体の状態を正確に知らしめることができるため、適切かつ迅速な対応処置を取ることが可能になる。
また、巻上機の修理又はメンテナンスを行う場合、異常が発生している箇所を特定できるため、修理、メンテナンスがしやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)(b)は、本発明に係る巻上機の実施の形態の制御系の構成を示すブロック図で、図1(a)は無線操作ペンダントを示すもの、図1(b)は巻上機本体を示すもの、図2は、同巻上機の操作ペンダントの外観を示す構成図である。
【0021】
図1(a)(b)及び図2に示すように、本実施の形態の巻上機(無線式巻上機)1は、無線操作ペンダント(操作部)2と、巻上機本体5とから構成されている。
【0022】
図2に示すように、無線操作ペンダント2表面側の操作パネル2aには、電源入ボタン20、電源切ボタン21、電源ランプ22、上昇ボタン23、下降ボタン24、状態表示ランプ25が設けられている。また、操作ペンダント2の内部には、状態通知ブザー25aが設けられている。
【0023】
図1(a)に示すように、無線操作ペンダント2は、上記電源入ボタン20及び電源切ボタン21によってオン・オフされるバッテリ電源回路40を有している。このバッテリ電源回路40は、マイクロコンピュータ等を有する制御回路26に接続されている。
この制御回路26には、上記上昇ボタン23及び下降ボタン24の情報を入力するための上昇/下降ボタン入力回路27が接続されている。また、制御回路26には、上記状態表示ランプ25を動作させるための状態表示回路28が接続されている。
また、制御回路26にはID番号記憶回路29が接続され、これら制御回路26及びID番号記憶回路29間においてデータのやり取りを行うように構成されている。
なお、制御回路26には、状態通知ブザー25aを鳴音するためのブザー鳴音回路30が接続され、制御回路26からの信号に基づいて、鳴音・消音制御及び鳴音周期などをソフトウェアで制御するように構成されている。
【0024】
制御回路26には、無線送受信回路31が接続されている。
この無線送受信回路31は、無線送信回路32と無線受信回路33とを有し、これら無線送信回路32と無線受信回路33は、それぞれ制御回路26に対して接続され、互いにデータのやり取りを行うように構成されている。
また、無線送信回路32及び無線受信回路33は、それぞれの入出力を切り換える送受信切換スイッチ34に接続され、さらに、この送受信切換スイッチ34は、アンテナ35に接続されている。
【0025】
一方、巻上機本体5は、巻取ドラム51を有し、ワイヤ(又はチェーン、以下「ワイヤ等」という。)52によってフック部53を昇降させるための巻上機構50を備えている。
巻上機構50は、モータ54によって巻取ドラム51を回転させてワイヤ等52を巻き取り又は繰り出し、ワイヤ等52の先端部に設けられたフック部53によって荷(図示せず)を昇降させるように構成されている。
【0026】
本実施の形態の場合、モータ54は、商用電源回路55及びモータ電源回路56を介して直流電流が供給されモータ駆動回路57によって駆動制御される。モータ駆動回路57は、マイクロコンピュータ等を有する制御回路58に接続され、この制御回路58からモータ駆動制御出力信号を受け取るようになっている。
なお、制御回路58は、商用電源回路55から電源が供給される。また、制御回路58にはID番号記憶回路59が接続され、これら制御回路58及びID番号記憶回路59間においてデータのやり取りを行うように構成されている。
【0027】
制御回路58には、無線送受信回路61が接続されている。
この無線送受信回路61は、無線送信回路62と無線受信回路63とを有し、これら無線送信回路62と無線受信回路63は、それぞれ制御回路58に対して接続され、各データのやり取りを行うように構成されている。
なお、巻上機本体5の無線送信回路62は、無線操作ペンダント2の無線受信回路33と同一の周波数で無線通信ができるものである。さらに、巻上機本体5の無線受信回路63は、無線操作ペンダント2の無線送信回路32と同一の周波数で無線通信ができるものである。
