無線通信装置および無線通信制御方法
【課題】 マルチサンプリング技術を応用して、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能な無線通信装置を実現する。
【解決手段】 複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行った後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングするAD変換器112と、該サンプリングデータの出力先となる復調器115を切替えるスイッチ113と、周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期してスイッチ113に対する切替え指示を行う制御部118とを備える。
【解決手段】 複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行った後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングするAD変換器112と、該サンプリングデータの出力先となる復調器115を切替えるスイッチ113と、周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期してスイッチ113に対する切替え指示を行う制御部118とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムに適用可能なマルチバンドおよびマルチモードの無線通信装置および無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一つの無線通信装置で複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムに適用可能なマルチバンドおよびマルチモードの無線通信装置が検討されている。例えば、特許文献1に記載される従来技術1では、ダウンコンバータミキサおよびローカル周波数信号発生回路(シンセサイザ又は分周器)の組を無線周波数帯域毎に具備し、適用対象の無線周波数帯域に合わせて該当する該組をスイッチで切り替えている。また、特許文献2に記載される従来技術2では、ダウンコンバータミキサを共通化して一個だけ備え、ダウンコンバータミキサに入力する受信信号およびローカル周波数信号をスイッチで切り替えている。
【0003】
また、非特許文献1には、共通サンプリングクロックを複数のシステム用に配分することにより、マルチサンプリングを実現するための技術(従来技術3)が記載されている。
【特許文献1】特開2001−186042号公報
【特許文献2】特開2000−124829号公報
【非特許文献1】澤井亮、他3名,「マルチモード・マルチサービスソフトウェア無線通信システムのための適応マルチサンプリング処理法」,電子情報通信学会論文誌,2001年7月,B Vol.J84−B,No.7,p.1187−1197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来技術1および2では、実際の使用時に、使用する無線周波数帯域に合わせてスイッチを切り替えることにより、当該使用する無線通信システム仕様に無線通信装置の動作を固定しているので、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことはできない。
【0005】
このような理由から、上記した従来技術3のマルチサンプリング技術を応用して、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能な無線通信装置の実現が望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、マルチサンプリング技術を応用して、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能な無線通信装置および無線通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線通信装置は、複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う周波数変換手段と、前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングするアナログデジタル変換手段と、各無線通信システム用の復調手段と、前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える切替え手段と、前記周波数変換手段に対して周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記切替え手段に対する切替え指示を行う制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る無線通信装置においては、前記制御手段は、前記アナログデジタル変換手段の入力信号がサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えを該サンプリングタイミングに先行して行うことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る無線通信装置においては、前記制御手段は、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングから前記アナログデジタル変換手段の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を前記先行することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無線通信制御方法は、複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う過程と、前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングする過程と、各無線通信システム用の復調手段の中から、前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える過程と、前記周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記復調手段を切替える指示を行う過程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つのアナログデジタル変換手段で一つのサンプリング周波数を用いたマルチサンプリングにより、同時に複数の無線通信システムの信号を時分割多重したままデジタル化すると共に、該デジタル化した時分割多重信号中の各無線通信システムの信号を、各無線通信システム用の復調手段に振り分けることができる。これにより、各無線通信システム用の復調手段で各々の復調処理が成されて各無線通信システムの復調信号を得ることができ、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能となる。
【0012】
