説明

無線通信装置及び方法

【課題】摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施可能な無線通信装置を提供する。
【解決手段】パイロット信号13及びデータ信号14を含む第1の送信信号のうちデータ信号14に対して摂動ベクトルを付加し、パイロット信号13及びデータ信号15を含む第2の送信信号を得る摂動ベクトル付加部103と、第2の送信信号のうちデータ信号15に対して、受信側における干渉を除去するためのウェイト18を乗算し、パイロット信号16及びデータ信号17を含む第3の送信信号を得るウェイト乗算部104と、第3の送信信号のうちデータ信号17に対して、総送信電力を正規化するための共通の正規化係数を乗算し、第4の送信信号を得る正規化係数乗算部105とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信方式の1つとして、同一の時間帯及び同一の周波数帯において、複数の送信アンテナを用いて複数のユーザを空間的に多重する空間分割多元アクセス(Spatial Division Multiple Access;SDMA)方式が知られている。SDMA方式を基地局と複数のユーザ端末(無線信号を少なくとも受信可能な無線通信装置)との間で通信を行う無線通信システムに適用すれば、ユーザ間の空間的な干渉を生じることなく通信を行うことができる。
【0003】
SDMA方式に関して、具体化された様々な方式が提案されている。例えば、ZF(Zero-Forcing)方式では、基地局が有する複数の送信アンテナの各々と複数のユーザ端末の受信アンテナの各々との間の伝搬路状態を示すチャネル係数を要素とする行列(以下、単にチャネル行列)を生成し、当該チャネル行列の擬似逆行列をウェイトとして送信信号(ユーザ信号)に乗算することにより、ユーザ間の干渉を生じさせずに通信を行う。また、チャネル行列の空間相関が高い場合に上記ウェイトの乗算を行うと、送信信号の信号レベルが増大してしまうため、ZF方式では、送信電力が定格送信電力内に収まるように送信信号に対して正規化係数を更に乗算している。ZF方式には、上記正規化係数の乗算により送信信号の電力ロスが生じるため、受信側の無線通信装置において受信信号に対してチャネル等化を行うと雑音強調が生じ、受信性能が劣化する問題がある。尚、上記雑音強調の程度は、正規化係数の逆数が大きいほど強くなる。
【0004】
非特許文献1及び非特許文献2記載のVP(Vector Perturbation)方式では、摂動ベクトル(Perturbation Vector)という、送信信号の取り得る信号点を拡張可能なベクトルが用いられる。VP方式では、前述した正規化係数の逆数が最も小さくなるような拡張信号点に送信信号をシフトさせる摂動ベクトルを探索し、探索された摂動ベクトルを送信信号に加算して、ウェイト及び正規化係数の乗算を行う。受信側の無線通信装置は、モジュロ演算により受信信号から上記摂動ベクトルを除去することにより、摂動ベクトルを加算する前の送信信号を復元することができる。VP方式であっても、ZF方式と同様の雑音強調は生じるが、ZF方式に比べて正規化係数の逆数が小さくなるため受信性能の劣化が抑えられる。
【非特許文献1】B. Hochwald, C. Peel, A. Swindlehurst, "A Vector-Perturbation Technique for Near-Capacity Multiantenna Multiuser Communication - PartII: Perturbation," IEEE Trans. on Communications, Vol. 53, no. 3, pp. 537-544, Mar. 2005.
【非特許文献2】C. Windpassinger, R. Fischer, and J. Huber, "Lattiece-Reduction Aided Broadcast Precoding," IEEE Trans. on Communications, Vol. 52, no. 12, pp. 2057-2060, Dec. 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、無線通信システムにおける送信信号には、実質的な受信対象となるデータ信号の他に、チャネル推定のためのパイロット信号が含まれる。通常、データ信号及びパイロット信号には同一の送信方式が適用される。例えば、データ信号にウェイトを乗じるのであれば、受信したデータ信号には伝搬路のチャネル係数の他にウェイトが乗算されているので、受信側の無線通信装置は上記チャネル係数を推定するだけでなく、ウェイトを考慮した実効チャネルを推定する必要がある。従って、受信側の無線通信装置が実効チャネルを推定できるように、送信側の無線通信装置がパイロット信号に対しても上記ウェイトを乗算する必要がある。
【0006】
しかしながら、前述したVP方式のような摂動ベクトルを用いる無線通信において、データ信号及びパイロット信号に対して同一の送信方式を単に適用することは、受信性能の観点からすると必ずしも好ましくない。前述したように、パイロット信号は、受信側の無線通信装置がチャネル推定に用いるため、当該無線通信装置にとって既知の値である。しかしながら、摂動ベクトルは受信側の無線通信装置にとって未知の値であるため、摂動ベクトルをパイロット信号に付加した場合には、当該無線通信装置が正確な実効チャネルを推定できない。また、探索される摂動ベクトルの値は、付加対象となる信号次第で異なるため、データ信号及びパイロット信号に夫々付加される摂動ベクトルは必ずしも一致しない。従って、データ信号及びパイロット信号に対して夫々算出される正規化係数も必ずしも一致しない。
【0007】
非特許文献1及び非特許文献2のような従来文献は、受信側の無線通信装置にとってデータ信号に付加された摂動ベクトル、データ信号に乗算された正規化係数等の通常は未知のパラメータが既知であり、当該無線通信装置が理想的なチャネル等化を実行可能であることを前提としている。即ち、上記従来文献には、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施可能とするための具体的手法、例えば実効チャネルの現実的な推定手法が開示されていない。
【0008】
従って、本発明は、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施可能な無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る無線通信装置は、第1のパイロット信号及び第1のデータ信号を含む第1の送信信号のうち前記第1のデータ信号に対して摂動ベクトルを付加し、第2のパイロット信号及び第2のデータ信号を含む第2の送信信号を得る摂動ベクトル付加部と、前記第2の送信信号のうち前記第2のデータ信号に対して、前記受信側における干渉を除去するためのウェイトを乗算し、第3のパイロット信号及び第3のデータ信号を含む第3の送信信号を得るウェイト乗算部と、前記第3の送信信号のうち前記第3のデータ信号に対して、総送信電力を正規化するための共通の正規化係数を乗算し、第4のパイロット信号及び第4のデータ信号を含む第4の送信信号を得る正規化係数乗算部と、前記第4の送信信号を送信する送信部とを具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施可能な無線通信装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置は、変調部101、変調部102、摂動ベクトル付加部103、ウェイト乗算部104、正規化係数乗算部105、Nt(以降の説明において、Ntは送信アンテナ数を示す整数値であるものとする)個の逆高速フーリエ変換部(inverse fast Fourier transform;IFFT)部106−1,…,106−Nt、GI(guard interval)付加部107−1,…,107−Nt、Nt個の無線部108−1,…,108−Nt及びNt個のアンテナ109−1,…,109−Ntを有する。図1の無線通信装置は、例えば基地局として利用可能である。図1の無線通信装置は、Nt個のアンテナ109−1,…,109−Ntを用いて同一時間帯及び同一周波数帯に複数のユーザ端末を空間多重するSDMA方式を使用する。
【0012】
変調部101は、パイロット系列11に対して所定の変調処理を施し、変調シンボルとしてのパイロット信号13を生成する。変調部101は、パイロット信号13をウェイト乗算部104に入力する。尚、上記変調方式は、図1の無線通信装置と通信を行う無線通信装置が復調可能な変調方式であればよい。例えば、変調部101は、BPSK(binary phase shift keying)及びQPSK(quadrature phase shift keying)に代表されるPSK(phase shift keying)方式、或いは、16QAM(quadrature amplitude modulation)、64QAM及び256QAMに代表されるQAM方式等を利用できる。
【0013】
変調部102は、図示しない符号化部によって符号化されたデータ系列12に対して、変調部101と同様の変調処理を施し、変調シンボルとしてのデータ信号14を生成する。変調部102は、データ信号14を摂動ベクトル付加部103に入力する。
【0014】
摂動ベクトル付加部103は、変調部102からのデータ信号14と、ウェイト計算部110からのウェイト行列18とに基づき、所定の規範に従って当該データ信号14にとって適切な摂動ベクトルを探索する。尚、摂動ベクトルの詳細は後述する。摂動ベクトル付加部103は、探索した摂動ベクトルをデータ信号14に付加し、摂動ベクトル付加済みのデータ信号15をウェイト乗算部104に入力する。
【0015】
ウェイト乗算部104は、ウェイト計算部110からのウェイト行列18を、変調部101からのパイロット信号13及び摂動ベクトル付加部103からのデータ信号15に乗算する。ウェイト乗算部104は、ウェイト乗算済みのパイロット信号16及びウェイト乗算済みのデータ信号17を正規化係数乗算部105に入力する。
【0016】
正規化係数乗算部105は、ウェイト乗算部104からのパイロット信号16及びデータ信号17に対して、総送信電力が規定値内となるような正規化係数を乗算する。正規化係数の導出手法は後述する。正規化係数乗算部105は、正規化係数乗算済みのパイロット信号及びデータ信号をIFFT部106−1,…,106−Ntに夫々入力する。
【0017】
IFFT部106−1,…,106−Ntの各々は、正規化係数乗算部105からのパイロット信号及び/またはデータ信号に対してIFFTを施し、周波数領域の信号から時間領域の信号へと変換する。IFFT部106−1,…,106−Ntの各々は、変換後の信号をGI付加部107−1,…,107−Ntの各々に入力する。
【0018】
GI付加部107−1,…,107−Ntの各々は、IFFT部106−1,…,106−Ntの各々からの信号にGIを付加する。GI付加部107−1,…,107−Ntの各々は、GI付加後の信号を無線部108−1,…,108−Ntの各々に入力する。ここで、GI付加部107−1,…,107−NtによるGIの付加手法は、特に限定されず、直交周波数分割多重(OFDM;Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式または直交周波数分割多元接続(OFDMA;Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式において利用可能なものを適宜利用してよい。
【0019】
ここで、IFFT部106−1,…,106−Nt及びGI付加部107−1,…,107−Ntは必須の構成要素ではない。即ち、図1の無線通信装置が、OFDMまたはOFDMAのようなマルチキャリア伝送を行う場合には、IFFT部106−1,…,106−Nt及びGI付加部107−1,…,107−Ntは必要であるが、シングルキャリア伝送を行う場合にはこれらは不要である。図1の無線通信装置がシングルキャリア伝送を行う場合には、正規化係数乗算部105からのパイロット信号及びデータ信号を無線部108−1,…,108−Ntに直接入力すればよい。また、図1の無線通信装置がマルチキャリア伝送及びシングルキャリア伝送のいずれを行うにせよ、無線部108−1,…,108−Ntの前段に帯域制限のためのデジタルフィルタを設けてよい。
【0020】
無線部108−1,…,108−Ntの各々は、入力信号に対して送信処理に相当する信号処理を行う。即ち、無線部108−1,…,108−Ntの各々は、入力信号に対して、デジタル−アナログ変換器(digital-to-analog converter;DAC)によるデジタル−アナログ変換(DA変換)、周波数変換器によるアップコンバージョン、電力増幅器による電力増幅等の信号処理を行う。無線部108−1,…,108−Ntの各々は、上記信号処理後の無線信号をアンテナ109−1,…,109−Ntの各々に入力する。
【0021】
アンテナ109−1,…,109−Ntの各々は、無線部108−1,…,108−Ntの各々からの無線信号を空間に放出する。尚、アンテナ109−1,…,109−Ntは所望の周波数帯で無線信号を送信できるものであればよく、特定のアンテナに限定されるものでない。
【0022】
ウェイト計算部110は、ユーザ端末、即ち、受信側の無線通信装置からのフィードバック情報に基づいてウェイト行列18を計算する。ウェイト計算部110は、ウェイト行列18を摂動ベクトル付加部103及びウェイト乗算部104に入力する。ウェイト計算部110によるウェイト行列18の計算手法は、上記フィードバック情報に応じて適宜選択されてよい。例えば、上記フィードバック情報が図1の無線通信装置と受信側の無線通信装置との間のチャネル応答であれば、ウェイト計算部110はZF規範、MMSE(Minimum Mean Square Error)規範等に従ってウェイト行列18を計算できる。また、上記フィードバック情報が図1の無線通信装置と受信側の無線通信装置との間で予め共有されているcodebookの中から選択されたウェイトのインデックスであれば、ウェイト計算部110は当該インデックスを用いて上記codebookを参照してウェイト行列18を計算できる。尚、上記codebookは、直交関係にあるウェイトベクトルによって構成されていてもよいし、非直交関係にあるウェイトベクトルによって構成されていてもよい。
【0023】
図1の無線通信装置からの送信信号を受信する無線通信装置は、例えば図2に示すように、アンテナ201、無線部202、GI除去部203、高速フーリエ変換(FFT;fast Fourier transform)部204、チャネル推定部205、チャネル等化部206、モジュロ演算部207及び復調部208を有する。図2の無線通信装置は、例えば基地局と通信するユーザ端末として利用可能である。
【0024】
アンテナ201は、図1の無線通信装置から送信された無線信号を受信する。アンテナ201は受信信号を無線部202に入力する。尚、アンテナ201は所望の周波数帯で無線信号を受信できるものであればよく、特定のアンテナに限定されるものでない。
【0025】
無線部202は、アンテナ201からの受信信号に対して受信処理に相当する信号処理を行う。即ち、無線部202は上記受信信号に対して、低雑音増幅器(LNA;low noise amplifier)による信号レベルの増幅、周波数変換器によるダウンコンバージョン、アナログ−デジタル変換器(analog-to-digital converter;ADC)によるアナログ−デジタル変換(AD変換)、フィルタによる帯域制限等を行う。無線部202は、上記信号処理後のベースバンド信号をGI除去部203に入力する。
【0026】
GI除去部203は、無線部202からの信号よりGIを除去する。GI除去部203は、GI除去後の信号をFFT部204に入力する。ここで、GI除去部203によるGIの除去手法は、特に限定されず、OFDM方式またはOFDMA方式において利用可能なものを適宜利用してよい。
【0027】
FFT部204は、GI除去部203からの信号に対してFFTを施し、時間領域の信号から周波数領域の信号へと変換する。即ち、FFT部204は、受信信号をサブキャリア毎に分離する。FFT部204は、FFT後の信号のうちデータ信号21をチャネル等化部206に入力し、パイロット信号22をチャネル推定部205に入力する。
【0028】
ここで、GI除去部203及びFFT部204は必須の構成要素ではない。即ち、図1の無線通信装置が、OFDMまたはOFDMAのようなマルチキャリア伝送を行う場合には、GI除去部203及びFFT部204は必要であるが、シングルキャリア伝送を行う場合にはこれらは不要である。図1の無線通信装置がシングルキャリア伝送を行う場合には、無線部202からの信号のうちデータ信号21をチャネル等化部206、パイロット信号22をチャネル推定部205に夫々直接入力すればよい。また、図1の無線通信装置がマルチキャリア伝送及びシングルキャリア伝送のいずれを行うにせよ、無線部202の後段に帯域制限のためのデジタルフィルタを設けてもよい。
【0029】
チャネル推定部205は、入力されたパイロット信号22と、図2の無線通信装置にとって既知のパイロット信号値とを用いて実効チャネルを推定する。チャネル推定部205は、推定実効チャネル23をチャネル等化部206に入力する。
【0030】
チャネル等化部206は、入力されたデータ信号に対して、チャネル推定部205からの推定実効チャネル23を用いて、チャネル等化を行う。チャネル等化部206は、チャネル等化済みのデータ信号をモジュロ演算部207に入力する。
【0031】
モジュロ演算部207は、チャネル等化部206からのデータ信号に所定のモジュロ演算を行って、当該データ信号に付加されている摂動ベクトルを除去する。即ち、モジュロ演算部207は、摂動ベクトル付加部103によって摂動ベクトル付加がされる前のデータ信号14を復元する。モジュロ演算部207は、モジュロ演算済みのデータ信号を復調部208に入力する。
【0032】
復調部208は、モジュロ演算部207からのデータ信号に対して、所定の復調処理を施し、復調データ系列を生成する。上記復調処理は、図1の無線通信装置における変調部102の行う変調処理に対応するものである。復調部208によって生成された復調データ系列は、図示しない復号化部によって図1の無線通信装置による符号化処理に対応する復号化処理を施される。
【0033】
以下、本実施形態に係る無線通信装置の技術的意義を説明するための前提として、従来技術としてのZF方式及びVP方式の概要とこれらの問題点を説明する。また、VP方式に関する説明において摂動ベクトルの詳細も述べる。以降の説明では、説明の簡単化のために、基地局とユーザ1及び2の夫々の端末との間でSDMA方式に従う無線通信が行われることを想定している。
【0034】
基地局は2つの送信アンテナTx1及びTx2を有し、ユーザ1の端末は1つの受信アンテナRx1を有し、ユーザ2の端末は1つの受信アンテナRx2を有している。基地局は、ユーザ1及びユーザ2に対して、次の数式(1)に示すユーザ信号s(パイロット信号及びデータ信号のいずれも含み得る)を送信する。
【数1】