また、無線送信回路62及び無線受信回路63は、それぞれの入出力を切り換える送受信切換スイッチ64に接続され、さらに、この送受信切換スイッチ64は、アンテナ65に接続されている。
【0028】
なお、図示はしないが、巻上機本体5には、例えば特開2007−1667号公報に示されているものと同様に、状態検出手段として、モータ54とモータ駆動回路57との間にモータ電流検出部が設けられ、このモータ電流検出部は、モータ54を流れる電流を検出してそのデータを制御回路58に出力するように構成されている。
【0029】
また、同様に図示はしないが、巻上機本体5には、モータ駆動回路57とモータ電源回路56(整流部)との間に、状態検出手段として、モータ電源電圧検出部が設けられ、このモータ電源電圧検出部は、モータ54に供給される電圧、特に過電圧・低電圧を検出してそのデータを制御回路58に出力するように構成されている。
【0030】
さらに、同様に図示はしないが、巻上機本体5の巻上機構50には、状態検出手段として、フック部53がワイヤ等52の過巻リミット位置に到達したことを検出する過巻リミット位置検出部と、フック部53がワイヤ等52の逆巻リミット位置に到達したことを検出する逆巻リミット位置検出部が設けられ、これら過巻及び逆巻リミット位置検出部からの情報を制御回路58に出力することにより、巻上機本体5で発生する各種の異常を検出できるように構成されている。
【0031】
図3は、本実施の形態における無線操作ペンダントの制御方法の例を示すフローチャート、図4は、本実施の形態における巻上機本体の制御方法の例を示すフローチャートである。
【0032】
以下、本実施の形態における巻上機の動作を図1(a)(b)〜図4を参照して説明する。
まず、無線操作ペンダント2側では、電源投入後待機時において、無線送受信回路31が送受信切換スイッチ34を無線送信回路32側に切り換え、さらに無線受信回路33の機能を無効にし、無線送信回路32の機能を有効にする(図3ステップS1)。
【0033】
一方、巻上機本体5側では、電源投入後待機時において、送受信切換スイッチ64を無線受信回路63側に切り換え、さらに無線送信回路62の機能を無効にし、無線受信回路63の機能を有効にする(図4ステップS11)。これにより、無線操作ペンダント2から巻上機本体5に対して同期して無線送信することが可能になる。
【0034】
この状態において、無線操作ペンダント2の制御回路26は、作業者(図示せず)が無線操作ペンダント2の上昇ボタン23又は下降ボタン24のいずれかを押下したか否かを、上昇/下降ボタン入力回路27からの入力データによって判断し(図3ステップS2)、押下されている操作ボタンに対応した押下ボタン無線データを巻上機本体5に送信する(図3ステップS3)。
【0035】
なお、本実施の形態における押下ボタン無線データは、図5(a)に示すように、〔ID番号データ/上昇ボタン又は下降ボタン押下データ/誤り検出符号データ〕から構成されるものである。
【0036】
以下、本明細書では、作業者が無線操作ペンダント2の上昇ボタン23を押下し、所定時間経過後に上昇ボタン23の押下を中止した場合を例にとって説明する。
この場合、無線操作ペンダント2の制御回路26は、上記上昇/下降ボタン入力回路27からの押下データと、ID番号記憶回路29に記憶された無線操作ペンダント2のID番号データとを組み合わせて上述したような押下ボタン無線データを作成し、アンテナ35を介して巻上機本体5に送信する。
【0037】
本実施の形態では、無線操作ペンダント2の上昇ボタン23の押下中において継続して押下ボタン無線データの送信を行う(図3ステップS4)。
無線操作ペンダント2において、押下ボタン無線データを巻上機本体5に送信した後、上昇ボタン23の押下を中止した場合には、制御回路26は送受信切換スイッチ34を無線受信回路33側に切り換え、さらに無線受信回路33の機能を有効にする(図3ステップS5)。
