説明

無線通信機用複合高周波モジュール

【課題】複数の通信システムに対応した高周波モジュールでありながら、その小型化および製造コスト低減などを実現し得る高周波モジュールおよびこれを適用した無線通信機を提供する。
【解決手段】各々が所定の信号処理を行う複数の信号処理部と、前記信号処理部の何れかに接続され、所定のアンテナから伝送された受信信号を前記接続された信号処理部に伝送する受信回路と;前記接続された信号処理部から伝送された送信信号を前記アンテナに伝送する送信回路と;を有する送受信回路と、前記送受信回路を前記信号処理部の何れかに切替可能に接続する第1接続部と、を備えた高周波モジュールとする。また、このような高周波モジュールを備えた無線通信機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号に係る通信システムを複数備える、無線通信機に適用される高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信機器においては、製品設計期間の短縮のために、高周波送信回路および高周波受信回路を備えた高周波モジュールが内蔵されている場合が多い。また、携帯端末の小型化、薄型化にともない、高周波モジュールについても小型化、薄型化の要求がある。
【0003】
さらに近年では、無線通信機器の多機能化などに伴い、単一の無線通信機器内に複数の通信システムが搭載されることが多くなってきた。なお本願において「通信システム」は、通信規格(通信信号のフォーマットなどに関わる規格)ごとに、別個のものとして扱う。
【0004】
通信システムに必要な仕様をもつ高周波モジュールは、通信システムごとに個々に開発されており、複数の通信システムを無線通信機に搭載することは、それぞれの通信システム用に設計された複数個の高周波モジュールを無線通信機に実装することにより実現されている。
【0005】
このような構成の高周波モジュールについて、その一例を図3に示す。本高周波モジュールでは、第1通信システム用モジュール100aと第2通信システム用モジュール100bが備えられており、2種類の通信システムに対応可能となっている。
【0006】
そして各々のモジュールは、無線伝送すべきベースバンド信号に対する暗号化や、受信した無線信号から暗号解読の処理を行うベースバンドMAC−IC(121a、121b)、ベースバンドMAC−ICからの出力信号に対する高周波信号への変換や、その逆に受信した高周波信号に対するベースバンド信号への変換を行うRF−IC(122a、122b)、送受信信号以外の不要な電波を減衰させるフィルタ(139a、139b)、および送受信信号の伝送ラインの切り替えを行うスイッチIC(138a、138b)等を備えている。
【0007】
また送信回路系においては、RF−IC(122a、122b)からの高周波信号の出力レベルを増幅するパワーアンプ回路(136a、136b)が含まれる一方、受信回路系では、受信した微弱な高周波信号を増幅するローノイズアンプ回路(133a、133b)が含まれている。さらにRF信号の入出力に用いられるアンテナ端子(104a、104b)が設けられている。
【0008】
上述した各モジュールは、受信信号の取込および送信信号の出力を行うメインIC105の制御によって機能し、無線通信を実現させる。すなわち、第1通信システムによる無線通信を行う場合、メインIC105は、送受信に応じて第1通信システム側のスイッチIC138aを切替えるとともに、ベースバンドMAC−IC121aとのデータ信号のやり取りを行う。また第2通信システムによる無線通信を行う場合、メインIC105は、送受信に応じて第2通信システム側のスイッチIC138bを切替えるとともに、ベースバンドMAC−IC121bとのデータ信号のやり取りを行う。
【0009】
このように従来では、高周波モジュールは通信システムごとにそれぞれモジュール化されており、2つ以上のシステムを1つの無線通信機で使用する場合、無線通信機には2つ以上の高周波モジュールを搭載していた。
【0010】
【特許文献1】特開平11−346383
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように従来の高周波モジュールでは、複数の通信システム毎に独立して設けられていたため、かかる高周波モジュールを適用する無線通信機の小型化や薄型化が妨げられていた。また各種の部品数が多くなることにより、製造コストが比較的高くなるという問題が生じていた。
【0012】
