説明

無線通信装置、無線通信接続方法、及び無線通信接続プログラム

【課題】無線通信装置が相手方装置を漏れなく選択可能とする。
【解決手段】無線通信信号の処理を行う無線通信部301と、前記無線通信部を制御して、無線通信の通信相手となり得る一以上の相手方装置を周期的にスキャンするスキャン制御部302と、前記スキャンによって検出された前記相手方装置の識別情報を所定のスキャン回数分記憶する記憶部303と、前記記憶部を参照して、最新のスキャンによって検出された前記識別情報と、前記最新のスキャンよりも過去のスキャンによって検出された前記識別情報と、を論理和演算した通信相手候補リストを生成するリスト生成部304と、前記通信相手候補リストを表示する表示部203と、を備える無線通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置又は無線通信機能を備えた装置におけるアクセスポイントのスキャン及び接続に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク対応プリンター(以下「プリンター」)は、有線LAN(Local Area Network)接続機能だけでなく、無線LAN接続機能も搭載されるようになった。
【0003】
図1のインフラストラクチャ型ネットワークにおけるプリンターとAP(Access Point)の配置例を用いて、プリンターを無線LANに接続する一般的な方法について、簡単に説明する。インフラストラクチャ型ネットワークの場合、同図に示すように、プリンター100の周囲に1又は複数のAPが存在している。APとは無線LANを構築する際の基地局であり、プリンター100はこれらAPのいずれかと無線で接続することによって、PC101又はインターネット等と通信ができるようになる。APに接続する場合、プリンターは無線信号の届く範囲Aの内側に存在するAPをスキャンし、スキャンで発見されたAP1〜4を接続先候補として画面に表示する。そして、ユーザーが接続したいAPを画面から選択することにより、接続処理が開始される。
【0004】
通常、スキャンは、無線周波数の異なるチャンネルを順次切り替えながら、それぞれのチャンネルに存在するAPをサーチする(特許文献1)。APをサーチする処理は、プリンターがProve Requestフレームをブロードキャストし、それを受信したAPがプリンターに対してProve Responseフレームを返信する。プリンターは、前記Prove Responseフレームを受信することによって、周囲のAPを発見することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264565号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、プリンターがスキャンを実行したとき、一部のAPにおいて、無線信号の届く範囲に存在するにもかかわらず、何らかの原因により発見できたり、発見できなかったりすることがある。このAPは、スキャンでは発見できなくとも、無線信号の届く範囲に存在しているため、プリンターを接続することは可能である。
【0007】
APを発見できない原因は様々であるが、原因の一つとして、APからのProve Responseフレームの返信が遅いことが挙げられる。例えば、プリンターがProve Requestフレームをブロードキャストしたとき、何らかの原因で、たまたまAPからのProve Responseフレームの返信が遅くなってしまったとする。このとき、プリンターは、その返信が遅くなってしまったProve Responseフレームを受信する前に、次のチャンネルのスキャンに遷移してしまう。そのため、プリンターはそのProve Responseフレームの返信が遅れたAPを発見することができず、当該APを接続先候補として画面に表示することができない。したがって、ユーザーがプリンターを当該APに接続したいとき、当該APを画面から選択することができなくなってしまう。
【0008】
そこで本発明の目的は、無線通信装置が、無線通信の通信相手となり得る相手方装置を漏れなく選択可能とすることである。
【0009】
