説明

無線通信システム及び無線通信システムの移動局

【課題】移動局が基地局通信中であるビジー状態において、他の移動局が通信を行う。
【解決手段】複数の移動局が無線で基地局と接続され、基地局を介して移動局と移動局又は指令台との間で通信、又は基地局を介さずに移動局間の直接通信を行う無線通信システムにおいて、基地局は、移動局から受信中であることを示すビジー信号を第1の周波数を用いて送信し、移動局は、ビジー信号受信中に送信ボタンが押下され続けた状態において、第1の時間以内にビジー信号を受信中でなくなった場合は、送信可能音を鳴動するとともに入力された音声信号を送信し、第1の時間ビジー信号を受信し続けた場合は送信不可能音を鳴動し、第1の時間ビジー信号を受信し続けた後、第2の時間以内にビジー信号を受信中でなくなった場合、および第2の時間ビジー信号を受信し続けた場合は、送信可能音を鳴動するとともに入力された音声信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局を介して移動局と移動局との間の無線通話や、基地局を介して移動局と指令台との間の無線通話や、基地局を介さずに移動局と移動局との間の無線による移動局間直接通話を行う無線通信システム、あるいは該無線通信システムで使用される移動局に関し、特に、基地局を介して移動局が通話中においても、他の移動局が通話を行うことのできるデジタル移動通信システムや移動局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に本技術分野に関する無線通信システムの概略構成例を示す。この無線通信システムにおいては、音声データを伝送するチャネル1つに対して1つのキャリアを割り当てるSCPC方式(Single Channel Per Carrier)が用いられている。SCPC方式のデジタル無線システムは、例えば、デジタル通信方式標準規格ARIB STD−T61で規定されている。
図1のシステムでは、指令台(統制卓、通信卓ともいう。)10と、回線制御装置20と、複数の基地局30(1)〜30(2)と、車載機(車載無線機)である複数の移動局40(1)〜40(4)及び携帯機(携帯無線機)である移動局40(5)とを備えている。指令台10と回線制御装置20は、有線の伝送路5により接続され、回線制御装置20と基地局30は、有線あるいはマイクロ回線等の伝送路4により接続されている。なお、基地局を代表する場合は基地局30と称し、移動局を代表する場合は移動局40と称する。
【0003】
基地局30と移動局40は無線により接続可能となっており、指令台10と移動局40、および移動局40同士は、基地局30を介する基地局通信により通話接続される。また、移動局40同士は、基地局30を介さない移動局間直接通信により接続可能となっている。図1では、指令台10と移動局40(1)、および移動局40(2)と移動局40(5)が基地局通信により接続され、移動局40(3)と移動局40(4)が移動局間直接通信により接続されている。
【0004】
基地局30は、それぞれ通信ゾーン(あるいは通信エリアとも言う。)を有し、例えば、基地局30(1)は通信ゾーン1を有するが、周波数の制約により、通信ゾーン1内の複数の移動局40に対し、同一の送信周波数(基地局から移動局への下り信号周波数:F1)を用いて送信を行い、また、同一の受信周波数(移動局から基地局への上り信号周波数:F2)を用いて受信を行うよう構成されている。このように、基地局を介する基地局通信においては、同時に双方向の通信を行う複信通信が可能となっている。
【0005】
また、移動局間直接通信においては、上りと下りの双方向に、上記上り信号周波数F2と同一の周波数が使用され、同時に一方向のみの通信が可能である単信通信が行われる。移動局間直接通信において、基地局通信の上り信号周波数F2と同一の周波数を使用する理由は、周波数の節約ができ、また、例えば移動局40(4)は、基地局エリア(通信ゾーン1)内では周波数F2で基地局通信を行い、基地局エリア外でも周波数F2で直接通信を行うことが可能になるので、移動局40は、基地局エリアの圏内か圏外かを意識する必要がなくなるからである。
【0006】
また、この無線通信システムでは、基地局を介する基地局通信を行っている場合は、基地局30から移動局40へビジー信号を送信するように構成されている。これは、移動局40から基地局30への上り信号周波数が1波(F2)のみであることから、通信ゾーン1内において既にある移動局40が通話中の場合、他の移動局40が送信できないことを知らせるためである。移動局40は、ビジー信号を受信している間は、他の移動局の通信を邪魔しないように、送信を抑止するように構成されている。
このように、通信ゾーン1内の移動局間の基地局通信が行われている間、通信ゾーン1内の他の移動局40は、通信を行うことができない。
【0007】
