説明

無線認証システムおよびそのセンサ

【課題】検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが配置され、検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行うことで、その移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、各センサ間で共通の無線通信帯域を使用して時分割多元接続で前記無線タグと通信を行うにあたって、スロット設定後に設定モードを自動的に完了する。
【解決手段】上位のセンサS1から順にそれぞれが使用するスロットNo.にIDを付けて使用スロット通知として下位側へ順次送信することで、隣接センサ間で干渉が生じないように自動的にスロット設定を行い、末端のセンサS4で他からの通知が期間W3だけ受信されないと設定終了を判定し、IDを含めたスロット設定終了通知を送信する。IDから、自機の下位側の総てのセンサからその終了通知を受信すると、設定モードを終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線タグ(子局)を携帯したユーザや前記無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、前記無線タグがセンサ(親局、リーダー)と通信を行うことで検出するようにした無線認証システムおよびそのセンサに関し、特に前記無線タグの所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置されて、漏れなく検知するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、入退室管理用途などに、ユーザが携帯したり、商品に貼付けられた前記無線タグ(子局)をセンサ(親局、リーダー)で検知して、適切なサービスを行う無線認証システムが使用されている。たとえば、前記ユーザが携帯する無線タグとの間で認証処理を実行して、近傍の自動ドアに開閉制御をかける入退室制御のシステムであったり、携帯型コンピュータ等の資産に取付けた無線タグを出入り口に設置したセンサで検知することで資産の持ち出し管理を行う資産管理システムであったり、荷物パレットなどに取り付けた無線タグを物流の拠点毎に検出して荷物の所在を管理する物流管理システムなどである。
【0003】
ところが、これらのシステムは、移動する無線タグを点で管理するものであり、通常、前記センサは空間的に離れて設置されることになる。しかしながら、この無線タグを利用して、人や物を面で管理する用途、たとえばオフィス内での在室管理や位置検出などを行うことを考える場合、抜け目なく無線タグを検知しようとすると、検知対象の移動空間に沿って複数のセンサを、隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置する必要がある。この場合、センサ間で無線タグとの通信の干渉を防止するために、たとえば特許文献1のようにセンサ毎に使用する周波数CHを変えることが考えられる。前記特許文献1では、子局(無線タグ)が干渉を検知すると、親局(センサ)にチャネルホップさせることで干渉を回避させている。
【特許文献1】特許第3405322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、センサ毎に使用する周波数CHを自動的に設定することが可能で、センサの新設作業や追加作業の手間を或る程度省略することができるが、設定モードの終了については明確に定義されていない。したがって、たとえば設定モード開始から一定の設定期間が経過した時点で設定モードを終了するタイムアウト処理で終了判定を行うと、センサ数が多い場合には前記一定の設定期間内では終了せず、センサ数が少ない場合には早く終了して運用開始まで無用な時間がかかったりするという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、設定モードを自動的に完了してシステム運用を開始することができる無線認証システムおよびそのセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無線認証システムおよびそのセンサは、検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、前記各センサは、相互に等しい無線通信手法を使用して多元接続によってセンサ間で干渉しないように前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、設定モードとなると、前記無線通信部において自機で使用すべき接続手法を上位のセンサと干渉しないように選択して、自機の識別情報を含めた使用接続手法通知を前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されると、前記下位のセンサの識別情報を記憶しておき、前記使用接続手法通知を送信してから所定時間を経過しても前記下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されないときには自機がセンサ列の末端であると判定して自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を発信して前記設定モードを終了し、前記接続手法設定終了通知が受信され、自機の識別情報が含まれていると自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を転送して前記設定モードを終了する接続手法設定部とを含むことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、無線タグを携帯したユーザや無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、その所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、無線通信部が、時分割多元接続(TDMA)、周波数分割多元接続(FDMA)、符号分割多元接続(CDMA)などの前記各センサ間で相互に等しい多元接続の手法である無線通信手法を使用して、センサ間で干渉しないように前記無線タグと通信を行うにあたって、設定モードとなると、接続手法設定部が、前記無線通信部を使用して、各センサ間で干渉しないように、空いているタイムスロット(TDMA)、周波数(FDMA)、符号(CDMA)などの接続手法を探索して、自動的に設定する。
【0008】
その際、上位のセンサからの使用接続手法通知を受信しない場合には自機はセンサ配列の始端であると判定して任意の接続手法を選択して、その接続手法に自機の識別情報を含めた使用接続手法通知を送信し、上位のセンサからの使用接続手法通知を受信した場合には自機はセンサ配列の途中または末端であると判定して、前記上位のセンサとは異なる接続手法を選択して、同様に使用接続手法通知を送信する。こうして、センサ間で干渉が生じないように接続手法が選択されてゆき、末端のセンサまで選択が終了すると、前記設定モードを終了することになる。
【0009】
注目すべきは、本発明では、その終了判定を、先ず末端のセンサでは、前記使用接続手法通知を送信してから所定時間を経過しても下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されないことで自機が末端であると判定して終了判定を行い、設定モードを終了するとともに、自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を発信する。これによって、前記始端または途中のセンサでは接続手法設定終了通知を受信するが、それに含まれる識別情報が、自機が使用接続手法通知を送信してから受信された下位のセンサからの使用接続手法通知に含まれていた識別情報と一致する場合には下位側から順に設定モードを終了しているものと判定して、自機も同様に、接続手法設定終了通知を転送して前記設定モードを終了し、前記識別情報と一致しない場合にはその接続手法設定終了通知は別のセンサ配列におけるものと判定して設定モードは終了しない。また、自機が前記使用接続手法通知を送信してから複数のセンサからの使用接続手法通知を受信した場合には自機は前記センサ配列の分岐箇所に位置するものと判定することができ、総ての分岐経路における下位のセンサからの接続手法設定終了通知を受信するまで前記設定モードは終了しない。
【0010】
こうして、始端のセンサから末端のセンサへ波紋が拡がるように各センサ間で干渉しないような接続手法を自動的に設定してゆき、設定が終了すると、末端のセンサから始端のセンサへ前記波紋が反射するように前記設定モードを自動的に終了してゆくことができる。これによって、事前に総センサ数などの情報を設定することなしで、設定モードを自動的に完了してシステム運用を開始することが可能になり、センサの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。また、前記検知対象エリアが重なっていないセンサ間では同じ接続手法の使用も可能になるので、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用接続手法数を最小限に抑え(接続手法の割当てを効率的に行い)、時分割多元接続の場合には検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0011】
また、本発明の無線認証システムでは、前記接続手法設定部は、前記設定モードとなると自機で使用すべき接続手法を選択し、前記使用接続手法通知を送信する接続手法割当て処理部と、前記設定モードの終了を判定するとともに、接続手法設定終了通知を送信する設定終了検知部と、自機から前記使用接続手法通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記接続手法割当て処理部に空いている接続手法の再探索および前記使用接続手法通知の再送処理を行わせ、前記使用接続手法通知を受信して、その通知内容を再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部とを備えて構成されることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、自機が使用接続手法通知を送信した後、次位や次々位での使用接続手法通知を受信して、それが重複している場合、すなわち自機が前記移動空間の分岐箇所に位置している場合は、その次位や次々位のセンサ同士では前記検知対象エリアが重複せず、互いに選択した接続手法が重複していることが分らないので、前記衝突検出処理部は、衝突検知通知を送信し、接続手法割当て処理部に、再度、空いている接続手法の探索および使用接続手法通知の送信動作を行わせる。
【0013】
したがって、近接するセンサ間で、接続手法の重複(干渉)を確実に防止することができる。
【0014】
さらにまた、本発明の無線認証システムでは、前記各センサの接続手法設定部は、前記無線通信手法として時分割多元接続を使用し、転送してゆく前記使用接続手法通知に各センサで選択された接続手法としてのスロットナンバーの履歴を順次追記してゆき、前記接続手法設定終了通知を発信するセンサの接続手法設定部は、自機を含めて使用されたスロットナンバーの最大値を1フレーム期間におけるスロット数として前記接続手法設定終了通知に含めて送信することを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、前記無線通信手法として時分割多元接続(TDMA)を使用する場合、1フレーム期間におけるスロット数が多くなる程干渉の可能性は少なくなるものの、各センサが使用可能なスロットが巡って来るまでの時間が長くなり、無線タグを検出する応答性低下するので、前記1フレーム期間を予め設定しておかず、上述のようにして始端のセンサから末端のセンサまで接続手法設定部において自機で使用する接続手法であるスロットを自動的に選択した後、使用接続手法通知に順次蓄積されていた各センサでの使用スロットナンバーの履歴から、末端のセンサの接続手法設定部が使用スロット数を判定し、前記接続手法設定終了通知に含めて順次始端側へ転送させてゆく。
【0016】
したがって、設置した無線認証システムで実際に使用したスロット数に応じて1フレーム期間を設定できるので、センサ間の干渉を防止しつつ、無線タグに対する応答性を向上することができる。
【0017】
また、本発明の無線認証システムでは、前記接続手法設定部には設定釦が接続されており、該設定釦の操作によって前記設定モードを開始し、スタート釦の操作または他のセンサからの前記使用接続手法通知を受信すると、前記接続手法の選択を開始することを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、設定釦の操作によって前記設定モードとなり、その状態で、スタート釦が操作されると、または他のセンサからの使用接続手法通知を受信すると、使用されていない接続手法の探索を開始し、探索できると、前述のようにその接続手法を自機で使用すべき接続手法に選択し、その使用接続手法通知を他のセンサへ送信する。
【0019】
したがって、総てのセンサを設定モードにした状態で、いずれか1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、先ずそのセンサが接続手法の探索を開始し、探索できて使用接続手法通知を送信すると、そのセンサに隣接する次のセンサが前記使用接続手法通知の受信によって接続手法の探索を開始する。こうして、1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、波紋のように使用接続手法を順次自動的に末端のセンサまで設定することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の無線認証システムでは、前記接続手法設定部は、使用されていない接続手法の内で、優先順位の高い接続手法から使用することを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、たとえばTDMAの場合で、前記接続手法として前記優先順位の高い順に、第1のスロット、第2のスロット・・・とすると、前記検知対象エリアが、たとえば前記一直線状に並んでいると、第1のスロットと第2のスロットとが繰返して使用されてゆき、優先順位の低い第3のスロットは使用されない。
【0022】
したがって、使用スロット数を前記のように最小限に抑え(前記の場合2スロット)、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0023】
また、本発明の無線認証システムでは、前記設定釦が操作されて設定モードを開始すると、前記接続手法設定部は、前記無線通信部に、無線タグとの通信時よりも、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくさせることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、たとえば、無線タグとの通信時の4倍の送信パワーまたは受信感度にすることで、センサ間はおよそ2倍の距離まで通信が可能になる。
【0025】
したがって、無線タグの前記検知対象エリアがぎりぎり重なるようにセンサの間隔を広げて設置しても、接続手法の設定は充分な通信品質で確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の無線認証システムおよびそのセンサは、以上のように、無線タグを携帯したユーザや無線タグが貼付けられた商品などの検知対象を、漏れなく、その所在や通過した軌跡を検知できるように、前記検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、無線通信部が、時分割多元接続(TDMA)、周波数分割多元接続(FDMA)、符号分割多元接続(CDMA)などの前記各センサ間で相互に等しい無線通信手法を使用して多元接続によってセンサ間で干渉しないように前記無線タグと通信を行うにあたって、設定モードとなると、接続手法設定部が、前記無線通信部を使用して、各センサ間で干渉しないように、上位のセンサからの使用接続手法通知を受信すれば、空いているタイムスロット(TDMA)、周波数(FDMA)、符号(CDMA)などの接続手法を探索して、自動的に設定するとともに、次位のセンサからの使用接続手法通知を受信すれば、そのセンサの識別情報を記憶しておき、末端のセンサが他からの使用接続手法通知が受信されないことで終了判定を行い、接続手法設定終了通知を発信すると、各センサは次位のセンサの総てから接続手法設定終了通知を受信すると、自機も上位のセンサへ転送して前記設定モードを終了する。
【0027】
それゆえ、始端のセンサから末端のセンサへ波紋が拡がるように各センサ間で干渉しないような接続手法を自動的に設定してゆき、設定が終了すると、末端のセンサから始端のセンサへ前記波紋が反射するように前記設定モードを自動的に終了してゆくことができる。これによって、事前に総センサ数などの情報を設定することなしで、設定モードを自動的に完了してシステム運用を開始することが可能になり、センサの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。また、前記検知対象エリアが重なっていないセンサ間では同じ接続手法の使用も可能になるので、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用接続手法数を最小限に抑え(接続手法の割当てを効率的に行い)、時分割多元接続の場合には検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0028】
また、本発明の無線認証システムは、以上のように、自機が使用接続手法通知を送信した後、次位や次々位での使用接続手法通知を受信して、それが重複している場合、すなわち自機が分岐箇所に位置している場合は、その次位や次々位のセンサ同士では検知対象エリアが重複せず、互いに選択した接続手法が重複していることが分らないので、衝突検知通知を送信し、再度、空いている接続手法の探索および使用接続手法通知の送信動作を行わせる。
【0029】
それゆえ、近接するセンサ間で、接続手法の重複(干渉)を確実に防止することができる。
【0030】
さらにまた、本発明の無線認証システムは、以上のように、前記無線通信手法として時分割多元接続(TDMA)を使用する場合、1フレーム期間を予め設定しておかず、始端のセンサから末端のセンサまで接続手法設定部において自機で使用する接続手法であるスロットを自動的に選択した後、使用接続手法通知に順次蓄積しておいた各センサでの使用スロットナンバーの履歴から、末端のセンサの接続手法設定部が使用スロット数を判定し、前記接続手法設定終了通知に含めて順次始端側へ転送させてゆく。
【0031】
それゆえ、設置した無線認証システムで実際に使用したスロット数に応じて1フレーム期間を設定できるので、センサ間の干渉を防止しつつ、無線タグに対する応答性を向上することができる。
【0032】
また、本発明の無線認証システムは、以上のように、設定釦の操作によって前記設定モードとなり、その状態で、スタート釦が操作されると、または他のセンサからの使用接続手法通知を受信すると、使用されていない接続手法の探索を開始し、探索できると、前述のようにその接続手法を自機で使用すべき接続手法に選択し、その使用接続手法通知を他のセンサへ送信する。
【0033】
それゆえ、総てのセンサを設定モードにした状態で、いずれか1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、先ずそのセンサが接続手法の探索を開始し、探索できて使用接続手法通知を送信すると、そのセンサに隣接する次のセンサが前記使用接続手法通知の受信によって接続手法の探索を開始する。こうして、1台のセンサのスタート釦が操作されると、それをトリガとして、波紋のように使用接続手法を順次自動的に末端のセンサまで設定することができる。
【0034】
さらにまた、本発明の無線認証システムは、以上のように、前記接続手法設定部は、使用されていない接続手法の内で、優先順位の高い接続手法から使用する。
【0035】
それゆえ、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0036】
また、本発明の無線認証システムは、以上のように、前記設定釦が操作されて設定モードを開始すると、前記接続手法設定部は、前記無線通信部に、無線タグとの通信時よりも、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくさせる。
【0037】
それゆえ、無線タグの前記検知対象エリアがぎりぎり重なるようにセンサの間隔を広げて設置しても、接続手法の設定は充分な通信品質で確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る無線認証システムの構成を示すブロック図である。この無線認証システムは、検知対象であるユーザの移動空間1に沿って複数のセンサS1,S2,S3,S4,・・・(総称するときは、以下参照符号Sで示す)が配置され、前記ユーザに携行される無線タグTGがいずれかのセンサSと通信を行ってゆき、その検知結果が上位装置2でモニタされることで、該上位装置2によってユーザの所在や通過した軌跡を検知するものである。前記各センサSは、天井などに取付けられ、その検知対象エリアA1,A2,A3,A4,・・・(総称するときは、以下参照符号Aで示す)は、そのようなユーザを漏れなく検知できるように、隣接するセンサS間でその一部が相互に重なるように配置されている。無線タグTGは、前記検知対象エリアA内であれば、どこに移動してもその検知対象エリアAを有するセンサSで検知可能となっている。
【0039】
そして、注目すべきは、本実施の形態では、各センサSが時分割多元接続(TDMA)、周波数分割多元接続(FDMA)、符号分割多元接続(CDMA)などの前記各センサS間で相互に等しい無線通信手法を使用して多元接続によってセンサS間で干渉しないように前記無線タグTGと通信を行うにあたって、設定モードとなると、各センサSが、空いているタイムスロット(TDMA)、周波数(FDMA)、符号(CDMA)などの接続手法を探索して、自動的に設定することである。なお、以下の説明では、前記多元接続の手法として、TDMAを例に説明するが、FDMAやCDMAなどの他の接続手法にも同様に適用可能であることは言うまでもない。前記設定モードには、後述する設定釦の操作や無線(リモコン)での設定指示などに応答して切換わる。
【0040】
前記各センサSは、通信にUHF帯などを使用して、その検知対象エリアAは、隣接するセンサ間の干渉を防止するために、通常、直径で7m程度であるが、初期設定やセンサの追加などによる前記設定モードでは、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくすることで、たとえば4倍として、図1において、参照符号A1’,A2’,A3’,A4’,・・・(総称するときは、以下参照符号A’で示す)で示すように到達範囲を2倍とし、前記検知対象エリアAがぎりぎり重なるようにセンサSの間隔を広げて設置しても、スロット設定は充分な通信品質で確実に行えるようになっている。
【0041】
具体的には、前記送信パワーのアップは、送信アンプのゲインを上げることで、簡単に実現することができる。一方、前記受信感度のアップは、ノイズを増やさず、信号レベルのみ増加させるために、たとえばアンテナの指向性を絞ったり、通信速度は遅いが感度は高い方式に切換える等で実現することができる。受信感度のアップは、回路上の制約や通信規格・法規上の制約によって送信パワーが上げられない場合に、センサSの間隔を広げることが可能になり、好適である。
【0042】
図2は、各センサSのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。設定にあたって、前述のように設定釦の操作や無線での設定指示などによって、各センサSは設定モードとなっており、作業者が任意のセンサ、好ましくはセンサ配列の端部に位置するセンサ(図1および図2の例ではS1)が選択され、そのセンサS1から、スタート釦の操作または前記無線(リモコン)でのスタート指示に応答して、設定動作が開始される。設定動作では、先ず前記TDMAにおける空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.1)を選択して、自機で使用すべき接続手法であるスロットに割当て、そのスロットNo.1に自機の識別情報ID1を含めて、使用接続手法通知である使用スロット通知として他のセンサへ向けて送信する。
【0043】
これによって、図1および図2の例では、後続のセンサS2,S3が前記使用スロット通知を受信すると、それをトリガとして、それらのセンサS2,S3も設定動作を開始し、前記スロットNo.1を自機のスロット割当てに使用せず、他のスロットで同様に空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.2)を選択して自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.2に自機の識別情報ID2,ID3を含めて、使用スロット通知として他のセンサへ向けて送信する。
【0044】
このとき、図1および図2の例では、センサS1が前記移動空間1の分岐部分に位置し、該センサS1に縦続するセンサは上述のようにS2,S3の2つとなり、待受け中のセンサS1には、2つのセンサから同時に使用スロット通知が送信され、衝突によってデータを再現できなくなる。その衝突を検知したセンサS1は、他のセンサS2,S3へ衝突検知通知を送信する。前記衝突検知通知は、他のセンサからの通知と衝突しても検知できるように、受信タイミングのみで判断して行う。具体的には、1送信周期W1内で、前記使用スロット通知の送信が終了してからの所定期間W2のWindowを設定し、そのWindow中で、一定長以上の信号を受信したら、衝突検知通知であると判定する。このWindow中は、使用スロット通知を送信しないようにする。
【0045】
こうして衝突を検知すると、前記センサS2,S3は、前記Windowが終了し、次の送信周期W1となると、通常のCSMA−CAなどの方法でキャリアセンスしながら他のセンサとの衝突を避けつつ、前記使用スロット通知を再度送信する。図2の例では、前記次の送信周期W1となってから、前記CSMA−CA方式でセンサS2,S3は任意の時間待機した後、送信を開始しており、待機時間の短いセンサS2からの使用スロット通知が優先となって、該センサS2は、ひとまずそのスロットNo.2を自機のスロットに割当てる。
【0046】
このとき、前記待機時間が長かったセンサS3は、前記CSMA−CA方式のキャリアセンスによってセンサS2からの使用スロット通知の送信を検知すると、使用スロット通知処理を再度実行することになり、このとき受信したスロットNo.2と、先に受信しているスロットNo.1とを共に自機のスロット割当てに使用せず、他のスロットで同様に空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロット(図2の例ではNo.3)を選択して自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.3に自機の識別情報ID3を含めて、使用スロット通知として、次の送信周期W1に他のセンサへ向けて送信する。このとき、上位のセンサS1では、受信した使用スロット通知から、自機の下位に、識別情報ID2のセンサS2と、識別情報ID3のセンサS3とが存在することを認識しておくことができる。
【0047】
これによって、衝突なく使用スロット通知の送信が完了すると、センサS2,S3の使用スロットは前記のNo.2およびNo.3でそれぞれ決定し、それらに続くセンサ(図2の例ではS4)が設定動作を開始する。このとき、センサS4では、前記センサS1,S2と設定に関する信号の到達範囲A1’,A2’;A4’が重なっておらず、すなわちセンサS4ではセンサS1,S2が送信した前記使用スロット通知は受信しておらず、隣のセンサS3が使用したスロットNo.3だけを認識している。したがって、他のスロットで優先順位の高いスロットを選択すると、スロットNo.1となる。
【0048】
こうして、隣の隣のセンサS1,S4間では、使用スロットNo.1の重複を許容することで、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロット割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0049】
また注目すべきは、本実施の形態では、上述のようにしてセンサ間で干渉が生じないようにスロットが選択されてゆき、末端のセンサS4まで選択が終了すると、前記設定モードを自動的に終了することである。このため、図3で示すように、上位のセンサS3からの使用スロット通知を受信し、自機が使用スロット通知を送信してから、所定時間W3を経過しても下位のセンサからの使用スロット通知が受信されないセンサS4は、自機がセンサ配列の末端であると判定して終了判定を行い、自機の設定モードを終了するとともに、自機の識別情報ID4を含めたスロット設定終了通知を発信する。
【0050】
一方、自機が使用スロット通知を送信してから前記所定時間W3内に下位のセンサS2,S3;S4からの使用スロット通知を受信していたセンサS1;S3は、自機は末端でないと判定して、受信した使用スロット通知中の識別情報ID2,ID3;ID4を記憶し、そのまま待機している。そして、前記下位のセンサS2,S3;S4から、前記識別情報ID2,ID3;ID4をそれぞれ含むスロット設定終了通知を受信し、記憶していた識別情報と一致する場合には下位側から順に設定モードを終了しているものと判定して、自機も同様に、前記設定モードを終了し、前記識別情報ID2,ID3;ID4と一致しない場合にはそのスロット設定終了通知は別のセンサ配列におけるものと判定して設定モードは終了しない。このとき、途中のセンサS3では、自機の識別情報ID3を含むスロット設定終了通知をセンサS1へ転送する。自機がスロット設定終了通知を送信してから他のセンサから受信したスロット設定終了通知は、上位側のセンサによる転送であるので、これを破棄する。
【0051】
ここで、センサS2も、末端のセンサではあるが、図2の順序では、センサS3よりも先に使用スロット通知を送信しており、後に送信されたセンサS3の使用スロット通知を受信して待機している。前記CSMA−CA方式のキャリアセンスによって、センサS3よりも後にこのセンサS2が使用スロット通知を送信した場合には、該センサS2はセンサS4からの使用スロット通知を受信できないので、末端であると判定して、前記スロット設定終了通知を発信することになる。
【0052】
一方、自機が使用スロット通知を送信してから、2つのセンサS2,S3からの使用スロット通知を受信したセンサS1では、自機は前記センサ配列の分岐箇所に位置するものと判定することができ、総ての分岐経路における下位のセンサS2,S3から前記スロット設定終了通知を受信するまで前記設定モードは終了しない。
【0053】
こうして、始端のセンサS1から末端のセンサS2,S4へ波紋が拡がるように、各センサS1〜S4間で干渉しないようなスロットを自動的に設定してゆき、設定が終了すると、末端のセンサS2,S4から始端のセンサS1へ前記波紋が反射するように前記設定モードを自動的に終了してゆくことができる。これによって、事前に総センサ数などの情報を設定することなしで、設定モードを自動的に完了してシステム運用を開始することが可能になり、センサの新設作業や追加作業を容易に行うことができる。また、前記検知対象エリアA1,A4が重なっていないセンサS1,S4間では同じスロットの使用も可能になるので、干渉が発生することなく、広いエリアに多数のセンサを設置するような場合でも、使用スロット数を最小限に抑え(スロットの割当てを効率的に行い)、検知周期(スロットが一巡する周期)を短くして応答性を向上することができる。
【0054】
図4は、上述のような機能を実現するセンサSの一構成例を示すブロック図である。このセンサSは、他のセンサおよび無線タグTGと通信を行い、無線通信部である無線信号送受信部11と、前記無線信号送受信部11を介して他のセンサとの間で上述のようなスロット設定動作を行うスロット選択部12と、前記スロット設定動作などに使用されるユーザインタフェイス13と、前記無線信号送受信部11を介して無線タグTGと通信を行い、それを認証するタグ管理部14と、前記タグ管理部14で得られた認証データを前記上位装置2へ送信するとともに、前記上位装置2からこのセンサSの制御データを受信するネットワークインタフェイス15とを備えて構成される。
【0055】
接続手法設定部であるスロット選択部12は、先ず前述の図2のように自機で使用すべきスロットを選択し、使用スロット通知を送信する接続手法割当て処理部であるスロット割当て処理部21と、自機から前記使用スロット通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記スロット割当て処理部21に使用スロット通知を再送信させ、前記使用スロット通知を受信して、再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部22と、無線通信の同期を取るスロット同期部23と、前述の図3のようにスロット設定動作の終了を判定する設定終了検知部24と、該スロット選択部12全体を制御する送受信スロット管理部25とを備えて構成される。
【0056】
前記ユーザインタフェイス13は、たとえば通常の無線タグTGの検知動作中であることを表示し、また前記設定モードであることや、その設定モードが正常に終了したか不調に終わったかなどをランプ表示などでユーザへ報知する状態表示手段31と、異常の発生や不審な無線タグを検知すると警報を発したり、無線タグTGを正常に認識できてドアの解錠などを行うことを通知するブザーなどの警報/通知音発生装置32と、前記設定釦やスタート釦などの設定スイッチ33とを備えて構成される。
【0057】
前記設定スイッチ33の設定釦やスタート釦の操作によってスロット設定動作を開始すると、スロット割当て処理部21の空きスロット検出処理部211が前述のように空きスロットを探索し、検知されたら、その中で最も優先順位の高いスロットを選択して、自機で使用すべきスロットに割当て、そのスロットNo.に自機の識別情報IDを、使用スロット通知送信処理部212から送受信スロット管理部25および無線信号送受信部11を介して他のセンサへ送信させる。一方、無線信号送受信部11から送受信スロット管理部25を介して受信された使用スロット通知は、使用スロット通知受信処理部213に記憶され、前記空きスロット検出処理部211によるスロット選択に使用される。前記使用スロット通知受信処理部213で使用スロット通知が受信されたとき、未だスロット設定動作を開始していないセンサであれば、それをトリガとして、設定動作を開始し、前記空きスロット検出処理部211にスロット選択を開始させる。
【0058】
こうして送信された使用スロット通知は、衝突検出処理部22の衝突検出部221において、前記のようにデータを再現できないものの、何らかのデータの受信か検知される場合、衝突と判定される。その判定結果に応答して、衝突通知送信処理部222は、送受信スロット管理部25から無線信号送受信部11を介して前記衝突検知通知を送信する。一方、無線信号送受信部11から送受信スロット管理部25を介して前記衝突検知通知が衝突通知受信処理部223で受信されると、再送制御部224が、前記スロット割当て処理部21に空きスロットの探索から再送信を行わせる。
【0059】
一方、自機が使用スロット通知を送信してから所定期間W3内に受信された使用スロット通知における識別情報IDは、前記設定終了検知部24における設定終了検出処理知部241に記憶されている。そして、自機が使用スロット通知を送信してから所定期間W3内に他のセンサからの使用スロット通知を受信しないときには、前記設定終了検出処理知部241は、自機はセンサ列の末端であると判定して前記設定モードを終了するとともに、設定終了通知処理知部242に、送受信スロット管理部25から無線信号送受信部11に前記スロット設定終了通知を送信させる。また、前記設定終了通知処理知部242は、他のセンサからの使用スロット通知を受信したとき、それに含まれる識別情報IDが自機の下位側のセンサとして記憶しているセンサの識別情報IDと一致し、下位側の総てのセンサからのスロット設定終了通知を受信すると、前記設定モードを終了するとともに、センサ列の途中である場合には自機の識別情報IDでスロット設定終了通知を転送する。前記センサ列の途中であるか始端であるかは、前述のように使用スロット通知を送信するトリガが、前記スタート釦の操作などであるか、上位側のセンサからの使用スロット通知の受信によるかから判断することができる。
【0060】
このような使用スロット通知、衝突検知通知、スロット設定終了通知の送受信にあたって、スロット同期部23のスロット同期信号検出処理部231が、前記送受信スロット管理部25での受信データから前記送信周期W1などの同期を検出しており、同期タイミング調整処理部232が自機のタイミングがシステムのタイミングに一致するように、前記送受信スロット管理部25を制御することで同期が得られている。また、設定モードの終了は設定終了検知部24において上述のようにして行われ、設定モードが終了すると、自動的に通常の無線タグの検知モードとなる。
【0061】
図5は、図4で示すスロット選択部12による前述の図2や図3で示すスロット設定動作を詳しく説明するためのフローチャートである。設定にあたって、前述のようにユーザインタフェイス部13の設定スイッチ33の操作や無線での設定指示などによって、該スロット選択部12は設定モードとなっており、状態表示手段31が設定モードであることを表示している。この状態で、前記設定スイッチ33の操作や無線でのスタート指示などによって、或いは他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、それらをトリガとして、この図5で示す設定動作が開始される。
【0062】
ステップS1では、この設定動作を開始したのが(上位側のセンサからの)使用スロット通知の受信であるか否かが判断され、そうであるとき、すなわち途中または末端のセンサであるときにはステップS2で、前記使用スロット通知受信処理部213に受信した識別情報IDが記憶された後ステップS3に移り、そうでないとき、すなわち始端のセンサであるときには直接ステップS3に移る。ステップS3では、空きスロット検出処理部211が前述のように空きスロットを探索する。
【0063】
ステップS4では、次の送信周期W1が始まるまで待機し、次の送信周期W1となると、ステップS5で、任意の時間待機した後、ステップS6で通常のCSMA−CAなどの方法でキャリアセンスし、他のセンサからのキャリアが検出されると前記ステップS4に戻って次の送信周期W1まで待機し、キャリアが検出されないとステップS7に移って、前記使用スロット通知送信処理部212から使用スロット通知を送信する。
【0064】
ステップS8では、衝突通知受信処理部223が前記所定期間W2のWindowを設定し、ステップS9で衝突検知通知が受信されたか否かが判断され、受信された場合は前記ステップS4に戻って、再送制御部224が前記空きスロット検出処理部211に空きスロットの検出から使用スロット通知をやり直させ、衝突検知通知が受信されなかった場合は自機での使用スロットを確定する。
【0065】
続いて、ステップS11では、次の送信周期W1に、他のセンサ(下位側のセンサ)からの使用スロット通知が使用スロット通知受信処理部213で受信されるか待機し、ステップS12で受信されなかった場合、すなわち自機が末端のセンサであった場合にはステップS13に移り、設定終了検出処理部241がそれを判定し、設定終了通知処理部242に前記スロット設定終了通知を送信させる。ステップS14では、前記状態表示手段31に、設定モードを終了し、通常の運用状態に切換わったことを表示させ、ステップS15で通常の運用状態での同期信号待ちとなって設定モードを終了する。
【0066】
これに対して、前記ステップS11で他のセンサ(下位側のセンサ)からの使用スロット通知が受信された場合、すなわち自機が始端または途中のセンサであった場合にはステップS21に移り、その使用スロット通知中に自機の識別情報IDが含まれている、すなわち次位のセンサからの使用スロット通知であるか否かが判断され、そうである場合にはステップS22で、使用スロット通知受信処理部213が受信された識別情報IDのセンサを子機(次位)リストに登録した後、ステップS23で使用スロット通知またはスロット設定終了通知の受信待ちとなる。
【0067】
前記ステップS23で使用スロット通知またはスロット設定終了通知が受信されると、ステップS24に移り、受信したのが使用スロット通知であるか否かが判断され、そうであるときには再び前記ステップS21に移って自機の子機(次位)のセンサであるか否かの判定が行われ、そうでないときにはステップS25に移る。
【0068】
ステップS25では、受信したのがスロット設定終了通知であるか否かが判断され、そうでないときには前記ステップS23の次の受信待ちとなり、そうであるときにはステップS26に移って、前記設定終了検出処理部241が受信したスロット設定終了通知中の識別情報IDを前記子機(次位)リストから削除する。その後ステップS27で前記子機(次位)リストが空になったか否かが判断され、空になっていないときには、子機(次位)のセンサでスロット設定終了通知を受信していないものが残っているので、前記ステップS23に移って次の受信待ちとなり、空になっているときには総ての子機(次位)のセンサからスロット設定終了通知を受信したので、前記ステップS13に移って自機もスロット設定終了通知を送信する。
【0069】
上述のようにして設定モードを終了し、通常の無線タグの検知モードに移ると、タグ管理部14が無線信号送受信部11に、前記スロット割当て処理部21で選択されたスロットで質問信号を送信させ、無線タグTGから応答信号を受信すると、その無線タグTGのIDが予め登録されているものか否かを判断し、解錠動作などを行う。
【0070】
このように構成することで、設定スイッチ33の前記設定釦の操作によってスロット設定モードとなり、その状態で、スタート釦が操作されると、または他のセンサからの使用スロット通知を受信すると、スロット選択が自動で行われるので、1台のセンサ(図1および図2の例ではS1)のスタート釦が操作されると、それをトリガとして、波紋のように使用スロットを順次自動的に末端まで設定することができる。
【0071】
さらにまた、前記スロット割当て処理部21の空きスロット検出処理部211によるスロット選択には、隣接するセンサと干渉することのない空きスロットの内で、優先順位の高いスロットから使用するので、使用スロット数を最小限に抑え、検知周期を短くして応答性を向上することができる。
【0072】
また、衝突検出処理部22の衝突検出部221が前記使用スロット通知が重複していることを検知すると、衝突通知送信処理部22から衝突通知を送信し、前記衝突通知受信処理部223で衝突通知を受信した場合には、再送制御部224が、空きスロットの再探索および前記使用スロット通知の再送処理を行わせるので、前記図1や図2の場合ではセンサS2とセンサS3とのように、自機(S1)が使用スロット通知を送信した後、次位や次々位での使用スロット通知を受信して、それが重複している場合、すなわち自機が前記移動空間1の分岐部分に位置している場合は、その次位や次々位のセンサ(S2,S3)同士では前記検知対象エリア(A2,A3)が重複せず、互いに使用スロット通知が重複していることが分らなくても、再度、空きスロットの探索および使用スロット通知の送信動作を行わせることができる。これによって、近接するセンサ(S2,S3)間で、スロットの重複(干渉)を確実に防止することができる。
【0073】
なお、追加作業時には、前記新設作業時と同様にシステム全体のスロットNo.をリセットして再度スロット設定をやり直してもよく、或いは追加分のセンサおよびその付近のセンサだけが、周囲のセンサの使用スロットを判定し、スロットを割当てるようにしてもよい。
【0074】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の他の形態に係る無線認証システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。本実施の形態のセンサには、前述の図1や図4で示す構成のセンサを用いることができる。先ず本実施の形態では、前記使用スロット通知の送信方法が、前記図2とこの図6とで異なる。すなわち、前記スロット設定モードで送信される使用スロット通知には、各センサSで選択されたスロットナンバーの履歴が順次追記してゆかれる。これに対応して、前記スロット設定終了通知を発信する末端のセンサS4の設定終了通知処理部242は、自機を含めて使用されたスロットナンバーの最大値を1フレーム期間におけるスロット数として、前記スロット設定終了通知に含めて送信する。なお、実際に使用するスロット数は、センサの追加などに備えて、前記最大値よりも所定数だけ多く選ばれてもよい。
【0075】
各分岐からのスロット設定終了通知を受信した始端のセンサS1は、その中でのスロットナンバーの最大値を1フレーム期間におけるスロット数として、運用開始による同期信号に含めて送信する。こうして、各センサS間のフレーム同期が確保される。
【0076】
このように構成することで、前記1フレーム期間を予め設定しておくことなく、設置した無線認証システムで実際に使用したスロット数に応じて1フレーム期間を設定できるので、センサS間の干渉を防止しつつ、無線タグに対する応答性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の一形態に係る無線認証システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る各センサのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】本発明の実施の一形態に係る各センサのスロット設定動作の終了を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施の一形態に係るセンサの一構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る各センサのスロット設定動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施の他の形態に係る無線認証システムにおける各センサのスロット設定動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 移動空間
