説明

無線通信システム

【課題】ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて片方向リンクの利用を可能とする。
【解決手段】無線通信システム1は、無線通信によりデータを送信する送信局(10)と、送信されるデータを受信する受信局(21、22)とを含んで構成され、ホワイトスペースを利用して無線通信を行う。受信局(21、22)は特定の周波数においてデータの受信が可能であることを検出し、この検出結果である通信品質情報を送信局(10)に送信する。送信局(10)は、この通信品質情報を受信して保持しておく。そして、受信局(21、22)は、無線通信によるデータの受信を開始する際に、データの受信の際の条件である要求品質を送信局(10)に送信する。送信局(10)は、通信品質情報を参照してこの要求品質を満たす周波数を決定し、これを受信局(21、22)へのデータ送信の際の周波数として割当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホワイトスペースを利用した無線通信システムに関し、特に、利用する周波数の割当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報化社会の進展は実に目覚しく、多くの情報通信機器やサービスにおける通信方法として、有線通信のほかに、無線通信が利用されることも多くなっている。これに伴い、有限な資源である無線周波数の需要も増加の一途をたどっており、割当て可能な周波数の枯渇が世界各国で大きな問題となってきている。一般に、周波数は国がライセンス管理を行い、ライセンスを割当てられた者だけが、特定の場所および時間において、厳格な管理の下、その周波数を利用することができる。しかし、今後も増え続けるであろう周波数需要に対応するためには、これまでの利用方法にとらわれない、新しい周波数の利用方法が求められている。
【0003】
そこで近年、周波数の枯渇問題を解決するための新たな周波数の利用方法として、既に割当てられているにも関わらず、空間的、時間的に使用されない周波数帯(ホワイトスペース)を利用する方法が研究されている。例えば、ライセンスを受けている利用者(以下、「一次利用者」という)の既存システムの周波数使用への影響を十分回避しつつ、ライセンスを受けていない利用者(以下、「二次利用者」という)が柔軟にホワイトスペースの電波を利用するコグニティブ無線通信システムなどの研究開発が行われている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
例えば、IEEE802.22で標準化が行われている、ホワイトスペースを利用する無線通信システムでは、各無線局は、IPネットワーク上のデータベースにアクセスすることで、自局の位置情報に基づく送信可能周波数リストと最大送信可能電力とを取得する。送信可能周波数リストは、戸別に設置される子局や携帯電話等の端末(CPE:Customer Premises Equipment)が接続する基地局(BS:Base Station)内のスペクトルマネージャ(SM:Spectrum Manager)によって、随時更新をしながら一括管理されている。そして、BSはこの送信可能周波数リストに基づき、BSとCPEの間で双方向に通信に利用可能な周波数を、使用周波数として決定する。
【0005】
また、各無線局(BSおよびCPE。以下同様。)はスペクトルセンシング機能を具備している。各無線局は、スペクトルセンシングによって、決定された使用周波数が既存システム(一次利用者のシステム)によって使用されていることを検知すると、その情報をSMに通知する。すると、SMは送信可能周波数リストからこの周波数を除外する。ホワイトスペースを利用する無線通信システムは、このようにして時々刻々と更新される情報に基づきダイナミックなスペクトルアクセスを行うことで、一次利用者の周波数使用への影響を回避すると同時に、二次利用者の通信も実現する。
【0006】
ところで、IEEE802.22では、複信方式として、時分割複信(TDD:Time Division Duplex)のみを規定している。BSとCPEはデータ送信時には同じ周波数を用いるが、異なる送信タイミングで通信を行うことで、双方向の通信を実現する。しかしながら、TDDのみによる複信方法は双方向の通信に同じ周波数を用いる。よって、無線局ごとに送信可能な周波数が異なる場合や、送信可能な最大送信電力が異なる場合があるホワイトスペースを利用する無線通信システムにとって、TDDは必ずしも効率的な通信方法であるとは言いがたい。例えば、一方の無線局がある周波数で大電力での送信が可能であるが、他方の無線局がその周波数では小電力での送信しかできない場合、双方向の通信品質は非対称となる。よって、このような周波数を割当ててしまうと、通信が効率的に行われなくなる。
【0007】