この場合、上昇ボタン23の押下後又は押下中止後、所定の時間を経過した場合に無線送信回路32の機能を有効にするように設定する。
【0038】
一方、巻上機本体5側では、無線操作ペンダント2からの押下ボタン無線データを受信したか否かを、受信した当該無線データ内のID番号データをチェックすることにより判断する(図4ステップS12)。
具体的には、受信した無線データ内のID番号が巻上機本体5のID番号記憶回路59に格納されているID番号と一致していない場合は、受信した無線データを無効データとして廃棄し、次の押下ボタン無線データの受信準備をする。
【0039】
これに対し、受信した押下ボタン無線データ内のID番号が巻上機本体5のID番号記憶回路59に格納されているID番号と一致した場合には、受信した上昇ボタン押下データをチェックし、さらに巻上機本体5が正常に動作するか否かを判断する(図4ステップS13)。
ここで、巻上機本体5に異常がなく正常に上昇動作可能な場合には、受信した押下ボタン無線データに従って巻上機1の上昇動作を実行する(図4ステップS14)。
【0040】
さらに、巻上機本体5が押下ボタン無線データを継続して受信している間は上述した上昇動作を継続して実行するが、この状態から押下ボタン無線データを受信しなくなった場合には、上昇動作を停止し、当該処理を終了する(図4ステップS15)。その後、初期状態であるステップS11に戻る。
【0041】
一方、図4のステップS13において、巻上機本体5に異常等が発生していて上昇動作を実行できないと判断された場合は、無線操作ペンダント2からの上昇ボタンの押下無線デー夕を受信しなくなるまでそのままの状態で待機する(図4ステップS16)。
【0042】
そして、無線操作ペンダント2からの押下ボタン無線データを受信しなくなった時点において、無線送受信回路61の送受信切換スイッチ64を無線送信回路62側に切り換え、無線送信回路62の機能を有効にする(図4ステップS17)。これにより、巻上機本体5から無線操作ペンダント2に対して同期して無線送信することが可能になる。
そして、巻上機本体5内で発生している異常状態に対応した状態データと、巻上機本体5のID番号データと組み合わせて本体状態データを作成し、無線操作ペンダント2に対して本体状態データを無線送信する(図4ステップS18)。
【0043】
本実施の形態における本体状態データは、図5(b)に示すように、〔ID番号データ/巻上機本体の状態(異常状態の種類)データ/誤り検出符号データ〕から構成されるものである。
なお、本体状態データ送信後は、送受信切換スイッチ64を無線受信回路63側に切り換え、さらに無線送信回路62の機能を無効にし、無線受信回路63の機能を有効にする(図4ステップS19)。
【0044】
他方、操作ペンダント2の制御回路26は、所定の時間内に巻上機本体5からの本体状態データを受信するか否かをチェックし、所定の時間内に当該本体状態データを受信しなかった場合は、処理を終了する(図3ステップS6)。その後、初期状態であるステップS1に戻り、無線送信回路32の機能を有効にする。
【0045】
一方、図3のステップS6において、巻上機本体5からの本体状態データを受信した場合は、受信した本体状態データのID番号データをチェックし、無線操作ペンダント2内のID番号と一致しているか否かを確認する。
ここで、ID番号が一致しない場合は、処理を終了し、その後、初期状態であるステップS1に戻り、無線送信回路32の機能を有効にする。
【0046】
他方、図3のステップS6において、受信した本体状態データのID番号データと無線操作ペンダント2内のID番号が一致している場合、すなわち、該当する巻上機本体5からの本体状態データを受信した場合には、図3のステップS7に進む。
図3のステップS7では、受信した本体状態データから巻上機本体5の異常状態データを抽出し、当該データに対応するように状態表示ランプ25を所定の時間だけ表示させる。
【0047】
図6は、本実施の形態における状態表示ランプ25の点滅例を示す説明図である。
