説明

無線通信端末とデータ伝送システム及びデータ伝送方法

【課題】複合機器に容易に適用でき、データ通信方式の切り替えによるランニングコストの低減が得られるようにした無線端末装置を提供すること。
【解決手段】制御部102は、第三世代の通信端末に対応した複合形の外部機器EXからのATコマンドによる発信要求に応じて、無線通信端末100による通信処理を回線交換方式とパケット交換方式の何れか一方の通信処理に設定し、入出力処理部102と通信部105及びアンテナ106を介して接続相手方と伝送路を設定する。このとき、制御部102は、このときの外部機器EXによる発信要求が音声通信とファクシミリ通信及びデータ通信の何れであるかの識別を、外部機器EXからのATコマンドの文字構成に依存して行うようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異なる伝送方式に対応したデータ伝送装置とシステム及び方法に係り、特に多数の外部機器からデータを収集する場合に好適な無線通信端末とデータ伝送システム及びデータ伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部機器と無線通信端末がデータ通信に使用する交換方式には、回線交換方式(Circuit Switched:以下、CS方式という)とパケット交換方式(Packet Switched:以下、PS方式という)の2種が存在する。
ここで、まず、CS方式の場合、通信開始点から終了点まで物理的に設定した伝送路(無線伝送路も含む)を用い、回線を占有しているので、通信速度や通信品質(QoS:Quality of Service)の点で優位性が保証されるが、それ故に通信単価は高くなる。
【0003】
他方、PS方式の場合は、複数の端末が伝送路を共有するため、通信速度や通信品質についての保証はともかく、通信単価はCS方式に比較して安価である。
そこで、リアルタイム性が要求される通信には、近年までCS方式の使用が推奨されていた。
しかしながら、近年の技術開発によって、PS方式においても通信速度の高速化が可能になり、QoSの概念を導入した優先制御や帯域制御が適用されるようになり、この結果、リアルタイム性を要求する通信でもPS方式の使用に対する通信品質は特に問題のないことが判ってきた。
【0004】
このように、伝送方式をCS方式からPS方式に変更すれば通信費用が削減されるため、利用する側から見た場合、PS方式での発信がコスト的に優位になる。
そして、このことは、データの送信元となる無線端末の外部装置が、例えば販売時点情報管理システムPOS(Point of Sales system)の対象である自動販売機などで、設置台数が多く、かつ、収集すべきデータが多い場合、加速度的に優位になり、従って、この場合、PS方式を採用すれば、より大きなランニングコストの低減が期待できることになる。
【0005】
そこで、これを受け、データ通信方式を、外部装置からの接続要求に応じてCS方式からPS方式に切り替えて対応するようにした無線端末システムが従来技術として提案されている(例えば特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4490301号の特許公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TS27.007 V6.10.0 “10.1 Commands specific to MTs supporting the Packet Domain”
【0008】
【非特許文献2】3GPP TS27.007 V6.10.0 “6.2 ITU-T V.250 dial Command D”
【0009】
【非特許文献3】3GPP TS27.007 V6.10.0 “6.4 call made+CMOD”“C.2.1 Select made+FCLASS”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年、上記伝送システムの外部機器にあたる電子機器の多機能化は著しく、上記した自動販売機などデータの収集対象に過ぎない装置に限らず、例えば通話機能とファクシミリ機能を備え、電話機としてもファクシミリとしても使用することができるプリンタ装置や通話機能とメール機能を備え、メールの授受が可能な電話機としても使用することができるファクシミリ装置などの各種の複合機器が実用化されている。
そこで、これらの複合機器についても、無線端末の外部装置とした上で、データ通信方式をCS方式からPS方式に切り替えるべき対象としてやれば、ランニングコストの低減が図れる。
【0011】
