無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラム
【課題】送信電力にレベル差がある端末同士で通信する場合にも良好な通話品質を維持する。
【解決手段】無線端末装置TAは、通信要求時に、予め登録されているホームレピータから繰り返して送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する。無線端末装置TAは、通信許可を要求した先の中継装置より通信許可を受信できないときに、ホームレピータからのダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、相手側の無線通信端末装置TBに通信を要求する信号を送信する。
【解決手段】無線端末装置TAは、通信要求時に、予め登録されているホームレピータから繰り返して送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する。無線端末装置TAは、通信許可を要求した先の中継装置より通信許可を受信できないときに、ホームレピータからのダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、相手側の無線通信端末装置TBに通信を要求する信号を送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムに関する。より詳しくは、無線端末装置が他の無線端末装置との間で通信するための方式を設定する手順に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線端末装置の飛躍的な増加に伴って、レピータなどの中継装置が中継する通信量も増加の一途をたどっている。このため、無線端末装置が他の無線端末装置と通信を行う際に、所定の通信回線によって互いに接続された複数の中継装置の少なくとも1つを選択する分散型のトランキング方式の無線通信システムが普及してきている。さらに、レピータを介さずに無線端末装置同士の間で直接に通信するトークアラウンド方式の機能と、トランキング方式の機能とを具備する無線端末装置も知られている。
【0003】
トランキング方式及びトークアラウンド方式の機能を備えた無線端末装置は、レピータのサービスエリアから外れた場合すなわち圏外になった場合には、ユーザの操作によってレピータが中継するトランキング方式から無線端末装置同士が直接通信するトークアラウンド方式に切り替えられる。このようなユーザの操作を省略するために、トランキング方式の無線通信においてレピータに対する送信が失敗したときに、自動的にトークアラウンド方式に切り替える提案がなされている。例えば、特許文献1においては、外部コネクタとマイクロコンピュータとを備え、外部コネクタを介して供給されるトランクドシステム(トランキング方式)による交信を指示するトランクドシステム交信指示信号、TA(トークアラウンド)機能による交信を指示するTA交信指示信号及び送信周波数を指示する周波数指示信号をマイクロコンピュータに入力して記憶するようになっている。無線通信機は、トランクドシステム交信が指示されている場合、周波数指示信号に基づく送信周波数でレピータを介して送信処理を行い、あらかじめ定めた期間内にレピータから信号が帰ってこない状態が連続して数回あるときには、受信周波数を交信相手の送信周波数に設定し、さらに送信周波数を交信相手の受信周波数に設定して、トークアラウンド機能による交信を行う構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−60071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、レピータに送信した後、所定の期間内にレピータから信号が帰ってこない状態が連続して数回ある場合にはトークアラウンド方式による通信を行い、レピータから信号が帰ってきたときにはトランキング方式による通信を行う構成になっている。しかしながら、送信電力が比較的大きいレベルの無線端末装置(例えば、モービルタイプ)と、送信電力が小さい無線端末装置(例えば、電池駆動のポータブルタイプ)との間で通信を行っている場合に、両端末がレピータから離れてサービスエリアと圏外との境界付近に位置しているときには、通話品質の劣化が生じることがある。このような境界付近においては、送信電力が大きい無線端末装置はレピータに対してアップリンク信号を送信することも、レピータからダウンリンク信号を受信することもできるが、送信電力が小さい無線端末装置はレピータからのダウンリンク信号を受信することはできても、アップリンク信号がレピータに達しないことがある。特に、サービスエリアと圏外との境界近傍で、電波環境が不安定ないわゆるフレンジエリアにおいては、このような通話品質の劣化が顕著に発生する。このため、特許文献1の技術のように、レピータからのダウンリンク信号の検出の有無だけでトランキング方式とトークアラウンド方式を切り替える構成ではこの不具合を解決することができない。さらに、特許文献1の技術におけるトランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際には、受信周波数及び送信周波数の両方を変更しなければならないので、切り替えるための時間が長くなって通話が途絶えると通話品質の劣化が生じる原因になる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムを提供することを目的とする。
また、本発明は、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要のない無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線端末装置は、
中継装置の中継によって又は直接に相手側の無線端末装置との間で無線通信を行う無線端末装置であって、
通信要求時に、予め登録されている所定の前記中継装置(ホームレピータ)から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを特定し、特定した空きのチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段(21,S101〜S104)と、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信手段(CPU21、S118〜S131)と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
前記通信手段は、例えば、
相手無線端末装置からの応答を受信する応答受信手段(図2受信回路,20、S121)をさらに配置してもよい。この場合、例えば、応答が中継装置を介さない、相手先無線通信端末装置からの直接の応答であるか否かを判別する判別手段(CPU21,S122)と、
直接の応答であると判別した場合に、使用可能な周波数を特定する手段(CPU21,S130)と、
特定した使用可能な周波数に交信周波数を設定し、相手先無線通信端末装置と交信する直接交信手段(CPU21,S130)と、
を備える。
【0009】
前記通信許可要求手段は、例えば、前記通信許可を受信できない場合に、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号に含まれている空チャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを選択して、通信要求を再送する手段(S107〜S109,S207〜S208、203)を含んでもよい。
【0010】
前記通信手段は、例えば、通信要求を送信した後、通信許可を得られず且つダウンリンク信号を受信できなくなった場合(ステップS106;Yes,ステップS107;No)に、前記所定の中継装置のダウンリンク周波数に受信周波数と送信周波数を一致させて、信号を相手側無線端末装置に送信する(S120)手段を備えてもよい。
【0011】
通信許可が得られ、前記通信手段が信号を送信処理を行った後、相手側端末からの応答が得られず、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号を受信できる場合には、一定時間待機し、一定時間待機しても応答が受信できない場合には切断処理を実行する手段(S218,219)をさらに配置してもよい。
【0012】
通信状態を判別し、通信状態を示す情報を出力する手段(20、26)を、さらに配置してもよい。
【0013】
上述の無線端末装置と複数の前記中継装置とから無線通信システムを構成することも可能である。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る無線通信方法は、
中継装置より空きチャンネル情報を含むダウンリンク信号を送信し、
無線端末装置は、通信要求時に、所定の前記中継装置(ホームレピータ)から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを特定し、特定した空きのチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求し、
空きチャンネルを提供する中継装置より、通信を許可する場合には、許可信号を送信し、
無線端末装置は、前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るコンピュータプログラムは、
通信機能を備えるコンピュータを、
予め登録されている所定の前記中継装置(ホームレピータ)から繰り返して送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを特定し、特定した空きのチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段(21,S101〜S104)、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信要求手段(CPU21、S118〜S131)、
として機能させる。
また、このプログラムを、記録媒体に記録して配布・流通する等してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、トランキング方式により通常であれば通信できない場合であっても、通信が可能となる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1及び第2実施の形態における無線端末装置を適用した無線通信システムの構成図である。
【図2】図1の無線端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のレピータの構成を示すブロック図である。
【図4】マスタレピータ1からシステムバスに送出される同期信号及び同期信号に続く各レピータに割当てられたタイムスロットを含む図である。
【図5】(A)と(B)は、図1のレピータ及び無線端末装置の間で送受信されるフレームフォーマットを示す図である。
【図6】図1のレピータのサービスエリアと無線端末装置との位置関係を示す図である。
【図7】第1実施の形態において図2の無線端末装置のCPUの動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に続くCPUの動作を示すフローチャートである。
【図9】図2の無線端末装置の表示部の画像を示す図である。
【図10】第2実施の形態において図2の無線端末装置のCPUの動作を示すフローチャートである。
【図11】図10に続くCPUの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムの実施の形態について、図を参照して説明する。
【0019】
本実施の形態における無線通信システムのサイト100は、図1に示すように、複数(例えば最大30台)のレピータ1111〜111nが通信回線115を介して接続されている。複数のレピータ1111〜111nには、それぞれ固有の中継用チャンネルが割当てられており、同一の通信エリアの中継処理を担う。通信回線115で接続された複数のレピータ1111〜111nで、1つのレピータシステム(中継システム)130を構成する。つまり、レピータシステム130によって、チャンネル数n(nは、レピータの台数分)を有する1つの通信エリアが構成される。また、複数のレピータ1111〜111nによって構成されるレピータシステム130は、IP接続線などの通信回線116を介してサーバ104に接続される。一般に通信回線115を「システムバス」と称するので、以下の説明においては、通信回線115をシステムバス115という。
【0020】
サーバ104は、複数のレピータ1111〜111nの各種設定を遠隔操作により行うことができる。各レピータ1111〜111nは、レピータユニットとコントローラユニットから構成されている。また、各レピータ1111〜111nに関する情報(例えば、中継中か否か)は、システムバス115を介してやり取りされ、共有されている。各レピータ1111〜111nには、予めどのタイムスロットでシステムバス115にデータを送出するかが設定されている。このため、各レピータ1111〜111nは、予め設定されたタイムスロットにシステムバス115にデータを送出する。
【0021】
複数のレピータ1111〜111nのうち、1台が「マスタレピータ」として設定される。以下、複数のレピータ1111〜111nのうちレピータ1111がマスタレピータであるとして説明する。マスタレピータは、自装置も含めたレピータ1111〜111nの同期を取るための同期信号をシステムバス115に送出する。
【0022】
無線端末装置TA〜THは、レピータ1111〜111nのうち、いずれか1台のレピータをホームレピータとして登録している。無線端末装置TA〜THは、待ち受け状態においては、ホームレピータのダウンリンク信号を受信している。無線端末装置TA〜THは、ホームレピータのダウンリンク信号に挿入されている空きチャンネル情報を取得し、この空きチャンネルにチャンネル周波数を移動して、他の無線端末装置との通話を行う。そして、通話が終了すると、チャンネル周波数をホームレピータのチャンネル周波数に戻し、待ち受け状態に戻る。図1では、無線端末装置TA〜TDがレピータ1111をホームレピータ、無線端末装置TE及びTFがレピータ1112をホームレピータ、無線端末装置TG及びTHがレピータ1113をホームレピータとしている。
【0023】
図1の無線通信システムは、無線端末装置TA〜THが複数のレピータ1111〜111nを共用し、その中から中継用に少なくとも1つのレピータを適宜選択する分散型のトランキングシステムである。分散型のトランキングシステムは、制御用の専用チャンネルを有しておらず、全てのチャンネルが、制御チャンネルであり、かつ、通話チャンネルとなる。例として、無線端末装置TAが同じホームレピータに登録された他の無線端末装置TB〜TDと通話を行う場合を想定する。この場合、無線端末装置TAは、自己のホームレピータであるレピータ1111からのダウンリンク信号に含まれている通話可能なチャンネルを示すチャンネル情報を取得し、取得したチャンネル情報に基づいて通話可能なチャンネルを判別する。無線端末装置TAは、判別した通話可能なチャンネルの1つ(例えば、レピータ1113が提供するチャンネル)を選択し、選択したチャンネルに自己のチャンネル周波数(受信周波数、送信周波数)を移動する。
【0024】
さらに、無線端末装置TAは、このチャンネル(レピータ1113)に通話許可要求を送信し、このチャンネルを提供しているレピータ1113より通話を許可する旨の応答を受け取ってリンクを確立する。レピータ1113は、通信回線116を介してホームレピータ1111に、通信相手の無線端末装置TB〜TDの呼び出しを要求する。ホームレピータ1111は、無線端末装置TB〜TDに、無線端末装置TAがリンクを確立した通話チャンネル(レピータ1113が提供するチャンネル)への移動を指示する制御信号を含むフレームを送信する。通話の相手である無線端末装置TB〜TDは、この制御信号を、ホームレピータ1111より受け取り、チャンネル周波数を指示されたチャンネル用に変更し、無線端末装置TAとの通話を行う。つまり、レピータ1111は、自己をホームレピータとして登録している無線端末装置TA〜TDに対しては、制御チャンネルとして動作し、他の無線端末装置TE〜THに対しては通話チャンネルとして動作する。ここで、無線端末装置TA〜TD間の通話は、無線端末装置TA〜TD全体でのグループ通話や、さらにグループの単位を細分化して、例えば、無線端末装置TA及びTBから構成される小グループでのグループ通話、又は、1台の無線端末装置を対象とした個別呼び出し(「Individual Call」という)などがある。
【0025】
次に、各無線端末装置TA〜TH及び各レピータ1111〜111nの構成及び機能について説明する。図2は、図1の無線端末装置TA〜THの構成を示すブロック図である。図3は、図1のレピータ1111〜111nの構成を示すブロック図である。図4は、マスタレピータ1111からシステムバス115に送出される同期信号及び同期信号に続く各レピータに割当てられているタイムスロットを示す図である。図5(A)、(B)は、レピータと無線端末装置との間で送受信される通信フレームのフォーマットを示す図である。通信フレームはヘッダ部Hとデータ部Dで構成されている。ヘッダ部H及びデータ部Dの詳細な内容については後述する。
【0026】
図2に示すように、無線端末装置TA〜THは、信号系のブロックとして、アンテナANTSR、送受信切換部11、送信部12、ベースバンド処理部13、A/D変換部14、マイク15、受信部16、ベースバンド処理部17、D/A変換部18、スピーカ19を備えている。また、無線端末装置TA〜THは、制御系のブロックとして、コントローラ20、計時部25、表示部26、操作部27を備えている。さらに、コントローラ20は、CPU(中央演算ユニット)21、I/O(入出力部)22、RAM(読み書き可能メモリ)23、ROM(読み出し専用メモリ)24、及びこれらを互いに接続する内部バス28を備えている。
【0027】