図6に示すように、本実施の形態においては、巻上機本体5の種々の状態を、操作ペンダント2の状態表示ランプ25の点滅周期を変えることによって表示する。
例えば、モータ電源電圧が低下してモータの駆動トルクが十分確保できない状態が発生した場合には、操作ペンダントの状態表示ランプを、図6の(1)に示す点滅周期(0.5秒間オン−1.5秒間オフ)で点滅を行い、これにより巻上機本体5がモータ電源電圧が低下している状態にあることを表示する。
【0048】
一方、モータ電源電圧が上昇して過電圧状態が発生した場合には、状態表示ランプを、図6の(2)に示す点滅周期(0.5秒間オン−0.5秒間オフ−0.5秒間オン−1.5秒間オフ)で点滅を行い、これにより巻上機本体5が過電圧状態にあることを表示する。
【0049】
また、モータ電流が上昇して過電流状態が発生した場合には、状態表示ランプ17を、図6の(3)に示す点滅周期(0.5秒間オン−0.5秒間オフ−0.5秒間オン−0.5秒間オフ)で点滅を行い、これにより巻上機本体5が過電流状態にあることを表示する。
【0050】
さらに、逆巻き状態が発生した場合には、状態表示ランプ17を、図6の(4)に示す点滅周期(0.5秒間オン−0.5秒間オフ−1.5秒間オン−1.5秒間オフ)で点滅を行い、これにより巻上機本体5が逆巻状態にあることを表示する。
【0051】
また、図3のステップS8では、受信した異常状態データに対応するように状態通知ブザー25aを動作させる。例えば、状態表示ランプ25のオンの時に、状態通知ブザー25aを鳴音させる。
その後、処理を終了し、初期状態である図3のステップS1に戻り、無線送信回路32の機能を有効にする。
なお、処理の迅速化の観点からは、状態データ受信後は、状態表示ランプ25(状態通知ブザー25a)の動作中であっても、初期状態である図3のステップS1に戻り、無線送信回路32の機能を有効にすることが好ましい。
【0052】
以上述べたように本実施の形態によれば、無線操作ペンダント2及び巻上機本体5とに、相互に無線データの送受信が可能な無線送受信回路31、61が設けられ、さらに無線操作ペンダント2には状態表示ランプ25、状態通知ブザー25aが設けられていることから、巻上機本体5に種々の異常が発生した場合に、作業者は巻上機本体5の状態を正確に知ることができ、これにより適切かつ迅速な対応処置を取らせることが可能になる。
【0053】
また、本実施の形態によれば、巻上機1の修理又はメンテナンスを行う場合において、異常が発生している箇所を正確に特定できるため、修理、メンテナンスがしやすくなる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、状態表示ランプの点滅例又は状態表示ブザーの鳴音例は一例であって、点滅周期、ON−OFFパターン又は鳴音周期、有音−無音パターンについて適宜変更することができる。
【0054】
また、上述した異常以外の異常又は状態についても、同様に装置に発生している各異常又は状態に応じて、状態表示ランプを予め決められた点滅周期で点滅したり、又は状態表示ブザーを予め決められた鳴音周期で鳴音するように設定することができる。
【0055】
さらに、異常又は状態に対応する状態表示ランプを複数設けることもでき、また異常又は状態を例えば文字で表示させることも可能である。
ただし、装置構成の簡素化を図る観点からは、上記実施の形態のように、1つの状態表示ランプを用い、点滅周期及び点滅パターンを変えて表示させることが好ましい。
【0056】
さらにまた、状態表示ランプと状態表示ブザーとをそれぞれ組み合わせて設けることもできる。この場合、例えば、状態表示ランプの点滅周期及び点滅パターンと状態表示ブザーの鳴音周期及び鳴音パターンとを同期させて動作させるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a):本実施の形態の巻上機の無線操作ペンダントの構成を示すブロック図(b):同巻上機の巻上機本体の構成を示すブロック図
【図2】同巻上機の操作ペンダントの外観を示す構成図