また、本発明の別の目的は、最新のスキャンでたまたま発見できなかった無線通信の通信相手となり得る相手方装置であっても、前記相手方装置に無線通信装置を接続できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線通信装置は、無線通信信号の処理を行う無線通信部と、前記無線通信部を制御して、無線通信の通信相手となり得る一以上の相手方装置を周期的にスキャンするスキャン制御部と、前記スキャンによって検出された相手方装置の識別情報を所定のスキャン回数分記憶する記憶部と、前記記憶部を参照して、最新のスキャンによって検出された前記識別情報と、前記最新のスキャンよりも過去のスキャンによって検出された前記識別情報と、を論理和演算した通信相手候補リストを生成するリスト生成部と、前記通信相手候補リストを表示する表示部と、を備える。
【0011】
これにより、無線通信装置は、無線通信の通信相手となり得る相手方装置を漏れなく選択可能とすることができる。また、最新のスキャンでたまたま発見できなかった相手方装置であっても、前記相手方装置に無線通信装置を接続することができる。
【0012】
好適な実施形態では、前記通信相手候補リストに識別情報が含まれる前記相手方装置が前記スキャンによって検出された検出回数又は検出確率を算出する算出部をさらに備え、前記表示部は、前記識別情報と、前記検出回数又は検出確率とを表示してもよい。
【0013】
これにより、無線通信装置は、最新のスキャンでたまたま発見でなかった相手方装置であるか否かを表示することができる。
【0014】
好適な実施形態では、前記リスト生成部は、前記スキャン制御部によってスキャンが実行され、前記最新のスキャン及び前記過去のスキャンの情報が更新されたときは、更新されたスキャンの情報を基に新たな通信相手候補リストに更新し、前記表示部は、通信相手候補リストが更新されたときは、前記新たな通信相手候補リストを基に表示を更新してもよい。
【0015】
これにより、無線通信装置は、常に最新のスキャン結果を表示することができる。
【0016】
好適な実施形態では、前記表示部は、前記最新のスキャンによって検出された識別情報と、前記過去のスキャンによって検出された識別情報とを区別できるように表示してもよい。
【0017】
これにより、無線通信装置は、最新のスキャンでたまたま発見できなかった相手方装置であるか否かを表示することができる。
【0018】
好適な実施形態では、前記表示部は、前記通信相手候補リストを表示する際、前記検出回数又は前記検出確率が所定の閾値以下の識別情報を非表示にしてもよい。
【0019】
これにより、無線通信装置は、最新のスキャンでたまたま発見できなかった相手方装置と偶然スキャンしてしまった相手方装置とを区別して表示することができる。
【0020】
好適な実施形態では、前記スキャン制御部は、さらに、前記無線通信部が受信した無線通信信号の電波強度を検出し、前記各識別情報と前記各電波強度を対応させて前記記憶部に記憶し、前記表示部は、前記通信相手候補リストを表示する際、前記検出回数又は前記検出確率が所定の閾値以下、かつ前記電波強度が所定の閾値以下の識別情報を非表示にしてもよい。
【0021】
これにより、無線通信装置は、最新のスキャンでたまたま発見できなかった相手方装置と偶然スキャンしてしまった相手方装置とを区別して表示することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、無線通信装置が、無線通信の通信相手となり得る相手方装置を漏れなく選択可能とすることができる。
【0023】
本発明によれば、最新のスキャンでたまたま発見できなかった無線通信の通信相手となり得る相手方装置であっても、前記相手方装置に無線通信装置を接続することができる。
【0024】
なお、本明細書では、インフラストラクチャ型ネットワークを想定し、相手方装置を「AP」として説明しているが、アドホック型ネットワークにおいても、相手方装置を「STA(Station)」とすることで、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】インフラストラクチャ型ネットワークにおけるプリンターとAPの配置例
【図2】プリンター100の機能ブロック図
【図3】無線通信装置207の機能ブロック図
【図4】記憶部303における識別情報リストの記憶例
【図5】リスト生成部304における通信相手候補リストの生成処理フローチャート
【図6】リスト生成部304によって生成される通信相手候補リストの例
【図7】接続先とするAPの選択及び接続時における表示部203の画面表示例
【図8】接続先とするAPの選択時における表示部203の他の画面表示例
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一つの実施形態に係る無線通信装置を備えたプリンターについて、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係る無線通信は、無線LAN規格(IEEE802.11)に準拠するものとする。