無線端末装置TA〜THの信号系のブロックはCPU21によって制御される。CPU21は、ROM24に記憶されている制御プログラムを実行して無線端末装置の全体を制御し、I/O22を介して操作部27から入力されるコマンドやデータ、及びベースバンド処理部17から得られるデータを処理してRAM23に一時的に記憶する。また、CPU21は、必要に応じて記憶したコマンドやデータ、現在の通信状態を示す情報をLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部26に表示する。また、CPU21は、計時部25から得られる現在時刻を表示部26に表示する。なお、コントローラ20は、無線端末装置の固有の識別情報を記録したフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリカードが着脱可能に装着される構成であってもよい。
また、操作部27は、PTT(Push To Talk)ボタンを備える。PTTボタンは、ユーザが通話する際に操作され(押され)、CPU21に通話を指示する。
【0028】
次に、信号系のブロックに関して、送受信切換部11は、一端がアンテナANTSRに接続され、他端がCPU21の制御に応じて、送信部12と受信部16に択一的に接続される。操作部27により発信操作がされない(例えば、操作部27のPTT(Push To Talk)ボタンが押されていない)ときには、この無線端末装置は受信(待受)モードになっており、送受信切換部11の出力端は受信部16に接続されている。一方、操作部27により送信操作がされた(例えば、操作部27のPTTボタンが押された)ときは、この無線端末装置は送信モードになり、送受信切換部11の出力端は送信部12に接続される。
【0029】
マイク15は、無線端末装置TA〜THが送信モードのときに、ユーザの音声入力に応じて、アナログの音声信号をA/D変換部14に出力する。
【0030】
A/D変換部14は、マイク15からのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換してベースバンド処理部13に出力する。
【0031】
ベースバンド処理部13は、A/D変換部14からのデジタル音声信号に基づいて、あるいはコントローラ20のRAM23に記憶されているデータに基づいて、所定のフォーマットの通信フレーム(ベースバンド信号)を生成して送信部12に出力する。図5を参照して後述するように、通信フレームの中には、その通信フレームが、無線端末装置から送信されたものであることを示す識別フラグIFが付加されている。
【0032】
送信部12は、ベースバンド処理部13からの通信フレームを用いて搬送波を変調し、送受信切換部11及びアンテナANTSRを介して中継動作中のレピータに対して送信する。送信部12の変調方式には、GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、又はFSK(Frequency Shift Keying)などが用いられる。
【0033】
無線端末装置TA〜THが受信モードの場合には、送受信切換部11はアンテナANTSRと受信部16とを接続する。受信部16は、レピータ1111〜111nからの無線信号をアンテナANTSRを介して受信する。受信部16は、受信信号を増幅すると共に、復調処理などの信号処理を施して、その復調信号をベースバンド処理部17に出力する。
【0034】
ベースバンド処理部17は、受信部16から出力された復調信号から通信フレームを抽出する。さらに、抽出した通信フレームのヘッダ部Hの情報をCPU21に出力する。CPU21は、ヘッダ部Hの情報を分析して、その受信信号の送信先が自局の場合には、データ部Dに含まれている音声信号のデータについてはD/A変換部18に出力させ、データ部Dに含まれている音声信号以外のデータについてはRAM23に一時的にストアすると共に必要に応じて表示部26に表示する。D/A変換部18は、ベースバンド処理部17からのデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換してスピーカ19から発音させる。
【0035】
レピータ1111〜111nは、それぞれ、図3に示すように、信号系のブロックとして、送信専用のアンテナANTS、送信部32、ベースバンド処理部33、受信専用のアンテナANTR、受信部36、ベースバンド処理部37、入力部6、出力部7、ネットワークI/F(インターフェース)8を備えている。また、レピータ1111〜111nは、それぞれ、制御系のブロックとして、コントローラ40、計時部45、表示部46、操作部47、を備えている。さらに、コントローラ40は、CPU(中央演算ユニット)41、I/O(入出力部)42、RAM(読み書き可能メモリ)43、ROM(読み出し専用メモリ)44、及びこれらを互いに接続する内部バス48を備えている。また、レピータ1111〜111nは、システムバス115に自装置の情報を送出し、他のレピータからの情報を取得するためのバスI/F(インターフェース)9を備えている。
【0036】
レピータ1111〜111n(例えば、レピータ1111)は、送信元の無線端末装置(例えば、無線端末装置TA)から受信した無線信号を増幅処理や波形処理などの信号処理を行って、送信先の無線端末装置(例えば、無線端末装置TB)に対して送信する。
【0037】
レピータ1111〜111nは、基本的には、受信した通信フレームの実体を変更することなく、受信チャンネルとは異なるチャネル(周波数やタイムスロット)を変えて送信するものである。ただし、通信フレームに含まれている識別フラグIFについては、通信フレームが無線端末装置から送信されたものであることを示す値から、通信フレームがレピータで中継されたものであるこを示す値に書き換える。
【0038】
レピータ1111〜111nは、基本的には図2に示した無線端末装置TA〜THと同様の構成を備えている。したがって、図2に示した無線端末装置TA〜THの構成要素と基本的に同じものについては、同一の符号で表し、それらの動作については無線端末装置TA〜THと重複するので説明を省略する。
【0039】
レピータ1111〜111nを経由して無線端末装置TA〜TH同士が通信を行う場合には、無線端末装置からレピータへの送信のアップリンクと、レピータから無線端末装置への送信のダウンリンクとは、周波数又はタイムスロットを変えて実質的に同時に通信する。したがって、レピータ1111〜111nは送信専用のアンテナANTS及び受信専用のアンテナANTRを備えている。また、複数のレピータ1111〜111nの各々は、図1に示したように、システムバス115を介して相互に接続され、IP接続線などの通信回線116を介してサーバ104に接続されている。
【0040】
入力部6は、CPU41の制御によって、ネットワークI/F8と通信回線116とを介して、サーバ104より供給されたデータ等を入力し、ベースバンド処理部33に供給する。
出力部7は、CPU41の制御によって、ベースバンド処理部37から供給されたデータを、ネットワークI/F8と通信回線116とを介して、サーバ104に出力する。
【0041】
入力部6と出力部7とは、さらに、別の通信エリアを構成する他のサイトとの通信を行うマルチサイトネットワークを構築する場合は、ネットワークI/F8を介して他のサイトのレピータと通信フレームの送受信を行う。バスI/F9は、CPU41の入力制御によって、マスタレピータによってシステムバスに送出された同期信号や、自装置以外の他のレピータからシステムバスに送出されるレピータ情報の取得、CPU41の出力卸御によってシステムバスへの自装置の情報の送出を仲介する。
【0042】
また、ベースバンド処理部37は、CPU41の制御に従って、受信部36が受信・復調したベースバンド信号から元のデータ(通信フレーム)を再生し、ベースバンド処理部33に供給する。
【0043】
ベースバンド処理部33は、CPU41の制御に従って、受信した通信フレームに含まれている識別フラグIFを、レピータからの信号であることを示す値、例えば、”1”に変更し、改めて、ベースバンド信号を生成し、送信部32に出力する。
【0044】
次に、実施の形態における無線端末システムが処理する信号のフォーマットについて、図4及び図5を参照して説明する。
【0045】
図4は、システムバス115上を伝送される同期信号のフォーマットを示す。
この同期信号は1周期が80msになっており、前半の40msは、スロット0からスロット31までの32個のスロットで構成されている。したがって、各スロットは1.25msの時間長になっている。最初のスロット0は同期信号であり、決められたアルゴリズムに従って、特定の1つのレピータすなわちマスタレピータ1111が送出し、他のレピータ1112〜111nはスレーブレピータになって、この同期信号を取得する。レピータ1111〜111n、すなわちレピータシステム130は、この同期信号に同期して動作している。レピータ1111〜111nには、同期用のスロット0以外のスロット1〜スロット31のいずれかが割当てられている。各レピータ1111〜111nは、共用する各レピータの情報を自装置に割当てられたスロットに書き込む。マスタレピータであるレピータ1111は、スロット0には同期信号を送出し、また、スロット1〜スロット31のうちレピータ1111に割当てられたスロットにレピータ1111の情報(例えば、空き状態か中継中かを示す情報等)を書き込む。なお、最後のスロット31は将来の拡張機能のための外部機器接続用として使用する。
【0046】
図5(A)に通話チャンネルとのリンク確立時の通信フレームのフォーマット、図5(B)に音声及びデータ通信時の通信フレームのフォーマットの一例を示す。図5(A)及び(B)において、通信フレームのフォーマットは80msの384ビットで構成される。また、初期送信時に限りフレームの先頭に24ビット以上のプリアンブル(P)が付加される。FSWはフレーム同期ワード、LICHはリンク情報チャンネル、SCCHはトランキング制御用のシグナリング情報チャンネル、Gはガードタイムである。
【0047】
LICHは、この送信フレームが、無線端末装置が送信したフレームであるか、無線端末装置が送信してレピータが再送信した通信フレームをであるかを識別するための「識別フラグIF」を含む。この識別フラグの値を判別することにより、無線端末装置から直接送信された通信フレームであるか、レピータによって折り返された通信フレームであるかを判別するこことが可能である。
【0048】
図6は、図1のレピータ1112の中継によって又は直接に無線端末装置TAと無線端末装置TBとが通信を行う様子を示す図である。図7及び図8は、無線端末装置TAのCPU21によって実行される無線通信方法の動作を示すフローチャートである。図9は、図2の無線端末装置TA、TBの表示部26の画像を示す図である。
【0049】
図6において、点線の円(S−AREA)は、レピータ1111〜111nのサービスエリアを示す。サービスエリアS−AREA内では、電波環境は良好である。一方、サービスエリアの外側で且つ2点鎖線の円内の環状の範囲(F−AREA)は電波環境が不安定なフレンジエリアであり、フレンジエリアの外側はレピータ1111〜111nの中継ができない領域、すなわち圏外である。ただし、図6においては、無線端末装置TA及び無線端末装置TBは、ホームレピータであるレピータ1111からダウンリンクの通信フレームに含まれる空きチャンネルの情報を取得し、レピータ1112を通話チャンネルとして設定して通話を行うものとし、図の複雑化を避けるために、レピータ1111〜111nをレピータシステム130として表し、無線端末装置TA及び無線端末装置TB以外を省略している。
【0050】
フレンジエリアF−AREAにおいては、レピータ1112からのダウンリンク信号は無線端末装置TA、TBに達するが、無線端末装置TA、TBからのアップリンク信号でレベルが小さいものはレピータ1112に達しない。フレンジエリアの外側の圏外においては、無線端末装置TA、TBからのアップリンク信号がレピータ1112まで達しないだけでなく、レピータ1112からのダウンリンク信号も無線端末装置TA、TBに達しない。
【0051】
この場合において、図6の無線端末装置TAは送信電力のレベルが比較的大きいモービルタイプを想定し、無線端末装置TBは送信電力のレベルが小さいポータブルタイプを想定する。
【0052】
まず、サービスエリアに位置している一方の無線端末装置、例えば無線端末装置TA(1)は、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが登録されているホームレピータ1111のダウンリンクの通信フレームから取得した空きチャンネル情報に基づいた通話チャンネルとしてのレピータ1112に対して、周波数fu(例えば、435.00MHz)のアップリンク信号を送信し、通話を要求する。レピータ1112は、通話可能であれば、通話許可を無線端末装置TA(1)に返信すると共に無線通信端末TB(1)のホームレピータ1111に、無線通信端末TB(1)が、レピータ1112が提供する通信チャンネルにその通信チャンネルを移動させることを要求する。通話許可に応答して、無線端末装置TA(1)は、通話データを含むアップリンク信号を送信する。無線端末装置TA(1)からアップリンク信号を受信したレピータ1112は、その周波数fuを周波数fd(例えば、440.00MHz)にシフトしたダウンリンク信号に変換し、増幅処理やその他の必要な信号処理を施して、他方の無線端末装置TB(1)に送信する。一方、レピータ1111は、レピータ1112からの要求に応答して、無線端末装置TB(1)に通信チャネルを、レピータ1112が提供する通信チャンネルに移動することを指示する制御信号を送信する。これに応答して、無線端末装置TB(1)は、レピータ1112が提供するチャンネルの周波数に通信チャネルを合わせる。
同様に、無線端末装置TB(1)が、通話するときは、レピータ1112に対して周波数fuのアップリンク信号を送信し、レピータ1112はそのアップリンク信号を周波数fdのダウンリンク信号に変換して、無線端末装置TA(1)に送信する。すなわち、サービスエリア内においては、無線端末装置TA(1)及び無線端末装置TB(1)は、レピータ1112の中継によるトランキング方式の通信を行うことができる。
【0053】
圏外に位置している無線端末装置TA(2)及び無線端末装置TB(2)は、レピータ1112を介することなく、後に説明する通り、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが登録されているレピータ1111のダウンリンク信号の周波数と同じ周波数fdの無線信号を送受信して、トークアラウンド方式の通信を行う。すなわち、無線端末装置TA(2)及び無線端末装置TB(2)の各々は、トランキング方式における送信信号の周波数fuをホームレピータ1111のダウンリンク信号の周波数fdに変更し、受信信号の周波数についてはホームレピータ1111のダウンリンク信号の周波数fdをそのまま維持する。ただし、圏外に位置する無線端末装置TA(2)及び無線端末装置TB(2)の送信信号の周波数をレピータ1112からのダウンリンク信号の周波数fdとし、受信信号については周波数fdに維持する場合もありうる。これは、後述する通り、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが通話中にレピータ1112のサービスエリアから圏外に移動した場合の動作である。このように、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが、トランキングシステムのサービスエリアの圏外で、レピータによる中継なしに、直接通信をする場合は、送信信号の周波数と受信信号の周波数は、レピータ1112からのダウンリンク信号の周波数に限らない。要するに、無線端末装置TA及び無線端末装置TBの送信信号の周波数と受信信号の周波数とを圏外における空きチャンネルの周波数に一致させればよい。
【0054】
フレンジエリアに位置している無線端末装置TA(3)及び無線端末装置TB(3)において、モービルタイプの無線端末装置TA(3)は送信電力が比較的大きいので、レピータ1112との間で無線信号の送受信が可能である。すなわち、周波数fuのアップリンク信号をレピータ1112に送信し、周波数fdのダウンリンク信号をレピータ1112から受信することができる。一方、電池駆動のポータブルタイプの無線端末装置TB(3)は、送信電力が小さいので、周波数fdのダウンリンク信号をレピータ1112から受信することはできるが、周波数fuのアップリンク信号を送信することはできない。
【0055】
すなわち、移動局としての無線端末装置TA及び無線端末装置TBは、レピータ1112との位置関係及び送信電力のレベル差によって、通信状態が変化する。
【0056】
次に、第1実施の形態における無線端末装置TA〜THの通信動作について、図2のCPU21によって実行される図7及び図8のフローチャート及び図9を参照して詳細に説明する。
【0057】
ここでは、無線端末装置TAから無線端末装置TBに対して呼び出しを行うことで、無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間で通話が開始される場合を想定し、無線端末装置TA側の処理を説明する。無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間の通話はホームレピータ1111以外のレピータ1112〜111nのいずれかを介して行われる。レピータ1112〜111nのいずれかを介して1回の送信が終わった場合、(音声通信の場合、操作部27(一般的にはPTTスイッチなど)の操作を解除した時点で)、無線端末装置TA及びTBの通話チャンネルは、ホームレピータ1111が提供する通話チャンネルに戻るものとする。図9は、無線端末装置TAの表示部26に表示されたアイコンの画像である。図9において、Tは無線端末装置TAを表し、Rはレピータ111を表している。なお、自局側の無線端末装置Tはマーク(図の黒丸)で識別されている。
【0058】
無線端末装置TAの電源が投入されると、CPU21は図7及び図8のフローチャートに示す処理を開始する。
