説明

無線端末装置及び測位方法

【課題】GPSによる測位処理用の特別な補助情報を基地局から取得しない場合に、TTFF性能を向上できる無線端末装置及び測位方法を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、Almanacデータ及び国毎に複数設けられた基準地点の座標を記憶する記憶部70と、位置登録した基地局から国コードを取得する国情報取得部31と、国コードに基づいて基地局が在圏する国における基準地点の座標を取得する基準地点取得部32と、Almanacデータ、基準地点の位置情報及び現在時刻に基づいて、基準地点それぞれにおける可視衛星を算出する可視衛星算出部33と、算出された可視衛星のうち、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先度を高め、優先して捕捉を試みる測位処理部34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS衛星から受信した航法メッセージに基づいて可視衛星を捕捉して測位演算を行う無線端末装置及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線端末装置は、現在位置情報を取得するために、GPS(Global Positioning System)による測位処理を行っている。この測位処理には、GPS衛星の電波を捕捉するための補助情報を基地局から受信するAssisted方式又はBased方式や、補助情報を基地局から取得しないStandalone方式がある。
【0003】
Standalone方式の場合、無線端末装置は、測位のために基地局と通信を行わず、GPS衛星から送信される航法メッセージ(Almanacデータ及びEphemerisデータ)を自ら取得する。さらに、無線端末装置は、受信した航法メッセージに基づいてGPS衛星を捕捉し、自ら測位演算を行う。このように、Standalone方式の場合、無線端末装置が起動して初回の測位時には、可視衛星を算出して捕捉する処理が必要なため、衛星補足後の連続測位時に比べて、測位結果が得られるまでに長時間を要する。この初回の測位結果が得られるまでの時間をTTFF(Time To First Fix)という。
【0004】
ただし、無線端末装置が過去に測位処理を行っており、位置情報、時刻情報及び航法メッセージが保存されている場合には、新たにこれらの情報を取得する場合よりも早くGPS衛星を捕捉できるので、TTFF性能が改善する。ところが、国内から国外等、長距離を移動した後に測位を開始する場合、前回に利用した航法メッセージが保存されていたとしても、現在位置と大きく離れた移動前の位置情報に基づいてGPS衛星を探索するため、GPS衛星の推定位置が実際と大きくずれており、捕捉するまでに長時間を要してしまう。
【0005】
このような状況において、TTFF性能を改善するために、基地局から可視衛星の情報及び基地局の位置情報を受信し、受信した情報に基づいてGPS衛星を高速に探索するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3576268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のシステムは、無線端末装置が基地局とデータ通信を行うことが前提となっている。したがって、通信の確立及びデータ処理に時間が掛かり、また、利用コストが増大する場合もある。さらに、無線端末装置が例えば、同様のサービスが提供されていない国外へ移動した場合には、基地局からデータを受信できず、TTFF性能が改善されない場合もある。
【0008】
本発明は、GPSによる測位処理用の特別な補助情報を基地局から取得しない場合に、TTFF性能を向上できる無線端末装置及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線端末装置は、GPS衛星から送信される信号を受信するGPS受信部、及び当該GPS衛星から受信された航法メッセージに基づいて可視衛星を捕捉して測位演算を行う測位処理部を有する無線端末装置であって、前記航法メッセージのうち少なくともGPS衛星の軌道情報、及び国毎に複数設けられた基準地点の位置情報を記憶する記憶部と、位置登録した基地局から、当該基地局が在圏する国の国識別情報を取得する国情報取得部と、前記国情報取得部により取得された前記国識別情報に基づいて、前記記憶部から前記基地局が在圏する国における前記基準地点の位置情報を取得する基準地点取得部と、前記軌道情報、並びに前記基準地点取得部により取得された前記基準地点の位置情報及び現在時刻に基づいて、当該基準地点それぞれにおける可視衛星を算出する可視衛星算出部と、を備え、前記測位処理部は、前記可視衛星算出部により算出された可視衛星のうち、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先度を高め、優先して捕捉を試みる。
【0010】
