説明

無線装置

【課題】新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置に対してその準備動作の効率化に資する無線装置を提供すること。
【解決手段】他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第1の情報を、テレビジョンが使用する周波数帯から外れた第2の周波数帯で無線発信し、第1の情報が無線発信されて他装置から第1の周波数帯で送られてくる、少なくとも他装置の現在位置を含んだ情報である第2の情報を受け取り、インターネット上に設けられたデータベースにアクセスして、該データベースに、第2の情報を問合せのため送出し、第2の情報を伴う問合せでデータベースが送出した、現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第3の情報を受け取り、第1の周波数帯で他装置に対して第3の情報を送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを構成することができる無線装置に係り、特に、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置に対してその準備動作の助力を行う無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免許事業のテレビ放送と同じ周波数帯を使用する、そのような免許不要で運用できる無線通信規格が検討されている(下記、非特許文献1)。これらの規格では、テレビ事業者を1次ユーザとして、1次ユーザの免許周波数帯が使用されていない場合に限り、その周波数帯(使用されていない免許周波数帯=TVホワイトスペース;TVWS)で2次ユーザが無線通信を運用することを容認する。
【0003】
そのような環境下で使用される無線装置は、TV信号が存在しないことを確認するため、TVチャンネルに関する情報を、インターネット上に配備される専用のデータベースに問い合わせる必要がある。すなわち、無線装置の現在の位置情報をデータベースに送信し、データベースから、その位置で使用可能(有効)なチャンネルのリストを得ることがまず必要である。
【0004】
多くのシステム設計は、データベースとのこのような接続が可能で、それにより使用可能チャネルのリストが得られるという前提で考える。しかしながら、無線装置自体にインターネット接続手段を持たない状況を考えた場合には、この無線装置は、無線または有線によってデータベースにアクセスする別の何らかの手段が必要になる。
【0005】
例えば、屋内において、インターネット接続手段を持たない無線装置が2次ユーザとしての動作を開始しようという場合を考えると、その無線装置は、例えば、まず、すでに存在する無線LANに接続してそれを経由することによりデータベースにアクセスする、というような準備が必要である。しかし、屋内環境では、一般に多くの無線LANが存在する。そこで、無線装置は、これらの中から、この無線装置に適合してチャンネルリストをデータベースから得るのに必要なプロトコルを有した無線LANであるかなどの判断した上で、適当な無線LANを選択する必要がある。
【0006】
これは非常に時間がかかることであり、しかも、無線装置が動作中に移動する場合は、同様の動作を繰り返す必要も出てくる。したがって、パフォーマンスが大きく低下した動作しかできなくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】FCC 08-260, “Second Report and Order in the Matter of Unlicensed Operation in the TV Broadcast Bands”, Nov. 14, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、ネットワークを構成することができる無線装置において、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置に対してその準備動作の効率化に資することができる無線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である無線装置は、他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第1の情報を、テレビジョンが使用する周波数帯から外れた第2の周波数帯で無線発信する第1の手段と、前記第1の情報が無線発信されて前記他装置から前記第1の周波数帯で送られてくる、少なくとも前記他装置の現在位置を含んだ情報である第2の情報を受け取る第2の手段と、インターネット上に設けられたデータベースにアクセスして、該データベースに、前記第2の情報を問合せのため送出する第3の手段と、前記第2の情報を伴う問合せで前記データベースが送出した、前記現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第3の情報を受け取る第4の手段と、前記第1の周波数帯で前記他装置に対して前記第3の情報を送出する第5の手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
この無線装置は、「他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第1の情報を、テレビジョンが使用する周波数帯から外れた第2の周波数帯で無線発信する第1の手段」を備えている。そこで、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置(例えばアクセスポイント装置)は、この無線発信を捉えて反応し、その現在位置を含んだ情報である第2の情報をこの無線装置に送る。これにより、この無線装置は、インターネット上に設けられたデータベースにアクセスして、該データベースに、第2の情報を問合せのため送出する。データベースからは、現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第3の情報が送られてくるので、これを受け取る。受け取られた第3の情報は、第1の周波数帯でこの無線装置から上記ほかの無線装置に送出される。
【0011】
したがって、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置(例えばアクセスポイント装置)は、この無線装置を経由してデータベースから、利用可能チャンネルの情報を得ることができ、これにより、新たにホワイトスペースでの動作を開始することができる。
【0012】
また、本発明の別の態様である無線装置は、インターネット上に設けられたデータベースにアクセスして、該データベースに、自装置の現在位置を含んだ情報である第1の情報を問合せのため送出する第1の手段と、前記第1の情報を伴う問合せで前記データベースが送出した、前記現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第2の情報を受け取る第2の手段と、他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第3の情報を無線発信する第3の手段と、前記第3の情報が無線発信されて前記他装置から前記第1の周波数帯で送られてくる、利用可能チャンネル情報の取得要求を少なくとも含んだ情報である第4の情報を受け取る第4の手段と、前記第4の情報に応じて、前記他装置に対して、前記第2の情報を前記第1の周波数帯で送出する第5の手段とを具備する。
【0013】
この無線装置は、「他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第3の情報を無線発信する第3の手段」を備えている。そこで、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置(例えばクライアント端末)は、この無線発信を捉えて反応し、利用可能チャンネル情報の取得要求を少なくとも含んだ情報である第4の情報を第1の周波数帯でこの無線装置に送る。これにより、この無線装置は、現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第2の情報を第1の周波数帯で上記ほかの無線装置に送出する。
【0014】
したがって、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置(例えばクライアント端末)は、この無線装置から、利用可能チャンネルの情報を得ることができ、これにより、新たにホワイトスペースでの動作を開始することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ネットワークを構成することができる無線装置において、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置に対してその準備動作の効率化に資することができる無線装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である無線装置(アクセスポイント装置)の構成を、ほかの無線装置(TVWSアクセスポイント装置)の構成とともに示すブロック図。
【図2】図1中に示した無線装置とほかの無線装置との位置関係の例を示す地理表示図。
【図3】図1中に示した無線装置、ほかの無線装置、およびホワイトスペースデータベースにおける、それら間の情報の入出力を時系列的に示す説明図。
【図4】図1中に示した無線装置が発信する広報の例を示すフォーマット図。
【図5】本発明の別の実施形態である無線装置(TVWSアクセスポイント装置)の構成を、ほかの無線装置(TVWSクライアント端末)の構成とともに示すブロック図。
【図6】図5中に示した無線装置とほかの無線装置との位置関係の例を示す地理表示図。
【図7】図5中に示した無線装置、ほかの無線装置、およびホワイトスペースデータベースにおける、それら間の情報の入出力を時系列的に示す説明図。
【図8】図5中に示した無線装置が発信する初期化広報の例を示すフォーマット図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施態様として、上記一態様において、前記第1の手段が無線発信する前記第1の情報が、識別子、フレーム長さ、前記第1の周波数帯を示す前記情報、前記第2の周波数帯を示す情報、および、前記データベースとのアクセスに用いる周波数帯である第3の周波数帯を示す情報の5つの情報を含んでいるフレーム化フォーマット情報である、とすることができる。
【0018】
発信情報のフレーム化フォーマットにより、既存の無線通信規格(例えばIEEE 802.11b)への適合性を有する情報とすることができる。第2の周波数帯を示す情報を含ませることにより、例えば、ホワイトスペースで動作するクライアント端末がこの第1の情報を捉えることがあってもこれを無視してよいことの指示として有用性がある。また、第3の周波数帯を示す情報を含ませることにより、例えば、この第1の情報を捉えたアクセスポイント装置は、データベースとの接続がより確実で伝送容量の大きな接続である無線装置を選択することができる。
【0019】
また、実施態様として、上記別の態様において、前記第3の手段が無線発信する前記第3の情報が、識別子、フレーム長さ、および、前記第1の周波数帯を示す前記情報の3つの情報を含んでいるフレーム化フォーマット情報である、とすることができる。発信情報のフレーム化フォーマットにより、既存の無線通信規格(例えばIEEE 802.11b)への適合性を得た情報とすることができる。
【0020】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態である無線装置(アクセスポイント装置)の構成を、ほかの無線装置(TVWSアクセスポイント装置)の構成とともに示すブロック図である。同図において、無線装置10は、無線LAN(例えばIEEE 802.11b)のアクセスポイント装置であり、前提機能として、そのサービスエリア内に存在するクライアント端末(不図示)との間で通信ネットワークを構成し得る。
【0021】
無線装置10は、それだけでなく、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置40(TVWSアクセスポイント装置)に対してその準備動作の助力を行うことができるように構成されている。以下この点を説明する。
【0022】
無線装置10は、図示するように、広報発信部11、要求受付部12、インターネット接続部13、情報提供部14、通信機能部15を有する。このうち通信機能部15は、無線LANのアクセスポイントとして本来有している機能部分であり、不図示のクライアント端末との間で無線通信を行う本体である。この機能部分については公知なので、これ以外の構成部分について説明を続ける。
【0023】
広報発信部11は、他装置40が自装置10にアクセスするときに使用できる周波数帯の指示を少なくとも含む情報(後述する;図4)を、その周辺領域への広報として、テレビジョンが使用する周波数帯から外れた周波数帯で無線発信する。ここで、他装置40が自装置10にアクセスしてくるのは、装置10が有するインターネット接続能力を借り受けるためである。テレビジョンが使用する周波数帯から外れた周波数帯で無線発信するのは、もともと装置10は、TVWSで動作する装置でないためである。
【0024】
要求受付部12は、上記情報が無線発信されて他装置40からアクセス用の周波数帯で送られてくる、少なくとも他装置40の現在位置を含んだ情報を受け取る。装置40の現在位置を含んだ情報には、ほかに、装置40の識別子、ホワイトスペースデータベース30への問合せ要求などが含まれ得る。要求受付部12で受け取られた情報は、インターネット接続部13に渡される。
【0025】
インターネット接続部13は、インターネット20上にある各種サーバとの接続を行うための機能部である。インターネット接続部13は、要求受付部12との関係においては、要求受付部12から渡された他装置40の現在位置をホワイトスペースデータベース30に送り、続いて、このデータベース30が送出した、上記現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルの指示を少なくとも含む情報を受け取る。インターネット接続部13とデータベース30との接続は、セキュアな通信を確保し得るプロトコルでなされる。受け取られた情報は情報提供部14に渡される。
【0026】
情報提供部14は、インターネット接続部13から渡された情報を、アクセス用の上記周波数帯で他装置40に対して送出する。
【0027】
次に、ほかの無線装置である装置40(TVWSアクセスポイント装置)についても以下、構成を説明する。装置40は、広報受信部41、位置特定部42、要求送出部43、情報受取部44、制御部45、通信機能部46を有する。この装置40は、TVWS動作用に構成されたアクセスポイントであるが、装置40自体にはインターネット接続手段がないことが前提である。
【0028】
広報受信部41は、装置10が広報として無線発信した、装置40が装置10にアクセスするときに使用できる周波数帯の指示を少なくとも含む情報を検知し受信する。受信された指示情報は、要求送出部43に渡される。
【0029】
位置特定部42は、例えばGPS(global positioning system)衛星を利用して装置40の現在位置の特定を行う機能部である。特定された現在位置は、要求送出部43に渡される。
【0030】
要求送出部43は、装置40の現在位置を含んだ情報を上記のアクセス用の周波数帯で装置10に対して送出する。すなわち、これは、装置10がインターネット20を介してホワイトスペースデータベース30へ問合せを行い、利用可能チャンネルに関する情報を代わりに取得することの装置10への要求である。
【0031】
情報受取部44は、要求送出部43による装置10への要求に応じて、装置10がホワイトスペースデータベース30から取得した利用可能チャンネルに関する情報を、上記のアクセス用の周波数帯で装置10から受け取るための機能部である。受け取られた利用可能チャンネルに関する情報は制御部45に渡される。
【0032】
制御部45は、情報受取部44から渡された利用可能チャンネルに関する情報に基づいて、利用するチャンネルやその出力パワーを決定し、これにより通信機能部46を制御(動作設定)するものである。
【0033】
通信機能部46は、不図示のTVWSクライアント端末との間で無線通信を行うためのアクセスポイントとしての本来的な機能部分である。その利用するチャンネルや出力パワーは、上記のように制御部45により制御される。
【0034】
図2は、図1中に示した無線装置10とほかの無線装置40との位置関係の例を示す地理表示図である。図2(a)と同(b)とは、TVWSアクセスポイントである装置40が移動する前の状態と後の状態との対比を示している。
【0035】
図2(a)に示すように、TV放送電波塔100によるテレビジョンのサービスエリア100Sが存在し、加えて、無線LAN(例えばIEEE 802.11b)のアクセスポイント装置10、2、3が存在するものとする。装置10、2、3のサービスエリアはそれぞれサービスエリア10S、2S、3Sである。サービスエリア10S、2S、3Sは、図示するように、一般に、互いにサービスエリアが重複することもあり、さらに、テレビジョンのサービスエリア100Sとも重なることがあり得る。
【0036】
そして、装置10、2、3のうち、装置10、装置2は、既述のように、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置に対してその準備動作の助力を行うことができるように構成されているものとし、装置3は、そのような機能を持たないものとする。
【0037】
図2(a)に示すような装置40の位置においては、装置40は、装置10のサービスエリア10S内に存在するため、装置10からの広報発信を受けることができる。広報発信を受けた後は、すでに説明したように装置40は、装置10の助力を得て、新たにホワイトスペースで動作を開始すべくそのサービスエリア40Sを設定することができる(「設定」にはチャンネルの選択やパワーの選択が含まれる。以下、同じ)。装置40は、同時に、装置3のサービスエリア3S内に存在しているが、装置3は、ほかの無線装置に対してその準備動作の助力する機能がないので、この場合装置40にとって装置3の存在は何ら意味をなさない。
【0038】
次に、図2(a)に示したような装置40の位置が図2(b)に示すような装置40の位置に移行したものとする。装置40は、ここでは、このようにその位置を変え得る移動基地局である。
【0039】
図2(b)に示す装置40の位置では、装置40は、装置2のサービスエリア2S内に存在するため、装置2から広報発信を受けることができる。広報発信を受けた後は、すでに説明したように装置40は、装置2の助力を得て、その現在位置に適合したホワイトスペースで動作すべくそのサービスエリア40Sを設定し直すことができる。このように、装置40にとっては、その準備動作の助力を行うことができるように構成されている装置が付近に存在する限り、装置40が移動し得る場合であっても、その現在位置に適合したホワイトスペースで迅速にそのサービスエリア40Sの設定が可能になる。
【0040】
次に、図3は、図1中に示した無線装置10、ほかの無線装置40、およびホワイトスペースデータベース30における、それら間の情報の入出力を時系列的に示す説明図である。以下、図3を参照し、時系列的な説明を行う。
【0041】
まず、装置10(アクセスポイント装置)が無線発信する広報を装置40(TVWSアクセスポイント装置)が検知し受信する。広報は、広報用周波数帯で発信される。その形式は、例えば、ビーコン、パブリックアクションフレーム、あるいはプローブレスポンスフレームなどとすることができる。
【0042】
次に、装置40は、その現在位置を含んだ情報を、広報が指示したアクセス用の周波数帯(図3で「要求・提供用周波数帯」)で装置10に対して送出する。これは、装置10がインターネットを介してホワイトスペースデータベース30へ問合せを行い、利用可能チャンネルに関する情報を代わりに取得することの装置10への要求である。
【0043】
次に、装置10は、装置40の現在位置をホワイトスペースデータベース30に送り、利用可能チャンネルに関する情報の提供を要求する。これに反応してデータベース30が現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルに関する情報を送出、提供するので、装置10はこれを受け取る。なお、装置10とデータベース30との間の通信は、装置10が有するインターネット接続手段に応じたインターネット接続用周波数帯で行われる。
【0044】
次に、装置10は、データベース30から取得した利用可能チャンネルに関する情報を、装置10が指定しているアクセス用の周波数帯(図3で「要求・提供用周波数帯」)で装置40に対して送出、提供する。これにより、装置40は、その提供された情報に基づき自身をセットアップし、その現在位置に適合したホワイトスペースで動作を開始することができる。
【0045】
図4は、図1中に示した無線装置が発信する広報の例を示すフォーマット図である。図示するように、このフォーマットによるフレームには、例えば、「ID」、「長さ」、「要求・提供用周波数帯」、「広報用周波数帯」、「インターネット接続用周波数帯」の各情報を含ませることができる。発信情報のフレーム化フォーマットにより、既存の無線通信規格(例えばIEEE 802.11b)への適合性を有する情報とすることができる。
【0046】
「ID」は、このフレームの識別子であり、例えば1バイトの割り当て、「長さ」は、このフレームの全体の長さを示した情報であり、例えば1バイトの割り当てとすることができる。
【0047】
「要求・提供用周波数帯」は、図3を参照し装置40から装置10への要求、および装置10から装置40への情報提供に使われる周波数帯を示す情報であり、例えば1バイトの割り当てとすることができる。周波数帯としては、図示するように、2.4GHz帯、TV帯、GSM帯(800MHz帯)などが挙げられるので、これらに対応して値が割り振られる。なお、「TV帯」が例示されているのは、装置10が、より一般的にTVWSアクセスポイント装置である場合も考えられるからである。
【0048】
「広報用周波数帯」は、図3を参照し装置10が無線発信する広報(つまりこのフレーム自体)の周波数帯を示す情報であり、例えば1バイトの割り当てとすることができる。フレームにこの情報を含ませることにより、例えば、ホワイトスペースで動作するクライアント端末がこのフレームを捉えることがあっても、これがアクセスポイント装置向けであり、クライアント端末としては無視すべきことの指示情報として代用することができる。もちろん代用でなく、「アクセスポイント装置向け」か「クライアント端末向け」かを直接示す情報として設けてもよい。
【0049】
「インターネット接続用周波数帯」は、図3を参照し装置10がインターネット接続を行う(データベース30にアクセスする)ための周波数帯を示す情報であり、例えば1バイトの割り当てとすることができる。周波数帯としては、図示するように、レーダ帯、米国TV帯、英国TV帯などが挙げられるので、これらに対応して値が割り振られる。フレームにこの情報を含ませることにより、例えば、ある地点で複数の広報を捉えた装置40は、その中から、データベース30との接続がより確実で伝送容量の大きな接続である装置10を選択する、などの利点を得ることができる。
【0050】
次に、別の実施形態について図5を参照して説明する。図5は、別の実施形態である無線装置(TVWSアクセスポイント装置)の構成を、ほかの無線装置(TVWSクライアント端末)の構成とともに示すブロック図である。この実施形態は、「無線装置」として「TVWSアクセスポイント装置」を挙げている。「ほかの無線装置」としてそのクライアントである「TVWSクライアント端末」が存在する。
【0051】
この実施形態は、概略として、ホワイトスペースで動作するTVWSアクセスポイント装置に、上記の実施形態で説明した「広報」と類似の「初期化広報」を無線発信する仕組みを備えさせ、この「初期化広報」およびそれに続く手順により、新たにホワイトスペースでの動作を開始しようとするTVWSクライアント端末の初期化を効率化しようとするものである。
【0052】
無線装置50(TVWSアクセスポイント装置)の構成を説明する。無線装置50は、位置特定部51、インターネット接続部52、初期化広報発信部53、要求受付部54、情報提供部55、制御部56、通信機能部57を有する。
【0053】
位置特定部51は、例えばGPS(global positioning system)衛星を利用して装置50の現在位置の特定を行う機能部である。特定された現在位置は、インターネット接続部52に渡される。
【0054】
インターネット接続部52は、インターネット20上にある各種サーバとの接続を行うための機能部である。インターネット接続部52は、位置特定部51との関係においては、位置特定部51から渡された自装置50の現在位置をホワイトスペースデータベース30に送り、続いて、このデータベース30が送出した、上記現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルの指示を少なくとも含む情報を受け取る。受け取られた情報は制御部56に渡される。
【0055】
なお、インターネット接続部52については、これを備えていない場合も考えられる。このような場合は、図1を参照して説明した実施形態におけるTVWSアクセスポイント装置40のように構成して、別の装置10を利用するインターネット接続により、同様の機能を得ることができる。
【0056】
初期化広報発信部53は、他装置60が自装置50にアクセスするときに使用できる周波数帯の指示を少なくとも含む情報(後述する;図8)を、その周辺領域への初期化広報として無線発信する。ここで、他装置60が自装置50にアクセスしてくるのは、他装置60がホワイトスペースで新たに動作を開始するのに必要な利用可能チャンネルの情報を得るためである。
【0057】
要求受付部54は、上記情報が無線発信されて他装置60からアクセス用の周波数帯で送られてくる、利用可能チャンネル情報の取得要求を少なくとも含んだ情報を受け取る。要求受付部54で受け取られた情報は、情報提供部55に報知される。
【0058】
制御部56は、インターネット接続部52から渡された利用可能チャンネルに関する情報に基づいて、利用するチャンネルやその出力パワーを決定し、これにより通信機能部57を制御(動作設定)する。さらにその決定事項の一部の情報は、情報提供部55にも渡される。これは、クライアント端末(装置60)の初期化のためである。
【0059】
通信機能部57は、クライアント端末(装置60)との間で無線通信を行うためのアクセスポイントとしての本来的な機能部分である。その利用するチャンネルや出力パワーは、上記のように制御部56により制御される。
【0060】
情報提供部55は、制御部56から渡された情報を、要求受付部54からの報知に続いて、アクセス用の上記周波数帯で他装置60に対して送出する。
【0061】
次に、ほかの無線装置である装置60(TVWSクライアント端末)について、その構成を説明する。この装置60は、例えば、VHF帯またはUHF帯のTVWSで動作するように構成された、FCC(米連邦通信委員会)の規則に従うモードII装置と呼ばれる装置に適用することができる。装置60は、初期化広報受信部61、要求送出部62、情報受取部63、通信機能部64を有する。
【0062】
初期化広報受信部61は、装置50が初期化広報として無線発信した、装置60が装置50にアクセスするときに使用できる周波数帯の指示を少なくとも含む情報を検知し受信する。受信された指示情報は、要求送出部62に渡される。
【0063】
要求送出部62は、利用可能チャンネル情報の取得要求を少なくとも含んだ情報を上記のアクセス用の周波数帯で装置50に対して送出する。
【0064】
情報受取部63は、要求送出部62による装置50への要求に応じて、装置50が送出した利用可能チャンネル情報を少なくとも含む情報を、上記のアクセス用の周波数帯で装置50から受け取るための機能部である。受け取られた情報に基づいて通信機能部64は制御(動作設定)される。
【0065】
通信機能部64は、アクセスポイントである装置50との間で無線通信を行うためのクライアント端末としての本来的な機能部分である。その利用するチャンネルなどは、上記のようにして設定されていることになる。
【0066】
図6は、図1中に示した無線装置50とほかの無線装置60との位置関係の例を示す地理表示図である。図6に示すようにTV放送電波塔100によるテレビジョンのサービスエリア100Sが存在し、加えて、無線LAN(例えばIEEE 802.11b)のアクセスポイント装置1、3、およびTVWSアクセスポイントである装置50が存在するものとする。
【0067】
装置1、3、50のサービスエリアはそれぞれサービスエリア1S、3S、50Sである。サービスエリア1S、3Sは、図示するように、一般に、互いにサービスエリアが重複することもあり、さらに、テレビジョンのサービスエリア100Sとも重なることがあり得る。サービスエリア50Sは、テレビジョンのサービスエリア100Sとは重ならないように設定されている。
【0068】
そして、TVWSアクセスポイントである装置50は、既述のように、新たにホワイトスペースで動作を開始しようとするほかの無線装置60(TVWSクライアント端末)に対してその初期化動作の効率化を行えるように構成されている。
【0069】
図6に示すような装置60の位置においては、装置60は、装置50のサービスエリア50S内に存在するため、装置50からの初期化広報発信を受けることができる。初期化広報発信を受けた後は、すでに説明したように装置60は、装置50の助力を得て、新たにホワイトスペースで動作を開始すべく初期化設定がなされる。
【0070】
次に、図7は、図5中に示した無線装置50、ほかの無線装置60、およびホワイトスペースデータベース30における、それら間の情報の入出力を時系列的に示す説明図である。以下、図7を参照し、時系列的な説明を行う。
【0071】
まず、装置50は、装置50の現在位置をホワイトスペースデータベース30に送り、利用可能チャンネルに関する情報の提供を要求する。これに反応してデータベース30が現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルに関する情報を送出するので、装置50はこれを受け取る。装置50は、この情報に基づいて自身の動作設定がなされる。
【0072】
次に、装置50が無線発信する初期化広報を装置60が検知し受信する。初期化広報の形式は、例えば、ビーコン、パブリックアクションフレーム、あるいはプローブレスポンスフレームなどとすることができる。
【0073】
次に、装置60は、利用可能チャンネル情報の取得要求を少なくとも含んだ情報を、初期化広報が指示したアクセス用の周波数帯(図7で「要求・提供用周波数帯」)で装置50に対して送出する。
【0074】
これに対して装置50は、データベース30から取得した利用可能チャンネルに関する情報を、装置50が指定しているアクセス用の周波数帯(図7で「要求・提供用周波数帯」)で装置60に対して送出、提供する。これにより、装置60は、その提供された情報に基づき自身を初期化し、ホワイトスペースで動作を開始することができる。
【0075】
図8は、図5中に示した無線装置が発信する初期化広報の例を示すフォーマット図である。図示するように、このフォーマットによるフレームには、例えば、「ID」、「長さ」、「要求・提供用周波数帯」の各情報を含ませることができる。発信情報のフレーム化フォーマットにより、例えば、既存の無線通信規格(例えばIEEE 802.11b)への適合性を有する情報とすることができる。「ID」、「長さ」、「要求・提供用周波数帯」については、それぞれ、図4での説明と同様である。
【符号の説明】
【0076】
1、2、3…無線装置(アクセスポイント装置)、1S、2S、3S…サービスエリア、10…無線装置(アクセスポイント装置)、10S…サービスエリア、11…広報発信部、12…要求受付部、13…インターネット接続部、14…情報提供部、15…通信機能部、20…インターネット、30…ホワイトスペースデータベース、40…無線装置(TVWSアクセスポイント装置)、40S…サービスエリア、42…広報受信部、42…位置特定部、43…要求送出部、44…情報受取部、45…制御部、46…通信機能部、50…無線装置(TVWSアクセスポイント装置)、50S…サービスエリア、51…位置特定部、52…インターネット接続部、53…初期化広報発信部、54…要求受付部、55…情報提供部、56…制御部、57…通信機能部、60…無線装置(TVWSクライアント端末)、61…初期化広報受信部、62…要求送出部、63…情報受取部、64…通信機能部、100…TV放送電波塔、100S…TV放送サービスエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第1の情報を、テレビジョンが使用する周波数帯から外れた第2の周波数帯で無線発信する第1の手段と、
前記第1の情報が無線発信されて前記他装置から前記第1の周波数帯で送られてくる、少なくとも前記他装置の現在位置を含んだ情報である第2の情報を受け取る第2の手段と、
インターネット上に設けられたデータベースにアクセスして、該データベースに、前記第2の情報を問合せのため送出する第3の手段と、
前記第2の情報を伴う問合せで前記データベースが送出した、前記現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第3の情報を受け取る第4の手段と、
前記第1の周波数帯で前記他装置に対して前記第3の情報を送出する第5の手段と
を具備することを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記第1の手段が無線発信する前記第1の情報が、識別子、フレーム長さ、前記第1の周波数帯を示す前記情報、前記第2の周波数帯を示す情報、および、前記データベースとのアクセスに用いる周波数帯である第3の周波数帯を示す情報の5つの情報を含んでいるフレーム化フォーマット情報であることを特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
インターネット上に設けられたデータベースにアクセスして、該データベースに、自装置の現在位置を含んだ情報である第1の情報を問合せのため送出する第1の手段と、
前記第1の情報を伴う問合せで前記データベースが送出した、前記現在位置に対応づけられ決定されている利用可能チャンネルを示す情報を少なくとも含む第2の情報を受け取る第2の手段と、
他装置が自装置にアクセスするときに使用できる周波数帯である第1の周波数帯を示す情報を少なくとも含む第3の情報を無線発信する第3の手段と、
前記第3の情報が無線発信されて前記他装置から前記第1の周波数帯で送られてくる、利用可能チャンネル情報の取得要求を少なくとも含んだ情報である第4の情報を受け取る第4の手段と、
前記第4の情報に応じて、前記他装置に対して、前記第2の情報を前記第1の周波数帯で送出する第5の手段と
を具備することを特徴とする無線装置。
【請求項4】
前記第3の手段が無線発信する前記第3の情報が、識別子、フレーム長さ、および、前記第1の周波数帯を示す前記情報の3つの情報を含んでいるフレーム化フォーマット情報であることを特徴とする請求項3記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−235323(P2012−235323A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102719(P2011−102719)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】