【0027】
図1は、インフラストラクチャ型ネットワークにおけるプリンターとAPの配置例である。同図を用いて、プリンターをAPに無線で接続するときの処理を簡単に説明する。
【0028】
まず、プリンター100はアクティブスキャンにて、無線が届く範囲Aに対してProve Requestフレームをブロードキャストする。次に、範囲Aの内側に存在するAP1〜4は、前記Prove Requestフレームを受信できるため、プリンター100に対してProve Responseフレームを返信する。なお、範囲Aの外側に存在するAP5は、前記Prove Requestフレームを受信できないため、プリンター100に対してProve Responseフレームを返信することはできない。これにより、プリンター100は、AP1〜4から送信されたProve Responseフレームを受信することにより、接続先候補となるAP1〜4を発見することができる。そして、ユーザーは発見されたAP1〜4から、プリンター100を接続したいAPを選択する。ここで、ユーザーは、必要であればAPに接続するためのパスワードを入力する。これにより、プリンター100をAPに接続することができる。なお、プリンター100は、パッシブスキャンにて、各APから定期的に送信されるBeaconフレームを受信して、接続先候補となるAPを発見してもよい。
【0029】
図2は、プリンター100の機能ブロック図である。同図に示すように、プリンター100は、印刷機構201、印刷制御部202、表示部203、入力部104、及び通信I/F205を備えている。そして、通信I/F205は、有線通信装置206、及び無線通信装置207を備えている。以下、各機能ブロックについて説明する。
【0030】
印刷機構201は、印刷ヘッド、紙送り機構などを備え、印刷制御部202の制御に基づき、紙などの印刷媒体に印刷を行う。
【0031】
印刷制御部202は、入力部204からのコマンド及び通信I/F205等を介して取得した印刷データに基づき、印刷機構201を制御して、印刷を実行させる。
【0032】
表示部203は、例えば、液晶パネルなどの表示装置を備え、プリンターの様々な情報が表示される。表示部203には、例えば、印刷状況、印刷データの受信状況、インクの残量など印刷に関する情報の他に、後に説明するように、プリンター100の接続先候補のAPの選択画面、APに接続するためのパスワード入力画面などが表示される。
【0033】
入力部204は、例えば、プッシュボタンなどの入力装置を備え、ユーザーからのコマンドを受け付ける。入力部204は、例えば、印刷開始/中止など印刷に関するものの他に、後に説明するように、プリンター100を接続したいAPの選択、APに接続するためのパスワードの入力などを受け付ける。なお、表示部203と入力部204を別々に設ける代わりに、両者を一体にしたタッチパネル式の操作パネルを設けてもよい。
【0034】
通信I/F205は、外部と通信を行うためのインターフェースであって、プリンター100の各機能ブロックが、有線通信又は無線通信を介して他の通信装置とデータの送受信を行うときに使用される。通信I/F205は、例えば、有線通信又は無線通信を介してPCから印刷データを受信したり、印刷状況又はプリンターのステータス等に関するデータをPCに送信したりする。
【0035】
有線通信装置206は、プリンター100をLANケーブルでLANに接続したときに、有線の通信信号を制御する装置である。
【0036】
無線通信装置207は、プリンター100を無線でLANに接続したときに、無線の通信信号を制御する装置である。
【0037】
図3は、無線通信装置207の機能ブロック図である。同図に示すように、無線通信装置207は、無線通信部301、スキャン制御部302、記憶部303、リスト生成部304、及び接続制御部305を備えている。以下、各機能ブロックについて説明する。なお、以下において、説明をわかりやすくするため、無線通信の通信相手となり得る相手方装置を「AP」と想定して説明する。
【0038】
無線通信部301は、無線通信信号を処理する。具体的には、IEEE802.11a/b/g/n等に対応する信号処理、通信データ処理、通信データの暗号化処理及び複合化処理、通信速度制御処理などを行う。なお、無線通信部301は、例えば、無線通信信号の送受信アンテナなどのハードウェアと、そのハードウェアを制御するための所定のプロセッサーなどにより実現してもよい。また、以下の各制御部及び記憶部等は、プロセッサー及びメモリーを用いて所定のコンピュータープログラムを実行させることにより実現することができる。
【0039】
スキャン制御部302は、まず、ユーザーからの指示又は自動で定期的に、無線が届く範囲にProve Requestフレームをブロードキャストする。次に、スキャン制御部302は、前記Prove Requestフレームに応答したそれぞれのAPから送信されたProve Responseフレームを受信する。次に、前記各Prove Responseフレームから、それぞれの前記Prove Responseフレームを送信したAPの識別情報を抽出する。次に、抽出された一以上の前記識別情報を含む識別情報リストを生成し、前記識別情報リストを記憶部303に記憶する。ここで、識別情報とは、無線LAN規格において、APを一意に識別するSSID(Service Set Identifier)であり、文字列データである。なお、スキャン制御部302は、通信相手となり得るAPの識別情報と、前記通信相手となり得るAP毎に無線通信部301が受信した無線通信信号の電波強度を検出し、前記各識別情報と前記各電波強度を対応させて前記記憶部303に記憶してもよい。
【0040】
記憶部303は、スキャン制御部302のスキャンによって検出された一以上の通信相手となり得るAPの識別情報を識別情報リストとして記憶する。
【0041】
図4に、記憶部303における識別情報リストの記憶例を示す。同図に示すように、記憶部303は、最新のスキャンによって生成された識別情報リスト401及び、以前のスキャンによって生成された識別情報リスト402,403を記憶する。そして、記憶部303は、それらの識別情報リストが何回前にスキャンされたものであるかの情報も合わせて保持する。なお、何回前にスキャンされたものであるかの情報を保持する方法は、例えば、スキャンされたときの時刻と識別情報リストをセットで保持してもよいし、識別情報リストをキューとして管理し、一番古い識別情報リストから順次削除するようにしてもよい。本実施形態では、キューで管理することとし、1回前を最新のスキャン結果、2回前を前回のスキャン結果、3回前を前々回のスキャン結果とする。これにより、他の機能ブロックは、記憶部303から、例えば、1回前の識別情報リスト401のみを取得したり、1回前から3回前までの識別情報リスト401〜403を一括で取得したりすることができる。
【0042】
リスト生成部304は、記憶部303が保持する識別情報リストを参照して、スキャン制御部302による最新のスキャンによって検出された一以上のAPの識別情報と、前記最新のスキャンより以前の所定回数分の過去のスキャンによって検出された一以上のAPの識別情報とを含む通信相手候補リストを生成する。ここで、通信相手候補リストとは、最新から所定回数前までのスキャンにて発見された全てのAPの識別情報について、論理和演算を行うことによって、リスト内においてはAPの識別情報を重複することなく保持するリストである。なお、無線通信装置207は、通信相手候補リストに識別情報が含まれる各APが最新のスキャン及び過去のスキャンにおいて検出された検出回数又は検出確率を算出する算出部をさらに備え、リスト生成部304は、各識別情報と各前記検出回数又は検出確率を対応させて通信相手候補リストを生成してもよい。また、リスト生成部304は、各識別情報と各電波強度を対応させて通信相手候補リストを生成してもよい。なお、通信相手候補リストの生成方法については、後に説明する。
【0043】
接続制御部305は、無線通信の通信相手となるAPとの接続を制御する。具体的には、APとの接続開始時のAuthentication及びAssociationの処理などを行う。また、APとの接続終了時のDeauthentication及びDisassociationの処理などを行う。
【0044】
図5は、リスト生成部304における通信相手候補リストの生成処理の一例を示すフローチャートである。以下、同図を参照して当該処理について説明する。
【0045】
まず、リスト生成部304は、記憶部303に通信相手候補リストを記憶する新規領域を確保することで、新規の通信相手候補リストを生成する(S501)。次に、変数nに1を代入する(S502)。ここで、nは正の整数とする。次に、変数nが定数Nより小さい又は等しいか否かを判定する(S503)。ここで、定数Nは、何回前までの識別情報リストを取得するかを決定する正の整数である。例えば、記憶部303に図4に示すような識別情報リストが記憶されていたとき、定数N=3とすると、1回前(最新)から3回前(前々回)までの識別情報リストを取得することとなる。
【0046】
ここで、ステップS503の判定結果が「NO」のときは、当該通信相手候補リストの生成処理を完了する(S508)。
【0047】
一方、ステップS503の判定結果が「YES」のときは、リスト生成部304は、記憶部303からn回前の識別情報リストを取得する(S504)。次に、通信相手候補リストに未記載のSSIDが、先ほど取得したn回前の識別情報リストに記載されているか否かを判定する(S505)。
【0048】
ここで、ステップS505の判定結果が「YES」のときは、前記未記載のSSIDを通信相手候補リストに追記する(S506)。次に、変数nに1を加算し(S507)、変数nが定数Nより小さいか否かを判定するステップS503に戻る。すなわち、先ほどより1つ前の識別情報リストに対して同様の処理を繰り返すことになる。
【0049】
一方、ステップS505の判定結果が「NO」のときは、SSIDを通信相手候補リストに追記することなく、変数nに1を加算し(S507)、変数nが定数Nより小さい又は等しいか否かを判定するステップS503に戻る。
【0050】
上記の処理により、通信相手候補リストには、1回前からN回前までの識別情報リストに含まれる全てのSSIDが記載されることとなる。
【0051】
図6は、リスト生成部304によって生成される通信相手候補リストの例である。同図(A)〜(D)は、繰り返しスキャンが実行されたとき、それぞれの時における記憶部303の記憶状態及びそのときに生成される通信相手候補リストを示している。なお、ここでは、定数N=3とした。すなわち、記憶部303は、3回前までのスキャン結果を保持する。以下、同図について説明する。
【0052】
まず、1回目のスキャンの結果(図6(A))、記憶部303には、1回目のスキャンの結果生成された識別情報リスト601が1回前(最新)のスキャン結果として記憶される。このとき、1回前(最新)の識別情報リスト601のSSIDが、そのまま通信相手候補リスト620a記載される。
【0053】
次に、2回目のスキャンの結果(図6(B))、記憶部303には、2回目のスキャンの結果生成された識別情報リスト602が1回前(最新)のスキャン結果として記憶される。それに伴い、前記の識別情報リスト601は、2回前のスキャン結果となる。このとき、1回前の識別情報リスト602、及び2回前の識別情報リスト601に含まれているSSIDは全て通信相手候補リスト620bに記載される。したがって、通信相手候補リスト620bには、1回前(最新)のスキャンでは発見できなかった「SSID:CCCC」と「SSID:DDDD」が記載される。なお、重複しているSSIDは、論理和演算を行って、1つに統合される。
【0054】
次に、3回目のスキャンの結果(図6(C))、記憶部303には、3回目のスキャンの結果生成された識別情報リスト603が1回前(最新)のスキャン結果として記憶される。それに伴い、前記の識別情報リスト602及び601は、それぞれ2回前のスキャン結果及び3回前のスキャン結果となる。このとき、1回前の識別情報リスト603、2回前の識別情報リスト602、及び3回前の識別情報リスト601に含まれているSSIDは全て通信相手候補リスト620cに記載される。したがって、通信相手候補リスト620cには、1回前(最新)のスキャンでは発見できなかった「SSID:CCCC」が記載される。
【0055】
次に、4回目のスキャンの結果(図6(D))、記憶部303には、4回目のスキャンの結果生成された識別情報リスト604が1回前(最新)のスキャン結果として記憶される。それに伴い、前記の識別情報リスト603及び602は、それぞれ2回前のスキャン結果及び3回前のスキャン結果となり、前記の識別情報リスト601は記憶部303から削除される。そのため、前回の通信相手候補リスト620cでは記載されていた「SSID:CCCC」は、識別情報リスト602〜604のいずれにも存在しないため、通信相手候補リスト620dには記載されない。すなわち、スキャンの結果、3回連続で発見できなかったSSIDは、通信相手候補リストに記載されなくなる。
【0056】
これにより、何らかの原因によって最新のスキャンでたまたま発見できなかったAPであっても、過去のスキャンで発見できていたAPであれば、当該APにプリンターを接続できるようになる。
【0057】
次に、上記で説明した通信相手候補リストを用いて、ユーザーがプリンターをAPに接続する方法の一例を説明する。
【0058】
図7は、接続先とするAPの選択及び接続開始時における表示部203の画面表示例である。以下、同図を用いて、プリンターをAPに接続するときの画面表示及びユーザー操作について説明する。
【0059】
まず、表示部203には、プリンターの接続先候補となるAPのSSIDリスト画面710が表示される。ここで、SSIDリスト画面710は、リスト生成部304にて生成された通信相手候補リストを基として表示される。なお、画面710において、「確率」の欄に表示されている値は、そのSSIDが、所定のスキャン回数において何回発見できたかを示す値である。例えば、同図において、「SSID:DDDD」の「確率」は「40%」なので、その「SSID:DDDD」は、平均すると10回のスキャン中4回発見できたことを示している。また、画面710において、「強度」の欄に表示されている電波マークは、そのSSIDをスキャンしたときの電波強度を示しており、電波マークが多いほどそのSSIDのAPからの電波強度が強いことを示している。なお、電波強度はProbe ResponseフレームのRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を参照して算出することができる。
【0060】
なお、同図では「確率」を数値で表しているが、例えば、円グラフ、又はマークなどでグラフィカルに表してもよいし、確率に応じてSSIDの文字の色、文字の濃度、又は文字の大きさなどを変えて表示してもよい。また、所定の確率以下のSSIDを非表示にできるようにしてもよい。また、所定の確率以下、かつ所定の電波強度以下のSSIDを非表示にできるようにしてもよい。
【0061】
次に、ユーザーは、表示部203に表示されているSSIDのリストから、入力部104を介して、プリンターの接続先とするAPを選択する。ここでは、「SSID:DDDD」のAPを選択したとする。次に、接続制御部305は、画面720に示すように、先ほど選択されたAPに接続するためのパスワードの入力画面を表示部203に表示させる。次に、ユーザーは、入力部104を介し、パスワードを入力して「OK」ボタンを押す。次に、表示部203には、画面730に示すように、接続開始の処理中であることを示す画面が表示される。なお、実際の接続開始処理は、接続制御部305において、先ほど選択されたSSID及び先ほど入力されたパスワードを基に、Authentication及びAssociationの処理を行う。次に、接続制御部305は、APとの接続に成功したときは、画面740に示すように、接続が成功したことを示す画面を表示部203に表示させる。一方、APとの接続に失敗したときは、接続が失敗したことを画面に表示させる。なお、このとき、失敗の原因を画面に表示してもよい。
【0062】
図8は、接続先とするAPの選択時における表示部203の他の画面表示例である。表示部203において、ユーザーが接続したいAPを簡単に探せるように、例えば、図8(A)に示すように、SSIDを「確率」の値に応じて並べ替えたり、非表示にできたりしてもよい。また、図8(B)に示すように、SSIDを「電波強度」の値に応じて並べ替えたり、非表示にできたりしてもよい。また、前述の「確率」及び「電波強度」の両方の値が所定値以下のSSIDを非表示にできてもよい。また、図8(c)に示すように、各SSIDが何回前のスキャンで発見できたものであるかを表示できるようにしてもよい。例えば、図8(c)では、各SSIDがどの回のスキャンによって発見されたものであるかを星マークで表示している。また、常にユーザーに対して最新のスキャン結果を提示できるように、スキャン制御部302によって新たにスキャンが実行され、リスト生成部304によって新たに通信相手候補リストが生成されたとき、表示部203において、その新たに生成された通信相手候補リストを基に画面を更新してもよい。
【0063】
これにより、何らかの原因によって最新のスキャンでたまたま発見できなかったAPにプリンターを接続したいとき、プリンター等に付属する小さな画面であっても、前記APがスキャンされた確率、スキャンされたときの電波強度、又は何回前にスキャンされたかの履歴などの情報を基に、ソート又はフィルタリング等を行って表示することで、前記APを簡単に探せるようになる。
【0064】
上述した本発明の実施形態では、無線通信装置を備えたプリンターを例に説明しているが、無線通信装置又は無線通信機能を備えた装置であれば適用することが可能である。例えば、コンピューター、コンピューター周辺装置、製造装置、電化製品等に適用することも可能である。すなわち、上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0065】
100 プリンター
101 PC
201 印刷機構
202 印刷制御部
203 表示部
204 入力部
205 通信I/F
206 有線通信装置
207 無線通信装置
301 無線通信部
302 スキャン制御部
303 記憶部
304 リスト生成部
305 接続制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信信号の処理を行う無線通信部と、
前記無線通信部を制御して、無線通信の通信相手となり得る一以上の相手方装置を周期的にスキャンするスキャン制御部と、
前記スキャンによって検出された前記相手方装置の識別情報を所定のスキャン回数分記憶する記憶部と、
前記記憶部を参照して、最新のスキャンによって検出された前記識別情報と、前記最新のスキャンよりも過去のスキャンによって検出された前記識別情報と、を論理和演算した通信相手候補リストを生成するリスト生成部と、
前記通信相手候補リストを表示する表示部と、
を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記通信相手候補リストに識別情報が含まれる前記相手方装置が前記スキャンによって検出された検出回数又は検出確率を算出する算出部をさらに備え、
前記表示部は、前記識別情報と、前記検出回数又は検出確率とを表示する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記リスト生成部は、前記スキャン制御部によってスキャンが実行され、前記最新のスキャン及び前記過去のスキャンの情報が更新されたときは、更新されたスキャンの情報を基に新たな通信相手候補リストに更新し、
前記表示部は、通信相手候補リストが更新されたときは、前記新たな通信相手候補リストを基に表示を更新する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記最新のスキャンによって検出された識別情報と、前記過去のスキャンによって検出された識別情報とを区別できるように表示する
を特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記通信相手候補リストを表示する際、前記検出回数又は前記検出確率が所定の閾値以下の識別情報を非表示する
ことを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記スキャン制御部は、さらに、前記無線通信部が受信した無線通信信号の電波強度を検出し、前記識別情報と前記電波強度を対応させて前記記憶部に記憶し、
前記表示部は、前記通信相手候補リストを表示する際、前記検出回数又は前記検出確率が所定の閾値以下、かつ前記電波強度が所定の閾値以下の識別情報を非表示にする
ことを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項7】
無線通信の通信相手となり得る一以上の相手方装置を周期的にスキャンし、スキャンによって検出された前記相手方装置の識別情報を所定のスキャン回数分記憶部に記憶し、最新のスキャンによって検出された前記識別情報と、前記最新のスキャンよりも過去のスキャンによって検出された前記識別情報を前記記憶部から取得し、前記最新のスキャン結果及び前記過去のスキャン結果の識別情報を論理和演算した通信相手候補リストを生成し、前記通信相手候補リストを表示する
無線通信接続方法。
【請求項8】
コンピューターで実行可能なプログラムであって、
無線通信の通信相手となり得る一以上の相手方装置を周期的にスキャンし、スキャンによって検出された前記相手方装置の識別情報を所定のスキャン回数分記憶部に記憶し、最新のスキャンによって検出された前記識別情報と、前記最新のスキャンよりも過去のスキャンによって検出された前記識別情報を前記記憶部から取得し、前記最新のスキャン結果及び前記過去のスキャン結果の識別情報を論理和演算した通信相手候補リストを生成し、前記通信相手候補リストを表示する
無線通信接続プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−74882(P2012−74882A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217595(P2010−217595)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】