また、一方の無線局がある周波数でデータ送信可能であるが、他方の無線局がその周波数で送信不可の場合、片方向のみの送受信しか行えない片方向リンクとなる。よって、このような周波数は、IEEE802.22のTDDでは当然のことながら利用することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】藤井宏治、“コグニティブ無線:電波利用のムダなくす、ホワイトスペース活用のコア技術”、[online]、リックテレコム、[平成23年6月9日検索]、インターネット<URL:http://businessnetwork.jp/tabid/65/artid/110/page/1/Default.aspx>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、周波数利用効率を向上する観点から、片方向リンクとなる周波数であっても利用した方がよい場合もある。しかし、IEEE802.22では複信方式としてTDDのみを規定しているため、片方向リンクの通信についてはIEEE802.22の規定対象外である。
【0010】
なお、IEEE802.22では、使用する周波数の決定に当たり、一次利用者の既存システムの周波数の占有パターンや干渉電力などといった通信品質に影響を与える指標を用いることを可能としている。しかし、どのような指標をどのように用いるかはIEEE802.22の規定の範囲外としている。
【0011】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクとなるような周波数であっても、これを利用することにより、効率的な周波数割当てを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、無線通信によりデータを送信する送信局と、前記データを受信する受信局とを含んで構成され、ホワイトスペースを利用して前記無線通信を行う無線通信システムであって、前記受信局は、特定の周波数におけるデータの受信品質を推定する通信品質推定部と、前記通信品質推定部での推定結果である通信品質情報を前記送信局に送信する通信品質情報送信部と、前記無線通信によるデータの受信を開始する際に、前記データの受信の際の条件である要求品質を前記送信局に送信する要求品質送信部と、前記送信局は、前記通信品質情報を受信して保持する通信品質情報保持部と、前記受信局から前記要求品質を受信する要求品質受信部と、前記通信品質情報を参照して前記要求品質を満たす周波数を決定し、これを前記受信局へのデータ送信の際の周波数として割当てる周波数割当処理部と、前記周波数割当処理部での割当て結果を前記受信局に送信する割当結果送信部と、を有することを特徴とする無線通信システムである。
【0013】
この構成によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの基地局(BS)10の具体的構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの無線通信端末(CPE)21、22の具体的構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る無線通信システムにおける処理の一例を示すシーケンス図である。
【図6】周波数割当てパターンの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示される。
【0017】
(無線通信システムの概要)
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの全体構成の一例を示す図である。本実施形態に係る無線通信システム1は、ホワイトスペースを利用する無線通信システムである。
【0018】
図1に示されるように、無線通信システム1は、戸別に設置される子局や携帯電話等の無線通信端末であるCPE21およびCPE22と、これらの無線通信端末が接続する基地局であるBS10と、BS10のバックホール回線30と、インターネット40とを含んで構成される。
【0019】
また、国から周波数使用のライセンスを受けている一次利用者の通信システム(以下、「既存システム」という)2は、送信局70と受信局60とを含んで構成されている。また、既存システム2の一次利用者は、国から周波数f1のライセンスを受けている。以下の説明においては、無線通信システム1において、国から周波数f1の使用ライセンスを受けていない二次利用者が周波数f1をホワイトスペースとして利用するものとする。
【0020】
ここで、図1に示されるように、無線通信システム1では、CPE21は既存システム2と地理的に近い位置に存在するため、周波数f1を用いてデータ送信を行うと既存システム2に干渉を与えてしまう。よって、周波数f1をホワイトスペースとして利用することはできないと判断される。しかし、BS10とCPE22は既存システム2から離れた位置に存在するため、送信電力を十分小さくすれば、周波数f1を用いて送信を行っても、既存システム2に干渉を与えることなく通信を行うことが可能である。一方、周波数f2については、無線通信システム1の周辺には周波数f2を利用する既存システムは存在しないため、無線通信システム1の全ての無線局は大電力でのデータ送信が可能である。
