無線通信システム、部分的協調送信方法及び集約局
【課題】クラスタ間干渉回避効果が高くできると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果を高くすること。
【解決手段】本発明の無線通信システムは、同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局10−2から10−7に対して周波数領域毎に干渉回避型の指向性パタンを割り当て、協調対象無線基地局10−1に対して各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる。各通常無線基地局10−2から10−7が干渉回避型の指向性パタン1a,2aにしたがって指向性ビームを送信し、協調対象無線基地局10−1が協調する通常無線基地局10−2から10−7と同一の時間スロットで干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにしたがって指向性ビームを送信する。
【解決手段】本発明の無線通信システムは、同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局10−2から10−7に対して周波数領域毎に干渉回避型の指向性パタンを割り当て、協調対象無線基地局10−1に対して各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる。各通常無線基地局10−2から10−7が干渉回避型の指向性パタン1a,2aにしたがって指向性ビームを送信し、協調対象無線基地局10−1が協調する通常無線基地局10−2から10−7と同一の時間スロットで干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにしたがって指向性ビームを送信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対する信号を送信する無線通信システム、部分的協調送信方法及び集約局に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ方式の移動無線通信システムでは、面的周波数利用効率を向上させるために、周波数繰返し回数を出来るだけ少なくすることが求められる。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を用いた第3世代のセルラ方式では、隣接セルで同一周波数帯の電波を利用する1セル周波数繰返し(周波数繰返し回数=1)が実現されている。
【0003】
一方、次世代のセルラ方式の下り回線では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が有力である。このOFDMA方式を用いたセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、隣接セル及び隣接セクタからの干渉が特性劣化の大きな原因となる。具体的には、隣接セル及び隣接セクタからの干渉電力の増加に伴いSINR(Signal−to―Interference and Noise power Ratio)が低下するため、特にMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)伝送を行う際にその効果を発揮することが難しくなる。
【0004】
したがって、OFDMA方式でMIMO伝送を行うセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、MIMO伝送による著しいスループットの増大効果を得るためには、隣接セル及び隣接セクタからの干渉を回避する必要がある。
【0005】
そこで、上述のような場合の干渉回避技術として、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対して信号を同時送信する協調送信が注目されている。この協調送信によると、協調する複数の無線基地局のセル又はセクタの集合によって形成される協調クラスタ内の空間を直交化できるので、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)が回避される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。
【0006】
具体的には、非特許文献1に示された協調送信では、所定範囲に設置された複数の無線基地局が集約局に接続され、集約局が複数の無線基地局を協調させる。協調クラスタCLは、協調する複数の無線基地局のセルCの集合によって形成される。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、複数の無線基地局による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を回避することが可能になり、ユーザスループットが改善される。
【0007】
また、非特許文献2に示された協調送信では、隣接する3つの無線基地局が集約局に接続され、集約局が3つの無線基地局1を協調させる。協調クラスタCLは、協調する3つの無線基地局の隣接3セクタによって形成される。さらに、協調クラスタCLを形成する隣接3セクタは、各無線基地局1のセクタアンテナからのビームが向き合うように構成されている。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、3つの無線基地局による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング方法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を除去することが可能になり、ユーザスループット及びセルスループットが改善される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Benjebbour, M.Shirakabe, Y.Ohwatari, J.Hagiwara, and T.Ohya, “Evaluation of user throughput for MU-MIMO coordinated wireless networks,” IEEE PIMRC 2008, pp.1-5, Sept. 2008.
【非特許文献2】CMCC, “Downlink CoMP-MU-MIMO transmission schemes,” 3GPP RAN1 #56, R1-090922, Feb. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、複数の無線基地局による協調送信を用いた上述の干渉回避技術では、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)を回避できるが、協調クラスタ外からの干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局以外からの干渉)を回避できないという問題点があった。
【0010】
また、隣接する無線基地局間で互いに隣接するセクタ間では同一周波数領域で指向性ビームが向かい合わないように指向性パタンを割り当てることにより、クラスタ間の干渉を回避するクラスタ間干渉回避型の指向性パタンを採用することも考えられる。しかしながら、クラスタ間干渉回避型の指向性パタンを適用したのでは、クラスタ内において干渉しなくなるので、クラスタ内の協調(干渉重畳)効果が低いという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、クラスタ間干渉回避効果を高くできると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果を高くすることができる無線通信システム、部分的協調送信方法、集約局及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信システムは、それぞれ複数のセクタからなるセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する無線基地局決定部と、同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、前記各通常無線基地局が前記干渉回避型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを送信し、前記協調対象無線基地局が協調する前記通常無線基地局と同一の時間スロットで前記干渉重畳型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを送信する、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てるので、協調対象無線基地局及びその周囲の通常無線基地局セルで構成されるクラスタを複数配置する通信エリアにおいて、クラスタ間の干渉回避効果を高くできると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果も高くでき、システム全体でのスループットを上げることができる。
【0014】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記無線基地局決定部は、前記無線基地局の要求変化に応じて、前記協調対象無線基地局をダイナミックに決定してもよいし、協調対象無線基地局を固定としても良い。協調対象無線基地局をダイナミックに決定することにより無線基地局の要求変化に柔軟に対応することができ、また協調対象無線基地局を固定とすれば指向性パタン決定までの処理を簡素化できる。
【0015】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記協調対象無線基地局及び前記通常無線基地局は、プリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送又はセル間でビームフォーミングを協調するCoordinated Beamformingを用いて指向性ビームを形成する。
【0016】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、前記協調対象無線基地局及び前記通常無線基地局に対して前記周波数ブロック毎に前記干渉回避型の指向性パタン及び干渉重畳型の指向性パタンが割り当てられる。
【0017】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記指向性パタン決定部は、前記周波数領域に加えて時間領域のそれぞれに対応させて、前記干渉回避型の指向性パタン及び前記干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クラスタ間干渉回避型の指向性パタンによる高いクラスタ間干渉回避効果を実現できると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態1に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態1に係る無線通信システムで形成される協調エリアを示す図である。
【図3】本実施形態1に係る指向性パタンを示す図である。
【図4】干渉回避型の指向性パタンだけを割当てたビームパタンを示す図である。
【図5】干渉回避型の指向性パタン及び干渉重畳型の指向性パタンを割当てたビームパタンを示す図である。
【図6】複数周波数の指向性パタンを組み合わせたクラスタパタンを示す図である。
【図7】通常無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図8】協調対象無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図9A】本実施形態1に係る集約局の機能ブロック図である。
【図9B】本実施形態1に係る無線基地局の機能ブロック図である。
【図10】本実施形態1に係る無線通信システムのシーケンス図である。
【図11】ダイナミックスイッチを適用した場合の協調エリアを形成するクラスタ配置を示す図である。
【図12】スタティックスイッチを適用した場合の協調エリアを形成するクラスタ配置を示す図である。
【図13】周波数のスイッチ単位(粒度)を例示した図である。
【図14】通常無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図15】協調対象無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図16】本実施形態2に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図17】本実施形態2に係る無線基地局の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。
【0021】
<本実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成>
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。本実施形態の無線通信システムは、複数の無線基地局10(10−1乃至10−7、…)と、複数の無線基地局10と光ファイバ20により接続される集約局30と、集約局30に接続されるネットワーク網40とから構成されている。中央部に配置された無線基地局10−1が形成する中央セルC−1と、中央の無線基地局10−1を囲むように配置された他の複数の無線基地局10−2乃至10−7が中央セルC−1の周囲に隣接して形成する複数の隣接セルセルC−2乃至C−7とで、1つのクラスタCLを形成している。図11、12に示すように、複数セルの集合であるクラスタCLが二次元的に配置されて広域の通信エリアが形成される。本実施の形態は、クラスタ間の干渉抑圧を実現すると共に、クラスタ内の干渉重畳能力を実現する無線通信システムである。
【0022】
図2(a)は、本実施形態に係る無線通信システムにおいて、クラスタ内に形成される部分的な協調エリアを示す図であり、図2(b)は1セルのセクタ構成を示す図である。本実施形態では、1セルは6セクタS1乃至S6で構成されるが、セクタ構成は6セクタに限定されない。
【0023】
中央セルを形成している無線基地局10−1が協調対象基地局となり、周辺の無線基地局10−2〜10−7が通常無線基地局となる。協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-2との間では、同一周波数領域(例えば、周波数f1)で指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して干渉重畳可能な協調エリアCL1を形成している。同様に、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-4との間では、周波数f1の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL3を形成し、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-6との間では、周波数f1の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL5を形成している。また、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-3との間では、周波数f1と異なる周波数f2の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL2を形成している。同様に、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-5との間では、周波数f2の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL4を形成し、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-7との間では、周波数f2の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL6を形成している。
【0024】
協調エリアCL1〜CL6では、マルチユーザMIMO伝送により、無線基地局10−1〜10−7が、協調エリアCL1〜CL6に在圏する無線端末50に対する信号を同時送信する。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてBD−ZF法等を用いることができる。マルチユーザMIMOプリコーディングにより、協調エリアCL1〜CL6の空間を直交化できるので、協調クラスタCL1内で協調送信を行う無線基地局10間の干渉を回避できる。マルチユーザMIMO伝送に代えて、セル間でビームフォーミングを協調するCoordinated Beamformingを用いても良い。
【0025】
本実施形態に係る無線通信システムでは、複数の指向性パタンの中から各クラスタに要求される干渉回避能力又は干渉重畳能力に対応して指向性パタンが無線基地局10に割り当てられる。図3は、本実施形態の無線通信システムで用いられる指向性パタンを示す図である。指向性パタン1a、1b(図3(1)(4))は、垂直方向を基準にして時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。また、指向性パタン2a、2b(図3(2)(3))は、垂直方向を基準にして反時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。
【0026】
図4(a)はクラスタを構成する各無線基地局10−1〜10−7に指向性パタン1aを割当てた状態を示している。全ての無線基地局10−1〜10−7が指向性パタン1aにしたがって例えば周波数f1の指向性ビームを送信する場合、同一周波数領域(f1)では隣接セル間で指向性ビームが向き合わないことになる。したがって、複数の無線基地局10から同時送信される指向性ビームがクラスタ内(特にセルエッジ付近)及びクラスタ間で干渉することを回避できる。
【0027】
図4(b)はクラスタを構成する各無線基地局10−1〜10−7に指向性パタン2aを割当てた状態を示している。全ての無線基地局10−1〜10−7が指向性パタン2aにしたがって例えば周波数f2の指向性ビームを送信する場合、同一周波数領域(f2)では隣接セル間で指向性ビームが向き合わないことになる。したがって、複数の無線基地局10から同時送信される指向性ビームがクラスタ内(特にセルエッジ付近)及びクラスタ間で干渉することを回避できる。
【0028】
上記した通り、指向性パタン1a、2aは、隣接セル間で指向性ビームが向き合わないように構成されており、指向性パタン1aと指向性パタン2aとでは異なる周波数領域に対応している。したがって、全ての無線基地局10−1〜10−7に指向性パタン1aと指向性パタン2aとを同時に割り当て、それぞれ該当周波数領域で指向性パタン1a及び指向性パタン2aにしたがって指向性ビームを同時送信したとしても、高いクラスタ内及びクラスタ間の干渉回避能力を実現できる。図4では1クラスタ内の指向性パタンだけを例示しているが、隣接するクラスタを構成する他の無線基地局10に対して指向性パタン1a及び指向性パタン2aを割り当てることで、隣接するクラスタ間でも高いクラスタ間干渉回避能力を実現できる。本明細書では、指向性パタン1a及び指向性パタン2aのことを干渉回避型指向性パタンと呼ぶこととする。
【0029】
本発明は、干渉回避型指向性パタンだけではクラスタ内干渉重畳能力が低下する不具合を補うために、干渉重畳能力が高いクラスタ内干渉重畳型の指向性パタンを部分的(具体的には、協調対象基地局10−1)に適用する。
【0030】
図4(a)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、中央セルC−1を形成する協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンを、指向性パタン1aから60度回転させる(フリッピング)。協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタン1aだけをフリッピングすることにより、図5(a)に示すように、協調対象無線基地局10−1とその周囲の幾つかの無線基地局(具体的には、通常無線基地局10−3、10−5、10−7)との間で同一周波数領域(周波数f1)で指向性ビームが向かい合う。すなわち、協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンだけをフリッピングすることにより、クラスタ内の一部に干渉重畳効果の高い協調エリア(図2のCL2、CL4、CL6)を形成することができる。同様に、図4(b)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタン2aだけをフリッピングすることにより、図5(b)に示すように協調対象無線基地局10−1といくつかの通常無線基地局10−2、10−4、10−6との間で指向性ビーム(周波数f2)が向かい合い、周波数領域f2においてもクラスタ内の一部に干渉重畳効果の高い協調エリア(図2のCL1、CL3、CL5)が形成されることになる。このように、周波数領域毎に協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンだけをフリッピングすることにより、周波数領域毎に干渉重畳効果の高い協調エリアを形成できる。
【0031】
図4(a)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、協調対象無線基地局10−1に対して図3に示す指向性パタン2b(指向性パタン1aと同一周波数領域f1で、かつ指向性ビームの方向が60度回転)を割り当てることにより、協調対象無線基地局10−1の指向性パタンだけをフリッピングした指向性パタンと同じパタンになる。同様に、図4(b)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、協調対象無線基地局10−1に対して図3に示す指向性パタン1bを割り当てることにより、協調対象無線基地局10−1の指向性パタン2aだけをフリッピングした指向性パタンと同じになる。本明細書では、指向性パタン1b及び指向性パタン2bのことを干渉重畳型指向性パタンと呼ぶこととする。
【0032】
図6に示すように、通常無線基地局10−2〜10−7に対して周波数領域毎に干渉回避型指向性パタン1a、2aが割り当てられ、協調対象無線基地局10−1に対して周波数領域毎に干渉重畳型指向性パタン1b、2bが割り当てられる。これにより、クラスタ間では高い干渉回避効果を実現すると共に、協調対象無線基地局10−1を中心とするクラスタ内では高い干渉重畳能力を実現できる。
【0033】
次に、協調対象無線基地局10−1及び通常無線基地局10−2〜10−7の指向性パタンと複数の周波数領域とのマッピングについて説明する。
【0034】
図7は、通常無線基地局10−2〜10−7の指向性パタンと周波数ブロックのマッピングの例が示されている。上記した通り、通常無線基地局10−2〜10−7に対しては干渉回避型指向性パタンである指向性パタン1aまたは指向性パタン2aが割り当てられる。無線通信システムのシステム帯域を複数の周波数ブロックに分割し、奇数周波数ブロック2n+1(n=0,1,2,・・・)に対応して指向性パタン1aが定められ、偶数周波数ブロック2n(n=1,2,・・・)に対応して指向性パタン2aが定められている。周波数領域毎には時間軸方向で指向性パタンは固定である。OFDMA方式では、システム帯域を複数の周波数ブロックに分割して周波数ブロック単位で周波数リソースを扱うことができる。無線通信システムがOFDMA方式を採用している場合は、図7,8に示す周波数ブロックをOFDMA方式の周波数ブロックに対応させても良い。
【0035】
図8は協調対象無線基地局10−1の指向性パタンと周波数ブロックのマッピングの例が示されている。上記した通り、協調対象無線基地局10−1に対しては干渉重畳型指向性パタンである指向性パタン1b、2bが割り当てられる。奇数周波数ブロック2n+1(n=0,1,2,・・・)に対応して指向性パタン2bが定められ、偶数周波数ブロック2n(n=1,2,・・・)に対応して指向性パタン1bが定められている。協調対象無線基地局10−1に関して奇数周波数ブロック2n+1に指向性パタン2bが割り当てられているのは、通常無線基地局10−2〜10−7に関して奇数周波数ブロック2n+1に指向性パタン1aが割り当てられているからである(指向性パタン2bは指向性パタン1aとの関係では干渉重畳能力を発揮できる)。同様に、協調対象無線基地局10−1に関して偶数周波数ブロック2nに指向性パタン1bが割り当てられているのは、通常無線基地局10−2〜10−7に関して偶数周波数ブロック2nに指向性パタン2aが割り当てられているからである(指向性パタン1bは指向性パタン2aとの関係では干渉重畳能力を発揮できる)。周波数領域毎に時間軸方向で指向性パタンは固定である。
【0036】
このように、隣接する周波数ブロック間で干渉回避型指向性パタン1aと2aとを交互に切り替えると共に干渉重畳型指向性パタンパタン2bと1bとを交互に切り替えることにより、図6に示すクラスタ間干渉回避能力とラスタ内干渉重畳能力を同時に実現するクラスタパタンを構成できる。
【0037】
<本実施形態に係る無線通信システムの機能構成>
次に、本実施形態に係る無線通信システムを構成する集約局30及び各無線基地局10の機能構成について説明する。図9A、Bは、集約局30及び各無線基地局10の機能ブロック図である。本実施形態では、無線基地局10の数をM、各無線基地局10のアンテナ素子11の数をNt、無線端末50の数をNuとする。
【0038】
無線基地局決定部41は、通信対象となる無線端末50毎に、当該対象無線端末50に対して送信データを送信する無線基地局10を決定する。対象無線端末50に対して複数の無線基地局10から同時に協調送信する場合は複数の無線基地局10が決定される。対象無線端末50に対して同時送信する複数の無線基地局10から協調の中心となる協調対象無線基地局10−1と通常無線基地局10−2〜10−7とを決定する。協調対象無線基地局を決定するための方式は本発明では限定されない。システム設計段階または運用段階で定期的に協調対象無線基地局を決定して固定しても良いし、トラヒック量、基地局要求又は端末要求に基づいてダイナミックに決定しても良い。クラスタ中央の無線基地局10−1を協調対象無線基地局として選択し、協調対象無線基地局10−1の周囲に配置されて隣接セルを形成する無線基地局10を通常無線基地局10−2〜10−7に選択する。なお、無線基地局決定部41は、コアネットワーク側に配置しても良いし、集約局30内に配置しても良い。
