説明

無線通信における高データレート伝送のための方法および装置

【課題】無線通信システムにおける高データレートの伝送のための方法を提供する。
【解決手段】情報信号は少なくとも2つのモデム38,40,42によって処理され、変調された情報信号は2つの搬送波周波数を使用して送られて、集約される。装置、すなわち移動体34にはマルチリンク(multi-link, ML)のプロトコルプロセッサ36が含まれていて、このプロトコルプロセッサ36は、情報信号をモデム38,40,42からポイント・ツウ・ポイントプロトコル(point-to-point protocol, PPP)のフォーマットへ集約して、インターネットのような従来のデータベースのシステムとインターフェイスさせる。MLのプロセッサ36はさらに集約バンドルを受信して、バンドルをその構成要素部分へ分割して、モデム38,40,42によって変調させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線データ通信に関する。とくに、本発明は、無線通信システムにおける高データレート伝送のための新規で向上した方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインターネットを介して、情報へ簡単にアクセスできるようになったために、無線データサービスに対する需要が増加した。無線通信装置は、現在、移動ユーザに世界規模の音声通信を提供するのに適している。現在のシステムにはCDMA(Code Division Multiple Access、符号分割多重アクセス)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)、提案されている高データレート(High Data Rate, HDR)システム、および種々の提案されている第3世代のCDMAシステムが含まれ、各システムには情報の伝送および処理のための所定のプロトコルがある。音声サービスとデータサービスとの間には、要件および応用において相当な違いがあるので、音声通信とより低いデータレートの伝送とのために設計された多数の既存の無線システムを、より高いデータレートの伝送に容易に拡張することはできない。
【0003】
既存のシステムおよび技術に対応できる高データレートの伝送方法が必要とされている。さらに加えて、新しい形または変更形、あるいはこの両者の形の無線ネットワークの伝送プロトコルを必要としないデータ伝送方法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
開示される実施形態では、無線通信システムにおける高データレート伝送のための新規で向上した方法を提供する。1つの実施形態では、CDMA無線通信システムはマルチリンク−ポイント・ツウ・ポイントプロトコル(Multi-Link Point-to Point Protocol, ML-PPP)を実行して、広帯域幅伝送から受信したデータ流を集約する。集約されたデータは、インターネットプロトコルとのインターフェイスのようなデータ処理に対応できる。データは、移動体から送られるときは、ML−PPPのフォーマットで受信され、個々のデータ流へ分割される。各データ流は、異なる搬送波上で変調され、並行して同報通信される。ML−PPPを適用すると、新しい形または変更形のエアーインターフェイスの無線ネットワークプロトコルを必要とすることなく、CDMAシステムにおいて高データレートの伝送が可能であり、単一の搬送波を使用して実現できるデータレートよりも速いデータレートが得られる。
【0005】
現在開示している方法および装置の特長、目的、および長所は、後述の詳細な説明を、一致する参照符号によって全体的に対応して同定している図面と共に参照することによって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】1つの実施形態にしたがう無線通信システムの階層化アーキテクチャを示す図。
【図2】1つの実施形態の周波数帯域幅割り当てと、従来技術の無線通信システムとの比較を示す図。
【図3】1つの実施形態にしたがう図1のアーキテクチャを用いた無線通信システムを示す図。
【図4】1つの実施形態にしたがう移動体を示す図。
【図5】1つの実施形態にしたがう無線通信におけるロードバランシングを示す図。
【図6】本発明のシステムにおけるデータ伝送の経路と順序とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の例示的な実施形態では、CDMAの無線通信システムは、ML−PPP形のプロトコルを実行し、HDRのエアーインターフェイス方法を使用して広帯域幅伝送から受信したデータ流を集約する。他の実施形態では、種々のユーザ別接続方法を実行できるが、HDRのエアーインターフェイス方法が、とくにデータ伝送には非常に効果的である。
【0008】
図1には、本発明の例示的な実施形態のアーキテクチャ階層10が示されている。物理層12は、順方向リンクおよび逆方向リンクにおけるチャンネル構造、周波数、電力の出力、変調形式、およびコード化仕様を示す。媒体アクセス制御(Medium Access Control, MAC)層14は、物理層12上で送受信するのに使用される手続きを規定している。HDRシステムでは、MAC層14には、ユーザまたは接続のバランスをとるためのスケジューリング能力が含まれている。このようなバランシングでは、通常は、不良の受信可能範囲をもつチャンネルのスループットレートを低くスケジュールして、資源を解放し、適切に接続されているチャンネルのスループットを高くする。次の層、すなわちリンクアクセス制御(Link Access Control, LAC)層16では、無線リンクへのアクセス手続きを行う。無線リンクプロトコル(Radio Link Protocol, RLP)層18では、8ビットバイトのアラインされたデータ流の再伝送および重複検出を行う。パケットサービスと関連付けると、LAC層16では、ポイント・ツウ・ポイントプロトコル(PPP)のパケットを送る。高レベルデータリンク制御(High Level Data Link Protocol, HDLC)層20は、PPPとML−PPPとを通信させるためのリンク層である。制御情報は特定のパターンで配置されていて、誤りを低減するために、データとは相当に異なる。HDLC層20では、PPPを処理する前に、データをフレーム化する。次にPPP層22では、圧縮、認証、暗号化、およびマルチプロトコル支援を行う。インターネットプロトコル(Internet Protocol, IP)層24は、異なるノードごとにインターネットワークのアドレッシングを追跡し続け、出力メッセージをルート設定し、入力メッセージを認識する。
【0009】
PPPの上で実行されるプロトコル、例えばIP層24では、ユーザトラヒックを送る。これらの層の各々には、1つ以上のプロトコルが含まれていることに注意すべきである。プロトコルでは、シグナリングメッセージまたはヘッダ、あるいはこの両者を使用して、エアーインターフェイスの反対側の同位エンティティへ情報を送る。例えば、高データレート(High Data Rate, HDR)システムでは、プロトコルは、デフォルトのシグナリングアプリケーションを使用してメッセージを送る。
【0010】
アーキテクチャ10は、インターネットのようなIPネットワークと、無線移動体のようなアクセス端末とをデータ接続するためのアクセスネットワーク(Access Network, AN)に適用できる。アクセス端末(Access Terminal, AT)はユーザをデータ接続する。ATは、ラップトップ形のパーソナルコンピュータのようなコンピュータへ接続されるか、またはパーソナルディジタルアシスタントのような独立形のデータ装置である。無線アプリケーションにはいろいろあり、しばしばIP機器またはウエブ機器と呼ばれる装置は増加し続けている。図1に示されているように、RLP層18より上の層はサービスネットワーク層であり、HDLC層20より下の層は無線ネットワーク層である。言い換えると、無線ネットワーク層ではエアーインターフェイスのプロトコルが実行される。例示的な実施形態の無線ネットワーク層では“TL80-54421-1 HDR Air Interface Specification”(“HAI仕様”と呼ばれる)を実行する。HAI仕様は、“1xEVDO”と呼ばれることもある。HDRは、一般的に、無線通信システムにおける効率的なデータ伝送方法を与える。代わりの実施形態では、“TIA/EIA/IS-2000 Standards for cdma2000 Spread Spectrum Systems”(“cdma2000の標準規格”と呼ばれる)、“TIA/EIA/IS-95 Mobile Station-Base Station Compatibility Standard for Dual-Mode Wideband Spread Spectrum Cellular System”(“IS−95の標準規格”と呼ばれる)、または他のユーザ別接続システム、例えば“ANSI J-STD-01 Draft Standard for W-CDMA (Wideband Code Division Multiple Access) Air Interface Compatibility Standard for 1.85 to 1.99 GHz PCS Applications”(“W−CDMA”と呼ばれる)が実行される。
【0011】
音声およびデータ伝送に多重アクセスシステムを使用することについては、次の米国特許、すなわち、米国特許第4,901,307号(“SPREAD SPECTRUM MULTIPLE ACCESS COMMUNICATION SYSTEM USING SATELLITE OR TERRESTRIAL REPEATERS”)、米国特許第5,103,459号(“SYSTEM AND METHOD FOR GENERATING WAVEFORMS IN A CDMA CELLULAR TELEPHONE SYSTEM”)、および、米国特許第5,504,773号(“METHOD AND APPARATUS FOR FORMATTING OF DATA FOR TRANSMISSION”)に開示されおり、各文献は本発明の譲受け人に譲渡され、ここではとくに参考文献として取り上げている。周波数スペクトルは有限の資源であるので、これらのシステムでは、スペクトルを共用し、一方で多数のユーザを最小の干渉で支援する方法を提供することによって、この資源の使用を最大化するための方法を提供している。これらの方法を高速データ伝送に拡張すると、既存のハードウエアおよびソフトウエアを再使用することができる。このような標準規格および方法に既に精通している設計者は、その知識と経験とを使用して、これらのシステムを高速データ伝送に拡張することができる。
【0012】
1つの実施形態では、図3および4に示されているように、無線システムにおいてアーキテクチャ10を実行すると、データ伝送に多数の搬送波を使用することができる。図2に示されているように、広い帯域幅の周波数割当てには、多数の搬送波が含まれている。所与の帯域幅Bは、水平方向の周波数軸に沿って示されている。1つの実施形態では、Bは約5メガヘルツである。図2に示されているように、WCDMAのような広帯域のトランシーバチャンネルでは、全帯域幅Bを使用する。広帯域のプロトコルは音声通信用に設計されているので、広帯域のプロトコルをデータ通信に拡張するのは容易ではなく、音声およびデータを混合するのは非効率的である。CDMAの各搬送波が、例えば1.25メガヘルツであるときは、この各搬送波(1xMC)の3本分には、帯域幅Bは十分であることに注意すべきである。この概念は、無線ネットワークのエアーインターフェイスプロトコルを変更して、異なる搬送波上でデータ流を送ることによって、3xMCに利用される。
【0013】
本発明の例示的な実施形態では、ML−PPPを使用して、新しいエアーインターフェイスを生成することなく、または既存の無線ネットワークのエアーインターフェイスを変更することなく、すなわち図1のアーキテクチャ10の既存の層12、14、16、18を使用して、3本の搬送波26、28、30を、PPPの処理およびIPのルート設定のためにフォーマット化されたフラグメントへ集約する。
【0014】
1つの実施形態にしたがって、図3では、移動体34と基地局46とをエアーインターフェイス62を介して接続するシステム32を示している。システム32には、無線ネットワークの部分とサービスネットワークの部分とが構成されていて、各部分は図1に示されているアーキテクチャ層にしたがって定められている。移動体34にはML−PPPプロセッサ36が構成されていて、ML−PPPプロセッサ36は3つのモデム38、40、42に双方向で接続される。無線リンクプロトコル層は、これらの接続を介して実行される。既に記載したように、サービスネットワーク層はML−PPPプロセッサ36側で実行され、無線ネットワーク層はモデム側で実行される。モデム38、40、42はアナログトランシーバユニット44にも双方向で接続される。エアーインターフェイスの伝送はCDMAの標準規格にしたがって実行され、CDMAの標準規格には、例えばIS−95、IS−2000、W−CDMA、およびHDRが含まれるが、これらに制限されない。例示的な実施形態では、HAIは、この仕様にしたがう逆方向チャンネルのコード化および反復、インターリービング、コード生成、および誤り訂正のステップを特定している。同様に、物理層12は、順方向チャンネルのパイロット、同期、およびページング生成、並びに変調、復調、およびコード化を特定して、エアーインターフェイス上でスペクトラム拡散伝送を行う。
【0015】
ML−PPPプロセッサ36はマルチリンク処理を行って、多数の独立したリンクを協働させ、各構成リンクよりも、より広い帯域幅をもつ仮想リンクを生成する。この実施形態では、個々のリンクは各モデム38、40、42を介して処理され、集約されたデータはバンドルとして導体64を介して送られる。ML−PPPにしたがうと、単一のデータ流が多数のデータ流へ分割されるときに、“フラグメント”が形成される。通常は、各フラグメントにはヘッダが含まれていて、ヘッダには順序番号と、パケットの最初または最後を示すフィールドとが構成されている。例示的な実施形態では、各ML−PPPのフラグメントはIPパケットであるので、最初および最後のパケットがある。
【0016】
モデム38、40、42によって変調または復調された各信号は、アンテナ45に接続されているアナログトランシーバ44を介して、移動体34との間で送受信される。各モデムは特定の搬送波と関係付けられていて、移動体34は各搬送波の信号をアンテナ45を介して送受信する。
【0017】
ML−PPP形式か、または同様のマルチリンク形式のプロトコルを使用すると、データは分割されて、再結合されるので、待ち時間は低減し、スループットは向上する。フラグメントの構成は、ローディングを向上するように設計およびスケジュールされるので、帯域幅が効率的に使用されることになる。図3の例示的な実施形態では、移動体34から送られるデータパケットは、フラグメントとして、導体64を介して、ML−PPPプロセッサ36によって受信される。データは、IPネットワークまたはコンピュータネットワークから送られたIPパケットとして受信される。受信されたデータパケットは、3つの独立データ流から構成されている。データ流は、通信パイプラインであると考えられる。独立データ流はIPパケットへ分割される。例示的な実施形態では、各IPパケットはML−PPPのフラグメントであり、したがってIPパケットはML−PPPのバンドルへ集約される。IPパケットはデータ流の部分であり、送信元と宛先とが含まれているが、隣り合うパケットに関係付けられている必要はない。
【0018】
ML−PPPプロセッサ36は、フラグメントを分割して、3つの元のデータ流を再構成する。3つのデータ流の1つはモデム38へ、別のデータ流はモデム40へ、さらに別のデータ流はモデム42へ供給される。各モデム38、40、42はユニークな搬送波上で、言い換えると、3つの異なる周波数を使用して、受信されたデータ流を変調する。データ流は、モデム38、40、42からアナログトランシーバ44へ送られる。次に、独立したデータ流の各々は、所定の帯域幅内の異なる周波数で送られる。実際には、各データ流は対応する帯域幅を有し、3つの帯域幅は重複しないことが理想的である。代わりの実施形態では、任意の数のモデムを採用して、任意の数の異なる帯域幅を反映させる。
【0019】
図4は、1つの実施形態にしたがう例示的なシステムにおけるモデムの搬送波と帯域幅との対応関係を示している。移動体34がデータを受信すると、信号を搬送波周波数によって分割し、適切な処理用モデムに記憶する。ベースバンド信号はモデム38、40、42からML−PPPプロセッサ36へ供給されて、集約され、バンドルとして導体64を介して送られる。ML−PPPプロセッサ36は、移動体34およびエアーインターフェイス62の要件に合ったソフトウエアにしたがって動作する。データは、所望の方式にしたがってフラグメント化されて、結合される。この点で、ML−PPPプロセッサ36はロードバランシングを行って、例えば、モデム42のスループットをモデム38よりも高くする。この場合は、ML−PPPのプロセッサ36によって生成された集約形バンドルには、モデム38よりもモデム42のデータフラグメントがより多く含まれることになる。処理は動的であり、ロードは、移動体34が処理するデータごとに変化するので、それにしたがってML−PPPプロセッサ36はバンドルを調節することになる。
【0020】
HDRの通信システムでは、MAC層は、通常は、サービス品質にしたがってユーザをスケジュールすることによってロードバランシングを行うように設計されている。サービス品質は、ユーザの受信可能範囲に基づいて、またはこの場合は、搬送波に基づいて判断され、よりよい受信可能範囲のユーザへスループットを割り当てる。受信可能範囲は、システム内のユーザ数、物理的な環境、速いフェージングの程度、マルチパス、等によって影響を受ける。システム32は、MAC層の組込まれたロードバランシング機能を利用して、3つの通信の各々のサービス品質にしたがって3つのモデム38、40、42をスケジュールする。所与の搬送波の伝送がユーザの干渉、環境上の制約、等によって劣化するときは、この搬送波のスループットは、より低くスケジュールされ、より高いサービス品質の別の搬送波のスループットを増加する。
【0021】
さらに加えて、IP層24においてロードバランシングが行われることもあり、このときはスループットは目標のIPアドレスによって判断される。このレベルでは、全てのIPパケットの送信元と宛先が分かっているので、モデム38、40、42は任意に組合される。IP層においてスケジューリングすると、ML−PPPをスケジューリングの決定から取り除く。1つの実施形態では、それぞれがPPPプロセッサを有する多数の経路上でデータが処理される。したがって各経路にはルータが用意されている。ルータは、有効経路間の選択によって、IPのスケジューリングを可能にする。
【0022】
ML−PPPプロセッサ36にはマイクロプロセッサが構成されていて、このマイクロプロセッサにはメモリが備えられていて、このメモリにはマルチリンクの集約および分離を行うためのソフトウエアの命令が記憶されていることに注意すべきである。さらに加えて、効率化および高速化のために、ハードウエア、ファームウエア、またはその組み合わせを構成してもよい。ML−PPPの特定の動作は、システム32ごとにユニークであるように設計することができる。ML−PPPプロセッサ36は、通常のPPPのトランザクションと無線ラジオネットワークの伝送との間にインターフェイスを与えている。マルチリンクの能力をPPPのインターフェイスに載せると、高品質の伝送を維持しつつ、広い帯域幅を十分に利用することができる。
【0023】
図3を参照すると、移動ユニット34は、基地局46との間でエアーインターフェイス62を介してデータを送受信することができる。図1に示されているように、プロトコルの下位の方の層18では、エアーインターフェイス62上での無線リンク伝送を規定している。対応する基地局46では、3つのアンテナ66、68、70において多数の搬送波の伝送を受信する。基地局46内では、各データ流は対応する経路を有し、各経路は搬送波周波数の帯域に対応している(図4参照)。各経路にはベーストランシーバサブシステム(Base Transceiver Subsystem, BTS)が構成されていて、BTSは順方向のCDMAチャンネルを生成して、移動体の伝送を復調する。音声伝送では、BTSはボコードされたフレームを生成する。各アンテナ66、68、70はBTS48、50、52にそれぞれ接続される。また、各BTS48、50、52は基地局制御装置(Base station Controller, BSC)54、56、58へそれぞれ接続される。音声伝送では、BSCはボコードされたフレームをBTSから受信し、それらをPCM信号へ変換する。代わりの実施形態では、多数の経路を処理するための統合形のBTSが用意される。基地局46からの音声伝送では、BSCは陸線の音声信号をボコードされたフレームへ変換して、それらを適切なBTSへ送る。代わりの実施形態では、多数のBTSまたは統合形のBTSとインターフェイスしている統合形のBSCが用意される。BTSは、所定の搬送波周波数の帯域幅をもつ受信情報を、対応するアンテナを介して送る。各BSC54、56、58はパケットデータサービスノード(Packet Data Services Node, PDSN)60へ接続される。このやり方では、基地局46は、移動体34への多数の搬送波の伝送を処理することができる。PDSN60はML−PPPを使用して、IPネットワークと通信するためにデータを処理する。
【0024】
移動局34から送られた信号は、エアーインターフェイス62を介して、基地局46においてユーザ別信号(single-user signal)として受信される。言い換えると、モデム38によって変調された信号は、アンテナ66によって受信されて、BTS48において復調され、モデム40によって変調された信号は、アンテナ68によって受信されて、BTS50において復調される、等である。これらの個々の対の各々は、IS−95の標準規格にしたがうCDMAシステムのような無線システムにおいてユーザ別チャンネル(single-user channel)としての役割を果たす。基地局46の各経路への伝送は、通常のユーザ別伝送であり、移動体34によって個々に処理される。基地局46には、移動体の各モデムに適応する多数の経路が構成されている。1つの実施形態では、移動体34には、基地局46において有効な搬送波周波数の数よりも、より多くの数の搬送波周波数を変調する能力が含まれている。この場合は、移動体34は、基地局46で処理できる経路のみを使用する。このやり方では、移動体34は、基地局46の能力と容量とを判断した後で、種々の基地局とインターフェイスする。
【0025】
基地局46からの信号は、PDSN60においてIPフォーマットで受信される。PDSN60は、ML−PPPの処理を使用して、集約形バンドルを分割する。各フラグメントには、順序番号が割り当てられている。移動体34は、順序番号を利用して、バンドルを再構成する。PDSN60はML−PPPのフラグメントを出力する。この点で、HDLCのフレーム化が行われる。BSC54、56、58はフラグメントを受取って、RLPのパケットを生成する。RLPのパケットはML−PPPのパケットであり、シグナリング情報が含まれていることもある。RLPパケットはBTS48、50、52へ供給され、エアーインターフェイス62を介して送られる。移動体34がBTS48、50、52から信号を受信すると、応答して、モデム38、40、42はRLPパケットを回復し、回復されたRLPパケットは、ML−PPPのフラグメントを形成するようにさらに処理される。ML−PPPのプロセッサ36はフラグメントを集約して、生成されたバンドルをIPネットワークへ送る。
【0026】
図5には、1つの実施形態にしたがうマルチリンクのフラグメントのフォーマット80が示されている。各フラグメントには、1本のデータ流の一部分が収められている。フラグメント内の第1の部分またはフィールドには、PPPヘッダ82が収められている。PPPヘッダ82内には、アドレスフィールド92および制御フィールド94が構成されている。
【0027】
PPPヘッダの次にはプロトコル識別子(protocol identifier, PID)84があり、PID84の次にはML−PPPヘッダ86があり、ML−PPPヘッダ86は、PPPデータパケットの各フラグメントとでインクリメントする順序フィールド98と、フラグメントがPPPデータパケットを開始するか、または終了するかを示すアラインメントフィールド96とから構成されている。例示的な実施形態では、フラグメント化されていないML−PPPのフォーマットが構成されている。PPPのデータパケットは、2つの資源間の通信を意図したデータ流の一部である。ML−PPPのバンドルには、多数の対の資源の幾つかのデータ流がPPPパケットに分割されて含まれている。多数の対の資源のフラグメントは集約、すなわちインターリーブされて、バンドルを形成する。バンドルという用語は、多数の対の資源間のリンクを束ねたものを指す。アラインメントフィールド96は、PPPデータパケットのフラグメントを一緒に保持するのを助け、各フラグメントがどこで始まっていて、終了しているのかが識別される。図5に示した1つの実施形態では、アラインメントフィールド96には、開始ビット“B”および終了ビット“E”が含まれている。開始ビット“B”および終了ビット“E”は、パケット内の最初のフラグメントと最後のフラグメントとを除く全てのフラグメントでは取り除かれている。
【0028】
伝送中は、ML−PPPのヘッダ86のサイズは、他の構成要素に対応して低減することに注意すべきである。ML−PPPヘッダ86の後には、フラグメントデータ88がある。フラグメントの最後には、フレーム検査シーケンス(Frame Check Sequence, FCS)フィールド90または他の誤り訂正フィールドがある。FCSフィールド90は、パリティ検査に使用されるか、またはチェックサムを計算して、伝送データを確認するのに使用される。
【0029】
図6は、システム32内での多数の搬送波の伝送において、データが導体64を介して移動体34へ受信され、かつ移動体34からエアーインターフェイス62を介して送られることを示している。データはML−PPPのバンドルで受信され、そのデータの一部分を“ML”と表示した経路に関連付けて示した。バンドルは一連のフラグメントから構成されていて、一連のフラグメントを、左側から逆時間順に図示した。各フラグメントは、経路番号と順序文字(sequence letter)とによって識別される。モデム38によって処理されたフラグメントの全ては経路“1”を介して、モデム40からのフラグメントは経路“2”を介して、モデム42からのフラグメントは経路“3”を介して送られる。図示されているように、第1のフラグメントは、経路1の“1A”と表示されているところから始まる。次のフラグメントは、経路2の“2A”と表示されているところから、次のフラグメントは、経路3の“3A”と表示されているところから始まる。
【0030】
同様に、次の4つのフラグメントは同じ順番で受信され、経路1、2、および3をそれぞれ循環する。ML−PPPプロセッサ36は、8個目のフラグメントを受信する前に、モデム38には、他のモデム40、42よりも、より長い処理時間が必要であると判断する。ML−PPPプロセッサ36は、8個目のフラグメントまでに、スケジューリングを調節して、モデム38に適応することを試みて、この時点で、2個の予備フレームがモデム38に割り当てられる。各モデムからML−PPPプロセッサ36へ送られるデータも示されている、図示されているように、ML−PPP36は3つのデータ流を受信し、データをフラグメントに分割し、フラグメントを集約する。集約形のバンドルは、導体64を介して異なる場所へ供給される。
【0031】
移動体34から送られるデータについて、ML−PPP36は集約されたデータを受信して、それを、その宛先にしたがって構成データ流へ分割する。受信されたデータは、通常は、IPパケット形のネットワークトラヒックである。
【0032】
例示的な実施形態にしたがって、ML−PPPプロセッサ36は、各データ流と関係する、すなわち各モデムと関係するデータレートを判断する。ロードバランシングは、高データレートのモデムを選択するように行われる。このやり方で、システムの待ち時間を低減する。
【0033】
例示的な実施形態にしたがって、移動体34には、メモリ記憶デバイス(図示されていない)が含まれていて、メモリ記憶デバイスには、移動体34の動作を制御するコンピュータ可読命令が記憶されている。メモリ記憶デバイスは、ML−PPPプロセッサ36内に構成してもよい。コンピュータ可読命令は専用のハードウエアと連係して、情報信号を集約および分離し、情報信号を変調および復調し、エアーインターフェイスを介して信号を送受信する。ロードバランシングの決定基準を構成する命令と、構成の詳細とが含まれていることもある。1つの実施形態では、ML−PPP36は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路から構成されている。代わりの実施形態では、ハードウエア、ソフトウエア、および/またはファームウエアの組合せであって、移動体34の種々の機能を実行するように設計された組合せが構成される。
【0034】
本発明の1つの実施形態では、移動体34には、音声通信のための並列処理経路(図示されていない)が含まれている。音声経路にはモデムが含まれていて、モデムは、音声を処理するためのボコーダに接続されている。3つのモデムを備えたデータ経路と、1つのモデムを備えた音声経路とは並行に動作する。
【0035】
したがって、無線通信システムにおける高データレート伝送のための斬新で向上した方法および装置を開示した。本明細書に記載した例示的な実施形態では、開示したHDRのCDMAシステムをHAI仕様によって開示しているが、本発明の種々の実施形態は無線のユーザ別接続方法に応用できる。効率的な通信を行なうために、例示的な実施形態はHDRに関連付けて記載しているが、IS−95、W−CDMA、IS−2000、GSM、TDMA、等に応用しても効率的である。
【0036】
当業者には、上述で全体的に参照したデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、符号、およびチップは、電圧、電流、電磁波、磁界または磁粒、光のフィールドまたは粒子、あるいはその組み合わせによって、都合よく表されることが分かるであろう。
【0037】
当業者には、本明細書に開示されている実施形態に関連して記載した種々の例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムのステップを、電子ハードウエア、コンピュータソフトウエア、またはこの両者の組合わせとして構成してもよいことが分かるであろう。種々の例示的な構成要素、ブロック、モジュール、回路、およびステップは、その機能に関して概ね記載した。機能がハードウエアとして構成されるか、またはソフトウエアとして構成されるかは、全体的なシステムに課せられた特定の応用および設計上の制約に依存する。熟練した職人には、これらの環境下におけるハードウエアまたはソフトウエアの互換性、および各特定の応用ごとに上述の機能を構成することがどのくらい最良であるかが分かるであろう。
【0038】
例として、本明細書に開示されている実施形態に関連して記載した種々の例示的な論理ブロック、モジュール、回路、およびアルゴリズムのステップは、本明細書に記載した機能を実行するように設計されたディジタル信号プロセッサ(digital signal processor, DSP);特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit, ASIC);フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array, FPGA)または他のプログラマブル論理デバイス;ディスクリートのゲートまたはトランジスタ論理;ディスクリートのハードウエア構成要素、例えばレジスタおよびFIFO;1組のファームウエアの命令を実行するプロセッサ;従来形のプログラマブルソフトウエアモジュールおよびプロセッサ;あるいはその組み合わせで構成または実行される。プロセッサは、マイクロプロセッサであることが好都合であるが、その代わりに、プロセッサは従来のプロセッサ、制御装置、マイクロ制御装置、または状態機械であってもよい。ソフトウエアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、CD−ROM、またはこの技術において知られている他の形態の記憶媒体内にあってもよい。プロセッサはASIC(図示されていない)内に備えられていてもよい。ASICは電話装置内に備えられていてもよい。その代わりに、プロセッサは電話装置内に備えられていてもよい。プロセッサは、DSPとマイクロプロセッサとの組合わせとしてか、またはDSPのコアなどと組合せて使用される2つのマイクロプロセッサとして構成されていてもよい。
【0039】
上述の好ましい実施形態の説明は、当業者が本発明を生成または使用できるように与えられている。これらの実施形態の種々の変形は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義されている全体的な原理は、本発明の能力を使用せずに他の実施形態に応用できる。したがって、本発明は、本明細書に示した実施形態に制限されることを意図されていないが、本明細書で開示した原理および新規な特徴に一致する最も幅広い技術的範囲に一致することを意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置であって、
第1の搬送波周波数を有する第1の信号を復調して、第1の情報信号を生成するように動作する第1のモデムと、
第2の搬送波周波数を有する第2の信号を復調して、第2の情報信号を生成するように動作する第2のモデムとが含まれていて、第1の搬送波周波数と第2の搬送波周波数とは異なっていて、
第1および第2の情報信号を集約するように動作するマルチリンクインターネットプロセッサがさらに含まれている無線通信装置。
【請求項2】
第1および第2の情報信号の集約が、ポイント・ツウ・ポイントプロトコル(point-to-point protocol, PPP)のフォーマットである請求項1記載の装置。
【請求項3】
マルチリンクインターネットプロトコルプロセッサに接続されていて、かつ第3の搬送波周波数を有する第3の信号を復調して、第3の情報信号を生成するように動作する第3のモデムがさらに含まれていて、
第3の搬送波周波数が、第1および第2の搬送波周波数とは異なる請求項1記載の装置。
【請求項4】
第1、第2、および第3の搬送波周波数が、所定の帯域幅内である請求項3記載の装置。
【請求項5】
第1および第2のモデムに接続されていて、かつ第1の搬送波周波数の第1の信号と、第2の搬送波周波数の第2の信号とを受信するように動作するアナログユニットがさらに含まれている請求項1記載の装置。
【請求項6】
アナログユニットが、第1および第2の搬送波周波数の信号を受信し、前記信号の各々を、第1および第2のモデムの対応する一方のモデムへ供給する請求項5記載の装置。
【請求項7】
第1のモデムが、第1の搬送波周波数の情報信号を変調するように動作し、第2のモデムが、第2の搬送波周波数の情報信号を変調するように動作する請求項6記載の装置。
【請求項8】
マルチリンクインターネットプロトコルプロセッサが、第1および第2のモデムのロードバランシングを行うように、第1および第2の情報信号をスケジュールする動作をする請求項1記載の装置。
【請求項9】
マルチリンクインターネットプロトコルプロセッサが、装置内に記憶されている複数のコンピュータ可読命令にしたがって動作する請求項8記載の装置。
【請求項10】
マルチリンクインターネットプロトコルプロセッサが、集約形バンドルを生成するように動作し、集約形バンドルには、第1の情報信号のフラグメントが第2の情報信号のフラグメントよりも多く含まれている請求項8記載の装置。
【請求項11】
無線通信において、
各々がユニークな搬送波周波数を有する複数の信号を受信することと、
複数の信号の各々を、複数の情報信号へ復調することと、
複数の情報信号を集約することとが含まれている方法。
【請求項12】
複数の情報信号から構成されている集約形バンドルを受信することと、
集約形バンドルを分割することと、
複数の情報信号の各々を、各々がユニークな搬送波周波数を有する複数の変調信号へ変調することと、
複数の変調信号の各々を送ることとがさらに含まれている請求項11記載の方法。
【請求項13】
複数の変調信号が、ユーザ別の無線ネットワークのエアーインターフェイスに一致する無線ネットワークのエアーインターフェイスにしたがって送られる請求項11記載の方法。
【請求項14】
集約には、複数の情報信号の各々について、複数のデータレートをそれぞれ判断することと、
複数の情報信号を複数のデータレートにしたがってスケジュールすることとがさらに含まれている請求項11記載の方法。
【請求項15】
無線システムは、符号分割多重アクセス(Code Division Multiple Access, CDMA)システムである請求項11記載の方法。
【請求項16】
無線通信装置であって、
サービスネットワークを実行させるように働き、複数の情報信号をバンドルへ集約する第1の組のコンピュータ可読命令と、無線ネットワークを実行するように働く第2の組のコンピュータ可読命令とを記憶するメモリ記憶デバイス、
第1の組のコンピュータ可読命令に応答して、複数の情報信号をバンドルへ集約するように動作するマルチリンクインターネットプロトコルプロセッサ、および、
マルチリンクインターネットプロトコルプロセッサに接続されていて、かつ各々が異なる搬送波周波数を有する複数の信号を復調して、複数の情報信号を生成するように動作する複数の変調デバイスが含まれている無線通信装置。
【請求項17】
無線ネットワークが、エアーインターフェイスのユーザ別伝送と一致する請求項16記載の無線通信装置。
【請求項18】
無線ネットワークが、符号分割多重アクセス(Code Division Multiple Access, CDMA)のエアーインターフェイスのユーザ別伝送と一致する請求項17記載の無線通信装置。
【請求項19】
マルチリンクインターネットプロトコルプロセッサが、集約形のバンドルを受信して、バンドルを構成情報信号へ分割するように動作し、複数の変調デバイスが、異なる搬送波周波数の構成情報信号を変調するように動作する請求項18記載の無線通信装置。
【請求項20】
複数の変調デバイスの各々に接続されていて、かつ変調信号を送るように動作するトランシーバがさらに含まれている請求項19記載の無線通信装置。
【請求項21】
トランシーバは、ユーザ別デバイスと一致するエアーインターフェイスを使用して、変調信号を送るように動作する請求項20記載の無線通信装置。
【請求項22】
音声通信を受信するためのモデムと、
モデムに接続されていて、かつ音声通信を処理するためのボコーダとがさらに含まれている請求項16記載の無線通信装置。
【請求項23】
第1の搬送波周波数と関係付けられた第1のモデムと、
第2の搬送波周波数と関係付けられた第2のモデムとが含まれていて、第1の搬送波周波数が第2の搬送波周波数とは異なっていて、
第1および第2のモデムに接続されていて、かつ第1および第2のモデムを介してデータ流をスケジュールするように動作するルータがさらに含まれている無線通信装置。
【請求項24】
第1のモデムとルータとの間に接続されている第1のポイント・ツウ・ポイントプロトコルプロセッサと、
第2のモデムとルータとの間に接続されている第2のポイント・ツウ・ポイントプロトコルプロセッサとがさらに含まれている請求項23記載の無線通信装置。
【請求項25】
ルータがインターネットプロトコルパケットを受信するように動作し、
ルータが、第1および第2のモデムを介してデータ流をスケジュールするように動作する請求項24記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−191636(P2012−191636A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−108576(P2012−108576)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2002−527067(P2002−527067)の分割
【原出願日】平成13年9月12日(2001.9.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WCDMA
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】