そこで本発明は上記の問題点に鑑み、複数の通信システムに対応した高周波モジュールでありながら、その小型化および製造コスト低減などを実現し得る高周波モジュールおよびこれを適用した無線通信機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る高周波モジュールは、各々が所定の信号処理を行う複数の信号処理部と、前記信号処理部の何れかに接続され、所定のアンテナから伝送された受信信号を前記接続された信号処理部に伝送する受信回路と;前記接続された信号処理部から伝送された送信信号を前記アンテナに伝送する送信回路と;を有する送受信回路と、前記送受信回路を前記信号処理部の何れかに切替可能に接続する第1接続部と、を備えた構成(第1の構成)とする。
【0014】
本構成によれば、第1接続部を通じて、上記構成の送受信回路が複数の信号処理部の何れかに接続されるようになっている。そのため、複数の通信システムに対応するために複数の信号処理部を備えつつも、第1接続部の制御を通じて、送受信回路を各信号処理部について共用化することができる。その結果、複数の通信システムを搭載した無線通信機とする場合であっても、その小型化および製造コスト低減などが実現可能となる。
【0015】
また上記第1の構成において、前記送受信回路は、前記アンテナを前記受信回路および送信回路の何れかに、切替可能に接続する第2接続部を備えた構成(第2の構成)としてもよい。
【0016】
本構成によれば、第2接続部を通じて、受信回路または送信回路をアンテナに接続させることが可能となる。これにより、受信回路と送信回路を別個に備えるようにしつつも、これらに対してアンテナを共用化できるから、各々の回路について別個にアンテナを設けるものに比べて、製品の小型化および製造コスト低減などが実現可能となる。
【0017】
また上記第1または第2の構成において、前記信号処理部のうちから、前記信号処理を行わせるものを選定する選定手段を備え、前記第1接続部は、該選定手段の選定結果に応じて、前記送受信回路を前記信号処理部の何れかに接続する構成(第3の構成)としてもよい。
【0018】
本構成によれば、選定手段により実際に信号処理を行わせる信号処理部を選定可能であるとともに、選定された信号処理部を、送受信回路を介してアンテナに接続させることが可能となる。そのため、選定された信号処理部に対応する通信システムについて、信号処理の実行が可能となる。
【0019】
また上記第3の構成において、前記各々の信号処理部に対する、駆動電力の供給状態を切替える電力供給切替部を備え、該電力供給切替部は、前記選定手段の選定結果に応じて、前記切替を行う構成(第4の構成)としてもよい。
【0020】
選定手段により選定されている信号処理部は、信号処理を行うための電力が必要である一方、選定されていない信号処理部については、信号処理を行うための電力は不要となる。そこで本構成によれば、選定結果に応じて各信号処理部に対する駆動電力の供給状態が切り替えられるから、例えば選定されていない信号処理部への駆動電力供給を停止させることで、無駄な電力消費を極力抑えることが可能となる。
【0021】
また上記第3または第4の構成において、前記選定手段は、前記選定の実行にあたり、前記第1接続部を通じて、前記送受信回路に接続させる信号処理部を順次切替えるとともに、該切替の度に、該接続された信号処理部における、前記受信信号に対する前記信号処理の実行状況を検出し、該検出結果に応じて、前記選定を実行する構成(第5の構成)としてもよい。
【0022】
複数の通信システムのうち何れを通信可能とすべきかについては、信号の受信環境に依存することが多い。すなわち、対応する信号(対応信号)が十分に受信される通信システムについては、外部から有用な情報が得られる可能性が高く、逆にそうでない通信システムについては、外部から有用な情報が得られる可能性が低い。このような場合、前者の通信システムを通信可能とするのが良いと考えられる。
【0023】
そこで本構成によれば、各信号処理部における、受信信号に対する信号処理の実行状況に応じて、前記選定がなされることとなるから、信号の受信環境に応じた選定が可能となる。つまり信号処理部における信号処理の実行状況は、受信信号中における対応信号の有無(もしくは含有割合など)に依存するから、例えば信号処理が十分に実行されている信号処理部を選定することにより、有用と考えられる通信システムが選定される。これにより、例えば現在選定すべき通信システムが不明な場合であっても、自動的に有用と考えられる通信システムを選定することが可能となる。
【0024】