【0021】
(無線通信システムの構成)
図2は、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。本実施形態に係る無線通信システム1は、ホワイトスペースを利用して無線通信を行う通信システムである。無線通信システム1は、無線通信によりデータを送信する送信局100と、送信局100から送信されるデータを受信する受信局200とを含んで構成される。本実施形態においては、送信局100は図1のBS10が該当し、受信局200は図1のCPE21、CPE22が該当する(BS10がデータ送信側であり、CPE21、CPE22がデータ受信側)。なお、受信局200は複数存在してよい。
【0022】
また、送信局100が図1のCPE21、CPE22であり、受信局200が図1のBS10である場合、つまり、CPE21、CPE22がデータの送信側であり、BS10がデータの受信側である場合も、以下に説明する構成と同様の構成により実現可能である。
【0023】
以下、図2を参照しながら、送信局100と受信局200の構成について説明する。なお、説明の便宜上、受信局200を先に説明する。
【0024】
(受信局200)
受信局200は、信号受信部201と、通信品質推定部202と、通信品質情報送信部203と、要求品質送信部204とを備える。
【0025】
信号受信部201は、特定の周波数においてデータを受信する際の品質を推定するための信号を受信する。本実施形態においては、信号受信部201が受信する信号は、周期的にBS10からCPE21、CPE22に送られるテスト信号である。ただし、これに限定されるものではない。つまり、通信品質推定のための専用のテスト信号の受信による推定でなくてもよく、例えば、ビーコンなどの制御信号やブロードキャストデータ信号の受信による推定であってもよいし、他局へのユニキャストデータ信号やの傍受による推定であってもよい。
【0026】
通信品質推定部202は、信号受信部201が受信した信号を用いて、特定の周波数において、データの受信が可能であるかどうかを検出する。また、本実施形態においては、通信品質推定部202は、特定の周波数においてデータを受信する際の通信品質を推定する。本実施形態においては、通信品質情報は特定の周波数においてデータを受信する際、通信可能な最大伝送レートを示すものである。ただし、これに限定されるものではない。例えば、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)、ビット誤り率、パケット誤り率等であってもよい。さらに、これらが量子化等されて符号化された値であっても良い。
【0027】
具体的には、通信品質推定部202は、通信品質を以下のようにして判断する。すなわち、受信した信号を干渉除去や等化などの技術を用いながら復調・復号し、CRC(Cyclic Redundancy Check)符号などの誤り検出符号によって誤りが検出されなかった場合に、受信可能としても良く、各信号の先頭に含まれるパイロット信号などの既知信号を用いてSINRを推定しSINRが閾値以上であった場合に受信可能としても良い。また、SINRの推定結果やビット誤り率の履歴を一定期間保持し、その平均値によって受信可能かどうかの判定を行っても良い。さらに、閾値を複数設け、その閾値ごとに通信品質の指標としても良く、あらかじめ記憶しておく表を参照することで通信可能な最大伝送レートを導き、これを通信品質とすることも可能である。
【0028】
通信品質情報送信部203は、通信品質推定部202での推定結果である通信品質情報を送信する。なお、この時、通信品質情報とともに、通信品質を推定した周波数の情報を送信するようになっていてもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、通信品質情報送信部203は、通信品質推定部202が判断した特定の周波数においてデータを受信する際の通信品質情報を送信する。なお、本実施形態においては、通信品質情報は、特定の周波数におけるデータの受信が可能な最大伝送レートを示すものである。
【0030】
要求品質送信部204は、無線通信によるデータの受信を開始する際に、データの受信の際の条件である要求品質を送信する。本実施形態においては、要求品質は、トラヒックに応じた要求伝送レートを示すものである。ただし、これに限定されるものではない。例えば、SINR(Signal to Interference and Noise power Ratio)、ビット誤り率、パケット誤り率等であってもよい。さらに、これらが量子化等されて符号化された値であっても良い。
【0031】
(送信局100)
送信局100は、通信品質情報保持部101と、要求品質受信部102と、周波数割当処理部103と、割当結果送信部104とを備える。
【0032】
