説明

無線通信システムにおける無線リンクの伝送を制御する方法および装置

【課題】複数の無線リンクを実質上の同時伝送タイミングで無線端末に伝送するように構成された無線アクセスノードでの、無線端末と無線アクセスノードとの間のエアインターフェースで無線リンクの伝送タイミングを制御する方法を提供する。
【解決手段】第1および第2の無線リンクの無線端末への実質上の同時伝送が選択され得るように所定の条件が満たされているかどうかが判定される。その判定に応答して、第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける無線リンク(radio link)の伝送を制御する技術に関し、詳細には無線リンクでの伝送タイミング(transmission timing)の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の特定の適用分野は、3GPP(3rd Generation Partnership Project、第3世代移動通信システム標準化団体)により標準化されたUMTS(Universal Mobile Telecommunication System)タイプの第3世代セルラネットワークの基地局での伝送タイミングの制御にある。本発明は、周波数分割二重(FDD)モードのUMTSネットワークへの適用例として以下に説明され、図1はかかるネットワークのアーキテクチャを示す。
【0003】
移動体サービス交換器(mobile service switch)10は、コアネットワーク(CN)に属し、1つまたは複数の固定ネットワーク11と、Iuと呼ばれるインターフェースによって制御ユニット12すなわちRNC(Radio Network Contollers、無線ネットワーク制御装置)とに連結される。各RNC12は、Iubと呼ばれるインターフェースによって1つまたは複数の無線局13に連結される。無線局13は、ネットワークが網羅する区域に分散され、UE(User Equipment、ユーザ端末)と呼ばれる移動端末14、14a、および14bと無線で通信することができる。無線局は、グループに纏められ、「ノードB」と呼ばれるノード群を形成することができる。さらに一部のRNC12は、Iurと呼ばれるインターフェースによって互いに通信することができる。RNCと無線局は、UTRAN(UMTS Terrestrial Radio Access Network、UMTS地上無線アクセスネットワーク)と呼ばれるアクセスネットワークを形成する。3GPPにより2001年12月に発行された技術仕様書3G TS25.301「Radio Interface Protocol Architecture」バージョン4.2.0に記載されているように、UTRANは、無線インターフェース(Uuと呼ばれる)で必要となるリンクを提供するためにISOモデルの第1層および第2層の要素と、第3層に属する無線資源制御(Radio Resource Control)(RRC)ステージ15Aとを含む。上位層からすれば、UTRANは、UEとCNとの間の中継として働いているに過ぎない。
【0004】
図2は、RRCステージ15A、15Bと、UTRANとUSに属する下位層の諸ステージを示す。どちら側も、第2層が、無線リンク制御(Radio Link Control)(RLC)ステージ16A、16Bと媒体アクセス制御(Medium Access Control)(MAC)ステージ17A、17Bとに分割される。第1層は、符号化および多重化ステージ18A、18Bを含む。無線ステージ19A、19Bは、ステージ18A、18Bにより供給されるシンボル列に基づく無線信号の伝送を行い、反対方向で信号の受信を行う。
【0005】
図2によるプロトコルアーキテクチャを、図1によるUTRANハードウェアアーキテクチャに適合させる方法は様々あり、一般には、チャネルタイプ(3GPPにより2001年9月に発行された技術仕様書3G TS25.401「UTRAN Overall Description」バージョン4.2.0のセクション11.2を参照)に従って様々な構造が採用され得る。RRC、RLC、およびMACステージは、RNC12にある。第1層は、例えば、ノードBにある。しかし、この層の一部がRNC12にあってもよい。
【0006】
第1層および第2層は、それぞれRRC副層により制御され、RRC副層の特徴は、3GPPにより2001年6月に発行された技術仕様書3G TS25.331「RRC Protocol Specification」バージョン4.1.0に記載されている。RRCステージ15A、15Bは、無線インターフェースを管理する。このステージはさらに、第3層から来るユーザデータの処理に対応する「ユーザプレーン」とは反対に、「制御プレーン」に従って遠隔局に伝送される流れを処理する。
【0007】
FDDモードでのUMTSは、下りリンク方向では、UEが同一情報を複数回受信、上りリンク(UL)方向では、UEにより伝送される無線信号が無線局で受信されて、UTRANで組み合わされることになる様々な推定を形成するように、UEがいわゆる「アクティブセット」で別々の無線局と同時に通信できることを見込んでいるマクロダイバシチ(macrodiversity)技術をサポートする。
【0008】
マクロダイバシチは、同じ情報に対する異なる観察を組み合わせることにより、システムの性能を向上させる受信利得をもたらす。マクロダイバシチはまた、UEが移動するときにソフトハンドオーバ(SHO)が実現されるのを可能にする。
【0009】
マクロダイバシチでは、UTRANまたはUEからの多重伝送におけるトランスポートチャネルの分枝と、受信モードでのこれらトランスポートチャネルの組合せとが、第1層に属する選択および組合せモジュールの担当する動作である。このモジュールは、MAC副層とのインターフェース部であり、UEをサーブするRNCに置かれる。関与する無線局が、Iurインターフェースを介して通信する異なるRNCに依存する場合、これらRNCの1つがSRNCとして働き、残りがDRNCとして働く。
【0010】
複数のRNCがUEとの通信に関与するとき、一般には、第2層ベースのモジュール(RLCおよびMAC)が置かれる1つの担当RNC(Serving RNC)(SRNC)と、無線局が連結される少なくとも1つのドリフトRNC(Drift RNC)(DRNC)が存在し、その無線局とUEは無線通信で結ばれている。好適なプロトコル、例えばATM(Asynchronous Transfer Mode)およびAAL2(ATM Adaptation Layer No.2)が、Iurインターフェースを介するこれらRNC間での交換を実現する。
【0011】
同じこれらのプロトコルが、ノードBとそのRNCとの間の交換におけるサブインターフェースでも使用され得る。ATM層およびAAL2層の上位では、フレームプロトコル(FP)がユーザプレーンで使用されて、SRNCが所与のUEとの通信に関与する1つまたは複数のノードBと通信するのを可能にする。
【0012】
このFPプロトコルは、3GPPにより2001年12月に発行された技術仕様書3G TS25.427「UTRAN Iub/Iur interface User Plane Protocol for DCH Data Streams」、および3G TS25.435「UTRAN Tub Interface User Plane Protocols for Common Transport Channel Data Streams」バージョン4.3.0に記載されている。具体的には、FPプロトコルは、トランスポートチャネルが、3GPPにより2001年12月に発行された技術仕様書3G TS25.402「Synchronization in UTRAN Stage 2」バージョン4.3.0のセクション7に記載の方式で同期されるのを可能にするシグナリングフレーム(signalling frames)を提供する。
【0013】
このトランスポートチャネル同期の目的は、UTRANとUEとの間で第2層共通フレーム番号を取得することであり、これは8ビットのコネクションフレーム番号(Connection Frame Number)(CFN)を用いることで達成され、UEと交わされる各トランスポートブロックセット(Transport Block Set)(TBS)ごとに、それを10msおきに1ユニットずつ増分することにより、第2層により管理される。
【0014】
このCFNは、エアインターフェース(air interface)を介して伝送されることはないが、Iubインターフェースを介して交換されるフレームに付加される。物理層が、各セルごとに最新に保たれている、12ビットで符号化されるシステムフレーム番号(System Frame Number)(SFN)により定義されるフレーム番号にCFNをマッピングする。ノードBが、このSFNを新規の10ms無線フレームごとに増分し、それをセルの共通制御チャネルを介してブロードキャストする。
【0015】
所与のTBSおよび所与のセルについて、ノードBと関連するUEとの間の無線リンクがセットアップされる前に、整数個のフレームにより表されるオフセット(フレームオフセット)により、CFNとSFNの間のオフセットが決定される。
【0016】
UEがソフトハンドオーバにないとき、そのUEのアクティブセットに含まれるセルは、いわゆる「参照セル」と見なされる。そのセルは、参照セルとして選択されているので、他のセルが当該のアクティブセットに追加されても、参照セルのままである。
【0017】
UMTSは符号分割多重アクセス(CDMA)を用いる無線通信システムであり、すなわち伝送されるシンボルが、「チップ」として知られる、そのレートが伝送されるシンボルのレートより大きい(UMTSの場合、3.84Mchip/秒)サンプルからなる拡散符号により多重化される。拡散符号は、搬送周波数により構成される同一伝送資源に重ねられた様々な物理チャネルPhCHを区別する。拡散符号の自動および相互相関特性が、受信器がPhCHを分離し、そのPhCH用のシンボルを抽出するのを可能にする。下りリンク(DL)におけるFDDモードでのUMTSでは、スクランブル符号が各基地局に割り振られ、この基地局で使用される様々な物理チャネルは、相互に直交する「チャネル化」符号(“channelization”code)により区別される。各PhCHについては、グローバル拡散符号(global spreading code)は、基地局の「チャネル化」符号およびスクランブル符号の産物である。拡散率(シンボルレートに対するチップレートの比に等しい)は、4から512までの間の2の累乗である。この率が、当該のPhCHで伝送されるべきシンボルのビットレートに応じて選択される。
【0018】
FDDモードでは様々な物理チャネルが特定のフレーム構造に従い、10msフレームが基地局で使用される搬送波周波数を次々にたどっていく。各フレームは、N=15の666μ秒からなる時間スロットに分割される。各スロットは、共通チャネルと個別チャネルであるDPCH(「Dedicated Physical CHannel」)からなる、1つまたは複数の物理チャネルの重ね合わされたコントリビューション(contribution)を運搬することができる。下りリンクのDPCHは、制御専用の物理チャネル、すなわちDPCCH(「Dedicated Physical Control CHannnel、専用物理制御チャネル」)とデータ専用の物理チャネル、すなわちDPDCH(「Dedicated Physical Data CHannnel、専用物理データチャネル」)とを混合していると見なされてよい。
【0019】
その伝送タイミングを同期させるために、UEは参照無線リンク(RL)、すなわちその参照セルからの対応する下りリンクDPCCH/DPDCHフレームの(時間上)最初に検出されたパスを選択する。上りリンクDPCCH/DPDCHフレーム伝送は、参照RLの受信から約Tチップ後に生じる(Tの値の例は、3GPPにより2004年12月に発行された技術仕様書3G TS25.211「Physical channels and mapping of transport channels onto physical channels(FDD)(Release 6)」バージョン6.3.0のセクション7.6.3「Uplink/downlink timing at UE」を参照。それによれば、Tは、1024チップと定義された定数である)。すなわち、UEの初期伝送タイミング制御の参照ポイントは、参照RLの受信時間にTチップを加えたものである。この参照RLの受信タイミングは時間的にドリフトすることがあるので、UEはかかるドリフトを監視し補正する機能を有する。しかし、UEが、最大調整レートが200msごとに1/4チップの受信下りリンクDPCCH/DPDCHフレームに従ってその伝送タイミングを変更できなければならないので、これはスロープロセスである(3GPPにより2004年12月に発行された技術仕様書3G TS25.133「Technical Specification Group Radio Access Network;Requirements for support of radio resource management(FDD)(Release 6)」バージョン6.8.0のセクション7.1「UE Transmit Timing」を参照)。
【0020】
移動している状況で、当該の参照RLがアクティブセットから取り除かれた場合、UEはアクティブセット内の別の参照RLを単純に選択する。
【0021】
UEの移動から生じる問題のある事例を示す第1のシナリオを以下に明らかにする。
【0022】
第1の無線リンクRLがまず確立され、参照セルであるCellが第1の基地局ノードBにより制御される。図3の第1の傾斜は、UEが基地局ノードBから離れていき、そのためにRLでの伝播遅延が増大することを示す。上記で説明したように、UEは、上りリンクDPCH伝送時間が、可能な限り、Cellからの下りリンクDPCH受信後のT=1024チップになるようにする。上記で述べたように、これは微細な調整によってなされる(わずか200msごとに1/4チップ)。図3のtと附された瞬間に、第2のRL(RL)が、第2の基地局ノードBにより制御される第2のセルであるCellで加えられる。UEによって行われる測定(UE自体のタイミングと第2のセル(Cell)のタイミングとの間の観察された時間差に基づく。3GPPにより2004年12月に発行された技術仕様書3GPP TS25.402「Technical Specification Group Radio Access Network;Synchronisation in UTRAN Stage 2(Release 6)」バージョン6.1.0の第5章「Synchronisation Counters and Parameters」の同期パラメータ「OFF」および「Tm」の定義を参照)は、第2の基地局(ノードB)に与えられるフレームオフセット+チップオフセットのパラメータ値を丸めた後、第2のセルであるCellからの、すなわち第2の無線リンク(RL)に対応する下りリンクDPDCH/DPCCHがT+αcell2(t)で受信され、ただしαcell2は−148から+148チップの間であると仮定される。この例では、チップオフセットを、256チップを境界としてそれに最も近い値に丸めることにより、RLの伝送タイミングは、それが例えばT+αcell2(t)=T+125チップで受信されるようなものとなる。
【0023】
第2の傾斜は、UEが第2の基地局ノードBに接近し、そのためにRLでの伝播遅延が低減することを示す。UEは第1の基地局ノードBから離れ続けるので、RLでの伝播遅延は増大し続け、UEは、UL DPCH伝送時間が、可能な限り、第1セルであるCell(CellはなおUEの参照セルである)からの下りリンクDPDCH/DPCCH受信後の1024チップになるように、UL DPCH伝送時間をシフトし続ける。UEは第2の基地局ノードBにさらに接近し続けるので、RLでの伝播遅延は低減し続ける。このことは、UL DPCH伝送時間のシフトに加え、第2のセルであるCellからのDL DPCH受信の瞬間が、UL DPCH伝送時間から離れていく、すなわちT+αcell2が増大することを意味する。次いで、図3のtと附された瞬間に、第2の基地局ノードBにより制御される第3のセルであるCellでの第3の無線リンクRLがアクティブセットに加えられる。この時点で、第2の無線リンクRLについてはT+αcell2(t)=T+132チップである。UE自体のタイミングと第3のセルであるCellのタイミングとの間の観察された時間差に基づく、UEによって行われる測定に基づいて、SRNCが、3GPP TS25.402で指定された機構に従って、伝送が第2の無線リンクRLでよりも256チップ遅く、すなわちT+α(t)=T−124チップで生じる第3無線リンクRLをもたらすタイミング命令を第2の基地局ノードBに与える。したがって、このことは、同じ基地局ノードBによって伝送される2つの無線リンク(RLとRL)が、約256チップずれて伝送されるため、同時でないという状況を作り出す。
【0024】
UEの参照セルの移動から生じる問題のある事例を示す第2のシナリオを以下に明らかにする。
【0025】
このシナリオは、DL DPCH受信時間とUL DPCH伝送時間の(時間に伴う)進展を示す図4〜図9と、ネットワーク制御装置(SRNC)と、それにより制御される基地局(ノードB、ノードB、ノードB)と、UEとの間でのメッセージの流れを示す図10により例示される。
【0026】
第1ステップ(図4)。第1の無線リンク(RL)が、第1の基地局(ノードB)により制御される参照セル(Cell)で確立される。参照セル(Cell)が、UEによる上りリンクDPCH伝送のフレームタイミングの決定に参照を提供する(技術仕様書3GPP TS25.133のセクション7.1.2を参照)。図4に示されるように、UTRANが、各新規の無線リンクごとに、UEで受信されるフレームタイミングが、UEでの上りリンクDPCCH/DPDCHフレームタイミングにT+/−148チップ以内で先行するようなフレームタイミングで、下りリンクのDPCCH/DPDCHの伝送を開始するように、瞬間Tを囲んで148チップウィンドウが定義される(技術仕様書3GPP TS25.214のセクション4.3.2.4「Synchronisation procedure B」を参照)。
【0027】
図10では、この最初のステップが、第1の基地局(ノードB)と、第1の無線リンク(RL)確立を担当するその制御装置(SRNC)との間で交換される無線リンクセットアップ要求(RL−SETUP−REQ)および応答(RL−SETUP−RESP)NBAPメッセージにより示されている。図10はまた、UEとRRC接続を確立する(RRC CONNECTION SETUP)ためと、RRC接続が確立された(RRC CONNECTION COMPLETE)というUEからの対応する確認である、SRNCとUEとの間で交換されるRRCメッセージを示す。
【0028】
第2ステップ(図5)。第2の無線リンク(RL)が、第2の基地局(ノードB)により制御される第2のセル(Cell)で確立される。参照セル(Cell)は、なおUEによる上りリンクDPCH伝送のフレームタイミングの決定に参照を提供する。UEによって行われる測定(UE自体のタイミングと第2のセル(Cell)のタイミングとの間の観察された時間差に基づく。技術仕様書3GPP TS25.402の第5章「Synchronisation Counters and Parameters」の同期パラメータ「OFF」および「Tm」の定義を参照)は、第2の基地局(ノードB)に与えられるフレームオフセット+チップオフセットのパラメータ値を丸めた後、第2の無線リンク(RL)が、UEでのUL DPCHタイミング前のT+αCell2(tstep2)=T+125チップ、すなわち受信ウィンドウ(T+/−148チップ)の上限近くで受信されるようなものとなる。
【0029】
図10では、この第2のステップが、第2の基地局(ノードB)と、第2の無線リンク(RL)確立を担当するその制御装置(SRNC)との間で交換される無線リンクセットアップ要求(RL−SETUP−REQ)および応答(RL−SETUP−RESP)NBAPメッセージにより示されている。図10はまた、UEのアクティブセットに第2の無線リンク(RL)を加える(ACTIVE SET UPDATE)ためと、アクティブセットの更新が完了した(ACTIVE SET UPDATE COMPLETED)というUEからの対応する確認である、SRNCとUEとの間で交換されるRRCメッセージを示す。
【0030】
第3ステップ(図6)。参照セルで確立された第1の無線リンク(RL)が、アクティブセットから取り除かれる。次いでUEは、その伝送タイミングの調整を開始し、UEでのUL DPCHフレームタイミング決定のための新規の参照セルを実装に応じて選択する。この事例に限っては、アクティブセットにただ1つの無線リンク、すなわち第2の無線リンク(RL)しかないので、UEは第2のセル(Cell)をその新規の参照セルとして選択する。
【0031】
次いでUEは、UL DPCH伝送時間が、可能な限り、第2のセル(Cell)(新しい参照セル)からのDL DPCH受信後の1024チップになるように、UL DPCHフレームタイミングを調整し始める。これは微細な調整によってのみなされ得る(わずか200msごとに1/4チップ)。こうしてT+αCell2(t)は、時間とともに次第に低減し始める。
【0032】
図6では、破線が、上りリンク伝送の瞬間と、tstep2(第2ステップ)でのUEの受信ウィンドウとの位置を示し、実線がt(第3ステップ)での位置を示す。
【0033】
この例では、UEでのUL DPCHタイミング前のT+αCell2(tstep3)=T+105チップである。
【0034】
図10では、この第3ステップが、第1の基地局(ノードB)と、第1の無線リンク(RL)削除を担当するその制御装置(SRNC)との間で交換される無線リンク削除要求(RL−DELETION−REQ)および応答(RL−DELETION−RESP)NBAPメッセージにより示されている。図10はまた、UEのアクティブセットで第1無線リンク(RL)を削除する(ACTIVE SET UPDATE)ためと、アクティブセットの更新が完了した(ACTIVE SET UPDATE COMPLETED)というUEからの対応する確認である、SRNCとUEとの間で交換されるRRCメッセージを示す。
【0035】
第4ステップ(図7)。第3の無線リンク(RL)が、第3の基地局(ノードB)により制御される第3のセル(Cell)で確立される。UEによって行われる測定(UE自体のタイミングと第3のセル(Cell)のタイミングとの間の観察された時間差に基づく。技術仕様書3GPP TS25.402の第5章「Synchronisation Counters and Parameters」の同期パラメータ「OFF」および「Tm」の定義を参照)は、第2の基地局(ノードB)に与えられるフレームオフセット+チップオフセットのパラメータ値を丸めた後、第3の無線リンク(RL)が、UEでのUL DPCHタイミング前のT+αCell3(tstep4)=T−115チップ、すなわち受信ウィンドウ(T+/−148チップ)の下限近くで受信されるようなものとなる。また、UEは、UL DPCH伝送時間が、可能な限り、UEの新規の参照セル(Cell)からのDL DPCH受信後の1024チップになるように、UL DPCHフレームタイミングを調整し続けたので、T+αCell2(t)はさらに低減し、(図7の)値、すなわちUEでのUL DPCHフレームタイミング前のT+αCell2(tstep4)=T+85チップまで達していると仮定される。
【0036】
図7では、破線が、上りリンク伝送瞬間と、tstep2(第2ステップ)でのUEの受信ウィンドウの位置を示し、実線がtstep4(第4ステップ)での位置を示す。
【0037】
図10では、この第4ステップが、第3の基地局(ノードB)と、第3の無線リンク(RL)確立を担当するその制御装置(SRNC)との間で交換される無線リンクセットアップ要求(RL−SETUP−REQ)および応答(RL−SETUP−RESP)NBAPメッセージにより示されている。図10はまた、UEのアクティブセットに第3の無線リンク(RL)を加える(ACTIVE SET UPDATE)ためと、アクティブセットの更新が完了した(ACTIVE SET UPDATE COMPLETED)という、UEからの対応する確認である、SRNCとUEとの間で交換されるRRCメッセージを示す。
【0038】
第5ステップ(図8)。UEは、UL DPCH伝送時間が、可能な限り、UEの新規の参照セル(Cell)からのDL DPCH受信後の1024チップになるように、UL DPCHフレームタイミングを調整し続ける。T+αCell2(t)はさらに低減し、(図8の)値、すなわちUEでのUL DPCHフレームタイミング前のT+αCell2(tstep5)=T+75チップまで達していると仮定される。同様に、TがUEの新規の参照セル(Cell)からのDL DPCH受信瞬間に向かって10チップ移動しているので、T+αCell3(t)は低減し、いまや(図8の)値、すなわちUEでのUL DPCHフレームタイミング前のT+αCell3(tstep5)=T−125チップまで達していると仮定される。
【0039】
図8では、破線が、上りリンク伝送瞬間と、tstep2(第2ステップ)でのUEの受信ウィンドウの位置を示し、実線がtstep5(第5ステップ)での位置を示す。
【0040】
第6ステップ(図9)。第4の無線リンク(RL)が、第3の基地局(ノードB)により制御される第4のセル(Cell)で確立される。UEによって行われる測定(UE自体のタイミングと第4のセル(Cell)のタイミングとの間の観察された時間差に基づく。技術仕様書3GPP TS25.402の第5章「Synchronisation Counters and Parameters」の同期パラメータ「OFF」および「Tm」の定義を参照)は、第3の基地局(ノードB)に与えられるフレームオフセット+チップオフセットのパラメータ値を丸めた後、第4の無線リンク(RL)が、UEでのUL DPCHタイミング前のT+αCell4(tstep6)=T+121チップ、すなわち受信ウィンドウ(T+/−148チップ)の上限近くで受信されるようなものとなる。
【0041】
UEは、UL DPCH伝送時間が、可能な限り、UEの新規の参照セル(Cell)からのDL DPCH受信後の1024チップになるように、UL DPCHフレームタイミングを調整し続ける。T+αCell2(t)はさらに低減し、(図9の)値、すなわちUEでのUL DPCHフレームタイミング前のT+αCell2(tstep6)=T+65チップまで達していると仮定される。同様に、TがUEの新規の参照セル(Cell)からのDL DPCH受信瞬間に向かって10チップ移動しているので、T+αCell3(t)は低減し、いまや(図9の)値、すなわちUEでのUL DPCHフレームタイミング前のT+αCell3(tstep6)=T−135チップ、すなわち受信ウィンドウの下限の相当近くまで達していると仮定される。
【0042】
図10では、この第6ステップが、第3の基地局(ノードB)と、アクティブセットに第4の無線リンク(RL)追加を担当するその制御装置(SRNC)との間で交換される無線リンクセットアップ要求(RL−ADDITION−REQ)および応答(RL−ADDITION−RESP)NBAPメッセージにより示されている。図10はまた、UEのアクティブセットに第4の無線リンク(RL)を加える(ACTIVE SET UPDATE)ためと、アクティブセットの更新が完了した(ACTIVE SET UPDATE COMPLETED)という、UEからの対応する確認である、SRNCとUEとの間で交換されるRRCメッセージを示す。
【0043】
この第6ステップは、2つの無線リンク、すなわち第3の無線リンク(RL)と第4の無線リンク(RL)が、256チップの倍数分離れたタイミングで伝送されなければならない状況を生み出す。どちらの無線リンクも同じ基地局(ノードB)によって伝送される。
【0044】
しかし、なかには最適化された性能、具体的には、より低コストに結びつく、電力消費と無線資源管理の点での効率を目的とする、無線リンクの実質的に同時の伝送を実施する有利な機能を特色とする基地局製品もある。
【0045】
上記の2つのシナリオは、UMTS FDDシステムについて3GPPにより現在規格化されている伝送タイミングが、かかる最適な機能の使用を許さない例を提供している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0046】
【非特許文献1】技術仕様書3G TS25.301「Radio Interface Protocol Architecture」バージョン4.2 3GPP 2001年12月
【非特許文献2】技術仕様書3G TS25.401「UTRAN Overall Description」バージョン4.2.0のセクション11.2 3GPP 2001年9月
【非特許文献3】技術仕様書3G TS25.331「RRC Protocol Specification」バージョン4.1.0 3GPP 2001年6月
【非特許文献4】技術仕様書3G TS25.427「UTRAN Iub/Iur interface User Plane Protocol for DCH Data Streams」 3GPP 2001年12月
【非特許文献5】技術仕様書3G TS25.435「UTRAN Tub Interface User Plane Protocols for Common Transport Channel Data Streams」バージョン4.3.0 3GPP 2001年12月
【非特許文献6】技術仕様書3G TS25.402「Synchronization in UTRAN Stage 2」バージョン4.3.0のセクション7 3GPP 2001年12月
【非特許文献7】技術仕様書3G TS25.211「Physical channels and mapping of transport channels onto physical channels(FDD)(Release 6)」バージョン6.3.0のセクション7.6.3「Uplink/downlink timing at UE」 3GPP 2004年12月
【非特許文献8】技術仕様書3G TS25.133「Technical Specification Group Radio Access Network;Requirements for support of radio resource management(FDD)(Release 6)」バージョン6.8.0のセクション7.1「UE Transmit Timing」 3GPP 2004年12月
【非特許文献9】技術仕様書3G TS25.402「Technical Specification Group Radio Access Network;Synchronisation in UTRAN Stage 2(Release 6)」バージョン6.1.0の第5章「Synchronisation Counters and Parameters」 3GPP 2004年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
本発明の目的は、基地局が、それにより可能な場合には無線リンクの実質上の同時伝送を選択する機会を常にもつことができる機能強化されたプロセスを提供することにより、上記のシナリオから生じる潜在的な次善の伝送方式を制限することである。
【0048】
本発明は、一部の基地局が異なる無線を実質上同時に、すなわち実質上同時で有効なタイミングで伝送できる有利な機能を活用することを目的とする。したがって、このタイプの機能を有する基地局が、可能な場合には常に無線リンクの実質上の同時伝送を選択することができることが提案される。
【0049】
基地局の制御装置が伝送タイミング情報を決定し、それを監視下にある基地局に送るシステムでは、それら監視下にある基地局が、それら監視下にある基地局のうち前記の機能を有する基地局に無線リンクの実質上の同時伝送をもたらす新規または追加の無線リンクの伝送タイミングだけを送るように、かかる基地局制御装置が設計されてよい。
【0050】
あるいは、前記の機能を有する基地局は、実質上の同時伝送をもたらすことのない新規または追加の無線リンクの伝送タイミングを制御装置から受信すると、実質上同時になるように前記伝送タイミングを修正し、制御装置に前記修正された伝送タイミングを知らせる。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明の主要な実施形態によれば、実質上の同時伝送機能を有する基地局は、かかる実質上の同時伝送を選択する。より詳細には、本発明の一態様は、ソフターハンドオーバ(softer handover)における新規の無線リンクを含めて、実質上の同時伝送が使用され得るように、実質上の同時伝送機能を有する基地局が、ソフターハンドオーバにおける新規の無線リンクの確立時に無線リンク調整を実施できるようにすることにある。
【0052】
次いでUEに、かかる選択が知らされる。したがって、結果として得られるどの新規の無線リンクの伝送タイミングもUE側で決定され得るし、そうでなければUEに明示的に通信されてよい。
【0053】
広義の一態様によれば、本発明は、複数の無線リンクを実質上の同時伝送タイミングで無線端末に伝送するように構成された無線アクセスノードでの、無線端末と無線アクセスノードとの間のエアインターフェースで無線リンクの伝送タイミングを制御する方法を提供する。この方法は、第1および第2の無線リンクの前記無線端末への実質上の同時伝送が選択され得るように所定の条件が満たされているかどうかを判定するステップと、前記判定に応答して、前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送を選択するステップとを含む。
【0054】
一部の実施形態では、この方法が、無線端末に前記第1および第2の無線リンクの伝送が実質上同時になることを知らせるステップをさらに含む。
【0055】
一部の実施形態では、この方法が、無線アクセスノード制御装置に前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されることを知らせるステップをさらに含む。
【0056】
一部の実施形態では、この方法が、複数の無線セルにサーブするワイヤレスセルラ無線アクセスノードにおいて、前記第1の無線リンクが、第1のセルで無線端末に第1の伝送タイミングで伝送されているかどうか、および第1のセルでの無線端末への伝送に対して前記第2の無線リンクの確立が要求されているかどうかを判定するステップをさらに含む。
【0057】
一部の実施形態では、この方法が、複数の無線セルにサーブするワイヤレスセルラ無線アクセスノードにおいて、前記第1および第2の無線リンクが、それぞれ第1セルおよび第2セルでの無線端末への伝送に対して確立される過程にあるかどうかを判定するステップをさらに含む。
【0058】
一部の実施形態では、この方法が、第1の無線リンクを無線端末に伝送し、前記第1の無線リンクが第1の伝送タイミングで伝送される無線アクセスノードにおいて、前記第1および第2の無線リンクの伝送が実質上同時となるように第2の無線リンクの伝送タイミングを選択するステップをさらに含む。
【0059】
一部の実施形態では、この方法が、端末に前記選択された伝送タイミング情報を通信するステップをさらに含む。
【0060】
一部の実施形態では、この方法が、無線アクセスノード制御装置において、無線アクセスノードに第2の無線リンクの伝送タイミング情報を通信するステップと、前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されるという情報を無線アクセスノードから受信するステップとをさらに含む。
【0061】
一部の実施形態では、この方法が、無線端末に前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されるという前記情報を伝送するステップをさらに含む。
【0062】
一部の実施形態では、前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されるという前記情報が、前記第2の無線リンクの伝送タイミング情報を含む。
【0063】
一部の実施形態では、この方法が、無線端末に無線アクセスノードから受信した前記第2の無線リンクの前記タイミング情報を伝送するステップをさらに含む。
【0064】
他の広義の態様は、上記の諸方法を実施するように構成された無線アクセスノードを提供する。
【0065】
他の広義の態様は、上記の諸方法を実施するように構成された無線アクセスノード制御装置を提供する。
【0066】
本発明は、いかなる無線アクセスノード、例えばUMTS、GSM(登録商標)、GPRS、CDMA、またはTDMAシステムにおける基地局、分散基地局における無線ヘッド(radio head)、あるいは例えばMESH、Ad−hoc、WiFi、またはWiMAX無線ネットワークにおける無線アクセスポイントなどでも実施されてよい。同様に、本発明は、いかなる無線アクセスノード制御装置、例えば上記で述べた無線アクセスノードの例での制御装置などでも実施されてよい。
【0067】
他の広義の態様は、プロセッサによる実施に対応した、媒体上の命令をプロセッサが実行することのできるコンピュータ可読媒体を提供し、その命令は上記の諸方法を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】既に言及のなされている、UMTSシステムのアーキテクチャの概略図である。
【図2】既に言及のなされている、UTRANおよびUEに共通のプロトコル層を表す概略図である。
【図3】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第1のシナリオを示す概略図である。
【図4】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第2のシナリオを示す概略図である。
【図5】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第2のシナリオを示す概略図である。
【図6】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第2のシナリオを示す概略図である。
【図7】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第2のシナリオを示す概略図である。
【図8】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第2のシナリオを示す概略図である。
【図9】既に言及のなされている、単一の基地局から同時に伝送されることのない2つの無線リンクについての第2のシナリオを示す概略図である。
【図10】既に言及のなされている、上記の第2のシナリオにおけるノード間のメッセージの流れを示す概略図である。
【図11】本発明による、上記の第2のシナリオにおけるノード間のメッセージの流れを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、いくつかの実施形態を参照しながら、かついくつかの図面を参照しながら説明されるが、本発明は、それらにのみ限られることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。図面は概略的であり、限定を意図するものではない。
【0070】
以下に、UMTSシステムにおける、好ましいが限定するものではない本発明の実施形態を詳細に述べる。具体的には、本発明は無線アクセスノードおよび無線アクセスノード制御装置に向けられているが、以下ではそれぞれUMTS基地局(ノードB)および無線ネットワーク制御装置(RNC)において実施されるものとして本発明を説明する。
【0071】
UMTSシステムでは、いわゆる「フレームオフセット」パラメータが、トランスポートチャネルで使用される、エアインターフェースでの伝送用の特定無線フレームを定義するSFNにCFNをマップするのに使用される無線リンクの特定L1パラメータとして定義される同期パラメータである。UTRANでは、フレームオフセットパラメータは、SRNCによって計算され、ノードBに与えられる。同様に、いわゆる「チップオフセット」パラメータが、P−CCPCH(Primary Common Control Physical Channel。3GPP TS 25.211を参照)タイミングに関するDL DPCHのオフセットとして使用される。チップオフセットパラメータは、SRNCによって計算され、ノードBに与えられる。フレームオフセットパラメータとチップオフセットパラメータ双方の値は、NBAPプロトコルを介してノードBに送られる(3GPPにより2000年6月に発行された技術仕様書3G TS25.433バージョン3.2.0「UTRAN Iub Interface NBAP Signaling(Release 1999)」を参照)。このことは、図10で、SRNCから第3の基地局(ノードB)へ送られる、それぞれ第3無線リンク(RL)および第4無線リンク(RL)のフレームオフセットパラメータおよびチップオフセットパラメータの値を含む無線リンクセットアップメッセージにおいて示されている。これらのパラメータ値は、対応する無線リンクの第3の基地局(ノードB)での伝送タイミングを定義する。
【0072】
本発明の好ましい実施形態によれば、基地局(ノードB)が、実質上の同時伝送が選択されるように所定の条件が満たされているかどうかを判定する。
【0073】
かかる所定の条件は、基地局が、あるセルで、あるUEに対して既に無線リンクを伝送していて、その同じセルで同じUEに対してSRNCから追加の無線リンクに対するセットアップまたは追加要求を受け取る場合に対応することができる。このような事例は、先に説明されていて(第2シナリオ)、所与のUEに対し同じセル(Cell)で第3の無線リンク(RL)を先に確立している第3の基地局(ノードB)が受信する第4の無線リンク(RL)の追加要求により示されている。第2のシナリオは、複数の無線リンクが同じセルで同じUEに対して伝送されながら、SRNCが、基地局にそれら複数の無線リンクの実質上の同時伝送にはつながらない追加無線リンクの伝送タイミングパラメータを送るという可能性を示した。このような場合、基地局が、実質上の同時伝送が選択され得るかどうか、すなわち実質上の同時伝送が達成され得るように追加無線リンクについて送られる前記伝送タイミングパラメータが修正され得るかどうかを判定する。UMTSシステムでは、かかる修正は、典型的には所定のチップオフセット(典型的には256チップ)ずつのシフトにある。
【0074】
かかる所定の条件はまた、基地局が、いわゆる「ソフターハンドオーバ」モードにおけるUEへの複数の無線リンクの伝送要求、すなわち所与のUEに対する、基地局が網羅するCell1つにつき1つの無線リンクとなる複数の無線リンクの伝送要求を受け取る場合にも対応することができる。ここでもまた、SRNCが、複数の無線リンクの実質上の同時伝送にはつながらない、確立されるべき無線リンクの伝送タイミングパラメータを送る可能性がある。このような場合、基地局が、実質上の同時伝送が選択され得るかどうか、すなわち実質上の同時伝送が達成され得るように複数の無線リンクの各RLについて送られる前記伝送タイミングパラメータが修正され得るかどうかを判定する。UMTSシステムでは、かかる修正は、典型的には所定のチップオフセット(典型的には256チップ)ずつのシフトにある。
【0075】
本発明によれば、実質上の同時伝送機能を有する基地局は、前記判定に応答して、かかる実質上の同時伝送を選択する。
【0076】
本発明を実施する基地局は、実質上の同時伝送が選択され得るように所定の条件が満たされているかどうかを判定し、前記判定に応答して、かかる実質上の同時伝送を選択するように構成された伝送制御モジュールを含む。この伝送制御モジュールは、まずいくつかの所定の条件が満たされているかどうかを判定する。例えば、上記で説明されたように、あるセルで、あるUEに対して追加の無線リンクを要求するセットアップまたは追加要求をSRNCから受信すると、その同じセルで同じUEに対して基地局が既に無線リンクを伝送しているかどうかを判定する。その伝送制御モジュールはまた、例えば、基地局が、「ソフターハンドオーバ」モードにおいて、あるUEに対して複数の無線リンクの伝送要求を受信したときにはいつでも検出する。
【0077】
次いで伝送制御モジュールは、実質上の同時伝送が生じ得るように受信した伝送タイミングパラメータの修正が必要あるいは考慮されるべきかどうか、およびそれが可能かどうかを判定する。本発明の好ましい実施形態では、かかる修正は可能な限り常に選択され、結果として複数の無線リンクの実質上の同時伝送の選択をもたらす。
【0078】
したがって基地局は、それがSRNCからセットアップ/追加要求を受信した対象である、いくつかの新規の無線リンクのまず初めに考慮された伝送タイミングに作用する実質上の同時伝送を選択することができる。次いで基地局は、UEがその受信タイミングを同期させることができるように、UEに修正された伝送タイミングを直接知らせる。以下に、UMTSシステムをコンテキストとする代替実施形態の一例を示す。
【0079】
UE側で同期するために、いわゆる「DPCHフレームオフセット」パラメータが、ノードBとUEの両方でのPCCPCHタイミングに関するDL DPCHのオフセットとして使用される。DPCHフレームオフセットは、256チップを境界としてそれに最も近い値に丸められたチップオフセットに等しい。それはSRNCによって計算され、アクティブセットの各無線リンクごとにSRNCによりUEに送られる。
【0080】
SRNCは「DPCHフレームオフセット」パラメータ値をUEに示さなければならないので、ノードBは、実際にそうであるなら、実質上の同時伝送を実施するために、伝送瞬間の位置としてまず初めに考慮されたその値(すなわち「チップオフセット」パラメータ値から推定された値)と比べて伝送瞬間がチップオフセット単位(典型的には+/−256チップ)でシフトされたのかどうかをSRNCに示すべきである。
【0081】
このことは、技術仕様書3GPP TS 25.433のバージョン6.4.0で現在規格化されている、RADIO LINK SETUP RESPONSE、RADIO LINK SETUP FAILURE、RADIO LINK ADDITION RESPONSE、および/またはRADIO LINK ADDITION FAILUREという「RL Information Response」情報要素または「Unsuccessful RL Information Response」情報要素それぞれに例えば「初期DL DPCHタイミング調整」と呼ばれる新しい任意選択の情報要素を導入することにより実施され得る。かかる新しい情報要素は、例えば、上記で述べた新しいIEについての仕様により提供されている、フォーマットENUMERATED(−256チップ、+256チップ)をもつことができる。この新しいIEは、図11で、第4の無線リンク(RL)の追加に関して、第3の基地局(ノードB)によりSRNCに送られるRL−ADDITION−RESP NBAPメッセージにおいて示されている。
【0082】
場合によっては、SRNCが、いわゆるRNSAPプロトコルに従って、基地局がIurインターフェースを介して連結されているDRNCを介して、基地局と通信する(3GPPにより2005年1月に発行された技術仕様書3GPP TS25.423「UTRAN Iur Interface RNSAP Signalling(Release 6)」バージョン6.4.1を参照)。本発明によれば、技術仕様書3GPP TS 25.423のバージョン6.4.1で現在規格化されている、RADIO LINK SETUP RESPONSE、RADIO LINK SETUP FAILURE、RADIO LINK ADDITION RESPONSE、および/またはRADIO LINK ADDITION FAILUREという「RL Information Response」情報要素または「Unsuccessful RL Information Response」情報要素それぞれに上記の新しい任意選択の情報要素を導入することも提案される。
【0083】
さらに、SRNCは、ノードBにより提供されるフィードバックに基づいてUEに送られる「DPCHフレームオフセット」パラメータ値を構成するのであるから、SRNCは、そうすることも可能であるという示唆をノードBにも与えるべきである。したがって、本発明の他の実施形態によれば、SRNCは、その新規の無線リンクのセットアップまたは追加要求において、実質上の同時伝送が選択され得るかどうかを指示する。例えば、SRNCは、その新規の無線リンクのセットアップまたは追加要求において、無線リンクのセットアップまたは追加要求に含まれる伝送タイミングパラメータの修正が可能かどうかを指示する。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、RADIO LINK SETUP REQUEST、RADIO LINK ADDITION REQUEST NBAP、およびRNSAPメッセージに例えば「Initial DL DPCH Timing Adjustment Allowed」と呼ばれる新しい任意選択の情報要素を導入することが提案される。この新しい「Initial DL DPCH Timing Adjustment Allowed」情報要素は、単にフラグとして設計されてもよい(例えば単なる1ビット)。この新しいIEは、図11で、第4の無線リンク(RL)の追加に関して、SRNCにより第3の基地局(ノードB)に送られるRL−ADDITION−REQ NBAPメッセージにおいて示されている。
【0085】
実質上の同時伝送を実施するために伝送瞬間がチップオフセット単位でシフトされたという情報をノードBから受信すると、SRNCは、修正された伝送タイミング情報をUEに与える。このことは、図11で、第4の無線リンク(RL)の追加に関して、SRNCからUEに送られる、DPCHフレームオフセットパラメータの新しい値をもつアクティブセット更新ACTIVE SET UPDATEメッセージにより示されている。
【0086】
代替実施形態では、SRNCは、可能な限り常に実質上の同時伝送が生じるように、すなわち実質上の同時伝送でないよりも好ましいように、伝送タイミングを選択することができる。次いで、選択された伝送タイミングが基地局および端末に通信されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線リンクを実質上の同時伝送タイミングで無線端末に伝送するように構成された無線アクセスノードでの、無線端末と無線アクセスノードとの間のエアインターフェースで無線リンクの伝送タイミングを制御する方法であって、その工程が、
第1および第2の無線リンクの前記無線端末への実質上の同時伝送が選択され得るように所定の条件が満たされているかどうかを判定するステップと、
前記判定に応答して、前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送を選択するステップとを含む、方法。
【請求項2】
無線端末に前記第1および第2の無線リンクの伝送が実質上同時になることを知らせるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
無線アクセスノード制御装置に前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されることを知らせるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
複数の無線セルにサーブするワイヤレスセルラ無線アクセスノードにおいて、所定の条件が満たされているかどうかを判定するステップが、前記第1の無線リンクが、第1のセルで無線端末に第1の伝送タイミングで伝送されているかどうか、および第1のセルでの無線端末への伝送に対して前記第2の無線リンクの確立が要求されているかどうかを判定するステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
複数の無線セルにサーブするワイヤレスセルラ無線アクセスノードにおいて、所定の条件が満たされているかどうかを判定するステップが、前記第1および第2の無線リンクが、それぞれ第1セルおよび第2セルでの無線端末への伝送に対して確立される過程にあるかどうかを判定するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第1の無線リンクを無線端末に伝送し、前記第1の無線リンクが第1の伝送タイミングで伝送される無線アクセスノードにおいて、前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送を選択するステップが、前記第1および第2の無線リンクの伝送が実質上同時となるように第2の無線リンクの伝送タイミングを選択するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
無線端末に前記第1および第2の無線リンクの伝送が実質上同時となることを知らせるステップが、端末に前記選択された伝送タイミング情報を通信するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
無線アクセスノード制御装置において、
無線アクセスノードに第2の無線リンクの伝送タイミング情報を通信するステップと、
前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されるという情報を無線アクセスノードから受信するステップとをさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
無線端末に前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されるという情報を伝送するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2の無線リンクの実質上の同時伝送が選択されるという前記情報が、前記第2の無線リンクの伝送タイミング情報を含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
無線端末に無線アクセスノードから受信した前記第2の無線リンクの前記タイミング情報を伝送するステップを含む、請求項9および10に記載の方法。
【請求項12】
無線アクセスノードが、UMTSノードBである、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
無線アクセスノード制御装置が、UMTS無線ネットワーク制御装置である、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
プロセッサによる実施に対応した、媒体上の命令をプロセッサが実行することができ、その命令が請求項1から13のいずれかに記載の方法を実行する、コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
請求項1から7のいずれかに記載の方法を実施するように構成された、無線アクセスノード。
【請求項16】
請求項15に記載の無線アクセスノードを含む、UMTSノードB。
【請求項17】
請求項8から11のいずれかに記載の方法を実施するように構成された、無線アクセスノード制御装置。
【請求項18】
請求項17に記載の無線アクセスノード制御装置を含む、UMTS無線ネットワーク制御装置。
【請求項19】
請求項15および16に記載の無線アクセスノードと、請求項17および18に記載の無線アクセスノード制御装置とを含む、ワイヤレスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−9381(P2013−9381A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−165436(P2012−165436)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2007−553535(P2007−553535)の分割
【原出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】