下記の特許文献1には、ARIB STD−T61に基づくSCPC方式のデジタル無線システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−71703公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した無線通信システムにおいては、通信ゾーン内の移動局において基地局通信が行われている間、該通信ゾーン内の他の移動局は、通信を行うことができない。
本発明は、このような従来の課題を解決するために為されたもので、通信ゾーン内の移動局において基地局通信が行われているときにおいても、該通信ゾーン内の他の移動局が、通信を行うことができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための、本願発明の無線通信システムの代表的な構成は、次のとおりである。すなわち、
複数の移動局と、前記複数の移動局と無線で接続される基地局と、前記基地局を介して前記移動局と通話信号を交信する指令台とを備えた無線通信システムであって、
前記基地局は、
第1の周波数を用いて前記各移動局に信号を送信する基地局送信部と、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を用いて前記各移動局から信号を受信する基地局受信部とを備え、
前記基地局を介する前記移動局間、または、前記移動局と前記指令台との間の基地局通信において、送信元の前記移動局からの前記第2の周波数を用いた通話信号を前記基地局受信部で受信中に、移動局から受信中であることを示すビジー信号を前記第1の周波数を用いて前記基地局送信部から送信し、
前記移動局は、
前記第2の周波数を用いて信号を送信する移動局送信部と、前記第1の周波数を用いて前記基地局から信号を受信する移動局受信部と、通信の際に使用者からの送信の指示を受け付ける操作部と、使用者からの音声を入力するマイクと、送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部とを備え、
前記基地局から前記ビジー信号を受信中に前記操作部が前記送信の指示を受け続けている状態において、前記送信の指示の開始から所定の第1の時間経過する前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記マイクから入力された音声信号を前記移動局送信部から送信する音声信号送信動作を行い、前記第1の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部は送信不可状態である旨を報知し、前記第1の時間の間前記ビジー信号を受信し続けた後、前記送信の指示の開始から所定の第2の時間の経過前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合、および、前記第2の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記音声信号送信動作を行うことを特徴とする無線通信システム。
【発明の効果】
【0011】
通信ゾーン内の移動局において基地局通信が行われているときにおいても、該通信ゾーン内の他の移動局が、通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る指令台と回線制御装置と基地局の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る移動局の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る移動局の送信時の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図1〜図4を用いて説明する。図1は、背景技術の説明で述べたように、本技術分野に関する無線通信システムの概略構成例であり、本発明の実施形態に係る無線通信システムの概略構成例を示す図である。背景技術で述べた点は説明を省略する。
図1の例では、基地局30(1)〜30(2)は2つであるが、3つ以上であってもよい。また、移動局は2つ以上あればよい。
基地局30(1)は、送信周波数F1(下り:基地局から移動局へ)の送信部と、受信周波数F2(上り:移動局から基地局へ)の受信部とから構成される送受信部を有する。基地局30(2)は、送信周波数F4(下り:基地局から移動局へ)の送信部と、受信周波数F2(上り:移動局から基地局へ)の受信部とから構成される送受信部を有する。送信周波数F4は、送信周波数F1と同一周波数とすることも可能である。
【0014】
本実施形態の無線通信システムにおいては、指令台10から移動局40への通話要求があった場合、あるいは、移動局40から指令台10や他の移動局40への通話要求があった場合に、送信側と受信側との間で受信の同期をとるための同期信号(同期バースト;SB(Synchronous Burst))とともに音声データを無線通信する非常送方式が用いられている。
図1の無線通信システムは、例えば消防救急用無線通信システムであり、車載機40は消防車又は救急車に搭載された無線機であり、通信ゾーンの大きさは半径数km〜数十km程度である。
【0015】
図2は、本発明の実施形態における指令台10、回線制御装置20、および基地局30の概略構成を示すブロック図である。なお、回線制御装置20を指令台10に組み込むように構成することもできる。
指令台10は、CPU等で構成された制御部11、記憶部12、表示部13、操作部14、音声を出力するスピーカ15、オペレータの音声が入力されるマイク16で構成される。制御部11は、指令台10の各構成部を制御する。記憶部12は、制御部11のCPUが動作する動作プログラムを記憶しており、制御部11のCPUは、記憶部12から動作プログラムを読み出して動作する。
指令台10は、マイク16とスピーカ15を用いて基地局30を介して移動局40との間で、移動局40への指令等に関する通話を行う、つまり通話信号を交信する。
【0016】
回線制御装置20は、CPU等で構成された制御部21および記憶部22で構成され、制御部21は、基地局30を介する移動局40間の通話回線や指令台10との間の通話回線を切替制御し、また、指令台10からの、あるいは移動局40からの発呼(call)制御等の制御を行うものである。
回線制御装置20の記憶部22は、制御部21のCPUが動作する動作プログラムを記憶しており、制御部21のCPUは、記憶部22から動作プログラムを読み出して動作する。
【0017】
次に、基地局30の構成について説明する。基地局30は、送信部33、受信部34、CPU等で構成された制御部31、および記憶部32で構成されており、制御部31は、基地局30の各構成部を制御する。記憶部32は、制御部31のCPUが動作する動作プログラムを記憶しており、制御部31のCPUは、記憶部32から動作プログラムを読み出して動作する。
送信部33は、指令台10等からの通話信号を無線周波数F1で移動局40に送信する。また、受信部34は、移動局40から無線周波数F2で送られてくる通話信号を受信する。
【0018】
制御部31は、回線制御装置20を介して受信した指令台10、あるいは他の基地局30からの通話信号を送信部33へ送信し、受信部34で受信した移動局40からの通話信号を回線制御装置20を介して指令台10、あるいは他の基地局30へ送信する。
また、制御部31は、移動局40からの通話信号を受信部34により周波数F2で受信している間、送信部33によりビジー信号を周波数F1で送信する。ビジー(Busy)信号は、送信信号のなかの同期信号、あるいは、通話用チャネルの特定ビットに割り当てられるものであり、ビジー状態か非ビジー状態かを表す情報として送信信号に含まれる。なお、以下、ビジー状態を表す場合の信号をビジー信号といい、非ビジー状態を表す場合の信号を非ビジー信号という。
例えば、本実施形態では、移動局40同士間の通話の場合は、受信部34で受信した通話信号を折り返し、該折り返し信号を送信部33から送信するよう構成されているので、該折り返し信号中にビジー信号が含まれる。
【0019】
次に、移動局40の構成について図3を用いて説明する。図3は、移動局40の概略構成を示すブロック図である。移動局40は、車載機40(1)〜40(4)や、携帯機40(5)を代表する移動局である。図3で示す移動局40は、上り方向無線キャリア(周波数F2)および下り方向無線キャリア(周波数F1)のペアの基地局波が用いられ、基地局30を介して同時送受波ができる複信方式の無線通信装置である。つまり、基地局通信を、後述する送信部43と第1受信部44を用いて、複信により行う構成となっている。また、この移動局40は、他の移動局40との間で基地局30を介さずに単信方式により直接通信を行う無線通信装置でもある。つまり、移動局間直接通信を、後述する送信部43と第2受信部45を用いて、無線キャリア(周波数F2)で単信により行う構成となっている。
【0020】
図3において、41は移動局40の各構成部を制御する制御部、42は制御部41と接続された記憶部である。記憶部42は、制御部41のCPUが動作する動作プログラムを記憶しており、制御部41のCPUは、記憶部42から動作プログラムを読み出して動作する。
また、43は送信部、44は基地局30からの基地局波(F1)を受信する第1受信部、45は他の移動局40からの直接波(F2)を受信する第2受信部、46は同時に送受信を行うため送受信経路を分離するアンテナ共用器、47は基地局30との送受信や他の移動局40との直接通信を行うためのアンテナ、48は、マイク52から入力された音声信号を符号化し、第1受信部や第2受信部で受信された音声信号を復号化する音声符号化/復号化部、49は音声や音を出力するスピーカである。音声符号化/復号化部48は、制御部41内に組み込んで構成することも可能である。送信部43、第1受信部44、第2受信部45は、それぞれ、制御部41とアンテナ共用器46に接続されている。スピーカ49は、移動局が送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部としても機能する。
【0021】
50はハンドセットであり、音声や音を出力するレシーバ51、音声を入力するマイク52、使用者からの入力を受け付ける操作部53、各種表示を行うLCD等から構成される表示部54を有する。操作部53は、PTT(Push To Talk)を行うためのPTTボタン等を有し、PTTボタンにより、通信の際に使用者からの送信の指示を受け付ける。PTTボタンを押している間、その移動局40は通話の送信中状態となる。操作部53と表示部54は、制御部41に接続されている。レシーバ51及び表示部54は、移動局が送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部としても機能する。なお、表示部54はハンドセット50以外、例えば、移動局本体に設けられていても良い。
【0022】
移動局40において、マイク52から入力される音声信号は、音声符号化/復号化部48で符号化され、制御部41で送信のための所定の信号処理を施した後、送信部43に入力される。送信部43に入力された信号は、送信のための所定の変調がなされ、所定の送信周波数F2に変換され、アンテナ共用器46を介してアンテナ47から出力され、基地局30や他の移動局40へ送信される。
【0023】
一方、基地局30の送信部33からの無線キャリア(周波数F1)は、アンテナ47で受信され、アンテナ共用器46を介して第1受信部44に入力される。第1受信部44に入力された信号は、高周波増幅され、所定の中間周波数に変換され、更に、復調され、制御部41に供給される。制御部41で所定の信号処理がなされた後、音声符号化/復号化部48で復号化され、スピーカ49やレシーバ51から音声出力される。
また、他の移動局40からの直接通信による無線キャリア(周波数F2)は、アンテナ47で受信され、アンテナ共用器46を介して第2受信部45に入力される。第2受信部45に入力された信号は、高周波増幅され、所定の中間周波数に変換され、更に、復調され、制御部41に供給される。制御部41で所定の信号処理がなされた後、音声符号化/復号化部48で復号化され、スピーカ49やレシーバ51から音声出力される。
【0024】
次に、本実施形態に係る移動局の通信動作について説明する。最初に、移動局40と指令台10間の基地局通信動作について説明する。ここでは例として、図1に示す移動局40(1)から指令台10へ同報通信により通話する場合の基地局通信動作について説明する。ここで、同報通信の場合は、基地局30を介して移動局40(1)から送信された通話信号を指令台10及び通信ゾーン1内の他の移動局40で受信して聴くことができ、また、基地局30を介して指令台10から送信された通話信号を通信ゾーン1内の全ての移動局40で受信して聴くことができる。
移動局40(1)から指令台10へ通話する場合、送信元の移動局40(1)の操作部53を操作し、例えば、PTTボタンを押す。PTTボタンを押している間は送信中の状態となるので、このときマイク52から入力される音声信号は、音声符号化/復号化部48から制御部41を経て送信部43に入力され、アンテナ共用器46を介してアンテナ47から送信周波数F2で出力され、基地局30(1)の受信部34へ送信される。基地局30(1)へ送信される通話信号には、送信元である移動局40(1)の送信元ID(識別子)が含まれる。
【0025】
基地局30(1)において、受信部34で受信された通話信号は、基地局30(1)の制御部31に送られ、制御部31でその内容を解析される。制御部31は、その通話信号を回線制御装置20を介して指令台10へ送るとともに、移動局40(1)からの音声を折り返して送信部33から送信する。その際、送信信号にビジー信号(送信信号中の特定ビット)が含まれるよう、制御部31は送信部33を制御する。
こうして、ビジー信号は、移動局40(1)から送信が行われている間、基地局30(1)から送信される。PTTボタン押下状態が解除されると、移動局40(1)の送信状態が解除され、基地局30(1)からの折り返し信号(ビジー信号を含む)も停止する。
【0026】
指令台10では、基地局30(1)から通話信号を受信すると、スピーカ15から通話信号の内容が音声出力され、オペレータは、移動局40(1)からの通話内容を聞くことができる。
通信ゾーン1内の各移動局40(1),(2),(3),(5)では、基地局30(1)から折り返し送信された通話信号は、アンテナ47で受信され、アンテナ共用器46を介して第1受信部44に入力される。第1受信部44に入力された信号は、制御部41でその内容を解析され、ビジー信号が含まれているか否か判断される。
送信元以外の移動局40(2),(3),(5)においては、第1受信部44に入力された信号は、制御部41から音声符号化/復号化部48を経て、スピーカ49やレシーバ51から音声出力される。また、ビジー信号を受信中であっても、後述するように強制送信動作が可能となる。
【0027】
指令台10において、送信元の移動局40(1)に対して通話応答を行うためにオペレータがマイク16を用いて音声入力すると、マイク16から入力される音声信号は、回線制御装置20を介して基地局30(1)へ送信される。
基地局30(1)において、回線制御装置20から受信した通話信号は、制御部31から送信部33に送られ、送信部33から周波数F1で送信される。このとき、送信元の移動局40(1)が送信中(PTTボタン押下中)のときは、送信元の移動局40(1)からの折り返し信号の送信を停止し、指令台10からの通話信号を送信する。この指令台10からの通話信号に含めてビジー信号が送信される。送信元の移動局40(1)が送信中でないときは、指令台10からの通話信号に含めて非ビジー信号が送信される。
移動局40(1)において、基地局30(1)から送信された通話信号は、アンテナ47で受信され、アンテナ共用器46を介して第1受信部44に入力される。第1受信部44に入力された信号は、制御部41から音声符号化/復号化部48を経て、スピーカ49やレシーバ51から音声出力される。同様に、通信ゾーン1内の他の移動局40においても、基地局30(1)から送信された通話信号は、アンテナ47で受信され、スピーカ49やレシーバ51から音声出力される。
【0028】
次に、移動局間の基地局通信動作について説明する。ここでは例として、移動局40(2)から移動局40(5)への同報通信による基地局通信動作について説明する。
先ず、送信元の移動局40(2)の操作部53を操作し、例えば、PTTボタンを押す。PTTボタンを押している間は送信中の状態となるので、このときマイク52から入力される音声信号は、音声符号化/復号化部48から制御部41を経て送信部43に入力され、アンテナ共用器46を介してアンテナ47から送信周波数F2で出力され、基地局30(1)の受信部34へ送信される。基地局30(1)へ送信される通話信号には、送信元である移動局40(2)の送信元ID(識別子)が含まれる。
【0029】
基地局30(1)において、受信部34で受信された通話信号は、基地局30(1)の制御部31に送られ、制御部31でその内容を解析される。制御部31は、その通話信号を折り返し信号として、送信部33から移動局40へ送信するよう制御する。このとき、折り返し信号中にビジー信号を含ませる。
【0030】
こうして、折り返し信号とビジー信号は、移動局40間の基地局通信が行われる場合に、基地局30(1)から通信ゾーン1内の各移動局40(1),(2),(3),(5)へ送信される。詳しくは、移動局40(2)から基地局30(1)への通話信号送信中に、基地局30(1)からの折り返し信号中にビジー信号が含まれて送信される。
送信元以外の移動局40(1),(3),(5)においては、ビジー信号を受信中であっても、後述するように強制送信動作が可能となる。
【0031】
次に、本実施形態に係る移動局間の直接通信動作について説明する。この場合は、同時に一方向の送信のみを行う単信通信となる。ここでは例として、移動局40(3)から移動局40(4)への同報通信による直接通信動作について説明する。
先ず、送信元の移動局40(3)の操作部53を操作し、例えば、PTTボタンを押す。PTTボタンを押している間は送信中の状態となるので、このときマイク52から入力される音声信号は、音声符号化/復号化部48から制御部41を経て送信部43に入力され、アンテナ共用器46を介してアンテナ47から送信周波数F2で出力され、他の移動局40へ送信される。送信される通話信号には、送信元である移動局40(3)の送信元IDが含まれる。
【0032】
宛先である移動局40(4)を含む他の移動局40においては、送信元の移動局40(3)から送信された通話信号は、アンテナ47で受信され、アンテナ共用器46を介して第2受信部45に入力される。第2受信部45に入力された信号は、制御部41から音声符号化/復号化部48を経て、スピーカ49やレシーバ51から音声出力される。
移動局間直接通信においては第2受信部45で受信するので、このことから制御部41は、移動局間直接通信であることを認識できる。
【0033】
次に、移動局40における送信時の処理を、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態に係る移動局の送信時の動作を示す図である。
まず、移動局40は、自局のPTTボタンが押下されたか否か判断し(ステップS1)、PTTボタンが押下されていない場合はPTTボタンが押下されるまで待ち(ステップS1でNo)、PTTボタンが押下された場合は(ステップS1でYes)、基地局30からビジー信号を受信中か否かを判断し(ステップS2)、ビジー信号を受信中でない場合は(ステップS2でNo)、ステップS9へ移行し、後述する送信可能音鳴動やマイク52から入力した音声の送信処理を行う。
【0034】
一方、基地局30からビジー信号を受信中である場合は(ステップS2でYes)、つまり、他の移動局40からの送信波(周波数F2)を基地局30が受信中である場合は、PTTボタン押下が解除されたか(PTTボタンが離されたか)否か判断し(ステップS3)、PTTボタン押下が解除されている場合は(ステップS3でYes)、ステップS1へ戻る。PTTボタン押下が解除されていない場合は(ステップS3でNo)、PTTボタン押下時間がPTTボタンの押下開始から第1の時間を経過したか否か判断し(ステップS4)、第1の時間を経過していない場合は(ステップS4でNo)、ステップS2へ戻る。
【0035】
第1の時間を経過した場合は(ステップS4でYes)、つまり、ビジー信号受信中に第1の時間以上PTTボタン押下し続けた場合は、送信不可状態である旨を使用者に報知する。ここでは、スピーカ49及び/またはレシーバ51から送信不可状態である旨を知らせるための送信不可能音を鳴動し(ステップS5)、ステップS6へ移行する。この第1の時間は、例えば2秒間程度に設定される。なお、送信不可状態である旨の報知は音以外にも表示部54のLEDなどを用いても良く、また、これらの組み合わせであってもよい。
【0036】
ステップS6においては、基地局30からビジー信号を受信中か否か(継続して受信中か否か)を判断し、ビジー信号を受信中でない場合は(ステップS6でNo)、ステップS9へ移行し、後述する送信可能音鳴動やマイク52から入力した音声の送信処理を行う。
基地局30からビジー信号を受信中である場合は(ステップS6でYes)、PTTボタン押下が解除されたか否か判断し(ステップS7)、PTTボタン押下が解除されている場合は(ステップS7でYes)、ステップS1へ戻る。PTTボタン押下が解除されていない場合は(ステップS7でNo)、PTTボタン押下時間がPTTボタンの押下開始から第2の時間を経過したか否か判断し(ステップS8)、第2の時間を経過していない場合は(ステップS8でNo)、ステップS6へ戻る。
【0037】
第2の時間を経過した場合は(ステップS8でYes)、つまり、ビジー信号受信中に第2の時間以上PTTボタン押下し続けた場合は、送信可状態である旨を使用者に報知する。ここでは、スピーカ49及び/またはレシーバ51から送信可状態である旨を知らせるための送信可能音を鳴動し(ステップS9)、マイク52から入力した音声の送信処理を行って(ステップS10)、その後、送信処理を終了する。この第2の時間は、上記第1の時間を含む(第1の時間よりも長い)もので例えば5秒間程度に設定される。なお、送信可状態である旨の報知は音以外にも表示部54のLEDなどを用いても良く、また、これらの組み合わせであってもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態においては、他の移動局が基地局通信により送信を行っているときにおいても、つまり、移動局がビジー信号受信中においても、使用者が該移動局のPTTボタンを第1の時間押下し続けることにより、送信不可である旨を知らせるための送信不可能音を鳴動し、さらに、使用者がPTTボタンを第2の時間(上記第1の時間を含む)押下し続けることにより、送信可能である旨を知らせるための送信可能音を鳴動し、送信処理を行うように、移動局を構成することができる。本実施形態におけるPTTボタンは、強制送信を指示する指示ボタンとして機能する。
【0039】
本実施形態によれば、少なくとも次の(1)〜(4)の効果を得ることができる。
(1)他の移動局が基地局通信を行っていてビジー信号受信中であっても、緊急時等において、強制送信を行うことができる。
(2)ビジー信号受信中にPTTボタンを押しても、その後ビジー解除を検出すると自動的に送信を開始するので、使用者は、ビジー状態であるか確認することなくPTTボタンを押下することができ、使い勝手がよい。例えば、使用者は、相手の音声が聞こえなくなった時点でPTTボタンを押下すればよい。
(3)ビジー解除を検出すると自動的に送信を開始するので、第1の時間や第2の時間を待つことなく、ビジー解除され次第、強制送信を行うことができる。
(4)PTTボタンを第1の時間押下し続けることにより送信不可能音を鳴動し、さらに継続して第2の時間押下し続けることにより送信可能音を鳴動して送信処理を行うよう構成しているので、使用者は、送信不可能音が鳴動したときにビジー信号受信中にも拘らず強制送信を行うか否か判断し、そのうえで、強制送信を行う場合は、そのままPTTボタンを押下し続ければよく、使い勝手がよい。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、同報通信(一斉通信)の場合の移動局の送信動作を例に挙げて説明したが、本発明は、通信相手を指定して通信を行うセレコールの個別通信や通信相手として特定のグループを指定して通信を行うグループ通信時にも適用できることは言うまでもない。
なお、本発明において、送信可状態である旨の報知と、送信不可状態である旨の報知は、同一手段から行ってもよいし、異なる手段から行っても良い。
また、本発明は、本発明に係る処理を実行するシステムとしてだけでなく、装置、方法として、或いは、このような方法やシステムを実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして把握することができる。
また、本発明は、CPUがメモリに格納された制御プログラムを実行することにより制御する構成としてもよく、また、ハードウエア回路として構成してもよい。
【0041】
本明細書には、少なくとも次の発明が含まれる。
第1の発明は、
複数の移動局と、前記複数の移動局と無線で接続される基地局と、前記基地局を介して前記移動局と通話信号を交信する指令台とを備えた無線通信システムであって、
前記基地局は、
第1の周波数を用いて前記各移動局に信号を送信する基地局送信部と、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を用いて前記各移動局から信号を受信する基地局受信部とを備え、
前記基地局を介する前記移動局間、または、前記移動局と前記指令台との間の基地局通信において、送信元の前記移動局からの前記第2の周波数を用いた通話信号を前記基地局受信部で受信中に、移動局から受信中であることを示すビジー信号を前記第1の周波数を用いて前記基地局送信部から送信し、
前記移動局は、
前記第2の周波数を用いて信号を送信する移動局送信部と、前記第1の周波数を用いて前記基地局から信号を受信する移動局受信部と、通信の際に使用者からの送信の指示を受け付ける操作部と、使用者からの音声を入力するマイクと、送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部とを備え、
前記基地局から前記ビジー信号を受信中に前記操作部が前記送信の指示を受け続けている状態において、前記送信の指示の開始から所定の第1の時間経過する前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記マイクから入力された音声信号を前記移動局送信部から送信する音声信号送信動作を行い、前記第1の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部は送信不可状態である旨を報知し、前記第1の時間の間前記ビジー信号を受信し続けた後、前記送信の指示の開始から所定の第2の時間の経過前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合、および、前記第2の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記音声信号送信動作を行うことを特徴とする無線通信システム。
【0042】
第2の発明は、
複数の移動局と、前記複数の移動局と無線で接続される基地局と、前記基地局を介して前記移動局と通話信号を交信する指令台とを備えた無線通信システムにおける前記移動局であって、
第1の周波数を用いて前記基地局から信号を受信する受信部と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を用いて信号を送信する移動局送信部と、通信の際に使用者からの送信の指示を受け付ける操作部と、使用者からの音声を入力するマイクと、送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部とを備え、
前記基地局から前記ビジー信号を受信中に前記操作部が前記送信の指示を受け続けている状態において、前記送信の指示の開始から所定の第1の時間経過する前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記マイクから入力された音声信号を前記移動局送信部から送信する音声信号送信動作を行い、前記第1の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部は送信不可状態である旨を報知し、前記第1の時間の間前記ビジー信号を受信し続けた後、前記送信の指示の開始から所定の第2の時間の経過前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合、および、前記第2の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記音声信号送信動作を行うことを特徴とする移動局。
【符号の説明】
【0043】
1・・通信ゾーン、4,5・・伝送路、10・・指令台、11・・指令台制御部、12・・指令台記憶部、13・・指令台表示部、14・・指令台操作部、15・・スピーカ、16・・マイク、20・・回線制御装置、21・・回線制御装置制御部、22・・回線制御装置記憶部、30・・基地局、31・・基地局制御部、32・・基地局記憶部、33・・基地局送信部、34・・基地局受信部、40・・移動局、41・・移動局制御部、42・・移動局記憶部、43・・送信部、44・・第1受信部、45・・第2受信部、46・・アンテナ共用器、47・・アンテナ、48・・音声符号化/復号化部、49・・スピーカ、50・・ハンドセット、51・・レシーバ、52・・マイク、53・・移動局操作部、54・・移動局表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動局と、前記複数の移動局と無線で接続される基地局と、前記基地局を介して前記移動局と通話信号を交信する指令台とを備えた無線通信システムであって、
前記基地局は、
第1の周波数を用いて前記各移動局に信号を送信する基地局送信部と、前記第1の周波数と異なる第2の周波数を用いて前記各移動局から信号を受信する基地局受信部とを備え、
前記基地局を介する前記移動局間、または、前記移動局と前記指令台との間の基地局通信において、送信元の前記移動局からの前記第2の周波数を用いた通話信号を前記基地局受信部で受信中に、移動局から受信中であることを示すビジー信号を前記第1の周波数を用いて前記基地局送信部から送信し、
前記移動局は、
前記第2の周波数を用いて信号を送信する移動局送信部と、前記第1の周波数を用いて前記基地局から信号を受信する移動局受信部と、通信の際に使用者からの送信の指示を受け付ける操作部と、使用者からの音声を入力するマイクと、送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部とを備え、
前記基地局から前記ビジー信号を受信中に前記操作部が前記送信の指示を受け続けている状態において、前記送信の指示の開始から所定の第1の時間経過する前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記マイクから入力された音声信号を前記移動局送信部から送信する音声信号送信動作を行い、前記第1の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部は送信不可状態である旨を報知し、前記第1の時間の間前記ビジー信号を受信し続けた後、前記送信の指示の開始から所定の第2の時間の経過前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合、および、前記第2の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記音声信号送信動作を行うことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
複数の移動局と、前記複数の移動局と無線で接続される基地局と、前記基地局を介して前記移動局と通話信号を交信する指令台とを備えた無線通信システムにおける前記移動局であって、
第1の周波数を用いて前記基地局から信号を受信する受信部と、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を用いて信号を送信する移動局送信部と、通信の際に使用者からの送信の指示を受け付ける操作部と、使用者からの音声を入力するマイクと、送信可状態であるか送信不可状態であるかを報知する報知部とを備え、
前記基地局から前記ビジー信号を受信中に前記操作部が前記送信の指示を受け続けている状態において、前記送信の指示の開始から所定の第1の時間経過する前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記マイクから入力された音声信号を前記移動局送信部から送信する音声信号送信動作を行い、前記第1の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部は送信不可状態である旨を報知し、前記第1の時間の間前記ビジー信号を受信し続けた後、前記送信の指示の開始から所定の第2の時間の経過前に前記ビジー信号を受信しなくなった場合、および、前記第2の時間経過するまで前記ビジー信号を受信し続けた場合は、前記報知部が送信可状態である旨を報知するとともに前記音声信号送信動作を行うことを特徴とする移動局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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