通信品質情報保持部101は、受信局200から送信される通信品質情報を受信して保持する。通信品質情報保持部101は、具体的には、例えば、複数存在する受信局200をそれぞれ識別するための識別子と、通信品質情報とを関連づけてデータベース等の形式にて自局のハードディスク等の記憶装置に記憶して保持する。また、通信品質情報には通信品質を判定した周波数の情報も関連づけられて保持するようになっていてもよい。
【0033】
要求品質受信部102は、受信局200から送信される要求品質を受信する。上述したように、本実施形態において、要求品質はトラヒックに応じた要求伝送レートを示すものである。
【0034】
周波数割当処理部103は、通信品質情報保持部101に保持されている通信品質情報を参照して要求品質受信部102が受信した要求品質を満たす周波数を決定し、これを受信局200へのデータ送信の際の周波数として割当てる。周波数割当処理部103は、具体的には、例えば、以下のようにして周波数割当てを行う。
【0035】
すなわち、要求品質受信部102が要求品質を受信する際に、要求品質とともに、要求品質を送信した受信局200を識別するための識別子も受信する。そして、通信品質情報保持部101が保持している通信品質情報のうち、この識別子に関連づけられている通信品質情報を抽出する。その後、抽出した通信品質情報と、受信した要求品質とを比較して、通信品質情報が要求品質を満たすように受信局200に対して周波数割当てを行う。
【0036】
割当結果送信部104は、周波数割当処理部103での割当て結果を受信局200に送信する。
【0037】
(BS10の具体的構成)
以下、図3を参照しながら、BS10のより具体的な構成について説明する。なお、本実施形態においては、BS10は上述した送信局100に該当する。
【0038】
図3に示されるように、BS10は、電波を送信及び受信するアンテナ151と、データの送受信を行うデータ伝送部152と、自局全体の制御を行う主制御部153と、CPE21およびCPE22の利用可能周波数を管理するスペクトルマネージャ(以下、「SM」という)104と、バックホール回線30や外部装置とのインターフェースとなるインターフェース部155と、バックホール回線30や外部装置と接続するための端子156とを備える。
【0039】
SM154は、上述した通信品質情報保持部101と、周波数割当処理部103とを備える。つまり、受信局200ごとの通信品質情報を保持し、受信局200から周波数割当ての要求があった場合には周波数割当ての処理を行う。
【0040】
また、データ伝送部152は、RF部161と、ベースバンド(BB:Base Band)信号処理部162と、MAC処理部163とを備える。
【0041】
RF部161は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換および無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や、信号増幅等の処理を行う。
【0042】
BB信号処理部162は、誤り訂正符号化、復号処理、および変復調処理等を行う。
【0043】
MAC処理部163は、自局が使用する周波数チャネルやデータ送受信のタイミング制御、パケットへの自局の識別子の付加、およびデータ送信元の無線装置の認識等の処理を行う。
【0044】
また、上述した要求品質受信部102や割当結果送信部104の機能は、主制御部153の制御によって、アンテナ151およびデータ伝送部152が要求品質を受信したり、割当結果を送信したりすることで実現される。
【0045】
なお、主制御部153は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することが可能である。また、BB信号処理部162、MAC処理部163、およびSM154における処理は、例えば、主制御部153のプロセッサがハードディスク等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することにより実現することが可能である。
【0046】
(CPE21、CPE22の具体的構成)
以下、図4を参照しながら、CPE21、CPE22のより具体的な構成について説明する。なお、本実施形態においては、CPE21、CPE22は上述した受信局200に該当する。
【0047】
図4に示されるように、CPE21、CPE22は、電波を送信及び受信するアンテナ251と、データの送受信を行うデータ伝送部252と、自局全体の制御を行う主制御部253と、BS10からの信号を受信した時の通信品質の推定を行う通信品質推定部202と、外部回線や外部装置とのインターフェースとなるインターフェース部255と、外部回線や外部装置と接続するための端子256とを備える。
【0048】
また、データ伝送部252は、RF部261と、ベースバンド(BB)信号処理部262と、MAC処理部263とを備える。
【0049】
RF部261は、ベースバンドから無線周波数帯への周波数変換および無線周波数帯からベースバンドへの周波数変換や、信号増幅等の処理を行う。
【0050】
BB信号処理部262は、誤り訂正符号化、復号処理、および変復調処理等を行う。
【0051】
MAC処理部263は、自端末が使用する周波数チャネルやデータ送受信のタイミング制御、パケットに自局の識別子の付加、およびデータ送信元の無線装置の認識等の処理を行う。
【0052】
また、上述した信号受信部201、通信品質情報送信部203、および要求品質送信部204の機能は、主制御部253の制御によって、アンテナ251およびデータ伝送部252が各種信号やデータを送受信することで実現される。
【0053】
なお、主制御部253は、例えば、プロセッサとメモリ上に定義されたデータ記憶領域とソフトウェアで構成することも可能である。また、BB信号処理部262、MAC処理部263、および通信品質推定部202における処理は、例えば、主制御部253のプロセッサがハードディスク等のデータ記憶装置に記憶されているプログラムをメモリ上に読み出して実行することにより実現することが可能である。
【0054】
(無線通信システムの動作)
以下、本実施形態に係る無線通信システムの動作について説明する。図5は、無線通信システム1における処理の一例を示すシーケンス図である。本例では、初期状態として、SM154はIPネットワーク上のデータベースにアクセスして取得した利用可能周波数リストから、CPE21が周波数f2でのみデータ送信可能であり、CPE22が周波数f1と周波数f2の双方でデータ送信が可能であることを認識しているものと仮定する。
【0055】
また、本例では、既に周波数f2での双方向通信が確立されているものとする。図5では、CPE21とCPE22とが周波数f2を共有しながら、それぞれ5Mbpsの下り通信を行っている場合を示している(ステップS101、ステップS101’)。すなわち、周波数f2では、周波数を共用せずに通信すれば、CPE21、CPE22ともに少なくとも10Mbpsの伝送レートで下り通信が可能である。この情報(以下、「情報A」とする)はBS10のSM154(通信品質情報保持部101)に保持されている。なお、本実施形態においては、BS10からCPE21またはCPE22へのデータ送信方向を「下り」といい、CPE21またはCPE22からBS10へのデータ送信方向を「上り」という。
【0056】
まず、BS10は、周期的に、利用候補チャネルである周波数f1と周波数f2のテスト信号をCPE21、CPE22に送信する。すなわち、CPE21およびCPE22の信号受信部201は、このテスト信号を周期的に受信する。なお、図5では、周波数f2のテスト信号が送信される場合のみ図示しているが、同様に周波数f1のテスト信号も周期的に送信している(ステップS102、ステップS102’)。
【0057】
テスト信号を受信したCPE21とCPE22の通信品質推定部202は、受信したテスト信号を基に、それぞれ周波数f1の通信品質の推定を行う(ステップS103、ステップS103’)。通信品質の推定を行った後、CPE21とCPE22の通信品質情報送信部203は推定結果である通信品質情報をBS10に送信する(ステップS104、ステップS104’)。この送信の際は、既に通信が確立している周波数f2を使用する。
【0058】
なお、本例では、CPE21は周波数f1の下り信号を2Mbpsで受信可能であり、CPE22は周波数f1の下り信号を3Mbpsで受信可能である旨の通信品質情報を送信している。また、本例においては、CPE21及びCPE22の通信品質をBS10へ通知する場合の例として時分割多元接続の場合を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、周波数分割多元接続であっても、符号分割多元接続であっても、あるいは他の多元接続方式であってもよい。
【0059】
BS10のデータ伝送部152は通信品質情報を受信処理すると、BS10内部の回線(有線通信)を介してSM154に送信する(ステップS105、ステップS105’)。また、データ伝送部152はステップS102、S102’で周波数f1のテスト信号を送信しているので、この通信品質情報が周波数f1に対するものである旨の情報も同時にSM154に通知する。
【0060】
SM154の通信品質情報保持部101は、送信された通信品質情報を、CPE21、CPE22の各識別子および周波数“f1”に対する通信品質情報である旨とともに記憶して保持する。例えば、「識別子=“001”(CPE21の識別子)、周波数=“f1”、通信品質情報=“2Mbps”」と、「識別子=“002”(CPE22の識別子)、周波数=“f1”、通信品質情報=“3Mbps”」という情報(以下、「情報B」とする)をデータベース等の形式にてハードディスク等の記憶装置に記憶する。
【0061】
その後、CPE21とCPE22に通信要求が発生し、CPE21では帯域要求として1Mbps以上、CPE22では10Mbps以上の帯域要求が要求品質送信部204から発生したとする。このとき、各CPEは、時分割多元接続、周波数分割多元接続、および符号分割多元接続のいずれかの接続方法によって、BS10に帯域要求を行う(ステップS106、ステップS106’)。なお、図5では時分割多元接続による帯域要求の例を示している。