しかしながら、データ通信方式をCS方式からPS方式へ移行するためには、外部機器から無線通信端末へ発信する通信接続の信号処理方法を変更する必要があり、処理方法の変更にコストがかかってしまうという問題があった。
また、新たに設置する外部機器はPS方式を用いてデータ通信処理を行うように構成されていたとしても、既設の外部機器にはCS方式を使用して無線通信端末にデータ伝送処理を行うものも継続して設置される可能性もあるため、CS方式とPS方式のデータ通信方式が1つのシステム内で混在する場合も考えられ、このような場合であってもシステム運用に障害が生じないように対応しなければならないという問題も生じてしまう。
【0012】
本発明の目的は、複合機器に容易に適用でき、データ通信方式の切り替えによるコストの低減が得られるようにした無線端末装置とデータ伝送システム及びデータ伝送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、外部装置との間の伝送路を通信するデータ通信方式が、回線交換方式とパケット交換方式のどちらの交換方式であるかを判断し、判断結果に応じて信号処理を切り替えて設定する方式の無線端末装置において、前記回線交換方式と前記パケット交換方式の切り替えのための選択を、前記外部装置から発信されるATDコマンドの文字構成の識別結果に応じて行う制御手段が設けられていることにより達成される。
【0014】
また、上記目的は、外部装置と無線通信端末との間の伝送方式を、外部装置から無線通信端末が受信した信号に応じて回線交換方式とパケット交換方式の一方と他方に切り替えて設定する方式のデータ伝送システムにおいて、前記外部装置から発信されるATDコマンドの文字構成を調べる手段と、前記外部装置からのATDコマンドによる接続要求に際して必要な前記回線交換方式と前記パケット交換方式の選択を、前記ATDコマンドの文字構成を調べる手段による識別結果に依存して行う手段とを含むことにより達成される。
【0015】
更に、上記目的は、外部装置と無線通信端末との間の伝送路を、外部装置から無線通信端末が受信した信号に応じて回線交換方式とパケット交換方式の一方と他方に切り替えて設定するデータ伝送方法において、前記外部装置からのATDコマンドによる接続要求に際して必要な前記回線交換方式と前記パケット交換方式の選択を、前記外部装置から発信されるATDコマンドの文字構成を調べ、調べたATDコマンドの文字構成に依存して前記外部装置からのATDコマンドによる接続要求に際して必要な前記回線交換方式と前記パケット交換方式の選択を行うことにより達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外部装置EXが複合機器であっても全ての発信に確実に対応して相手先に接続させることができ、データ通信のパケット交換方式化による大きなランニングコストの低減を確実に享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による無線通信端末の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施の形態による通信方式の識別処理を説明するフロー図である。
【図3】本発明におけるATコマンドと処理内容の説明図である。
【図4】本発明におけるATコマンドと処理内容の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による無線端末装置とデータ伝送システム及びデータ伝送方法について、図示の実施形態により詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る無線通信端末100を示したので、これには外部装置EXが接続されている。
そして、この外部装置EXは、この実施形態の場合、通話機能とメール機能及びファクシミリ機能などを備え、3GPPに準拠したATコマンドにより情報の授受を行う第三世代の通信端末に対応したものであり、そこで、ここでは第三世代の外部装置又は外部機器と定義する。
【0019】
ところで、この第三世代の通信システムに対応した機器の場合、+CGDCONTコマンドに対して文字コードCIDを用いて発信すべきものとして規定されている(非特許文献1参照)。
そこで、これを受け、ATコマンドによる情報の授受が可能な入出力処理部101を設け、これにより外部装置EXとATコマンドによりデータの授受を行う。
このとき制御部102は、所望のプログラムが搭載されたCPUやDSP(Digital Signal Processor)などの演算装置により構成され、この無線通信端末100に必要な各種の制御を司る。
【0020】
ここで、記憶部のフラッシュROM103は、制御部102の動作に必要な各種所望のプログラムを格納する働きをし、同じくRAM104は、制御部102のワークメモリとして機能し、且つ、取得したデータを保存するためのメモリとしても機能する。
そして、通信部105は、この無線通信端末100と基地局(図示しない)の間で無線通信を行う無線送受信機として機能し、このため、この通信部105にはアンテナ106が接続されている。
【0021】
次に、この実施形態の動作について、図2のフローチャートにより説明する。
この図2のフローチャートによる処理は、外部装置EXからATDコマンド(発信のためのダイヤルナンバーからなるATコマンド)が発信され、それが無線通信端末100の入出力処理部101に受信され、制御部102により認識されたとき開始される。
そして、いま、処理が開始されたとする。そうすると、まず、受信されたATDコマンドにセミコロン「;」が含まれているか否かを調べ、判定結果を得る(処理201)。
【0022】
ここで、図3は、3GPPに準拠したATコマンドにより情報の授受を行う第三世代の通信システムに対応した機器、すなわち外部機器EXが音声通信で発信する場合とFAX/データ通信で発信する場合のATコマンドに対する規約を示したもので、図示のとおり、コールが音声通信の場合、ダイヤルナンバーの後にセミコロン「;」を付与すべきものとして規定されている(非特許文献2参照)。
従って、ATDコマンドにおけるダイヤルナンバーの後に「;」が付与されていれば、コールは音声通信であると無線通信端末100側で認識でき、付与されていなければ、そのコールはFAX/データ通信(FAX又はデータ通信)であると無線通信端末100側で認識できることになる。
【0023】
そこで、まず、処理201での判定結果がYES、つまりATDコマンドにセミコロン「;」が含まれていた場合、このときに外部装置EXから発信されたコール(接続要求)は、ケース1の音声発信に係るものであると認識する。
そして、このケース1の場合、制御部102は、当該無線通信端末100による動作を通常の電話回線の場合と同じにし、外部装置EXの電話部と、図示してない基地局に接続されている相手先(電話機)との間にCS方式(回線交換方式)の伝送路を設定し、相互に通話を可能にするのである。
【0024】
しかして、処理201での判定結果がNO、つまりATDコマンドにセミコロン「;」が含まれていなかった場合には、更に受信されたATコマンドにおけるAT+FCLASSコマンドが0に設定されているか否かを調べ、判定結果を得る(処理202)。
【0025】
ここで、図4は、3GPPに準拠したATコマンドにより情報の授受を行う第三世代の通信システムに対応した機器である外部機器EXが音声通信で発信する場合とFAX/データ通信で発信する場合のATコマンドにおけるAT+FCLASSコマンドに設定されている規約を示したもので、図示のとおり、コールがデータ通信の場合、AT+FCLASS=0に設定し、FAX通信の場合には、AT+FCLASS=1(or1.0、2、2.0)に設定するものとして規定されている(非特許文献3参照)。
【0026】
従って、ATDコマンドにおけるAT+FCLASSコマンドが0に設定されていれば、そのコールはデータ通信発信であると無線通信端末100側で認識でき、1(or1.0、2、2.0)に設定されていたときは、そのコールはFAX通信発信であると無線通信端末100側で認識できることになる。
【0027】
そこで、まず、処理202での判定結果がNOのときはケース2のFAX通信発信と認識する。
そして、このケース2の場合、制御部102は、当該無線通信端末100による動作を通常のFAX回線の場合と同じにし、外部装置EXのファクシミリ部と図示してない基地局に接続されている相手先(ファクシミリ)との間にCS方式(回線交換方式)による伝送路を設定し、相互にFAX通信を可能にするのである。
【0028】
しかして処理202での判定結果がYESのときは、ケース3のデータ通信発信に該当するものと認識し、この場合、更に、このときの発信ダイヤル番号をAPN変換テーブルと照合し、発信されたダイヤル番号がAPN変換テーブル(詳細は後述)に存在しているか否かを調べ、判定結果を得る(処理203)。
【0029】
そして、まず、この処理203での判定結果がNOのときは、ケース3Aに移行する。
このケース3Aの場合、制御部102は、そのデータ通信動作をCS方式に設定し、外部装置EXと、このときのダイヤル番号により指定された相手先の間にCS方式(回線交換方式)による伝送路を設定した上で、データの伝送に必要な送受信処理を実行し、相互にデータの授受を可能に設定することになる。