また上記第3から第5の何れかの構成において、前記選定手段は、前記信号処理部のうちの何れかの指定があったときは、該指定のなされた信号処理部を、前記選定の対象とする構成(第6の構成)としてもよい。本構成によれば、指定があったときは、該指定のなされた信号処理部が選定されることになるから、選定すべき信号処理部があるときはこれを指定することにより、使用する通信システムを固定することが可能となる。
【0025】
また上記第1から第6の何れかの構成において、前記信号処理部は、信号の変調処理または復調処理を行うものであり、前記受信回路および送信回路の各々は、アンプ装置を有している構成(第7の構成)としてもよい。本構成によれば、信号の変調または復調処理、受信・送信信号のアンプ(増幅)処理が可能となる。
【0026】
また上記第1から第7の何れかの構成において、前記送受信回路は、単一のモジュールとして構成されている構成(第8の構成)としてもよい。本構成によれば、送受信回路を複数の通信システムごとに別個のモジュールとするものに比べ、部品点数の削減や小型・低廉化を図ることができる。
【0027】
また2つの前記信号処理部を備えた上記第1から第8の何れかの構成に係る高周波モジュールであって、前記2つの信号処理部のうちの一方は、所定の無線LAN規格のシステムに対応するものであり、他方は、BLUETOOTH規格のシステムに対応するものである構成(第9の構成)としてもよい。
【0028】
また本発明に係る高周波モジュールは、複数の異なる通信システムの送受信回路を、単一の回路モジュール内部に搭載した構成(第10の構成)とする。
【0029】
本構成によれば、複数の通信システムを搭載した1つの高周波モジュールであるため、複数個の高周波モジュールを搭載する場合に比べ、無線通信機器への実装面積を小さくすることができる。また複数の通信システムの送受信回路を単一の回路モジュールで構成しているため、無線通信機器への高周波モジュールの実装個数が複数点から1点に減らすことができ、実装コストの低減が可能となる。
【0030】
また上記第10の構成において、前記送受信回路は、前記異なる通信システム間で共用できる送信回路ブロックを有する構成(第11の構成)としてもよい。
【0031】
本構成によれば、複数の通信システムにおける送信回路部分で共用可能な回路ブロックを共通化することにより、高周波モジュール内部の回路規模を小さくし、ひいては高周波モジュールを小型化することにより、無線通信機器への実装面積を小さくすることができる。また高周波モジュール内で送信回路ブロックを共通化することにより高周波モジュールの部品点数が削減されコスト低減が可能となる。
【0032】
また上記第10の構成において、前記送受信回路は、前記異なる通信システム間で共用できる受信回路ブロックを有する構成(第12の構成)としてもよい。
【0033】
本構成によれば、複数の通信システムにおける受信回路部分で共用可能な回路ブロックを共通化することにより、高周波モジュール内部の回路規模を小さくし、ひいては高周波モジュールを小型化することにより、無線通信機器への実装面積を小さくすることができる。また高周波モジュール内で受信回路ブロックを共通化することにより高周波モジュールの部品点数が削減されコスト低減が可能となる。
【0034】
また上記第1から第12の何れかの構成に係る高周波モジュールを備えた構成(第13の構成)の無線通信機および携帯端末装置であれば、複数の通信システムを1つの無線通信機および携帯端末装置で使用することができる。
【発明の効果】
【0035】
上記したように本発明によれば、第1接続部を通じて、上記構成の送受信回路が複数の信号処理部の何れかに接続されるようになっている。そのため、複数の通信システムに対応するために複数の信号処理部を備えつつも、第1接続部の制御を通じて、送受信回路を各信号処理部について共用化することができる。その結果、複数の通信システムを搭載した無線通信機器とする場合であっても、その小型化および製造コスト低減などが実現可能となる。
【0036】
なお上記第9から第11の構成に係る発明によれば、複数の通信システムを搭載した1つの高周波モジュールであるため、複数個の高周波モジュールを搭載する場合に比べ、無線通信機器への実装面積を小さくすることができる。また複数の通信システムの送受信回路を単一の回路モジュールで構成しているため、無線通信機器への高周波モジュールの実装個数が複数点から1点に減らすことができ、実装コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の一実施形態として、無線LAN規格およびBLUETOOTH(登録商標)規格の通信に対応可能な高周波モジュールを挙げて以下に説明する。当該高周波モジュールの構成図を図1に示す。本高周波モジュール1は、第1信号処理部2a、第2信号処理部2b、送受信共通回路ブロック3、アンテナ端子4、メインIC5、システム切替制御部6、タイマ7、第1電源8a、第2電源8b、第1電源切替部9a、および第2電源切替部9bなどを備えている。