まず、無線端末装置TAのCPU21は、ホームレピータであるレピータ1111からダウンリンク信号の通信フレームを受信したか否かを判別する(ステップS101)。CPU21は、ダウンリンク信号を受信したときは(ステップS101;Yes)、そのダウンリンク信号が制御情報であるか否かを判別する(ステップS102)。受信したダウンリンク信号が制御信号でない場合(ステップS102;NO)、CPU21は、ダウンリンク信号に含まれる空きチャンネル情報を取得し、RAM23に書き込む。
続いて、CPU21は、操作部27のPTTスイッチが押されているか否か、即ち、通話の指示がだされているか否かを判別する(ステップS100)。PTTスイッチがおされていなければ(ステップS100;No)ステップS101にリターンする。一方、PTTスイッチが押されていれば(ステップS100;Yes)、CPU21は、RAM23に記憶されている情報に基づいて、通信周波数を空きチャンネルのチャンネル周波数へ移動し(ステップS103)、通話許可要求を送信する(ステップSl04)。
【0059】
続いて、CPU21は、通話許可要求を送ったレピータから通話を許可する旨の応答を受信したか否かを判別し(ステップS105)、通話を許可する旨の応答を受信した場合は(ステップS105;YES)、レピータ111を介したトランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示し(ステップS110)、送信処理を実行する(ステップS1ll)。
【0060】
図9(1)は、トランキング方式の通話状態を示すアイコン画像である。CPU21は、送信処理が終了したか否かを判別し(ステップS112)、(PTTスイッチの押下が放されたか否か)、送信処理が終了した場合は(ステップS112;YES)、ホームレピータであるレピータ1111のチャンネル周波数へチャンネル周波教を戻し(ステップS117)、ホームレピータからのダウンリンク信号を受信する。
【0061】
ステップS102で制御情報を受信した場合は(ステップS102;YES)、CPU21は、制御情報に基づき、チャンネル周波数を移動し(ステップS113)、レピータを介したトランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示し(ステップS114)、受信処理を実行する(ステップS1l5)。続いて、CPU21は、ステップS116で受信が終了したか否かを判別し(レピータからのダウンリンクの通信フレームに、送信側の無線端末装置TがPTTスイッチの押下を放したことを示す「TX_REL」が含まれているか否か)、受信終了の場合は、(ステップS116:YES)、ホームレピータであるレピータ1111のチャンネル周波数へチャンネル周波数を戻し(ステップS117)、ホームレピータからのダウンリンク信号を受信する。サイト100のカバレッジエリアにいる場合は、上記の送信・受信を繰り返して、通話相手である無線端末装置との通話を行う。
【0062】
通話をしようとした場合に、フレンジエリアF−AREAや圏外にいると本来的には通話ができない。しかし、本実施形態では、一時的にホームレピータのダウンリンク周波数を使用して通話を行う。通話相手となる無線端末装置は、基本的に同じホームレピータに登録された無線端末装置である。無線端末装置は、待ち受け状態においてホームレピータのダウンリンク信号を受信しているし、1回の送信・受信が終了するたびに、すなわち、PTTスイッチが放されると、また、ホームレピータのチャンネル周波数に戻る。通話をしようとして、ホームレピータからのダウンリンク信号に含まれる空きチャンネルへ移動して、通話許可要求を何度も送るが、通話を許可する旨の応答を受信できない場合は、フレンジエリアにいる可能性が高く(ステップS106で所定回数を超えた場合)、ステップSl06で所定回数を超えなくても、ダウンリンク信号を受信できなくなった場合(ステップS107;NO)は圏外にいる可能性が高いことになる。
【0063】
このときに、通話相手は、他の無線端末装置とホームレピータ以外のレピータでの通話中でない限り、ホームレピータのダウンリンク信号を受信している。従って、フレンジエリアF−AREAや圏外にいる無線端末装置から、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数で通信フレームを送信すれば、通話相手に対して通信フレームを送信できる可能性がある。例えば、通話相手の無線端末装置が圏外にいて、レピータ1111からのダウンリンク信号が届かない場合でも、無線端末装置同士の距離が近い場合には、直接、無線端末装置同士で、一時的にホームレピータのダウンリンクの周波数で通信フレームを送受信して、通話することが可能であり、圏外の無線端末装置は、自分が圏外にいることを相手に伝えることができる。
【0064】
このような前提のもとで、ステップS106でYESの場合及びステップS107でNOの場合(即ち、通話要求を出したにもかかわらず通話許可が得られない場合及びダウンリンク信号を得られない場合には)、CPU21は、送信周波数をホームレピータのダウンリンクの周波数に設定し(すなわち、送信周波数及び受信周波数ともにホームレピータのダウンリンクの周波数に設定し)(ステップS118)、通話状態を示すアイコン(図9(2))を表示部26に表示し(ステップS119)、通常の通信フレーム(図5(A),(B))を送信する処理を実行し(ステップS120)、相手側の無線端末装置TBからの応答を待つ。
この場合には、相手側の無線端末装置TBがどこにいるかは不明であるが、仮に、無線端末装置TBが無線端末装置TAから直接送信された無線信号を受信した場合、応答信号を無線送信する。この応答信号は、レピータ経由で又は無線端末装置TAに直接送信される。
無線端末装置TAは、無線端末装置TBからの応答を受信した場合(ステップS121;YES)、受信フレーム中の、識別フラグIFの値から、レピータ経由の通信フレームであるか直接送信されたフレームであるかを判別する(ステップS122)。
CPU21は、判別した通話状態を表す画像を表示する(ステップS123,S126)。
例えば、レピータ経由の場合、ステップS123で図9(3)の画像が表示され、レピータを経由していない場合、ステップS126では、図9(2)の画像が表示される。
受信フレームがレピータ経由の通信フレームの場合(ステップS122;YES)、CPU21は、判別した通話状態を表す画像(例えば、図9(3)の画像)を表示部26に表示する(ステップS123)。続いて、CPU21は、応答を相当する通信フレームの受信を継続し(ステップS124)、受信が終了すると(ステップS125;YES)、制御は、ステップS101にリターンする。
一方、受信フレームがレピータを経由していない通信フレームの場合(ステップS122;NO)、CPU21は、判別した通話状態を表す画像(例えば、図9(2)の画像)を表示部26に表示する(ステップS126)。続いて、応答を相当する通信フレームの受信を継続し(ステップS127)、受信が終了すると(ステップS128;YES)、CPU21は、通話が終了したか否かを判別する(ステップS129)。通話が終了していれば(ステップS129;YES)、ステップS101にリターンする。
一方、通話が終了していなければ(ステップS129;NO)、CPU21は、通信可能な周波数で通信を行う(ステップS130,S131)。
即ち、レピータを介さない直接通信を行う場合は、他の無線端末装置間の通信を妨害する可能性があるため、いつまでも、ホームレピータのダウンリンクの周波数を使用する訳にいかない。そこで、CPU21は、使用可能な周波数を探して、その周波数を使用した通話を行う(ステップS130)。使用可能な周波数は、例えば、予め定められている周波数、受信周波数をスキャンして信号を受信できない周波数などを使用できる。
その後、通話が終了すると(ステップS131;YES)、フローはステップS117に進む。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の無線通信システムによれば、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる。また、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要がないので、切り替え時間が短くなり、通話が途絶えるおそれがなく良好な通話品質を維持できる。さらに、レピータのサービスエリアと圏外との境界であるフレンジエリアに位置している場合に、相手側の無線端末装置の送信電力のレベルが小さくて、トランキング方式の通話ができない場合でも、相手側の無線端末装置がサービスエリアに復帰した際に、改めて空きチャネルを確保する必要がなくなり、空きチャネルの確保のために通話が中断せず良好な通話品質を維持できる。
【0066】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における無線端末装置TA〜THについて、図2のCPU21によって実行される動作を、図10及び図11のフローチャート及び図9を参照して詳細に説明する。第2実施の形態においても、無線端末装置TAから無線端末装置TBに対して呼び出しを行うことで、無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間で通話が開始される場合を想定し、無線端末装置TA側の処理を説明する。
【0067】
無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間の通話はホームレピータ1111以外のレピータ1112〜111nのいずれかを介して行われる。レピータ1112〜111nのいずれかを介して1回の送信が終わった場合、すなわち、音声通信の場合、操作部27(一般的にはPTTスイッチなど)の操作を解除した時点で、通話チャンネルからホームレピータ1111へ戻るものとする。図9は、無線端末装置TAの表示部26に表示されたアイコンの画像である。図9において、Tは無線端末装置TAを表し、Rはレピータ111を表している。なお、自局側の無線端末装置TAはマーク(図の黒丸)で識別されている。
【0068】
まず、通話確立までの処理について説明する。無線端末装置TAのCPU21は、図10,図11に示す処理を繰り返して実行する。
まず、CPU21は、待ち受け状態においては、無線端末装置TAが登録されているホームレピータ(レピータ1111)からのダウンリンク信号を別処理で受信している。CPU21は、ホームレピータからダウンリンク信号の通信フレームを受信したか否かを判別し(ステップS200)、ダウンリンク信号を受信したときは、そのダウンリンク信号の通信フレームの中から空きチャンネル情報を取得し、RAM23に格納する。
続いて、CPU21は、PTTボタンが押されているか否かを判別する(ステップS201)。押されていなければ(ステップS201;NO)、CPU21は、自装置が呼び出されているか否かを判別し、呼び出されていれば、所定の受信処理(例えば、ステップS113〜S117と同様)を行う。
PTTボタンが押されていれば(ステップS201;YES)、CPU21は、RAM23から空きチャンネル情報を読み出して、空きチャンネルであるレピータ1112の通話チャンネルの周波数に移動する(ステップS202)。次に、無線端末装置TAのCPU21は、レピータ1112に対して通話許可を要求する(ステップS203)。
【0069】
無線端末装置TAのCPU21は、レピータ1112から通話を許可する旨の応答を受信したか否かを判別し(ステップS204)、レピータ1112から通話を許可する旨の応答がない場合は(ステップS204;NO)、レピータ1112からダウンリンク信号を受信しているか否かを判別する(ステップS205)。レピータ1112からダウンリンク信号を受信している場合は(ステップS205;YES)、CPU21は、通話許可要求を送信した回数(連続リトライ回数)と、予め設定している所定回数とを比較し、通話許可要求を送信した回数が所定回数を超えたか否かを判別する(ステップS206)。
【0070】
通話許可要求を送信した連続回数が所定回数以下である場合には(ステップS206;NO)、CPU21は、レピータ1112から他の無線端末装置に対するダウンリンク信号の通信フレームの中から空きチャンネル情報を取得して(ステップS207)、チャンネル周波数をその空きチャンネルの周波数へ移動して(ステップS208)、ステップS203において通話許可を要求する。
【0071】
すなわち、ステップS205でYESであり、ステップS206でNOの場合には、レピータ1112が既に他の無線端末装置間の通話チャンネルとして使用中であるか、又は、他の無線端末装置に対して通話を許可する旨の応答を送信している場合であるため、受信したダウンリンク信号の中に含まれる空きチャンネル情報を取得して、チャンネル周波数を変更する。したがって、無線端末装置TAのCPU21は、レピータ1112から通話を許可する旨の応答を受信するまで、ステップS203からステップS208までの処理ループを繰り返す。
【0072】
レピータ1112から通話を許可する旨の応答を受信した場合には(ステップS204;YES)、CPU21は、トランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示して(ステップS209)、トランキング方式の送信処理を実行する(ステップS210)。すなわち、通話確立の処理に移行する。図9(1)は、トランキング方式の通話状態を示すアイコン画像である。通話確立の後は、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS211)、通話が終了した場合には(ステップS211;YES)、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのチャンネル周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0073】
ステップS205においてダウンリンク信号を受信しない場合(ステップS205;NO)、無線端末装置TAは圏外に位置していることが想定される。また、ステップS206において通話許可要求を送信した回数が所定回数を超えた場合(ステップS206;YES)、無線端末装置TAはフレンジエリアF−AREAに位置していることが想定される。この場合には、CPU21は、通話許可を受信した回数が1回以上であるか否かを判別する(ステップS213)。通話許可を受信した回数が1回もない場合には(ステップS213;NO)、CPU21は、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのチャンネル周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0074】
ステップS211において通話が終了していない場合には(ステップS211;NO)、CPU21は、相手側すなわち無線端末装置TBからの応答を受信したか否かを判別し(ステップS214)、無線端末装置TBからの応答を受信しない場合には(ステップS214;NO)、レピータ1112からダウンリンク信号を受信したか否かを判別する(ステップS218)。レピータ1112からダウンリンク信号を受信した場合(ステップS218;YES)、CPU21は、一定時間が経過したか否かを判別する(ステップS219)。例えば、無線端末装置TBのユーザが応答に手間取っているか、あるいは、一時的にフレンジエリア又は圏外に移動したことが想定されるので、一定時間の余裕を持って応答受信を待つ。一定時間が経過しない場合には(ステップS219;NO)、CPU21は、ステップS214において無線端末装置TBからの応答を受信したか否かを判別する。
【0075】
すなわち、無線端末装置TAのCPU21は、無線端末装置TBと通話中に無線端末装置TBから応答を受信できなくなった場合には、レピータ1112からダウンリンク信号を受信している限り、一定時間が経過するまで、ステップS214、S218、S219の処理ループを繰り返して、無線端末装置TBからの応答を待つ。
【0076】
ステップS219において一定時間が経過したときは(ステップS219;YES)、CPU21は、無線端末装置TBとの間でトランキング方式の通話ができなくなったと判断して、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0077】
ステップS214において無線端末装置TBからの応答を受信した場合には(ステップS214;YES)、CPU21は、トランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示して(ステップS215)、トランキング方式の送信処理を実行する(ステップS216)。この後は、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS217)、通話が終了した場合には(ステップS217;YES)、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。通話が終了していない場合には(ステップS217;NO)、CPU21は、ステップS203において通話許可を要求する。
【0078】
レピータ1112からのダウンリンクを受信しているが(ステップS205;YES)、通話許可を送信した連続回数が所定回数を超えており(ステップS206;YES)、ステップS213において通話許可を受信した回数が1回以上である場合には(ステップS213;YES)、無線端末装置TBとの通話中に、自局である無線端末装置TAがフレンジエリアF−AREAに移動していることが想定される。レピータ1112からのダウンリンクを受信しておらず(ステップS205;NO)、ステップS213において通話許可を受信した回数が1回以上である場合には(ステップS213;YES)、無線端末装置TBとの通話中に、自局である無線端末装置TAがフレンジエリアF−AREAに移動したことが想定される。
【0079】