2 上位装置
11 無線信号送受信部
12 スロット選択部
13 ユーザインタフェイス
14 タグ管理部
15 ネットワークインタフェイス
21 スロット割当て処理部
211 空きスロット検出処理部
212 使用スロット通知送信処理部
213 使用スロット通知受信処理部
22 衝突検出処理部
221 衝突検出部
222 衝突通知送信処理部
223 衝突通知受信処理部
224 再送制御部
23 スロット同期部
231 スロット同期信号検出処理部
232 同期タイミング調整処理部
24 設定終了検知部
241 設定終了検出処理知部
242 設定終了通知処理知部
25 送受信スロット管理部
31 状態表示手段
32 警報/通知音発生装置
33 設定スイッチ
A1,A2,A3,A4,・・・ 検知対象エリア
S1,S2,S3,S4,・・・ センサ
TG 無線タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムにおいて、
前記各センサは、
相互に等しい無線通信手法を使用して多元接続によってセンサ間で干渉しないように前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、
設定モードとなると、前記無線通信部において自機で使用すべき接続手法を上位のセンサと干渉しないように選択して、自機の識別情報を含めた使用接続手法通知を前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されると、前記下位のセンサの識別情報を記憶しておき、前記使用接続手法通知を送信してから所定時間を経過しても前記下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されないときには自機がセンサ列の末端であると判定して自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を発信して前記設定モードを終了し、前記接続手法設定終了通知が受信され、自機の識別情報が含まれていると自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を転送して前記設定モードを終了する接続手法設定部とを含むことを特徴とする無線認証システム。
【請求項2】
前記接続手法設定部は、
前記設定モードとなると自機で使用すべき接続手法を選択し、前記使用接続手法通知を送信する接続手法割当て処理部と、
前記設定モードの終了を判定するとともに、接続手法設定終了通知を送信する設定終了検知部と、
自機から前記使用接続手法通知を送信した後、衝突検知通知を受信すると前記接続手法割当て処理部に空いている接続手法の再探索および前記使用接続手法通知の再送処理を行わせ、前記使用接続手法通知を受信して、その通知内容を再現できなかった場合は前記衝突検知通知を送信する衝突検出処理部とを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の無線認証システム。
【請求項3】
前記各センサの接続手法設定部は、前記無線通信手法として時分割多元接続を使用し、転送してゆく前記使用接続手法通知に各センサで選択された接続手法としてのスロットナンバーの履歴を順次追記してゆき、前記接続手法設定終了通知を発信するセンサの接続手法設定部は、自機を含めて使用されたスロットナンバーの最大値を1フレーム期間におけるスロット数として前記接続手法設定終了通知に含めて送信することを特徴とする請求項1または2記載の無線認証システム。
【請求項4】
前記接続手法設定部には設定釦が接続されており、該設定釦の操作によって前記設定モードを開始し、スタート釦の操作または他のセンサからの前記使用接続手法通知を受信すると、前記接続手法の選択を開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線認証システム。
【請求項5】
前記接続手法設定部は、使用されていない接続手法の内で、優先順位の高い接続手法から使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線認証システム。
【請求項6】
前記設定釦が操作されて設定モードを開始すると、前記接続手法設定部は、前記無線通信部に、無線タグとの通信時よりも、送信パワーと受信感度との少なくとも一方を大きくさせることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の無線認証システム。
【請求項7】
検知対象の移動空間に沿って複数のセンサが隣接するセンサ間でそれぞれの検知対象エリアの一部が相互に重なるように配置され、前記検知対象に携行される無線タグがいずれかのセンサと通信を行ってゆくことで前記検知対象の移動を検出するようにした無線認証システムのセンサにおいて、
相互に等しい無線通信手法を使用して多元接続によってセンサ間で干渉しないように前記無線タグと通信を行うとともに、隣接するセンサ間で通信を行うことができる無線通信部と、
設定モードとなると、前記無線通信部において自機で使用すべき接続手法を上位のセンサと干渉しないように選択して、自機の識別情報を含めた使用接続手法通知を前記無線通信部から送信させるとともに、前記無線通信部で下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されると、前記下位のセンサの識別情報を記憶しておき、前記使用接続手法通知を送信してから所定時間を経過しても前記下位のセンサからの使用接続手法通知が受信されないときには自機がセンサ列の末端であると判定して自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を発信して前記設定モードを終了し、前記接続手法設定終了通知が受信され、自機の識別情報が含まれていると自機の識別情報を含めた接続手法設定終了通知を転送して前記設定モードを終了する接続手法設定部とを含むことを特徴とするセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271382(P2008−271382A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114127(P2007−114127)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】