説明

無線通信システムおよび移動無線端末装置

【課題】複数の通信方式でサービスが提供され、サービスエリアが狭い通信方式が含まれる場合でも、そのサービスエリアを効率よく探索し、消費電力を節約する。
【解決手段】基地局1x BSの形成するセルが基地局LTE BSが形成するセルと重なる度合いやその重なるセルの位置に応じて、基地局1x BSがField値を設定してこれを1xページング信号で送信する。これに対して、移動無線端末装置は、基地局LTE BSから1xページング信号を受信して、上記Field値に基づいて、現在位置する場所に、基地局LTE BSが存在するか否かを判断し、また基地局LTE BSが存在する場合には、サービスエリアE2の境界に位置する基地局か中心部に位置する基地局かを判断し、これらの判断結果に応じて、基地局LTE BSの探索を行うようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の無線接続方式を提供する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、CDMA2000 1x方式(例えば、非特許文献1参照)、EV-DO方式(例えば、非特許文献2参照)およびLTE(Long Term Evolution)方式(例えば、非特許文献3参照)の各無線接続方式に対応する移動無線端末装置およびこの移動無線端末装置に対応する無線通信システムの開発が進められている。この例の場合、CDMA2000 1xおよびEV-DOについては、そのサービスエリアの人口カバー率が約95%に達している。これに対して、新規に開発されるLTEについては、運用当初は、人口密度の高い都市部から順にサービス展開することが予想される。
【0003】
しかしながら、上述したようなマルチモードに対応する移動無線端末装置にあっては、新規のサービスのエリアは狭いことより、そのサービスエリア(基地局)を探索するために無駄に電力を消費してしまうという問題が生じうる。
【非特許文献1】Agilent Technologies社 2001 3G Workshop Part2、2001年1月16日、p2−35。
【非特許文献2】Agilent Technologies社 2001 3G Workshop Part2、2001年1月16日、p36−50。
【非特許文献3】Erik Dahlman著 Academic Press, 2007年、p.277−369。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の無線接続方式に対応するマルチモードの移動無線端末装置にあっては、新規のサービスのエリアは狭いことより、そのサービスエリア(基地局)を探索するために無駄に電力を消費する虞があるという問題があった。
【0005】
この発明は上記の問題を解決すべくなされたもので、複数の通信方式でサービスが提供され、サービスエリアが狭い通信方式が含まれる場合でも、そのサービスエリア(基地局)を効率よく探索し、かつ探索するために費やす電力を節約することが可能な無線通信システムおよび移動無線端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、第1の通信方式で無線通信する第1無線基地局を複数配設して第1のサービスエリアを形成するとともに、第2の通信方式で無線通信する第2無線基地局を複数配設して前記第1のサービスエリアよりも狭い第2のサービスエリアを形成し、移動無線端末装置をネットワークに無線接続する無線通信システムであって、前記第1無線基地局毎に、近傍に位置する第2無線基地局の存在を示す情報を記憶する記憶手段と、前記記憶手段が記憶する情報に基づく前記第2無線基地局の配設情報を、前記第1無線基地局を通じて前記移動無線端末装置に送信する送信手段とを具備して構成するようにした。
【発明の効果】
【0007】
以上述べたように、この発明では、第1無線基地局を通じて移動無線端末装置に、近傍に位置する第2無線基地局の存在についての情報を提供するようにしている。
したがって、この発明によれば、第2無線基地局によって形成される第2のサービスエリアが第1無線基地局によって形成される第1のサービスエリアよりも狭くても、第1無線基地局からの情報に基づいて効率よく探索し、かつ探索するために費やす電力を節約することが可能な無線通信システムおよび移動無線端末装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
この発明の一実施形態に係わる無線通信システムは、CDMA2000 1x方式(以下、1x方式と称する)、EV-DO方式およびLTE方式の3つの無線アクセス方式に対応する場合を例に挙げて説明する。
【0009】
1x方式は、回線交換接続により、音声通信サービスや100kbps以下の低速パケット通信サービスを提供できる。EV-DO方式は、パケット交換接続により、100kbps以上で最高2.4Mbps程度の高速パケットサービスを提供できる。LTE方式は、パケット交換接続により、2Mbps〜20Mbps程度の高速パケットサービスを提供するもので、VoIP(Voice over Internet Protocol)により音声通話サービスも提供できる。
【0010】
各方式は、互いに異なる利用周波数が定められている。ここでは以下のように定義する。すなわち、1x方式は、基地局から移動無線端末装置に向けた下り回線として周波数f1dが割り当てられ、反対に上り回線の周波数としてf1uが割り当てられる。また、EV-DO方式は、基地局から移動無線端末装置に向けた下り回線として周波数f2dが割り当てられ、反対に上り回線の周波数としてf2uが割り当てられる。そして、LTE方式は、基地局から移動無線端末装置に向けた下り回線として周波数f3dが割り当てられ、反対に上り回線の周波数としてf3uが割り当てられる。
【0011】
そして、図1に示すように、この無線通信システムは、1x方式とEV-DO方式のサービスを提供するサービスエリアE1と、LTE方式のサービスを提供するサービスエリアE2を形成している。サービスエリアE1内では、1x方式をアクセス方式とする基地局1x BSと、EV-DO方式をアクセス方式とする基地局EV-DO BSがそれぞれセルと呼ばれる無線ゾーンを形成している。そして、この無線ゾーンを多数配置することによって、サービスエリアE1を形成している。同様に、サービスエリアE2内では、LTE方式をアクセス方式とする基地局LTE BSがセルと呼ばれる無線ゾーンを形成している。そして、この無線ゾーンを多数配置することによって、サービスエリアE2を形成している。そして、この図に示すように、サービスエリアE1は、その内部にサービスエリアE2を内包している。この図では、サービスエリアE1とサービスエリアE2で別々に示しているが、サービスエリアE2が図示される位置においても、1x方式とEV-DO方式の各サービスを提供するための基地局1x BS、EV-DO BSが存在している。
【0012】
そして、図2に示すように、基地局1x BS、EV-DO BS、LTE BSは、基地局制御部200によって、統括して制御される。データベース300には、基地局1x BS、EV-DO BS、LTE BSがそれぞれサービスエリアのどこに配置されているかを示す位置管理情報が記憶される。
【0013】
また位置管理情報は、基地局1x BSや基地局EV-DO BSについて、形成するセルが基地局LTE BSが形成するセルに重なり合うか否かを示す情報や、基地局LTE BSが形成するセルに重なる基地局については、その基地局LTE BSがサービスエリアE2内の境界(外縁)付近に位置するのか、あるいは中央付近に位置するのかを示す情報を有する。すなわち、位置管理情報は、基地局1x BSや基地局EV-DO BSについて、近傍に基地局LTE BSが存在するか否かや、存在する密度、サービスエリアE2における基地局LTE BSの位置を示している。
【0014】
基地局制御部200は、上記位置管理情報を参照し、基地局1x BSに対して、1xページング信号で、LTE_DENSITY_MESSAGEを送信するように制御する。なお、ここでいう1xページング信号とは、例えばTIA/EIA STANDARD IS-2000.5に準拠したものであって、3.7.2.3.2 Message Body Contentsのフォーマットに従う。ここでは、LTE_DENSITY_MESSAGEを図3に示すように定義する。
【0015】
またLTE_DENSITY_MESSAGEのField値の各値は、図4に示す意味を持ち、この値は、基地局制御部200が上記位置管理情報に基づいて決定する。つまり、基地局1x BSが形成するセルが、基地局LTE BSが形成するセルと重なる度合いやそのセルの位置に応じて、Field値を設定して、これを1xページング信号で送信させる。
【0016】
具体的には、基地局LTE BSが形成するセルと重ならないセル(図1のD)を形成する基地局1x BSに対しては、Field値に「00」を設定して1xページング信号を送信させる。またサービスエリアE2の境界付近でセルを形成する基地局LTE BSが形成するセル(図1のC)に、主として重なるセルを形成する基地局1x BSに対しては、Field値に「01」を設定して1xページング信号を送信させる。
【0017】
また、サービスエリアE2の境界付近ではなく、サービスエリアE2の内部でセルを形成する基地局LTE BSが形成するセル(図1のB)に、主として重なるセルを形成する基地局1x BSに対しては、Field値に「10」を設定して1xページング信号を送信させる。そしてまたサービスエリアE2の境界付近ではなく、サービスエリアE2の内部でセルを形成する複数の基地局LTE BSが形成するセルと重なるセル(図1のA)を形成する基地局1x BSに対しては、Field値に「11」を設定して1xページング信号を送信させる。
【0018】
なお、図3および図4に示した例では、基地局1x BSが形成するセルが、基地局LTE BSが形成するセルと重なる度合いを示せるように、データ長を2ビットとしたが、図5に示すように、1ビットとするようにしてもよい。この場合には、図6に示すように、基地局1x BSが形成するセルが、基地局LTE BSが形成するセルと重なるか否かを示す。
【0019】
次に、図7を参照して、移動無線端末装置の構成について説明する。この図に示すように、移動無線端末装置は、送受信用アンテナ101と、受信用アンテナ102と、端末制御部100と、受信部110と、受信信号処理部120と、送信信号処理部130と、送信部140とを備える。その他、文字や映像を表示する表示部150や、ユーザからの要求や番号入力を受け付ける入力部160を備え、駆動電力を供給するバッテリや電源部、送話音声を入力するためのマイクロホン、受話音声を拡声出力するスピーカなどを備える。
【0020】
基地局1x BS、EV-DO BS、LTE BSから送信された無線信号(周波数f1d、f2d、f3d)は、送受信用アンテナ101および受信用アンテナ102で受信される。受信された無線信号は、受信部110で、ベースバンド受信信号にダウンコンバートされる。このダウンコンバートに用いられるローカル信号は、受信信号処理部120から指示された通信方式に応じた周波数で発振され、これにより、受信対象となる無線信号(周波数f1d、f2d、f3dのいずれか)が選択される。
【0021】
受信信号処理部120は、1x方式に対応し基地局1x BSから受信した信号を処理する1x受信信号処理部120aと、EV-DO方式に対応し基地局EV-DO BSから受信した信号を処理するEV-DO受信信号処理部120bと、LTE方式に対応し基地局LTE BSから受信した信号を処理するLTE受信信号処理部120cとを備える。
【0022】
そして、受信信号処理部120は、端末制御部100から指示された通信方式を受信部110に通知するとともに、1x受信信号処理部120a、EV-DO受信信号処理部120bおよびLTE受信信号処理部120cのうち、上記通信方式に対応する処理部を起動する。
【0023】
1x受信信号処理部120a、EV-DO受信信号処理部120bおよびLTE受信信号処理部120cは、それぞれ対応する通信方式に応じた信号処理を行うものであって、起動されると、その信号処理により、ベースバンド受信信号を復調および復号し、受信データを得る。
【0024】
送信信号処理部130は、1x方式に対応し基地局1x BSに送信する信号を生成する1x送信信号処理部130aと、EV-DO方式に対応し基地局EV-DO BSに送信する信号を生成するEV-DO送信信号処理部130bと、LTE方式に対応し基地局LTE BSに送信する信号を生成するLTE送信信号処理部130cとを備える。
【0025】
そして、送信信号処理部130は、端末制御部100から指示された通信方式を送信部140に通知するとともに、1x送信信号処理部130a、EV-DO送信信号処理部130bおよびLTE送信信号処理部130cのうち、上記通信方式に対応する処理部を起動する。
【0026】
1x送信信号処理部130a、EV-DO送信信号処理部130bおよびLTE送信信号処理部130cは、それぞれ対応する通信方式に応じた信号処理を行うものであって、起動されると、その信号処理により、送信データを符号化し、その後、変調して、ベースバンド送信信号を生成する。
【0027】
送信部140は、送信信号処理部130から通知された通信方式に対応する周波数のローカル信号を発振し、このローカル信号で上記ベースバンド送信信号を無線周波数にアップコンバートする。これにより、送信対象となる無線信号(周波数f1u、f2u、f3uのいずれか)が選択される。無線信号は、送受信用アンテナ101を通じて空間に放射される。
【0028】
端末制御部100は、当該移動無線端末装置の各部を統括して制御するものであって、入力部160を通じたユーザからの要求に応じた通信方式で通信を行うために各部を制御したり、あるいは後述する通信方式選択処理にしたがって、通信方式を選択し、位置登録や着信の待ち受けを行う。
【0029】
次に、上記構成の移動無線端末装置の動作について説明する。以下の説明では特に、通信方式選択処理について説明する。図8乃至図11に示すフローチャートは、上記通信方式選択処理を説明するためのものであって、端末制御部100が内部に記憶する制御プログラムや制御データにしたがって動作することにより実現する。
【0030】
電源が投入されると、ステップ8aにおいて端末制御部100は、受信信号処理部120および送信信号処理部130に対して、通信方式として1x方式を選択するように指示する。これにより、受信信号処理部120は、1x受信信号処理部120aを起動するとともに、受信部110に対して、通信方式として1x方式を通知する。
【0031】
これに対して、受信部110は、1x方式の無線信号を受信するためのローカル信号を発振して、周波数f1uの信号をベースバンドにダウンコンバートする。送信信号処理部130も同様に、1x送信信号処理部130aを起動するとともに、送信部140に通信方式として1x方式を通知する。
【0032】
その後、端末制御部100は、受信信号処理部120(1x受信信号処理部120a)から出力される受信データを監視して、基地局1x BSから送信されるパイロット信号を受信して初期捕捉が完了できたか否かを判定する。ここで、1x方式の初期捕捉が完了できた場合には、ステップ8cに移行し、一方、1x方式の初期捕捉が完了できない場合には、ステップ8bに移行して圏外処理を行う。この圏外処理では、表示部150に、1x方式のサービス圏外(サービスエリアE1の外)に居る旨を示す映像をユーザに映示する。
【0033】
ステップ8cにおいて端末制御部100は、ステップ8aで起動された1x送信信号処理部130aを制御して、基地局1x BSを通じて位置登録を要求する信号を送信させる。そして、このようにして位置登録を行った後、基地局1x BSから送られる着信信号を待ち受ける処理を開始し、ステップ8dに移行する。
【0034】
ステップ8dにおいて端末制御部100は、1x受信信号処理部120aが基地局1x BSから受信した1xページング信号の受信データから、LTE_DENSITY_MESSAGEを抽出し、ステップ8eに移行する。
【0035】
ステップ8eにおいて端末制御部100は、ステップ8dで抽出したLTE_DENSITY_MESSAGEからField値を検出し、その値がいずれを示すかを判定する。ここで、Field値が「00」の場合には、図9に示す処理Aを実行する。またField値が「01」の場合には、図10に示す処理Bを実行する。そして、Field値が「10」または「11」の場合には、図11に示す処理Cを実行する。
【0036】
次に、図9を参照して、処理Aについて説明する。この処理は、着信信号を待ち受けている基地局1x BSから1xページング信号を通じて、Field値「00」のLTE_DENSITY_MESSAGEを受信した場合、すなわち、移動無線端末装置が図1に示すセルDに位置する場合に実行される。
【0037】
ステップ9aにおいて端末制御部100は、受信信号処理部120および送信信号処理部130に対して、通信方式としてEV-DO方式を選択するように指示する。これにより、受信信号処理部120は、既に1x受信信号処理部120aが起動された状態に加えて、EV-DO受信信号処理部120bを起動するとともに、受信部110に対して、通信方式としてEV-DO方式を通知する。
【0038】
これに対して、受信部110は、既に通信方式として1x方式を使用する旨の通知を受けているので、1x方式の無線信号を受信するためのローカル信号と、EV-DO方式の無線信号を受信するためのローカル信号を、各方式のページング信号の受信周期に合わせて交互に発振して、周波数f1uの信号および周波数f2uの信号を時分割でベースバンドにダウンコンバートする。送信信号処理部130も同様に、既に1x送信信号処理部130aが起動された状態に加えて、EV-DO送信信号処理部130bを起動するとともに、送信部140に通信方式としてEV-DO方式を通知する。
【0039】
その後、端末制御部100は、受信信号処理部120(EV-DO受信信号処理部120b)から出力される受信データを監視して、基地局EV-DO BSから送信されるパイロット信号を受信して初期捕捉が完了できたか否かを判定する。ここで、EV-DO方式の初期捕捉が完了できた場合には、ステップ9cに移行し、一方、EV-DO方式の初期捕捉が完了できない場合には、ステップ9bに移行して圏外処理を行う。この圏外処理では、表示部150に、EV-DO方式のサービス圏外(サービスエリアE1の外)に居る旨を示す映像をユーザに映示する。
【0040】
ステップ9cにおいて端末制御部100は、ステップ9aで起動されたEV-DO送信信号処理部130bを制御して、基地局EV-DO BSを通じて位置登録を要求する信号を送信させる。そして、このようにして位置登録を行った後、基地局EV-DO BSから送られる着信信号を待ち受ける処理を開始し、ステップ9dに移行する。
【0041】
これにより、移動無線端末装置は、1x方式とEV-DO方式の両方で、着信の発生を待機する。ここで、LTE受信信号処理部120cおよびLTE送信信号処理部130cは起動されておらず、受信部110と送信部140においても、LTE方式については、送受信は行っていない。
【0042】
ステップ9dにおいて端末制御部100は、1x受信信号処理部120aが基地局1x BSから受信した1xページング信号の受信データから、LTE_DENSITY_MESSAGEを抽出し、ステップ9eに移行する。
【0043】
ステップ9eにおいて端末制御部100は、ステップ9dで抽出したLTE_DENSITY_MESSAGEからField値を検出し、その値がいずれを示すかを判定する。ここで、Field値が「00」の場合には、ステップ9dに移行して、1x方式とEV-DO方式の両方で着信発生の待機を継続する。またField値が「01」の場合には、図10に示す処理Bを実行する。そして、Field値が「10」または「11」の場合には、図11に示す処理Cを実行する。
【0044】
次に、図10を参照して、処理Bについて説明する。この処理は、着信を待ち受けている基地局1x BSから1xページング信号を通じて、Field値「01」のLTE_DENSITY_MESSAGEを受信した場合、すなわち、上記基地局1x BSが図1に示すセルCに主として重なるセルを形成する場合に実行される。
【0045】
ステップ10aにおいて端末制御部100は、受信信号処理部120および送信信号処理部130に対して、通信方式としてLTE方式を選択するように指示する。これにより、受信信号処理部120は、既に1x受信信号処理部120aが起動された状態に加えて、LTE受信信号処理部120cを起動するとともに、受信部110に対して、通信方式としてLTE方式を通知する。
【0046】
これに対して、受信部110は、既に通信方式として1x方式を使用する旨の通知を受けているので、1x方式の無線信号を受信するためのローカル信号と、LTE方式の無線信号を受信するためのローカル信号を、各方式のページング信号の受信周期に合わせて交互に発振して、周波数f1uの信号および周波数f3uの信号を時分割でベースバンドにダウンコンバートする。送信信号処理部130も同様に、既に1x送信信号処理部130aが起動された状態に加えて、LTE送信信号処理部130cを起動するとともに、送信部140に通信方式としてLTE方式を通知する。
【0047】
その後、端末制御部100は、受信信号処理部120(LTE受信信号処理部120c)から出力される受信データを監視して、基地局LTE BSから送信されるパイロット信号を受信して初期捕捉が完了できたか否かを判定する。ここで、LTE方式の初期捕捉が完了できた場合には、ステップ10cに移行し、一方、LTE方式の初期捕捉が完了できない場合には、ステップ10bに移行して圏外処理を行う。この圏外処理では、表示部150に、LTE方式のサービス圏外(サービスエリアE2の外)に居る旨を示す映像をユーザに映示する。
【0048】
ステップ10cにおいて端末制御部100は、ステップ10aで起動されたLTE送信信号処理部130cを制御して、基地局LTE BSを通じて位置登録を要求する信号を送信させる。そして、このようにして位置登録を行った後、基地局LTE BSから送られる着信信号を待ち受ける処理を開始し、ステップ10dに移行する。これにより、移動無線端末装置は、1x方式とLTE方式の両方で、着信の発生を待機する。
【0049】
ステップ10dにおいて端末制御部100は、EV-DO方式で着信待ち受けを行っているか否かを判断し、EV-DO方式で着信待ち受け行っている場合には、受信信号処理部120に対して、EV-DO方式の受信を終了するように指示するとともに、送信信号処理部130に対して、EV-DO方式の送信を終了するように指示して、ステップ10eに移行する。上記以外の場合には、そのままステップ10eに移行する。
【0050】
これにより、受信信号処理部120は、EV-DO受信信号処理部120bを停止させ、EV-DO方式の受信を終了するように受信部110に通知する。同様に、送信信号処理部130は、EV-DO送信信号処理部130bを停止させ、EV-DO方式の送信を終了するように送信部140に通知する。受信部110および送信部140は、EV-DO方式についての送受信を終了する。
【0051】
ステップ10eにおいて端末制御部100は、1x受信信号処理部120aが基地局1x BSから受信した1xページング信号の受信データから、LTE_DENSITY_MESSAGEを抽出し、ステップ10fに移行する。
【0052】
ステップ10fにおいて端末制御部100は、ステップ10eで抽出したLTE_DENSITY_MESSAGEからField値を検出し、その値がいずれを示すかを判定する。ここで、Field値が「00」の場合には、図9に示した処理Aを実行する。またField値が「01」の場合には、ステップ10eに移行して、1x方式とLTE方式の両方で着信発生の待機を継続する。そして、Field値が「10」または「11」の場合には、図11に示す処理Cを実行する。
【0053】
次に、図11を参照して、処理Cについて説明する。この処理は、着信を待ち受けている基地局1x BSから1xページング信号を通じて、Field値「11」または「10」のLTE_DENSITY_MESSAGEを受信した場合、すなわち、上記基地局1x BSが図1に示すセルAまたはBに主として重なるセルを形成する場合に実行される。
【0054】
ステップ11aにおいて端末制御部100は、受信信号処理部120および送信信号処理部130に対して、通信方式としてLTE方式を選択するように指示する。これにより、受信信号処理部120は、既に1x受信信号処理部120aが起動された状態に加えて、LTE受信信号処理部120cを起動するとともに、受信部110に対して、通信方式としてLTE方式を通知する。
【0055】
これに対して、受信部110は、既に通信方式として1x方式を使用する旨の通知を受けているので、1x方式の無線信号を受信するためのローカル信号と、LTE方式の無線信号を受信するためのローカル信号を、各方式のページング信号の受信周期に合わせて交互に発振して、周波数f1uの信号および周波数f3uの信号を時分割でベースバンドにダウンコンバートする。送信信号処理部130も同様に、既に1x送信信号処理部130aが起動された状態に加えて、LTE送信信号処理部130cを起動するとともに、送信部140に通信方式としてLTE方式を通知する。
【0056】
その後、端末制御部100は、受信信号処理部120(LTE受信信号処理部120c)から出力される受信データを監視して、基地局LTE BSから送信されるパイロット信号を受信して初期捕捉が完了できたか否かを判定する。ここで、LTE方式の初期捕捉が完了できた場合には、ステップ11cに移行し、一方、LTE方式の初期捕捉が完了できない場合には、ステップ11bに移行して圏外処理を行う。この圏外処理では、表示部150に、LTE方式のサービス圏外(サービスエリアE2の外)に居る旨を示す映像をユーザに映示する。
【0057】
ステップ11cにおいて端末制御部100は、ステップ11aで起動されたLTE送信信号処理部130cを制御して、基地局LTE BSを通じて位置登録を要求する信号を送信させる。そして、このようにして位置登録を行った後、基地局LTE BSから送られる着信信号を待ち受ける処理を開始し、ステップ11dに移行する。これにより、移動無線端末装置は、1x方式とLTE方式の両方で、着信の発生を待機する。
【0058】
ステップ11dにおいて端末制御部100は、EV-DO方式で着信待ち受けを行っているか否かを判断し、EV-DO方式で着信待ち受け行っている場合には、受信信号処理部120に対して、EV-DO方式の受信を終了するように指示するとともに、送信信号処理部130に対して、EV-DO方式の送信を終了するように指示して、ステップ11eに移行する。上記以外の場合には、そのままステップ11eに移行する。
【0059】
これにより、受信信号処理部120は、EV-DO受信信号処理部120bを停止させ、EV-DO方式の受信を終了するように受信部110に通知する。同様に、送信信号処理部130は、EV-DO送信信号処理部130bを停止させ、EV-DO方式の送信を終了するように送信部140に通知する。受信部110および送信部140は、EV-DO方式についての送受信を終了する。
【0060】
ステップ11eにおいて端末制御部100は、受信信号処理部120に対して、1x方式の受信を終了するように指示するとともに、送信信号処理部130に対して、1x方式の送信を終了するように指示して、当該処理を終了する。上記以外の場合には、そのまま当該処理を終了する。
【0061】
これにより、受信信号処理部120は、1x受信信号処理部120aを停止させ、1x方式の受信を終了するように受信部110に通知する。同様に、送信信号処理部130は、1x送信信号処理部130aを停止させ、1x方式の送信を終了するように送信部140に通知する。受信部110および送信部140は、1x方式についての送受信を終了する。
【0062】
以上のように、上記構成の無線通信システムでは、基地局1x BSの形成するセルが基地局LTE BSが形成するセルと重なる度合いやその重なるセルの位置に応じて、基地局1x BSがField値を設定してこれを1xページング信号で送信する。これに対して、移動無線端末装置は、基地局1x BSから1xページング信号を受信して、上記Field値に基づいて、現在位置する場所に、基地局LTE BSが存在するか否かを判断し、また基地局LTE BSが存在する場合には、サービスエリアE2の境界に位置する基地局か中心部に位置する基地局かを判断し、これらの判断結果に応じて、基地局LTE BSの探索を行うようにしている。
【0063】
したがって、上記構成の無線通信システムによれば、サービスエリアの広い1x方式を通じて、LTE方式によるサービスが提供されるエリアか否かを判断して、無駄にLTE方式の基地局を探索することが防止できるので、効率よくサービスエリアE2を探索でき、かつ消費電力を低減することができる。
【0064】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0065】
その一例として例えば、上記実施の形態では、基地局1x BSが、形成するセルが基地局LTE BSが形成するセルと重なる度合いやその重なるセルの位置に応じて、Field値を4通りに設定するようにしたが、図5および図6に示すように、度合いを2通りにすることもできる。この場合には、図8に示した通信方式選択処理に代わって、図12に示す処理を実行するようにしてもよい。すなわち、端末制御部100は、ステップ8eに代わって、ステップ12eを実行する。
【0066】
ステップ12eにおいて端末制御部100は、ステップ8dで抽出したLTE_DENSITY_MESSAGEからField値を検出し、その値がいずれを示すかを判定する。ここで、Field値が「0」の場合には、図9に示す処理Aを実行する。またField値が「1」の場合には、図11に示す処理Cを実行する。このような簡易化した処理によっても、精度や効率は低下するものの、同様の効果が得られる。
【0067】
また上記実施の形態では、基地局1x BSから1xページング信号を通じて、LTE方式の基地局LTE BSの配設を示す情報を伝送するようにしたが、基地局1x BSが送信するトラフィック信号を通じて、LTE方式の基地局LTE BSの配設を示す情報を伝送するようにしてもよい。なお、ここでいうトラフィック信号とは、TIA/EIA STANDARD IS-2000.5に準拠したものであって、3.7.2.3.3 Message Body Contentsのフォーマットにしたがう。
【0068】
また1x方式に代わって、EV-DO方式に適用して、基地局EV-DO BSが、ページング信号やトラフィック信号を通じて上記情報を伝送するようにしてもよい。またこの場合、これらのメッセージのパラメータの一部として、上記情報を伝送するようにしてもよい。
さらに、上記実施の形態では、、Field値が「10」の場合と「11」の場合は、どちらも処理Cを実行するようにしたが、これらを区別して、基地局LTE BSの配設された密度に応じた処理するようにしてもよい。
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明に係わる無線通信システムのサービスエリアとセルの関係を説明するための図。
【図2】図1に示した無線通信システムの基地局を制御する構成を説明するための図。
【図3】図1に示した無線通信システムの基地局1x BSが送信するLTE_DENSITY_MESSAGEを説明するための図。
【図4】図1に示した無線通信システムの基地局1x BSが送信するLTE_DENSITY_MESSAGEを説明するための図。
【図5】図1に示した無線通信システムの基地局1x BSが送信するLTE_DENSITY_MESSAGEを説明するための図。
【図6】図1に示した無線通信システムの基地局1x BSが送信するLTE_DENSITY_MESSAGEを説明するための図。
【図7】図1に示した無線通信システムの移動無線端末装置の構成を示す回路ブロック図。
【図8】図7に示した移動無線端末装置の通信方式選択処理を説明するためのフローチャート。
【図9】図7に示した移動無線端末装置の通信方式選択処理を説明するためのフローチャート。
【図10】図7に示した移動無線端末装置の通信方式選択処理を説明するためのフローチャート。
【図11】図7に示した移動無線端末装置の通信方式選択処理を説明するためのフローチャート。
【図12】図7に示した移動無線端末装置の通信方式選択処理を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0070】
100…端末制御部、101…送受信用アンテナ、102…受信用アンテナ、110…受信部、120…受信信号処理部、120a…1x受信信号処理部、120b…EV-DO受信信号処理部、120c…LTE受信信号処理部、130…送信信号処理部、130a…1x送信信号処理部、130b…EV-DO送信信号処理部、130c…LTE送信信号処理部、140…送信部、150…表示部、160…入力部、200…基地局制御部、300…データベース、E1…サービスエリア、E2…サービスエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信方式で無線通信する第1無線基地局を複数配設して第1のサービスエリアを形成するとともに、第2の通信方式で無線通信する第2無線基地局を複数配設して前記第1のサービスエリアよりも狭い第2のサービスエリアを形成し、移動無線端末装置をネットワークに無線接続する無線通信システムであって、
前記第1無線基地局毎に、近傍に位置する第2無線基地局の存在を示す情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段が記憶する情報に基づく前記第2無線基地局の配設情報を、前記第1無線基地局を通じて前記移動無線端末装置に送信する送信手段とを具備することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第1の通信方式はCDMA2000 1x方式であって、前記第2通信方式はLTE方式であって、
前記送信手段は、1xページング信号で前記配設情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1の通信方式はCDMA2000 1x方式であって、前記第2通信方式はLTE方式であって、
前記送信手段は、1xトラフック信号で前記配設情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第1の通信方式はEV-DO方式であって、前記第2通信方式はLTE方式であって、
前記送信手段は、EV-DOページング信号で前記配設情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1の通信方式はEV-DO方式であって、前記第2通信方式はLTE方式であって、
前記送信手段は、EV-DOトラフック信号で前記配設情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記配設情報は、前記第2無線基地局の有無を示すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記配設情報は、前記第2無線基地局が存在する密度を示すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記記憶手段は、前記第1無線基地局毎に、近傍に位置する第2無線基地局の存在を示す情報と、その第2無線基地局の前記第2のサービスエリア内における位置情報を記憶し、
前記配設情報は、前記第2無線基地局が前記第2のサービスエリアにおいて位置する場所を示すことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記配設情報は、前記第2無線基地局が前記第2のサービスエリア内の境界に位置するか否かを示すことを特徴とする請求項8に記載の無線通信システム。
【請求項10】
第1の通信方式で無線通信する第1無線基地局を複数配設して第1のサービスエリアを形成するとともに、第2の通信方式で無線通信する第2無線基地局を複数配設して前記第1のサービスエリアよりも狭い第2のサービスエリアを形成する無線通信システムで用いられる移動無線端末装置であって、
前記第1無線基地局から、近傍に位置する第2無線基地局の存在を示す情報を受信する受信手段と、
この受信手段が受信した前記情報に基づいて、前記第2無線基地局を探索する第2基地局探索手段とを具備することを特徴とする移動無線端末装置。
【請求項11】
前記第2基地局探索手段は、前記受信手段が受信した前記情報が、近傍に前記第2無線基地局がないことを示す場合には、前記第2無線基地局を探索しないことを特徴とする請求項10に記載の移動無線端末装置。
【請求項12】
さらに、前記受信手段が受信した前記情報が、近傍に前記第2無線基地局があることを示す場合に、前記第1無線基地局と通信する手段の動作を停止する停止制御手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の移動無線端末装置。
【請求項13】
前記停止制御手段は、前記受信手段が受信した前記情報が、近傍に前記第2無線基地局があることを示す場合に、前記第2無線基地局と同期した後に、前記第1無線基地局と通信する手段の動作を停止することを特徴とする請求項12に記載の移動無線端末装置。
【請求項14】
さらに、前記受信手段が受信した前記情報が、近傍に存在する前記第2無線基地局が前記第2のサービスエリアの境界に位置することを示す場合には、前記第1無線基地局と前記第2無線基地局の両方について着信信号を待ち受ける待ち受け制御手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の移動無線端末装置。
【請求項15】
さらに、電源が投入された直後に、前記第1無線基地局を探索する第1基地局探索手段を備え、
前記受信手段は、前記第1基地局探索手段が検出した第1無線基地局から、近傍に位置する第2無線基地局の存在を示す情報を受信し、
前記第2基地局探索手段は、前記受信手段が前記情報を受信した場合に、この情報に基づいて、前記第2無線基地局を探索することを特徴とする請求項10に記載の移動無線端末装置。
【請求項16】
前記無線通信システムは、第3の通信方式で無線通信する第3無線基地局を複数配設して前記第2のサービスエリアよりも広い第3のサービスエリアを形成し、
さらに、前記受信手段が受信した前記情報が、近傍に前記第2無線基地局がないことを示す場合には、前記第3無線基地局を探索する第3基地局探索手段を備えることを特徴とする請求項10に記載の移動無線端末装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−74516(P2010−74516A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239456(P2008−239456)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】