また、ステップS218においてレピータ1112からダウンリンク信号を受信しない場合には(ステップS218;NO)、無線端末装置TAは無線端末装置TBとの通話中に圏外に移動したことが想定されるが、無線端末装置TBの状態は不明である。しかし、無線端末装置TAも無線端末装置TBも、レピータ1112を介した通話中であるため、チャンネル周波数がレピータ1112のチャンネル周波数に設定されている状態にある。すなわち、無線端末装置TBとの位置関係によっては、直接通信が可能であり、送信側となる無線端末装置T(ここでは無線端末装置TA)が周波数fdで相手側(受信側)の無線端末装置Tへ送信することで通話可能となる。よって、上述のように、通話中にフレンジエリアF−AREA、又は、圏外へ移動したと想定される場合、無線端末装置TAのCPU21は、送信周波数をレピータ1112へのアップリンクの周波数fuからダウンリンクの周波数fdに変更し、すなわち、送信周波数及び受信周波数を共にダウンリンク信号の周波数fdの状態に設定する(図11のステップS220)。すなわち、無線端末装置TAは、トランキング方式からトークアラウンド方式に遷移する。そして、CPU21は、トークアラウンド方式の通話状態を表示部26に表示し(ステップS221)、送信処理を行う(ステップS222)。図9(2)は、トークアラウンド方式の通話状態を示すアイコン画像である。
【0080】
次に、CPU21は、相手側すなわち無線端末装置TBからの応答を受信したか否かを判別する(ステップS223)。無線端末装置TBからの応答を受信した場合には(ステップS223;YES)、通話が確立したことになる。次に、CPU21は、この通話確立がレピータ1112を経由したものであるか否かを判別する(ステップS224)。通話確立がレピータ1112を経由したものである場合には(ステップS224;YES)、CPU21は、複合方式の通話状態を表示部26に表示し(ステップS225)、複合方式での受信処理を行う(ステップS226)。図9(3)は、複合方式の通話状態を示すアイコン画像である。
【0081】
次に、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS227)、通話が終了した場合には(ステップS227;YES)、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。また、ステップS223において無線端末装置TBからの応答を受信しない場合にも(ステップS223;NO)、CPU21は、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0082】
図11のステップS224において通話確立がレピータ1112を経由したものでない場合には(ステップS224;NO)、CPU21は、トークアラウンド方式の通話状態を表示部26に表示し(ステップS228)、トークアラウンド方式での受信処理を行う(ステップS229)。次に、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS230)、通話が終了した場合には(ステップS230;YES)、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0083】
ステップS230においてトークアラウンド方式の通話が終了していない場合には(ステップS230;NO)、無線端末装置TA及び無線端末装置TB間の直接通信を行う(ステップS231)。次に、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS232)、通話が終了した場合には(ステップS232;YES)、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0084】
図11のステップS227において複合方式での通話が終了していないと判別された場合には(ステップS227;NO)、再びトランキング方式での通話を試みるために、CPU21は、送信周波数をアップリンク信号の周波数fuに設定し、受信周波数をダウンリンク信号の周波数fdに設定する(ステップS233)。次に、CPU21は、レピータ1112に対して通話許可を要求する(ステップS234)。続いて、CPU21は、レピータ1112から通話許可の応答を受信したか否かを判別し(ステップS235)、通話許可の応答を受信できない場合(ステップS235;NO)、すなわち、トランキング方式での通話ができない場合には、ステップS220において送信周波数及び受信周波数を共にダウンリンク信号の周波数fdに設定して、複合方式からトークアラウンド方式に遷移する。
【0085】
ステップS235においてレピータ1112から通話許可の応答を受信した場合には(ステップS235;YES)、複合方式からトランキング方式に遷移して、CPU21は、図10のステップS209においてトランキング方式の通話状態を表示部26に表示する。この後は、トランキング方式での送信処理を行って(ステップS210)、無線端末装置TBとの間でトランキング方式による通話を行う。
【0086】
こうして、第2の実施の形態の無線通信システムでも、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる。また、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要がないので、切り替え時間が短くなり、通話が途絶えるおそれがなく良好な通話品質を維持できる。さらに、レピータのサービスエリアと圏外との境界であるフレンジエリアに位置している場合に、相手側の無線端末装置の送信電力のレベルが小さくて、トランキング方式の通話ができない場合でも、相手側の無線端末装置がサービスエリアに復帰した際に、改めて空きチャネルを確保する必要がなくなり、空きチャネルの確保のために通話が中断せず良好な通話品質を維持できる。
【0087】
なお、図6に示したサービスエリア及びフレンジエリアの範囲は固定的なものではなく、周囲温度などの気候の変化、他の電波の状況、電離層の影響などによって変動する。特に、フレンジエリアの範囲は領域自体が狭く変動も大きいので、複合方式からトランキング方式又はトークアラウンド方式に変化する可能性が高い。
【0088】
以上のように、第1実施の形態及び第2実施の形態について説明したが、第1実施の形態と第2の実施の形態との間には、共通点と相違点とがある。以下、第1実施の形態と第2の実施の形態との共通点及び相違点について説明する。
【0089】
第1実施の形態および第2実施の形態ともに、無線通信端末TAおよびTBは、待ち受け状態においては、ホームレピータであるレピータ1111のダウンリンク信号を受信している。つまり、待ち受け状態のチャンネル周波数は、ホームレピータであるレピータ1111のチャンネル周波数である。通話を開始するにあたり、送信側である無線端末装置TAは、ホームレピータであるレピータ1111のダウンリンク信号に含まれる空きチャンネル情報を取得し、取得した空きチャンネルヘチャンネル周波数を合わせて、通話要求を送信する。これら第1及び第2実施の形態では、レピータ1112が空きチャンネルであり、レピータ1112に対して通話要求を送信する。レピータ1112からの通話を許可する旨の応答を受けてレピータ1112と無線端末装置TAとのリンクが確立する。このとき、無線端末装置TBにとってホームレピータであるレピータ1111から無線端末装置TBに対して、レピータ1112のチャンネル周波数へ移動する旨の制御信号が送られるので、無線端末装置TBは、この制御信号を受信して、チャンネル周波数を移動して無線端末装置TAからの通話を受ける。ここまでは、第1実施の形態と第2実施の形態は同じある。
【0090】
無線端末装置の操作に関して、通話する場合、PTTスイッチを押して喋るが、喋り終わった後、PTTスイッチを放す(この操作については、第1実施の形態と第2実施の形態は同じ)。第1実施の形態では、PTTスイッチを離した時点で、無線端末装置はホームレピータのチャンネル周波数に戻る。レピータ1112は、無線端末装置TAがPTTを放した時に通信フレームに挿入される「TX REL」を受け取り、ダウンリンクとして送出すると「空きチャンネル」状態となる。無線端末装置TBは、レピータ1112からの中継フレームの「TX REL」を受信するとホ−ムレピータのチャンネル周波数に戻る。つまり、PTTスイッチを放すと、ホームレピータに戻る。無線端末装置TBから無線端末装置TAに対して応答がある場合は、無線端末装置TBはホームレピータであるレピータ1111からのダウンリンク信号に含まれる空きチャンネル情報を取得し、取得した空きチャンネルヘチャンネル周波数を合わせて、通話要求を送信する。通話許可要求を送ったレピータから通話を許可する旨の応答を受けて空きチャンネルを提供するレピータと無線端末装置TBとのリンクが確立する。このとき、無線端末装置TAにとってホームレピータであるレピータ1111から無線端末装置TAに対して、無線端末装置TBとのリンクが確立したレピータのチャンネル周波数へ移動する旨の制御信号が送られるので、無線端末装置TAは、この制御信号を受信し、チャンネル周波数を移動して無線端末装置TBからの通話を受ける。以下、通話が続く限り、この動作を繰り返す。
【0091】
一方、第2実施の形態では、PTTスイッチが放されて「TX REL」を受け取っても、レピータ1112は、しばらくの間、無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間の通話チャンネル状態を保持している。よって、第1実施の形態では、無線端末装置TAおよび無線端末装置TBとは、トランキングシステムの圏外へ移動してしまった場合、ホームレピータのダウンリンク周波数(場合によっては、一方がホームレピータを介して他方が直接通話)で一時的に直接通話を行うものであり、第2実施の形態では、通話チャンネルであるレピータ1112のダウンリンク周波数(場合によっては、一方がレピータ1112を介して他方が直接通信)で一時的に直接通信を行う。
【0092】
以上のように、上記各実施の形態においては、無線端末装置TAは、レピータ1112から送信される第1の周波数fdのダウンリンク信号の有無を検出し、周波数fdのダウンリンク信号から相手側の無線端末装置TBの捕捉の有無を検出する。無線端末装置TAは、フェーズ1として、周波数fdのダウンリンク信号から相手側の無線端末装置TBの捕捉が検出されたときは、レピータ1112から周波数fdのダウンリンク信号を受信するとともに第2の周波数fuのアップリンク信号をレピータ1112に送信して、相手側の無線端末装置TBとの間でトランキング方式の通信設定を行い、フェーズ2として、周波数fdのダウンリンク信号が検出されない場合には、ダウンリンク信号と同じ周波数fdの無線信号によって相手側の無線端末装置TBとの間でトークアラウンド方式の通信設定を行い、フェーズ3として、検出した周波数fdのダウンリンク信号から相手側の無線端末装置TBの捕捉が検出されない場合には、周波数fuのアップリンク信号をレピータ1112に送信するとともに、ダウンリンク信号と同じ周波数fdの無線信号を相手側の無線端末装置TBから受信して、相手側の無線端末装置TBとの間でトランキング方式及びトークアラウンド方式の複合方式の通信設定を行う。
【0093】
この場合において、無線端末装置TAは、無線端末装置TBとの間でトランキング方式の通話中に、無線端末装置TBから受信する周波数fdの受信信号がレピータ1112から受信したものでなく、且つ、その受信信号が周波数fuのアップリンク信号に応答したものでない場合には、トランキング方式からトークアラウンド方式に遷移し、無線端末装置TBから受信する周波数fdの受信信号がレピータ1112から受信したものでなく、且つ、その受信信号が周波数fuのアップリンク信号に応答したものである場合には、トランキング方式から複合方式に遷移する。
【0094】
したがって上記各実施の形態によれば、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる。また、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要がないので、切り替え時間が短くなり、通話が途絶えるおそれがなく良好な通話品質を維持できる。さらに、レピータ1112のサービスエリアと圏外との境界であるフレンジエリアF−AREAに位置している場合に、相手側の無線端末装置の送信電力のレベルが小さくて、トランキング方式の通話ができない場合でも、レピータ1112のチャネルを保持した状態で通話を行うので、相手側の無線端末装置がサービスエリアに復帰した際に、改めて空きチャネルを確保する必要がなくなり、空きチャネルの確保のために通話が中断せず良好な通話品質を維持できる。
【0095】
上記実施の形態において、無線端末装置TA〜THは、通信状態を明示するアイコンの画像を表示部26に表示するようにしたが、最初の通話状態から、通話状態が変更した場合のみアイコン画像を表示するようにしてもよい。また、特に必要でなければアイコン画像を表示しないようにしてもよい。
【0096】
通話状態を明示するアイコン画像を表示部26に表示する場合には、無線端末装置TA〜THのユーザは、現在の通信状態を容易かつ的確に把握することが可能になる。その結果、自局の位置がサービスエリア、フレンジエリア又は圏外であるかを認識できるとともに、移動中であるときにはどのエリアの方向に移動しているかを認識することもできる。また、現在の通話状態に応じて送信出力を切り替えることにより、消費電力を低減させることも可能になる。
【0097】
なお、上記各実施の形態は本発明を説明するためのものであり、本発明は上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、当業者によって考えられる他の実施の形態や変形例についても本発明に属するものである。
【0098】
例えば、上記実施の形態においては、自局が圏外に移動していないかどうかをレピータ111からの通話を許可する旨の応答の有無によって確認する構成にしたが、通話を許可する旨の応答の有無の代わりにダウンリンク信号の電界強度や、図5に示したフレームフォーマットのヘッダ部Hのデータの抽出によって、自局が圏外に移動していないかどうかを認識する構成にしてもよい。要は、レピータ1112からのダウンリンク信号を確実に検出して、そのダウンリンク信号に含まれている情報を抽出できるか否かを判断できればよい。
【符号の説明】
【0099】
1111〜111n レピータ
TA〜TH 無線端末装置
S−AREA サービスエリア
F−AREA フレンジエリア
fd 第1の周波数
fu 第2の周波数
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムに関する。より詳しくは、無線端末装置が他の無線端末装置との間で通信するための方式を設定する手順に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線端末装置の飛躍的な増加に伴って、レピータなどの中継装置が中継する通信量も増加の一途をたどっている。このため、無線端末装置が他の無線端末装置と通信を行う際に、所定の通信回線によって互いに接続された複数の中継装置の少なくとも1つを選択する分散型のトランキング方式の無線通信システムが普及してきている。さらに、レピータを介さずに無線端末装置同士の間で直接に通信するトークアラウンド方式の機能と、トランキング方式の機能とを具備する無線端末装置も知られている。
【0003】
トランキング方式及びトークアラウンド方式の機能を備えた無線端末装置は、レピータのサービスエリアから外れた場合すなわち圏外になった場合には、ユーザの操作によってレピータが中継するトランキング方式から無線端末装置同士が直接通信するトークアラウンド方式に切り替えられる。このようなユーザの操作を省略するために、トランキング方式の無線通信においてレピータに対する送信が失敗したときに、自動的にトークアラウンド方式に切り替える提案がなされている。例えば、特許文献1においては、外部コネクタとマイクロコンピュータとを備え、外部コネクタを介して供給されるトランクドシステム(トランキング方式)による交信を指示するトランクドシステム交信指示信号、TA(トークアラウンド)機能による交信を指示するTA交信指示信号及び送信周波数を指示する周波数指示信号をマイクロコンピュータに入力して記憶するようになっている。無線通信機は、トランクドシステム交信が指示されている場合、周波数指示信号に基づく送信周波数でレピータを介して送信処理を行い、あらかじめ定めた期間内にレピータから信号が帰ってこない状態が連続して数回あるときには、受信周波数を交信相手の送信周波数に設定し、さらに送信周波数を交信相手の受信周波数に設定して、トークアラウンド機能による交信を行う構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−60071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術では、レピータに送信した後、所定の期間内にレピータから信号が帰ってこない状態が連続して数回ある場合にはトークアラウンド方式による通信を行い、レピータから信号が帰ってきたときにはトランキング方式による通信を行う構成になっている。しかしながら、送信電力が比較的大きいレベルの無線端末装置(例えば、モービルタイプ)と、送信電力が小さい無線端末装置(例えば、電池駆動のポータブルタイプ)との間で通信を行っている場合に、両端末がレピータから離れてサービスエリアと圏外との境界付近に位置しているときには、通話品質の劣化が生じることがある。このような境界付近においては、送信電力が大きい無線端末装置はレピータに対してアップリンク信号を送信することも、レピータからダウンリンク信号を受信することもできるが、送信電力が小さい無線端末装置はレピータからのダウンリンク信号を受信することはできても、アップリンク信号がレピータに達しないことがある。特に、サービスエリアと圏外との境界近傍で、電波環境が不安定ないわゆるフレンジエリアにおいては、このような通話品質の劣化が顕著に発生する。このため、特許文献1の技術のように、レピータからのダウンリンク信号の検出の有無だけでトランキング方式とトークアラウンド方式を切り替える構成ではこの不具合を解決することができない。さらに、特許文献1の技術におけるトランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際には、受信周波数及び送信周波数の両方を変更しなければならないので、切り替えるための時間が長くなって通話が途絶えると通話品質の劣化が生じる原因になる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムを提供することを目的とする。