また、前記GPS受信部は、複数チャンネルの受信回路を有し、前記測位処理部は、前記優先度が高い可視衛星のグループほど、より多くのチャンネルに割り当てることが好ましい。
【0011】
また、前記測位処理部は、第1の基準地点における可視衛星に含まれないGPS衛星を捕捉した場合、当該捕捉したGPS衛星を可視衛星の1つとする第2の基準地点における可視衛星の優先度を、前記第1の基準地点における可視衛星の優先度よりも高くすることが好ましい。
【0012】
また、前記測位処理部は、いずれの基準地点における可視衛星にも含まれないGPS衛星を捕捉した場合、前記優先度を解除し、全てのGPS衛星を対象に捕捉を試みることが好ましい。
【0013】
また、前記国情報取得部は、前記位置登録した基地局から、当該基地局が在圏する国内のエリアを示すエリア識別情報をさらに取得し、前記記憶部は、前記エリア識別情報と関連付けて、前記測位処理部による測位演算結果を当該エリアの基準地点の位置情報として記憶し、前記基準地点取得部は、前記国情報取得部により前記記憶部に記憶されているエリア識別情報が取得された場合、当該エリア識別情報に関連付けられている基準地点の位置情報を、前記記憶部に記憶されている基準地点の位置情報に代えて取得することが好ましい。
【0014】
また、前記基準地点取得部は、前記国情報取得部により前回の測位時と同一の国識別情報が取得された場合、前回の測位結果を前記基準地点の位置情報として、前記記憶部に記憶されている基準地点の位置情報に代えて取得することが好ましい。
【0015】
本発明に係る測位方法は、無線端末装置がGPS衛星から受信した航法メッセージに基づいて可視衛星を捕捉して測位演算を行う測位方法であって、前記航法メッセージのうち少なくともGPS衛星の軌道情報、及び国毎に複数設けられた基準地点の位置情報を記憶する記憶ステップと、位置登録した基地局から、当該基地局が在圏する国の国識別情報を取得する国情報取得ステップと、前記国情報取得ステップにおいて取得された前記国識別情報に基づいて、前記記憶ステップで記憶されている前記基地局が在圏する国における前記基準地点の位置情報を取得する基準地点取得ステップと、前記軌道情報、並びに前記基準地点取得ステップにおいて取得された前記基準地点の位置情報及び現在時刻に基づいて、当該基準地点それぞれにおける可視衛星を算出する可視衛星算出ステップと、前記可視衛星算出ステップにおいて算出された可視衛星のうち、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先度を高め、優先して捕捉を試みる測位処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無線端末装置において、GPSによる測位処理用の特別な補助情報を基地局から取得しない場合に、TTFF性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機の機能を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る国情報テーブルを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るエリア情報テーブルを示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るGPS衛星をグループ分けした例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るチャンネルの割り当ての例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係るチャンネルの再割り当ての例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る初期測位時の処理を示す第1のフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る初期測位時の処理を示す第2のフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態に係る初期測位時の処理を示す第3のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。なお、本実施形態では、無線端末装置の一例として携帯電話機1を説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。
なお、図1は、いわゆる折り畳み型の携帯電話機の形態を示しているが、本発明に係る携帯電話機の形態はこれに限られない。例えば、両筐体を重ね合わせた状態から一方の筐体を一方向にスライドさせるようにしたスライド式や、重ね合せ方向に沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転式(ターンタイプ)や、操作部と表示部とが1つの筐体に配置され、連結部を有さない形式(ストレートタイプ)でもよい。
【0020】
携帯電話機1は、操作部側筐体2と、表示部側筐体3と、を備えて構成される。操作部側筐体2は、表面部10に、操作部11と、携帯電話機1の使用者が通話時や音声認識アプリケーションを利用時に発した音声が入力されるマイク12と、を備えて構成される。操作部11は、各種設定機能や電話帳機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作ボタン13と、電話番号の数字やメールの文字等を入力するための入力操作ボタン14と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作ボタン15と、から構成されている。
【0021】
また、表示部側筐体3は、表面部20に、各種情報を表示するための表示部21と、通話の相手側の音声を出力するレシーバ22と、を備えて構成されている。
【0022】
また、操作部側筐体2の上端部と表示部側筐体3の下端部とは、ヒンジ機構4を介して連結されている。また、携帯電話機1は、ヒンジ機構4を介して連結された操作部側筐体2と表示部側筐体3とを相対的に回転することにより、操作部側筐体2と表示部側筐体3とが互いに開いた状態(開状態)にしたり、操作部側筐体2と表示部側筐体3とを折り畳んだ状態(閉状態)にしたりできる。
【0023】
図2は、本実施形態に係る携帯電話機1の機能を示すブロック図である。
携帯電話機1は、操作部11と、表示部21と、制御部30と、通信部40と、GPS受信部50と、音声制御部60と、記憶部70とを備える。
【0024】
制御部30は、携帯電話機1の全体を制御しており、例えば、表示部21や通信部40等の各部に対して所定の制御を行う。また、制御部30は、操作部11や通信部40、GPS受信部50等から入力を受け付けて、各種処理を実行する。そして、制御部30は、処理実行の際には、記憶部70を制御し、各種プログラム及びデータの読み出し、及びデータの書き込みを行う。なお、本実施形態に係る制御部30の詳細機能は後述する。
【0025】
通信部40は、所定の使用周波数帯(例えば、2GHz帯や800MHz帯等)で外部装置(基地局)と通信を行う。そして、通信部40は、メインアンテナ41より受信した信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給し、また、制御部30から供給された信号を変調処理し、メインアンテナ41から外部装置に送信する。
【0026】
GPS受信部50は、GPSアンテナ51により受信したGPS衛星からの所定周波数帯の電波信号を復調処理し、処理後の信号を制御部30に供給する。なお、GPS受信部50及びGPSアンテナ51の機能は、それぞれ、通信部40及びメインアンテナ41が担ってもよい。
【0027】
また、GPS受信部50は、複数チャンネルの受信回路を有しており、複数のGPS衛星を、それぞれ異なるチャンネルに割り当てることにより、これらのGPS衛星を並列に捕捉して信号を受信する。以下、GPS受信部50は、12チャンネルを有しているものとして説明する。
【0028】
音声制御部60は、制御部30の制御に従って、通信部40から供給された信号に対して所定の音声処理を行い、処理後の信号をレシーバ22に出力する。レシーバ22は、音声制御部60から供給された信号を外部に出力する。なお、この信号は、レシーバ22に代えて、又はレシーバ22と共に、スピーカ(図示せず)から出力されるとしてもよい。また、音声制御部60は、制御部30の制御に従って、マイク12から入力された信号を処理し、処理後の信号を通信部40に出力する。通信部40は、音声制御部60から供給された信号に所定の処理を行い、処理後の信号をメインアンテナ41より出力する。
【0029】
記憶部70は、例えば、ワーキングメモリを含み、制御部30による演算処理に利用される。また、本実施形態に係る各種プログラムの他、測位に利用した航法メッセージのうち少なくともGPS衛星の軌道情報であるAlmanacデータ、位置情報及び時刻情報、後述の国情報テーブル、エリア情報テーブル、可視衛星リスト等を記憶する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る記憶部70に格納されている国情報テーブルを示す図である。
国情報テーブルには、国コード(国識別情報)に関連付けて、国毎に複数設けられた基準地点の位置情報として、緯度及び経度で表される座標が記憶されている。具体的には、基準地点は、各国に2つ(基準地点A及び基準地点B)設けられることが好ましく、各国の領土内における最長直線距離の両端付近に2つ設けられる。
【0031】
図4は、本実施形態に係る記憶部70に格納されているエリア情報テーブルを示す図である。
エリア情報テーブルには、国コード及びエリアコード(エリア識別情報)毎に、1つの基準地点の位置情報として、緯度及び経度で表される座標が記憶されている。ここで、エリアコードとは、国内を細分化したエリア、例えば県や州等を識別するデータである。なお、初期状態では、エリアコード又は座標は記憶されている必要はない。後述の国情報取得部31によりエリアコードが取得された場合、このエリアコードと関連付けて、測位処理部34による測位演算結果がエリアの基準地点の座標として記憶される。
【0032】
次に制御部30の機能を詳述する。
制御部30は、国情報取得部31と、基準地点取得部32と、可視衛星算出部33と、測位処理部34とを備える。
【0033】
国情報取得部31は、携帯電話機1が位置登録した基地局からの報知情報により、この基地局が在圏する国の国コードを取得する。このとき、国情報取得部31は、基地局が在圏する国内のエリアを示すエリアコードを、さらに基地局からの報知情報により取得してもよい。
【0034】
基準地点取得部32は、国情報取得部31により取得された国コードに基づいて、記憶部70に格納されている国情報テーブルから、この国コードに対応する基準地点の座標を取得する。
【0035】
また、基準地点取得部32は、国情報取得部31によりエリア情報テーブル(図4)に既に記憶されているエリアコードが取得された場合には、このエリアコードに関連付けられている基準地点の座標を、国情報テーブル(図3)に記憶されている基準地点の座標に代えて取得する。
【0036】
さらに、基準地点取得部32は、国情報取得部31により前回の測位時と同一の国コードが取得された場合、前回の測位結果を基準地点の座標として、国情報テーブル(図3)やエリア情報テーブル(図4)に記憶されている基準地点の座標に代えて取得する。
【0037】
可視衛星算出部33は、Almanacデータ、並びに基準地点取得部32により取得された基準地点の座標及び現在時刻に基づいて、この基準地点それぞれにおける可視衛星を算出する。そして、可視衛星算出部33は、全てのGPS衛星を、複数の基準地点から共通で見える衛星、単一の基準地点からのみ見える衛星、いずれの基準地点からも見えない衛星にグループ分けする。
【0038】
図5は、本実施形態に係るGPS衛星を、ある国における2つの基準地点からの可視状態に基づいてグループ分けした例を示す図である。
【0039】
G01〜G32の32個のGPS衛星は、基準地点Aからのみ見えるGPS衛星のグループA、基準地点Bからのみ見えるGPS衛星のグループB、基準地点A及びBから共通で見えるGPS衛星のグループC、いずれの基準地点からも見えないGPS衛星のグループDに分類されている。
【0040】
測位処理部34は、GPS受信部50を介してGPS衛星から受信した航法メッセージに基づいて可視衛星を捕捉して測位演算を行う。このとき、測位処理部34は、可視衛星算出部33により算出された可視衛星のうち、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先度を高め、優先して捕捉を試みる。つまり、国毎に基準地点が2つ設けられている場合、第1に両方の基準地点に共通の可視衛星として算出されているGPS衛星(グループC)の探索が優先される。第2に、一方の基準地点のみの可視衛星として算出されているGPS衛星(グループA及びグループB)の探索が優先される。
【0041】
具体的には、測位処理部34は、優先度が高い可視衛星のグループほど、GPS受信部50において、より多くのチャンネルに割り当てる。すなわち、図5のグループCに最も多くチャンネルが割り当てられ、次にグループA及びグループB、最後にグループDの順に割り当て数が減少する。
【0042】
図6は、本実施形態に係るGPS受信部50における、チャンネルの割り当ての例を示す図である。
【0043】
グループCは、2つの基準地点から共通で見える可視衛星であり、国内のいずれの地点からも捕捉できる可能性が高いので最も優先され、全12チャンネルのうち、6チャンネルが割り当てられる。
【0044】
グループA及びグループBは、携帯電話機1の位置によっては捕捉可能であり、また、捕捉できた場合には、携帯電話機1の位置を絞り込み可能なため有用である。そこで、グループA及びグループBには、それぞれグループCへの割り当てよりは少ない2チャンネルが割り当てられる。
【0045】
グループDは、グループA、B及びCよりも捕捉できる可能性は低いが、基地局から得られた国コードや時刻情報等が誤っている場合を想定し、残りの2チャンネルが割り当てられる。
【0046】
また、測位処理部34は、図6の割り当てに従ってGPSを探索しているとき、第1の基準地点における可視衛星に含まれないGPS衛星を捕捉した場合、この捕捉したGPS衛星を可視衛星の1つとする第2の基準地点における可視衛星の優先度を、第1の基準地点における可視衛星の優先度よりも高くする。具体的には、測位処理部34は、グループAのGPS衛星を捕捉した場合には、グループBよりもグループAの優先度を高くし、グループBのGPS衛星を捕捉した場合には、グループAよりもグループBの優先度を高くしてチャンネルの再割り当てを行う。
【0047】
図7は、本実施形態に係るチャンネルの再割り当ての例を示す図である。この例は、グループAのGPS衛星が捕捉された場合を示している。
【0048】
グループAのGPS衛星が捕捉されたことにより、携帯電話機1が基準地点Bよりも基準地点Aに近い位置にあると判断されるので、測位処理部34は、捕捉可能性が低いグループBのチャンネル割り当てを解除する。さらに、基準地点Aから見えないグループDのGPS衛星が捕捉される可能性も低下するので、測位処理部34は、グループDに割り当てられていた2チャンネルを1チャンネルに減らし、その結果、グループAに5チャンネルが割り当てられる。
【0049】
また、測位処理部34は、いずれの基準地点における可視衛星にも含まれないGPS衛星を捕捉した場合、算出された可視衛星が実際には見えない可能性も高いので、設定されている優先度を解除し、全てのGPS衛星を対象に捕捉を試みる。具体的には、測位処理部34は、グループDのGPS衛星を捕捉した場合、グループA、B、C及びDの分類に関係なく、全GPS衛星を所定の順に各チャンネルに割り当てる。
【0050】
図8〜図10は、本実施形態に係る携帯電話機1における初期測位時の処理を示すフローチャートである。
【0051】
図8のステップS1において、国情報取得部31は、電源が投入された場合や、電波圏外から復帰した場合等に、基地局に対して位置登録する際、国コードを含む基地局情報を取得する。
【0052】
ステップS2において、制御部30は、ステップS1において取得された情報の種類を判定する。国コードは取得されたがエリアコードが取得されていない場合、処理はステップS3に移り、国コード及びエリアコードが取得された場合、処理はステップS22(図10)に移る。
【0053】
ステップS3において、制御部30は、取得された国コードが、前回測位時の国コードと同一か否かを判定する。この判定がYESの場合、前回の測位情報が利用可能なので、処理はステップS14(図9)に移り、判定がNOの場合、処理はステップS4に移る。
【0054】
ステップS4において、基準地点取得部32は、取得された国コードに対応する基準地点が国情報テーブル(図3)にあるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS5に移り、判定がNOの場合、保存されているAlmanacデータに基づいて可視衛星を算出できないので、処理はステップS15(図9)に移る。
【0055】
ステップS5において、基準地点取得部32は、取得された国コードに対応する基準地点A及びBの座標を、国情報テーブル(図3)から取得する。
【0056】
ステップS6において、可視衛星算出部33は、ステップS5で取得された基準地点A及びBそれぞれの可視衛星を算出する。
【0057】
ステップS7において、測位処理部34は、ステップS6で算出された可視衛星をグループ分けし、グループ毎の優先度に従って、図6の通りにGPS受信部50におけるチャンネルの割り当てを決定する。
【0058】
ステップS8において、測位処理部34は、ステップS7で決定されたチャンネルの割り当てに従って、GPS衛星を探索する。
【0059】
ステップS9において、測位処理部34は、15分以上、GPS衛星が見つからなかったか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS12に移り、判定がNOの場合、処理はステップS10に移る。
【0060】
ステップS10において、測位処理部34は、見つかったGPS衛星のグループを判定する。基準地点A及びBから共通で見えるGPS衛星が見つかった場合、処理はステップS13に移る。基準地点A又はBの一方からのみ見えるGPS衛星が見つかった場合、処理はステップS11に移る。基準地点A又はBからは見えない可視衛星以外のGPS衛星が見つかった場合、処理はステップS12に移る。
【0061】
ステップS11において、測位処理部34は、見つかったGPS衛星が存在する基準地点の可視衛星の優先度を高め、GPS受信部50におけるチャンネルの再割り当てを行う。
【0062】
ステップS12において、測位処理部34は、全衛星を対象にして、GPS受信部50におけるチャンネルの再割り当てを行う。
【0063】
ステップS13において、測位処理部34は、測位が成功したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理は終了し、判定がNOの場合、処理はステップS8に戻る。なお、捕捉したGPS衛星の数が4個未満で不足している場合、優先されている(グループD以外)全てのGPS衛星の捕捉を試みていなければ、判定をNOとして、処理はステップS8に戻る。
【0064】
図9のステップS14において、測位処理部34は、測位に必要な情報(航法メッセージ、位置情報、時刻情報)が保存されているか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS18に移り、判定がNOの場合、処理はステップS15に移る。
【0065】
ステップS15において、測位処理部34は、GPS衛星からの信号をデコードして航法メッセージを新たに取得することによりGPS衛星を捕捉するコールドスタートによる測位を開始する。
【0066】
ステップS16において、測位処理部34は、全てのGPS衛星を対象として探索を行う。
【0067】
ステップS17において、測位処理部34は、測位が成功したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理は終了し、判定がNOの場合、処理はステップS16に戻る。
