説明

無線通話システム、それに用いる親機及び子機、並びに送話データ中継方法

【課題】 複数の子機のうちの一部の子機による通話を優先させることができるとともに、一部の子機を優先させた状況でも、他の子機による送話を可能とする無線通話システムを提供する。
【解決手段】 無線通話システム(1)は、親機(100)及び複数の子機(200a)〜(200g)を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機(100)を介して無線通話を行なう無線通信システムである。送話側の子機は、送話データを送信し、親機(100)は、送話側の子機から送信された送話データを受信して、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で前記送話データにスロットを割り当てて、前記送話データを送信する。受話側の子機は、親機(100)から送信された送話データを受信して、前記送話データを再生する。通話モードには、親機(100)が、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部の前記スロットを割り当てる第1の通話モードが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通話システム及び送話データ中継方法に関し、特に、複数の子機が親機を介して互いに無線通話を行なう無線通話システム、及びその無線通話システムの親機にて実行される送話データ中継方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線通話システムとして、複数の子機と親機を備え、各子機が親機を介して他の子機と無線通話を行なう無線通話システムが知られている。このような無線通話システムは、例えば飲食店における無線通話システムとして応用される。以下、この種の無線通話システムが飲食店、特にドライブスルーを備えたファストフード店で用いられる場合を例に、従来の無線通話システムを説明する。
【0003】
この種の無線通話システムがファストフード店で用いられる場合には、親機が店内の適当な箇所(例えば、注文カウンタ付近)に設置される。子機には、マネージャ(店長)、サブマネージャ(副店長)、クラーク(一般店員)を含むスタッフが携帯する携帯型インターカムとしての子機、注文確認用ディスプレイ(Confirmation Order Display:COD)を含むドライブスルーシステムの一部としての子機、電話機に接続される子機、キッチン内に設置される子機等が含まれる。
【0004】
無線通話システムには、通話モードとして、通常モードとマネージャモードがある。通常モードでは、送話をする子機に対して、その都度チャンネルが割り当てられる。複数のチャンネルが用意されている場合には、複数の子機が同時に送話できる。例えば、複数のクラークが同時にキッチンと通話できる。
【0005】
但し、無線送話システムにおいて割り当て可能なチャンネル数には、限度がある。従って、通常モードでは、マネージャが、他のスタッフに緊急に連絡をしたい場合にも、用意されているすべてのチャンネルが既に他の子機の送話に使用されており、割り当て可能なチャンネルがなければ、マネージャから他のスタッフへの緊急の送話はできないことになる。
【0006】
これに対して、マネージャモードでは、他のスタッフが送話中であった場合にも、強制的にマネージャの音声に切り替えられて、他の子機は一切送話できないようになり、マネージャの音声が他の子機に一方的に放送(通報)される。よって、マネージャモードでは、マネージャは緊急の連絡を確実に他のスタッフに伝えることができる。
【0007】
図11は、従来の無線通話システムでの送話の際のパケット構成を示す図である。図11を参照して、従来の無線通話システムにおける通常モードとマネージャモードを説明する。図11において、(a)は通常モードの場合のパケット構成を示し、(b)はマネージャモードの場合のパケット構成を示している。いずれのモードでも、時分割複信(TDD)方式でパケット通信が行なわれる。利用可能なチャンネル数(周波数帯域数)は、2つであるとする。
【0008】
図11(a)の例では、通常モードで、クラーク1とクラーク2がそれぞれキッチンと通話をしている。クラーク1の通話には、チャンネル1(f1MHz)が割り当てられ、クラーク2の通話には、チャンネル2(f2MHz)が割り当てられている。図11(a)は、用意された2つのチャンネルがすべてクラークによって使用されている状況を示している。
【0009】
このような状況で、マネージャがスタッフに対して緊急に送話をしたい場合は、マネージャは、親機を操作することで、通話モードをマネージャモードに設定する。無線通話システムがマネージャモードになると、図11(b)に示すように、クラーク1の通話は強制的に終了させられ、クラーク1が使用していたチャンネル1の下りスロットは、強制的にマネージャによって専有される。また、チャンネル2を使用して行なわれていたクラーク2の通話も強制的に終了させられ、クラーク2が使用していたチャンネル2は強制的にチャンネル1に切り替えられる。
【0010】
本願発明に関連する技術として、特許文献1及び特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−260992号公報
【特許文献2】特開2006−140555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の通信システムでは、マネージャからの緊急の送話を確保するために通話モードをマネージャモードに設定すると、マネージャの送話が強制的にチャンネルを専有する。従って、通常モードでクラークがキッチンへ送話している最中に通話モードがマネージャモードに切り替わると、クラークからキッチンへの送話が強制的に終了してしまうという課題があった。また、マネージャモードが選択されているときには、他のスタッフからは送話ができないという課題もあった。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、親機と複数の子機を備え、各子機が親機を介して他の子機と無線通話を行なう無線通話システムにおいて、一部の子機(例えば、飲食店においてマネージャが携帯する子機)による送話を優先させることができるとともに、一部の子機を優先させた状況でも、他の子機による送話を可能とする無線通話システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の従来の課題を解決するために、本発明の無線通話システムは、親機及び複数の子機を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムであって、送話側の子機は、送話データを送信し、親機は、送話側の子機から送信された送話データを受信して、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で送話データにスロットを割り当てて、送話データを送信し、受話側の子機は、親機から送信された送話データを受信して、送話データを再生し、通話モードは、親機が、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを含む構成を有している。
