説明

無線端末装置及び制御方法

【課題】TDMAの複数スロットによるデータ通信中に、非優先データの遅延を抑制しつつ、優先データを効率的に送信できる無線端末装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】TDMAにてデータ伝送を行うPHS端末1は、所定のデータ種別を優先データとして生成する優先データ生成部31と、割り当てスロット毎のスループットを測定するスループット測定部32と、優先データに対して、スループットが最も高いスロットを割り当てる帯域制御部34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割多元接続方式を用いる無線端末装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線端末装置で用いられる通信方式の1つとして、時分割多元接続(TDMA、Time Division Multiple Access)方式がある(例えば、特許文献1参照)。このTDMA方式の場合、例えば、トランスポート層で生成されたTCPやUDP等のデータは、スロットのTDMAフレーム毎のデータサイズに分割され、分割されたデータが順次スロットに格納されて送信される。
【0003】
また、TDMAでは、複数のスロット(リンク)を設ける場合が多い。この場合、送信データは、所定サイズ(例えば、512バイト)以内のパケットに分割された後、各パケットが複数のスロットのいずれかに割り当てられる。そして、各パケットは、割り当てられたスロットにおいて、TDMAフレーム毎のデータサイズにさらに分割されて送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−204580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無線端末装置は、通常、送信すべきパケットが発生した順に、空きスロットを割り当てるため、複数種類(例えば、TCP及びUDP)のデータを同時に送信することはできない。また、リアルタイム性が求められる音声や動画等の優先データが生じた場合に、送信順を入れ替えると、非優先データの送信が滞ってしまっていた。
【0006】
本発明は、TDMAの複数スロットによるデータ通信中に、非優先データの遅延を抑制しつつ、優先データを効率的に送信できる無線端末装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無線端末装置は、時分割多元接続にてデータ伝送を行う無線端末装置であって、所定のデータ種別を優先データとして生成する優先データ生成部と、前記時分割多元接続における割り当てスロット毎の通信状態を測定する通信状態測定部と、優先データに対して、前記通信状態測定部により測定された通信状態が最も高いスロットを割り当てる帯域制御部と、を備える。
【0008】
また、優先データは、優先データとは異なるデータである非優先データに比べて、リアルタイム性が要求されるデータであることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る無線端末装置は、優先データ及び優先データとは異なるデータである非優先データの発生量を監視するデータ量監視部を備え、前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている優先データの発生量が所定の増設条件を満たす場合、当該優先データに対して割り当てるスロットを増設することが好ましい。
【0010】
また、前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている優先データの発生量が所定の減設条件を満たす場合、当該優先データに対して割り当てるスロットを減設することが好ましい。
【0011】
また、前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている優先データの発生量が所定の減設条件を満たし、かつ、非優先データが発生している場合、当該非優先データに対して割り当てるスロットを増設することが好ましい。
【0012】
また、前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている非優先データの発生量が所定の減設条件を満たす場合、当該非優先データに対して割り当てるスロットを減設することが好ましい。
【0013】
また、前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている非優先データの発生量が所定の減設条件を満たし、かつ、優先データが発生している場合、当該優先データに対して割り当てるスロットを増設することが好ましい。
【0014】
また、前記優先データ生成部は、UDPデータを優先データとし、TCPデータを非優先データとすることが好ましい。
【0015】
本発明に係る制御方法は、時分割多元接続にてデータ伝送を行う無線端末装置の制御方法であって、所定のデータ種別を優先データとして生成する優先データ生成ステップと、前記時分割多元接続における割り当てスロット毎の通信状態を測定する通信状態測定ステップと、優先データに対して、前記通信状態測定ステップにおいて測定された通信状態が最も高いスロットを割り当てる帯域制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線端末装置は、TDMAの複数スロットによるデータ通信中に、非優先データの遅延を抑制しつつ、優先データを効率的に送信できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係るPHS端末の外観斜視図である。
【図2】実施形態に係るPHS端末の機能を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係るPHS端末を含む無線通信システムの構成例を示す図である。
【図4】実施形態に係る優先データへのスロットの割り当て例を示す図である。
【図5】実施形態に係るTDMAスロットへパケットが格納される様子を時系列で示す図である。
【図6】実施形態に係る優先データが発生した際に、スロットを割り当てる処理を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る優先データ又は非優先データの発生量に応じたスロットの割り当て数の調整処理を示すフローチャートである。
【図8】実施形態に係る優先データに割り当てられているスロット数の減設処理を示すフローチャートである。
【図9】実施形態に係る非優先データに割り当てられているスロット数の減設処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、TDMAにてデータ伝送を行う無線端末装置の一例としてPHS(登録商標;Personal Handy phone System)端末1を説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るPHS端末1の外観斜視図である。
なお、図1は、いわゆる折り畳み型の端末の形態を示しているが、本発明に係るPHS端末1の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0020】
PHS端末1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、PHS端末1の使用者が通話時や音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0021】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0022】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、PHS端末1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(閉状態)にしたりできる。
【0023】
図2は、本実施形態に係るPHS端末1の機能を示すブロック図である。
PHS端末1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40と、記憶部50と、音声制御部60とを備える。
【0024】
制御部30は、PHS端末1の全体を制御しており、例えば、表示部21や通信部40等の各部に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11や通信部40等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部50を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。なお、本実施形態に係る制御部30の詳細機能は後述する。
【0025】
通信部40は、制御部30の制御に従って、所定の使用周波数帯(例えば、1.9GHz帯)で外部装置(基地局)と通信を行う。そして、通信部40は、アンテナ41より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、アンテナ41から外部装置に送信する。
【0026】
図3は、本実施形態に係るPHS端末1を含むTDMAによる無線通信システムの構成例を示す図である。
【0027】
PHS端末1は、TDMAの複数のスロット(例えば、スロット1〜4)を用いて、それぞれ異なる基地局と無線通信を行う。これらの基地局は、通信事業者のネットワーク内でSPDS(Serving PHS Data Server)と接続されている。さらに、SPDSは、GPDS(Gateway PHS Data Server)を介して、インターネット又はイントラネット上の各種サーバ(例えば、WWWサーバ)にアクセスできる。
【0028】
ここで、各スロットは、無線通信であるために、それぞれ異なる基地局によって通信している等の理由によって、それぞれエラー率等の通信品質が異なり、データ通信におけるスループットが大きく異なる場合もある。
【0029】
記憶部50は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、本実施形態に係る各種プログラムの他、優先データの送受信用スロット数の初期値や最大値、増設及び減設の条件、各スロットの通信状態としてのスループット値等を記憶する。
【0030】
音声制御部60は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部60から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。また、音声制御部60は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部60から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をアンテナ41より出力する。
【0031】
次に制御部30の機能を詳述する。
制御部30は、優先データ生成部31と、スループット測定部32(通信状態測定部)と、データ量監視部33と、帯域制御部34とを備える。
【0032】
優先データ生成部31は、音声制御部60から提供された音声データや、カメラ(図示せず)から提供された動画データ等、リアルタイム性を要する所定のデータ種別を、優先データとして生成する。具体的には、優先データ生成部31は、例えば、IP、UDP及びRTPプロトコルにより、優先データを生成する。
【0033】
一方、例えば、コンテンツをダウンロードする場合のHTTPデータや、ファイル転送する場合のFTPデータ等の場合、スループットよりも、確実にデータが送達される信頼性が要求されるので、TCPプロトコルにより非優先データとして生成される。
以下、優先データ生成部31は、UDPデータ(より正確には、UDPプロトコル及びRTPプロトコルに基づくデータ)を優先データとし、TCPデータ(より正確には、TCPプロトコル及びHTTPプロトコルに基づくデータ)を非優先データとする。
【0034】
スループット測定部32は、TDMAにおける各スロットの通信状態としてスループットを測定する。なお、スループット測定部32は、定期的に測定したスループットを、記憶部50に記憶することとしてよい。
【0035】
データ量監視部33は、優先データ及び優先データとは異なるデータである非優先データの発生量を監視する。具体的には、データ量監視部33は、例えば、優先データ及び非優先データのそれぞれについて、単位時間当たりの送信パケット数を測定する。
【0036】
帯域制御部34は、優先データに対して、スループット測定部32により測定されたスループットが最も高いスロットから順に所定数(初期値)を割り当てる。
【0037】
図4は、本実施形態に係る優先データへのスロットの割り当て例を示す図である。
この例では、PHS端末1において、データA、B、C、D及びEが連続して発生している。帯域制御部34は、これらのデータのプロトコル種別やポート番号等により、データB及びデータCが優先データであると判断する。
【0038】
そして、帯域制御部34は、スロット1〜4のうち、スループットが最も高いスロット1を優先データであるデータB及びデータCに割り当てる。すなわち、スロット1で、データBのパケット(B1〜B3)が、続いてデータCのパケット(C1〜C3)が送信される。スロット2〜4は、非優先データに割り当てられ、データA、データD、データEのパケット(それぞれ、A1〜A3、D1〜D3、E1〜E3)が順に送信される。
【0039】
図5は、本実施形態に係るTDMAスロットへパケットが格納される様子を時系列で示す図である。
【0040】
優先データのパケットB1は、さらにフレーム毎のデータサイズに分割され、複数フレームに跨って、スロット1に格納される。また、非優先データのパケットA1、A2及びA3についても、さらにフレーム毎のデータサイズに分割され、複数フレームに跨って、それぞれ、スロット2、スロット3及びスロット4に格納される。
【0041】
また、帯域制御部34は、優先データに対して初期値のスロット数を割り当てた後、優先データ及び非優先データの発生量に応じて、スロットの割り当て数を増減させる。
【0042】
帯域制御部34は、データ量監視部33により監視されている優先データの発生量が所定の増設条件を満たす場合、この優先データに対して割り当てるスロットを増設する。
また、帯域制御部34は、データ量監視部33により監視されている優先データの発生量が所定の減設条件を満たす場合、この優先データに対して割り当てるスロットを減設する。さらに、帯域制御部34は、優先データの発生量が所定の減設条件を満たし、かつ、非優先データが発生している場合、この非優先データに対して割り当てるスロットを増設する。
【0043】
また、帯域制御部34は、データ量監視部33により監視されている非優先データの発生量が所定の減設条件を満たす場合、この非優先データに対して割り当てるスロットを減設する。さらに、帯域制御部34は、非優先データの発生量が所定の減設条件を満たし、かつ、優先データが発生している場合、この優先データに対して割り当てるスロットを増設する。
【0044】
ここで、増設条件及び減設条件は、一定時間にどれだけのデータ量が発生したかにより定義される。具体的には、増設条件は、データの発生量が増加したことを判定する条件であり、例えば、1秒間に3パケット分以上のデータが3秒以上継続した場合等と定義される。また、減設条件は、データの発生量が減少したことを判定する条件であり、例えば、1秒間に1パケット分未満のデータが3秒以上継続した場合等と定義される。
【0045】
以下、制御部30の処理の流れを説明する。なお、例示として、全4スロットのうち、優先データに割り当てるスロット数の初期値を1とする。
【0046】
図6は、本実施形態に係る優先データが発生した際に、スロットを割り当てる処理を示すフローチャートである。
【0047】
ステップS1において、制御部30は、リアルタイム性を要する音声又は動画データを取り込む。
【0048】
ステップS2において、優先データ生成部31は、ステップS1で取り込んだデータを優先データとして、所定のプロトコル(IP+UDP+RTP)により生成する。
【0049】
ステップS3において、スループット測定部32は、記憶部50に記憶されている現状の各スロットのスループットを取得する。
【0050】
ステップS4において、帯域制御部34は、ステップS3で取得したスループットが最も高いスロットで優先データを送信する。このとき、非優先データが4スロット全てを使用していた場合、非優先データに割り当てるスロット数を1減少させる。
【0051】
図7は、本実施形態に係る優先データ又は非優先データの発生量に応じたスロットの割り当て数の調整処理を示すフローチャートである。
本処理は、データ量監視部33によりデータの発生量が監視されている間、定期的に繰り返し実行される。
【0052】
ステップS11において、帯域制御部34は、優先データの発生量が増設条件を満足したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS12に移り、判定がNOの場合、処理はステップS13に移る。
【0053】
ステップS12において、帯域制御部34は、優先データに割り当てるスロット数を1増設する。なお、スロット数は最大値を限度に増設されるが、最大値まで増設された状態で、非優先データを送受信しているスロット数との合計が4スロット未満の場合、帯域制御部34は、合計が4スロットになるまで優先データに割り当てるスロット数を増設する。
【0054】
ステップS13において、帯域制御部34は、優先データの発生量が減設条件を満足したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS14に移り、判定がNOの場合、処理はステップS15に移る。
【0055】
ステップS14において、帯域制御部34は、優先データに割り当てられているスロットの再割当処理(図8)を行う。
【0056】
ステップS15において、帯域制御部34は、非優先データの発生量が減設条件を満足したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS16に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
【0057】
ステップS16において、帯域制御部34は、非優先データに割り当てられているスロットの再割当処理(図9)を行う。
【0058】
図8は、本実施形態に係る優先データに割り当てられているスロットの再割当処理を示すフローチャートである。
本処理は、割り当て数の調整処理(図7)のステップS14に相当する。
【0059】
ステップS21において、帯域制御部34は、優先データに割り当てられているスロット数を減設する。なお、帯域制御部34は、1スロットずつ減設してもよいし、初期値に戻してもよい。ただし、1スロットのみが割り当てられている場合には、帯域制御部34は、1スロットの状態を維持する。
【0060】
ステップS22において、帯域制御部34は、非優先データに割り当てられているスロットがあるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS23に移り、判定がNOの場合、処理はステップS26に移る。
【0061】
ステップS23において、帯域制御部34は、優先データのスロット数と非優先データのスロット数との合計が4スロットになるまで、非優先データに割り当てられているスロット数を増設する。
【0062】
ステップS24において、帯域制御部34は、優先データのDormant移行タイマが満了したか否かを判定する。このタイマは、優先データが発生しなくなってから所定時間が経過すると満了する。この判定がYESの場合、処理はステップS25に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
【0063】
ステップS25において、帯域制御部34は、優先データへのスロットの割り当てを解除し、非優先データのみの通信とする。
【0064】
ステップS26において、帯域制御部34は、優先データのDormant移行タイマが満了したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS27に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
【0065】
ステップS27において、帯域制御部34は、優先データへ割り当てているスロットをDormant移行させ、ネットワーク接続を維持しつつ、通信を休止させる。
【0066】
図9は、本実施形態に係る非優先データに割り当てられているスロット数の減設処理を示すフローチャートである。
本処理は、割り当て数の調整処理(図7)のステップS15に相当する。
【0067】
ステップS31において、帯域制御部34は、非優先データに割り当てられているスロット数を減設する。なお、帯域制御部34は、1スロットずつ減設してもよいし、初期値に戻してもよい。ただし、1スロットのみが割り当てられている場合には、帯域制御部34は、1スロットの状態を維持する。
【0068】
ステップS32において、帯域制御部34は、優先データに割り当てられているスロットがあるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS33に移り、判定がNOの場合、処理はステップS36に移る。
【0069】
ステップS33において、帯域制御部34は、優先データのスロット数と非優先データのスロット数との合計が4スロットになるまで、優先データに割り当てられているスロット数を増設する。
【0070】
ステップS34において、帯域制御部34は、非優先データのDormant移行タイマが満了したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS35に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
【0071】
ステップS35において、帯域制御部34は、非優先データへのスロットの割り当てを解除し、優先データのみの通信とする。
【0072】
ステップS36において、帯域制御部34は、非優先データのDormant移行タイマが満了したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS37に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
【0073】
ステップS37において、帯域制御部34は、非優先データへ割り当てているスロットをDormant移行させ、ネットワーク接続を維持しつつ、通信を休止させる。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、PHS端末1は、TDMA方式にてデータ伝送を行う際、スループットが最も高いスロットを優先データに割り当て、非優先データと共に送信できるので、非優先データの遅延を抑制しつつ、優先データを効率的に送信できる。
【0075】
また、PHS端末1は、優先データ及び非優先データの発生量を監視し、増設条件又は減設条件に従って、優先データと非優先データとに割り当てるスロット数を増減するので、データの発生量に応じて効率的に送受信を行える。
【0076】
さらに、PHS端末1は、優先データに割り当てるスロットを減設した場合には、非優先データに割り当てるスロットを増設し、非優先データに割り当てるスロットを減設した場合には、優先データに割り当てるスロットを増設する。これにより、PHS端末1は、空きスロットを活用し、効率的に送受信を行える。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0078】
前述の実施形態では、音声や動画等のUDPデータを優先データとして設定したが、優先データと非優先データの判断基準はこれには限られない。例えば、監視システムにおけるセンサ情報や監視データ等を、信頼性を確保しつつ優先して送信する場合等、状況によって、TCPデータのリアルタイム性を優先すべき場合もある。
【0079】
そこで、PHS端末1は、優先データの設定基準を選択可能であってもよい。具体的には、PHS端末1は、例えば、「リアルタイム優先」(UDPデータを優先)と「信頼性優先」(TCPデータを優先)のいずれかを選択する入力を受け付けて設定してもよい。
【0080】
また、PHS端末1がパーソナルコンピュータ等のデータ端末に接続され、このデータ端末からUSB等で受信したデータをTDMA方式で無線送信する場合にも、本発明は適用可能である。
【0081】
また、本発明に係る無線端末装置は、PHS端末1には限られない。本発明は、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ、通信機能に特化した通信専用モジュール等、様々な装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 PHS端末(無線端末装置)
11 操作部
12 マイク
21 表示部
22 レシーバ
30 制御部
31 優先データ生成部
32 スループット測定部(通信状態測定部)
33 データ量監視部
34 帯域制御部
40 通信部
41 アンテナ
50 記憶部
60 音声制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割多元接続にてデータ伝送を行う無線端末装置であって、
所定のデータ種別を優先データとして生成する優先データ生成部と、
前記時分割多元接続における割り当てスロット毎の通信状態を測定する通信状態測定部と、
優先データに対して、前記通信状態測定部により測定された通信状態が最も高いスロットを割り当てる帯域制御部と、を備える無線端末装置。
【請求項2】
優先データは、優先データとは異なるデータである非優先データに比べて、リアルタイム性が要求されるデータである請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
優先データ及び優先データとは異なるデータである非優先データの発生量を監視するデータ量監視部を備え、
前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている優先データの発生量が所定の増設条件を満たす場合、当該優先データに対して割り当てるスロットを増設する請求項1又は請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている優先データの発生量が所定の減設条件を満たす場合、当該優先データに対して割り当てるスロットを減設する請求項3に記載の無線端末装置。
【請求項5】
前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている優先データの発生量が所定の減設条件を満たし、かつ、非優先データが発生している場合、当該非優先データに対して割り当てるスロットを増設する請求項4に記載の無線端末装置。
【請求項6】
前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている非優先データの発生量が所定の減設条件を満たす場合、当該非優先データに対して割り当てるスロットを減設する請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項7】
前記帯域制御部は、前記データ量監視部により監視されている非優先データの発生量が所定の減設条件を満たし、かつ、優先データが発生している場合、当該優先データに対して割り当てるスロットを増設する請求項6に記載の無線端末装置。
【請求項8】
前記優先データ生成部は、UDPデータを優先データとし、TCPデータを非優先データとする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項9】
時分割多元接続にてデータ伝送を行う無線端末装置の制御方法であって、
所定のデータ種別を優先データとして生成する優先データ生成ステップと、
前記時分割多元接続における割り当てスロット毎の通信状態を測定する通信状態測定ステップと、
優先データに対して、前記通信状態測定ステップにおいて測定された通信状態が最も高いスロットを割り当てる帯域制御ステップと、を含む制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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