【図3】本実施の形態における無線操作ペンダントの制御方法の例を示すフローチャート
【図4】本実施の形態における巻上機本体の制御方法の例を示すフローチャート
【図5】(a):本実施の形態における押下ボタン無線データの構成図(b):本実施の形態における本体状態データの構成図
【図6】本実施の形態における状態表示ランプの点滅例を示す説明図
【図7】従来技術の操作ペンダントを示す平面図
【図8】従来技術の制御系を示すブロック図
【図9】従来の無線操作ペンダントを使用した巻上機の制御系を示すブロック図
【符号の説明】
【0058】
1…巻上機(無線式巻上機)、2…無線操作ペンダント(操作部)、5…巻上機本体、25…状態表示ランプ(状態表示器)、25a…状態通知ブザー(状態表示器)、32…無線送信回路、33…無線受信回路、50…巻上機構、62…無線送信回路、63…無線受信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の荷を保持して巻き上げ、かつ、巻き降ろすための巻上機構と、前記巻上機構を駆動する駆動モータと、前記駆動モータの動作を制御する制御手段と、当該巻上機本体の動作状態を検出する状態検出手段とを有する巻上機本体と、
作業者による前記巻上機構に対する動作指令を前記制御手段に与えるための操作部とを備え、
前記巻上機本体と前記操作部のそれぞれに、無線によるデータの送受信が可能な無線送信回路及び無線受信回路が設けられ、
前記操作部には、前記巻上機本体の状態検出手段にて得られ前記操作部に無線送信された結果に基づいて当該巻上機本体の状態を表示する状態表示器が設けられている無線式巻上機。
【請求項2】
前記巻上機本体と前記操作部とには、前記無線送信回路及び前記無線受信回路のうちのいずれか一方の機能を有効にし且つ他方の機能を無効にするための送受信切換スイッチがそれぞれ設けられている請求項1記載の巻上機。
【請求項3】
前記操作部の状態表示器が、点滅周期を変更して点灯可能な状態表示ランプを有し、前記巻上機本体の動作状態を検出した結果に基づいて前記状態表示ランプを所定の周期で点滅させるように構成されている請求項1又は2のいずれか1項記載の巻上機。
【請求項4】
前記状態表示器が、鳴音周期を変更して鳴音可能な状態通知ブザーを有し、当該装置の動作状態を検出した結果に基づいて前記状態通知ブザーを所定の周期で鳴音させるように構成されている請求項1乃至3のいずれか1項記載の巻上機。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の無線式巻上機を制御する方法であって、
前記操作部から押下ボタン無線データを送信し、前記巻上機本体において当該押下ボタン無線データを受信する際に、前記状態検出手段にて得られた結果に基づいて当該巻上機本体が正常に動作しないと判断した場合には、当該巻上機本体から当該巻上機本体の状態を示す情報を含む本体状態データを送信し、前記操作部において前記本体状態データを受信して、当該操作部の状態表示器において当該本体状態データに対応する表示を行うステップを有する無線式巻上機の制御方法。
【請求項6】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項記載の無線式巻上機を制御する方法であって、
前記操作部から押下ボタン無線データを送信し、前記巻上機本体において当該押下ボタン無線データを受信する際に、前記状態検出手段にて得られた結果に基づいて当該巻上機本体が正常に動作しないと判断した場合には、
前記巻上機本体の無線送信回路の機能を有効にし且つ無線受信回路の機能を無効にして、当該巻上機本体から当該巻上機本体の状態を示す情報を含む本体状態データを送信するステップと、
前記操作部の無線受信回路の機能を有効にし且つ無線送信回路の機能を無効にして、当該操作部において前記本体状態データを受信し、当該操作部の状態表示器において当該本体状態データに対応する表示を行うステップを有する無線式巻上機の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate