説明

無線通信装置および無線信号判別方法

【課題】PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができる無線通信装置および無線信号判別方法を提供する。
【解決手段】コードレス電話機の親機には、FSK変調から復調された受信信号のシンボル“0”・“1”をそれぞれカウントするシンボルカウント部が設けられている。受信信号がDECT方式であれば、スクランブルされた受信信号はシンボル“0”若しくはシンボル“1”の出現頻度に偏りは少ないが、受信信号がPHS方式であれば信号の周波数は、DECT方式のチャネル帯域の中心周波数から低周波側または高周波側に偏っているため、シンボルカウント部によるカウントは、シンボル“0”またはシンボル“1”のいずれかに偏る。この偏りを判定することで、受信信号はPHS方式の制御チャネルによるものと判定できるので、制御部はこのチャネルによる通信を停止することで、PHSへの通信の影響を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコードレス電話機に応用可能な無線通信装置および無線信号判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では、デジタルコードレス電話機が利用可能な周波数帯域として、図1に示すように、自営型のPHS(以下「自営PHS」という。)では1893.5MHz〜1906.1MHzが割り当てられている。自営PHSとは、PHS方式のコードレス電話機の親機と子機との間で移動体通信として利用する形態のことである。
【0003】
ここで、現在、1893.5MHz〜1906.1MHzの上記周波数帯域は、PHS方式のみが使用している。PHS方式では、5ms周期の1フレームに8スロット(アップリンク用に4スロット、ダウンリンク用に4スロット)を含んで構成されるTDMA(時分割多元接続:Time Division Multiple Access)/TDD(時分割複信:Time Division Duplex)方式を採用している。通常、1スロットペアを制御チャネルとして割り当て、3スロットペアを通話チャネルとして割り当てている。
【0004】
またPHS方式では、固定局から制御信号が間欠的に送信される。自営PHSの固定局が制御信号を送信する周期は固定局毎に変えられており、自営PHSの各固定局は125ms以上/300ms以下の範囲で、固定局毎に決められた5ms刻みの任意の時間位置で間欠的に制御信号を送信する。例えばある固定局があるタイミングで制御信号を送信すると、次の制御信号の送信は125ms後、または125msに5msの倍数を足した300ms以下の時間間隔をおいて周期的に制御信号を送信し、隣接する固定局同士で送信周期が一致しない(5msの倍数だけ異なる)ようにしている。
【0005】
また、PHS方式の制御チャネルの周波数は、自営PHSでは、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数が固定的に割り当てられる。また、PHS方式の制御チャネルの周波数は、自営PHSでは、1898.450MHz、1900.250MHzの周波数が固定的に割り当てられる。
【0006】
また、PHS方式の通話チャネルは、制御チャネル上での要求/応答で割り当てられ、例えば、自営PHSでは、全40周波数が確保される。
【0007】
そこで、将来、1893.5MHz〜1906.1MHzの上記周波数帯域を利用するシステムとして、図1に示すように、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)規格に準拠したデジタルコードレス電話機システム(以下、DECTシステムと呼称する)を追加することが検討されている。
【0008】
新しい方式として導入が検討されているDECT方式では、10ms周期の1フレームに24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)を含んで構成されるTDMA/TDD方式を採用している。また、最低1スロットの制御チャネルスロットを備えており、制御チャネルも通話チャネルも10msのフレーム周期で送受信される。また、各々の周波数/スロット位置は任意であり、周波数は、全5周波数で検討されている。
【0009】
ここで、従来の干渉防止技術の一例として、以下の特許文献1〜5が存在する。
【0010】
例えば、特許文献1に記載の技術では、周波数帯が近接する2つの無線システムにおいて干渉が発生する可能性がある場合に、干渉が発生しているかどうかを検出し、使用周波数を干渉の影響が小さいと推定される周波数範囲に制限している。
【0011】
また、特許文献2に記載の技術では、近隣で他のデジタルコードレス電話機装置が通話中の場合、この電話装置の送受信のタイミングを検出し、このタイミングと干渉しないスロット位置にて送受信を行っている。
【0012】
また、特許文献3に記載の技術では、自己占有スロット位置と他機占有スロット位置とが重なった際、先頭の空きビーコンスロット位置に、自己占有スロット位置を変更している。
【0013】
また、特許文献4に記載の技術では、利用可能なアクセススロットを用いて情報ブロックを送信機から受信機に送信し、この情報ブロックが受信機において衝突なく適切に受信された場合、他の情報ブロックについても送信している。
【0014】
また、特許文献5に記載の技術では、予め非同期干渉回避用の予備チャネルを用意して通信信号とともに移動機に対して通知しておき、非同期干渉を検出したときに、予備チャネルへ切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−353878号公報
【特許文献2】特開平4−286431号公報
【特許文献3】特開2007−243749号公報
【特許文献4】特開2001−169331号公報
【特許文献5】特開平7−67169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、DECTシステムの通信がPHSの通信に干渉を与えないようにする為には、DECT端末が近くにあるPHSシステムの存在を的確に検知し、そのためには、当該PHS制御信号の送信タイミングの予測を正確に行う必要があるが、前述のようにPHSの制御信号は5ms毎または5msの倍数の間隔をおいて送信されるので、DECT端末において受信部で検知された信号がPHS制御信号であるか判別が難しいという問題点があった。上記文献(例えば、特許文献1〜5など)によっても、周波数軸上のチャネル位置や時間軸上のスロット位置が異なるシステム間で他の外乱と区別しながら他方のシステムの信号の存在を検知することは困難である。
【0017】
また、上記文献においては、近くに自システムと同期が取れていない他のDECT端末が存在する場合、この他のDECTシステムの端末も105ms毎に制御信号を送信しており、この送信タイミングが5msの倍数であるため、PHSの制御信号とDECTの制御信号の判別が難しいという問題点があった。
【0018】
具体的には、電波干渉には、制御チャネルへの妨害と通話チャネルへの妨害の2種類が考えられ、特にPHSとDECTを同一周波数帯域で混在利用する場合には、特にPHSの制御チャネルに対する電波干渉を抑制する仕組みが必要となる。PHS方式は通話チャネルの割り当て、着信の報知に利用しており、制御チャネルの通信が妨害された場合には、システムが停止するような重大な問題が発生してしまう。更に、PHSの制御チャネルは、図1に示すように、チャネルF12であれば、DECT方式のチャネルF3の帯域に含まれ、チャネルF14であれば、DECT方式のチャネルF4の帯域に含まれ、予め周波数が固定的に決められていることから、制御チャネルの周波数に継続的な妨害があっても、その回避のために周波数を変更できないという問題点があった。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができる無線通信装置および無線信号判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の無線通信装置は、“0”と“1”のシンボルの比率がほぼ等しくなるように2値化されたデータを周波数変調により送受信を行う無線システムの無線通信装置であって、アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の信号を復調することにより2値化した復調信号を出力する復調部と、前記復調部から出力された復調信号の“0“若しくは”1“のシンボル数をカウントするシンボルカウント部と、前記シンボルカウント部がカウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号は前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断するシンボル比率判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、妨害波がPHSのものか、他の無線通信装置であるかが判別できるので、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】PHS制御信号とDECTスプリアスの帯域の一例を示す図
【図2】本発明の実施の形態1に係るコードレス電話機を示す図
【図3】図2に示すコードレス電話機の親機の構成を示すブロック図
【図4】(A)DECT方式のチャネルF3が中間周波数へダウンコンバートされた状態を説明するための図、(B)チャネルフィルタの通過特性を説明するための図、(C)PHS方式のチャネルF12が中間周波数へダウンコンバートされた状態を説明するための図、(D)チャネルフィルタの通過特性を説明するための図
【図5】図2に示すコードレス電話機の親機の妨害波検出処理を説明するためのフローチャート
【図6】(A)FSK変調を説明する波形を示す図、(B)FSK変調を説明する周波数分布を示す図
【図7】(A)π/4位相変調を説明する波形を示す図、(B)π/4位相変調を説明する周波数分布を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願の第1の発明は、“0”と“1”のシンボルの比率がほぼ等しくなるように2値化されたデータを周波数変調により送受信を行う無線システムの無線通信装置であって、アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の無線信号を取り出し、2値化した復調信号を出力する復調部と、前記復調部から出力された復調信号の”0”若しく
は”1”のシンボル数をカウントするシンボルカウント部と、前記シンボルカウント部が
カウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号は前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断するシンボル比率判定部とを有することを特徴とした無線通信装置である。
【0024】
第1の発明によれば、受信した信号が当該無線システムの装置から送信された信号であれば復調部から出力された信号のシンボル“0”若しく“1”の出現頻度に偏りは無くほぼ等しくなることから受信した信号が当該無線システムの装置から送信された信号である可能性が高く、受信した信号が当該無線システム以外の他の信号である場合は復調部から出力された信号のシンボル“0”若しくは“1”の出現頻度に偏りが生じることから、シンボルカウント部がシンボル“0”若しくは“1”のそれぞれのシンボル数をカウントし、シンボル比率判定部がカウントされた両シンボル数の比率と所定の閾値を比較することにより受信した信号が当該無線システムの装置から送信された信号であるか否かを判断することが出来る。これにより他の当該無線システムへ干渉を起こす送信の使用を禁止するなどの処理を行うことができる。従って、他の無線システムがPHSであれば、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができる。
【0025】
本願の第2の発明は、第1の発明において、アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の信号を取り出すバンドパスフィルタを有し、前記復調部は前記バンドパスフィルタを通過した受信信号を復調処理し、所定のスレッシュレベルを使って2値化した復調信号を出力することを特徴とした無線通信装置である。
【0026】
第2の発明によれば、バンドパスフィルタを備えたことによりアンテナより入来した受信信号から1つのチャネルの信号帯域の信号を取り出すことができる。そして、復調部により、このバンドパスフィルタを通過した受信信号が復調処理され、所定のスレッシュレベルを使って2値化した復調信号を出力することができる。
【0027】
本願の第3の発明は、第2の発明において、バンドパスフィルタは、アンテナから入来した信号であって、PHSに割り当てられた周波数帯域と重なる帯域を使用し、1つのチャネルの周波数幅がPHSで使用する1つのチャネルの幅より広い幅を持つ周波数変調信号を用い、時分割多重された複数のタイムスロットの間でチャネルを変えて送信される他の無線通信装置からの信号から、1つのチャネルの前記周波数幅を通過させ、前記シンボル比率判定部は、前記シンボルカウント部がカウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号はPHSの信号であると判断することを特徴とした無線通信装置である。
【0028】
第3の発明によれば、時分割多重された複数のタイムスロットの間でチャネルを変えて送信される他の無線通信装置からの信号を受信する際に、バンドパスフィルタが、PHSに割り当てられた周波数帯域と重なる帯域であって、1つのチャネルの周波数幅がPHSで使用する1つのチャネルの幅より広い帯域の幅を持つ周波数変調信号から、1つのチャネルの周波数幅を通過させるので、バンドパスフィルタを通過した信号には、PHSからの信号が含まれる。このバンドパスフィルタを通過した信号は、復調部により復調処理され、シンボルカウント部によりシンボル数がカウントされることで、シンボル比率判定部が、両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号をPHSの信号であると判断することできる。
【0029】
本願の第4の発明は、第2または3の発明において、バンドパスフィルタを通過した受信信号の受信レベルを測定する受信レベル検出部を有し、シンボルカウント部は、受信レベル検出部が測定した受信レベルが所定の値以上のときに復調信号の“0”若しくは“1”のシンボル数をカウントすることを特徴とした無線通信装置である。
【0030】
第4の発明によれば、バンドパスフィルタを通過した信号レベルが所定の値以下であれば、受信信号がPHSであっても遠方に位置するPHSと判断できるので、受信レベル検出部からの受信レベルが所定の値以下であれば、シンボル数をカウントせずに、通信を許可してもPHSに影響を与えない。
【0031】
本願の第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明において、前記シンボル比率判定部により受信信号が前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断した場合に、無線信号を送信する送信部による送信処理を停止する制御部を備えたことを特徴とした無線通信装置である。
【0032】
第5の発明によれば、制御部がこの無線システム以外の装置から出力された信号であると判断したときに送信処理を停止することで、他の無線システムへの干渉を回避することができる。
【0033】
本願の第6の発明は、”0”と”1”のシンボルの比率がほぼ等しくなるように2値化
されたデータを周波数変調により送受信を行う無線システムにおける無線信号判別方法であって、アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の無線信号を取り出して復調し、得られた復調信号の”0”若しくは”1”のシンボル数をカウントし、カ
ウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号は前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断する無線信号判別方法である。
【0034】
第6の発明によれば、シンボルカウント部がシンボル“0”若しくは“1”のそれぞれのシンボル数をカウントし、両シンボル数の比率と所定の閾値を比較することにより受信した信号が当該無線システムの装置から送信された信号であるか否かを判断するが出来、これにより他の当該無線システムへ干渉を起こす送信の使用を禁止するなどの処理を行うことができる。
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る無線通信装置を、コードレス電話機を例に、図面に基づいて説明する。
【0035】
図2に示すコードレス電話機10は、電話回線網と接続された1台の親機20と、3台の子機30(A〜C)とを備えている。この親機20と子機30とは、DECT方式で通信する。DECT方式とは、10ms周期の1フレームに24スロット(アップリンク用に12スロット、ダウンリンク用に12スロット)を含んで構成されるTDMA/TDD方式で通信される。親機20より子機30へ送信する12スロットの中の少なくとも1スロットは制御信号を送るための制御チャネルスロットである。従って制御チャネルも通話チャネルも10msのフレーム周期で送受信される。また周波数は全5周波数が使用され、各々の周波数/スロット位置の関係は任意に設定される。
【0036】
次に、親機20について図3に基づいて説明する。なお、図3においては、無線信号を送信する送信部は図示していない。親機20は、DECT帯域フィルタ2aと、RF増幅器2bと、受信周波数変換部2cと、チャネルフィルタ2dと、FSK(Frequency Shift Keying)検波部2eと、スクランブル解除部2fと、DECT信号処理部2gとを備えている。
【0037】
更に、親機20は、受信レベル検出部2hと、シンボルカウント部2jと、シンボル比率判定部2kと、閾値記憶部2mと、制御部2nとを備えている。
【0038】
DECT帯域フィルタ2aは、アンテナAから入来した受信信号から、DECT方式で使用される帯域(以下、DECT帯域と称する。)における全部のチャネル(1893.5MHz〜1906.1MHz)を通過させ、他の帯域を減衰させて、RF増幅器2bへ出力する。
【0039】
RF増幅器2bは、DECT帯域を通過した高周波信号を増幅する。受信周波数変換部2cは、増幅されたDECT帯域信号を中間周波数帯域へダウンコンパートしてチャネルフィルタ2dへ出力する。
【0040】
チャネルフィルタ2dは、中間周波数帯域へダウンコンパートされたDECT帯域信号から、更にDECTの1つの周波数チャネル(以下、DECTチャネルと称する。)の周波数幅(1.752MHz幅)に含まれる信号を通過させるように制限する。
【0041】
FSK検波部2eは、チャネルフィルタ2dを通過した受信信号を復調処理し、所定のスレッシュレベルを使って2値化した復調信号を出力する復調部として機能するものである。スクランブル解除部2fは、FSK検波部2eからの復調信号からスクランブルを解除する。
【0042】
DECT信号処理部2gは、復調信号から受信パケットを抽出して、制御信号や通話信号に応じて処理を行う。受信レベル検出部2hは、チャネルフィルタ2dにより選択されたDECTチャネルの信号レベル(RSSI)を測定する。
【0043】
シンボルカウント部2jは、FSK検波部2eにより復調されたスクランブル状態の復調信号に基づいて、”0”若しくは“1”のシンボル数をカウントする。
【0044】
シンボル比率判定部2kは、シンボルカウント部2jがカウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に受信信号はPHSの信号であると判定する。
【0045】
閾値記憶部2mは、チャネルの使用の可否を判定するための閾値S1〜S4が格納されている。閾値S1(受信レベル閾値)は、受信信号がPHSからのものであれば、このPHSの通信に影響を与えてしまうほど接近しているか、それとも通信に影響がない程度に離れているかを信号レベルから判定するための閾値であり、例えば閾値S1は−82dBm程度が望ましい。閾値S2(監視時間閾値)は、PHSからの信号を監視するための時間を規定するものである。閾値S3(受信信号幅閾値)は、受信したPHSか否かを判定するのに十分なビット数を受信したか否かを判定するための閾値である。閾値S4(受信信号比率閾値)は、受信データとしてのシンボルが、シンボル“0”またはシンボル“1”のいずれかに偏っていることを、それぞれのシンボルが全体に占める比率により判定するための閾値である。
【0046】
制御部2nは、シンボル比率判定部2kが受信信号はPHSの信号であると判定した場合に、送信部に対してそのチャネルは使用禁止であることを通知する。
【0047】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係るコードレス電話機の動作について、図面に基づいて説明する。本実施の形態では、PHS方式の制御チャネルのチャネルF12(中心周波数1988.45MHz)を含む帯域であるDECT方式のチャネルF2(中心周波数1897.344MHz)を受信する場合を例に説明する。
【0048】
アンテナAから入来した受信信号は、チャネルF2を含むDECT帯域(1893.5MHzから1906.1MHzまで)が、DECT帯域フィルタ2aを通過し、他の周波数帯は制限される。DECT帯域フィルタ2aを通過した受信信号は、RF増幅器2bにより増幅される。そして、受信周波数変換部2cによりDECT帯域から中間周波数帯にダウンコンバートされる。中間周波数の中心は、DECTの1チャネルの周波数幅1.752MHz幅のほぼ半分である864kHzである。受信周波数変換部2cによりダウンコンバートされた受信信号は、チャネルフィルタ2dによりDECTチャネルの1チャネル分に制限される。
【0049】
ここで、チャネルフィルタ2dの特性と通過信号について、図4に基づいて詳細に説明する。DECT方式のチャネルF3では、チャネルF3の受信信号は、図4(A)に示すように、受信周波数変換部2cにより中心周波数fcからダウンコンバート分の周波数fLを引いた周波数fc−fLを中心とした帯域に変換される。図4(B)に示すように、チャネルフィルタ2dでは受信信号が周波数fc−fLを中心として1チャネル分である1.752MHzの帯域に制限されるので、DECT方式のチャネルF3の信号は、そのままチャネルフィルタ2dを通過することができる。
【0050】
次に、PHS方式のチャネルF12であるが、チャネルF12(制御チャネル)における受信信号は、図4(C)に示すように中心周波数fcからダウンコンバート分の周波数fLを引いた周波数fc−fLを中心とした帯域にダウンコンバートされ、受信周波数変換部2cにより中心周波数fcからの相対的な周波数のずれを維持したままとなる。チャネルフィルタ2dでは、図4(D)に示すようにDECT方式のチャネルF2が通過できる帯域幅であるため、PHS方式のチャネルF1は通過することができる。チャネルフィルタ2dは、このような通過特性を有している。
【0051】
次に、コードレス電話機10の親機20における妨害波検出処理について図5に基づいて説明する。この妨害波検出処理は、PHS方式の制御チャネルを含むDECT方式の帯域を通信に使用する際に行われる。
【0052】
図5に示すように、シンボルカウント部2jは、初期処理を行う。初期処理は、妨害波を検出する監視時間を計数するためのカウンタRxcount、復調信号のシンボル“0”を計数するためのカウンタC0、シンボル“1”を計数するためのカウンタC1の各カウンタに「0」を代入して初期化する。そして、DECT方式のチャネルF3の受信を開始する(ステップS10)。シンボルカウント部2jは、1ビット分の時間幅まで受信を続ける(ステップS20)。
【0053】
シンボルカウント部2jは、閾値記憶部2mから閾値S1を読み出し、受信レベル検出部2hにより測定された受信レベルが閾値S1以上あるか否かを判定する(ステップS30)。ステップS30にて、受信レベルが閾値S1未満であった場合には、シンボルカウント部2jは、カウンタC0とカウンタC1を初期化する(ステップS40)。すなわち受信信号の受信レベルが閾値S1未満であれば、受信信号の送信元がPHSであったとしても、遠方にあるために通信への影響は少ないと判断できるため、カウンタC0とカウンタC1を初期化(クリア)の状態を維持する。そして、シンボルカウント部2jは、受信カウンタRxcountをインクリメント(+1)する(ステップS50)。
【0054】
受信カウンタRxcountが閾値S2以上か否かを判定することで監視時間が経過したか否かを判定する(ステップS60)。受信カウンタRxcountが閾値S2以上であれば、監視時間が終了しているので、ステップS70へ移行し、受信を停止して処理を終了する(ステップS70)。受信カウンタRxcountが閾値S2未満であれば、監視時間が経過していないので、ステップS20へ移行する。
【0055】
ステップS30にて、受信レベルが閾値S1以上であると判定された場合、受信信号の送信元がPHSであれば、通信に影響を与えるかもしれないことを意味している。受信レベルが閾値S1以上であると、シンボルカウント部2jは、FSK検波部2eにより復調された受信データが、シンボル“1”であるか否かを判定する(ステップS80)。シンボルが“1”であれば、カウンタC1をインクリメント(+1)する(ステップS90)。シンボルが“1”でなければ、カウンタC0をインクリメント(+1)する(ステップS100)。
【0056】
つまり、受信カウンタRxcountで示される監視時間内に受信された受信データで、シンボル“1”として受信された回数がカウンタC1により計数され、シンボル“1”として受信された回数がカウンタC0により計数される。
【0057】
シンボルカウント部2jは、カウンタC1とカウンタC0との合計(C1+C0)を算出し、この合計が、閾値S3より大きいか否かを判定する(ステップS110)。閾値S3(受信信号幅閾値)は、受信したPHSか否かを判定するに十分なビット数を受信したか否かを判定するための閾値である。
【0058】
カウンタC1とカウンタC0との合計(C1+C0)が閾値S3以下であれば、ステップS50へ移行する。カウンタC1とカウンタC0との合計(C1+C0)が閾値S3より大きければ、十分な両のデータが得られたものとして、シンボル比率判定部2kはカウンタC1とカウンタC0との合計(C1+C0)に対するカウンタC0の値の比率(C0/(C0+C1))を算出し、閾値S4より大きいか否かを判定する(ステップS120)。このステップS120では、シンボル“0”の出現頻度を算出して、閾値S4と比較している。例えば、閾値S4は90%とすることができる。なお、閾値S4は特に90%に限る必要はなくDECT方式でのシンボル“0”とシンボル“1”との出現頻度の幅(例えば40%〜60%)を外す値であれば適宜選択することができる。半分を下回る値(例えば40%)にすることも可能であるが、その場合は図5のステップS120のYESとNOを入れ替えれば良い。
【0059】
またステップS120で、カウンタC1とカウンタC2との合計(C1+C0)が閾値S3以下であれば、シンボル比率判定部2kは、カウンタC1とカウンタC2との合計(C1+C0)に対するカウンタC1の値の比率(C0/(C0+C1))を算出し、閾値S4より大きいか否かを判定する(ステップS130)。このステップS130では、シンボル“1”の出現頻度を算出して、閾値S4と比較している。
【0060】
ここで、ステップS120とステップS130とによるPHSの制御チャネルの判別方法について、図6に基づいて説明する。
【0061】
DECT方式では、FSK変調が採用されている。図6(A)に示すようにFSK変調は異なる2つの周波数にシンボル“0”とシンボル“1”とを対応させ、例えばシンボル“0”では低周波側へ、シンボル“1”では高周波側へシフトさせる変調方式である。復調信号においてシンボル“0”とシンボル“1”とがほぼ均等に現れるように送信側でスランブルが掛けられている。図6(B)に示すように帯域(例えば、チャネルF3)の中心周波数fc3(1899.072MHz)を中心に、シンボル“0”に対応する信号成分が低周波側へ現れ、シンボル“1”に対応する信号成分が高周波側へ現れる。