【0039】
集約局30は、無線基地局決定部41が決定した協調対象無線基地局10−1に対して図8に示す干渉重畳型の指向性パタンを割り当て、通常無線基地局10−2〜10−7に対して図7に示す干渉回避型の指向性パタンを割り当てる。集約局30は、指向性パタン選択部31と、信号分配部32と、同一送信タイミングで送信する無線端末数Nu個の変調部33と、プリコーディング部34と、無線基地局数M個の送信部35とを具備する。
【0040】
指向性パタン選択部31は、通常無線基地局10−2〜10−7に対して周波数領域毎に干渉回避型指向性パタン1a又は2aを選択して割り当て、協調対象無線基地局10−1に対して周波数領域毎に干渉回避型指向性パタン1a又は2aとの関係では干渉重畳能力を発揮する干渉重畳型指向性パタン2b又は1bを選択して割り当てる。指向性パタン選択部31は、このような通常無線基地局及び協調対象無線基地局に対応した指向性パタン割当てを実現するため、図7に示すように周波数領域毎に対応した干渉回避型指向性パタン1a、2aと、図8に示すように周波数領域毎に対応した干渉重畳型指向性パタン2b、1bを指向性パタン選択情報として不図示のメモリに予め保持している。通常無線基地局10−2〜10−7に対して周波数領域毎に割当てた干渉回避型指向性パタン1a、2aからなる指向性パタン選択情報、並びに協調対象無線基地局10−1に対して周波数領域毎に割当てた干渉重畳型指向性パタン2b、1bからなる指向性パタン選択情報を、プリコーディング部34へ入力する。
【0041】
信号分配部32は、集約局30配下の全無線基地局10に接続される全無線端末50−1乃至50−Nuに対するデータ信号を、ネットワーク網40から受信し、ネットワーク網40から受信したデータ信号を無線端末50−1乃至50−Nuに分配する。信号分配部32は、Nu個の無線端末毎に分配されたデータ信号を、第1変調部33乃至第Nu変調部33にそれぞれ入力する。
【0042】
変調部33は、符号化部331と、インタリーブ部332と、直並列変換部333と、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr毎の信号変調部334(すなわち、サブキャリア数L×送信ストリーム数Nr個の信号変調部334)とを具備する。
【0043】
符号化部331は、所定の符号化方法を用いて、信号分配部32から入力されたデータ信号に対する符号化を行う。ここで、符号化方法としては、ターボ符号を用いても良いし、畳み込み符号を用いても良いし、LDPC符号を用いても良く、本発明は符号化方法に係わりなく実施可能である。符号化部331は、符号化が行われたデータ信号をインタリーブ部332に入力する。
【0044】
インタリーブ部332は、符号化部331から入力されたデータ信号に対するインタリーブを行う。ここで、インタリーブ方法としては、いずれの方法を用いて良く、本発明はインタリーブ方法に係りなく実施可能である。インタリーブ部332は、インタリーブが行われたデータ信号を直並列変換部333に入力する。
【0045】
直並列変換部333は、インタリーブ部332から入力されたデータ信号系列を、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr分のデータ信号に並列変換する。直並列変換部333は、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎のデータ信号を、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎に設けられた信号変調部334に入力する。
【0046】
各信号変調部334は、直並列変換部333から入力されたデータ信号に対して多値変調を行う。ここで、変調多値数は、固定的であってもよいし、チャネルの状況に応じて適応的に変更されてもよい。各信号変調部334は、多値変調が行われたデータ信号をプリコーディング部34に入力する。
【0047】
プリコーディング部34は、無線端末数Nu個の変調部33の各信号変調部334から入力されたデータ信号に対して、プリコーディングを行う。プリコーディング部34は、入力された指向性パタン選択情報に応じて協調可能なクラスタで(同一周波数で隣接セルのセクタとビームが向き合うセクタ)マルチユーザMIMO(BD-ZF, ZF等)・Coordinated Beamforming(CB)等による複数セル同時プリコーディグを選択し,そして指向性パタン選択情報に応じて干渉回避可能なセクタでは(同一周波数で隣接セルのセクタとビームが向き合わないセクタ)シングルセルMIMO・Beamforming等によるシングルセルプリコーディングを選択する。プリコーディング部34は、入力されたデータ信号に対して、選択されたプリコーディング用の送信ウェイトを乗算し、集約局30配下のM個の無線基地局10の総アンテナ素子数Nt分のデータ信号(すなわち、無線基地局数M×各無線基地局10のアンテナ素子数Nt分のデータ信号)を生成する。プリコーディング部34で生成されたM×Nt個のデータ信号は、M個の無線基地局10毎に設けられた第1送信部35乃至第M送信部35にそれぞれ入力する。
【0048】
送信部35は、各無線基地局10のアンテナ素子数Nt毎に、逆フーリエ変換部351と、並直列変換部352と、ガードインターバル挿入部353と、搬送波周波数変調部354と、電気−光変換部355とを具備する。
【0049】
逆フーリエ変換部351は、プリコーディング部34から入力されたデータ信号を周波数領域から時間領域に変換する。逆フーリエ変換部351は、時間領域に変換されたデータ信号を並直列変換部352に変換する。
【0050】
並直列変換部352は、逆フーリエ変換部351から入力された、サブキャリア数L及びアンテナ素子分のデータ信号系列をアンテナ素子数Nt分のデータ信号系列に直列変換する。並直列変換部352は、アンテナ素子数Nt毎のデータ信号系列を、アンテナ素子数Nt毎に設けられたガードインターバル挿入部353に入力する。
【0051】
ガードインターバル挿入部353は、並直列変換部352から入力されたデータ信号系列に対してガードインターバルを挿入し、ガードインターバルが挿入されたデータ信号系列を搬送波周波数変調部354に入力する。
【0052】
搬送波周波数変調部354は、ガードインターバル挿入部353から入力されたデータ信号系列を搬送波周波数に変調し、変調されたデータ信号を電気−光変換部355に入力する。
【0053】
電気−光変換部355は、搬送波周波数変調部354から入力されたデータ信号を電気信号から光信号に変調し、変調されたデータ信号を、光ファイバ20を介して無線基地局10に入力する。
【0054】
≪本実施形態に係る無線基地局10の機能構成≫
各無線基地局10は、集約局30に光ファイバ20を介して接続されている。無線基地局10は、Nt個のアンテナ素子11と、Nt個のアンテナ素子11にそれぞれ接続されるNt個の光−電気変換部12と、を具備する。
【0055】
光−電気変換部12は、集約局30から光ファイバ20を介して入力されたデータ信号を光信号から電気信号に復調し、復調されたデータ信号をアンテナ素子11に入力する。アンテナ素子11に入力されたデータ信号は、空間に放射される。
【0056】
以上のように、集約局30において各無線基地局10の個々のアンテナ素子11へ入力されるデータ信号を生成しており、プリコーディング部34におけるプリコーディングによって各無線基地局10から送信される指向性ビームの方向が制御される。たとえば、第1無線基地局が協調対象無線基地局である場合は、第1無線基地局の各アンテナ素子へ供給される送信データをプリコーディングして第1無線基地局から放射される指向性ビームが、干渉重畳型指向性パタン2b、1bとなるように制御する。また第2無線基地局が通常無線基地局である場合は、第2無線基地局の各アンテナ素子へ供給される送信データをプリコーディングして第2無線基地局から放射される指向性ビームが、干渉回避型指向性パタン1a、2aとなるように制御する。
【0057】
<本実施形態に係る無線通信システムの動作>
次に、以上のように構成された無線通信システムにおける送信方法について説明する。図10は、本実施形態に係る無線通信システムにおけるシーケンス図である。ここで、本シーケンス図では、無線基地局10−1及び10−2がクラスタ内に在圏する無線端末50−1及び50−2に対して信号を送信するものとする。
【0058】
集約局30は、無線基地局10−1及び10−2に対してチャネル推定用の参照信号を送信する(ステップS101)。無線基地局10−1は、自局に接続する無線端末50−1及び50−2(すなわち、協調エリアCL1〜CL6に在圏する無線端末50)に対して、集約局30からの参照信号を送信する(ステップS102)。同様に、無線基地局10−2は、自局に接続する無線端末50−1及び50−2に対して、集約局30からの参照信号を送信する(ステップS103、S104)。
【0059】
無線端末50−1及び50−2は、各無線基地局10−1及び10−2から受信した参照信号を用いてチャネル推定を行い、チャネル推定結果であるチャネル情報を各無線基地局10−1及び10−2に送信する(ステップS105)。ここで、無線端末50−1及び50−2は、チャネル情報として、全周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよいし、上り回線の逼迫を防ぐために、一部の周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよい。
【0060】
各無線基地局10−1及び10−2は、無線端末50−1及び50−2から受信したチャネル情報をそれぞれ集約局30に送信する(ステップS106)。集約局30は、各無線基地局10−1及び10−2から受信したチャネル情報に基づいて、MIMO伝送処理用にプリコーディングを行い、プリコーディングが行われた無線端末50−1及び50−2宛てのデータ信号を無線基地局10−1及び10−2に送信する(ステップS107)。
【0061】
ここで、図1に示すクラスタ内に無線端末50−1及び50−2が在圏していて、無線端末50−1及び50−2に対して複数の無線基地局10−1及び10−2が協調送信する場合の動作について説明する。無線基地局決定部41又は上位システムがクラスタ内に在圏している無線端末50−1及び50−2に対して複数の無線基地局10−1乃至10−2から送信データを協調送信することを選択したものとしている。無線基地局決定部41は、図1に示すクラスタで協調の中心となる協調対象無線基地局としてセル中央の無線基地局10−1を選択し、通常無線基地局として周囲に配置された無線基地局10−2を選択する。
【0062】
指向性パタン決定部31は、通常無線基地局10−2に対して干渉回避型指向性パタン1a,2aを割り当てる。奇数周波数ブロックに対して干渉回避型指向性パタン1aを割り当て、偶数周波数ブロックに対して干渉回避型指向性パタン2aを割り当てる。また、協調対象無線基地局10−1に対して干渉重畳型指向性パタン1b,2bを割り当てる(図7)。奇数周波数ブロックに対して干渉重畳型指向性パタン2bを割り当て、偶数周波数ブロックに対して干渉重畳型指向性パタン1bを割り当てる(図8)。
【0063】
クラスタ内に在圏している無線端末50−1が協調対象無線基地局10−1と通常無線基地局10−2のセルエッジにいる場合、例えば集約局30における第1送信部351が協調対象無線基地局10−1の各アンテナ素子に対する信号を送信処理し、第2送信部352が通常無線基地局10−2の各アンテナ素子に対する信号を送信処理する。
【0064】
プリコーディング部34は、無線端末50−1へ送信する送信データのうち協調対象無線基地局10−1の送信データに対して周波数ブロック毎に干渉重畳型指向性パタン1b,2bを適用してプリコーディングする。これにより、協調対象無線基地局10−1の各アンテナ素子に対応した第1送信部351へ入力される各送信データは、図5(a)(b)に示す指向性パタンとなるようにプリコーディングされた信号となる。また、プリコーディング部34は、無線端末50−1へ送信する送信データのうち通常無線基地局10−2の送信データに対して周波数ブロック毎に干渉回避型指向性パタン1a,2aを適用してプリコーディングする。これにより、通常無線基地局10−2の各アンテナ素子に対応した第2送信部352へ入力される各送信データは、図5(a)(b)に示す指向性パタンとなるようにプリコーディングされた信号となる。
【0065】
集約局30の第1送信部351から協調対象無線基地局10−1の各アンテナ素子に干渉重畳型指向性パタン1b,2bとなるようにプリコーディングされた送信データが与えられ、協調対象無線基地局10−1から干渉重畳型指向性パタン1b,2bの指向性ビームが送信される。これと同時に、集約局30の第2送信部352から通常無線基地局10−2の各アンテナ素子に干渉回避型指向性パタン1a,2aとなるようにプリコーディングされた送信データが与えられ、通常無線基地局10−2から干渉回避型指向性パタン1a,2aの指向性ビームが送信される。その結果、無線端末50−1が存在する協調対象無線基地局10−1と通常無線基地局10−2のセルエッジ付近は、図2及び図6に示すように、同一周波数領域で指向性ビームが向かい合こととなり、高い干渉重畳効果を奏する。一方、通常無線基地局10−2から隣接クラスタ方向に向けられる指向性ビームは干渉回避型指向性パタン1a,2aである。隣接クラスタにおいても無線基地局に対して干渉回避型指向性パタン1a,2aを適用していれば、高いクラスタ間干渉回避効果を期待できる。
【0066】
以上の無線通信システムにおいて、干渉重畳型の効果(ゲイン)が必要となるクラスタのみにおいて中央セルの協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンを干渉重畳型指向性パタン1b,2bにスイッチする(以下、ダイナミックスイッチという)。干渉重畳型の効果(ゲイン)が必要ないと判断されるクラスタではクラスタ内の全ての無線基地局10−1乃至10−7に割り当てる指向性パタンを干渉回避型指向性パタン1a,2aにする。中央セルの指向性パタンを干渉重畳型にスイッチする前は、全てのセルにおいて図4(a)(b)に示す干渉回避型指向性パタン1a,2aが適用される。そして、干渉重畳型の効果(ゲイン)が必要となるクラスタが発生した時点で、当該クラスタの中央セルの指向性パタンを干渉重畳型にスイッチする。スイッチのオン/オフは無線基地局決定部41が無線基地局10からの要求を受けて判断する。たとえば、無線基地局10からスループットの増大要求を受けたら、当該要求もとの無線基地局10が属するクラスタの中央セルの指向性パタンを干渉重畳型にスイッチする。
【0067】
ダイナミックスイッチのためのスイッチトリガ基準は、スループットの増大要求以外であっても良い。たとえば、セルエッジユーザからのスループット改善であっても良いし、トラヒック量の増大による平均スループット増大の要求であっても良い。また、協調送信の効果を発揮するために必要なチャネルに関するフィードバック情報を増大してよいセルユーザの発生をトリガとしても良い。
【0068】
図11は、干渉回避型のセル/セクタ構成によるセル展開をベースラインにして、スループット向上が必要なセルのみ指向性パタンをスイッチしたセル構成の一例を示している(ダイナミックスイッチ)。スループット向上が必要なセルとその周辺セルとでクラスタを構成している。クラスタ間では必ず周波数領域毎に指向性ビームが向かい合わないように調整されている。クラスタ内では協調エリアが形成されるのでスループット向上が図られる。
【0069】
図12は通常無線基地局と協調対象無線基地局が固定されたセル構成の一例を示している。クラスタ毎に中央の無線基地局を固定的に協調対象無線基地局とし、そのクラスタ内の周辺基地局を固定的に通常無線基地局としている(スタティックスイッチ)。このように、クラスタ毎に中央の協調対象無線基地局と通常無線基地局とに対して指向性パタンの割当てを固定的にしても良い。
【0070】
周波数ブロック毎にダイナミックスイッチ及びスタティックスイッチのスイッチングが可能であるが、以上の説明では周波数のスイッチ単位(粒度)が周波数ブロックである。周波数毎のスイッチングの単位を任意のサイズにすることができる。たとえば、LTEでは、複数のコンポーネントキャリア(最大20MHz)を組み合わせてシステム帯域を拡大する。図13(a)に示すように、周波数のスイッチングの単位をコンポーネントキャリア単位としても良い。また、図13(b)に示すように、コンポーネントキャリアを複数の(例えば2つ)のサブバンドに分割して使用するが、周波数のスイッチングの単位をサブバンド単位としても良い。また、LTEでは周波数リソースをリソースブロックの単位でリソース割り当てするが、図13(c)(d)に示すように周波数のスイッチングの単位をリソースブロック単位としても良い。なお、図13(c)に示すように2つのパタンを連続するリソースブロックに交互に割当てても良く、図13(d)に示すように同一のパタンを連続するリソースブロックに連続して割当てても良い。
【0071】
また、指向性パタンを、周波数ブロック(周波数領域)毎及び時間スロット(時間領域)毎に定めることもできる。図14には通常無線基地局の指向性パタンと周波数ブロックのマッピング例が示されており、図15には協調対象基地局の指向性パタンと周波数ブロックのマッピング例が示されている。たとえば、クラスタにおけるトラヒック量に基づいて、周波数領域毎及び時間領域に異なる指向性パタンを定めることにより、無線通信システムにおけるスループットを向上させることが可能となる。
【0072】
上述の実施形態の無線通信システムでは、通信方式としてOFDMA方式を用いたが、通信方式として通信方式としてシングルキャリアFDMA方式やCDMA方式を用いてもよい。通信方式としてシングルキャリアFDMA方式やCDMA方式を用いる場合、指向性パタンを周波数ブロック毎に選択する代わりに、搬送波周波数毎に選択することによって、本発明を適用することが可能である。
【0073】
また、上述の実施形態の協調送信方法においては、MU−MIMOプリコーディングを行うには、BD−ZF法やZero−Forcing法や非線形プリコーディング、最小2乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)などその他の方法を用いてプリコーディングを行ってもよい。
【0074】
以上の説明では、集約局におけるプリコーディング部でMIMO伝送処理用にプリコーディングして無線基地局毎に指向性パタンの送信データを生成しているが、上記実施の形態1で説明した集約局の機能を無線基地局に搭載しても良い。
【0075】
図16及び図17は実施の形態2に係る無線通信システムを示す図であり、図16は無線通信システムの概略構成図、図17は各無線基地局の機能ブロックを示している。
【0076】
本実施形態2の無線通信システムは、各無線基地局が集約局からMIMO伝送処理用にプリコーディングされた送信データを受け取るのではなく、各無線基地局がMIMO伝送処理用にプリコーディング機能を備える。無線通信システムは、同一構成を有する複数の無線基地局10(第1無線基地局から第M無線基地局)で構成されている。
【0077】
無線基地局10は、変調部33、プリコーディング部34、送信部35を備えている。これら各構成要素は前述した集約局30における対応する各機能要素と同一機能を有する。無線基地局10は、通常は指向性パタンとして干渉回避型の指向性パタン1a,2aが用いられ、協調の中心となる協調対象無線基地局となった場合に干渉回避型の指向性パタン1a,2aから干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチする。指向性パタンスイッチ部36は協調が必要であると判断された場合に指向性パタンを通常の指向性パタンである干渉回避型の指向性パタン1a,2aから干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチする。協調対象無線基地局を中心としてクラスタを形成する隣接する無線基地局に対して指向性パタンスイッチ情報交換手段37を介して指向性パタンを干渉重畳型の指向性パタン1b,2bへスイッチする旨を通知する。また、クラスタを形成する複数の無線基地局10−1から10−7は、データ送信前に協調の対象となる無線基地局のセクタ情報、各無線基地局が接続端末である無線端末50から受信したチャネル情報、協調送信の対象無線端末50への送信データを、送信データ・チャネル情報交換手段38を介して共有化する。
【0078】
指向性パタンスイッチ部36は、接続端末からの要求、送信データ・チャネル情報交換手段38を介して共有している無線基地局のセクタ情報、チャネル情報等から指向性パタンスイッチの要否を判断することができる。また、指向性パタンスイッチ部36は、隣接する無線基地局から指向性パタンスイッチ情報交換手段37を介して隣接する無線基地局が干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチした旨の通知を受ければ、プリコーディング部34でMIMO伝送処理用にプリコーディングを行い、協調対象無線基地局との間で干渉重畳型の指向性パタンとなる送信データを送信する。また、自局も隣接局も干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチしなければ、プリコーディング部34でMIMO伝送処理用にプリコーディングを行い、通常の指向性パタンである干渉回避型の指向性パタン1a,2aによる送信データを生成して送信する。
【0079】
なお、指向性パタンスイッチ情報交換手段37及び送信データ・チャネル情報交換手段38は、全ての無線基地局10が備えていても良いし、特定の無線基地局10だけが備えていて他の無線基地局へ必要な情報を通知するようにしても良い。
【符号の説明】
【0080】
10…無線基地局、20…光ファイバ、30…集約局、40…ネットワーク網、50…無線端末、11…アンテナ素子、12…光−電気変換部、31…指向性パタン選択部、32…信号分配部、33…変調部、34…プリコーディング部、35…送信部、36…指向性パタンスイッチ部、37…指向性パタンスイッチ情報交換手段、38…送信データ・チャネル情報交換手段、41…無線基地局決定部、331…符号化部、332…インタリーブ部、333…直並列変換部、334…信号変調部、351…逆フーリエ変換部、352…並直列変換部、353…ガードインターバル挿入部、354…搬送波周波数変調部、355…電気−光変換部、C、C1〜C7…セル、CL、CL1〜CL6…協調クラスタ、S1〜S6…セクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対する信号を送信する無線通信システム、部分的協調送信方法及び集約局に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ方式の移動無線通信システムでは、面的周波数利用効率を向上させるために、周波数繰返し回数を出来るだけ少なくすることが求められる。例えば、CDMA(Code Division Multiple Access)方式を用いた第3世代のセルラ方式では、隣接セルで同一周波数帯の電波を利用する1セル周波数繰返し(周波数繰返し回数=1)が実現されている。
【0003】
一方、次世代のセルラ方式の下り回線では、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が有力である。このOFDMA方式を用いたセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、隣接セル及び隣接セクタからの干渉が特性劣化の大きな原因となる。具体的には、隣接セル及び隣接セクタからの干渉電力の増加に伴いSINR(Signal−to―Interference and Noise power Ratio)が低下するため、特にMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)伝送を行う際にその効果を発揮することが難しくなる。
【0004】
したがって、OFDMA方式でMIMO伝送を行うセルラ方式において1セル周波数繰返しを用いる場合、MIMO伝送による著しいスループットの増大効果を得るためには、隣接セル及び隣接セクタからの干渉を回避する必要がある。
【0005】
そこで、上述のような場合の干渉回避技術として、複数の無線基地局を協調させて1以上の無線端末に対して信号を同時送信する協調送信が注目されている。この協調送信によると、協調する複数の無線基地局のセル又はセクタの集合によって形成される協調クラスタ内の空間を直交化できるので、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)が回避される(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。
【0006】
具体的には、非特許文献1に示された協調送信では、所定範囲に設置された複数の無線基地局が集約局に接続され、集約局が複数の無線基地局を協調させる。協調クラスタCLは、協調する複数の無線基地局のセルCの集合によって形成される。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、複数の無線基地局による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を回避することが可能になり、ユーザスループットが改善される。
【0007】
また、非特許文献2に示された協調送信では、隣接する3つの無線基地局が集約局に接続され、集約局が3つの無線基地局1を協調させる。協調クラスタCLは、協調する3つの無線基地局の隣接3セクタによって形成される。さらに、協調クラスタCLを形成する隣接3セクタは、各無線基地局1のセクタアンテナからのビームが向き合うように構成されている。協調クラスタCL内では、マルチユーザMIMO伝送により、3つの無線基地局による協調送信が行われる。このマルチユーザMIMO伝送用のプリコーディング方法を用いると、協調クラスタCL内の空間を直交化できるので、協調クラスタCL内の干渉を除去することが可能になり、ユーザスループット及びセルスループットが改善される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Benjebbour, M.Shirakabe, Y.Ohwatari, J.Hagiwara, and T.Ohya, “Evaluation of user throughput for MU-MIMO coordinated wireless networks,” IEEE PIMRC 2008, pp.1-5, Sept. 2008.
【非特許文献2】CMCC, “Downlink CoMP-MU-MIMO transmission schemes,” 3GPP RAN1 #56, R1-090922, Feb. 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、複数の無線基地局による協調送信を用いた上述の干渉回避技術では、協調クラスタ内の干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局間の干渉)を回避できるが、協調クラスタ外からの干渉(すなわち、協調送信を行う無線基地局以外からの干渉)を回避できないという問題点があった。
【0010】
また、隣接する無線基地局間で互いに隣接するセクタ間では同一周波数領域で指向性ビームが向かい合わないように指向性パタンを割り当てることにより、クラスタ間の干渉を回避するクラスタ間干渉回避型の指向性パタンを採用することも考えられる。しかしながら、クラスタ間干渉回避型の指向性パタンを適用したのでは、クラスタ内において干渉しなくなるので、クラスタ内の協調(干渉重畳)効果が低いという問題があった。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、クラスタ間干渉回避効果を高くできると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果を高くすることができる無線通信システム、部分的協調送信方法、集約局及び無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信システムは、それぞれ複数のセクタからなるセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する無線基地局決定部と、同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、前記各通常無線基地局が前記干渉回避型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを送信し、前記協調対象無線基地局が協調する前記通常無線基地局と同一の時間スロットで前記干渉重畳型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを送信する、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てるので、協調対象無線基地局及びその周囲の通常無線基地局セルで構成されるクラスタを複数配置する通信エリアにおいて、クラスタ間の干渉回避効果を高くできると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果も高くでき、システム全体でのスループットを上げることができる。
【0014】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記無線基地局決定部は、前記無線基地局の要求変化に応じて、前記協調対象無線基地局をダイナミックに決定してもよいし、協調対象無線基地局を固定としても良い。協調対象無線基地局をダイナミックに決定することにより無線基地局の要求変化に柔軟に対応することができ、また協調対象無線基地局を固定とすれば指向性パタン決定までの処理を簡素化できる。
【0015】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記協調対象無線基地局及び前記通常無線基地局は、プリコーディングを行うマルチユーザMIMO伝送又はセル間でビームフォーミングを協調するCoordinated Beamformingを用いて指向性ビームを形成する。
【0016】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、前記協調対象無線基地局及び前記通常無線基地局に対して前記周波数ブロック毎に前記干渉回避型の指向性パタン及び干渉重畳型の指向性パタンが割り当てられる。
【0017】
また、本発明は、上記無線通信システムにおいて、前記指向性パタン決定部は、前記周波数領域に加えて時間領域のそれぞれに対応させて、前記干渉回避型の指向性パタン及び前記干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、クラスタ間干渉回避型の指向性パタンによる高いクラスタ間干渉回避効果を実現できると共に、部分的にクラスタ内の干渉重畳効果を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態1に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態1に係る無線通信システムで形成される協調エリアを示す図である。
【図3】本実施形態1に係る指向性パタンを示す図である。
【図4】干渉回避型の指向性パタンだけを割当てたビームパタンを示す図である。
【図5】干渉回避型の指向性パタン及び干渉重畳型の指向性パタンを割当てたビームパタンを示す図である。
【図6】複数周波数の指向性パタンを組み合わせたクラスタパタンを示す図である。
【図7】通常無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図8】協調対象無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図9A】本実施形態1に係る集約局の機能ブロック図である。
【図9B】本実施形態1に係る無線基地局の機能ブロック図である。
【図10】本実施形態1に係る無線通信システムのシーケンス図である。
【図11】ダイナミックスイッチを適用した場合の協調エリアを形成するクラスタ配置を示す図である。
【図12】スタティックスイッチを適用した場合の協調エリアを形成するクラスタ配置を示す図である。
【図13】周波数のスイッチ単位(粒度)を例示した図である。
【図14】通常無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図15】協調対象無線基地局のビームパタンと周波数ブロックのマッピング例を示す図である。
【図16】本実施形態2に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図17】本実施形態2に係る無線基地局の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。
【0021】
<本実施形態に係る無線通信システムの全体概略構成>
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。本実施形態の無線通信システムは、複数の無線基地局10(10−1乃至10−7、…)と、複数の無線基地局10と光ファイバ20により接続される集約局30と、集約局30に接続されるネットワーク網40とから構成されている。中央部に配置された無線基地局10−1が形成する中央セルC−1と、中央の無線基地局10−1を囲むように配置された他の複数の無線基地局10−2乃至10−7が中央セルC−1の周囲に隣接して形成する複数の隣接セルセルC−2乃至C−7とで、1つのクラスタCLを形成している。図11、12に示すように、複数セルの集合であるクラスタCLが二次元的に配置されて広域の通信エリアが形成される。本実施の形態は、クラスタ間の干渉抑圧を実現すると共に、クラスタ内の干渉重畳能力を実現する無線通信システムである。
【0022】
図2(a)は、本実施形態に係る無線通信システムにおいて、クラスタ内に形成される部分的な協調エリアを示す図であり、図2(b)は1セルのセクタ構成を示す図である。本実施形態では、1セルは6セクタS1乃至S6で構成されるが、セクタ構成は6セクタに限定されない。
【0023】
中央セルを形成している無線基地局10−1が協調対象基地局となり、周辺の無線基地局10−2〜10−7が通常無線基地局となる。協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-2との間では、同一周波数領域(例えば、周波数f1)で指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して干渉重畳可能な協調エリアCL1を形成している。同様に、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-4との間では、周波数f1の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL3を形成し、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-6との間では、周波数f1の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL5を形成している。また、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-3との間では、周波数f1と異なる周波数f2の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL2を形成している。同様に、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-5との間では、周波数f2の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL4を形成し、協調対象基地局10−1と通常無線基地局10-7との間では、周波数f2の指向性ビームを互いに向き合う向きで送信して協調エリアCL6を形成している。
【0024】
協調エリアCL1〜CL6では、マルチユーザMIMO伝送により、無線基地局10−1〜10−7が、協調エリアCL1〜CL6に在圏する無線端末50に対する信号を同時送信する。このマルチユーザMIMO伝送のプリコーディング方法としてBD−ZF法等を用いることができる。マルチユーザMIMOプリコーディングにより、協調エリアCL1〜CL6の空間を直交化できるので、協調クラスタCL1内で協調送信を行う無線基地局10間の干渉を回避できる。マルチユーザMIMO伝送に代えて、セル間でビームフォーミングを協調するCoordinated Beamformingを用いても良い。
【0025】
本実施形態に係る無線通信システムでは、複数の指向性パタンの中から各クラスタに要求される干渉回避能力又は干渉重畳能力に対応して指向性パタンが無線基地局10に割り当てられる。図3は、本実施形態の無線通信システムで用いられる指向性パタンを示す図である。指向性パタン1a、1b(図3(1)(4))は、垂直方向を基準にして時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。また、指向性パタン2a、2b(図3(2)(3))は、垂直方向を基準にして反時計回りに30度、150度、270度の方向にピークを持つ3つの指向性ビームから構成される。
【0026】
図4(a)はクラスタを構成する各無線基地局10−1〜10−7に指向性パタン1aを割当てた状態を示している。全ての無線基地局10−1〜10−7が指向性パタン1aにしたがって例えば周波数f1の指向性ビームを送信する場合、同一周波数領域(f1)では隣接セル間で指向性ビームが向き合わないことになる。したがって、複数の無線基地局10から同時送信される指向性ビームがクラスタ内(特にセルエッジ付近)及びクラスタ間で干渉することを回避できる。
【0027】
図4(b)はクラスタを構成する各無線基地局10−1〜10−7に指向性パタン2aを割当てた状態を示している。全ての無線基地局10−1〜10−7が指向性パタン2aにしたがって例えば周波数f2の指向性ビームを送信する場合、同一周波数領域(f2)では隣接セル間で指向性ビームが向き合わないことになる。したがって、複数の無線基地局10から同時送信される指向性ビームがクラスタ内(特にセルエッジ付近)及びクラスタ間で干渉することを回避できる。
【0028】
上記した通り、指向性パタン1a、2aは、隣接セル間で指向性ビームが向き合わないように構成されており、指向性パタン1aと指向性パタン2aとでは異なる周波数領域に対応している。したがって、全ての無線基地局10−1〜10−7に指向性パタン1aと指向性パタン2aとを同時に割り当て、それぞれ該当周波数領域で指向性パタン1a及び指向性パタン2aにしたがって指向性ビームを同時送信したとしても、高いクラスタ内及びクラスタ間の干渉回避能力を実現できる。図4では1クラスタ内の指向性パタンだけを例示しているが、隣接するクラスタを構成する他の無線基地局10に対して指向性パタン1a及び指向性パタン2aを割り当てることで、隣接するクラスタ間でも高いクラスタ間干渉回避能力を実現できる。本明細書では、指向性パタン1a及び指向性パタン2aのことを干渉回避型指向性パタンと呼ぶこととする。
【0029】
本発明は、干渉回避型指向性パタンだけではクラスタ内干渉重畳能力が低下する不具合を補うために、干渉重畳能力が高いクラスタ内干渉重畳型の指向性パタンを部分的(具体的には、協調対象基地局10−1)に適用する。
【0030】
図4(a)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、中央セルC−1を形成する協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンを、指向性パタン1aから60度回転させる(フリッピング)。協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタン1aだけをフリッピングすることにより、図5(a)に示すように、協調対象無線基地局10−1とその周囲の幾つかの無線基地局(具体的には、通常無線基地局10−3、10−5、10−7)との間で同一周波数領域(周波数f1)で指向性ビームが向かい合う。すなわち、協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンだけをフリッピングすることにより、クラスタ内の一部に干渉重畳効果の高い協調エリア(図2のCL2、CL4、CL6)を形成することができる。同様に、図4(b)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタン2aだけをフリッピングすることにより、図5(b)に示すように協調対象無線基地局10−1といくつかの通常無線基地局10−2、10−4、10−6との間で指向性ビーム(周波数f2)が向かい合い、周波数領域f2においてもクラスタ内の一部に干渉重畳効果の高い協調エリア(図2のCL1、CL3、CL5)が形成されることになる。このように、周波数領域毎に協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンだけをフリッピングすることにより、周波数領域毎に干渉重畳効果の高い協調エリアを形成できる。
【0031】
図4(a)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、協調対象無線基地局10−1に対して図3に示す指向性パタン2b(指向性パタン1aと同一周波数領域f1で、かつ指向性ビームの方向が60度回転)を割り当てることにより、協調対象無線基地局10−1の指向性パタンだけをフリッピングした指向性パタンと同じパタンになる。同様に、図4(b)に示すクラスタ間干渉回避型のセル/セクタ構成において、協調対象無線基地局10−1に対して図3に示す指向性パタン1bを割り当てることにより、協調対象無線基地局10−1の指向性パタン2aだけをフリッピングした指向性パタンと同じになる。本明細書では、指向性パタン1b及び指向性パタン2bのことを干渉重畳型指向性パタンと呼ぶこととする。
【0032】
図6に示すように、通常無線基地局10−2〜10−7に対して周波数領域毎に干渉回避型指向性パタン1a、2aが割り当てられ、協調対象無線基地局10−1に対して周波数領域毎に干渉重畳型指向性パタン1b、2bが割り当てられる。これにより、クラスタ間では高い干渉回避効果を実現すると共に、協調対象無線基地局10−1を中心とするクラスタ内では高い干渉重畳能力を実現できる。
【0033】
次に、協調対象無線基地局10−1及び通常無線基地局10−2〜10−7の指向性パタンと複数の周波数領域とのマッピングについて説明する。
【0034】
図7は、通常無線基地局10−2〜10−7の指向性パタンと周波数ブロックのマッピングの例が示されている。上記した通り、通常無線基地局10−2〜10−7に対しては干渉回避型指向性パタンである指向性パタン1aまたは指向性パタン2aが割り当てられる。無線通信システムのシステム帯域を複数の周波数ブロックに分割し、奇数周波数ブロック2n+1(n=0,1,2,・・・)に対応して指向性パタン1aが定められ、偶数周波数ブロック2n(n=1,2,・・・)に対応して指向性パタン2aが定められている。周波数領域毎には時間軸方向で指向性パタンは固定である。OFDMA方式では、システム帯域を複数の周波数ブロックに分割して周波数ブロック単位で周波数リソースを扱うことができる。無線通信システムがOFDMA方式を採用している場合は、図7,8に示す周波数ブロックをOFDMA方式の周波数ブロックに対応させても良い。
【0035】
図8は協調対象無線基地局10−1の指向性パタンと周波数ブロックのマッピングの例が示されている。上記した通り、協調対象無線基地局10−1に対しては干渉重畳型指向性パタンである指向性パタン1b、2bが割り当てられる。奇数周波数ブロック2n+1(n=0,1,2,・・・)に対応して指向性パタン2bが定められ、偶数周波数ブロック2n(n=1,2,・・・)に対応して指向性パタン1bが定められている。協調対象無線基地局10−1に関して奇数周波数ブロック2n+1に指向性パタン2bが割り当てられているのは、通常無線基地局10−2〜10−7に関して奇数周波数ブロック2n+1に指向性パタン1aが割り当てられているからである(指向性パタン2bは指向性パタン1aとの関係では干渉重畳能力を発揮できる)。同様に、協調対象無線基地局10−1に関して偶数周波数ブロック2nに指向性パタン1bが割り当てられているのは、通常無線基地局10−2〜10−7に関して偶数周波数ブロック2nに指向性パタン2aが割り当てられているからである(指向性パタン1bは指向性パタン2aとの関係では干渉重畳能力を発揮できる)。周波数領域毎に時間軸方向で指向性パタンは固定である。
【0036】
このように、隣接する周波数ブロック間で干渉回避型指向性パタン1aと2aとを交互に切り替えると共に干渉重畳型指向性パタンパタン2bと1bとを交互に切り替えることにより、図6に示すクラスタ間干渉回避能力とラスタ内干渉重畳能力を同時に実現するクラスタパタンを構成できる。
【0037】
<本実施形態に係る無線通信システムの機能構成>
次に、本実施形態に係る無線通信システムを構成する集約局30及び各無線基地局10の機能構成について説明する。図9A、Bは、集約局30及び各無線基地局10の機能ブロック図である。本実施形態では、無線基地局10の数をM、各無線基地局10のアンテナ素子11の数をNt、無線端末50の数をNuとする。
【0038】
無線基地局決定部41は、通信対象となる無線端末50毎に、当該対象無線端末50に対して送信データを送信する無線基地局10を決定する。対象無線端末50に対して複数の無線基地局10から同時に協調送信する場合は複数の無線基地局10が決定される。対象無線端末50に対して同時送信する複数の無線基地局10から協調の中心となる協調対象無線基地局10−1と通常無線基地局10−2〜10−7とを決定する。協調対象無線基地局を決定するための方式は本発明では限定されない。システム設計段階または運用段階で定期的に協調対象無線基地局を決定して固定しても良いし、トラヒック量、基地局要求又は端末要求に基づいてダイナミックに決定しても良い。クラスタ中央の無線基地局10−1を協調対象無線基地局として選択し、協調対象無線基地局10−1の周囲に配置されて隣接セルを形成する無線基地局10を通常無線基地局10−2〜10−7に選択する。なお、無線基地局決定部41は、コアネットワーク側に配置しても良いし、集約局30内に配置しても良い。
【0039】
集約局30は、無線基地局決定部41が決定した協調対象無線基地局10−1に対して図8に示す干渉重畳型の指向性パタンを割り当て、通常無線基地局10−2〜10−7に対して図7に示す干渉回避型の指向性パタンを割り当てる。集約局30は、指向性パタン選択部31と、信号分配部32と、同一送信タイミングで送信する無線端末数Nu個の変調部33と、プリコーディング部34と、無線基地局数M個の送信部35とを具備する。
【0040】
指向性パタン選択部31は、通常無線基地局10−2〜10−7に対して周波数領域毎に干渉回避型指向性パタン1a又は2aを選択して割り当て、協調対象無線基地局10−1に対して周波数領域毎に干渉回避型指向性パタン1a又は2aとの関係では干渉重畳能力を発揮する干渉重畳型指向性パタン2b又は1bを選択して割り当てる。指向性パタン選択部31は、このような通常無線基地局及び協調対象無線基地局に対応した指向性パタン割当てを実現するため、図7に示すように周波数領域毎に対応した干渉回避型指向性パタン1a、2aと、図8に示すように周波数領域毎に対応した干渉重畳型指向性パタン2b、1bを指向性パタン選択情報として不図示のメモリに予め保持している。通常無線基地局10−2〜10−7に対して周波数領域毎に割当てた干渉回避型指向性パタン1a、2aからなる指向性パタン選択情報、並びに協調対象無線基地局10−1に対して周波数領域毎に割当てた干渉重畳型指向性パタン2b、1bからなる指向性パタン選択情報を、プリコーディング部34へ入力する。
【0041】
信号分配部32は、集約局30配下の全無線基地局10に接続される全無線端末50−1乃至50−Nuに対するデータ信号を、ネットワーク網40から受信し、ネットワーク網40から受信したデータ信号を無線端末50−1乃至50−Nuに分配する。信号分配部32は、Nu個の無線端末毎に分配されたデータ信号を、第1変調部33乃至第Nu変調部33にそれぞれ入力する。
【0042】
変調部33は、符号化部331と、インタリーブ部332と、直並列変換部333と、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr毎の信号変調部334(すなわち、サブキャリア数L×送信ストリーム数Nr個の信号変調部334)とを具備する。
【0043】
符号化部331は、所定の符号化方法を用いて、信号分配部32から入力されたデータ信号に対する符号化を行う。ここで、符号化方法としては、ターボ符号を用いても良いし、畳み込み符号を用いても良いし、LDPC符号を用いても良く、本発明は符号化方法に係わりなく実施可能である。符号化部331は、符号化が行われたデータ信号をインタリーブ部332に入力する。
【0044】
インタリーブ部332は、符号化部331から入力されたデータ信号に対するインタリーブを行う。ここで、インタリーブ方法としては、いずれの方法を用いて良く、本発明はインタリーブ方法に係りなく実施可能である。インタリーブ部332は、インタリーブが行われたデータ信号を直並列変換部333に入力する。
【0045】
直並列変換部333は、インタリーブ部332から入力されたデータ信号系列を、サブキャリア数L及び送信ストリーム数Nr分のデータ信号に並列変換する。直並列変換部333は、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎のデータ信号を、サブキャリア数L毎及び送信ストリーム数Nr毎に設けられた信号変調部334に入力する。
【0046】
各信号変調部334は、直並列変換部333から入力されたデータ信号に対して多値変調を行う。ここで、変調多値数は、固定的であってもよいし、チャネルの状況に応じて適応的に変更されてもよい。各信号変調部334は、多値変調が行われたデータ信号をプリコーディング部34に入力する。
【0047】
プリコーディング部34は、無線端末数Nu個の変調部33の各信号変調部334から入力されたデータ信号に対して、プリコーディングを行う。プリコーディング部34は、入力された指向性パタン選択情報に応じて協調可能なクラスタで(同一周波数で隣接セルのセクタとビームが向き合うセクタ)マルチユーザMIMO(BD-ZF, ZF等)・Coordinated Beamforming(CB)等による複数セル同時プリコーディグを選択し,そして指向性パタン選択情報に応じて干渉回避可能なセクタでは(同一周波数で隣接セルのセクタとビームが向き合わないセクタ)シングルセルMIMO・Beamforming等によるシングルセルプリコーディングを選択する。プリコーディング部34は、入力されたデータ信号に対して、選択されたプリコーディング用の送信ウェイトを乗算し、集約局30配下のM個の無線基地局10の総アンテナ素子数Nt分のデータ信号(すなわち、無線基地局数M×各無線基地局10のアンテナ素子数Nt分のデータ信号)を生成する。プリコーディング部34で生成されたM×Nt個のデータ信号は、M個の無線基地局10毎に設けられた第1送信部35乃至第M送信部35にそれぞれ入力する。
【0048】
送信部35は、各無線基地局10のアンテナ素子数Nt毎に、逆フーリエ変換部351と、並直列変換部352と、ガードインターバル挿入部353と、搬送波周波数変調部354と、電気−光変換部355とを具備する。
【0049】
逆フーリエ変換部351は、プリコーディング部34から入力されたデータ信号を周波数領域から時間領域に変換する。逆フーリエ変換部351は、時間領域に変換されたデータ信号を並直列変換部352に変換する。
【0050】
並直列変換部352は、逆フーリエ変換部351から入力された、サブキャリア数L及びアンテナ素子分のデータ信号系列をアンテナ素子数Nt分のデータ信号系列に直列変換する。並直列変換部352は、アンテナ素子数Nt毎のデータ信号系列を、アンテナ素子数Nt毎に設けられたガードインターバル挿入部353に入力する。
【0051】
ガードインターバル挿入部353は、並直列変換部352から入力されたデータ信号系列に対してガードインターバルを挿入し、ガードインターバルが挿入されたデータ信号系列を搬送波周波数変調部354に入力する。
【0052】
搬送波周波数変調部354は、ガードインターバル挿入部353から入力されたデータ信号系列を搬送波周波数に変調し、変調されたデータ信号を電気−光変換部355に入力する。
【0053】
電気−光変換部355は、搬送波周波数変調部354から入力されたデータ信号を電気信号から光信号に変調し、変調されたデータ信号を、光ファイバ20を介して無線基地局10に入力する。
【0054】
≪本実施形態に係る無線基地局10の機能構成≫
各無線基地局10は、集約局30に光ファイバ20を介して接続されている。無線基地局10は、Nt個のアンテナ素子11と、Nt個のアンテナ素子11にそれぞれ接続されるNt個の光−電気変換部12と、を具備する。
【0055】
光−電気変換部12は、集約局30から光ファイバ20を介して入力されたデータ信号を光信号から電気信号に復調し、復調されたデータ信号をアンテナ素子11に入力する。アンテナ素子11に入力されたデータ信号は、空間に放射される。
【0056】
以上のように、集約局30において各無線基地局10の個々のアンテナ素子11へ入力されるデータ信号を生成しており、プリコーディング部34におけるプリコーディングによって各無線基地局10から送信される指向性ビームの方向が制御される。たとえば、第1無線基地局が協調対象無線基地局である場合は、第1無線基地局の各アンテナ素子へ供給される送信データをプリコーディングして第1無線基地局から放射される指向性ビームが、干渉重畳型指向性パタン2b、1bとなるように制御する。また第2無線基地局が通常無線基地局である場合は、第2無線基地局の各アンテナ素子へ供給される送信データをプリコーディングして第2無線基地局から放射される指向性ビームが、干渉回避型指向性パタン1a、2aとなるように制御する。
【0057】
<本実施形態に係る無線通信システムの動作>
次に、以上のように構成された無線通信システムにおける送信方法について説明する。図10は、本実施形態に係る無線通信システムにおけるシーケンス図である。ここで、本シーケンス図では、無線基地局10−1及び10−2がクラスタ内に在圏する無線端末50−1及び50−2に対して信号を送信するものとする。
【0058】
集約局30は、無線基地局10−1及び10−2に対してチャネル推定用の参照信号を送信する(ステップS101)。無線基地局10−1は、自局に接続する無線端末50−1及び50−2(すなわち、協調エリアCL1〜CL6に在圏する無線端末50)に対して、集約局30からの参照信号を送信する(ステップS102)。同様に、無線基地局10−2は、自局に接続する無線端末50−1及び50−2に対して、集約局30からの参照信号を送信する(ステップS103、S104)。
【0059】
無線端末50−1及び50−2は、各無線基地局10−1及び10−2から受信した参照信号を用いてチャネル推定を行い、チャネル推定結果であるチャネル情報を各無線基地局10−1及び10−2に送信する(ステップS105)。ここで、無線端末50−1及び50−2は、チャネル情報として、全周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよいし、上り回線の逼迫を防ぐために、一部の周波数領域のチャネル推定結果を送信してもよい。
【0060】
各無線基地局10−1及び10−2は、無線端末50−1及び50−2から受信したチャネル情報をそれぞれ集約局30に送信する(ステップS106)。集約局30は、各無線基地局10−1及び10−2から受信したチャネル情報に基づいて、MIMO伝送処理用にプリコーディングを行い、プリコーディングが行われた無線端末50−1及び50−2宛てのデータ信号を無線基地局10−1及び10−2に送信する(ステップS107)。
【0061】
ここで、図1に示すクラスタ内に無線端末50−1及び50−2が在圏していて、無線端末50−1及び50−2に対して複数の無線基地局10−1及び10−2が協調送信する場合の動作について説明する。無線基地局決定部41又は上位システムがクラスタ内に在圏している無線端末50−1及び50−2に対して複数の無線基地局10−1乃至10−2から送信データを協調送信することを選択したものとしている。無線基地局決定部41は、図1に示すクラスタで協調の中心となる協調対象無線基地局としてセル中央の無線基地局10−1を選択し、通常無線基地局として周囲に配置された無線基地局10−2を選択する。
【0062】
指向性パタン決定部31は、通常無線基地局10−2に対して干渉回避型指向性パタン1a,2aを割り当てる。奇数周波数ブロックに対して干渉回避型指向性パタン1aを割り当て、偶数周波数ブロックに対して干渉回避型指向性パタン2aを割り当てる。また、協調対象無線基地局10−1に対して干渉重畳型指向性パタン1b,2bを割り当てる(図7)。奇数周波数ブロックに対して干渉重畳型指向性パタン2bを割り当て、偶数周波数ブロックに対して干渉重畳型指向性パタン1bを割り当てる(図8)。
【0063】
クラスタ内に在圏している無線端末50−1が協調対象無線基地局10−1と通常無線基地局10−2のセルエッジにいる場合、例えば集約局30における第1送信部351が協調対象無線基地局10−1の各アンテナ素子に対する信号を送信処理し、第2送信部352が通常無線基地局10−2の各アンテナ素子に対する信号を送信処理する。
【0064】
プリコーディング部34は、無線端末50−1へ送信する送信データのうち協調対象無線基地局10−1の送信データに対して周波数ブロック毎に干渉重畳型指向性パタン1b,2bを適用してプリコーディングする。これにより、協調対象無線基地局10−1の各アンテナ素子に対応した第1送信部351へ入力される各送信データは、図5(a)(b)に示す指向性パタンとなるようにプリコーディングされた信号となる。また、プリコーディング部34は、無線端末50−1へ送信する送信データのうち通常無線基地局10−2の送信データに対して周波数ブロック毎に干渉回避型指向性パタン1a,2aを適用してプリコーディングする。これにより、通常無線基地局10−2の各アンテナ素子に対応した第2送信部352へ入力される各送信データは、図5(a)(b)に示す指向性パタンとなるようにプリコーディングされた信号となる。
【0065】
集約局30の第1送信部351から協調対象無線基地局10−1の各アンテナ素子に干渉重畳型指向性パタン1b,2bとなるようにプリコーディングされた送信データが与えられ、協調対象無線基地局10−1から干渉重畳型指向性パタン1b,2bの指向性ビームが送信される。これと同時に、集約局30の第2送信部352から通常無線基地局10−2の各アンテナ素子に干渉回避型指向性パタン1a,2aとなるようにプリコーディングされた送信データが与えられ、通常無線基地局10−2から干渉回避型指向性パタン1a,2aの指向性ビームが送信される。その結果、無線端末50−1が存在する協調対象無線基地局10−1と通常無線基地局10−2のセルエッジ付近は、図2及び図6に示すように、同一周波数領域で指向性ビームが向かい合こととなり、高い干渉重畳効果を奏する。一方、通常無線基地局10−2から隣接クラスタ方向に向けられる指向性ビームは干渉回避型指向性パタン1a,2aである。隣接クラスタにおいても無線基地局に対して干渉回避型指向性パタン1a,2aを適用していれば、高いクラスタ間干渉回避効果を期待できる。
【0066】
以上の無線通信システムにおいて、干渉重畳型の効果(ゲイン)が必要となるクラスタのみにおいて中央セルの協調対象無線基地局10−1に割り当てる指向性パタンを干渉重畳型指向性パタン1b,2bにスイッチする(以下、ダイナミックスイッチという)。干渉重畳型の効果(ゲイン)が必要ないと判断されるクラスタではクラスタ内の全ての無線基地局10−1乃至10−7に割り当てる指向性パタンを干渉回避型指向性パタン1a,2aにする。中央セルの指向性パタンを干渉重畳型にスイッチする前は、全てのセルにおいて図4(a)(b)に示す干渉回避型指向性パタン1a,2aが適用される。そして、干渉重畳型の効果(ゲイン)が必要となるクラスタが発生した時点で、当該クラスタの中央セルの指向性パタンを干渉重畳型にスイッチする。スイッチのオン/オフは無線基地局決定部41が無線基地局10からの要求を受けて判断する。たとえば、無線基地局10からスループットの増大要求を受けたら、当該要求もとの無線基地局10が属するクラスタの中央セルの指向性パタンを干渉重畳型にスイッチする。
【0067】
ダイナミックスイッチのためのスイッチトリガ基準は、スループットの増大要求以外であっても良い。たとえば、セルエッジユーザからのスループット改善であっても良いし、トラヒック量の増大による平均スループット増大の要求であっても良い。また、協調送信の効果を発揮するために必要なチャネルに関するフィードバック情報を増大してよいセルユーザの発生をトリガとしても良い。
【0068】
図11は、干渉回避型のセル/セクタ構成によるセル展開をベースラインにして、スループット向上が必要なセルのみ指向性パタンをスイッチしたセル構成の一例を示している(ダイナミックスイッチ)。スループット向上が必要なセルとその周辺セルとでクラスタを構成している。クラスタ間では必ず周波数領域毎に指向性ビームが向かい合わないように調整されている。クラスタ内では協調エリアが形成されるのでスループット向上が図られる。
【0069】
図12は通常無線基地局と協調対象無線基地局が固定されたセル構成の一例を示している。クラスタ毎に中央の無線基地局を固定的に協調対象無線基地局とし、そのクラスタ内の周辺基地局を固定的に通常無線基地局としている(スタティックスイッチ)。このように、クラスタ毎に中央の協調対象無線基地局と通常無線基地局とに対して指向性パタンの割当てを固定的にしても良い。
【0070】
周波数ブロック毎にダイナミックスイッチ及びスタティックスイッチのスイッチングが可能であるが、以上の説明では周波数のスイッチ単位(粒度)が周波数ブロックである。周波数毎のスイッチングの単位を任意のサイズにすることができる。たとえば、LTEでは、複数のコンポーネントキャリア(最大20MHz)を組み合わせてシステム帯域を拡大する。図13(a)に示すように、周波数のスイッチングの単位をコンポーネントキャリア単位としても良い。また、図13(b)に示すように、コンポーネントキャリアを複数の(例えば2つ)のサブバンドに分割して使用するが、周波数のスイッチングの単位をサブバンド単位としても良い。また、LTEでは周波数リソースをリソースブロックの単位でリソース割り当てするが、図13(c)(d)に示すように周波数のスイッチングの単位をリソースブロック単位としても良い。なお、図13(c)に示すように2つのパタンを連続するリソースブロックに交互に割当てても良く、図13(d)に示すように同一のパタンを連続するリソースブロックに連続して割当てても良い。
【0071】
また、指向性パタンを、周波数ブロック(周波数領域)毎及び時間スロット(時間領域)毎に定めることもできる。図14には通常無線基地局の指向性パタンと周波数ブロックのマッピング例が示されており、図15には協調対象基地局の指向性パタンと周波数ブロックのマッピング例が示されている。たとえば、クラスタにおけるトラヒック量に基づいて、周波数領域毎及び時間領域に異なる指向性パタンを定めることにより、無線通信システムにおけるスループットを向上させることが可能となる。
【0072】
上述の実施形態の無線通信システムでは、通信方式としてOFDMA方式を用いたが、通信方式として通信方式としてシングルキャリアFDMA方式やCDMA方式を用いてもよい。通信方式としてシングルキャリアFDMA方式やCDMA方式を用いる場合、指向性パタンを周波数ブロック毎に選択する代わりに、搬送波周波数毎に選択することによって、本発明を適用することが可能である。
【0073】
また、上述の実施形態の協調送信方法においては、MU−MIMOプリコーディングを行うには、BD−ZF法やZero−Forcing法や非線形プリコーディング、最小2乗誤差(MMSE:Minimum Mean Square Error)などその他の方法を用いてプリコーディングを行ってもよい。
【0074】
以上の説明では、集約局におけるプリコーディング部でMIMO伝送処理用にプリコーディングして無線基地局毎に指向性パタンの送信データを生成しているが、上記実施の形態1で説明した集約局の機能を無線基地局に搭載しても良い。
【0075】
図16及び図17は実施の形態2に係る無線通信システムを示す図であり、図16は無線通信システムの概略構成図、図17は各無線基地局の機能ブロックを示している。
【0076】
本実施形態2の無線通信システムは、各無線基地局が集約局からMIMO伝送処理用にプリコーディングされた送信データを受け取るのではなく、各無線基地局がMIMO伝送処理用にプリコーディング機能を備える。無線通信システムは、同一構成を有する複数の無線基地局10(第1無線基地局から第M無線基地局)で構成されている。
【0077】
無線基地局10は、変調部33、プリコーディング部34、送信部35を備えている。これら各構成要素は前述した集約局30における対応する各機能要素と同一機能を有する。無線基地局10は、通常は指向性パタンとして干渉回避型の指向性パタン1a,2aが用いられ、協調の中心となる協調対象無線基地局となった場合に干渉回避型の指向性パタン1a,2aから干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチする。指向性パタンスイッチ部36は協調が必要であると判断された場合に指向性パタンを通常の指向性パタンである干渉回避型の指向性パタン1a,2aから干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチする。協調対象無線基地局を中心としてクラスタを形成する隣接する無線基地局に対して指向性パタンスイッチ情報交換手段37を介して指向性パタンを干渉重畳型の指向性パタン1b,2bへスイッチする旨を通知する。また、クラスタを形成する複数の無線基地局10−1から10−7は、データ送信前に協調の対象となる無線基地局のセクタ情報、各無線基地局が接続端末である無線端末50から受信したチャネル情報、協調送信の対象無線端末50への送信データを、送信データ・チャネル情報交換手段38を介して共有化する。
【0078】
指向性パタンスイッチ部36は、接続端末からの要求、送信データ・チャネル情報交換手段38を介して共有している無線基地局のセクタ情報、チャネル情報等から指向性パタンスイッチの要否を判断することができる。また、指向性パタンスイッチ部36は、隣接する無線基地局から指向性パタンスイッチ情報交換手段37を介して隣接する無線基地局が干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチした旨の通知を受ければ、プリコーディング部34でMIMO伝送処理用にプリコーディングを行い、協調対象無線基地局との間で干渉重畳型の指向性パタンとなる送信データを送信する。また、自局も隣接局も干渉重畳型の指向性パタン1b,2bにスイッチしなければ、プリコーディング部34でMIMO伝送処理用にプリコーディングを行い、通常の指向性パタンである干渉回避型の指向性パタン1a,2aによる送信データを生成して送信する。
【0079】
なお、指向性パタンスイッチ情報交換手段37及び送信データ・チャネル情報交換手段38は、全ての無線基地局10が備えていても良いし、特定の無線基地局10だけが備えていて他の無線基地局へ必要な情報を通知するようにしても良い。
【符号の説明】
【0080】
10…無線基地局、20…光ファイバ、30…集約局、40…ネットワーク網、50…無線端末、11…アンテナ素子、12…光−電気変換部、31…指向性パタン選択部、32…信号分配部、33…変調部、34…プリコーディング部、35…送信部、36…指向性パタンスイッチ部、37…指向性パタンスイッチ情報交換手段、38…送信データ・チャネル情報交換手段、41…無線基地局決定部、331…符号化部、332…インタリーブ部、333…直並列変換部、334…信号変調部、351…逆フーリエ変換部、352…並直列変換部、353…ガードインターバル挿入部、354…搬送波周波数変調部、355…電気−光変換部、C、C1〜C7…セル、CL、CL1〜CL6…協調クラスタ、S1〜S6…セクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数のセクタからなるセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、
前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する無線基地局決定部と、
同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、
前記各通常無線基地局が前記干渉回避型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、前記協調対象無線基地局が協調する前記通常無線基地局と同一の時間スロットで前記干渉重畳型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、前記協調対象無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う前記通常無線基地局の間に形成された前記指向性ビーム間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線基地局決定部は、前記無線基地局の要求変化に応じて、前記協調対象無線基地局をダイナミックに決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記協調対象無線基地局は、固定であることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記協調対象無線基地局の指向性ビームと向き合う前記通常無線基地局の指向性ビーム間で、同時送信マルチユーザMIMO伝送又はセル間でビームフォーミングを協調するCoordinated Beamformingを用いてデータの協調送信をする、ことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、前記協調対象無線基地局及び前記通常無線基地局に対して前記周波数ブロック毎に前記干渉回避型の指向性パタン及び干渉重畳型の指向性パタンが割り当てられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記指向性パタン決定部は、前記周波数領域に加えて時間領域のそれぞれに対応させて、前記干渉回避型の指向性パタン及び前記干渉重畳型の指向性パタンを割り当てることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
それぞれの通信エリアを複数のセクタで構成している複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおける部分的協調送信方法であり、
前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する工程と、
同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められ、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる工程と、を具備し、
前記各通常無線基地局が前記干渉回避型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、前記協調対象無線基地局が協調する前記通常無線基地局と同一の時間スロットで前記干渉重畳型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成する工程と、
前記協調対象無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う前記通常無線基地局の間に形成された前記指向性ビーム間で、マルチユーザMIMO伝送によりセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする部分的協調送信方法。
【請求項8】
それぞれ複数のセクタからなるセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて前記各無線基地局と接続される集約局であり、
前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する無線基地局決定部と、
同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、前記協調対象無線基地局に対して当該協調対象無線基地局が形成する指向性ビームが前記干渉重畳型の指向性パタンとなる送信データを送信し、前記通常無線基地局に対して当該通常無線基地局が形成する指向性ビームが前記干渉回避型の指向性パタンとなる送信データを送信する送信手段と、を具備したことを特徴とする集約局。
【請求項9】
通常の指向性パタンとして干渉回避型の指向性パタンが用いられ、協調の中心となる協調対象無線基地局となった場合に前記干渉回避型の指向性パタンから干渉重畳型の指向性パタンにスイッチする指向性パタンスイッチ部と、
前記指向性パタンスイッチ部が指向性パタンを前記干渉重畳型の指向性パタンにスイッチした場合、隣接する無線基地局に対して指向性ビームをスイッチする旨を通知する通知手段と、
データ送信前に協調の対象となる無線基地局のセクタとチャネル情報及び又は送信データを共有する共有手段と、
前記協調対象無線基地局となった場合に当該協調対象無線基地局の送信する指向性ビームと同一周波数で向き合う隣接する無線基地局の指向性ビームとの間が干渉重畳型の指向性パタンとなる送信データを送信し、通常の無線基地局である場合は当該通常無線基地局の送信する指向性ビームと同一周波数で向き合わない隣接する無線基地局の指向性ビームとの間が前記干渉回避型の指向性パタンとなる送信データを送信する送信手段と、
を具備したことを特徴とする無線基地局。
【請求項1】
それぞれ複数のセクタからなるセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムであり、
前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する無線基地局決定部と、
同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、を具備し、
前記各通常無線基地局が前記干渉回避型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、前記協調対象無線基地局が協調する前記通常無線基地局と同一の時間スロットで前記干渉重畳型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、前記協調対象無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う前記通常無線基地局の間に形成された前記指向性ビーム間で、マルチユーザMIMO伝送によるセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線基地局決定部は、前記無線基地局の要求変化に応じて、前記協調対象無線基地局をダイナミックに決定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記協調対象無線基地局は、固定であることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記協調対象無線基地局の指向性ビームと向き合う前記通常無線基地局の指向性ビーム間で、同時送信マルチユーザMIMO伝送又はセル間でビームフォーミングを協調するCoordinated Beamformingを用いてデータの協調送信をする、ことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記複数の周波数領域は、OFDMA方式の複数の周波数ブロックであり、前記協調対象無線基地局及び前記通常無線基地局に対して前記周波数ブロック毎に前記干渉回避型の指向性パタン及び干渉重畳型の指向性パタンが割り当てられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記指向性パタン決定部は、前記周波数領域に加えて時間領域のそれぞれに対応させて、前記干渉回避型の指向性パタン及び前記干渉重畳型の指向性パタンを割り当てることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
それぞれの通信エリアを複数のセクタで構成している複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおける部分的協調送信方法であり、
前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する工程と、
同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められ、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる工程と、を具備し、
前記各通常無線基地局が前記干渉回避型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成し、前記協調対象無線基地局が協調する前記通常無線基地局と同一の時間スロットで前記干渉重畳型の指向性パタンにしたがって指向性ビームを形成する工程と、
前記協調対象無線基地局の指向性ビームと同一周波数で向き合う前記通常無線基地局の間に形成された前記指向性ビーム間で、マルチユーザMIMO伝送によりセクタ間のデータ送信協調をする、ことを特徴とする部分的協調送信方法。
【請求項8】
それぞれ複数のセクタからなるセルを形成する複数の無線基地局を備えた無線通信システムにおいて前記各無線基地局と接続される集約局であり、
前記複数の無線基地局から協調の中心となる協調対象無線基地局と当該協調対象無線基地局周囲の通常無線基地局とを決定する無線基地局決定部と、
同一周波数領域では隣接セル間で指向性ビームが向き合わない干渉回避型の指向性パタンが、複数の周波数領域のそれぞれに対応して定められており、前記複数の通常無線基地局に対して周波数領域毎に前記干渉回避型の指向性パタンを割り当て、前記協調対象無線基地局に対して前記各干渉回避型の指向性パタンに対して同一周波数領域では指向性ビームが向き合う干渉重畳型の指向性パタンを割り当てる指向性パタン決定部と、前記協調対象無線基地局に対して当該協調対象無線基地局が形成する指向性ビームが前記干渉重畳型の指向性パタンとなる送信データを送信し、前記通常無線基地局に対して当該通常無線基地局が形成する指向性ビームが前記干渉回避型の指向性パタンとなる送信データを送信する送信手段と、を具備したことを特徴とする集約局。
【請求項9】
通常の指向性パタンとして干渉回避型の指向性パタンが用いられ、協調の中心となる協調対象無線基地局となった場合に前記干渉回避型の指向性パタンから干渉重畳型の指向性パタンにスイッチする指向性パタンスイッチ部と、
前記指向性パタンスイッチ部が指向性パタンを前記干渉重畳型の指向性パタンにスイッチした場合、隣接する無線基地局に対して指向性ビームをスイッチする旨を通知する通知手段と、
データ送信前に協調の対象となる無線基地局のセクタとチャネル情報及び又は送信データを共有する共有手段と、
前記協調対象無線基地局となった場合に当該協調対象無線基地局の送信する指向性ビームと同一周波数で向き合う隣接する無線基地局の指向性ビームとの間が干渉重畳型の指向性パタンとなる送信データを送信し、通常の無線基地局である場合は当該通常無線基地局の送信する指向性ビームと同一周波数で向き合わない隣接する無線基地局の指向性ビームとの間が前記干渉回避型の指向性パタンとなる送信データを送信する送信手段と、
を具備したことを特徴とする無線基地局。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−34052(P2012−34052A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169761(P2010−169761)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】
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