説明

無線装置

【課題】 単側波帯変調方式に限らず、各種振幅変調方式及び周波数変調方式を用いた無線装置とも相互通信できる無線装置を提供する。
【解決手段】 単側波帯変調方式の無線装置であって、受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器103と、周波数変換器103に局部発振信号を供給する局部発振器105と、中間周波数の信号に搬送波を付加する搬送波付加回路109と、搬送波が付加された中間周波数の信号を単側波帯変調方式による復調を行う復調器107とを備え、受信信号の変調方式に応じて局部発振器105の発振周波数を変更とすると共に、付加する搬送波の周波数を可変にする可変発振器110と、当該搬送波のレベルを調整する可変増幅器111を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単側波帯変調方式の無線装置に係り、特に、各種振幅変調方式及び周波数変調方式を用いた無線装置とも相互通信できる無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の無線装置:図6]
従来の単側波帯変調方式の無線装置について図6を参照しながら説明する。図6は、従来の無線装置の構成図である。尚、図6では、単側波帯変調方式において、一例として、実数零点単側波帯変調(RZ SSB:Real Zero Single Sideband Modulation)方式の無線装置を示している。
【0003】
図6の無線装置は、送信装置301と受信装置307とを備えている。
送信装置301は、マイクロホン302と、ヒルベルト変換器(HILBERT)303と、直交変調器(QUAD MOD)306と、局部発振器311とを有している。
受信装置307は、周波数変換器308と、RZ SSB 復調器(RZ DEMOD)309と、スピーカ310とを有している。
【0004】
[従来の無線装置の動作]
送信装置301は、マイクロホン302に入力された音声信号をヒルベルト変換器303でヒルベルト変換し、互いに位相が90度異なる信号I304と信号Q305を生成する。
この信号I304と信号Q305と無線周波数に設定した局部発振器311からの局部発振信号とを直交変調器306で振幅変調することによって、ベクトル合成法により低域搬送波付の上単側波帯変調信号を任意の無線周波数にて送出する。
【0005】
受信装置307は、低域搬送波付の上単側波帯変調信号により変調された無線信号を周波数変換器308で中間周波数に変換した後に、RZ SSB 復調器309により復調し、音声信号をスピーカ310で音圧に変換し、音声信号を取り出す。
このように、従来のRZ SSB方式の無線装置では、低域搬送波付の上単側波帯変調信号のみを復調できるようになっていた。
【0006】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2007−312263号公報「無線基地局装置」(出願人:株式会社日立国際電気)[特許文献1]がある。
特許文献1には、無線基地局装置において、デジタル直交変調を行う場合に、I相、Q相のデジタル信号の符号を制御し、SSB変調による上側波帯又は下側波帯のいずれかを選択可能とし、選択された側波帯に基づいて上側ローカル信号又は下側ローカル信号のいずれかが特定され、ミキサで混合されることが示されている。
つまり、特許文献1は、SSB変調における上側波帯、下側波帯両方への適用を考慮した装置の一例となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−312263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、送信機は、電波法等の規制があり、例えば、搬送波付上側単側波帯を使用することを定めたシステムでは、それ以外の方式で送信することはできない。従って、同じシステムの受信機も、受信側には規制はないにもかかわらず、それ以外の方式の送信波を受信するようには構成されていないのが実情であった。