【0062】
従って、DECT方式では、シンボル“0”とシンボル“1”との出現頻度がほぼ均等またはそれぞれ40%〜60%の範囲程度なので、ステップS120ではカウンタC0の比率が閾値S4(90%)以下であるならNOと判定され、ステップS130ではカウンタC1の比率が閾値S4(90%)以下であるならNOと判定される。ステップS120とステップS130でともにNOと判定されれば、受信を継続するためにステップS20へ移行する。
【0063】
次に、PHS方式の信号が受信された場合を説明する。PHS方式では、π/4位相変調が採用されている。図7(A)に示すように、π/4位相変調は、シンボル“0”およびシンボル“1”に応じて搬送波信号の位相を切り換える変調方式である。図7(B)に示すように、PHS方式においてチャネルF12で送信される制御信号は中心周波数fc12(1898.45MHz)を中心に分布する。そして、PHS方式のチャネルF12は、このチャネルF12が含まれるDECT方式のチャネルF3の中心周波数fc3(1899.072MHz)より低周波側へシフトした所に位置するため、図3に示すDECTの受信装置が受信した信号がチャネルF12であればシンボルカウント部2jはシンボル”0”と認識する。つまり、シンボルカウント部2jがチャネルF12の受信信号を連続的なシンボル”0”としてカウンタC0が計数される。従って、ステップS120ではカウンタC0の比率が閾値S4より大きいと判定される。
【0064】
また、PHS方式のチャネルの中心周波数がDECT方式のチャネルの中心周波数の高周波側に位置していれば、シンボルカウント部2jはシンボル”1”と認識するので、ステップS120ではカウンタC0の比率が閾値S4以下であると判定されるが、ステップS130では、カウンタC1の比率が閾値S4より大きいと判定される。
【0065】
このようにして、ステップS120やステップS130により受信信号がPHSの制御チャネルであるということを判定することができる。
【0066】
制御部2nは、ステップS120やステップS130により受信信号がPHSの制御チャネルであるということがシンボル比率判定部2kから通知されると、チャネルF3における使用を禁止することを送信部へ通知する(ステップS140)。
【0067】
このように、PHS方式の制御チャネルへの送信の使用を禁止することで、PHSの運転に重要な制御チャネルへの有害な電波干渉を避けることができる。
【0068】
また、チャネルフィルタ2dを通過した信号レベルが閾値S1未満であれば、受信信号がPHSであっても遠方に位置するPHSと判断できるので、受信レベル検出部からの受信レベルが所定の値未満であれば、シンボル数をカウントせずに、制御部2nが送信部に通信を許可してもPHSに影響を与えない。
【0069】
上述した実施の形態では、PHS方式のチャネルF12を優先させて、DECT方式のチャネルF3の使用を禁止する場合を示したが、チャネルF12に限らず、PHSの他のチャネルを優先させても良い。例えば、PHS方式の制御チャネルとして、チャネルF14を優先させる場合は、DECT方式のチャネルF4の使用を禁止すれば良い。
【0070】
上述した実施の形態では、PHS方式を優先させる場合を示したが、DECT方式を優先させることも可能である。また、通信方式として、PHS方式とDECT方式の組み合わせを示したが、0/1比率がほぼ等しいFSKを用いた通信方式と、π/4位相変調を用いた通信方式の組み合わせであれば、特にPHS方式とDECT方式の組み合わせに限定する必要はない。
【0071】
上述した実施の形態は、変調方法をFSKとして送信データにスクランブルを掛けるDECT方式のものであるが、無線で送受信するデータ列が“0”と“1“がほぼ等しい頻度であれば特にこの変調方式である必要はない。
【0072】
また上述した実施の形態では、干渉を回避する対象がπ/4位相変調のPHSであるが、特にこれに限る必要はなく、例えば他の位相変調方式(BPSK、QPSK、8PSK)を取る無線システムであっても良い。
【0073】
また上述した実施の形態では、シンボルカウント部2jがカウントした“0”のシンボル数と“1”のシンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に受信信号はDECT以外と判定したが、この判定法に限定する必要はない。例えばシンボルカウント部が所定の期間カウントした両シンボル数の差が所定の閾値を越えている場合にも受信信号はDECT以外の信号であると判断する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、無線通信分野など産業上の様々な分野において有用であり、特にPHSシステムとDECTシステム間の干渉回避に適している。