【0030】
しかして、この処理203での判定結果がYESのときは、ケース3Bに移行する。
そして、このケース3Bの場合、制御部102はPS方式によるデータ通信に移行し、外部装置EXと、このときのダイヤル番号により指定された相手先の間にPS方式(パケット交換方式)による伝送路を設定した上で、データの伝送に必要な処理を実行し、相互にデータの授受を可能に設定することになる。
【0031】
従って、この実施形態によれば、外部装置EXが複合機器であっても全ての発信に確実に対応して相手先に接続させることができる。
しかも、この実施形態においては、外部装置EXからのコールが、音声通信とファクシミリ通信及びデータ通信の何れのためのコールなのかを、外部装置EXから発信されてくるATコマンドの構成に基づいて識別するようにしたので、外部装置EXに改修を施す必要がないという利点がある。
【0032】
ここで、上記したAPN変換テーブルについて説明すると、これは上記した従来技術にも開示されているもので、まず、APN(Access Point Name)とは、接続先を指定する文字列のことであり、従って、このAPN変換テーブルは、外部装置EXがダイヤル番号で指定した接続相手先の中で、PC方式に対応した機器のダイヤル番号をAPNとして、上記した記憶部のフラッシュROM103に予め記述しておいたものである。
【0033】
従って、この実施形態によれば、相手先がPC方式(パケット交換方式)に対応したデータ通信機能を備えた複合機器の場合には、それが確実に識別できることになり、この結果、パケット交換方式による大きなランニングコストの低減が常に確実に得られることになる。
【0034】
ところで、上記した処理203は、相手先の機器の中にPC方式に対応していない機器が存在している場合を想定したものであり、従って、この実施形態によれば、全ての機器のデータ通信がPC方式に対応したものになった暁には、データ通信の全てについてPC方式で処理したことによるランニングコストの低減が得られることになる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、第三世代の通信方式に適合した携帯電話やファクシミリ、プリンタなどの複合機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
100 無線通信端末
101 入出力処理部
102 制御部
103 フラッシュROM
104 RAM
105 通信部
106 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置との間の伝送路を通信するデータ通信方式が、回線交換方式とパケット交換方式のどちらの交換方式であるかを判断し、判断結果に応じて信号処理を切り替えて設定する方式の無線端末装置において、前記回線交換方式と前記パケット交換方式の切り替えのための選択を、前記外部装置から発信されるATDコマンドの文字構成の識別結果に応じて行う制御手段が設けられていることを特徴とする無線端末装置。
【請求項2】
外部装置と無線通信端末との間の伝送方式を、外部装置から無線通信端末が受信した信号に応じて回線交換方式とパケット交換方式の一方と他方に切り替えて設定する方式のデータ伝送システムにおいて、前記外部装置から発信されるATDコマンドの文字構成を調べる手段と、前記外部装置からのATDコマンドによる接続要求に際して必要な前記回線交換方式と前記パケット交換方式の選択を、前記ATDコマンドの文字構成を調べる手段による識別結果に依存して行う手段とを含むことを特徴とするデータ伝送システム。
【請求項3】
外部装置と無線通信端末との間の伝送路を、外部装置から無線通信端末が受信した信号に応じて回線交換方式とパケット交換方式の一方と他方に切り替えて設定するデータ伝送方法において、前記外部装置からのATDコマンドによる接続要求に際して必要な前記回線交換方式と前記パケット交換方式の選択を、前記外部装置から発信されるATDコマンドの文字構成を調べ、調べたATDコマンドの文字構成に依存して前記外部装置からのATDコマンドによる接続要求に際して必要な前記回線交換方式と前記パケット交換方式の選択を行うことを特徴とするデータ伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227826(P2012−227826A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95258(P2011−95258)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】