【0035】
数式(1)において、s1はユーザ1宛てのユーザ信号、s2はユーザ2宛てのユーザ信号を夫々表す。受信アンテナRx1及び受信アンテナRx2が上記ユーザ信号sを受信する際には、次の数式(2)に示す雑音信号nも上記ユーザ信号sに重畳されている。
【数2】

【0036】
数式(2)において、n1は受信アンテナRx1によって受信される雑音信号、n2は受信アンテナRx2によって受信される雑音信号を夫々表す。数式(1)及び数式(2)によれば、受信アンテナRx1及び受信アンテナRx2が基地局から送信されたユーザ信号sを受信した際には、次の数式(3)に示す受信信号yが得られる。
【数3】

【0037】
数式(3)において、Hは基地局とユーザ1の端末及びユーザ2の端末との間のチャネル行列である。h11は送信アンテナTx1と受信アンテナRx1との間のチャネル応答、h12は送信アンテナTx2と受信アンテナRx1との間のチャネル応答、h21は送信アンテナTx1と受信アンテナRx2との間のチャネル応答、h22は送信アンテナTx2と受信アンテナRx2との間のチャネル応答を夫々示す。数式(3)によれば、受信アンテナRx1の受信信号にはユーザ2宛てのユーザ信号s2による干渉、受信アンテナRx2の受信信号にはユーザ1宛てのユーザ信号s1による干渉が夫々生じている。従って、基地局は、上記干渉をキャンセルするために、次の数式(4)に示すウェイト行列Wをユーザ信号sに予め乗算する。
【数4】

【0038】
数式(4)において、H+はチャネル行列Hの擬似逆行列、HHはチャネル行列Hの複素共役転置行列を夫々表す。上記チャネル行列Hの空間相関が大きいと、ウェイト行列を乗じることによる送信電力の増大が問題となる。従って、ZF方式では、送信電力が定格送信電力内に収まるように、基地局が、ウェイト行列Wを乗算した後のユーザ信号sに対して次の数式(5)に示すような正規化係数1/√γを更に乗算して、送信信号xを生成している。
【数5】

【0039】
数式(5)におけるγは、例えば次の数式(6)によって計算できる。
【数6】

【0040】
数式(6)に示すγを用いることにより、送信信号xの総送信電力が1となるような正規化が実現される。受信アンテナRx1及びRx2が、数式(6)に示す送信信号xを受信した場合、次の数式(7)に示す受信信号yが得られる。
【数7】

【0041】
数式(7)によれば、ユーザ信号s(即ち、s1及びs2)には実効チャネル(=1/√γ)が乗算されているので、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末はパイロット信号を利用してチャネル推定を行う。ユーザ1の端末及びユーザ2の端末は、推定実効チャネルHeffを利用して受信信号yのチャネル等化を行って、次の数式(8)に示すチャネル等化後の受信信号y'を得る。
【数8】

【0042】
数式(8)によれば、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末は、互いに干渉することなくユーザ1宛てのユーザ信号s1及びユーザ2宛てのユーザ信号s2を夫々受信することができる。一方、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末は、√γ倍(即ち、正規化係数の逆数倍)に強調された雑音成分n1及び√γ倍に強調された雑音成分n2を夫々受信している。従って、ZF方式は、上記正規化係数1/√γが小さいほど、雑音成分n1及び雑音成分n2が強調され、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末の受信性能が劣化するという問題を有する。
【0043】
VP方式(特に、非特許文献1に係るVP方式)は、次の数式(9)に示すようにユーザ信号sに摂動ベクトルdを付加して送信信号xを生成する点がZF方式と大きく異なる。
【数9】

【0044】
数式(9)によれば、送信信号xの総送信電力を1とするためのγは、次の数式(10)を用いて算出できる。
【数10】

【0045】
VP方式は、次の数式(11)に示す規範に従って、数式(10)に示すγが最小となるような摂動ベクトルdを、拡張コンスタレーション(τZ2)の中から探索することを目的とする。
【数11】

【0046】
数式(11)において、τは摂動間隔(正の数)を表す。τは、ユーザ信号sに施される変調方式の多値数に応じて設定される。例えば、非特許文献1では、QPSKに対してτ=4、16QAMに対してτ=8を夫々設定しているが、これらに限られず、オペレータにより任意の正の値を設定してもよい。また、数式(11)において、CZmは、実部及び虚部の成分が共に整数値となるm次元のベクトルを表す。尚、摂動ベクトルdの探索には、非特許文献1記載のSphere Encoding方式、非特許文献2記載のLLLアルゴリズム等の多様な探索手法のいずれが利用されてもよい。
【0047】
摂動ベクトルdの成分をd1及びd2とした場合、受信アンテナRx1及び受信アンテナRx2は、次の数式(12)に示す受信信号yを得る。
【数12】

【0048】
ユーザ1の端末及びユーザ2の端末が、数式(12)の受信信号yに対して理想的なチャネル等化を実行できると仮定すれば、当該チャネル等化によって次の数式(13)に示す受信信号y'を得ることができる。
【数13】

【0049】
数式(13)において雑音信号を無視すれば、ユーザ1の端末はユーザ1宛てのユーザ信号s1と、当該ユーザ信号s1に対して基地局によって付加された摂動ベクトルd1との合成信号を受信している。また、ユーザ2の端末はユーザ2宛てのユーザ信号s2と、当該ユーザ信号s2に対して基地局によって付加された摂動ベクトルd2との合成信号を受信している。即ち、ユーザ1の端末の受信信号はユーザ1宛てのユーザ信号s1の信号点が摂動ベクトルd1だけシフトされたものであり、ユーザ2の端末の受信信号はユーザ2宛てのユーザ信号s2の信号点が摂動ベクトルd2だけシフトされたものである。ユーザ1の端末及びユーザ2の端末は、摂動ベクトルd1及びd2を除去するために、次の数式(14)に示すモジュロ演算を受信信号に夫々適用する。
【数14】

【0050】
数式(14)に示すモジュロ演算を、数式(13)に示す受信信号y'に適用すると次の数式(15)に示す受信信号y"が得られる。
【数15】

【0051】
数式(15)によれば、数式(14)に示すモジュロ演算の結果、摂動ベクトルd1及びd2が除去され、数式(8)に示す受信信号y'と同様の受信信号y"が生成されている。数式(8)に示す受信信号y'と、数式(15)に示す受信信号y"との間の実質的な差異は、γの値である。前述したように、VP方式はγを最小化するように摂動ベクトルdを探索しているので、数式(15)におけるγが数式(8)におけるγを上回ることはない。即ち、VP方式によれば、ZF方式に比べて雑音強調を抑制することができる。
【0052】
以下、従来のVP方式の問題点を説明する。
従来のVP方式では、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末が理想的なチャネル等化を実行できることを仮定している。しかしながら、基地局において、パイロット信号及びデータ信号の両方に摂動ベクトルを付加し、ウェイトを乗算し、正規化係数を乗算して送信信号を生成するとすれば、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末においてパイロット信号に付加されている摂動ベクトルは未知であるから、正確な実効チャネルを推定できない。例えば、ユーザ1の端末にとって既知のパイロット信号をs1p、当該パイロット信号s1pに付加されている摂動ベクトルをd1で夫々表すと、ユーザ1の端末が推定する実効チャネルは、数式(16)で表すことができる。
【数16】

【0053】
数式(16)に示す推定実効チャネルHeffは、本来の実効チャネル1/√γとは異なるので、当該推定実効チャネルHeffを利用してチャネル等化を行ったとしても良好な受信性能を期待できない。
【0054】
以下、本実施形態に係る無線通信装置の技術的意義として、図1の無線通信装置の実効チャネルの推定の妥当性を中心に説明する。
前述したように、パイロット信号13(sp)は、摂動ベクトルを付加されることなく、ウェイト乗算部104に入力される。一方、データ信号14(sd)は、摂動ベクトル付加部103によって例えば数式(11)に示す規範に従って探索された摂動ベクトル(dd)が付加されて、ウェイト乗算部104に入力される。
【0055】
ウェイト乗算部104は、入力されたパイロット信号13(sp)及びデータ信号15(sd+dd)にウェイト行列18(W)を乗算する。ここで、ウェイト乗算部110に入力されるフィードバック情報がチャネル応答であれば、ウェイト行列Wは数式(4)に示すZF規範に従って計算されてもよいし、次の数式(17)に示すMMSE規範に従って計算されてもよい。
【数17】

【0056】
ウェイト乗算部104から出力されるパイロット信号16(xp)及びデータ信号17(xd)は、夫々次の数式(18)及び(19)で表される。
【数18】

【0057】
【数19】

【0058】
正規化係数乗算部105は、送信電力が一定となるような正規化係数を導出し、当該正規化係数をパイロット信号(xp)及びデータ信号(xd)に乗算する。
ここで、上記正規化係数の導出手法を検討する。例えば、図1の無線通信装置がOFDMA方式を使用する場合、図3に示すような送信信号を生成する。図3は、ユーザ1宛ての送信信号及びユーザ2宛ての送信信号の構成の一例を夫々示す。図3において、縦軸は周波数(サブキャリア)、横軸は時間(OFDMシンボル)を夫々表す。
【0059】
OFDMA方式は、利用可能な周波数帯域を分割した複数のサブキャリアを部分的にユーザに割り当てることにより、周波数軸上で複数のユーザを多重する。尚、OFDM方式は、利用可能な周波数帯域を分割した複数のサブキャリア全体をユーザに割り当てる点において、OFDMA方式とは異なる。図3において、ユーザ1及びユーザ2は、空間的に異なる送信ストリームが夫々割り当てられ、かつ、周波数方向にサブキャリアf1〜f36、時間方向にOFDMシンボルt1〜t6のリソースが共通して割り当てられている。
【0060】
以降、このように各ユーザに割り当てられる周波数及び時間リソース(本例であれば周波数方向にサブキャリアf1〜f36、時間方向にOFDMシンボルt1〜t6のリソース)を、Burst(バースト)と呼ぶ。また、各Burstにおいて、図1及び図2において図示しない符号化部及び復号化部における処理単位となる一群のリソース(本例であれば、18サブキャリア×6OFDMシンボル)をリソースブロック(RB;resource block)と呼ぶ。図3において、リソースブロックは太枠で表示され、ユーザ1及びユーザ2にはRB1(周波数方向にサブキャリアf1〜f18、時間方向にOFDMシンボルt1〜t6のリソース)及びRB2(周波数方向にサブキャリアf19〜f36、時間方向にOFDMシンボルt1〜t6のリソース)が割り当てられている。また、図3において、各OFDMシンボル中のデータ信号用のサブキャリアが無地ブロック、パイロット信号用のサブキャリアが斜線ブロックで夫々表されている。即ち、OFDMシンボル=t1において、f1,f2,f19及びf20がパイロットサブキャリア、f3〜f18及びf21〜f36がデータサブキャリアを夫々表す。
【0061】
図3に示すような送信信号において、サブキャリア及びOFDMシンボル毎(即ち、各ブロック毎)に、空間的に多重されるユーザ信号sが異なるため、数式(10)に基づき算出されるγも異なる。仮に、パイロット信号に基づき算出したγをγpとし、データ信号に基づき算出したγをγdとして、パイロット信号及びデータ信号を区別して正規化係数の乗算を行ったとしても、γpとγdとが一致しないので、受信側において実効チャネルを正確に推定できない。従って、本実施形態に係る無線通信装置は、受信側において正確に実効チャネルを推定できるように、パイロット信号及びデータ信号に対して共通の正規化係数を導出し、乗算することにより送信信号を生成する。
【0062】
以下、図1の無線通信装置がマルチキャリア伝送を行う場合における、上記共通の正規化係数の具体的導出方法を5つ例示する。尚、当然のことながら、上記共通の正規化係数の導出手法はこれらに限られない。
【0063】
(第1の導出手法)
第1の導出手法は、各リソースブロック中のパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値を、当該リソースブロック中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出する手法である。第1の導出手法を図3に示す送信信号に適用すると、RB1(OFDMシンボルt1〜t6、サブキャリアf1〜f18)に含まれる6×18=108個の信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、RB1中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算される。
【0064】
(第2の導出手法)
第2の導出手法は、各Burst中のパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値を、当該Burst中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出する手法である。第2の導出手法を図3に示す送信信号に適用すると、RB1及びRB2(OFDMシンボルt1〜t6、サブキャリアf1〜f36)に含まれる6×36=216個の信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、RB1及びRB2中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算される。
【0065】
(第3の導出手法)
第3の導出手法は、リソースブロックを時分割した各OFDMシンボルグループ中のパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値を、当該OFDMシンボルグループ中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出する手法である。尚、リソースブロックの分割態様は任意である。例えば、図3に示すような6OFDMシンボルを含むリソースブロックを分割する場合であれば、6等分割(6グループ×1OFDMシンボル)、3等分割(3グループ×2OFDMシンボル)及び2等分割(2グループ×3OFDMシンボル)のいずれでもよいし、受信側において分割ルールが既知であれば不等分割でもよい。第3の導出手法を図3に示す送信信号に適用すると、RB1を例えば2等分割したOFDMシンボルグループ(OFDMシンボルt1〜t3、サブキャリアf1〜f18)に含まれる3×18=54個の信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、当該OFDMシンボルグループ中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算される。
【0066】
(第4の導出手法)
第4の導出手法は、各Burstを時分割した各OFDMシンボルグループ中のパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値を、当該OFDMシンボルグループ中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出する手法である。尚、Burstの分割態様は任意である。例えば、図3に示すような6OFDMシンボルを含むBurstを分割する場合であれば、6等分割(6グループ×1OFDMシンボル)、3等分割(3グループ×2OFDMシンボル)及び2等分割(2グループ×3OFDMシンボル)のいずれでもよいし、受信側において分割ルールが既知であれば不等分割でもよい。第4の導出手法を図3に示す送信信号に適用すると、Burstを例えば2等分割したOFDMシンボルグループ(OFDMシンボルt1〜t3、サブキャリアf1〜f36)に含まれる3×36=108個の信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、当該OFDMシンボルグループ中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算される。
【0067】
(第5の導出方法)
第5の導出方法は、図1の無線通信装置が送信する送信信号の全体(送信フレーム)に含まれるパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値を、当該フレーム内の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出する手法である。図3においてユーザ1及びユーザ2に対してサブキャリアf1〜f36が割り当てられているが、OFDMA方式では周波数軸上でユーザを多重できるので、例えば図1の無線通信装置は上記サブキャリアf1〜f36とは異なるサブキャリアf37〜72をユーザ1及びユーザ2とは別のユーザ3及びユーザ4に割り当てることができる。この場合、フレーム全体(OFDMシンボルt1〜t6、サブキャリアf1〜f72)に含まれる6×72=432個の信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、フレーム内の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算される。
【0068】
また、図1の無線通信装置がシングルキャリア伝送を行う場合には、送信信号は例えば図4に示すように構成される。図4は、ユーザ1宛ての送信信号及びユーザ2宛ての送信信号の構成の一例を夫々示す。図4において、縦軸は周波数(キャリア)、横軸は時間(シンボル)を夫々表す。図4において、ユーザ1及びユーザ2には、空間的に異なる送信ストリームが夫々割り当てられ、かつ、周波数方向にキャリアf1、時間方向にシンボルt1〜t30のリソースが共通して割り当てられている。また、図4において、データ信号用のシンボルが無地ブロック、パイロット信号用のシンボルが斜線ブロックで夫々表されている。即ち、シンボルt1,t2,t11,t12,t21,及びt22がパイロット信号、t3〜t10,t13〜t20及びt23〜t30がデータ信号を夫々表す。
【0069】
送信信号が図4に示すようなシングルキャリア伝送用の構成であれば、シンボル全体(t1〜t30)に含まれるパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、当該シンボル全体に含まれる全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出されてもよい。また、シンボル全体(t1〜t30)を時分割した各シンボルグループ(例えば、t1〜t10、t11〜t20及びt21〜t30)中のパイロット信号及びデータ信号の各々に対して算出した正規化係数の平均値が、当該シンボルグループ中の全てのパイロット信号及びデータ信号に乗算する正規化係数として導出されてもよい。
【0070】
正規化係数乗算部105によって、以上のように導出した共通の正規化係数(1/√γavg)が乗算される結果、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末において、次の数式(20)及び数式(21)に示すパイロット信号yp及びデータ信号ydが得られる。尚、説明の簡単化のため、数式(20)及び(21)において、雑音信号を表示していない。
【数20】

【0071】
【数21】

【0072】
ユーザ1の端末及びユーザ2の端末において、パイロット信号spの値既知であるから、数式(20)に示すパイロット信号ypを当該既知の値で除することにより、実効チャネル1/√γavgを正確に推定することができる。従って、ユーザ1の端末及びユーザ2の端末において推定実効チャネルHeffを用いて数式(21)に示すパイロット信号ydをチャネル等化することにより、次の数式(22)に示すパイロット信号y'dが得られる。
【数22】

【0073】
ユーザ1の端末及びユーザ2の端末において、数式(22)に示すデータ信号y'dに対して前述したモジュロ演算を施し、摂動ベクトルddを除去することにより、データ信号sdを正確に復元することができる。
【0074】
尚、上記説明では、送信アンテナ数及びユーザ数を共に2として各ユーザに1つずつ送信ストリームを割り当てているが、送信アンテナ数を3以上として各ユーザに2以上の送信ストリームを割り当ててもよいし、ユーザ数を3以上としてもよい。また、ユーザ端末の受信アンテナを複数としてもよく、この場合は当該複数の受信アンテナによって用いられる受信フィルタ行列を考慮したチャネル情報を送信側の無線通信装置にフィードバックすればよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信装置は、データ信号に対してのみ摂動ベクトルを付加し、パイロット信号及びデータ信号に対して共通の正規化係数を乗算して送信信号を生成している。従って、受信側の無線通信装置は既知のパイロット信号値に基づいて正確な実効チャネルを推定し、当該実効チャネルを用いてチャネル等化を行うことにより、摂動ベクトルの付加されたデータ信号を正確に復元できる。即ち、本実施形態に係る無線通信装置によれば、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
図5に示すように、本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置は、上記図1に示す無線通信装置において、ウェイト乗算部104をウェイト乗算部304、ウェイト計算部110をウェイト計算部310に夫々置き換えている。以下の説明では、図5において図1と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0077】
ウェイト計算部310は、図5の無線通信装置と受信側の無線通信装置との間で予め共有されているcodebookの中から受信側の無線通信装置によって選択されたウェイト行列を示すインデックスをフィードバック情報として受け取る。ウェイト計算部310は、上記codebookにおいて上記インデックスによって指定されるウェイト行列38を摂動ベクトル付加部103及びウェイト乗算部304に入力する。ここで、codebookの中から選択されたウェイトを用いてSDMA方式に従う無線通信を行う無線通信システムでは、上記選択されたウェイト(例えば、上記ウェイト行列38)を示すインデックスをフレーム内のヘッダ部等の制御信号を示す部分に格納することにより受信側の無線通信装置へ通知することができる。
【0078】
ウェイト乗算部304は、前述したウェイト乗算部103とは異なり、変調部101からのパイロット信号13に対してウェイト乗算を行わず、摂動ベクトル付加部103からのデータ信号15に対してのみウェイト乗算を行う。ウェイト乗算部304は、ウェイト乗算済みのデータ信号17を正規化係数乗算部105に入力する。一方、上記パイロット信号13は、変調部101から正規化係数乗算部105に直接入力される。即ち、正規化係数乗算部105には、次の数式(23)に示すパイロット信号13(xp)と、次の数式(24)に示すデータ信号17(xd)とが入力される。
【数23】

【0079】
【数24】

【0080】
上記パイロット信号13(xp)及びデータ信号17(xd)は、正規化係数乗算部105によって前述した第1の実施形態と同様に共通の正規化係数1/√γavgを乗算され、受信側の無線通信装置に送信される。
【0081】
図5の無線通信装置からの送信信号を受信する無線通信装置は、例えば図6に示すように、アンテナ201、無線部202、GI除去部203、FFT部204、チャネル推定部405、チャネル等化部206及びモジュロ演算部207及び復調部208を有する。以下の説明では、図6において図2と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0082】
数式(23)及び(24)に示す送信信号を受信すると、図6の無線通信装置は、次の数式(25)及び数式(26)に示すパイロット信号yp及びデータ信号ydが共に得られる。尚、説明の簡単化のため、数式(25)及び(26)において、雑音信号を表示していない。
【数25】

【0083】
【数26】

【0084】
前述したように、数式(26)におけるWは、数式(4)に示すようなチャネル行列Hの擬似逆行列を計算して得られるウェイト行列はなく、複数の候補が予め定められたcodebook中から選択されたウェイト行列である。即ち、数式(26)におけるHWは、必ずしも単位行列とならない。従って、チャネル推定部405は、チャネル等化部206が正確にチャネル等化を行うために実効チャネル(HW×1/√γavg)を推定する必要がある。まず、チャネル推定部405は、数式(25)に示すパイロット信号と、既知のパイロット信号値とに基づき、次の数式(27)に示す推定実効チャネルを得る。
【数27】

【0085】
更に、チャネル推定部405は、図5の無線通信装置から通知されるインデックス44に基づいてウェイト行列38と同じウェイト行列(W)を計算し、数式(27)に示す推定実効チャネルに乗算して、次の数式(28)に示す推定実効チャネルを得る。
【数28】

【0086】
チャネル等化部206は、数式(28)に示す推定実効チャネルを用いて、次の数式(29)に示すように、チャネル等化を行う。
【数29】

【0087】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信装置は、データ信号に対してのみ摂動ベクトルを付加し、かつ、codebookから選択されたウェイトを乗算し、パイロット信号及びデータ信号に対して共通の正規化係数を乗算して送信信号を生成している。従って、受信側の無線通信装置は既知のパイロット信号値及び上記選択されたウェイトを示すインデックスに基づいて正確な実効チャネルを推定し、当該実効チャネルを用いてチャネル等化を行うことにより、摂動ベクトルの付加されたデータ信号を正確に復元できる。即ち、本実施形態に係る無線通信装置によれば、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施することができる。
【0088】
(第3の実施形態)
図7に示すように、本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置は、上記図1に示す無線通信装置において、摂動ベクトル付加部103を摂動ベクトル付加部503、無線部108−1,…,108−Ntを無線部508−1,…,508−Ntに夫々置き換え、制御信号生成部511を更に設けている。以下の説明では、図7において図1と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0089】
摂動ベクトル付加部503は、前述した摂動ベクトル付加部103とは異なり、パイロット信号13に対しても摂動ベクトル60を付加する。即ち、摂動ベクトル付加部503は、摂動ベクトルを付加したデータ信号15と、摂動ベクトル60を付加したパイロット信号59とをウェイト乗算部104に入力する。また、摂動ベクトル付加部503は、パイロット信号13に付加した摂動ベクトル60を制御信号生成部511に入力する。
【0090】
ウェイト乗算部104は、ウェイト行列18を、摂動ベクトル付加部503からのパイロット信号59及びデータ信号15に乗算する。ウェイト乗算部104は、ウェイト乗算済みのパイロット信号56及びウェイト乗算済みのデータ信号17を正規化係数乗算部105に入力する。
【0091】
制御信号生成部511は、摂動ベクトル付加部503から入力される摂動ベクトル60を示す情報を受信側の無線通信装置に通知するための制御信号61を生成する。尚、制御信号61を生成することの技術的意義は後述する。制御信号生成部511は、制御信号61を無線部508−1,…,508−Ntに入力する。
【0092】
無線部508−1,…,508−Ntは、前述した無線部108−1,…,108−Ntの行う送信処理に加えて、上記制御信号61に対する送信処理を行う。制御信号61は、無線部508−1,…,508−Ntによって、例えば送信信号のプリアンブルに格納されてアンテナ109−1,…,109−Ntより送信される。
【0093】
以下、制御信号61を生成することの技術的意義を説明する。
前述したように、図7の無線通信装置は、パイロット信号13に対しても摂動ベクトル60を付加している。一方、受信側の無線通信装置にとって上記摂動ベクトル60は未知の値である。従って、受信側の無線通信装置は、数式(16)から明らかなように正確な実効チャネルを推定できない。しかしながら、受信側の無線通信装置に上記摂動ベクトル60を通知できれば、受信側の無線通信装置は通知された摂動ベクトル60を既知のパイロット信号に付加することにより、正確な実効チャネルを推定できる。即ち、制御信号61を生成することにより、送信側の無線通信装置においてパイロット信号及びデータ信号の両方に摂動ベクトルを付加する場合にも、受信側の無線通信装置において正確な実効チャネルを推定できる。
【0094】
尚、制御信号61は、摂動ベクトル60そのものの値でもよいが、例えば摂動間隔τを単位としてパイロット信号13が元の信号点から実軸方向及び虚軸方向にどの程度移動しているかを夫々示す移動度NRe及び移動度NImであってもよい。移動度NRe及び移動度NImは、次の数式(30)及び(31)により夫々算出できる。
【数30】

【0095】
【数31】

【0096】
数式(30)及び数式(31)において、dpは摂動ベクトル60を表し、Re()は括弧内の複素数値の実部を表し、Im()は括弧内の複素数値の虚部を表す。尚、変調部101がパイロット系列11に適用する変調方式は受信側にとって既知であるので、受信側は当該変調方式に基づき摂動間隔τを算出できる。従って、受信側は、通知された移動度NRe及び移動度NImと、算出した摂動間隔τとを用いて摂動ベクトルddを復元できる。移動度NRe及び移動度NImは整数値なので、摂動ベクトル60そのものの値に比べて僅かなビット数で表現可能である。即ち、摂動ベクトル60そのものの値を制御信号61とするよりも、上記移動度NRe及び移動度NImを制御信号61としたほうがオーバーヘッドを抑えられる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信装置は、パイロット信号に対しても摂動ベクトルを付加し、当該摂動ベクトルを受信側に通知するための制御信号を生成している。従って、受信側の無線通信装置は既知のパイロット信号値と当該制御信号によって通知される摂動ベクトルに基づいて正確な実効チャネルを推定し、当該実効チャネルを用いてチャネル等化を行うことにより、摂動ベクトルの付加されたデータ信号を正確に復元できる。即ち、本実施形態に係る無線通信装置によれば、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施することができる。
【0098】
(第4の実施形態)
図8に示すように、本発明の第4の実施形態に係る無線通信装置は、上記図5に示す無線通信装置において、正規化係数乗算部105を正規化係数乗算部805、無線部108−1,…,108−Ntを無線部808−1,…,808−Ntに夫々置き換え、制御信号生成部811を更に設けている。以下の説明では、図8において図5と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0099】
変調部101から出力されるパイロット信号13は、正規化係数乗算部805に入力される。正規化係数乗算部805は、入力されるデータ信号17及びパイロット信号13に基づき所定の導出方法(例えば、前述した各種導出方法)に従って正規化係数80を算出する。正規化係数乗算部805は、上記正規化係数80をデータ信号17にのみ乗算する。即ち、正規化係数乗算部805は、上記正規化係数80を算出するためにパイロット信号13を利用するものの、当該パイロット信号13には正規化係数80を乗算しない。正規化係数乗算部805は、パイロット信号13と、正規化係数80を乗算済みのデータ信号とをIFFT部106−1,…,106−Ntに入力する。また、正規化係数乗算部805は、算出した正規化係数80を制御信号生成部811に入力する。
【0100】
制御信号生成部811は、正規化係数乗算部805によってデータ信号17に乗算される正規化係数80を示す情報を受信側の無線通信装置に通知するために制御信号81を生成する。尚、制御信号81を生成することの技術的意義は後述する。制御信号生成部811は、制御信号81を無線部808−1,…,808−Ntに入力する。
【0101】
無線部808−1,…,808−Ntは、前述した無線部108−1,…,108−Ntの行う送信処理に加えて、上記制御信号81に対する送信処理を行う。制御信号81は、無線部808−1,…,808−Ntによって、例えば送信信号のプリアンブルに格納されてアンテナ109−1,…,109−Ntより送信される。
【0102】
図8の無線通信装置からの送信信号を受信する無線通信装置は、例えば図9に示すように、アンテナ201、無線部202、GI除去部203、FFT部204、チャネル推定部905、チャネル等化部206及びモジュロ演算部207及び復調部208を有する。以下の説明では、図9において図6と同一部分には同一符号を付して示し、異なる部分を中心に述べる。
【0103】
以下、制御信号81を生成することの技術的意義を説明する。
前述したように、図8の無線通信装置は、パイロット信号13に対して正規化係数80を乗算せずに送信処理を行う。この場合、受信側の無線通信装置は、次の数式(32)に示すパイロット信号ypを受信する。
【数32】

【0104】
尚、図8の無線通信装置は、データ信号に関する送信処理において前述した図5の無線通信装置と同様であるので、受信側の無線通信装置が受信するデータ信号ydは数式(26)で表すことができる。
【0105】
数式(26)によれば、受信側の無線通信装置がデータ信号21のチャネル等化を適切に行うためには、実効チャネル(HW×1/√γavg)を推定する必要がある。まず、チャネル推定部905は、数式(32)に示すパイロット信号と、既知のパイロット信号値とに基づき、次の数式(33)に示す推定実効チャネルを得る。
【数33】

【0106】
更に、チャネル推定部905は、図8の無線通信装置から通知されるcodebookのインデックス44に基づいて導出されるウェイト行列38と同じウェイト行列(W)と、図8の無線通信装置から制御信号81を介して通知される正規化係数91(1/√γavg)とを、数式(33)に示す推定実効チャネルに乗算して、次の数式(34)に示す推定実効チャネルを得る。
【数34】