また、アナログデジタル変換手段の入力信号がサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えをサンプリングタイミングに先行して行うことにより、周波数変換対象システムの切替えによる過渡的な信号状態を回避して良好なサンプリングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の各実施形態について順次説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置1の構成を示すブロック図である。図1の無線通信装置1は、スーパーヘテロダイン型受信機の一例である。この無線通信装置1は、N個(Nは2以上の整数)の無線通信システムの各無線信号を同時に受信し復調することができるように構成されている。
【0014】
図1において、アンテナ101は、第1〜第Nの無線通信システムの各無線信号を受信する。アンテナ101で受信された信号は、バンドパスフィルタ102に入力されて、第1から第Nの無線通信システムで使用される各無線周波数(RF)帯域の範囲外の帯域の信号が遮断され、アンプ103により増幅されてミキサ104に入力される。
【0015】
ミキサ104は、ローカル信号発生器117から入力されるローカル信号Bをアンプ103からの入力信号に乗算し、乗算結果の信号を出力する。ここでは、ローカル信号Bの周波数によって、第1〜第Nの無線通信システムのうち、いずれかのシステムが周波数変換対象として選択されることになる。ミキサ104の出力信号は、バンドパスフィルタ105を通過することにより、中間周波数(IF)帯域にダウンコンバートされる。
【0016】
上記ローカル信号発生器117は、制御部118から入力されるローカル制御信号Aに従って、発生するローカル信号Bの周波数を変更する。
【0017】
IF帯域にダウンコンバートされたバンドパスフィルタ105の出力信号は、アンプ106で増幅後、アッテネータ107により所定の信号レベルに調整され、直交復調器111に入力される。
【0018】
直交復調器111は、入力された信号を直交復調してベースバンド信号Cを得る。このベースバンド信号Cは、アナログ−デジタル変換器(AD変換器)112によりデジタル化される。AD変換器112は、制御部118から入力されるサンプリングタイミング信号Dを使用してサンプリングを行う。デジタル化されたベースバンド信号Eは、スイッチ113に入力され、該スイッチ113を介していずれかの復調器115に入力される。復調器115−1〜Nは、第1〜第Nの無線通信システムにそれぞれ対応したものである。スイッチ113は、制御部118から入力される切替え制御信号Fに従って、ベースバンド信号Eを入力する復調器115を切り替える。復調器115−1〜Nは、それぞれに入力されたベースバンド信号Eを復調する。
【0019】
制御部118は、発振器119で生成されたマスタクロックを使用して、ローカル制御信号A、サンプリングタイミング信号Dおよび切替え制御信号Fを生成する。
【0020】
図2、図3は、図1に示すローカル信号発生器117の第1、第2の構成例を示すブロック図である。
図2の第1の構成例では、第1から第Nの無線通信システムで使用される各IFに対応する周波数の発振器401−1〜Nと、発振器401−1〜Nの各出力信号からいずれか一つの信号をローカル信号Bとして選択出力するスイッチ402とを備える。スイッチ402は、制御部118から入力されるローカル制御信号Aに従って、ローカル信号Bとして出力する信号を切替える。
【0021】
図3の第2の構成例では、一つの周波数の発振器501と、発振器501の出力信号を分周してローカル信号Bを生成し出力する分周器502とを備える。発振器501は、第1から第Nの無線通信システムで使用される各IFに対応する周波数の公倍数である周波数の信号を生成する。分周器502は、該発振器501の出力信号の周波数から、第1から第Nの無線通信システムで使用される各IFに対応する周波数を生成可能なように、分周比を可変な構成を有する。そして、分周器502は、制御部118から入力されるローカル制御信号Aに従って、分周比を変更し、ローカル信号Bを生成する。
【0022】
次に、図4を参照して、図1の無線通信装置1の動作を説明する。
図4は、図1に示す無線通信装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、図4では、説明の便宜上、2つの無線通信システム(システム1、2)の無線信号を受信する場合を例に挙げているが、3つ以上の無線通信システムの無線信号を受信する場合についても同様にして拡張することができる。
【0023】
図4において、ローカル制御信号Aは、RF帯域からベースバンド帯域に周波数変換する対象システムを示す。また、ローカル制御信号Aは、周波数変換対象システムの伝送レートに応じた期間だけ、伝送レートが高いほど単位時間当たりの合計期間が長くなるよう出力される。図4の例では、システム1に係るローカル制御信号Aの出力期間は、AD変換器112でのサンプリング周期の4周期当たり3周期分である。一方、システム2に係るローカル制御信号Aの出力期間は、AD変換器112でのサンプリング周期の4周期当たり1周期分のみである。
【0024】
ローカル信号発生器117は、そのローカル制御信号Aに従って、ローカル制御信号Aのシステム1の期間にはシステム1用のローカル信号Bを生成し、一方、ローカル制御信号Aのシステム2の期間にはシステム2用のローカル信号Bを生成する。このローカル信号Bによって周波数変換対象システムが選択されることになり、ローカル信号Bのシステム1の期間にはシステム1用のAD変換器入力信号Cが生成され、一方、ローカル信号Bのシステム2の期間にはシステム2用のAD変換器入力信号Cが生成される。
【0025】
なお、ローカル制御信号Aの切り替わりのタイミングでは、ローカル信号Bは、過渡的な状態となり、不安定な期間が生じる。このため、AD変換器112の入力信号Cは、該不安定期間を有すると共に、各部104〜107及び111の回路遅延を付加されたものとなる。これら不安定期間および回路遅延を考慮して上記ローカル制御信号Aは、制御部118により、AD変換器112のサンプリングタイミングとのタイミング調整時間を取るように作成される。具体的には、図4に示されるように、AD変換器112のサンプリングタイミングよりも手前で、ローカル制御信号Aは切り替わる。例えば、サンプリングタイミング時刻T1の手前の時刻T1’で、システム1への切替えが行われる。
【0026】
AD変換器112は、制御部118から入力されるサンプリングタイミング信号Dのサンプリング周波数のサンプリングタイミングで、入力信号Cのサンプリングを行う。例えば、時刻T1〜T3のシステム1に係るサンプリング期間では、3回のサンプリングが行われ、システム1に係る3つのサンプリングデータS1−1,2,3が得られる。次の時刻T4のシステム2に係るサンプリング期間では、1回のサンプリングが行われ、システム2に係る1つのサンプリングデータS2−1が得られる。
【0027】
スイッチ113の切替え制御信号Fは、入力信号Eの対応するシステムを示す。この切替え制御信号Fに従ってスイッチ113の出力先が切替えられることにより、入力信号Eは各々対応する復調器1、2に入力される。図4の例では、システム1に係る入力信号Eの期間では、システム1用の復調器1に入力信号Eが出力される。これにより、システム1に係るサンプリングデータS1−1,2,3,5,6,7・・・が復調器1に入力される。一方、システム2に係る入力信号Eの期間では、システム2用の復調器2に入力信号Eが出力される。これにより、システム2に係るサンプリングデータS2−1,2,3・・・が復調器2に入力される。
【0028】
なお、システム1用の復調器1では、入力されるサンプリングデータに抜けが生じているが、例えばS1−3とS1−5の間のS1−4が抜けるが、この抜けた値は補間処理を行う。また、システム2では、本サンプリング周期の4回に1回のサンプリングの値で復調可能な伝送レートとなっている。
【0029】
次に、図1の制御部118に係る構成および動作を2つの構成例を挙げて説明する。
【0030】
図5は、図1に示す制御部118の一構成例を示すブロック図である。図6は、図5に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。以下、図6を参照して図5の制御部118について説明する。
図5において、制御部118には発振器119からマスタクロック信号が入力される。このマスタクロック信号はそのままサンプリングタイミング信号DとしてAD変換器112に出力される。カウンタ602は、2ビットのカウンタであり、マスタクロック信号に同期してカウンタ値を0、1、2、3、0の順で巡回してカウントアップする(図6のカウンタ値参照)。
【0031】
遅延器603は、マスタクロック信号を遅延させて出力する(図6の遅延器出力信号参照)。この遅延時間は、上記した図4におけるサンプリングタイミングとローカル信号Aとのタイミング調整時間に相当する時間である。
【0032】
エンコーダ604は、遅延器603で遅延された遅延マスタクロック信号(遅延器出力信号)に同期して、カウンタ602のカウンタ値をエンコードする(図6のエンコーダ出力信号参照)。このエンコード値は、上記した図4のローカル制御信号Aとして出力される。図6の例では、カウンタ値“0”,“1”,“3”がシステム1を示す値にエンコードされ、カウンタ値“2”がシステム2を示す値にエンコードされる。
【0033】
DFF(Dタイプのフリップフロップ)605は、マスタクロック信号に同期してエンコーダ604のエンコード値を保持し出力する(図6のDFF出力信号参照)。このDFF出力信号は、上記した図4の切替え制御信号Fとして出力される。
【0034】
図7は、図1に示す制御部118の他の構成例を示すブロック図である。図9は、図7に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。以下、図9を参照して図7の制御部118について説明する。
図7において、制御部118には発振器119からマスタクロック信号が入力される。このマスタクロック信号は、カウンタ702およびフリップフロップ704,705の動作クロックとして使用される。フリップフロップ704,705は、例えば図8に示されるようにJKタイプで構成されたフリップフロップである。フリップフロップ704の初期値は1であり、フリップフロップ705の初期値は0である。
【0035】
カウンタ702は、初期値が0の3ビットのカウンタであり、マスタクロック信号に同期してカウンタ値を0、1、2、3、4、5、6、7、0の順で巡回してカウントアップする(図9のカウンタ(702)値参照)。
【0036】
コンパレータ703は、カウンタ702のカウンタ値が“7”の時にコンパレータ出力信号K1を出力し、また、カウンタ702のカウンタ値が“5”の時にコンパレータ出力信号K2を出力する(図9のコンパレータ出力信号K1,K2参照)。
【0037】
フリップフロップ704は、コンパレータ出力信号K1の入力の度に、マスタクロック信号に同期して出力の0/1を反転する(図9のフリップフロップ(704)出力信号参照)。このフリップフロップ704の出力信号は、サンプリングタイミング信号Dとして出力される。
【0038】
フリップフロップ705は、コンパレータ出力信号K2の入力の度に、マスタクロック信号に同期して出力の0/1を反転する(図9のフリップフロップ(705)出力信号L参照)。このフリップフロップ705の出力信号Lは、上記した図5の遅延器603の出力信号(図6の遅延器出力信号)に相当する。
【0039】
カウンタ706は、上記した図5のカウンタ602に相当し、フリップフロップ704の出力信号つまりサンプリングタイミング信号Dに同期してカウンタ値を0、1、2、3、0の順で巡回してカウントアップする(図9のカウンタ(706)値参照)。
【0040】
エンコーダ707は、上記した図5のエンコーダ604に相当し、フリップフロップ705の出力信号Lに同期して、カウンタ706のカウンタ値をエンコードする(図9のエンコーダ出力信号参照)。このエンコード値は、ローカル制御信号Aとして出力される。図9の例は、上記した図6の例と同様に、カウンタ値“0”,“1”,“3”がシステム1を示す値にエンコードされ、カウンタ値“2”がシステム2を示す値にエンコードされる。
【0041】
DFF708は、上記した図5のDFF605に相当し、フリップフロップ704の出力信号つまりサンプリングタイミング信号Dに同期して、エンコーダ707のエンコード値を保持し出力する(図9のDFF出力信号参照)。このDFF出力信号は、切替え制御信号Fとして出力される。
【0042】
上述したように本実施形態によれば、複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して各無線通信システムごとに時分割でRF帯域からベースバンド帯域に周波数変換を行い、複数の無線通信システムのベースバンド信号を時分割多重した信号(図4のAD変換器入力信号C)を生成する。そして、その時分割多重信号を一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングし、該サンプリングデータの出力先となる各無線通信システム用の復調器を、周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して切替える。
【0043】
これにより、一つのAD変換器112で一つのサンプリング周波数を用いたマルチサンプリングにより同時に複数の無線通信システムのベースバンド信号を時分割多重したままデジタル化すると共に、該デジタル化した時分割多重ベースバンド信号中の各無線通信システムのベースバンド信号を、各無線通信システム用の復調器に振り分けることができる。この結果、各無線通信システム用の復調器で各々の復調処理が成されて各無線通信システムの復調信号を得ることができ、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能となる。
【0044】
また、AD変換器入力信号Cがサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えをサンプリングタイミングに先行して行うので、周波数変換対象システムの切替えによる過渡的な信号状態を回避して良好なサンプリングを行うことができる。好ましくは、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングからAD変換器の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を先行することが望ましい。