しかしながら、使用者の利便性や無線機の汎用性を考慮した場合、各種方式の送信波を受信できることが望ましい。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、搬送波付単側波帯変調方式に限らず、各種振幅変調方式及び周波数変調方式を用いた無線装置とも相互通信できる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、単側波帯変調方式の無線装置であって、受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、周波数変換器に局部発振信号を供給する局部発振器と、中間周波数の信号に搬送波を付加する搬送波付加手段と、搬送波が付加された中間周波数の信号を単側波帯変調方式による復調を行う復調器とを備え、受信信号の変調方式に応じて局部発振器の発振周波数を変更可能とすると共に、付加する搬送波の周波数と当該搬送波のレベルを調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、周波数変換器に局部発振信号を供給する局部発振器と、中間周波数の信号に搬送波を付加する搬送波付加手段と、搬送波が付加された中間周波数の信号を単側波帯変調方式による復調を行う復調器とを備え、受信信号の変調方式に応じて局部発振器の発振周波数を変更可能とすると共に、付加する搬送波の周波数と当該搬送波のレベルを調整可能とした、単側波帯変調方式の無線装置としているので、各種振幅変調方式及び周波数変調方式を用いた無線装置とも相互通信できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線装置における受信装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線装置における送信装置の構成図である。
【図3】直交変調器の詳細構成図である。
【図4】パラメータの条件と変調信号のスペクトラムの状態を示す模式図である。
【図5】送出変調波の凡例を示す図である。
【図6】従来の無線装置の構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
搬送波付上単側波帯変調方式の受信装置で振幅変調信号及び周波数変調信号により情報を復調するためには2つの条件が必要である。第1の条件は、基準となる搬送波信号が存在すること、第2の条件は、搬送波より高い周波数領域に変調情報が含まれていることである。
【0014】
本発明の実施の形態では、第1の条件について、基準となる搬送波信号が付加されていない信号を受信する場合には、受信装置の内部で周波数及び信号レベルの調整が可能な搬送波信号を付加させることで復調を可能にするものである。
【0015】
また、本発明の実施の形態では、第2の条件について、音声等の変調された信号成分が搬送波よりも低い周波数領域に変調情報が含まれている場合には、受信装置の内部で周波数変調を行う際に、受信信号の位相を反転させることにより、復調を可能とするものである。
このように、受信装置の内部で、受信している変調信号に合わせて上記処理を行うことで、異なる変調方式の信号を受信できる。
【0016】
また、本発明の実施の形態では、送信装置において、直交変調を行う際に、直交変調器に入力される音声信号の直流成分の値、直交変調器のIチャネルとQチャネルの信号間の位相差を可変パラメータとして、当該パラメータを選択することにより、任意の振幅変調信号を送出できるものである。
【0017】
本発明の実施の形態では、送信装置において、周波数変調を行う際に、直交変調器に入力していた音声信号を電圧制御発振器の入力にスイッチで切り替えることにより、直接周波数変調を行うことができるものである。
【0018】
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る無線装置は、受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、周波数変換器に局部発振信号を供給する局部発振器と、中間周波数信号に搬送波を付加する搬送波付加手段とを備え、受信信号の変調方式に応じて局部発振器の発振周波数を変更すると共に、搬送波の付加と、付加する搬送波のレベルを調整するものであり、各種振幅変調方式及び周波数変調方式を用いた無線装置とも相互通信できるものである。
【0019】
また、本発明の実施の形態に係る無線装置は、受信信号を中間周波数に変換する少なくとも1つの周波数変換器と、少なくとも1つの周波数が固定された中間周波数帯域幅で周波数変換器からの中間周波数信号を濾波する少なくとも1つの中間周波数フィルタと、周波数変換器に周波数が可変の局部発振信号を供給する第1の局部発振器と、中間周波数フィルタからの中間周波数信号に搬送波を付加する手段とを有し、搬送波を付加する手段に周波数が可変の搬送波信号を供給する第2の局部発振器と当該第2の局部発振器からの局部発振信号の振幅を大小させる増幅量可変の増幅器を備え、周波数変換器に供給する局部発振信号の周波数を、振幅変調方式及び周波数変調方式の搬送波の周波数が単側波帯変調復調器で復調可能な搬送波の周波数に変換して復調するものである。
【0020】
また、上記無線装置において、下単側波帯方式による変調波を受信する場合、周波数変換器に入力する局部発振信号の周波数を受信波の搬送波周波数より高い周波数にし、中間周波数に変換された際に搬送波より高い周波数に変調波の情報を含めるようにし、上単側波帯方式による変調波を受信した場合に、周波数変換器に入力する局部発振信号の周波数を受信波の搬送波周波数より低い周波数にし、中間周波数に変換された際に搬送波より高い周波数に変調波の情報を含めるようにすることで単側波帯変調方式の復調器により変調波を復調し、情報を取り出すことができるものである。
【0021】
また、上記無線装置において、両側波帯及び周波数変調された信号を受信する場合は、中間周波数に変換する際の局部発振信号の周波数を変調波の搬送波周波数より高くするか、または、低くするか、のいずれかを選択することによって、搬送波より高い周波数成分に含まれる情報を復調するか、搬送波より低い周波数成分に含まれる情報を復調するかを選択できるものである。
【0022】
また、上記無線装置において、両側波帯、下単側波帯、上単側波帯の各種振幅変調方式それぞれにおいて、全搬送波、または、低減搬送波が付加される各種振幅変調若しくは周波数変調された信号、または、搬送波が付加されない各種振幅変調若しくは周波数変調された信号を受信し、搬送波が付加されない振幅変調であった場合に、または、搬送波電力が小さい変調信号が受信された場合に、中間周波数フィルタからの中間周波数に搬送波付加手段で搬送波を付加し、単側波帯変調方式の復調器により変調波を復調し、情報を取り出すことができる。
【0023】
また、上記無線装置において、周波数フィルタからの中間周波数信号に搬送波を付加する際に、周波数が可変の搬送波信号を供給する第2の局部発振器により、付加する搬送波の周波数を調整することによって、復調される音声信号の周波数を可変にするものである。
【0024】
また、上記無線装置において、周波数フィルタからの中間周波数信号に搬送波を付加する際に、搬送波信号を供給する第2の局部発振器からの搬送波信号の振幅を大小させる振幅量を可変にする増幅器により、付加する搬送波のレベルを調整することによって、復調される音声レベルを可変にするものである。
【0025】
また、上記無線装置において、送信装置が、ヒルベルト変換器と、ヒルベルト変換器から出力される信号I及び信号Qについてそれぞれの振幅を可変にする増幅器と、直流成分を付加する重畳器と、直交変調器と、直交変調器の位相を制御する位相器とを備え、増幅器における信号I及び信号Qの振幅増幅値、重畳器における直流成分を重畳する量、位相器における位相差を適切に選択することにより、両側波帯、下単側波帯、上単側波帯の各種振幅変調方式それぞれにおいて、全搬送波、または、低減搬送波が付加される各種振幅変調信号、または、搬送波が付加されない全ての組み合わせの振幅変調信号を送出するものである。
【0026】
また、上記無線装置において、少なくとも1つの電圧制御発振器を備え、周波数変調方式による変調波送出を行う場合に、振幅変調方式時に直交復調器に入力し、振幅変調を行っている音声信号を直接電圧制御発振器に入力することで、直接周波数変調ができるものである。
【0027】
[無線装置の受信装置:図1]
本発明の実施の形態に係る無線装置の受信装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る無線装置における受信装置の構成図である。
本発明の実施の形態に係る無線装置(本装置)の受信装置は、図1に示すように、受信アンテナ101と、周波数変換器103と、局部発振器105と、中間周波数フィルタ106と、RZ SSB復調器107と、スピーカ108と、搬送波付加回路109と、可変発振器110と、可変増幅器111とを基本的に有している。
復調器は、RZ SSB方式としているが、これは一例に過ぎず、搬送波付単側波帯変調の復調器であればよい。
【0028】
[受信装置の各部]
本装置における受信装置の各部について具体的に説明する。
受信アンテナ101は、搬送波周波数f1を持つ受信信号102を取り込み、周波数変換器103に出力する。
周波数変換器103は、受信アンテナ101からの周波数f1の受信信号を局部発振器105からの周波数f3の局部発振信号で乗算して搬送波周波数f2を持つ中間周波数信号104に周波数変換を行う。
局部発振器105は、周波数f3の局部発振信号を発振して、周波数変換器103に出力する。
【0029】
中間周波数フィルタ106は、周波数変換器103からの中間周波数信号104について不要な信号成分を除去して搬送波付加回路109に出力する。
RZ SSB復調器107は、搬送波付加回路109から出力された信号についてRZ SSB方式による復調を行い、スピーカ108に出力する。
スピーカ108は、RZ SSB復調器107からの信号を音声に変換して出力する。
【0030】
搬送波付加回路109は、中間周波数フィルタ106からの信号と可変増幅器111からの信号を加算してRZ SSB復調器107に出力する加算器である。
可変発振器110は、発振周波数を可変にできる発振器であり、調整可能な周波数f4を可変増幅器111に出力する。
可変増幅器111は、可変発振器110からの発振信号のレベルの大小を調整して搬送波付加回路109に出力する。
【0031】
[受信装置の動作]
次ぎに、本装置の受信装置の動作について説明する。
受信アンテナ101より給電された搬送波周波数f1を持つ受信信号102は、周波数変換器103によって搬送波周波数f2を持つ中間周波数信号104に変換される。
【0032】
中間周波数信号104は、受信アンテナ101より給電される様々な搬送波周波数f1を持つ受信信号102に比較して、固有の周波数である。
このため、周波数変換器103に入力される局部発振器105からの局部発振信号の周波数を受信信号102の搬送波周波数に応じて変化させ、中間周波数信号104の搬送波周波数f2が一定となるように制御する。
【0033】
本装置の受信装置では、上単側波帯方式の信号を受信する場合、または、両側波帯方式の上単側波帯を用いる場合は、周波数変換器103に入力する局部発振器105からの局部発振信号の周波数f3を以下の式1−1により設定する。
f3=f1−f2 (式1−1)
【0034】
また、下単側波帯方式の信号を受信する場合、または、両側波帯方式の下単側波帯を用いる場合は、周波数変換器103に入力する局部発振器105からの局部発振信号の周波数f3を以下の式1−2により設定する。
f3=f1+f2 (式1−2)
【0035】
以上のように、周波数f3を設定することにより、上単側波帯方式の信号を受信する場合、または、両側波帯方式の上単側波帯を用いる場合に、変調信号の情報は周波数軸上で反転せず、下単側波帯方式の信号を受信する場合、または、両側波帯方式の下単側波帯を用いる場合に、変調信号の情報は周波数軸上で反転する。
【0036】
従って、下単側波帯方式の信号を受信する場合、または、両側波帯方式の下単側波帯を用いる場合と同様に、搬送波よりも高い周波数成分に変調情報を持った信号として一意に受信信号を処理することができる。
【0037】
両側波帯方式、または、周波数変調方式を受信する場合は、原理的に搬送波よりも周波数が低い領域(成分)に含まれる変調信号と搬送波よりも周波数が高い領域(成分)に含まれる変調信号に対称性があり、RZ SSB復調では、片側の変調信号のみで信号を復調できるため、いずれを用いてもよい。
従って、干渉の影響がない良好な通信ができる変調信号をユーザが任意に選択できる。
【0038】
周波数変換器103により搬送波周波数f2に周波数変換された信号104は、必要な信号成分のみを分別する少なくとも1つの中間周波数フィルタ106によって不要な信号成分が除去され、搬送波付加回路109を通過してRZ SSB方式による復調器107に入力され、音声信号としてスピーカ108から出力される。
【0039】
搬送波付加回路109は、周波数の調整が可能な周波数f4を発振する可変発振器110からの発振信号のレベルの大小を調整できる可変増幅器111から出力される信号と受信信号とを加算する。
搬送波付加回路109は、抑圧搬送波両側波帯、抑圧搬送波上単側波帯、または、抑圧搬送波下単側波帯方式による受信波が入力された場合、または、搬送波電力が小さい変調信号が受信された場合に、受信装置内部で受信信号の抑圧搬送波周波数f2に等しい周波数f4を持つ搬送波を加えることで、RZ SSB復調が可能となる。
【0040】
本装置の受信装置内で搬送波を付加する場合、RZ SSBの復調音声は搬送波付加回路109で付加される搬送波信号で決定され、搬送波信号の周波数を大きくすると、復調音声の周波数は小さくなり、搬送波信号の周波数を小さくすると、復調音声の周波数は大きくなる。
また、搬送波信号のレベルを大きくすると、復調音声の音量は小さくなり、搬送波信号のレベルを小さくすると、復調音声の音量は大きくなるという性質がある。
【0041】
すなわち、受信装置に加えられる搬送波は、無線装置のユーザにより細かく調整できる必要があり、付加する搬送波の周波数及び振幅の値を調整できるようにしたのが本装置の特徴の一つである。
【0042】
尚、RZ SSB復調器107は、変調波の実数零点から伝送情報を復調する方式であり、原理的に周波数変調信号も復調できるが、変調指数が高い周波数変調の場合、線形歪みが大きく、伝送品質は振幅変調方式に劣るものである。
【0043】
[無線装置の送信装置:図2]
本発明の実施の形態に係る無線装置の送信装置について図2を参照しながら説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る無線装置における送信装置の構成図である。
本発明の実施の形態に係る無線装置(本装置)の送信装置は、図2に示すように、マイクロホン201と、ヒルベルト変換器202と、直交変調器205と、位相同期回路(PLL:Phase Locked Loop)206と、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)207と、送信アンテナ208と、スイッチ回路209とを基本的に有している。
【0044】
[送信装置の各部]
本装置における送信装置の各部について具体的に説明する。
マイクロホン201は、音声を入力して音声信号としてスイッチ回路209に出力する。
ヒルベルト変換器202は、スイッチ回路209から入力された音声信号をヒルベルト変換して、位相差が90度異なる信号I203と信号Q204を直交変調器205に出力する。
【0045】
直交変調器205は、振幅変調の場合、電圧制御発振器(VCO)207からの周波数f5の発振信号を信号I203と信号Q204によって振幅変調して、周波数f6を持つ振幅変調信号を送信アンテナ208に送出する。
また、直交変調器205は、周波数変調の場合、スイッチ回路209が音声信号をVCO207に出力するため、信号I及び信号Qは入力されず、VCO207からの信号を送信アンテナ208に送出する。
【0046】
位相同期回路(PLL)206は、VCO207における搬送波周波数を任意の周波数に設定するための制御を行う。
電圧制御発振器(VCO)207は、PLL206からの信号により発振周波数が制御され、周波数f5を持つ局部発振信号を直交変換器205に出力する。
また、VCO207は、スイッチ回路209からの音声信号により発振信号を増幅し、直交変調器205に出力する。
【0047】
送信アンテナ208は、直交変調器205からの出力信号を送出する。
スイッチ回路209は、振幅変調を行う場合は、マイクロホン201からの音声信号をヒルベルト変換器202に出力するよう切り替わり、周波数変調を行う場合は、マイクロホン201からの音声信号をVCO207に出力するよう切り替わる。スイッチ回路209の切り替え動作は、ユーザによって為されるものである。
【0048】
[送信装置の動作]
送信装置では、マイクロホン201などにより得られた音声信号をヒルベルト変換器202でヒルベルト変換し、互いに位相差が90度である信号I203と信号Q204にした後に、直交変調器205によって振幅変調されて送信アンテナ208から送出される。
直交変調器205では、周波数f5を持った送信装置内部(VCO207)で発生させた局部発振信号が信号I203と信号Q204により振幅変調され、搬送波周波数f6を持つ振幅変調波となる。
【0049】
搬送波周波数は、位相同期回路206によって制御され、任意の搬送波周波数に設定できる。
また、周波数変調を行う場合、音声信号を電圧制御発振器207に入力されるようスイッチ回路209で切り替えることで直接周波数変調を行うものである。
【0050】
[直交変調器:図3]
次に、送信装置における直交変調器205について図3を参照しながら説明する。図3は、直交変調器の詳細構成図である。
直交変調器は、図3に示すように、可変増幅器(A)403と、可変増幅器(B)404と、可変直流重畳回路(a)405と、可変直流重畳回路(b)406と、周波数変換器(I)407と、周波数変換器(Q)408と、加算器409と、局部発振器410と、位相器(δ)411と、位相器(π)412とを基本的に有している。
【0051】
[直交変調器の各部]
可変増幅器(A)403は、ヒルベルト変換された信号I[I(t)]401を入力し、増幅率A倍で増幅して可変直流重畳回路(a)405に出力する。ここで、入力信号の角周波数をWmとすると、信号I(t)は、その余弦単振動[cos(Wm)]となる。尚、tは、時間のパラメータである。
可変増幅器(B)404は、ヒルベルト変換された信号Q[Q(t)]402を入力し、増幅率B倍で増幅して可変直流重畳回路(b)406に出力する。ここで、信号Q(t)は、角周波数Wmの正弦単振動[sin(Wm)]となる。
【0052】
可変直流重畳回路(a)405は、可変増幅器(A)403で増幅された信号に直流電圧値aを重畳して周波数変換器(I)407に出力する。
可変直流重畳回路(b)406は、可変増幅器(B)404で増幅された信号に直流電圧値bを重畳して周波数変換器(Q)408に出力する。
【0053】
周波数変換器(I)407は、可変直流重畳回路(a)405からの信号と位相器(δ)411で位相偏差δを生じさせた発振信号とを乗算(混合)して周波数変換を行い、周波数変換された変調波を加算器409に出力する。
周波数変換器(Q)408は、可変直流重畳回路(b)406からの信号と位相器(π)412で位相偏差πを生じさせた発振信号とを乗算(混合)して周波数変換を行い、周波数変換された変調波を加算器409に出力する。
【0054】
加算器409は、周波数変換器(I)407で周波数変換された変調波と周波数変換器(Q)408で周波数変換された変調波とを加算し、変調波出力x(t)を出力する。
局部発振器410は、局部(Local)発振信号を位相器(δ)411及び位相器(π)412に出力する。局部発振信号の角周波数をWcとすると、その信号は、余弦単振動[cos(Wc)]となる。
【0055】
位相器(δ)411は、周波数変換器407に局部発振器410から供給される局部発振信号の位相にδ偏差を生じさせるものである。つまり、cos(Wc+δ)の発振信号を周波数変換器407に出力する。
位相器(π)412は、周波数変換器408に局部発振器410から供給される局部発振信号の位相を90度進め、90度の偏差πを生じさせるものである。つまり、−sin(Wc)の発振信号を周波数変換器408に出力する。
【0056】
[直交変調器の動作]
ヒルベルト変換器202でヒルベルト変換された信号I401は、増幅率がA倍の増幅値を持つ可変増幅器403で増幅され、その後、直流電圧値aを加算する可変直流重畳回路405で直流電圧が重畳される。
そして、周波数変換器407において、局部発振器410で発振された局部発振信号と混合され、搬送波周波数を中心とした変調波を形成する。
【0057】
同様に、ヒルベルト変換器202でヒルベルト変換された信号Q402は、増幅率がB倍の増幅値を持つ可変増幅器404で増幅され、その後、直流電圧値bを加算する可変直流重畳回路406で直流電圧が重畳される。
そして、周波数変換器408において、局部発振器410で発振された局部発振信号の位相を90度進めた信号と混合され、搬送波周波数を中心とした変調波を形成する。
更に、加算器409で周波数変換器407からの変調波と周波数変換器408からの変調波とが加算され、変調波出力x(t)として出力される。
【0058】
直交変調器では、周波数変換器407に供給される局部発振信号の位相と周波数変換器408に供給される局部発振信号の位相に、位相器411と位相器412により90度の偏差が生じるように設定されている。
特に、周波数変換器407に供給される局部発振信号の位相にδ偏差を生じさせるため、位相器411を設けていることを特徴としている。
【0059】
直交変調器により出力される信号は、以下の数式で表される。
以下の数式で、式2−1は、搬送波成分c(t)を表し、式2−2は、上単側波帯の成分u(t)を表し、式2−3は、下単側波帯の成分l(t)を表わすものである。
【0060】
【数1】

【0061】
【数2】

【0062】
【数3】

【0063】
但し、簡単にするために、信号I401を角周波数Wmである余弦単振動で表記し、信号Q402を角周波数Wmである正弦単振動で表記する。局部発振信号は、角周波数Wcである余弦単振動であり、tは、時間を示すパラメータである。
【0064】
式2−1、式2−2、式2−3によると、増幅率がA倍の増幅値を持つ可変増幅器403と、直流電圧値aを加算する可変直流重畳回路405と、増幅率がB倍の増幅値を持つ可変増幅器404と、直流電圧値bを加算する可変直流重畳回路406と、周波数変換器407に供給される局部発振信号の位相にδ偏差を生じさせるための位相器411を設定することにより、両側波帯、上単側波帯、下単側波帯の各方式において、全搬送波付き、低減搬送波付き、搬送波なしの全ての振幅変調方式の送出が可能になる。
【0065】
[パラメータの条件と変調信号のスペクトラム:図4]
各方式において全ての振幅変調方式の信号を送出するための各パラメータの条件と各送出変調信号のスペクトラムの状態について図4を参照しながら説明する。図4は、パラメータの条件と変調信号のスペクトラムの状態を示す模式図である。
【0066】
具体的には、両側波帯、上単側波帯、下単側波帯の各方式において、全搬送波付き、低減搬送波付き、搬送波なしの全ての振幅変調方式の信号を送出するための各パラメータの条件と、各送出変調信号のスペクトラムの状態を示したものである。
図4の条件において、特に指定がない場合には、A,B,a,bはゼロではないものとする。
【0067】
[凡例:図5]
図4の具体的説明の前に、凡例として図5を示す。図5は、送出変調波の凡例を示す図である。図5の横軸が周波数であり、左に行くほど周波数が低く、右に行くほど周波数が高くなっており、縦軸は信号レベルを示している。
図5に示すように、凡例のスペクトラムは、搬送波501を中心に低い周波数領域に下単側波帯502、高い周波数領域に上単側波帯503が表れる。
【0068】
図4に戻ると、上単側波帯の方式において、全搬送波、低減搬送波、抑圧搬送波(搬送波なし)の振幅変調方式の信号を送出するためには、偏差δ、増幅値A、増幅値Bについて、δ=0かつA=Bを選択すればよい。また、直流電圧値a,bについては、a=b=0で搬送波なし、a及びbが大きいほど搬送波のレベルが大きくなる。
【0069】
下単側波帯の方式において、全搬送波、低減搬送波、抑圧搬送波(搬送波なし)の振幅変調方式の信号を送出するためには、δ=πかつA=Bを選択すればよい。また、a=b=0で搬送波なし、a及びbが大きいほど搬送波のレベルが大きくなる。
【0070】
両側波帯の方式において、抑圧搬送波(搬送波なし)の振幅変調方式の信号を送出するためには、δ=−π/2かつa=b(a=b=0)であればよい。それ以外の条件、例えば、δ=π/2などでは、全搬送波、低減搬送波の振幅変調方式の信号が得られる。
【0071】
[実施の形態の効果]
本装置によれば、搬送波付上単側波帯変調方式の受信装置において、基準となる搬送波信号が付加されていない信号を受信する場合には、搬送波信号を付加して復調可能とし、搬送波より低い周波数領域に変調情報が含まれている場合には、受信信号の位相を反転させることにより搬送波より高い周波数領域に変調情報を含めるようにして復調を可能とし、異なる変調方式の信号を受信できる効果がある。
【0072】
また、本装置によれば、送信装置において、直交変調を行う際に、音声信号の直流成分の値、直交変調器のIチャネルとQチャネルの信号間の位相差を調整することにより任意の振幅変調信号を送出でき、周波数変調を行う際は、直交変調器に入力していた音声信号を電圧制御発振器の入力にスイッチで切り替え、直接周波数変調を行うもので、各種の振幅変調方式及び周波数変調方式に対応できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、単側波帯変調方式に限らず、各種振幅変調方式及び周波数変調方式を用いた無線装置とも相互通信できる無線装置に好適である。
【符号の説明】
【0074】
101…受信アンテナ、 102…受信信号、 103…周波数変換器、 104…中間周波数信号、 105…局部発振器、 106…中間周波数フィルタ、 107…RZ SSB復調器、 108…スピーカ、 109…搬送波加算器、 110…可変発振器、 111…可変増幅器、 201…マイクロホン、 202…ヒルベルト変換器、 203…信号I、 204…信号Q、 205…直交変調器、 206…位相同期回路(PLL)、 207…電圧制御発振器(VCO)、 208…送信アンテナ、 209…スイッチ回路、 301…送信装置、 302…マイクロホン、 303…ヒルベルト変換器(HILBERT)、 306…直交変調器(QUAD MOD)、 307…受信装置、 308…周波数変換器、 309…RZ SSB 復調器(RZ DEMOD)、 310…スピーカ、 311…局部発振器、 401…信号I、 402…信号Q、 403…可変増幅器(A)、 404…可変増幅器(B)、 405…可変直流重畳回路(a)、 406…可変直流重畳回路(b)、 407…周波数変換器(I)、 408…周波数変換器(Q)、 409…加算器、 410…局部発振器、 411…位相器(δ)、 412…位相器(π)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単側波帯変調方式の無線装置であって、
受信信号を中間周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器に局部発振信号を供給する局部発振器と、
前記中間周波数の信号に搬送波を付加する搬送波付加手段と、
前記搬送波が付加された中間周波数の信号を単側波帯変調方式による復調を行う復調器とを備え、
受信信号の変調方式に応じて前記局部発振器の発振周波数を変更可能とすると共に、付加する搬送波の周波数と当該搬送波のレベルを調整可能としたことを特徴とする無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−19027(P2011−19027A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161462(P2009−161462)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】