【0107】
チャネル等化部206は、数式(34)に示す推定実効チャネルを用いて、次の数式(35)に示すように、チャネル等化を行う。
【数35】

【0108】
数式(35)から明らかなように、パイロット信号13に対して正規化係数80が乗算されなくても、受信側の無線通信装置は制御信号81を介して当該正規化係数80(91)を取得できるので適切にチャネル等化を行うことができる。
【0109】
以上説明したように、本実施形態に係る無線通信装置は、データ信号に対してのみ摂動ベクトルを付加し、かつ、codebookから選択されたウェイトを乗算し、データ信号及びパイロット信号に基づき導出した正規化係数を乗算して送信信号を生成し、更に上記正規化係数を通知するための制御信号を生成している。従って、受信側の無線通信装置は既知のパイロット信号値及び上記選択されたウェイトを示すインデックス及び上記制御信号を介して通知される正規化係数に基づいて正確な実効チャネルを推定し、当該実効チャネルを用いてチャネル等化を行うことにより、摂動ベクトルの付加されたデータ信号を正確に復元できる。即ち、本実施形態に係る無線通信装置によれば、摂動ベクトルを用いた無線通信を現に実施することができる。
【0110】
尚、本発明は上記各実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、各実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図2】図1の無線通信装置の送信信号を受信可能な無線通信装置を示すブロック図。
【図3】図1の無線通信装置の送信信号におけるデータ信号及びパイロット信号の信号構成の一例を示す図。
【図4】図1の無線通信装置の送信信号におけるデータ通信及びパイロット信号の信号構成の一例を示す図。
【図5】第2の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図6】図5の無線通信装置の送信信号を受信可能な無線通信装置を示すブロック図。
【図7】第3の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図8】第4の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図9】図8の無線通信装置の送信信号を受信可能な無線通信装置を示すブロック図。
【符号の説明】
【0112】
11・・・パイロット系列
12・・・データ系列
13・・・パイロット信号
14・・・データ信号
18・・・ウェイト行列
21・・・データ信号
22・・・パイロット信号
23・・・推定実効チャネル
38・・・ウェイト行列
43・・・推定実効チャネル
44・・・インデックス
60・・・摂動ベクトル
61・・・制御信号
80・・・正規化係数
81・・・制御信号
91・・・正規化係数
101,102・・・変調部
103・・・摂動ベクトル付加部
104・・・ウェイト乗算部
105・・・正規化係数乗算部
106−1,…,106−Nt・・・IFFT部
107−1,…,107−Nt・・・GI付加部
108−1,…,108−Nt・・・無線部
109−1,…,109−Nt・・・アンテナ
110・・・ウェイト計算部
201・・・アンテナ
202・・・無線部
203・・・GI除去部
204・・・FFT部
205・・・チャネル推定部
206・・・チャネル等化部
207・・・モジュロ演算部
208・・・復調部
304・・・ウェイト乗算部
310・・・ウェイト計算部
405・・・チャネル推定部
503・・・摂動ベクトル付加部
508−1,…,508−Nt・・・無線部
511・・・制御信号生成部
805・・・正規化係数乗算部
811・・・制御信号生成部
808−1,…,808−Nt・・・無線部
905・・・チャネル推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパイロット信号及び第1のデータ信号を含む第1の送信信号のうち前記第1のデータ信号に対して摂動ベクトルを付加し、第2のパイロット信号及び第2のデータ信号を含む第2の送信信号を得る摂動ベクトル付加部と、
前記第2の送信信号のうち前記第2のデータ信号に対して、前記受信側における干渉を除去するためのウェイトを乗算し、第3のパイロット信号及び第3のデータ信号を含む第3の送信信号を得るウェイト乗算部と、
前記第3の送信信号のうち前記第3のデータ信号に対して、総送信電力を正規化するための共通の正規化係数を乗算し、第4のパイロット信号及び第4のデータ信号を含む第4の送信信号を得る正規化係数乗算部と、
前記第4の送信信号を送信する送信部と
を具備することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記摂動ベクトル付加部は前記第1の送信信号のうち前記第1のデータ信号に対してのみ前記摂動ベクトルを付加し、
前記ウェイト乗算部は前記第2の送信信号のうち前記第2のパイロット信号及び前記第2のデータ信号の両方に対して前記ウェイトを乗算し、
前記正規化係数乗算部は、前記第3の送信信号のうち前記第3のパイロット信号及び前記第3のデータ信号の両方に対して前記正規化係数を乗算する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記摂動ベクトル付加部は前記第1の送信信号のうち前記第1のデータ信号に対してのみ前記摂動ベクトルを付加し、
前記ウェイト乗算部は、前記受信側との間で予め共有される複数のウェイト候補のうち前記受信側からのフィードバック情報によって指定される1つのウェイト候補を前記ウェイトとして、前記第2の送信信号のうち前記第2のデータ信号に対してのみ乗算し、
前記正規化係数乗算部は、前記第3の送信信号のうち前記第3のパイロット信号及び前記第3のデータ信号の両方に対して前記正規化係数を乗算する
ことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記摂動ベクトル付加部は前記第1の送信信号のうち前記第1のパイロット信号及び前記第1のデータ信号の両方に対して前記摂動ベクトルを付加し、
前記正規化係数乗算部は、前記第3の送信信号のうち前記第3のパイロット信号及び前記第3のデータ信号の両方に対して前記正規化係数を乗算し、
前記第1のパイロット信号に付加された摂動ベクトルを示す情報を前記受信側に通知するために前記第4のパイロット信号と共に前記送信部によって送信される制御信号を生成する制御信号生成部を更に具備することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記正規化係数乗算部は、前記第3の送信信号のうち前記第3のデータ信号に対してのみ前記正規化係数を乗算し、
前記正規化係数を示す情報を前記受信側に通知するために前記第4のパイロット信号と共に前記送信部によって送信される制御信号を生成する制御信号生成部を更に具備することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記正規化係数は、前記受信側に割り当てられる各リソースブロック内で共通であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記正規化係数は、前記受信側に割り当てられる各バースト内で共通であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記正規化係数は、前記受信側に割り当てられる各リソースブロックを時分割した各シンボルグループ内で共通であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記正規化係数は、前記受信側に割り当てられる各バーストを時分割した各シンボルグループ内で共通であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記正規化係数は、各送信フレーム内で共通であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の無線通信装置。
【請求項11】
第1のパイロット信号及び第1のデータ信号を含む第1の送信信号のうち前記第1のデータ信号に対して摂動ベクトルを付加し、第2のパイロット信号及び第2のデータ信号を含む第2の送信信号を得ることと、
前記第2の送信信号のうち前記第2のデータ信号に対して、前記受信側における干渉を除去するためのウェイトを乗算し、第3のパイロット信号及び第3のデータ信号を含む第3の送信信号を得ることと、
前記第3の送信信号のうち前記第3のデータ信号に対して、総送信電力を正規化するための共通の正規化係数を乗算し、第4のパイロット信号及び第4のデータ信号を含む第4の送信信号を得ることと、
前記第4の送信信号を送信することと
を具備することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−114605(P2010−114605A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284745(P2008−284745)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】