【0015】
本発明の別の態様は、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムに用いられる親機であって、送話側の子機から送信された送話データを受信する受信部と、通話モードを設定する制御部と、制御部にて設定された通話モードに従って、時分割多元接続方式で送話データにスロットを割り当てて、受話側の子機に送信する送話データを生成するマルチプレクサと、前記マルチプレクサにて生成された送話データを送信する送信部とを備え、通話モードは、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを含む構成を有している。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、送話側の子機が、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で送話側の子機から送信された送話データにスロットを割り当てて送話データを送信する親機を介して、受話側の子機と無線通話を行なう無線通話システムに用いられる子機であって、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを親機が通話モードとして設定するための優先送話の指示を入力する通話モード指示操作部と、優先送話の指示を送信する送信部とを備えた構成を有している。
【0017】
本発明のさらに別の態様は、親機及び複数の子機を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムにおいて、親機にて送話データの中継を行う送話データ中継方法であって、送話側の子機から送信された送話データを受信するステップと、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で送話データにスロットを割り当てて、受信側の子機に送信する送話データを生成するステップと、送話データを送信するステップとを含み、通話モードは、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを含む構成を有している。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、親機が時分割多元接続方式を採用して、第1の通話モードにおいて、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てるので、親機は優先度の高い子機の送話データを確実に送信できるとともに、その他のスロットを用いて、優先度の低い子機も通話が可能になる。
【0019】
以下に説明するように、本発明には他の態様が存在する。したがって、この発明の開示は、本発明の一部の提供を意図しており、ここで記述され請求される発明の範囲を制限することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、本発明の実施の形態の無線通話システムにおけるTALKモードのパケット構成を示す図 図1(b)は、本発明の実施の形態の無線通話システムにおけるPAGEモードのパケット構成を示す図
【図2】図2は、本発明の実施の形態における無線通話システムの全体構成を示す図
【図3】図3は、本発明の実施の形態におけるマネージャ用子機及びサブマネージャ用子機の構成図
【図4】図4は、本発明の実施の形態におけるクラーク用子機の構成図
【図5】図5は、本発明の実施の形態における外線電話用子機の構成図
【図6】図6は、本発明の実施の形態におけるキッチン用子機の構成図
【図7】図7は、本発明の実施の形態におけるドライブスルー用子機の構成図
【図8】図8は、本発明の実施の形態における親機の構成図
【図9】図9は、本発明の実施の形態におけるTALKモードの拡声ルーティングテーブルを示す図
【図10】図10は、本発明の実施の形態におけるPAGEモードの拡声ルーティングテーブルを示す図
【図11】図11(a)は、従来の無線通話システムにおける通常モードのパケット構成を示す図 図11(b)は、従来の無線通話システムにおけるマネージャモードのパケット構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】

以下に、本発明の詳細な説明を述べる。以下に説明する実施の形態は本発明の単なる例であり、本発明は様々な態様に変形することができる。従って、以下に開示する特定の構成および機能は、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0022】
本発明の実施の形態の無線通話システムは、親機及び複数の子機を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムである。送話側の子機は、送話データを送信する。親機は、送話側の子機から送信された送話データを受信して、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で送話データにスロットを割り当てて、送話データを送信する。受話側の子機は、親機から送信された送話データを受信して、送話データを再生する。通話モードは、親機が、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを含む構成を有している。
【0023】
この構成により、親機が時分割多元接続方式を採用して、第1の通話モードにおいて、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てるので、親機は優先度の高い子機の送話データを確実に送信できるとともに、その他のスロットを用いて、優先度の低い子機も通話が可能になる。よって、例えば、無線通話システムがレストランに応用される場合において、権限を有する者(例えば、レストランのマネージャ)が優先度の高い子機を使用することで、第1の通信モードでは、当該権限を有する者の送話データが優先的に他の子機に送信されるとともに、空いているスロットを用いて、他の者(例えば、レストランのクラーク)が使用する子機からの送話も同時に実現できる。
【0024】
上記の無線通話システムにおいて、通話モードは、さらに、親機が、前記送話側の子機の優先度に関らず、送話側の子機から受信した送話データにスロットを割り当てる第2の通話モードを含んでよい。
【0025】
この構成により、第2の通話モードでは、優先度の高い子機の送話データにも、優先度の低い子機の送話データにも同等の優先度で(いずれも優先することなく)、スロットを割り当てることができる。
【0026】
上記の無線通話システムにおいて、複数の子機は、優先度が高い特定の子機と、優先度が低い一般の子機とを含んでよい。親機は、通話モードとして第1の通話モードが設定されているときに、特定の子機の送話データに優先的にスロットを割り当ててよい。
【0027】
この構成により、親機は、複数の子機を特定の子機と一般の子機とに分けて管理し、第1の通話モードにおいて、特定の子機の送話データに優先的にスロットが割り当てることができる。例えば、無線通話システムがレストランに応用される場合には、レストランのマネージャやサブマネージャ等の権限を有する者が使用する子機を優先度の高い特定の子機とし、それ以外の子機(例えば、クラークが使用する子機)を優先度の低い一般の子機とすることができる。
【0028】
上記の無線通話システムにおいて、特定の子機は、親機に対して優先送話を指示する機能を有していてよい。この場合、親機は、優先送話の指示に応じて、通話モードを第1の通話モードに設定してよい。
【0029】
この構成により、高い優先度が与えられた特定の子機から、通話モードを第1通話モードとして、自己の送話データを優先して親機から子機に送信することを指示することができる。よって、権限を有する者(例えば、無線通話システムがレストランに応用される場合のレストランのマネージャ)が特定の子機を使用することで、当該権限を有する者が強制的に他の子機(例えば、無線通話システムがレストランに応用される場合のレストランのクラーク)に対して送話することができる。
【0030】
上記の無線通話システムにおいて、特定の子機及び一般の子機のいずれもが、親機に対して優先送話を指示する機能を有してもよい。この場合、親機は、優先送話の指示のうち、特定の子機から受けた優先送話の指示のみに応じて、通話モードを第1の通話モードに設定してよい。
【0031】
この構成により、特定の子機と一般の子機を同一の構成とすることができ、複数の子機のうちの任意の子機を特定の子機又は一般の子機とすることができる。
【0032】
上記の無線通話システムにおいて、送話側の子機は、送話データとともに、自己を特定する識別情報を送信してよい。親機は、いずれの子機がいずれの子機に対して送話可能であるかを規定する拡声ルーティングテーブルを、第1の通話モード及び第2の通話モードのそれぞれについて有し、送話側の子機から送話データとともに送信された識別情報に基づいて、当該送話データを送信した子機を特定し、設定された通話モードに対応する拡声ルーティングテーブルに従って、特定された子機の送話データにスロットを割り当ててよい。
【0033】
この構成により、第1の通信モードにて考慮する優先度を親機側で管理することができ、また、その管理もテーブルに従って拡声ルーティングを決定するという簡単な方法で実現できる。
【0034】
上記の無線通話システムにおいて、拡声ルーティングテーブルは、書き換え可能であってよい。
【0035】
この構成により、拡声ルーティングテーブルを書き換えることで、いずれの子機をいずれの子機より優先させるかを臨機応変に設定できる。これにより、上記のように複数の子機の各々について特定の子機とするか一般の子機とするかを任意に設定した場合にも、第1の通話モードにおいて特定の子機の送話データを優先的にスロットに割り当てるような拡声ルーティングテーブルを実現できる。
【0036】
上記の無線通話システムにおいて、親機は、時分割多元接続/時分割複信方式で、1つのチャンネルを利用して、子機との間で送話データを送受信してよい。
【0037】
この構成により、1つのチャンネルのみを利用して、複数の子機と親機との間の送受信を行なうことができる。
【0038】
本実施の形態の親機は、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムに用いられる親機であって、送話側の子機から送信された送話データを受信する受信部と、通話モードを設定する制御部と、制御部にて設定された通話モードに従って、時分割多元接続方式で送話データにスロットを割り当てて、受話側の子機に送信する送話データを生成するマルチプレクサと、送話データを送信する送信部とを備えた構成を有している。通話モードは、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを含む構成を有している。
【0039】
この構成によっても、時分割多元接続方式を採用して、第1の通話モードにおいて、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てるので、優先度の高い子機の送話データを確実に送信できるとともに、その他のスロットを用いて、優先度の低い子機も通話が可能になる。
【0040】
本実施の形態の子機は、送話側の子機が、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で送話側の子機から送信された送話データにスロットを割り当てて送話データを送信する親機を介して、受話側の子機と無線通話を行なう無線通話システムに用いられる子機であって、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを親機が通話モードとして設定するための優先送話の指示を入力する通話モード指示操作部と、優先送話の指示を送信する送信部とを備えた構成を有している。
【0041】
この構成により、子機から親機に対して、第1の通信モードの設定を指示できる。
【0042】
本実施の形態の送話データ中継方法は、親機及び複数の子機を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムにおいて、親機にて送話データの中継を行う送話データ中継方法であって、送話側の子機から送信された送話データを受信するステップと、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で送話データにスロットを割り当てて、受信側の子機に送信する送話データを生成するステップと、送話データを送信するステップとを含む。通話モードは、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てる第1の通話モードを含む。
【0043】
この構成によっても、親機にて時分割多元接続方式を採用して、第1の通話モードにおいて、送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てるので、親機から優先度の高い子機の送話データを確実に送信できるとともに、その他のスロットを用いて、優先度の低い子機も通話が可能になる。
【0044】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。以下では、本発明の無線通話システムが、飲食店、特に、ドライブスルーを備えたファストフード店で利用される場合を例にとって説明するが、本発明の無線通話システムは、飲食店以外にも、例えば娯楽施設、災害救助現場等の他の状況でも応用され得る。
【0045】
図2は、本発明の実施の形態における無線通話システムの構成図である。図2において、無線通話システム1は、親機100と複数の子機200a〜200gを含んで構成される。親機100と各子機200a〜200gとの間は、無線で送話データが送受信される。即ち、各子機200a〜200g同士の間の無線通話は、親機100を介して行なわれる。親機100は、子機200a〜200gからの無線電波が届く位置に設置される。親機100は、例えば、ファストフード店では、注文カウンタ付近に設置されてよい。