【0038】
第1信号処理部2aは、所定の無線LAN規格(例えば、2.4GHzの周波数帯を使用するIEEE802.11b)のシステムに対応しており、第1MAC−IC21aおよび第1RF−IC22aを備えている。
【0039】
第1MAC[Media Access Control]−IC21aは、メインIC5側から入力された無線送信すべきベースバンド信号に対しては暗号化等の処理を行う一方、アンテナ4側から入力された受信信号に対しては暗号解読の処理等を行う。また第1RF−IC22aは、第1MAC−IC21aから入力された信号を高周波信号に変換する一方、アンテナ端子4側から入力された受信信号(高周波信号)についてはベースバンド信号に変換する処理(変調・復調処理)を行う。
【0040】
また第2信号処理部2bは、2.4GHzの周波数帯を使用するBLUETOOTH規格のシステムに対応しており、第2MAC−IC21bおよび第2RF−IC22bを備えている。第2MAC−IC21bは、メインIC5側から入力された無線送信すべきベースバンド信号に対しては暗号化等の処理を行う一方、アンテナ端子4側から入力された受信信号に対しては暗号解読の処理等を行う。また第2RF−IC22bは、第2MAC−IC21bから入力された信号を高周波信号に変換する一方、アンテナ端子4側から入力された受信信号(高周波信号)についてはベースバンド信号に変換する処理(変調・復調処理)を行う。
【0041】
なお第1信号処理部は、無線LANの規格に係るフォーマットのデータ信号を好適に処理できるように特化されている一方、第2信号処理部はBLUETOOTH規格に係るフォーマットのデータ信号を好適に処理できるように設定されている。つまり無線通信装置1は、第1信号処理部を使用する通信システムと第2信号処理部を使用する通信システムによる、複数の通信システムを備えるものである。
【0042】
このように、第1信号処理部は、無線LANの規格に係るフォーマットのデータのみを処理対象とし、第2信号処理部は、BLUETOOTH規格に係るフォーマットのデータのみを処理対象とする。そのため各信号処理部(2a、2b)は自己に対応したフォーマットのデータのみを処理すればよいから、信号処理部の構成は比較的簡潔なものとなっている。
【0043】
送受信共通回路ブロック3は、使用する信号処理部(2a、2b)とアンテナ端子4を接続する役割を果たしており、受信ブロック31、送信ブロック34、および送受信ブロック37から構成されている。
【0044】
受信ブロック31は、受信側切替スイッチ回路32とローノイズアンプ33を備えている。これにより、ローノイズアンプ33では、アンテナ端子4側から入力される微弱な受信信号を増幅し、通信システムに必要とされる受信性能を満足するための役割を果たす。そしてこの受信信号は、受信側切替スイッチ回路32によって、使用する通信システム側の信号処理部に入力される。なお受信側切替スイッチ回路32は、切替信号発生部51からの信号に応じて、接続先(何れかの信号処理部)を切替える。
【0045】
送信ブロック34は、送信側切替スイッチ回路35とパワーアンプ回路36を備えている。これにより、何れかの信号処理部から、送信側切替スイッチ回路35を通じて、パワーアンプ回路36に信号が入力される。そしてパワーアンプ回路36で増幅された送信信号は、送受信ブロック37に出力される。なお送信側切替スイッチ回路35は、切替信号発生部51からの信号に応じて、接続先(何れかの信号処理部)を切替える。
【0046】
送受信ブロック37は、送受信切替スイッチ回路38とフィルタ回路39を備えている。送受信切替スイッチ回路38は、切替信号発生部51からの信号に応じて、受信ブロック31または送信ブロック35の何れかとフィルタ回路39とを接続する。またフィルタ回路39は、送受信切替スイッチ回路38とアンテナ端子4との間に備えられ、受信信号および送信信号に含まれる不要な周波数帯域の信号を除去する。
【0047】