【0062】
BS10のデータ伝送部152(要求品質受信部102)は、各帯域要求を受信し、これをSM154に送信する(ステップS107、ステップS107’)。SM154の周波数割当処理部103は、各帯域要求に伴い、周波数の割当て処理を行う(ステップS108)。
【0063】
具体的には、まず、通信品質情報保持部101が保持しているf1に関する通信品質情報である情報Bを参照する。本例では、CPE21は通信帯域を1Mbps以上、CPE22は10Mbps以上とする帯域要求をしている。このとき、情報Bによれば、CPE21は周波数f1で2Mbps通信が可能であるため、要求を満たすことが可能であるが、CPE22は周波数f1では3Mbpsでしか通信できないため、要求を満たすことができない。一方、f2に関する通信品質情報である情報Aによれば、CPE22は周波数f2であれば10Mbpsでデータ受信が可能であり、要求を満たすことができる。よって、この場合、CPE21に周波数f1を割当て、CPE22に周波数f2を割当てる。
【0064】
SM154は、この割当て処理の結果を自局内部の有線通信によりデータ伝送部152に送信する(ステップS109)。
【0065】
そして、BS10のデータ伝送部152(割当結果送信部104)はこの周波数の割当ての結果をCPE21、CPE22に送信するが、この送信は、既に通信が確立している周波数f2によって行う(ステップS110、ステップS110’)。その後、実際の通信が開始される。すなわち、BS10からCPE21への下り通信は周波数f1で行われ(ステップS111)、BS10からCPE22への下り通信は周波数f2で行われる(ステップS112)。
【0066】
以上のように、本例では、CPE21の下り通信には周波数f1が割当てられ、CPE22の下り通信には周波数f2が割当てられている。これにより、帯域要求が小さいCPE21の下り通信に通信品質の悪い周波数f1を割当て、帯域要求が大きいCPE22の下り通信に通信品質の良い周波数f2を割当てることができ、両者の帯域要求を満足することができる。
【0067】
なお、図5では、下り通信の周波数割当てのみを示したが、同様にして、上り通信の周波数割当ても効率的に行うことが可能である。すなわち、CPE21(CPE22)からBS10に対してテスト信号を送信し、BS10にて通信品質の推定処理を行う。そして、推定結果をSM154の通信品質情報保持部101に保持し、上り通信を行う際に周波数割当て結果をBS10からCPE21(CPE22)に通知する。その後、CPE21(CPE22)からBS10へのデータ送信を開始する。
【0068】
また、CPEが主体となって、周波数割当を決定する方法も可能である。すなわち、CPE21(CPE22)からBS10に対してテスト信号を送信し、BS10にて通信品質の推定処理を行う。そして、BS10からCPE21(CPE22)に通信品質情報を送信する。そして、CPE21(CPE22)からBS10に対してデータ送信を行う場合に、BS10からCPE21(CPE22)に帯域要求を行う。また、CPE21(CPE22)にて周波数割当処理を行い、割当て結果をBS10に送信する。その後、CPE21(CPE22)からBS10へのデータ送信を開始する。
【0069】
(周波数割当ての他の具体例)
図6に、本実施形態における周波数割当てパターンの他の具体例を示す。無線通信システム1では、図5の例以外にも、図6(a)〜(d)に示すような周波数割当てが可能である。
【0070】
図6(a)基本パターンは、従来のホワイトスペースを利用した双方向無線通信システムにおいても採用される周波数割り当てパターンである。図6(a)基本パターンは、BS10と、CPE21もしくはCPE22との間における上り通信および下り通信において周波数f2を使用し、TDDで通信を行う。本実施形態においても、既存システム2では周波数f1のみライセンスされているため、無線通信システム1のBS10、CPE21、およびCPE22は、いずれも周波数f2を使用して大電力でデータ送信が可能である。よって、図6(a)基本パターンの周波数割り当てパターンは本実施形態における無線通信システムでも採用可能である。
【0071】
しかし、以下に説明する図6(b)〜(d)の周波数割当てパターンは本実施形態の無線通信システムでのみ採用可能な周波数割当てパターンである。
【0072】
図6(b)パターン1の周波数割当て方法では、BS10から、CPE21およびCPE22への下り通信には両方とも周波数f2を使用する。また、CPE21からBS10への上り通信には周波数f2を、CPE22からBS10への上り通信には周波数f1を使用する。
【0073】
また、BS10からの下り通信においては、プリアンブルやフレームヘッダPは周波数f1を用いて送信するようになっていてもよい。プリアンブルやフレームヘッダはBSが送信する信号であり、フレーム同期やフレーム構成の伝達等に使用する重要な信号であることから、一般に、確達率の高い変調方式や符号化が用いられるため、小電力送信でも通信が可能だからである。これにより、利用可能な周波数をより有効に活用することができる。