【0045】
次に、第2の実施形態を説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置1aの構成を示すブロック図である。この図10において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0046】
図10の無線通信装置1aは、スーパーヘテロダイン型受信機のうち低IFタイプの一例である。この無線通信装置1aでは、RF帯域からIF帯域にダウンコンバート後にAD変換器112でデジタル化した信号をデジタル直交復調器111aによりベースバンド信号に変換する。つまり、本実施形態では、AD変換器112の入力信号Cは、複数の無線通信システムのIF帯域の信号を時分割多重している。そして、AD変換器112では、上記第1の実施形態と同様に、その時分割多重信号を一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングする。
【0047】
次いで、該サンプリングデータは、デジタル直交復調器111aに入力されてベースバンド信号に変換される。そして、この時分割多重ベースバンド信号の出力先となる各無線通信システム用の復調器は、上記第1の実施形態と同様に、切替え制御信号Fに従ってスイッチ113により切替えられる。これにより、上記第1の実施形態と同様に、時分割多重ベースバンド信号の出力先となる各無線通信システム用の復調器は、周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して切替えられる。
【0048】
従って、第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、一つのAD変換器112で一つのサンプリング周波数を用いたマルチサンプリングにより同時に複数の無線通信システムのIF帯域の信号を時分割多重したままデジタル化すると共に、該デジタル化した信号を直交復調した時分割多重ベースバンド信号中の各無線通信システムのベースバンド信号を、各無線通信システム用の復調器に振り分けることができる。この結果、各無線通信システム用の復調器で各々の復調処理が成されて各無線通信システムの復調信号を得ることができ、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能となる。
【0049】
また、AD変換器入力信号Cがサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えをサンプリングタイミングに先行して行うことにより、周波数変換対象システムの切替えによる過渡的な信号状態を回避して良好なサンプリングを行うことができる。好ましくは、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングからAD変換器の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を先行することが望ましい。
【0050】
次に、第3の実施形態を説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置1bの構成を示すブロック図である。この図11において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0051】
図11の無線通信装置1bは、ダイレクトコンバージョン型受信機の一例である。この無線通信装置1bでは、直交復調器111によりRF帯域からベースバンド帯域に直接にダウンコンバートする。ここで、該直交復調器111は、ローカル信号Bにより、複数の無線通信システムのRF帯域信号を時分割でベースバンド信号に変換する。そして、該時分割多重ベースバンド信号は、上記第1の実施形態と同様に、AD変換器入力信号CとしてAD変換器112に入力される。これにより、第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】ローカル信号発生器117の一構成例を示すブロック図である。
【図3】ローカル信号発生器117の他の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線通信装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る制御部118の一構成例を示すブロック図である。
【図6】図5に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る制御部118の他の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7に示すフリップフロップ704,705の構成例を示すブロック図である。
【図9】図7に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置1aの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置1bの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,1b…無線通信装置、104…ミキサ、111…直交復調器、111a…デジタル直交復調器、112…AD変換器、113…スイッチ、115−1〜N…復調器、117…ローカル信号発生器、118…制御部、119…発振器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムに適用可能なマルチバンドおよびマルチモードの無線通信装置および無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一つの無線通信装置で複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムに適用可能なマルチバンドおよびマルチモードの無線通信装置が検討されている。例えば、特許文献1に記載される従来技術1では、ダウンコンバータミキサおよびローカル周波数信号発生回路(シンセサイザ又は分周器)の組を無線周波数帯域毎に具備し、適用対象の無線周波数帯域に合わせて該当する該組をスイッチで切り替えている。また、特許文献2に記載される従来技術2では、ダウンコンバータミキサを共通化して一個だけ備え、ダウンコンバータミキサに入力する受信信号およびローカル周波数信号をスイッチで切り替えている。
【0003】
また、非特許文献1には、共通サンプリングクロックを複数のシステム用に配分することにより、マルチサンプリングを実現するための技術(従来技術3)が記載されている。
【特許文献1】特開2001−186042号公報
【特許文献2】特開2000−124829号公報
【非特許文献1】澤井亮、他3名,「マルチモード・マルチサービスソフトウェア無線通信システムのための適応マルチサンプリング処理法」,電子情報通信学会論文誌,2001年7月,B Vol.J84−B,No.7,p.1187−1197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来技術1および2では、実際の使用時に、使用する無線周波数帯域に合わせてスイッチを切り替えることにより、当該使用する無線通信システム仕様に無線通信装置の動作を固定しているので、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことはできない。
【0005】
このような理由から、上記した従来技術3のマルチサンプリング技術を応用して、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能な無線通信装置の実現が望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、マルチサンプリング技術を応用して、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能な無線通信装置および無線通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る無線通信装置は、複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う周波数変換手段と、前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングするアナログデジタル変換手段と、各無線通信システム用の復調手段と、前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える切替え手段と、前記周波数変換手段に対して周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記切替え手段に対する切替え指示を行う制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る無線通信装置においては、前記制御手段は、前記アナログデジタル変換手段の入力信号がサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えを該サンプリングタイミングに先行して行うことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る無線通信装置においては、前記制御手段は、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングから前記アナログデジタル変換手段の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を前記先行することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る無線通信制御方法は、複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う過程と、前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングする過程と、各無線通信システム用の復調手段の中から、前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える過程と、前記周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記復調手段を切替える指示を行う過程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一つのアナログデジタル変換手段で一つのサンプリング周波数を用いたマルチサンプリングにより、同時に複数の無線通信システムの信号を時分割多重したままデジタル化すると共に、該デジタル化した時分割多重信号中の各無線通信システムの信号を、各無線通信システム用の復調手段に振り分けることができる。これにより、各無線通信システム用の復調手段で各々の復調処理が成されて各無線通信システムの復調信号を得ることができ、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能となる。
【0012】
また、アナログデジタル変換手段の入力信号がサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えをサンプリングタイミングに先行して行うことにより、周波数変換対象システムの切替えによる過渡的な信号状態を回避して良好なサンプリングを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の各実施形態について順次説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置1の構成を示すブロック図である。図1の無線通信装置1は、スーパーヘテロダイン型受信機の一例である。この無線通信装置1は、N個(Nは2以上の整数)の無線通信システムの各無線信号を同時に受信し復調することができるように構成されている。
【0014】
図1において、アンテナ101は、第1〜第Nの無線通信システムの各無線信号を受信する。アンテナ101で受信された信号は、バンドパスフィルタ102に入力されて、第1から第Nの無線通信システムで使用される各無線周波数(RF)帯域の範囲外の帯域の信号が遮断され、アンプ103により増幅されてミキサ104に入力される。
【0015】
ミキサ104は、ローカル信号発生器117から入力されるローカル信号Bをアンプ103からの入力信号に乗算し、乗算結果の信号を出力する。ここでは、ローカル信号Bの周波数によって、第1〜第Nの無線通信システムのうち、いずれかのシステムが周波数変換対象として選択されることになる。ミキサ104の出力信号は、バンドパスフィルタ105を通過することにより、中間周波数(IF)帯域にダウンコンバートされる。
【0016】
上記ローカル信号発生器117は、制御部118から入力されるローカル制御信号Aに従って、発生するローカル信号Bの周波数を変更する。
【0017】
IF帯域にダウンコンバートされたバンドパスフィルタ105の出力信号は、アンプ106で増幅後、アッテネータ107により所定の信号レベルに調整され、直交復調器111に入力される。
【0018】
直交復調器111は、入力された信号を直交復調してベースバンド信号Cを得る。このベースバンド信号Cは、アナログ−デジタル変換器(AD変換器)112によりデジタル化される。AD変換器112は、制御部118から入力されるサンプリングタイミング信号Dを使用してサンプリングを行う。デジタル化されたベースバンド信号Eは、スイッチ113に入力され、該スイッチ113を介していずれかの復調器115に入力される。復調器115−1〜Nは、第1〜第Nの無線通信システムにそれぞれ対応したものである。スイッチ113は、制御部118から入力される切替え制御信号Fに従って、ベースバンド信号Eを入力する復調器115を切り替える。復調器115−1〜Nは、それぞれに入力されたベースバンド信号Eを復調する。
【0019】
制御部118は、発振器119で生成されたマスタクロックを使用して、ローカル制御信号A、サンプリングタイミング信号Dおよび切替え制御信号Fを生成する。
【0020】