このように、送受信切替スイッチ回路38を通じて、受信ブロック31または送信ブロック34をアンテナ端子4側に接続させることが可能となっている。そのため、受信ブロック31と送信ブロック34を別個に備えるようにしつつも、これらに対してアンテナ端子を共用化でき、各々のブロックについて別個にアンテナ端子を設けるものに比べて、製品の小型化および製造コスト低減が実現可能となっている。
【0048】
メインIC5は、無線通信に係る全体的な処理の制御を実行する。特に何れかの信号処理部(2aまたは2b)によって暗号解読処理およびベースバンド信号への変換処理がなされた受信信号が入力されたときは、この受信信号に基づいて必要な処理を実行する。またその一方、外部送信すべき信号があれば、該信号を何れかの信号処理部(2aまたは2b)に出力する。
【0049】
またメインIC5は、切替信号発生部51を含んでいる。切替信号発生部51は、各電源切替部(9a、9b)、受信側切替スイッチ回路32、送信側切替スイッチ回路35、および送受信切替スイッチ回路38に所定の信号(切替信号)を伝送することにより、各々における切替が制御される。
【0050】
またシステム切替制御部6は、予め所定の時間を計時するように設定されたタイマ7を用い、実際に通信を行わせる通信システムの切替を制御する。なおこの制御内容については、後に改めて説明する。また先術の通り、切替処理の実行は、切替信号発生部51を通じて切替信号を伝送することによりなされる。
【0051】
第1電源8aおよび第2電源8bは、各々、第1信号処理部2aおよび第2信号処理部2bを構成する装置に対して、駆動電力を供給する。また第1電源8aおよび第2電源8bの各々には、第1電源切替部9aおよび第2電源切替部9bが備えられている。これらの電源切替部により、当該駆動電力の供給の有無を自在に切り替えることが可能となっている。
【0052】
本高周波モジュール1は上述した構成となっており、複数の通信システムのうちの何れかを選定し、当該選定された通信システムに係るデータ信号を無線送受信することが可能となっている。なおこのように本願における「選定」とは、実際に通信を行わせるものとして選定する意である。次に、この通信システムの選定に関する処理について、図2を参照しながら説明する。
【0053】
システム切替制御部6は、まず通信システムの固定指示(指定)の有無を検出する(ステップS11)。通信システムの固定指示とは、何れかの通信システムを強制的に選定させるための指示のことであり、例えば不図示のユーザインタフェースを介したユーザの入力操作や、メインIC5の制御などを通じてなされる。
【0054】
かかる検出の結果、通信システムの固定指示があった場合は(ステップS11のY)、当該指示のなされた通信システムを選定する(ステップS12)。これにより、例えばユーザが通信の実行を希望する通信システムや、メインIC5により選定すべきと判断された通信システムが存在するときに、この通信システムを実際に使用するものとして固定することが可能となる。
【0055】
また通信システムの固定指示がない場合は(ステップS11のN)、次に通信システムの自動選定指示の有無を検出する(ステップS13)。通信システムの自動選定指示とは、後述する通信システムの自動選定処理を実行させるための指示のことであり、例えば不図示のユーザインタフェースを介したユーザの入力操作や、メインIC5の制御などを通じてなされる。
【0056】
かかる検出の結果、通信システムの自動選定指示がない場合は(ステップS13のN)、ステップS11の処理に戻る。つまり、先述した固定指示および自動選定指示が何れもなされていないときは、ステップS11とS13に係る検出(監視)を継続的に実行する。一方、通信システムの自動選定指示があった場合は(ステップS13のY)、以下に説明する自動選定処理(ステップS14からS16)を開始する。
【0057】
ここで自動選定処理の内容について説明する。初めに、現在選択されている(信号処理部が、送受信共通回路ブロック3に接続されている)通信システムに対応する信号が、受信信号中に存在するか否かを検出する(ステップS14)。具体的には、まず送受信切替スイッチ回路38を信号受信可能となるように設定するとともに、選択されている通信システムの電源切替部(9a、9b)を、電力供給可能状態とする。つまり、選択されている通信システムにおいて、信号の受信が可能となるように、各種切替手段を設定しておく。
【0058】
その後、選択されている通信システムにおいて、アンテナ端子4を介した信号の受信を行う。さらに続いて信号処理部では、当該受信信号中に、自己に対応するフォーマットのデータ信号が含まれているか否かを検出する。この検出は、例えば信号処理部において、暗号解読処理およびベースバンド信号への変換処理のうちの少なくとも一方を形式的に実施し、正常に処理が可能かどうかを調べることによってなされる。
【0059】
すなわち先述した通り、信号処理部は、その通信システムにより定まるフォーマットのデータ信号の処理用に特化されているから、受信信号に当該フォーマットのデータが含まれている場合と含まれていない場合とでは、信号処理部における処理状況は異なる(当該フォーマットのデータ含まれていない場合は、正常に処理がなされない)ことになる。そこでこの点に着目して、当該通信システムに対応する信号が受信信号に含まれているか否かを検出する。
【0060】
なおかかる検出方法は一例であって、各信号処理部において、受信信号の中から自己に対応するフォーマットのデータ信号を検出するための装置を、別途備えるようにしていても良い。また、対応するフォーマットのデータ信号が含まれているか否かを検出する代わりに、対応するフォーマットのデータ信号の量が、所定の閾値を超えているか否かを検出するようにしても良い。
【0061】
なお当該検出は、検出開始からタイマ7により所定の時間が計時されるまでの期間において行われる。そしてステップS14に係る検出の結果、選択中の通信システムに対応する信号が受信信号に含まれていない場合は(ステップS14のN)、現在選択されていない他の通信システムを選択し(ステップS15)、ステップS14の処理を繰り返す。
【0062】
なお通信システムが3個以上ある場合は、偏りが生じないよう各々順番に選択することが望ましい。これにより、複数の通信システムのうち、対応する信号が受信信号に含まれるものが見つかるまで、ステップS14からS15までの処理が繰り返されることとなる。
【0063】
一方、対応する信号が受信信号に含まれる通信システムが検出されたときは(ステップS14のY)、現在選択中の通信システムを、実際に通信を実行させるものとして選定する(ステップS16)。その後、ステップS11の処理に戻る。
【0064】
複数の通信システムのうち何れを通信可能とすべきかについては、信号の受信環境に依存することが多い。すなわち、対応する信号(対応信号)が十分に受信される通信システムについては、外部から有用な情報が得られる可能性が高く、逆にそうでない通信システムについては、外部から有用な情報が得られる可能性が低い。このような場合、前者の通信システムを通信可能とするのが良いと考えられる。
【0065】
そこで上記したステップS14からS16までの自動選定処理の採用することにより、各信号処理部における、受信信号に対する信号処理の実行状況に応じた選定を行い、信号の受信環境に応じた選定を実現している。つまり信号処理部における信号処理の実行状況は、受信信号中における対応信号の有無(もしくは含有割合など)に依存するから、例えば信号処理が十分に実行されている信号処理部を選定することにより、有用と考えられる通信システムが選定されることになる。これにより、例えば現在選定すべき通信システムが不明な場合であっても、自動的に有用と考えられる通信システムを選定することが可能となっている。
【0066】
なおステップS12またはS16により何れかの通信システムが選定されたら、切替制御部6は、受信側切替スイッチ回路31および送信側切替スイッチ回路35を、選定された通信システムによる信号送受信が可能となる状態に維持する。これにより、選定した通信システムにおける信号処理部とアンテナ端子4との接続状態が維持される。また、選定された通信システムに係る信号処理部(2aまたは2b)にのみ駆動電力が供給されるよう、電源切替部(9aまたは9b)を制御する。
【0067】
選定されている信号処理部は、信号処理を行うための電力が必要である一方、選定されていない信号処理部については、信号処理を行うための電力は不要となる。そこでこのように電源切替部を制御し、選定されていない信号処理部への駆動電力供給を停止させることで、無駄な電力消費を極力抑えることとしている。
【0068】
以上のようにして、データ信号の無線送受信を実行する通信システムが選定されることとなる。次に、選定された通信システムにおける、一連の信号受信処理および信号送信処理について具体的に説明する。なおここでは、無線LANシステムによる通信(第1信号処理部2aを用いる通信)を行う場合について説明するが、他の通信システムを用いる場合であっても同様に考えることができる。
【0069】
信号を受信する場合、まずメインIC5は、切替信号発生部51を通じて、送受信切替スイッチ回路38を受信可能となるように設定する。その後、アンテナ端子4により受信されたデータ信号は、フィルタ39、送受信切替スイッチ回路38、ローノイズアンプ33、受信側切替スイッチ回路32、第1RF−IC22a、第1MAC−IC21aの順に伝送されて、メインIC5に入力されることとなる。
【0070】
また信号を送信する場合、まずメインIC5は、切替信号発生部51を通じて、送受信切替スイッチ回路38を送信可能となるように設定する。つまり、データ信号の送信と受信との切替に応じて、送受信切替スイッチ回路38の状態も切り替わることとなる。
【0071】
その後、メインIC5より出力されたデータ信号は、第1MAC−IC21a、第1RF−IC22a、送信側切替スイッチ回路35、パワーアンプ回路36、送受信切替スイッチ回路38、フィルタ39の順に伝送されて、アンテナ端子4から外部に無線送信されることとなる。
【0072】
このようにして、選定された通信システムに係るデータ信号の無線送受信が実現される。またアンプ装置として、受信ブロック31側にはローノイズアンプ33を、送信ブロック34側にはパワーアンプ回路36を別個に備えているため、送信・受信の各々に適した特性のアンプ装置を採用することが可能となっている。
【0073】
なお、ローノイズアンプ33、パワーアンプ回路36、およびフィルタ39は、各通信システムにおいて共用されるものであるため、各通信システムの使用周波数帯域に対応できるように構成する必要がある。本実施形態のように、各通信システムに係る信号の周波数帯域(2.4GHz)が同一であれば殆ど問題にならないが、そうでない場合、例えばアンプやフィルタを広域な帯域に対応できるものとしたり、対応する周波数帯域を可変としたりすることにより、各通信システムの周波数帯域に対応できるよう配慮すべきである。
【0074】
なお以上に説明した通り本実施形態によれば、受信側切替スイッチ回路32と送信側切替スイッチ回路35を通じて、送受信共通回路ブロック3が複数の信号処理部(2a、2b)の何れかに接続されるようになっている。そのため、複数の通信システムに対応するために複数の信号処理部を備えつつも、各スイッチ回路(32、35)の制御を通じて、送受信共通回路ブロック3を各信号処理部について共用化することができる。その結果、複数の通信システムを搭載した無線通信機器でありながら、小型化および製造コスト低減などが実現可能となっている。
【0075】
また回路モジュール数の点から見ると、本実施形態の高周波モジュールは、複数の異なる通信システムの送受信回路を、単一の回路モジュール内部に搭載した構成となっている。このように、複数の通信システムを搭載した1つの高周波モジュールとしているため、複数個の高周波モジュールを搭載する場合に比べ、無線通信機器への実装面積を小さくすることができる。また複数の通信システムの送受信回路(送受信共通回路ブロック3)を単一の回路モジュールで構成しているため、無線通信機器への高周波モジュールの実装個数が複数点から1点に減らすことができ、実装コストの低減が可能となる。
【0076】
またさらに送受信共通回路ブロック3は、異なる通信システム間で共用できる送信回路ブロック(送信ブロック)および受信回路ブロック(受信ブロック)を有しているから、共用可能な回路ブロックの共用化により、高周波モジュール内部の回路規模を小さくすることが可能となっている。かかる共用化により、高周波モジュールの部品点数が削減されコスト低減が実現可能となっている。
【0077】
そして以上に説明した高周波モジュールを、例えば携帯端末装置などの無線通信機に適用することにより、複数の通信システムに係る通信処理を単一の無線通信機にて使用することができる。
【0078】
以上の通り本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る高周波モジュールの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る自動選定処理の流れ図である。
【図3】従来の高周波モジュールの一例に係る構成図である。
【符号の説明】
【0080】
1 高周波モジュール
2a 第1信号処理部
2b 第2信号処理部
3 送受信共通回路ブロック(送受信回路)
4 アンテナ端子(アンテナ)
5 メインIC
6 システム切替制御部(選定手段)
7 タイマ
8a 第1電源部
8b 第1電源切替部(電力供給切替部)
9a 第2電源部
9b 第2電源切替部(電力供給切替部)
21a 第1MAC−IC
21b 第2MAC−IC
22a 第1RF−IC
22b 第2RF−IC
31 受信ブロック
32 受信側切替スイッチ回路
33 ローノイズアンプ(アンプ装置)
34 送信ブロック
35 送信側切替スイッチ回路
36 パワーアンプ回路(アンプ装置)
37 送受信ブロック
38 送受信切替スイッチ回路
39 フィルタ回路
51 切替信号発生部
100a 第1通信システム用モジュール
100b 第2通信システム用モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が所定の信号処理を行う複数の信号処理部と、
前記信号処理部の何れかに接続され、所定のアンテナから伝送された受信信号を前記接続された信号処理部に伝送する受信回路と;前記接続された信号処理部から伝送された送信信号を前記アンテナに伝送する送信回路と;を有する送受信回路と、
前記送受信回路を前記信号処理部の何れかに切替可能に接続する第1接続部と、を備えたことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記送受信回路は、
前記アンテナを前記受信回路および送信回路の何れかに、切替可能に接続する第2接続部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記信号処理部のうちから、実際に前記信号処理を行わせるものを選定する選定手段を備え、
前記第1接続部は、該選定手段の選定結果に応じて、前記送受信回路を前記信号処理部の何れかに接続することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
前記各々の信号処理部に対する、駆動電力の供給状態を切替える電力供給切替部を備え、
該電力供給切替部は、前記選定手段の選定結果に応じて、前記切替を行うことを特徴とする請求項3に記載の高周波モジュール
【請求項5】
前記選定手段は、前記選定の実行にあたり、
前記第1接続部を通じて、前記送受信回路に接続させる信号処理部を順次切替えるとともに、
該切替の度に、該接続された信号処理部における、前記受信信号に対する前記信号処理の実行状況を検出し、
該検出結果に応じて、前記選定を実行することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の高周波モジュール。
【請求項6】
前記選定手段は、
前記信号処理部のうちの何れかの指定があったときは、該指定のなされた信号処理部を、前記選定の対象とすることを特徴とする請求項3から請求項5の何れかに記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記信号処理部は、信号の変調処理または復調処理を行うものであり、
前記受信回路および送信回路の各々は、アンプ装置を有していることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の高周波モジュール。
【請求項8】
前記送受信回路は、単一のモジュールとして構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の高周波モジュール。
【請求項9】
2つの前記信号処理部を備えた請求項1から請求項8の何れかの高周波モジュールであって、
前記2つの信号処理部のうちの一方は、所定の無線LAN規格のシステムに対応するものであり、他方は、BLUETOOTH規格のシステムに対応するものであることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項10】
複数の異なる通信システムの送受信回路を、単一の回路モジュール内部に搭載したことを特徴とする高周波モジュール。
【請求項11】
前記送受信回路は、
前記異なる通信システム間で共用できる送信回路ブロックを有することを特徴とする請求項10に記載の高周波モジュール。
【請求項12】
前記送受信回路は、
前記異なる通信システム間で共用できる受信回路ブロックを有することを特徴とする請求項10に記載の高周波モジュール。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れかに記載の高周波モジュールを備えたことを特徴とする無線通信機および携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−5098(P2008−5098A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171098(P2006−171098)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】