【0074】
図6(c)パターン2の周波数割当て方法では、BS10からCPE21への下り通信には周波数f1を使用し、BS10からCPE22への下り通信には周波数f2を使用する。また、CPE21およびCPE22からBS10への上り通信には両方とも周波数f2を使用する。
【0075】
図6(d)パターン3の周波数割当て方法では、BS10と、CPE21もしくはCPE22との間の通信において、それぞれ異なる周波数を使用する。BS10からCPE21への下り通信、およびCPE22からBS10への上り通信には、周波数f1を使用する。また、BS10からCPE22への下り通信、およびCPE21からBS10への上り通信には、周波数f2を使用する。
【0076】
すなわち、図6に示すように、本実施形態の無線通信システムは、基本パターンのみならず、パターン1〜パターン3等の周波数割当てを採用することが可能である。つまり、従来の双方向の無線通信システムと比較して、利用可能な周波数を有効活用し、効率的な周波数割当てを行うことが可能である。これに対して、従来のIEEE802.22で規定されている無線通信方式の場合は、TDDにて通信を行い、また本実施形態の無線通信システムのようにSMにて通信品質の管理も行わない。よって、基本パターンの周波数割当て方法しか採用できない。このため、下り通信において周波数f2をCPE21とCPE22で共有することしかできず、全端末の帯域要求を満足できない場合も発生しうる。
【0077】
なお、本ホワイトスペース利用無線システムは、TDDまたは半二重周波数分割複信(H−FDD:Half-Frequency Division Duplex)を用いて双方向通信を行う他、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)方式による通信機能も具備しており、双方向で異なる周波数を用いることが可能である。
【0078】
(まとめ)
以上のとおり、本実施形態によれば、ホワイトスペース利用無線システムにおいて、片方向リンクの利用を可能とすることで周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現できる。さらには、通信品質に基づき、双方向の通信それぞれに対して効率的な周波数の割当が可能となる。
【0079】
また、本実施形態に係る無線通信システムは、IEEE802.22で規定されている無線通信システムに対して特に好適であるが、これに限定されるものではない。
【0080】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【0081】
(付記)
以上に、本発明に係る実施形態について詳細に説明したことからも明らかなように、前述の実施形態の一部または全部は、以下の各付記のようにも記載することができる。しかしながら、以下の各付記は、あくまでも、本発明の単なる例示に過ぎず、本発明は、かかる場合のみに限るものではない。
【0082】
(付記1)
無線通信によりデータを送信する送信局と、前記データを受信する受信局とを含んで構成され、ホワイトスペースを利用して前記無線通信を行う無線通信システムであって、
前記受信局は、
特定の周波数においてデータの受信が可能であることを検出する通信品質推定部と、
前記通信品質推定部での検出結果である通信品質情報を前記送信局に送信する通信品質情報送信部と、
前記無線通信によるデータの受信を開始する際に、前記データの受信の際の条件である要求品質を前記送信局に送信する要求品質送信部と、
前記送信局は、
前記通信品質情報を受信して保持する通信品質情報保持部と、
前記受信局から前記要求品質を受信する要求品質受信部と、
前記通信品質情報を参照して前記要求品質を満たす周波数を決定し、これを前記受信局へのデータ送信の際の周波数として割当てる周波数割当処理部と、
前記周波数割当処理部での割当て結果を前記受信局に送信する割当結果送信部と、
を有することを特徴とする無線通信システム。
【0083】
この構成によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【0084】
(付記2)
前記通信品質推定部は、前記特定の周波数においてデータを受信する際の通信品質を推定し、
前記通信品質情報送信部は、前記通信品質情報として、前記通信品質推定部での判断結果を送信することを特徴とする付記1に記載の無線通信システム。
【0085】
この構成によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【0086】
(付記3)
前記受信局は、前記特定の周波数においてデータが受信可能であるかを判断するための信号を受信する信号受信部をさらに有し、
前記通信品質推定部は、前記信号受信部が受信した前記信号を用いて、前記特定の周波数においてデータの受信が可能であることを検出すること