図2、図3は、図1に示すローカル信号発生器117の第1、第2の構成例を示すブロック図である。
図2の第1の構成例では、第1から第Nの無線通信システムで使用される各IFに対応する周波数の発振器401−1〜Nと、発振器401−1〜Nの各出力信号からいずれか一つの信号をローカル信号Bとして選択出力するスイッチ402とを備える。スイッチ402は、制御部118から入力されるローカル制御信号Aに従って、ローカル信号Bとして出力する信号を切替える。
【0021】
図3の第2の構成例では、一つの周波数の発振器501と、発振器501の出力信号を分周してローカル信号Bを生成し出力する分周器502とを備える。発振器501は、第1から第Nの無線通信システムで使用される各IFに対応する周波数の公倍数である周波数の信号を生成する。分周器502は、該発振器501の出力信号の周波数から、第1から第Nの無線通信システムで使用される各IFに対応する周波数を生成可能なように、分周比を可変な構成を有する。そして、分周器502は、制御部118から入力されるローカル制御信号Aに従って、分周比を変更し、ローカル信号Bを生成する。
【0022】
次に、図4を参照して、図1の無線通信装置1の動作を説明する。
図4は、図1に示す無線通信装置1の動作を説明するためのタイミングチャートである。なお、図4では、説明の便宜上、2つの無線通信システム(システム1、2)の無線信号を受信する場合を例に挙げているが、3つ以上の無線通信システムの無線信号を受信する場合についても同様にして拡張することができる。
【0023】
図4において、ローカル制御信号Aは、RF帯域からベースバンド帯域に周波数変換する対象システムを示す。また、ローカル制御信号Aは、周波数変換対象システムの伝送レートに応じた期間だけ、伝送レートが高いほど単位時間当たりの合計期間が長くなるよう出力される。図4の例では、システム1に係るローカル制御信号Aの出力期間は、AD変換器112でのサンプリング周期の4周期当たり3周期分である。一方、システム2に係るローカル制御信号Aの出力期間は、AD変換器112でのサンプリング周期の4周期当たり1周期分のみである。
【0024】
ローカル信号発生器117は、そのローカル制御信号Aに従って、ローカル制御信号Aのシステム1の期間にはシステム1用のローカル信号Bを生成し、一方、ローカル制御信号Aのシステム2の期間にはシステム2用のローカル信号Bを生成する。このローカル信号Bによって周波数変換対象システムが選択されることになり、ローカル信号Bのシステム1の期間にはシステム1用のAD変換器入力信号Cが生成され、一方、ローカル信号Bのシステム2の期間にはシステム2用のAD変換器入力信号Cが生成される。
【0025】
なお、ローカル制御信号Aの切り替わりのタイミングでは、ローカル信号Bは、過渡的な状態となり、不安定な期間が生じる。このため、AD変換器112の入力信号Cは、該不安定期間を有すると共に、各部104〜107及び111の回路遅延を付加されたものとなる。これら不安定期間および回路遅延を考慮して上記ローカル制御信号Aは、制御部118により、AD変換器112のサンプリングタイミングとのタイミング調整時間を取るように作成される。具体的には、図4に示されるように、AD変換器112のサンプリングタイミングよりも手前で、ローカル制御信号Aは切り替わる。例えば、サンプリングタイミング時刻T1の手前の時刻T1’で、システム1への切替えが行われる。
【0026】
AD変換器112は、制御部118から入力されるサンプリングタイミング信号Dのサンプリング周波数のサンプリングタイミングで、入力信号Cのサンプリングを行う。例えば、時刻T1〜T3のシステム1に係るサンプリング期間では、3回のサンプリングが行われ、システム1に係る3つのサンプリングデータS1−1,2,3が得られる。次の時刻T4のシステム2に係るサンプリング期間では、1回のサンプリングが行われ、システム2に係る1つのサンプリングデータS2−1が得られる。
【0027】
スイッチ113の切替え制御信号Fは、入力信号Eの対応するシステムを示す。この切替え制御信号Fに従ってスイッチ113の出力先が切替えられることにより、入力信号Eは各々対応する復調器1、2に入力される。図4の例では、システム1に係る入力信号Eの期間では、システム1用の復調器1に入力信号Eが出力される。これにより、システム1に係るサンプリングデータS1−1,2,3,5,6,7・・・が復調器1に入力される。一方、システム2に係る入力信号Eの期間では、システム2用の復調器2に入力信号Eが出力される。これにより、システム2に係るサンプリングデータS2−1,2,3・・・が復調器2に入力される。
【0028】
なお、システム1用の復調器1では、入力されるサンプリングデータに抜けが生じているが、例えばS1−3とS1−5の間のS1−4が抜けるが、この抜けた値は補間処理を行う。また、システム2では、本サンプリング周期の4回に1回のサンプリングの値で復調可能な伝送レートとなっている。
【0029】
次に、図1の制御部118に係る構成および動作を2つの構成例を挙げて説明する。
【0030】
図5は、図1に示す制御部118の一構成例を示すブロック図である。図6は、図5に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。以下、図6を参照して図5の制御部118について説明する。
図5において、制御部118には発振器119からマスタクロック信号が入力される。このマスタクロック信号はそのままサンプリングタイミング信号DとしてAD変換器112に出力される。カウンタ602は、2ビットのカウンタであり、マスタクロック信号に同期してカウンタ値を0、1、2、3、0の順で巡回してカウントアップする(図6のカウンタ値参照)。
【0031】
遅延器603は、マスタクロック信号を遅延させて出力する(図6の遅延器出力信号参照)。この遅延時間は、上記した図4におけるサンプリングタイミングとローカル信号Aとのタイミング調整時間に相当する時間である。
【0032】
エンコーダ604は、遅延器603で遅延された遅延マスタクロック信号(遅延器出力信号)に同期して、カウンタ602のカウンタ値をエンコードする(図6のエンコーダ出力信号参照)。このエンコード値は、上記した図4のローカル制御信号Aとして出力される。図6の例では、カウンタ値“0”,“1”,“3”がシステム1を示す値にエンコードされ、カウンタ値“2”がシステム2を示す値にエンコードされる。
【0033】
DFF(Dタイプのフリップフロップ)605は、マスタクロック信号に同期してエンコーダ604のエンコード値を保持し出力する(図6のDFF出力信号参照)。このDFF出力信号は、上記した図4の切替え制御信号Fとして出力される。
【0034】
図7は、図1に示す制御部118の他の構成例を示すブロック図である。図9は、図7に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。以下、図9を参照して図7の制御部118について説明する。
図7において、制御部118には発振器119からマスタクロック信号が入力される。このマスタクロック信号は、カウンタ702およびフリップフロップ704,705の動作クロックとして使用される。フリップフロップ704,705は、例えば図8に示されるようにJKタイプで構成されたフリップフロップである。フリップフロップ704の初期値は1であり、フリップフロップ705の初期値は0である。
【0035】
カウンタ702は、初期値が0の3ビットのカウンタであり、マスタクロック信号に同期してカウンタ値を0、1、2、3、4、5、6、7、0の順で巡回してカウントアップする(図9のカウンタ(702)値参照)。
【0036】
コンパレータ703は、カウンタ702のカウンタ値が“7”の時にコンパレータ出力信号K1を出力し、また、カウンタ702のカウンタ値が“5”の時にコンパレータ出力信号K2を出力する(図9のコンパレータ出力信号K1,K2参照)。
【0037】
フリップフロップ704は、コンパレータ出力信号K1の入力の度に、マスタクロック信号に同期して出力の0/1を反転する(図9のフリップフロップ(704)出力信号参照)。このフリップフロップ704の出力信号は、サンプリングタイミング信号Dとして出力される。
【0038】
フリップフロップ705は、コンパレータ出力信号K2の入力の度に、マスタクロック信号に同期して出力の0/1を反転する(図9のフリップフロップ(705)出力信号L参照)。このフリップフロップ705の出力信号Lは、上記した図5の遅延器603の出力信号(図6の遅延器出力信号)に相当する。
【0039】
カウンタ706は、上記した図5のカウンタ602に相当し、フリップフロップ704の出力信号つまりサンプリングタイミング信号Dに同期してカウンタ値を0、1、2、3、0の順で巡回してカウントアップする(図9のカウンタ(706)値参照)。
【0040】
エンコーダ707は、上記した図5のエンコーダ604に相当し、フリップフロップ705の出力信号Lに同期して、カウンタ706のカウンタ値をエンコードする(図9のエンコーダ出力信号参照)。このエンコード値は、ローカル制御信号Aとして出力される。図9の例は、上記した図6の例と同様に、カウンタ値“0”,“1”,“3”がシステム1を示す値にエンコードされ、カウンタ値“2”がシステム2を示す値にエンコードされる。
【0041】
DFF708は、上記した図5のDFF605に相当し、フリップフロップ704の出力信号つまりサンプリングタイミング信号Dに同期して、エンコーダ707のエンコード値を保持し出力する(図9のDFF出力信号参照)。このDFF出力信号は、切替え制御信号Fとして出力される。
【0042】
上述したように本実施形態によれば、複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して各無線通信システムごとに時分割でRF帯域からベースバンド帯域に周波数変換を行い、複数の無線通信システムのベースバンド信号を時分割多重した信号(図4のAD変換器入力信号C)を生成する。そして、その時分割多重信号を一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングし、該サンプリングデータの出力先となる各無線通信システム用の復調器を、周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して切替える。
【0043】
これにより、一つのAD変換器112で一つのサンプリング周波数を用いたマルチサンプリングにより同時に複数の無線通信システムのベースバンド信号を時分割多重したままデジタル化すると共に、該デジタル化した時分割多重ベースバンド信号中の各無線通信システムのベースバンド信号を、各無線通信システム用の復調器に振り分けることができる。この結果、各無線通信システム用の復調器で各々の復調処理が成されて各無線通信システムの復調信号を得ることができ、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能となる。
【0044】
また、AD変換器入力信号Cがサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えをサンプリングタイミングに先行して行うので、周波数変換対象システムの切替えによる過渡的な信号状態を回避して良好なサンプリングを行うことができる。好ましくは、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングからAD変換器の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を先行することが望ましい。
【0045】
次に、第2の実施形態を説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置1aの構成を示すブロック図である。この図10において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0046】
図10の無線通信装置1aは、スーパーヘテロダイン型受信機のうち低IFタイプの一例である。この無線通信装置1aでは、RF帯域からIF帯域にダウンコンバート後にAD変換器112でデジタル化した信号をデジタル直交復調器111aによりベースバンド信号に変換する。つまり、本実施形態では、AD変換器112の入力信号Cは、複数の無線通信システムのIF帯域の信号を時分割多重している。そして、AD変換器112では、上記第1の実施形態と同様に、その時分割多重信号を一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングする。
【0047】
次いで、該サンプリングデータは、デジタル直交復調器111aに入力されてベースバンド信号に変換される。そして、この時分割多重ベースバンド信号の出力先となる各無線通信システム用の復調器は、上記第1の実施形態と同様に、切替え制御信号Fに従ってスイッチ113により切替えられる。これにより、上記第1の実施形態と同様に、時分割多重ベースバンド信号の出力先となる各無線通信システム用の復調器は、周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して切替えられる。
【0048】
従って、第2の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、一つのAD変換器112で一つのサンプリング周波数を用いたマルチサンプリングにより同時に複数の無線通信システムのIF帯域の信号を時分割多重したままデジタル化すると共に、該デジタル化した信号を直交復調した時分割多重ベースバンド信号中の各無線通信システムのベースバンド信号を、各無線通信システム用の復調器に振り分けることができる。この結果、各無線通信システム用の復調器で各々の復調処理が成されて各無線通信システムの復調信号を得ることができ、同時に複数の無線周波数帯域および複数の無線通信システムでの無線通信を行うことが可能となる。
【0049】
また、AD変換器入力信号Cがサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えをサンプリングタイミングに先行して行うことにより、周波数変換対象システムの切替えによる過渡的な信号状態を回避して良好なサンプリングを行うことができる。好ましくは、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングからAD変換器の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を先行することが望ましい。