【0046】
図2左側に示す4つの子機200a〜200dは、子機本体200a1〜200d1とヘッドセット200a2〜200d2からなる携帯型のインターカムである。子機本体200a1〜200d1は、ホルダに入れられて使用者の腰部に装着される。ヘッドセット200a2〜200d2は、使用者の頭部に装着可能な構成を有し、スピーカ(イヤホン)とマイクを備えている。子機200aはマネージャ用子機であり、子機200bはサブマネージャ用子機であり、子機200cはクラーク1用子機であり、子機200dはクラーク2用子機である。
【0047】
子機200eは、外線電話用子機である。外線電話用子機200eは電話機に接続されている。外線電話用子機200eは、他の子機から受けた音声を電話の相手へ送信するために、当該音声を電話機に入力する。外線電話用子機200eは、電話機が電話の相手から受けた音声を、電話機から取り出して他の子機に送る。なお、外線電話用子機200eは、電話機に組み込まれていてもよい。
【0048】
子機200fは、キッチン用子機である。他のスタッフ用の子機200a〜200dとは異なり、子機200fは、キッチンの適当な箇所に設置される。これは、キッチンのスタッフがヘッドセットをすることは衛生上好ましくないからである。子機200fは、スピーカとマイクを含む構成を有してもよいし、スピーカを含むがマイクを含まない(音声出力のみの)構成であってもよい。
【0049】
子機200gは、ドライブスルー用子機である。ドライブスルー用子機200gは、ドライブスルーシステムの一部であり、ドライブスルー利用客がマイクに音声を入力できるように、店舗外側のドライブスルー接客(注文)場所に設置される。なお、本実施の形態の説明において、ドライブスルーシステムは、注文確認用ディスプレイ、カメラ、スピーカ、車両センサ等を含んで構成される。
【0050】
以下、図3〜図7を参照して、各子機200a〜200gの構成を説明する。各子機200a〜200gの説明において、同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0051】
図3は、本発明の実施の形態におけるマネージャ用子機及びサブマネージャ用子機の構成図である。マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bは、同じ構成を有している。マネージャ用子機200a、サブマネージャ用子機200bは、それぞれ子機本体200a1、200b1とヘッドセット200a2、200b2とが接続されてなる。
【0052】
子機本体200a1、200b1は、送信部201、受信部202、パケット生成部203、メモリ204、デマルチプレクサ205、符号化部206、制御部207、及び復号化部208を備えている。ヘッドセット200a2、200b2は、マイク209、送話ボタン210、優先送話ボタン211、及びスピーカ(イヤホン)212を備えている。
【0053】
子機200a、200bは、送話ボタン210又は優先送話ボタン211がオンになった状態で送話が可能になる。送話ボタン210と優先送話ボタン211は、いずれか一方がオンであるときに他方がオフになるようにして、両者が同時にオンにならないように構成されてもよいし、両者が同時にオンになり得るように構成されてもよい。また、送話ボタン210や優先送話ボタン211は、使用者が手で押下しているときだけオンの状態を保ち、使用者が手を離すとオフになるよう構成されてもよいし、使用者が一度操作するとオンの状態になり、使用者がオフにする操作をするまでオンの状態を維持するよう構成されてもよい。優先送話ボタン211は、本発明の「通話モード指示操作部」に相当する。
【0054】
送話ボタン210及び優先送話ボタン211は、制御部207に対して、オンの状態であることを示す信号を出力する。制御部207は、送話ボタン210及び優先送話ボタン211のいずれかがオンであるときに送話のための制御を行う。また、制御部207は、送話ボタン210のオン/オフ状態及び緊急ボタン211のオン/オフ状態を示すボタン状態情報をパケット生成部203に出力する。メモリ204には、自己のID情報が記憶されている。このボタン状態情報は、本発明の「優先送信の指示」に相当する。
【0055】
マイク209は、使用者の音声を電気信号に変換する。符号化部206は、マイク209から入力された音声を符号化して音声データを生成する。パケット生成部203は、符号化された音声データと制御データとを含む送話データのパケットを生成する。制御データには、メモリ204から読み出した自己を特定する識別情報(以下、「ID情報」という)、及びボタン状態情報(送話ボタン210のオン/オフ状態及び優先送話ボタン211のオン/オフ状態の情報)が含まれる。送信部201は、生成された送話データのパケットを送信する。このボタン状態情報に優先送話ボタン211がオンであるという情報が含まれる場合は、ボタン状態情報は、本発明の「優先送信の指示」に相当する。
【0056】
受信部202は、親機100から送信された送話データを受信して、これを再生する。後述するように、親機100は、送話データのパケットを時分割多元接続/時分割複信(TDMA/TDD)方式で各子機200a〜200gと無線通信を行う。デマルチプレクサ(DEMUX)205は、メモリ204に記憶されている自己のID情報を参照して、受信した送話データに含まれる自分宛のパケット(宛先として指定されているID情報が自己のID情報と一致するパケット)を取り出して、復号化部208に出力する。復号化部208は、送話データを復号化し、制御データは制御部207に、音声データはスピーカに212に出力する。スピーカ212は、音声データを音声に変換して出力する。
【0057】
図4は、本発明の実施の形態におけるクラーク用1子機及びクラーク2用子機の構成図である。クラーク1用子機200c、クラーク2用子機200dは、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bと同様にそれぞれ、子機本体200c1、200d1と、ヘッドセット200c1、200d2とからなる。クラーク1用子機200cとクラーク2用子機200dとは同じ構成を有している。
【0058】
クラーク1用子機200c及びクラーク2用子機200dは、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bと比較すると、優先送話ボタン211を備えていない。後述するように、クラーク1用子機200c及びクラーク2用子機200dは、優先送話をすることが許されていないからである。クラーク1用子機200c及びクラーク2用子機200dにおけるその他の構成は、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bと同じである。
【0059】
図5は、本発明の実施の形態における外線電話用子機の構成図である。外線電話用子機200eは、上述の子機200a〜200dと比較すると、子機本体とヘッドセットに分かれておらず、一体的に構成されている。構成要素は、子機200a〜200dと同様であるが、送話ボタン210及び優先送話ボタン211を備えていない。また、マイク209の代わりに、音声入力部213を備えており、スピーカ212の代わりに、音声出力部214を備えている。
【0060】
音声入力部213は、電話機の音声出力部に接続されて、電話機の音声出力部から出力された外線電話の相手からの音声を入力する。音声出力部214は、電話機の音声出力部に接続されて、復号化部208で復号化された音声データを電話機の音声入力部に出力する。制御部207は、電話機の制御部に接続されている。
【0061】
外線電話がかかってきたときは、制御部207が電話機の制御部を制御して外線電話を受けるとともに、符号化部206や復号化部208の制御を開始してもよいし、電話機の制御部が外線電話を受けたことを制御部207に通知して、制御部207がこの通知に応じて符号化部206や復号化部208の制御を開始してもよい。外線電話用子機200eのその他の構成は、子機200a〜200dと同じである。なお、図5では、電話機に接続されるタイプの外線電話用子機200eを示しているが、上述のように、外線電話用子機200eは、電話機に内蔵されていてもよい。
【0062】
図6は、本発明の実施の形態におけるキッチン用子機の構成図である。キッチン用子機200fも、外線電話用子機200eと同様に、一体的に構成される。キッチン用子機200fの構成要素は、クラーク1用子機200c及びクラーク2用子機200dと同じである。なお、上述のように、キッチン用子機200fは、キッチンのスタッフの音声を入力する機能を備えていなくてもよい。その場合には、送話ボタン210、マイク209、符号化部206、パケット生成部203、及び送信部201の構成を省略できる。
【0063】
図7は、本発明の実施の形態におけるドライブスルー用子機の構成図である。ドライブスルー用子機200gは、送信部201、パケット生成部203、メモリ204、符号化部206、制御部207、及びマイク209を備えている。ドライブスルー用子機200gは、音声を出力する機能を備えていない。
【0064】
ドライブスルー用子機200gは、送信ボタン210も備えていない。制御部207には、ドライブスルーシステムの車両センサが接続される。ドライブスルーシステムの車両センサが車両を検知すると、制御部207に検知信号を送られ、制御部207はこの検知信号に基づいて、マイク209、符号化部206等の音声を入力する機能を起動する。
【0065】
なお、ドライブスルーシステムは、店内でドライブスルー利用客に対する接客をするクラークが使用するマイクと、当該マイクに接続されてドライブスルー利用客に向けられたスピーカを備えていてもよい。但し、このマイクとスピーカは、無線通話システム1の一部としてではなく、無線通話システム1とは別のシステムとして構成される。これは、マネージャやキッチンのスタッフを含む任意のスタッフがドライブスルーの利用客に対して送話をできるようにする必要はないからである。なお、無線通話システム1にドライブスルー用子機200gを含めるのは、無線通話システム1を利用して、ドライブスルー利用客の音声を、ドライブスルー利用客に対して直接接客をするクラークだけでなく、キッチンのスタッフ等の他のスタッフも聞くことができるようにするためである。
【0066】
図8は、本発明の実施の形態における親機の構成図である。親機100は、送信部101、受信部102、マルチプレクサ103、制御部104、及びメモリ105を備えている。受信部102は、子機200a〜200gから無線で送信された送話データを受信する。上述のように、子機200a〜200gから送られてくる送話データには、音声データと制御データが含まれる。
【0067】
また、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bから送られてくる送話データ中の制御データには、送話ボタン210及び優先送話ボタン211のオン/オフ状態を示すボタン状態情報が含まれる。制御部204は、この制御情報を受け取って、緊急ボタン211のオン/オフ状態に応じて、通話モードを設定する。通話モードには、TALKモードとPAGEモードがある。
【0068】
メモリ105は、TALKモードとPAGEモードのそれぞれの拡声ルーティングテーブルを記憶している。制御部104は、設定された通話モードに対応する拡声ルーティングテーブルをメモリ105から読み出して、読み出した拡声ルーティングテーブルに従って、マルチプレクサ103を制御する。
【0069】
マルチプレクサ103は、制御部104による制御の下、受信部102で受信した送話データ中の音声データを用いて各子機に送信する送話データを生成する。マルチプレクサ103は、親機100と子機200a〜200gとが時分割多元接続/時分割複信(TDMA/TDD)方式で無線通信を行うために、受信部102にて各子機200a〜200gから受信した音声データのパケットを1つのチャンネル内の音声スロットに割り当てる。送信部101は、マルチプレクサ103にて生成された送話データのパケットを送信する。
【0070】
以下、親機100にて設定されるTALKモードとPAGEモードについて説明する。TALKモードは、各子機200a〜200gが、空いているスロットを利用して、自由に送話をすることができるモードである。PAGEモードは、特定の子機であるマネージャ用子機200a及びサブマネージャ200bが優先的にスロットを確保できるとともに、一般の子機であるその他の子機が空いているスロットを利用して、自由に送話できるモードである。TALKモードは、本発明の「第2の通話モード」に相当し、PAGEモードは、本発明の「第1の通話モード」に相当する。
【0071】
通常は、TALKモードで子機間の通話が行われる。マネージャ用子機200a又はサブマネージャ用子機200bにて優先送話ボタン211がオンになることで、通信モードがTALKモードからPAGEモードに切り替えられる。具体的には、マネージャ用子機200a又はサブマネージャ用子機200bにて優先送話ボタン211がオンになると、制御部207は、優先送話ボタン211がオンであることを示すボタン状態情報を、優先送話の指示として、パケット生成部203に出力し、パケット生成部203は優先送話ボタン211がオンであることを示すボタン状態情報を含む送話データのパケットを生成して、送信部201が生成された送話データのパケットを送信する。
【0072】
親機100では、受信部102にて送話データを受信し、制御データを制御部104に出力する。制御部104は、制御データ中に優先送話ボタン211がオンであることを示すボタン状態情報が含まれていると、通話モードをTALKモードからPAGEモードに切り替える。制御部104は、TALKモード及びPAGEモードのそれぞれにおいて、メモリ105から当該通話モードに対応する拡声ルーティングテーブルを読み出して、読み出したテーブルに従って送話データを生成するようマルチプレクサ103を制御する。
【0073】
図9は、本発明の実施の形態におけるTALKモードの拡声ルーティングテーブルを示す図であり、図10は、本発明の実施の形態におけるPAGEモードの拡声ルーティングテーブルを示す図である。拡声ルーティングテーブルは、送話側の各子機が、いずれの受話側子機に対して送話可能であるかを規定している。いずれの送話側子機がいずれの受話側子機に対して送話可能であるかは、送話側及び受話側の子機の属性に応じて異なる。即ち、親機100は、子機の属性に応じて、いずれの送話側子機がいずれの受話側子機に対して送話可能であるかを管理している。子機の属性は、制御データに含まれる送話側子機のID情報に基づいて判断する。
【0074】
図9、10において、「○」は送話側子機から送られてきた送話データを優先的に受話側子機にて出力可能であることを意味し、「×」は送話側子機から送られてきた送話データを受話側子機にて出力しないことを意味し、「−」は自らの送話データを出力しない、又は受話側子機に音声出力機能を有しない(即ち、送話側子機から送られてきた送話データを受話側子機にて出力しない)ことを意味し、「○/×」は送話側子機にて送話トリガが発生したときに、送話側子機から送られてきた送話データを受話側子機にて出力することを意味する。送話トリガとは、マネージャ用子機200a、サブマネージャ用子機200b、クラーク1用子機200c、クラーク2用子機200d、及びキッチン用子機200fについては、送話ボタン210がオンになることであり、外線電話用子機200eについては、外線電話を受けることであり、ドライブスルー用子機200gについては、ドライブスルーシステムの車両センサから車両を検知したことを示す信号を受けることである。
【0075】
図9に示すように、TALKモードでは、送話ボタン210がオンの状態でマネージャ用子機200a(MG)、サブマネージャ用子機200b(SMG)、クラーク1用子機200c(CL1)、及びクラーク2用子機200d(CL2)から送信された送話データを、外線電話用子機200e(TEL)、及びキッチン用子機200f(KTN)にて出力可能である。外線電話用子機200e(TEL)で外線電話を受けた状態で送信された送話データは、外線電話用子機200e(TEL)及びドライブスルー用子機200g(DRT)以外の子機にて出力可能である。
【0076】
キッチン用子機200f(KTN)から送話ボタン210がオンの状態で送信された送話データは、外線電話用子機200e(TEL)にて出力可能である。車両センサが車両を検知した状態でドライブスルー用子機200g(DRT)から送信された送話データは、外線電話用子機200f(KTN)及びドライブスルー用子機200g(DRT)以外で出力可能である。
【0077】
図10に示すように、PAGEモードでは、マネージャ用子機200a(MG)から送信された送話データが、サブマネージャ用子機200b(SMG)、クラーク1用子機200c(CL1)、クラーク2用子機(CL2)、及びキッチン用子機200f(KTN)で出力される。また、サブマネージャ用子機200b(SMG)から送信された送話データは、マネージャ用子機200a(MG)、クラーク1用子機200c(CL1)、クラーク2用子機(CL2)、及びキッチン用子機200f(KTN)で出力される。
【0078】
PAGEモードにおいて、クラーク1用子機200c(CL1)及びクラーク2用子機200d(CL2)からは、送信ボタン210をオンにして送話することで、外線電話用子機200e(TEL)及びキッチン用子機200f(KTN)で送話データを出力可能である。また、外線電話を受けた場合には、外線電話用子機200e(TEL)から送信された送話データをクラーク1用子機200c(CL1)、クラーク2用子機200d(CL2)、及びキッチン用子機200f(KTN)にて出力可能である。
【0079】
さらに、キッチン用子機200f(KTN)からは、送話ボタン210をオンにして送話することで、クラーク1用子機200c(CL1)、クラーク2用子機200d(CL2)、及び外線電話用子機200e(TEL)にて送話データを出力できる。また、ドライブスルーシステムの車両センサが車両を検知することで、ドライブスルー用子機200g(DRT)から送信された送話データは、クラーク1用子機200c(CL1)、クラーク2用子機200d(CL2)、及びキッチン用子機200f(KTN)にて出力可能である。
【0080】
図1は、本発明の実施の形態におけるパケット構成を示す図であり、(a)は、TALKモードの場合のパケット構成を示し、(b)は、PAGEモードの場合のパケット構成を示している。上述のように、本実施の形態の無線通話システム1では、親機100と各子機200a〜200gとの間で、時分割多元接続/時分割複信方式で送話データが送受信される。
【0081】
図1(a)の例では、クラーク1及びクラーク2が同時にキッチンと通話をしている例を示している。図1(a)に示すように、TALKモードでは、クラーク1用子機200cから親機100への上りの送話データ、クラーク2用子機200dから親機100への上りの送話データ、親機100からクラーク1用子機200cへの下りの送話データ、及び親機100からクラーク2用子機200dへの下りの送話データには、1つのチャンネル(チャンネル1)を時間で分割して形成されるスロットのうちの音声スロットが、それぞれ割り当てられる。制御スロットには制御データが割り当てられる。利用されていない音声スロットは空きとなり、別の子機が新たに送話を行った場合に使用に供される。
【0082】
TALKモードでは、音声スロットの確保優先度は、すべての子機において同じである。例えば、図9に示すように、TALKモードでは、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bは、クラーク1用子機200cとクラーク2用子機200dと同じ条件で、他の子機に対して送話可能である。即ち、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bと、クラーク1用子機200c及びクラーク2用子機200dとで、音声スロットの確保優先度は同じである。このことは、TALKモードでは、マネージャ用子機200a又はサブマネージャ用子機200bであっても、空いている音声スロットがなければ送話ができないことを意味する。
【0083】
図1(b)は、図1(a)に示すTALKモードから、マネージャ用子機200aにて優先送話ボタン211がオンにされることにより、PAGEモードになった状態を示している。図1(b)に示すように、PAGEモードでは、マネージャ用子機200aの送話データに対して、優先的に音声スロットが割り当てられる。しかしながら、この場合にも、空いている音声スロットがある限り、クラーク1用子機やクラーク2用子機、その他子機からの送話は、TALKモードの場合と同様に可能である。
【0084】
即ち、本実施の形態の無線通話システム1では、親機100と各子機200a〜200gとの間の無線通信に時分割多元接続方式を採用しているので、1つの子機のみが1つのチャンネルを専有することがない。従って、マネージャ用子機200aからの送話を優先した場合にも、他の子機間の通話を中止することなく、維持できる。また、PAGEモードにある場合に、音声スロットが空いていれば、さらに他の子機が送話することも可能である。
【0085】
なお、サブマネージャ用子機200bにて優先送話ボタン211がオンにされることにより、PAGEモードになった場合も、上記と同様に、サブマネージャ用子機200bからの送話データに優先的に音声スロットが割り当てられ、他の空いている音声スロットは他の子機が使用可能である。マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bのいずれか一方がPAGEモードで優先的に音声スロットを利用している場合には、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bの他方は、クラーク1用子機200cやクラーク2用子機200d等と同様に、音声スロットが空いている限りにおいて、送話が可能である。
【0086】
以上のように、本実施の形態の無線通話システム1は、親機100が通話モードに応じて拡声ルーティングテーブルを選択し、選択した拡声ルーティングテーブルに基づいて、子機の属性に応じて送話データを出力可能な子機を決定する。例えば、TALKモードでは、上記の例のように、親機100の制御部104は、メモリ105から図9に示すTALKモードの拡声ルーティングテーブルを読み出して、その拡声ルーティングテーブルに従って、送話側子機が、マネージャ用子機200aであるか、サブマネージャ用子機200bであるか、クラーク1用子機200cであるか、クラーク2用子機200dであるか、外線電話用子機200eであるか、キッチン用子機200fであるか、ドライブスルー用子機200gであるかに応じて、どの受話側子機で送話データを出力可能とするかを決定する。
【0087】
また、本実施の形態の無線通話システム1は、親機100と各子機200a〜200gとの間の無線通信に時分割多元接続/時分割複信方式を採用し、1つのチャンネルを使って複数の子機に音声スロットをそれぞれ割り当てることで、複数の子機からの送話データを同時に送受信する。特に、PAGEモードでは、複数の子機のうちの特定の子機の送話データに対して、音声スロットを優先的に割り当てる。従って、特定の子機から他の一般の子機への送話を確保できるとともに、それと同時に、空いている音声スロットを利用して、一般の子機からの送話も可能である。これにより、特定の子機の優先送話が一般の子機からの送話を阻害することなく、特定の子機から確実に他の子機に送話できる。例えば、上記の例で示したように、クラーク1及びクラーク2とキッチンとの間の通話を阻害することなく、マネージャから他のスタッフに対して確実に緊急の送話を行うことができる。
【0088】
なお、上記の実施の形態では、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bのいずれか一方が優先送話を行っている場合には、優先送話を行っていない他方は、クラーク1用子機200c及びクラーク2用子機200dと同様に、音声スロットが空いている限りにおいて、送話が可能であり、音声スロットの割り当ての優先権限を取得できなかったが、マネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bの両方に対して同時に優先送話を可能としてもよい。即ち、特定の子機が複数ある場合に、複数の特定の子機の音声データに対して同時に優先的に音声スロットを割り当ててもよい。
【0089】
また、上記の実施の形態では、特定の子機であるマネージャ用子機200a及びサブマネージャ用子機200bには、他の子機にはない優先送話ボタン211が設けられており、即ち工場出荷時にすでに特定の子機であるか、一般の子機であるクラーク用の子機200c、200dであるのかが区別されていたが、本発明はこれに限られない。携帯型インターカムとしてのすべての子機(上記の実施の形態では、子機200a〜200d)に対して、優先送話ボタン211が設けられてよい。
【0090】
この場合には、親機100にて、どの子機を特定の子機とするか、即ちどの子機の優先送話ボタン211を有効とするかを管理する。即ち、親機100は、マネージャ及びサブマネージャが用いる子機について、その優先送話ボタン211を有効にする。このために、親機100には、書き換え可能な特定子機管理テーブルが記憶されている。特定子機管理テーブルは、各子機について、優先送話ボタンが有効であるか否かを規定している。親機100は、子機からその子機のID情報とともに優先送話ボタンがオンであるというボタン状態情報を受けた場合に、特定子機管理テーブルを参照して、当該子機の優先送話ボタンが有効であるか否かを判断する。親機100は、当該子機の優先送話ボタンが有効である場合にのみ、優先送話ボタンがオンであるというボタン状態情報に応じて通話モードをPAGEモードにする。
【0091】
このようにすることで、すべての携帯型インターカムとしての子機を同一の構成とすることができ、この種の子機の製造コストを抑えることができる。また、複数の子機のうち、どの子機を特定の子機とするかを臨機応変に設定できる。例えば、サブマネージャが不在の場合には、クラーク1やクラーク2の子機を特定の子機とすることができる。また、サブマネージャを含めてすべての子機を特定の子機として、マネージャ及びサブマネージャ以外に対しては特に緊急のときにのみ優先送話を許可するという運用を採用してもよい。
【0092】
特定子機管理テーブルは、親機100にて書き換え可能(即ち、親機100にて特定の子機の設定が可能)であってもよいし、マネージャ用子機200aに入力部を設けてマネージャ用子機から書き換え可能としてもよい。この場合には、書き換え情報は、マネーじぇ用子機200aから親機100に送信される。
【0093】
拡声ルーティングテーブルは、書き換え及び/又は追加が可能であってよい。特に、上記のように、複数の子機について特定の子機を任意に設定できる場合には、当該特定の子機の設定に応じて、拡声ルーティングテーブルも書き換えるか、新たに追加する必要がある。また、特定の子機と一般の子機が固定されている場合にも、拡声ルーティングテーブルを書き換え、又は追加することで、拡声ルーティングを変更し、又は追加することができるので、便利である。拡声ルーティングテーブルの書き換えや追加も、親機100にて直接行なってもよいし、マネージャ用子機200aに入力部を設けてマネージャ用子機から行なえるようにしてもよい。
【0094】
また、上記の実施の形態では、PAGEモードにおいて、特定の子機について優先的に音声スロットを割り当て、その他の子機については優先的な音声スロットの割り当てを行わないようにしたが、優先度を複数のレベルに分けてもよい。例えば、マネージャ用子機、サブマネージャ用子機、リーダクラーク用子機、一般クラーク用子機に対して、この順に、段階的な優先度を定義してもよい。この場合、PAGEモードにおいて複数の子機による音声スロットの優先割り当てが競合したときは、より優先度の高い子機に優先的にスロットが割り当てられる。
【0095】
以上に現時点で考えられる本発明の好適な実施の形態を説明したが、本実施の形態に対して多様な変形が可能であり、そして、本発明の真実の精神と範囲内にあるそのようなすべての変形を添付の請求の範囲が含むことが意図されている。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上のように、本発明にかかる無線通話システムは、親機が時分割多元接続方式を採用して、第1の通話モードにおいて、送話側の子機の送話データに優先的に一部のスロットを割り当てるので、親機が優先度の高い子機の送話データを確実に送信できるとともに、その他のスロットを用いて、優先度の低い子機も通話が可能であり、複数の子機が親機を介して互いに無線通話を行なう無線通話システム等として有用である。
【符号の説明】
【0097】
1 無線通話システム
100 親機
101 送信部
102 受信部
103 マルチプレクサ
104 制御部
105 メモリ
200a マネージャ用子機
200b サブマネージャ用子機
200c クラーク1用子機
200d クラーク2用子機
200e 外線電話用子機
200f キッチン用子機
200g ドライブスルー用子機
200a1、200b1、200c1、200d1 子機本体
200a2、200b2、200c2、200d2 ヘッドセット
201 送信部
202 受信部
203 パケット生成部
204 メモリ
205 デマルチプレクサ
206 符号化部
207 制御部
208 復号化部
209 マイク
210 送話ボタン
211 優先送話ボタン
212 スピーカ
213 音声入力部
214 音声出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機及び複数の子機を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムであって、
前記送話側の子機は、送話データを送信し、
前記親機は、前記送話側の子機から送信された送話データを受信して、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で前記送話データにスロットを割り当てて、前記送話データを送信し、
前記受話側の子機は、前記親機から送信された送話データを受信して、前記送話データを再生し、
前記通話モードは、前記親機が、前記送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部の前記スロットを割り当てる第1の通話モードを含むことを特徴とする無線通話システム。
【請求項2】
前記通話モードは、さらに、前記親機が、前記送話側の子機の優先度に関らず、前記送話側の子機から受信した送話データに前記スロットを割り当てる第2の通話モードを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通話システム。
【請求項3】
前記複数の子機は、前記優先度が高い特定の子機と、前記優先度が低い一般の子機とを含み、
前記親機は、前記通話モードとして前記第1の通話モードが設定されているときに、前記特定の子機の送話データに優先的にスロットを割り当てることを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通話システム。
【請求項4】
前記特定の子機は、前記親機に対して優先送話を指示する機能を有し、
前記親機は、前記優先送話の指示に応じて、前記通話モードを前記第1の通話モードに設定することを特徴とする請求項3に記載の無線通話システム。
【請求項5】
前記特定の子機及び前記一般の子機は、前記親機に対して優先送話を指示する機能を有し、
前記親機は、前記優先送話の指示のうち、前記特定の子機から受けた前記優先送話の指示のみに応じて、前記通話モードを前記第1の通話モードに設定することを特徴とする請求項3に記載の無線通話システム。
【請求項6】
前記送話側の子機は、前記送話データとともに、自己を特定する識別情報を送信し、
前記親機は、いずれの子機がいずれの子機に対して送話可能であるかを規定する拡声ルーティングテーブルを、前記第1の通話モード及び前記第2の通話モードのそれぞれについて有し、前記送話側の子機から前記送話データとともに送信された前記識別情報に基づいて、当該送話データを送信した子機を特定し、設定された通話モードに対応する前記拡声ルーティングテーブルに従って、前記特定された子機の送話データにスロットを割り当てることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の無線通話システム。
【請求項7】
前記拡声ルーティングテーブルは、書き換え可能であることを特徴とする請求項6に記載の無線通話システム。
【請求項8】
前記親機は、時分割多元接続/時分割複信方式で、1つのチャンネルを利用して、前記子機との間で前記送話データを送受信することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の無線通話システム。
【請求項9】
送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムに用いられる親機であって、
前記送話側の子機から送信された送話データを受信する受信部と、
通話モードを設定する制御部と、
前記制御部にて設定された前記通話モードに従って、時分割多元接続方式で前記送話データにスロットを割り当てて、前記受話側の子機に送信する送話データを生成するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサにて生成された前記送話データを送信する送信部とを備え、
前記通話モードは、前記送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部の前記スロットを割り当てる第1の通話モードを含むことを特徴とする親機。
【請求項10】
送話側の子機が、設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で前記送話側の子機から送信された送話データにスロットを割り当てて前記送話データを送信する親機を介して、受話側の子機と無線通話を行なう無線通話システムに用いられる子機であって、
前記送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部の前記スロットを割り当てる第1の通話モードを前記親機が通話モードとして設定するための優先送話の指示を入力する通話モード指示操作部と、
前記優先送話の指示を送信する送信部と、
を備えたことを特徴とする子機。
【請求項11】
親機及び複数の子機を含み、送話側の子機と受話側の子機とが親機を介して無線通話を行なう無線通話システムにおいて、前記親機にて送話データの中継を行う送話データ中継方法であって、
前記送話側の子機から送信された送話データを受信するステップと、
設定された通話モードに従って時分割多元接続方式で前記送話データにスロットを割り当てて、前記受信側の子機に送信する送話データを生成するステップと、
前記送話データを送信するステップとを含み、
前記通話モードは、前記送話側の子機の優先度に応じて、当該送話側の子機の送話データに優先的に一部の前記スロットを割り当てる第1の通話モードを含むことを特徴とする送話データ中継方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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