を特徴とする付記1又は2に記載の無線通信システム。
【0087】
この構成によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【0088】
(付記4)
前記通信品質情報は、前記特定の周波数におけるデータの受信が可能な最大伝送レートを示すものであり、
前記要求品質は、前記無線通信によるデータの受信の際のトラヒックに応じた要求伝送レートを示すものであることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【0089】
この構成によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、通信帯域の要求に合致した片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【0090】
(付記5)
無線通信によりデータを送信する送信局と、前記データを受信する受信局とが、ホワイトスペースを利用して前記無線通信を行う周波数割当方法であって、
前記受信局が、特定の周波数におけるデータの受信が可能であることを検出する第1のステップと、
前記受信局が、前記第1のステップでの検出結果である通信品質情報を前記送信局に送信する第2のステップと、
前記送信局が、前記通信品質情報を受信して保持する第3のステップと、
前記受信局が、前記無線通信によるデータの受信を開始する際に、前記データの受信の際の条件である要求品質を前記送信局に送信する第4のステップと、
前記送信局が、前記受信局から前記要求品質を受信する第5のステップと、
前記送信局が、前記通信品質情報を参照して前記要求品質を満たす周波数を決定し、これを前記受信局へのデータ送信の際の周波数として割当てる第6のステップと、
前記送信局が、第6のステップでの割当て結果を前記受信局に送信する第7のステップと、
を含む周波数割当方法。
【0091】
この構成によれば、ホワイトスペースを利用する無線通信システムにおいて、片方向リンクの利用が可能となり、周波数利用効率が改善され、システム全体の周波数の有効利用を実現可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 無線通信システム
2 既存システム
10 基地局(BS)
21、22 無線通信端末(CPE)
30 バックホール回線
40 インターネット
60 受信局
70 送信局
100 送信局
101 通信品質情報保持部
102 要求品質受信部
103 周波数割当処理部
104 割当結果送信部
151 アンテナ
152 データ伝送部
153 主制御部
154 スペクトルマネージャ(SM)
155 インターフェース部
156 端子
161 RF部
162 ベースバンド(BB)信号処理部
163 MAC処理部
200 受信局
201 信号受信部
202 通信品質推定部
203 通信品質情報送信部
204 要求品質送信部
251 アンテナ
252 データ伝送部
253 主制御部
255 インターフェース部
256 端子
261 RF部
262 ベースバンド(BB)信号処理部
263 MAC処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信によりデータを送信する送信局と、前記データを受信する受信局とを含んで構成され、ホワイトスペースを利用して前記無線通信を行う無線通信システムであって、
前記受信局は、
特定の周波数においてデータの受信が可能であることを検出する通信品質推定部と、
前記通信品質推定部での検出結果である通信品質情報を前記送信局に送信する通信品質情報送信部と、
前記無線通信によるデータの受信を開始する際に、前記データの受信の際の条件である要求品質を前記送信局に送信する要求品質送信部と、
前記送信局は、
前記通信品質情報を受信して保持する通信品質情報保持部と、
前記受信局から前記要求品質を受信する要求品質受信部と、
前記通信品質情報を参照して前記要求品質を満たす周波数を決定し、これを前記受信局へのデータ送信の際の周波数として割当てる周波数割当処理部と、
前記周波数割当処理部での割当て結果を前記受信局に送信する割当結果送信部と、
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記通信品質推定部は、前記特定の周波数においてデータを受信する際の通信品質を推定し、
前記通信品質情報送信部は、前記通信品質情報として、前記通信品質推定部での判断結果を送信することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記受信局は、前記特定の周波数においてデータが受信可能であるかを判断するための信号を受信する信号受信部をさらに有し、
前記通信品質推定部は、前記信号受信部が受信した前記信号を用いて、前記特定の周波数においてデータの受信が可能であることを検出すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate