説明

無線通信システム

【課題】無線基地局からの電波の漏れが漏洩伝送路に及ぼす影響を小さくすることができ、細長い通信可能エリアの実現に寄与する。
【解決手段】漏洩伝送路を用いた無線通信システムであって、無線基地局10と、無線基地局10のアンテナ端子12に直接又は同軸ケーブルを介して接続され、細長い通信エリアを形成するために直線状に配置された漏洩伝送路20と、無線基地局10の少なくとも漏洩伝送路20の配置方向以外を囲むように設けられた、シールド体15又は電波吸収体と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、漏洩伝送路を用いた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、漏洩同軸ケーブル(LCXケーブル)を用いた無線通信システムは、無線基地局のアンテナ端子に接続されたLCXケーブルをトンネルや工場内に数十〜数百m以上の長さに配置し、ケーブルに沿った細長い通信可能エリアを作っている。この場合、無線基地局からの電波の漏れがあっても、無線基地局から数十m離れると無線基地局からの電波の漏れは減衰してしまう。このため、無線基地局からの電波の漏れがシステム全体に及ぼす影響は小さい。
【0003】
一方、最近では、会議室やテーブル上などの狭い範囲での用途として、LCXケーブルの長さを短くした簡易型の無線通信システムが注目されている。この種の無線通信システムにおいて、LCXケーブルの長さが数m〜数十mになると、無線基地局から漏れる電波がLCXケーブルから放射される電波より強くなる部分が広がり、LCXケーブルで形成する細長い通信可能エリアを作ることができなくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−236745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、無線基地局からの電波の漏れが漏洩伝送路に及ぼす影響を小さくすることができ、細長い通信可能エリアの実現に寄与し得る無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の無線通信システムは、無線基地局と、前記無線基地局のアンテナ端子に直接又は同軸ケーブルを介して接続され、細長い通信エリアを形成するために直線状に配置された漏洩伝送路と、前記無線基地局の少なくとも前記漏洩伝送路の配置方向に対向する面以外を囲むように設けられた、シールド体又は電波吸収体と、を具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図。
【図2】第1の実施形態に係わる無線通信システムの作用を説明するための模式図。
【図3】第2の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図。
【図4】第3の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の無線通信システムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図である。
【0010】
図中の10は無線LANのアクセスポイント等の無線基地局であり、この無線基地局10は電子回路(図示せず)を収容した直方体形状の筐体11、筐体11の一つの側面11aに設けられた同軸コネクタ(アンテナ端子)12及びLANコネクタ13、更には一つの側面11aから筐体11内に挿入された電源ケーブル14を備えている。
【0011】
筐体11は、例えばプラスチック材料で形成されている。筐体11の一側面11aを除く面には、シールド体として機能する金属フィルム15が貼り付けられている。
【0012】
LANコネクタ13には図示しないLANケーブルが接続され、これにより無線基地局10は図示しないサーバとの有線通信が可能となっている。同軸コネクタ12には、LCXケーブル20が接続され、このLCXケーブル20は紙面左右方向に直線状に配置されている。そして、LCXケーブル20の配置方向に沿った細長い領域が通信可能エリアとなっている。なお、LCXケーブル20は両端にコネクタ21,22が設けられ、無線基地局10側のコネクタ21が同軸コネクタ12に接続され、反対側のコネクタ22に終端抵抗23が接続されている。
【0013】
このような構成であれば、無線基地局10から放射される電波は筐体11の一側面11aからは十分に放出されるが、それ以外の面からは放出されにくい。このため、無線基地局10に近い領域においても、細長い通信エリアを維持することができる。
【0014】
以下に、この理由を詳しく説明する。
【0015】
従来のようにLCXケーブル20が数十〜数百mと十分に長い場合、図2(a)に示すように、無線基地局10からの電波の漏れがあっても、無線基地局10から数十m離れるとその影響は殆ど無くなる。このため、無線基地局10からの電波の漏れがシステム全体に及ぼす影響は小さいものとなり、通信可能エリア30は図中の破線に示すように細長い領域となる。
【0016】
しかし、図2(b)に示すように、LCXケーブル20の長さが数m〜数十mになると、無線基地局10から漏れる電波がLCXケーブル20から放射される電波より強くなる部分が広がり、LCXケーブル20で形成する細長い通信可能エリア30を作ることができなくなることがある。さらに、図2(c)に示すように、通信可能エリア30を狭くしようとして、LCXケーブル20から放射する電波を弱めると、無線基地局10からの漏れの影響が更に大きく、通信可能エリア30を狭めることができない。
【0017】
これに対し本実施形態のように、無線基地局10において、LCXケーブル20の配置方向以外をシールドすることにより、図2(d)に示すように、LCXケーブル20から放射する電波を弱めても、無線基地局10からの漏れの影響は極めて小さいため、通信可能エリア30を狭めることができることになる。
【0018】
このように本実施形態によれば、無線基地局10のLCXケーブル20の配置方向以外を囲むようにシールドを設けることにより、無線基地局10からの電波の漏れがLCXケーブル20に及ぼす影響を小さくすることができ、比較的短い細長い通信可能エリアの実現に寄与することが可能となる。また、既存の無線基地局10を用いても、筐体11の一側面11a以外の面に金属フィルム15を貼り付けるのみで実現することができ、実用性大なる効果が得られる。
【0019】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0020】
本実施形態が先に説明した第1の実施形態と異なる点は、LCXケーブル20の配置方向を無線基地局10の同軸コネクタ12を設けた面側ではなく、上方向にしたことにある。即ち、LCXケーブル20は上下方向に直線状に配置され、LCXケーブル20の無線基地局10側は同軸ケーブル40を介して無線基地局10の右側面11aに設けた同軸コネクタ12に接続されている。なお、同軸ケーブル40は両端に同軸コネクタ(図示せず)を備えており、これらのコネクタがLCXケーブル20のコネクタ21及び無線基地局10のコネクタ12にそれぞれ接続されている。
【0021】
また、本実施形態では、筐体11の一側面11aではなく、筐体11の上面11bを除く他の全ての面にシールド体として機能する金属フィルム15を貼り付けるようにしている。
【0022】
このような構成であれば、無線基地局10からの電波の放射を、LCXケーブル20の配置方向である上方向のみに規制することができ、その他の方向への電波の放射を抑制することができる。従って、無線基地局10からの電波の漏れがLCXケーブル20に及ぼす影響を小さくすることができ、先の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0023】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態に係わる無線通信システムを示す概略構成図である。なお、図1及び図2と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0024】
本実施形態が先に説明した第2の実施形態と異なる点は、無線基地局10自体にはシールドを設けることなく、無線基地局10をシールド機能を有する箱体50内に収容したことにある。
【0025】
箱体50は上方向が開口したものであり、4つの側面及び下面にはシールド体として機能する金属フィルム15が貼り付けられている。なお、金属フィルム15を貼り付ける代わりに、箱体50自体を金属材料で形成しても良い。そして、この箱体50内に無線基地局10を配置し、第2の実施形態と同様に同軸ケーブル40を介して接続されたLCXケーブル20を上方向に引き出している。
【0026】
このような構成であっても無線基地局10から放射される電波のうち、上方向以外は箱体50によりシールドされることになる。従って、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0027】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では、シールド機能を有する材料として金属フィルムを用いたが、これに限らず導電性材料であればよい。さらに、フイルム状ではなくメッシュ状の導電性材料を用いることも可能である。
【0028】
また、必ずしも導電性材料に限らず、電波吸収体を用いることも可能である。電波吸収体としては、カーボン粉をゴム、発泡ウレタン、発泡スチロール等の誘電体に混合して誘電損失を大きくした誘電性電波吸収体を用いるのが望ましい。また、鉄、ニッケル、フェライト等を使用して電波を吸収する磁性電波吸収材料を用いることも可能である。
【0029】
また、実施形態ではLCXケーブルの配置方向と対向する面にはシールド体又は電波吸収体を形成していないが、この面にも他の面と同様にシールド体又は電波吸収体形成しても良い。つまり、シールド体又は電波吸収体は、無線基地局の少なくともLCXケーブルの配置方向に対向する面以外を囲むように設ければよい。
【0030】
漏洩伝送路としては、必ずしもLCXケーブルに限るものではなく、漏洩導波管を用いることも可能である。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
10…無線基地局
11…筐体
12…同軸コネクタ
13…LANコネクタ
14…電源ケーブル
15…金属フィルム(シールド)
20…LCXケーブル
30…通信可能エリア
40…同軸ケーブル
50…箱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局と、
前記無線基地局のアンテナ端子に直接又は同軸ケーブルを介して接続され、細長い通信エリアを形成するために直線状に配置された漏洩伝送路と、
前記無線基地局の少なくとも前記漏洩伝送路の配置方向に対向する面以外を囲むように設けられた、シールド体又は電波吸収体と、
を具備したことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記漏洩伝送路は、漏洩同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記シールド体又は電波吸収体は、前記無線基地局の筐体の外面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記アンテナ端子は、前記無線基地局の前記漏洩伝送路の配置方向に対向する一側面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
無線基地局と、
前記無線基地局に直接又は同軸ケーブルを介して接続され、細長い通信エリアを形成するために直線状に配置された漏洩伝送路と、
前記無線基地局の前記漏洩伝送路の配置方向に開口を有し、壁面がシールド体又は電波吸収体で形成され、前記無線基地局が収容された箱体と、
を具備したことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−31001(P2013−31001A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165892(P2011−165892)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】