また、本発明は、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要のない無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る無線端末装置は、
中継装置の中継によって又は直接に相手側の無線端末装置との間で無線通信を行う無線端末装置であって、
通信要求時に、予め登録されている所定の前記中継装置(ホームレピータ)から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを特定し、特定した空きのチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段(21,S101〜S104)と、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信手段(CPU21、S118〜S131)と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
前記通信手段は、例えば、
相手無線端末装置からの応答を受信する応答受信手段(図2受信回路,20、S121)をさらに配置してもよい。この場合、例えば、応答が中継装置を介さない、相手先無線通信端末装置からの直接の応答であるか否かを判別する判別手段(CPU21,S122)と、
直接の応答であると判別した場合に、使用可能な周波数を特定する手段(CPU21,S130)と、
特定した使用可能な周波数に交信周波数を設定し、相手先無線通信端末装置と交信する直接交信手段(CPU21,S130)と、
を備える。
【0009】
前記通信許可要求手段は、例えば、前記通信許可を受信できない場合に、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号に含まれている空チャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを選択して、通信要求を再送する手段(S107〜S109,S207〜S208、203)を含んでもよい。
【0010】
前記通信手段は、例えば、通信要求を送信した後、通信許可を得られず且つダウンリンク信号を受信できなくなった場合(ステップS106;Yes,ステップS107;No)に、前記所定の中継装置のダウンリンク周波数に受信周波数と送信周波数を一致させて、信号を相手側無線端末装置に送信する(S120)手段を備えてもよい。
【0011】
通信許可が得られ、前記通信手段が信号を送信処理を行った後、相手側端末からの応答が得られず、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号を受信できる場合には、一定時間待機し、一定時間待機しても応答が受信できない場合には切断処理を実行する手段(S218,219)をさらに配置してもよい。
【0012】
通信状態を判別し、通信状態を示す情報を出力する手段(20、26)を、さらに配置してもよい。
【0013】
上述の無線端末装置と複数の前記中継装置とから無線通信システムを構成することも可能である。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る無線通信方法は、
中継装置より空きチャンネル情報を含むダウンリンク信号を送信し、
無線端末装置は、通信要求時に、所定の前記中継装置(ホームレピータ)から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを特定し、特定した空きのチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求し、
空きチャンネルを提供する中継装置より、通信を許可する場合には、許可信号を送信し、
無線端末装置は、前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する、
ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るコンピュータプログラムは、
通信機能を備えるコンピュータを、
予め登録されている所定の前記中継装置(ホームレピータ)から繰り返して送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きのチャンネルを特定し、特定した空きのチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段(21,S101〜S104)、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信要求手段(CPU21、S118〜S131)、
として機能させる。
また、このプログラムを、記録媒体に記録して配布・流通する等してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、トランキング方式により通常であれば通信できない場合であっても、通信が可能となる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1及び第2実施の形態における無線端末装置を適用した無線通信システムの構成図である。
【図2】図1の無線端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1のレピータの構成を示すブロック図である。
【図4】マスタレピータ1からシステムバスに送出される同期信号及び同期信号に続く各レピータに割当てられたタイムスロットを含む図である。
【図5】(A)と(B)は、図1のレピータ及び無線端末装置の間で送受信されるフレームフォーマットを示す図である。
【図6】図1のレピータのサービスエリアと無線端末装置との位置関係を示す図である。
【図7】第1実施の形態において図2の無線端末装置のCPUの動作を示すフローチャートである。
【図8】図7に続くCPUの動作を示すフローチャートである。
【図9】図2の無線端末装置の表示部の画像を示す図である。
【図10】第2実施の形態において図2の無線端末装置のCPUの動作を示すフローチャートである。
【図11】図10に続くCPUの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る無線端末装置、無線通信方法、無線通信システム及びプログラムの実施の形態について、図を参照して説明する。
【0019】
本実施の形態における無線通信システムのサイト100は、図1に示すように、複数(例えば最大30台)のレピータ1111〜111nが通信回線115を介して接続されている。複数のレピータ1111〜111nには、それぞれ固有の中継用チャンネルが割当てられており、同一の通信エリアの中継処理を担う。通信回線115で接続された複数のレピータ1111〜111nで、1つのレピータシステム(中継システム)130を構成する。つまり、レピータシステム130によって、チャンネル数n(nは、レピータの台数分)を有する1つの通信エリアが構成される。また、複数のレピータ1111〜111nによって構成されるレピータシステム130は、IP接続線などの通信回線116を介してサーバ104に接続される。一般に通信回線115を「システムバス」と称するので、以下の説明においては、通信回線115をシステムバス115という。
【0020】
サーバ104は、複数のレピータ1111〜111nの各種設定を遠隔操作により行うことができる。各レピータ1111〜111nは、レピータユニットとコントローラユニットから構成されている。また、各レピータ1111〜111nに関する情報(例えば、中継中か否か)は、システムバス115を介してやり取りされ、共有されている。各レピータ1111〜111nには、予めどのタイムスロットでシステムバス115にデータを送出するかが設定されている。このため、各レピータ1111〜111nは、予め設定されたタイムスロットにシステムバス115にデータを送出する。
【0021】
複数のレピータ1111〜111nのうち、1台が「マスタレピータ」として設定される。以下、複数のレピータ1111〜111nのうちレピータ1111がマスタレピータであるとして説明する。マスタレピータは、自装置も含めたレピータ1111〜111nの同期を取るための同期信号をシステムバス115に送出する。
【0022】
無線端末装置TA〜THは、レピータ1111〜111nのうち、いずれか1台のレピータをホームレピータとして登録している。無線端末装置TA〜THは、待ち受け状態においては、ホームレピータのダウンリンク信号を受信している。無線端末装置TA〜THは、ホームレピータのダウンリンク信号に挿入されている空きチャンネル情報を取得し、この空きチャンネルにチャンネル周波数を移動して、他の無線端末装置との通話を行う。そして、通話が終了すると、チャンネル周波数をホームレピータのチャンネル周波数に戻し、待ち受け状態に戻る。図1では、無線端末装置TA〜TDがレピータ1111をホームレピータ、無線端末装置TE及びTFがレピータ1112をホームレピータ、無線端末装置TG及びTHがレピータ1113をホームレピータとしている。
【0023】
図1の無線通信システムは、無線端末装置TA〜THが複数のレピータ1111〜111nを共用し、その中から中継用に少なくとも1つのレピータを適宜選択する分散型のトランキングシステムである。分散型のトランキングシステムは、制御用の専用チャンネルを有しておらず、全てのチャンネルが、制御チャンネルであり、かつ、通話チャンネルとなる。例として、無線端末装置TAが同じホームレピータに登録された他の無線端末装置TB〜TDと通話を行う場合を想定する。この場合、無線端末装置TAは、自己のホームレピータであるレピータ1111からのダウンリンク信号に含まれている通話可能なチャンネルを示すチャンネル情報を取得し、取得したチャンネル情報に基づいて通話可能なチャンネルを判別する。無線端末装置TAは、判別した通話可能なチャンネルの1つ(例えば、レピータ1113が提供するチャンネル)を選択し、選択したチャンネルに自己のチャンネル周波数(受信周波数、送信周波数)を移動する。
【0024】
さらに、無線端末装置TAは、このチャンネル(レピータ1113)に通話許可要求を送信し、このチャンネルを提供しているレピータ1113より通話を許可する旨の応答を受け取ってリンクを確立する。レピータ1113は、通信回線116を介してホームレピータ1111に、通信相手の無線端末装置TB〜TDの呼び出しを要求する。ホームレピータ1111は、無線端末装置TB〜TDに、無線端末装置TAがリンクを確立した通話チャンネル(レピータ1113が提供するチャンネル)への移動を指示する制御信号を含むフレームを送信する。通話の相手である無線端末装置TB〜TDは、この制御信号を、ホームレピータ1111より受け取り、チャンネル周波数を指示されたチャンネル用に変更し、無線端末装置TAとの通話を行う。つまり、レピータ1111は、自己をホームレピータとして登録している無線端末装置TA〜TDに対しては、制御チャンネルとして動作し、他の無線端末装置TE〜THに対しては通話チャンネルとして動作する。ここで、無線端末装置TA〜TD間の通話は、無線端末装置TA〜TD全体でのグループ通話や、さらにグループの単位を細分化して、例えば、無線端末装置TA及びTBから構成される小グループでのグループ通話、又は、1台の無線端末装置を対象とした個別呼び出し(「Individual Call」という)などがある。
【0025】
次に、各無線端末装置TA〜TH及び各レピータ1111〜111nの構成及び機能について説明する。図2は、図1の無線端末装置TA〜THの構成を示すブロック図である。図3は、図1のレピータ1111〜111nの構成を示すブロック図である。図4は、マスタレピータ1111からシステムバス115に送出される同期信号及び同期信号に続く各レピータに割当てられているタイムスロットを示す図である。図5(A)、(B)は、レピータと無線端末装置との間で送受信される通信フレームのフォーマットを示す図である。通信フレームはヘッダ部Hとデータ部Dで構成されている。ヘッダ部H及びデータ部Dの詳細な内容については後述する。
【0026】
図2に示すように、無線端末装置TA〜THは、信号系のブロックとして、アンテナANTSR、送受信切換部11、送信部12、ベースバンド処理部13、A/D変換部14、マイク15、受信部16、ベースバンド処理部17、D/A変換部18、スピーカ19を備えている。また、無線端末装置TA〜THは、制御系のブロックとして、コントローラ20、計時部25、表示部26、操作部27を備えている。さらに、コントローラ20は、CPU(中央演算ユニット)21、I/O(入出力部)22、RAM(読み書き可能メモリ)23、ROM(読み出し専用メモリ)24、及びこれらを互いに接続する内部バス28を備えている。
【0027】
無線端末装置TA〜THの信号系のブロックはCPU21によって制御される。CPU21は、ROM24に記憶されている制御プログラムを実行して無線端末装置の全体を制御し、I/O22を介して操作部27から入力されるコマンドやデータ、及びベースバンド処理部17から得られるデータを処理してRAM23に一時的に記憶する。また、CPU21は、必要に応じて記憶したコマンドやデータ、現在の通信状態を示す情報をLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部26に表示する。また、CPU21は、計時部25から得られる現在時刻を表示部26に表示する。なお、コントローラ20は、無線端末装置の固有の識別情報を記録したフラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリカードが着脱可能に装着される構成であってもよい。
また、操作部27は、PTT(Push To Talk)ボタンを備える。PTTボタンは、ユーザが通話する際に操作され(押され)、CPU21に通話を指示する。
【0028】
次に、信号系のブロックに関して、送受信切換部11は、一端がアンテナANTSRに接続され、他端がCPU21の制御に応じて、送信部12と受信部16に択一的に接続される。操作部27により発信操作がされない(例えば、操作部27のPTT(Push To Talk)ボタンが押されていない)ときには、この無線端末装置は受信(待受)モードになっており、送受信切換部11の出力端は受信部16に接続されている。一方、操作部27により送信操作がされた(例えば、操作部27のPTTボタンが押された)ときは、この無線端末装置は送信モードになり、送受信切換部11の出力端は送信部12に接続される。
【0029】
マイク15は、無線端末装置TA〜THが送信モードのときに、ユーザの音声入力に応じて、アナログの音声信号をA/D変換部14に出力する。
【0030】
A/D変換部14は、マイク15からのアナログ音声信号をデジタル音声信号に変換してベースバンド処理部13に出力する。
【0031】
ベースバンド処理部13は、A/D変換部14からのデジタル音声信号に基づいて、あるいはコントローラ20のRAM23に記憶されているデータに基づいて、所定のフォーマットの通信フレーム(ベースバンド信号)を生成して送信部12に出力する。図5を参照して後述するように、通信フレームの中には、その通信フレームが、無線端末装置から送信されたものであることを示す識別フラグIFが付加されている。
【0032】
送信部12は、ベースバンド処理部13からの通信フレームを用いて搬送波を変調し、送受信切換部11及びアンテナANTSRを介して中継動作中のレピータに対して送信する。送信部12の変調方式には、GMSK(Gaussian filtered Minimum Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、又はFSK(Frequency Shift Keying)などが用いられる。
【0033】
無線端末装置TA〜THが受信モードの場合には、送受信切換部11はアンテナANTSRと受信部16とを接続する。受信部16は、レピータ1111〜111nからの無線信号をアンテナANTSRを介して受信する。受信部16は、受信信号を増幅すると共に、復調処理などの信号処理を施して、その復調信号をベースバンド処理部17に出力する。
【0034】
ベースバンド処理部17は、受信部16から出力された復調信号から通信フレームを抽出する。さらに、抽出した通信フレームのヘッダ部Hの情報をCPU21に出力する。CPU21は、ヘッダ部Hの情報を分析して、その受信信号の送信先が自局の場合には、データ部Dに含まれている音声信号のデータについてはD/A変換部18に出力させ、データ部Dに含まれている音声信号以外のデータについてはRAM23に一時的にストアすると共に必要に応じて表示部26に表示する。D/A変換部18は、ベースバンド処理部17からのデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換してスピーカ19から発音させる。
【0035】
レピータ1111〜111nは、それぞれ、図3に示すように、信号系のブロックとして、送信専用のアンテナANTS、送信部32、ベースバンド処理部33、受信専用のアンテナANTR、受信部36、ベースバンド処理部37、入力部6、出力部7、ネットワークI/F(インターフェース)8を備えている。また、レピータ1111〜111nは、それぞれ、制御系のブロックとして、コントローラ40、計時部45、表示部46、操作部47、を備えている。さらに、コントローラ40は、CPU(中央演算ユニット)41、I/O(入出力部)42、RAM(読み書き可能メモリ)43、ROM(読み出し専用メモリ)44、及びこれらを互いに接続する内部バス48を備えている。また、レピータ1111〜111nは、システムバス115に自装置の情報を送出し、他のレピータからの情報を取得するためのバスI/F(インターフェース)9を備えている。