【0050】
次に、第3の実施形態を説明する。
図11は、本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置1bの構成を示すブロック図である。この図11において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0051】
図11の無線通信装置1bは、ダイレクトコンバージョン型受信機の一例である。この無線通信装置1bでは、直交復調器111によりRF帯域からベースバンド帯域に直接にダウンコンバートする。ここで、該直交復調器111は、ローカル信号Bにより、複数の無線通信システムのRF帯域信号を時分割でベースバンド信号に変換する。そして、該時分割多重ベースバンド信号は、上記第1の実施形態と同様に、AD変換器入力信号CとしてAD変換器112に入力される。これにより、第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】ローカル信号発生器117の一構成例を示すブロック図である。
【図3】ローカル信号発生器117の他の構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る無線通信装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る制御部118の一構成例を示すブロック図である。
【図6】図5に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る制御部118の他の構成例を示すブロック図である。
【図8】図7に示すフリップフロップ704,705の構成例を示すブロック図である。
【図9】図7に示す制御部118の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置1aの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置1bの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1,1a,1b…無線通信装置、104…ミキサ、111…直交復調器、111a…デジタル直交復調器、112…AD変換器、113…スイッチ、115−1〜N…復調器、117…ローカル信号発生器、118…制御部、119…発振器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う周波数変換手段と、
前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングするアナログデジタル変換手段と、
各無線通信システム用の復調手段と、
前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える切替え手段と、
前記周波数変換手段に対して周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記切替え手段に対する切替え指示を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記アナログデジタル変換手段の入力信号がサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えを該サンプリングタイミングに先行して行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングから前記アナログデジタル変換手段の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を前記先行することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う過程と、
前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングする過程と、
各無線通信システム用の復調手段の中から、前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える過程と、
前記周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記復調手段を切替える指示を行う過程と、
を含むことを特徴とする無線通信制御方法。
【請求項1】
複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う周波数変換手段と、
前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングするアナログデジタル変換手段と、
各無線通信システム用の復調手段と、
前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える切替え手段と、
前記周波数変換手段に対して周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記切替え手段に対する切替え指示を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記アナログデジタル変換手段の入力信号がサンプリングタイミングまでに確定するように、周波数変換対象システムの切替えを該サンプリングタイミングに先行して行うことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、周波数変換対象システムの切替えによる不安定期間、および周波数変換対象システムの切替えタイミングから前記アナログデジタル変換手段の入力タイミングに至るまでの遅延時間を加味した時間分を前記先行することを特徴とする請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
複数の無線通信システムの無線信号が混在する受信信号に対して、各無線通信システムごとに時分割で周波数変換を行う過程と、
前記周波数変換後の複数の無線通信システムの信号を時分割多重する信号に対して、一つのサンプリング周波数で一様にサンプリングする過程と、
各無線通信システム用の復調手段の中から、前記サンプリングデータの出力先となる復調手段を切替える過程と、
前記周波数変換対象システムの切替えタイミングを指示すると共に、該周波数変換対象システムの切替えタイミングに同期して前記復調手段を切替える指示を行う過程と、
を含むことを特徴とする無線通信制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−74438(P2006−74438A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255393(P2004−255393)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
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