【符号の説明】
【0075】
10 コードレス電話機
20 親機
2a DECT帯域フィルタ
2b RF増幅器
2c 受信周波数変換部
2d チャネルフィルタ
2e FSK検波部
2f スクランブル解除部
2g DECT信号処理部
2h 受信レベル検出部
2j シンボルカウント部
2k シンボル比率判定部
2m 閾値記憶部
2n 制御部
A アンテナ
30 子機
S1〜S4 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
“0”と“1”のシンボルの比率がほぼ等しくなるように2値化されたデータを周波数変調により送受信を行う無線システムの無線通信装置であって、
アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の無線信号の信号を復調することにより2値化した復調信号を出力する復調部と、
前記復調部から出力された復調信号の“0”若しくは“1”のシンボル数をカウントするシンボルカウント部と、
前記シンボルカウント部がカウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号は前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断するシンボル比率判定部と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の信号を取り出すバンドパスフィルタを有し、
前記復調部は前記バンドパスフィルタを通過した受信信号を復調処理し、所定のスレッシュレベルを使って2値化した復調信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記バンドパスフィルタは、前記アンテナから入来した信号であって、PHSに割り当てられた周波数帯域と重なる帯域を使用し、1つのチャネルの周波数幅がPHSで使用する1つのチャネルの幅より広い幅を持つ周波数変調信号を用い、時分割多重された複数のタイムスロットの間でチャネルを変えて送信される他の無線通信装置からの信号から、1つのチャネルの前記周波数幅を通過させ、
前記シンボル比率判定部は、前記シンボルカウント部がカウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号はPHSの信号であると判断することを特徴とする請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記バンドパスフィルタを通過した受信信号の受信レベルを測定する受信レベル検出部を有し、
前記シンボルカウント部は、前記受信レベル検出部が測定した受信レベルが所定の値以上の時に復調信号の“0”若しくは“1”のシンボル数をカウントする
ことを特徴とする請求項2または3記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記シンボル比率判定部により受信信号が前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断した場合に、無線信号を送信する送信部による送信処理を停止する制御部を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかの項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記シンボルカウント部が所定の期間にカウントした両シンボルの数の差が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号は前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項7】
“0”と“1”のシンボルの比率がほぼ等しくなるように2値化されたデータを周波数変調により送受信を行う無線システムにおける無線信号判別方法であって、
アンテナより入来する受信信号より1つのチャネルの信号帯域の無線信号を取り出して復調し、
前記復調によって得られた復調信号の“0”若しくは“1”のシンボル数をカウントし、
カウントした両シンボル数の比率が所定の閾値を越えている場合に当該受信信号は前記無線システム以外の装置から出力された信号であると判断する
ことを特徴とする無線信号判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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