【0036】
レピータ1111〜111n(例えば、レピータ1111)は、送信元の無線端末装置(例えば、無線端末装置TA)から受信した無線信号を増幅処理や波形処理などの信号処理を行って、送信先の無線端末装置(例えば、無線端末装置TB)に対して送信する。
【0037】
レピータ1111〜111nは、基本的には、受信した通信フレームの実体を変更することなく、受信チャンネルとは異なるチャネル(周波数やタイムスロット)を変えて送信するものである。ただし、通信フレームに含まれている識別フラグIFについては、通信フレームが無線端末装置から送信されたものであることを示す値から、通信フレームがレピータで中継されたものであるこを示す値に書き換える。
【0038】
レピータ1111〜111nは、基本的には図2に示した無線端末装置TA〜THと同様の構成を備えている。したがって、図2に示した無線端末装置TA〜THの構成要素と基本的に同じものについては、同一の符号で表し、それらの動作については無線端末装置TA〜THと重複するので説明を省略する。
【0039】
レピータ1111〜111nを経由して無線端末装置TA〜TH同士が通信を行う場合には、無線端末装置からレピータへの送信のアップリンクと、レピータから無線端末装置への送信のダウンリンクとは、周波数又はタイムスロットを変えて実質的に同時に通信する。したがって、レピータ1111〜111nは送信専用のアンテナANTS及び受信専用のアンテナANTRを備えている。また、複数のレピータ1111〜111nの各々は、図1に示したように、システムバス115を介して相互に接続され、IP接続線などの通信回線116を介してサーバ104に接続されている。
【0040】
入力部6は、CPU41の制御によって、ネットワークI/F8と通信回線116とを介して、サーバ104より供給されたデータ等を入力し、ベースバンド処理部33に供給する。
出力部7は、CPU41の制御によって、ベースバンド処理部37から供給されたデータを、ネットワークI/F8と通信回線116とを介して、サーバ104に出力する。
【0041】
入力部6と出力部7とは、さらに、別の通信エリアを構成する他のサイトとの通信を行うマルチサイトネットワークを構築する場合は、ネットワークI/F8を介して他のサイトのレピータと通信フレームの送受信を行う。バスI/F9は、CPU41の入力制御によって、マスタレピータによってシステムバスに送出された同期信号や、自装置以外の他のレピータからシステムバスに送出されるレピータ情報の取得、CPU41の出力卸御によってシステムバスへの自装置の情報の送出を仲介する。
【0042】
また、ベースバンド処理部37は、CPU41の制御に従って、受信部36が受信・復調したベースバンド信号から元のデータ(通信フレーム)を再生し、ベースバンド処理部33に供給する。
【0043】
ベースバンド処理部33は、CPU41の制御に従って、受信した通信フレームに含まれている識別フラグIFを、レピータからの信号であることを示す値、例えば、”1”に変更し、改めて、ベースバンド信号を生成し、送信部32に出力する。
【0044】
次に、実施の形態における無線端末システムが処理する信号のフォーマットについて、図4及び図5を参照して説明する。
【0045】
図4は、システムバス115上を伝送される同期信号のフォーマットを示す。
この同期信号は1周期が80msになっており、前半の40msは、スロット0からスロット31までの32個のスロットで構成されている。したがって、各スロットは1.25msの時間長になっている。最初のスロット0は同期信号であり、決められたアルゴリズムに従って、特定の1つのレピータすなわちマスタレピータ1111が送出し、他のレピータ1112〜111nはスレーブレピータになって、この同期信号を取得する。レピータ1111〜111n、すなわちレピータシステム130は、この同期信号に同期して動作している。レピータ1111〜111nには、同期用のスロット0以外のスロット1〜スロット31のいずれかが割当てられている。各レピータ1111〜111nは、共用する各レピータの情報を自装置に割当てられたスロットに書き込む。マスタレピータであるレピータ1111は、スロット0には同期信号を送出し、また、スロット1〜スロット31のうちレピータ1111に割当てられたスロットにレピータ1111の情報(例えば、空き状態か中継中かを示す情報等)を書き込む。なお、最後のスロット31は将来の拡張機能のための外部機器接続用として使用する。
【0046】
図5(A)に通話チャンネルとのリンク確立時の通信フレームのフォーマット、図5(B)に音声及びデータ通信時の通信フレームのフォーマットの一例を示す。図5(A)及び(B)において、通信フレームのフォーマットは80msの384ビットで構成される。また、初期送信時に限りフレームの先頭に24ビット以上のプリアンブル(P)が付加される。FSWはフレーム同期ワード、LICHはリンク情報チャンネル、SCCHはトランキング制御用のシグナリング情報チャンネル、Gはガードタイムである。
【0047】
LICHは、この送信フレームが、無線端末装置が送信したフレームであるか、無線端末装置が送信してレピータが再送信した通信フレームをであるかを識別するための「識別フラグIF」を含む。この識別フラグの値を判別することにより、無線端末装置から直接送信された通信フレームであるか、レピータによって折り返された通信フレームであるかを判別するこことが可能である。
【0048】
図6は、図1のレピータ1112の中継によって又は直接に無線端末装置TAと無線端末装置TBとが通信を行う様子を示す図である。図7及び図8は、無線端末装置TAのCPU21によって実行される無線通信方法の動作を示すフローチャートである。図9は、図2の無線端末装置TA、TBの表示部26の画像を示す図である。
【0049】
図6において、点線の円(S−AREA)は、レピータ1111〜111nのサービスエリアを示す。サービスエリアS−AREA内では、電波環境は良好である。一方、サービスエリアの外側で且つ2点鎖線の円内の環状の範囲(F−AREA)は電波環境が不安定なフレンジエリアであり、フレンジエリアの外側はレピータ1111〜111nの中継ができない領域、すなわち圏外である。ただし、図6においては、無線端末装置TA及び無線端末装置TBは、ホームレピータであるレピータ1111からダウンリンクの通信フレームに含まれる空きチャンネルの情報を取得し、レピータ1112を通話チャンネルとして設定して通話を行うものとし、図の複雑化を避けるために、レピータ1111〜111nをレピータシステム130として表し、無線端末装置TA及び無線端末装置TB以外を省略している。
【0050】
フレンジエリアF−AREAにおいては、レピータ1112からのダウンリンク信号は無線端末装置TA、TBに達するが、無線端末装置TA、TBからのアップリンク信号でレベルが小さいものはレピータ1112に達しない。フレンジエリアの外側の圏外においては、無線端末装置TA、TBからのアップリンク信号がレピータ1112まで達しないだけでなく、レピータ1112からのダウンリンク信号も無線端末装置TA、TBに達しない。
【0051】
この場合において、図6の無線端末装置TAは送信電力のレベルが比較的大きいモービルタイプを想定し、無線端末装置TBは送信電力のレベルが小さいポータブルタイプを想定する。
【0052】
まず、サービスエリアに位置している一方の無線端末装置、例えば無線端末装置TA(1)は、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが登録されているホームレピータ1111のダウンリンクの通信フレームから取得した空きチャンネル情報に基づいた通話チャンネルとしてのレピータ1112に対して、周波数fu(例えば、435.00MHz)のアップリンク信号を送信し、通話を要求する。レピータ1112は、通話可能であれば、通話許可を無線端末装置TA(1)に返信すると共に無線通信端末TB(1)のホームレピータ1111に、無線通信端末TB(1)が、レピータ1112が提供する通信チャンネルにその通信チャンネルを移動させることを要求する。通話許可に応答して、無線端末装置TA(1)は、通話データを含むアップリンク信号を送信する。無線端末装置TA(1)からアップリンク信号を受信したレピータ1112は、その周波数fuを周波数fd(例えば、440.00MHz)にシフトしたダウンリンク信号に変換し、増幅処理やその他の必要な信号処理を施して、他方の無線端末装置TB(1)に送信する。一方、レピータ1111は、レピータ1112からの要求に応答して、無線端末装置TB(1)に通信チャネルを、レピータ1112が提供する通信チャンネルに移動することを指示する制御信号を送信する。これに応答して、無線端末装置TB(1)は、レピータ1112が提供するチャンネルの周波数に通信チャネルを合わせる。
同様に、無線端末装置TB(1)が、通話するときは、レピータ1112に対して周波数fuのアップリンク信号を送信し、レピータ1112はそのアップリンク信号を周波数fdのダウンリンク信号に変換して、無線端末装置TA(1)に送信する。すなわち、サービスエリア内においては、無線端末装置TA(1)及び無線端末装置TB(1)は、レピータ1112の中継によるトランキング方式の通信を行うことができる。
【0053】
圏外に位置している無線端末装置TA(2)及び無線端末装置TB(2)は、レピータ1112を介することなく、後に説明する通り、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが登録されているレピータ1111のダウンリンク信号の周波数と同じ周波数fdの無線信号を送受信して、トークアラウンド方式の通信を行う。すなわち、無線端末装置TA(2)及び無線端末装置TB(2)の各々は、トランキング方式における送信信号の周波数fuをホームレピータ1111のダウンリンク信号の周波数fdに変更し、受信信号の周波数についてはホームレピータ1111のダウンリンク信号の周波数fdをそのまま維持する。ただし、圏外に位置する無線端末装置TA(2)及び無線端末装置TB(2)の送信信号の周波数をレピータ1112からのダウンリンク信号の周波数fdとし、受信信号については周波数fdに維持する場合もありうる。これは、後述する通り、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが通話中にレピータ1112のサービスエリアから圏外に移動した場合の動作である。このように、無線端末装置TA及び無線端末装置TBが、トランキングシステムのサービスエリアの圏外で、レピータによる中継なしに、直接通信をする場合は、送信信号の周波数と受信信号の周波数は、レピータ1112からのダウンリンク信号の周波数に限らない。要するに、無線端末装置TA及び無線端末装置TBの送信信号の周波数と受信信号の周波数とを圏外における空きチャンネルの周波数に一致させればよい。
【0054】
フレンジエリアに位置している無線端末装置TA(3)及び無線端末装置TB(3)において、モービルタイプの無線端末装置TA(3)は送信電力が比較的大きいので、レピータ1112との間で無線信号の送受信が可能である。すなわち、周波数fuのアップリンク信号をレピータ1112に送信し、周波数fdのダウンリンク信号をレピータ1112から受信することができる。一方、電池駆動のポータブルタイプの無線端末装置TB(3)は、送信電力が小さいので、周波数fdのダウンリンク信号をレピータ1112から受信することはできるが、周波数fuのアップリンク信号を送信することはできない。
【0055】
すなわち、移動局としての無線端末装置TA及び無線端末装置TBは、レピータ1112との位置関係及び送信電力のレベル差によって、通信状態が変化する。
【0056】
次に、第1実施の形態における無線端末装置TA〜THの通信動作について、図2のCPU21によって実行される図7及び図8のフローチャート及び図9を参照して詳細に説明する。
【0057】
ここでは、無線端末装置TAから無線端末装置TBに対して呼び出しを行うことで、無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間で通話が開始される場合を想定し、無線端末装置TA側の処理を説明する。無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間の通話はホームレピータ1111以外のレピータ1112〜111nのいずれかを介して行われる。レピータ1112〜111nのいずれかを介して1回の送信が終わった場合、(音声通信の場合、操作部27(一般的にはPTTスイッチなど)の操作を解除した時点で)、無線端末装置TA及びTBの通話チャンネルは、ホームレピータ1111が提供する通話チャンネルに戻るものとする。図9は、無線端末装置TAの表示部26に表示されたアイコンの画像である。図9において、Tは無線端末装置TAを表し、Rはレピータ111を表している。なお、自局側の無線端末装置Tはマーク(図の黒丸)で識別されている。
【0058】
無線端末装置TAの電源が投入されると、CPU21は図7及び図8のフローチャートに示す処理を開始する。
まず、無線端末装置TAのCPU21は、ホームレピータであるレピータ1111からダウンリンク信号の通信フレームを受信したか否かを判別する(ステップS101)。CPU21は、ダウンリンク信号を受信したときは(ステップS101;Yes)、そのダウンリンク信号が制御情報であるか否かを判別する(ステップS102)。受信したダウンリンク信号が制御信号でない場合(ステップS102;NO)、CPU21は、ダウンリンク信号に含まれる空きチャンネル情報を取得し、RAM23に書き込む。
続いて、CPU21は、操作部27のPTTスイッチが押されているか否か、即ち、通話の指示がだされているか否かを判別する(ステップS100)。PTTスイッチがおされていなければ(ステップS100;No)ステップS101にリターンする。一方、PTTスイッチが押されていれば(ステップS100;Yes)、CPU21は、RAM23に記憶されている情報に基づいて、通信周波数を空きチャンネルのチャンネル周波数へ移動し(ステップS103)、通話許可要求を送信する(ステップSl04)。
【0059】
続いて、CPU21は、通話許可要求を送ったレピータから通話を許可する旨の応答を受信したか否かを判別し(ステップS105)、通話を許可する旨の応答を受信した場合は(ステップS105;YES)、レピータ111を介したトランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示し(ステップS110)、送信処理を実行する(ステップS1ll)。
【0060】
図9(1)は、トランキング方式の通話状態を示すアイコン画像である。CPU21は、送信処理が終了したか否かを判別し(ステップS112)、(PTTスイッチの押下が放されたか否か)、送信処理が終了した場合は(ステップS112;YES)、ホームレピータであるレピータ1111のチャンネル周波数へチャンネル周波教を戻し(ステップS117)、ホームレピータからのダウンリンク信号を受信する。
【0061】
ステップS102で制御情報を受信した場合は(ステップS102;YES)、CPU21は、制御情報に基づき、チャンネル周波数を移動し(ステップS113)、レピータを介したトランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示し(ステップS114)、受信処理を実行する(ステップS1l5)。続いて、CPU21は、ステップS116で受信が終了したか否かを判別し(レピータからのダウンリンクの通信フレームに、送信側の無線端末装置TがPTTスイッチの押下を放したことを示す「TX_REL」が含まれているか否か)、受信終了の場合は、(ステップS116:YES)、ホームレピータであるレピータ1111のチャンネル周波数へチャンネル周波数を戻し(ステップS117)、ホームレピータからのダウンリンク信号を受信する。サイト100のカバレッジエリアにいる場合は、上記の送信・受信を繰り返して、通話相手である無線端末装置との通話を行う。
【0062】
通話をしようとした場合に、フレンジエリアF−AREAや圏外にいると本来的には通話ができない。しかし、本実施形態では、一時的にホームレピータのダウンリンク周波数を使用して通話を行う。通話相手となる無線端末装置は、基本的に同じホームレピータに登録された無線端末装置である。無線端末装置は、待ち受け状態においてホームレピータのダウンリンク信号を受信しているし、1回の送信・受信が終了するたびに、すなわち、PTTスイッチが放されると、また、ホームレピータのチャンネル周波数に戻る。通話をしようとして、ホームレピータからのダウンリンク信号に含まれる空きチャンネルへ移動して、通話許可要求を何度も送るが、通話を許可する旨の応答を受信できない場合は、フレンジエリアにいる可能性が高く(ステップS106で所定回数を超えた場合)、ステップSl06で所定回数を超えなくても、ダウンリンク信号を受信できなくなった場合(ステップS107;NO)は圏外にいる可能性が高いことになる。
【0063】
このときに、通話相手は、他の無線端末装置とホームレピータ以外のレピータでの通話中でない限り、ホームレピータのダウンリンク信号を受信している。従って、フレンジエリアF−AREAや圏外にいる無線端末装置から、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数で通信フレームを送信すれば、通話相手に対して通信フレームを送信できる可能性がある。例えば、通話相手の無線端末装置が圏外にいて、レピータ1111からのダウンリンク信号が届かない場合でも、無線端末装置同士の距離が近い場合には、直接、無線端末装置同士で、一時的にホームレピータのダウンリンクの周波数で通信フレームを送受信して、通話することが可能であり、圏外の無線端末装置は、自分が圏外にいることを相手に伝えることができる。
【0064】
このような前提のもとで、ステップS106でYESの場合及びステップS107でNOの場合(即ち、通話要求を出したにもかかわらず通話許可が得られない場合及びダウンリンク信号を得られない場合には)、CPU21は、送信周波数をホームレピータのダウンリンクの周波数に設定し(すなわち、送信周波数及び受信周波数ともにホームレピータのダウンリンクの周波数に設定し)(ステップS118)、通話状態を示すアイコン(図9(2))を表示部26に表示し(ステップS119)、通常の通信フレーム(図5(A),(B))を送信する処理を実行し(ステップS120)、相手側の無線端末装置TBからの応答を待つ。
この場合には、相手側の無線端末装置TBがどこにいるかは不明であるが、仮に、無線端末装置TBが無線端末装置TAから直接送信された無線信号を受信した場合、応答信号を無線送信する。この応答信号は、レピータ経由で又は無線端末装置TAに直接送信される。
無線端末装置TAは、無線端末装置TBからの応答を受信した場合(ステップS121;YES)、受信フレーム中の、識別フラグIFの値から、レピータ経由の通信フレームであるか直接送信されたフレームであるかを判別する(ステップS122)。
CPU21は、判別した通話状態を表す画像を表示する(ステップS123,S126)。
例えば、レピータ経由の場合、ステップS123で図9(3)の画像が表示され、レピータを経由していない場合、ステップS126では、図9(2)の画像が表示される。
受信フレームがレピータ経由の通信フレームの場合(ステップS122;YES)、CPU21は、判別した通話状態を表す画像(例えば、図9(3)の画像)を表示部26に表示する(ステップS123)。続いて、CPU21は、応答を相当する通信フレームの受信を継続し(ステップS124)、受信が終了すると(ステップS125;YES)、制御は、ステップS101にリターンする。
一方、受信フレームがレピータを経由していない通信フレームの場合(ステップS122;NO)、CPU21は、判別した通話状態を表す画像(例えば、図9(2)の画像)を表示部26に表示する(ステップS126)。続いて、応答を相当する通信フレームの受信を継続し(ステップS127)、受信が終了すると(ステップS128;YES)、CPU21は、通話が終了したか否かを判別する(ステップS129)。通話が終了していれば(ステップS129;YES)、ステップS101にリターンする。
一方、通話が終了していなければ(ステップS129;NO)、CPU21は、通信可能な周波数で通信を行う(ステップS130,S131)。
即ち、レピータを介さない直接通信を行う場合は、他の無線端末装置間の通信を妨害する可能性があるため、いつまでも、ホームレピータのダウンリンクの周波数を使用する訳にいかない。そこで、CPU21は、使用可能な周波数を探して、その周波数を使用した通話を行う(ステップS130)。使用可能な周波数は、例えば、予め定められている周波数、受信周波数をスキャンして信号を受信できない周波数などを使用できる。
その後、通話が終了すると(ステップS131;YES)、フローはステップS117に進む。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の無線通信システムによれば、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる。また、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要がないので、切り替え時間が短くなり、通話が途絶えるおそれがなく良好な通話品質を維持できる。さらに、レピータのサービスエリアと圏外との境界であるフレンジエリアに位置している場合に、相手側の無線端末装置の送信電力のレベルが小さくて、トランキング方式の通話ができない場合でも、相手側の無線端末装置がサービスエリアに復帰した際に、改めて空きチャネルを確保する必要がなくなり、空きチャネルの確保のために通話が中断せず良好な通話品質を維持できる。
【0066】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における無線端末装置TA〜THについて、図2のCPU21によって実行される動作を、図10及び図11のフローチャート及び図9を参照して詳細に説明する。第2実施の形態においても、無線端末装置TAから無線端末装置TBに対して呼び出しを行うことで、無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間で通話が開始される場合を想定し、無線端末装置TA側の処理を説明する。
【0067】
無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間の通話はホームレピータ1111以外のレピータ1112〜111nのいずれかを介して行われる。レピータ1112〜111nのいずれかを介して1回の送信が終わった場合、すなわち、音声通信の場合、操作部27(一般的にはPTTスイッチなど)の操作を解除した時点で、通話チャンネルからホームレピータ1111へ戻るものとする。図9は、無線端末装置TAの表示部26に表示されたアイコンの画像である。図9において、Tは無線端末装置TAを表し、Rはレピータ111を表している。なお、自局側の無線端末装置TAはマーク(図の黒丸)で識別されている。
【0068】
まず、通話確立までの処理について説明する。無線端末装置TAのCPU21は、図10,図11に示す処理を繰り返して実行する。
まず、CPU21は、待ち受け状態においては、無線端末装置TAが登録されているホームレピータ(レピータ1111)からのダウンリンク信号を別処理で受信している。CPU21は、ホームレピータからダウンリンク信号の通信フレームを受信したか否かを判別し(ステップS200)、ダウンリンク信号を受信したときは、そのダウンリンク信号の通信フレームの中から空きチャンネル情報を取得し、RAM23に格納する。
続いて、CPU21は、PTTボタンが押されているか否かを判別する(ステップS201)。押されていなければ(ステップS201;NO)、CPU21は、自装置が呼び出されているか否かを判別し、呼び出されていれば、所定の受信処理(例えば、ステップS113〜S117と同様)を行う。
PTTボタンが押されていれば(ステップS201;YES)、CPU21は、RAM23から空きチャンネル情報を読み出して、空きチャンネルであるレピータ1112の通話チャンネルの周波数に移動する(ステップS202)。次に、無線端末装置TAのCPU21は、レピータ1112に対して通話許可を要求する(ステップS203)。
【0069】
無線端末装置TAのCPU21は、レピータ1112から通話を許可する旨の応答を受信したか否かを判別し(ステップS204)、レピータ1112から通話を許可する旨の応答がない場合は(ステップS204;NO)、レピータ1112からダウンリンク信号を受信しているか否かを判別する(ステップS205)。レピータ1112からダウンリンク信号を受信している場合は(ステップS205;YES)、CPU21は、通話許可要求を送信した回数(連続リトライ回数)と、予め設定している所定回数とを比較し、通話許可要求を送信した回数が所定回数を超えたか否かを判別する(ステップS206)。
【0070】
通話許可要求を送信した連続回数が所定回数以下である場合には(ステップS206;NO)、CPU21は、レピータ1112から他の無線端末装置に対するダウンリンク信号の通信フレームの中から空きチャンネル情報を取得して(ステップS207)、チャンネル周波数をその空きチャンネルの周波数へ移動して(ステップS208)、ステップS203において通話許可を要求する。
【0071】
すなわち、ステップS205でYESであり、ステップS206でNOの場合には、レピータ1112が既に他の無線端末装置間の通話チャンネルとして使用中であるか、又は、他の無線端末装置に対して通話を許可する旨の応答を送信している場合であるため、受信したダウンリンク信号の中に含まれる空きチャンネル情報を取得して、チャンネル周波数を変更する。したがって、無線端末装置TAのCPU21は、レピータ1112から通話を許可する旨の応答を受信するまで、ステップS203からステップS208までの処理ループを繰り返す。
【0072】
レピータ1112から通話を許可する旨の応答を受信した場合には(ステップS204;YES)、CPU21は、トランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示して(ステップS209)、トランキング方式の送信処理を実行する(ステップS210)。すなわち、通話確立の処理に移行する。図9(1)は、トランキング方式の通話状態を示すアイコン画像である。通話確立の後は、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS211)、通話が終了した場合には(ステップS211;YES)、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのチャンネル周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0073】
ステップS205においてダウンリンク信号を受信しない場合(ステップS205;NO)、無線端末装置TAは圏外に位置していることが想定される。また、ステップS206において通話許可要求を送信した回数が所定回数を超えた場合(ステップS206;YES)、無線端末装置TAはフレンジエリアF−AREAに位置していることが想定される。この場合には、CPU21は、通話許可を受信した回数が1回以上であるか否かを判別する(ステップS213)。通話許可を受信した回数が1回もない場合には(ステップS213;NO)、CPU21は、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのチャンネル周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0074】
ステップS211において通話が終了していない場合には(ステップS211;NO)、CPU21は、相手側すなわち無線端末装置TBからの応答を受信したか否かを判別し(ステップS214)、無線端末装置TBからの応答を受信しない場合には(ステップS214;NO)、レピータ1112からダウンリンク信号を受信したか否かを判別する(ステップS218)。レピータ1112からダウンリンク信号を受信した場合(ステップS218;YES)、CPU21は、一定時間が経過したか否かを判別する(ステップS219)。例えば、無線端末装置TBのユーザが応答に手間取っているか、あるいは、一時的にフレンジエリア又は圏外に移動したことが想定されるので、一定時間の余裕を持って応答受信を待つ。一定時間が経過しない場合には(ステップS219;NO)、CPU21は、ステップS214において無線端末装置TBからの応答を受信したか否かを判別する。
【0075】
すなわち、無線端末装置TAのCPU21は、無線端末装置TBと通話中に無線端末装置TBから応答を受信できなくなった場合には、レピータ1112からダウンリンク信号を受信している限り、一定時間が経過するまで、ステップS214、S218、S219の処理ループを繰り返して、無線端末装置TBからの応答を待つ。
【0076】
ステップS219において一定時間が経過したときは(ステップS219;YES)、CPU21は、無線端末装置TBとの間でトランキング方式の通話ができなくなったと判断して、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0077】
ステップS214において無線端末装置TBからの応答を受信した場合には(ステップS214;YES)、CPU21は、トランキング方式の通話状態であることを表示部26に表示して(ステップS215)、トランキング方式の送信処理を実行する(ステップS216)。この後は、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS217)、通話が終了した場合には(ステップS217;YES)、切断処理を行って(ステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。通話が終了していない場合には(ステップS217;NO)、CPU21は、ステップS203において通話許可を要求する。
【0078】
レピータ1112からのダウンリンクを受信しているが(ステップS205;YES)、通話許可を送信した連続回数が所定回数を超えており(ステップS206;YES)、ステップS213において通話許可を受信した回数が1回以上である場合には(ステップS213;YES)、無線端末装置TBとの通話中に、自局である無線端末装置TAがフレンジエリアF−AREAに移動していることが想定される。レピータ1112からのダウンリンクを受信しておらず(ステップS205;NO)、ステップS213において通話許可を受信した回数が1回以上である場合には(ステップS213;YES)、無線端末装置TBとの通話中に、自局である無線端末装置TAがフレンジエリアF−AREAに移動したことが想定される。
【0079】
また、ステップS218においてレピータ1112からダウンリンク信号を受信しない場合には(ステップS218;NO)、無線端末装置TAは無線端末装置TBとの通話中に圏外に移動したことが想定されるが、無線端末装置TBの状態は不明である。しかし、無線端末装置TAも無線端末装置TBも、レピータ1112を介した通話中であるため、チャンネル周波数がレピータ1112のチャンネル周波数に設定されている状態にある。すなわち、無線端末装置TBとの位置関係によっては、直接通信が可能であり、送信側となる無線端末装置T(ここでは無線端末装置TA)が周波数fdで相手側(受信側)の無線端末装置Tへ送信することで通話可能となる。よって、上述のように、通話中にフレンジエリアF−AREA、又は、圏外へ移動したと想定される場合、無線端末装置TAのCPU21は、送信周波数をレピータ1112へのアップリンクの周波数fuからダウンリンクの周波数fdに変更し、すなわち、送信周波数及び受信周波数を共にダウンリンク信号の周波数fdの状態に設定する(図11のステップS220)。すなわち、無線端末装置TAは、トランキング方式からトークアラウンド方式に遷移する。そして、CPU21は、トークアラウンド方式の通話状態を表示部26に表示し(ステップS221)、送信処理を行う(ステップS222)。図9(2)は、トークアラウンド方式の通話状態を示すアイコン画像である。
【0080】
次に、CPU21は、相手側すなわち無線端末装置TBからの応答を受信したか否かを判別する(ステップS223)。無線端末装置TBからの応答を受信した場合には(ステップS223;YES)、通話が確立したことになる。次に、CPU21は、この通話確立がレピータ1112を経由したものであるか否かを判別する(ステップS224)。通話確立がレピータ1112を経由したものである場合には(ステップS224;YES)、CPU21は、複合方式の通話状態を表示部26に表示し(ステップS225)、複合方式での受信処理を行う(ステップS226)。図9(3)は、複合方式の通話状態を示すアイコン画像である。
【0081】
次に、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS227)、通話が終了した場合には(ステップS227;YES)、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。また、ステップS223において無線端末装置TBからの応答を受信しない場合にも(ステップS223;NO)、CPU21は、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0082】
図11のステップS224において通話確立がレピータ1112を経由したものでない場合には(ステップS224;NO)、CPU21は、トークアラウンド方式の通話状態を表示部26に表示し(ステップS228)、トークアラウンド方式での受信処理を行う(ステップS229)。次に、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS230)、通話が終了した場合には(ステップS230;YES)、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0083】
ステップS230においてトークアラウンド方式の通話が終了していない場合には(ステップS230;NO)、無線端末装置TA及び無線端末装置TB間の直接通信を行う(ステップS231)。次に、CPU21は、通話が終了したか否かを判別し(ステップS232)、通話が終了した場合には(ステップS232;YES)、切断処理を行って(図10のステップS212)、ホームレピータのダウンリンク信号の周波数へ移動して、ステップS200においてホームレピータからダウンリンク信号を受信したか否かを判別する。
【0084】
図11のステップS227において複合方式での通話が終了していないと判別された場合には(ステップS227;NO)、再びトランキング方式での通話を試みるために、CPU21は、送信周波数をアップリンク信号の周波数fuに設定し、受信周波数をダウンリンク信号の周波数fdに設定する(ステップS233)。次に、CPU21は、レピータ1112に対して通話許可を要求する(ステップS234)。続いて、CPU21は、レピータ1112から通話許可の応答を受信したか否かを判別し(ステップS235)、通話許可の応答を受信できない場合(ステップS235;NO)、すなわち、トランキング方式での通話ができない場合には、ステップS220において送信周波数及び受信周波数を共にダウンリンク信号の周波数fdに設定して、複合方式からトークアラウンド方式に遷移する。
【0085】
ステップS235においてレピータ1112から通話許可の応答を受信した場合には(ステップS235;YES)、複合方式からトランキング方式に遷移して、CPU21は、図10のステップS209においてトランキング方式の通話状態を表示部26に表示する。この後は、トランキング方式での送信処理を行って(ステップS210)、無線端末装置TBとの間でトランキング方式による通話を行う。
【0086】
こうして、第2の実施の形態の無線通信システムでも、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる。また、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要がないので、切り替え時間が短くなり、通話が途絶えるおそれがなく良好な通話品質を維持できる。さらに、レピータのサービスエリアと圏外との境界であるフレンジエリアに位置している場合に、相手側の無線端末装置の送信電力のレベルが小さくて、トランキング方式の通話ができない場合でも、相手側の無線端末装置がサービスエリアに復帰した際に、改めて空きチャネルを確保する必要がなくなり、空きチャネルの確保のために通話が中断せず良好な通話品質を維持できる。
【0087】
なお、図6に示したサービスエリア及びフレンジエリアの範囲は固定的なものではなく、周囲温度などの気候の変化、他の電波の状況、電離層の影響などによって変動する。特に、フレンジエリアの範囲は領域自体が狭く変動も大きいので、複合方式からトランキング方式又はトークアラウンド方式に変化する可能性が高い。
【0088】
以上のように、第1実施の形態及び第2実施の形態について説明したが、第1実施の形態と第2の実施の形態との間には、共通点と相違点とがある。以下、第1実施の形態と第2の実施の形態との共通点及び相違点について説明する。
【0089】
第1実施の形態および第2実施の形態ともに、無線通信端末TAおよびTBは、待ち受け状態においては、ホームレピータであるレピータ1111のダウンリンク信号を受信している。つまり、待ち受け状態のチャンネル周波数は、ホームレピータであるレピータ1111のチャンネル周波数である。通話を開始するにあたり、送信側である無線端末装置TAは、ホームレピータであるレピータ1111のダウンリンク信号に含まれる空きチャンネル情報を取得し、取得した空きチャンネルヘチャンネル周波数を合わせて、通話要求を送信する。これら第1及び第2実施の形態では、レピータ1112が空きチャンネルであり、レピータ1112に対して通話要求を送信する。レピータ1112からの通話を許可する旨の応答を受けてレピータ1112と無線端末装置TAとのリンクが確立する。このとき、無線端末装置TBにとってホームレピータであるレピータ1111から無線端末装置TBに対して、レピータ1112のチャンネル周波数へ移動する旨の制御信号が送られるので、無線端末装置TBは、この制御信号を受信して、チャンネル周波数を移動して無線端末装置TAからの通話を受ける。ここまでは、第1実施の形態と第2実施の形態は同じある。
【0090】
無線端末装置の操作に関して、通話する場合、PTTスイッチを押して喋るが、喋り終わった後、PTTスイッチを放す(この操作については、第1実施の形態と第2実施の形態は同じ)。第1実施の形態では、PTTスイッチを離した時点で、無線端末装置はホームレピータのチャンネル周波数に戻る。レピータ1112は、無線端末装置TAがPTTを放した時に通信フレームに挿入される「TX REL」を受け取り、ダウンリンクとして送出すると「空きチャンネル」状態となる。無線端末装置TBは、レピータ1112からの中継フレームの「TX REL」を受信するとホ−ムレピータのチャンネル周波数に戻る。つまり、PTTスイッチを放すと、ホームレピータに戻る。無線端末装置TBから無線端末装置TAに対して応答がある場合は、無線端末装置TBはホームレピータであるレピータ1111からのダウンリンク信号に含まれる空きチャンネル情報を取得し、取得した空きチャンネルヘチャンネル周波数を合わせて、通話要求を送信する。通話許可要求を送ったレピータから通話を許可する旨の応答を受けて空きチャンネルを提供するレピータと無線端末装置TBとのリンクが確立する。このとき、無線端末装置TAにとってホームレピータであるレピータ1111から無線端末装置TAに対して、無線端末装置TBとのリンクが確立したレピータのチャンネル周波数へ移動する旨の制御信号が送られるので、無線端末装置TAは、この制御信号を受信し、チャンネル周波数を移動して無線端末装置TBからの通話を受ける。以下、通話が続く限り、この動作を繰り返す。
【0091】
一方、第2実施の形態では、PTTスイッチが放されて「TX REL」を受け取っても、レピータ1112は、しばらくの間、無線端末装置TAと無線端末装置TBとの間の通話チャンネル状態を保持している。よって、第1実施の形態では、無線端末装置TAおよび無線端末装置TBとは、トランキングシステムの圏外へ移動してしまった場合、ホームレピータのダウンリンク周波数(場合によっては、一方がホームレピータを介して他方が直接通話)で一時的に直接通話を行うものであり、第2実施の形態では、通話チャンネルであるレピータ1112のダウンリンク周波数(場合によっては、一方がレピータ1112を介して他方が直接通信)で一時的に直接通信を行う。
【0092】
以上のように、上記各実施の形態においては、無線端末装置TAは、レピータ1112から送信される第1の周波数fdのダウンリンク信号の有無を検出し、周波数fdのダウンリンク信号から相手側の無線端末装置TBの捕捉の有無を検出する。無線端末装置TAは、フェーズ1として、周波数fdのダウンリンク信号から相手側の無線端末装置TBの捕捉が検出されたときは、レピータ1112から周波数fdのダウンリンク信号を受信するとともに第2の周波数fuのアップリンク信号をレピータ1112に送信して、相手側の無線端末装置TBとの間でトランキング方式の通信設定を行い、フェーズ2として、周波数fdのダウンリンク信号が検出されない場合には、ダウンリンク信号と同じ周波数fdの無線信号によって相手側の無線端末装置TBとの間でトークアラウンド方式の通信設定を行い、フェーズ3として、検出した周波数fdのダウンリンク信号から相手側の無線端末装置TBの捕捉が検出されない場合には、周波数fuのアップリンク信号をレピータ1112に送信するとともに、ダウンリンク信号と同じ周波数fdの無線信号を相手側の無線端末装置TBから受信して、相手側の無線端末装置TBとの間でトランキング方式及びトークアラウンド方式の複合方式の通信設定を行う。
【0093】
この場合において、無線端末装置TAは、無線端末装置TBとの間でトランキング方式の通話中に、無線端末装置TBから受信する周波数fdの受信信号がレピータ1112から受信したものでなく、且つ、その受信信号が周波数fuのアップリンク信号に応答したものでない場合には、トランキング方式からトークアラウンド方式に遷移し、無線端末装置TBから受信する周波数fdの受信信号がレピータ1112から受信したものでなく、且つ、その受信信号が周波数fuのアップリンク信号に応答したものである場合には、トランキング方式から複合方式に遷移する。
【0094】
したがって上記各実施の形態によれば、送信電力にレベル差がある無線端末装置同士で通信する場合や電波環境が不安定なエリアにおいても良好な通話品質を維持できる。また、トランキング方式とトークアラウンド方式との切り替えの際に、受信周波数及び送信周波数の両方を変更する必要がないので、切り替え時間が短くなり、通話が途絶えるおそれがなく良好な通話品質を維持できる。さらに、レピータ1112のサービスエリアと圏外との境界であるフレンジエリアF−AREAに位置している場合に、相手側の無線端末装置の送信電力のレベルが小さくて、トランキング方式の通話ができない場合でも、レピータ1112のチャネルを保持した状態で通話を行うので、相手側の無線端末装置がサービスエリアに復帰した際に、改めて空きチャネルを確保する必要がなくなり、空きチャネルの確保のために通話が中断せず良好な通話品質を維持できる。
【0095】
上記実施の形態において、無線端末装置TA〜THは、通信状態を明示するアイコンの画像を表示部26に表示するようにしたが、最初の通話状態から、通話状態が変更した場合のみアイコン画像を表示するようにしてもよい。また、特に必要でなければアイコン画像を表示しないようにしてもよい。
【0096】
通話状態を明示するアイコン画像を表示部26に表示する場合には、無線端末装置TA〜THのユーザは、現在の通信状態を容易かつ的確に把握することが可能になる。その結果、自局の位置がサービスエリア、フレンジエリア又は圏外であるかを認識できるとともに、移動中であるときにはどのエリアの方向に移動しているかを認識することもできる。また、現在の通話状態に応じて送信出力を切り替えることにより、消費電力を低減させることも可能になる。
【0097】
なお、上記各実施の形態は本発明を説明するためのものであり、本発明は上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、当業者によって考えられる他の実施の形態や変形例についても本発明に属するものである。
【0098】
例えば、上記実施の形態においては、自局が圏外に移動していないかどうかをレピータ111からの通話を許可する旨の応答の有無によって確認する構成にしたが、通話を許可する旨の応答の有無の代わりにダウンリンク信号の電界強度や、図5に示したフレームフォーマットのヘッダ部Hのデータの抽出によって、自局が圏外に移動していないかどうかを認識する構成にしてもよい。要は、レピータ1112からのダウンリンク信号を確実に検出して、そのダウンリンク信号に含まれている情報を抽出できるか否かを判断できればよい。
【符号の説明】
【0099】
1111〜111n レピータ
TA〜TH 無線端末装置
S−AREA サービスエリア
F−AREA フレンジエリア
fd 第1の周波数
fu 第2の周波数
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継装置の中継によって又は直接に相手側の無線端末装置との間で無線通信を行う無線端末装置であって、
通信要求時に、予め登録されている所定の前記中継装置から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、特定した空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段と、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信手段と、
を備えることを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
前記通信手段は、
相手側の無線端末装置からの応答を受信する応答受信手段と、
応答が中継装置を介さない、相手側の無線通信端末装置からの直接の応答であるか否かを判別する判別手段と、
直接の応答であると判別した場合に、使用可能な周波数を特定する手段と、
特定した使用可能な周波数に交信周波数を設定し、前記相手側の無線通信端末装置と交信する直接交信手段と、
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記通信許可要求手段は、前記通信許可を受信できない場合に、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを選択して、通信要求を再送する手段を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記通信手段は、通信要求を送信した後、通信許可を得られず且つダウンリンク信号を受信できなくなった場合に、前記所定の中継装置のダウンリンク周波数に受信周波数と送信周波数を一致させて、信号を相手側無線端末装置に送信する手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項5】
通信許可が得られ、前記通信手段が信号を送信する処理を行った後、相手側端末からの応答が得られず、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号を受信できる場合には、一定時間待機し、一定時間待機しても応答が受信できない場合には切断処理を実行する手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項6】
通信状態を判別し、通信状態を示す情報を出力する手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項7】
請求項1に記載の無線端末装置と、
複数の前記中継装置と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
中継装置より空きチャンネル情報を含むダウンリンク信号を送信し、
無線端末装置は、通信要求時に、所定の前記中継装置から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、特定した空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求し、
空きチャンネルを提供する中継装置より、通信を許可する場合には、許可信号を送信し、
無線端末装置は、前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する、
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項9】
通信機能を備えるコンピュータを、
予め登録されている所定の前記中継装置から繰り返して送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、特定した空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信要求手段、
として機能させるコンピュータプログラム。
【請求項1】
中継装置の中継によって又は直接に相手側の無線端末装置との間で無線通信を行う無線端末装置であって、
通信要求時に、予め登録されている所定の前記中継装置から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、特定した空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段と、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信手段と、
を備えることを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
前記通信手段は、
相手側の無線端末装置からの応答を受信する応答受信手段と、
応答が中継装置を介さない、相手側の無線通信端末装置からの直接の応答であるか否かを判別する判別手段と、
直接の応答であると判別した場合に、使用可能な周波数を特定する手段と、
特定した使用可能な周波数に交信周波数を設定し、前記相手側の無線通信端末装置と交信する直接交信手段と、
を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記通信許可要求手段は、前記通信許可を受信できない場合に、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを選択して、通信要求を再送する手段を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記通信手段は、通信要求を送信した後、通信許可を得られず且つダウンリンク信号を受信できなくなった場合に、前記所定の中継装置のダウンリンク周波数に受信周波数と送信周波数を一致させて、信号を相手側無線端末装置に送信する手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項5】
通信許可が得られ、前記通信手段が信号を送信する処理を行った後、相手側端末からの応答が得られず、前記所定の中継装置からのダウンリンク信号を受信できる場合には、一定時間待機し、一定時間待機しても応答が受信できない場合には切断処理を実行する手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項6】
通信状態を判別し、通信状態を示す情報を出力する手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項7】
請求項1に記載の無線端末装置と、
複数の前記中継装置と、
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
中継装置より空きチャンネル情報を含むダウンリンク信号を送信し、
無線端末装置は、通信要求時に、所定の前記中継装置から送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、特定した空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求し、
空きチャンネルを提供する中継装置より、通信を許可する場合には、許可信号を送信し、
無線端末装置は、前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する、
ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項9】
通信機能を備えるコンピュータを、
予め登録されている所定の前記中継装置から繰り返して送信されるダウンリンク信号を受信し、該ダウンリンク信号に含まれている空きチャンネル情報に基づいて、空きチャンネルを特定し、特定した空きチャンネルのアップリンク周波数を介して、該空きチャンネルを提供する中継装置に通信許可を要求する通信許可要求手段、
前記通信許可を要求した先の中継装置より前記通信許可を受信できないときに、前記所定の中継装置からの前記ダウンリンク信号の周波数と同一の周波数で、前記相手側の無線通信端末装置に通信を要求する信号を送信する通信要求手段、
として機能させるコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−136350(P2010−136350A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248330(P2009−248330)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】
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