【0068】
ステップS18において、測位処理部34は、携帯電話機1が前回測位時と同一国内に位置しているので、前回の測位情報が利用可能と判断し、この測位情報に基づいて、可視衛星を算出する(ウォームスタート又はホットスタート)。
【0069】
ステップS19において、測位処理部34は、ステップS18で算出された可視衛星を探索する。
【0070】
ステップS20において、測位処理部34は、15分以上、GPS衛星が見つからなかったか否かを判定する。この判定がYESの場合、測位処理部34は、前回の測位情報が利用できないと判断し、処理はステップS15に移り、判定がNOの場合、処理はステップS21に移る。
【0071】
ステップS21において、測位処理部34は、測位が成功したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理は終了し、判定がNOの場合、処理はステップS19に戻る。
【0072】
図10のステップS22において、基準地点取得部32は、取得された国コード及びエリアコードに対応する基準地点がエリア情報テーブル(図4)にあるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS23に移り、判定がNOの場合、エリアの基準地点を取得できないので、処理はステップS3(図8)に移る。
【0073】
ステップS23において、可視衛星算出部33は、エリアコードに対応してステップS22で取得された基準地点における可視衛星を算出する。
【0074】
ステップS24において、測位処理部34は、ステップS23で算出された可視衛星のうち、仰角の高いGPS衛星を優先的にGPS受信部50のチャンネルに割り当てる。このとき、チャンネルに空きができた場合、この空きチャンネルを可視衛星以外のGPS衛星に割り当てる。
【0075】
ステップS25において、測位処理部34は、ステップS24で決定されたチャンネルの割り当てに従って、GPS衛星を探索する。
【0076】
ステップS26において、測位処理部34は、15分以上、GPS衛星が見つからなかったか否かを判定する。この判定がYESの場合、測位処理部34は、算出された可視衛星に誤りがあると判断し、処理はステップS28に移り、判定がNOの場合、処理はステップS27に移る。
【0077】
ステップS27において、測位処理部34は、見つかったGPS衛星がステップS23で算出された可視衛星であるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS29に移り、判定がNOの場合、測位処理部34は、算出された可視衛星に誤りがあると判断し、処理はステップS28に移る。
【0078】
ステップS28において、測位処理部34は、GPS衛星からの信号をデコードして航法メッセージを新たに取得することによりGPS衛星を捕捉するコールドスタートによる測位を開始する。
【0079】
ステップS29において、測位処理部34は、測位が成功したか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS30に移り、判定がNOの場合、処理はステップS25に戻る。
【0080】
ステップS30において、制御部30は、測位結果の座標をエリアコードと対応付けて、エリア情報テーブル(図4)に格納する。なお、制御部30は、4つ以上の衛星の捕捉に成功しており、測位結果の信頼性が高いと判断された場合に、エリア情報テーブルに座標を格納することとしてよい。
【0081】
以上のように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、Almanacデータが保存されていれば、基地局から取得した国コードに対応する基準地点の座標に基づいて可視衛星を算出できるので、Standalone方式におけるTTFF性能を向上できる。
さらに、国毎に基準地点が複数(例えば2つ)設けられており、携帯電話機1は、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先的に捕捉を試みるので、捕捉成功確率が高いGPS衛星を効率的に捕捉でき、TTFF性能を向上できる。
【0082】
また、携帯電話機1は、複数チャンネルの受信回路を有する場合に、割り当てるチャンネルの数により、優先度を容易に設定できる。
【0083】
また、携帯電話機1は、実際に捕捉したGPS衛星が含まれるグループに応じて、各グループの優先度を再設定できるので、GPS衛星を探索している間にも、捕捉成功確率を高めることができる。
【0084】
また、携帯電話機1は、基地局からエリアコードも取得できた場合、測位結果を基準地点として記憶しておくことにより、次回、同一のエリアコードを受信した場合に、記憶されている基準地点に基づいて、精度良く可視衛星を算出できる。
【0085】
また、携帯電話機1は、基地局から受信した国コードが前回の測位時と同一であれば、前回の測位情報を用いてGPS衛星の捕捉を試みるので、状況に応じて効率的な方法を選択でき、TTFF性能が向上すると共に処理負荷が低減する。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0087】
本発明に係る無線端末装置は、携帯電話機1には限られない。本発明は、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ゲーム機、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータ等、様々な装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 携帯電話機(無線端末装置)
11 操作部
21 表示部
30 制御部
31 国情報取得部
32 基準地点取得部
33 可視衛星算出部
34 測位処理部
40 通信部
41 メインアンテナ
50 GPS受信部
51 GPSアンテナ
60 音声制御部
70 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS衛星から送信される信号を受信するGPS受信部、及び当該GPS衛星から受信された航法メッセージに基づいて可視衛星を捕捉して測位演算を行う測位処理部を有する無線端末装置であって、
前記航法メッセージのうち少なくともGPS衛星の軌道情報、及び国毎に複数設けられた基準地点の位置情報を記憶する記憶部と、
位置登録した基地局から、当該基地局が在圏する国の国識別情報を取得する国情報取得部と、
前記国情報取得部により取得された前記国識別情報に基づいて、前記記憶部から前記基地局が在圏する国における前記基準地点の位置情報を取得する基準地点取得部と、
前記軌道情報、並びに前記基準地点取得部により取得された前記基準地点の位置情報及び現在時刻に基づいて、当該基準地点それぞれにおける可視衛星を算出する可視衛星算出部と、を備え、
前記測位処理部は、前記可視衛星算出部により算出された可視衛星のうち、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先度を高め、優先して捕捉を試みる無線端末装置。
【請求項2】
前記GPS受信部は、複数チャンネルの受信回路を有し、
前記測位処理部は、前記優先度が高い可視衛星のグループほど、より多くのチャンネルに割り当てる請求項1に記載の無線端末装置。
【請求項3】
前記測位処理部は、第1の基準地点における可視衛星に含まれないGPS衛星を捕捉した場合、当該捕捉したGPS衛星を可視衛星の1つとする第2の基準地点における可視衛星の優先度を、前記第1の基準地点における可視衛星の優先度よりも高くする請求項1又は請求項2に記載の無線端末装置。
【請求項4】
前記測位処理部は、いずれの基準地点における可視衛星にも含まれないGPS衛星を捕捉した場合、前記優先度を解除し、全てのGPS衛星を対象に捕捉を試みる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項5】
前記国情報取得部は、前記位置登録した基地局から、当該基地局が在圏する国内のエリアを示すエリア識別情報をさらに取得し、
前記記憶部は、前記エリア識別情報と関連付けて、前記測位処理部による測位演算結果を当該エリアの基準地点の位置情報として記憶し、
前記基準地点取得部は、前記国情報取得部により前記記憶部に記憶されているエリア識別情報が取得された場合、当該エリア識別情報に関連付けられている基準地点の位置情報を、前記記憶部に記憶されている基準地点の位置情報に代えて取得する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線端末装置。
【請求項6】
前記基準地点取得部は、前記国情報取得部により前回の測位時と同一の国識別情報が取得された場合、前回の測位結果を前記基準地点の位置情報として、前記記憶部に記憶されている基準地点の位置情報に代えて取得する請求項1から請求項5のいずれかに記載の無線端末装置。
【請求項7】
無線端末装置がGPS衛星から受信した航法メッセージに基づいて可視衛星を捕捉して測位演算を行う測位方法であって、
前記航法メッセージのうち少なくともGPS衛星の軌道情報、及び国毎に複数設けられた基準地点の位置情報を記憶する記憶ステップと、
位置登録した基地局から、当該基地局が在圏する国の国識別情報を取得する国情報取得ステップと、
前記国情報取得ステップにおいて取得された前記国識別情報に基づいて、前記記憶ステップで記憶されている前記基地局が在圏する国における前記基準地点の位置情報を取得する基準地点取得ステップと、
前記軌道情報、並びに前記基準地点取得ステップにおいて取得された前記基準地点の位置情報及び現在時刻に基づいて、当該基準地点それぞれにおける可視衛星を算出する可視衛星算出ステップと、
前記可視衛星算出ステップにおいて算出された可視衛星のうち、より多くの基準地点に共通する可視衛星ほど優先度を高め、優先して捕捉を試みる測位処理ステップと、を含む測位方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate