説明

無線電力伝送オーディオシステムおよびこれに用いられる送信側機器ならびにスピーカ

【課題】無線電力伝送方式を利用したオーディオシステムにおいて、スピーカと本体の距離が変化したときにも電力の伝送と音声の再生とを好適に行う。
【解決手段】無線電力伝送オーディオシステムの送信側機器1は、高周波信号と音声信号から形成される伝送信号を生成する伝送信号生成部9と、高周波信号の周波数に等しい共振周波数を有する送信側共振回路91と、伝送信号の変化を検出する検出部71と、伝送信号の信号波形を制御する伝送信号調整部98とを備える。スピーカ2は、前記送信側共振回路91から送出される伝送信号の少なくとも一部を、受け取る受信側共振回路92と、音声信号を再生する音声出力部66とを備える。前記送信側機器1および前記スピーカ2のうちの少なくとも一方は、前記検出部71によって検出された伝送信号の変化に応じて伝送信号が伝送する経路においてインピーダンス値を変化させるインピーダンス調整部96を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号と、スピーカを駆動する電力とを無線によって伝送する無線電力伝送オーディオシステムおよびこれに用いられる送信側機器ならびにスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や地上デジタル放送などの技術開発が進み、有線で接続することなく、無線電波を用いて、データ、音声、またはテレビ放送などを受信する無線受信機器が普及している。一方で、無線受信機器の多くには電力が有線で供給されており、内蔵している充電池などを充電することで使用されている。無線による通信技術が発展する中、電力もまたデータ信号などと同様に無線で伝送する取組みが行われている。
【0003】
例えば、電動シェーバーや電動歯ブラシなどの用途において、電磁誘導による無線電力伝送方式を採用した製品が商品化されており、ユーザの利便性を高めることに成功している。また、電力と信号とを同時に伝送する技術も開発されており、例えば、特許文献1には、電磁誘導方式を用いたスピーカにおける無線電力伝送の構成が示されている。
【0004】
図18に示すように、特許文献1には、電磁結合によって、送電側から受電側へと電力とともに音声信号を送信する構成が示されている。浴室の壁99を挟んで、送信器(機器)901に設けられた送信コイル911と受信器(スピーカ)902に設けられた受信コイル912とが対向して配置されている。このような構成において、壁99越しにコイル間を電磁結合し、無線でスピーカ902への電力と音声信号を伝送している。これにより、CDプレーヤなどのオーディオ機器本体は浴室の外に置いておき、スピーカ902のみを浴室内に配置する構成にすることができる。したがって、機器本体で結露が発生してCDプレーヤなどで音声信号の取り出しに失敗するというような問題が発生しない。
【0005】
特許文献1では、壁越しに送信コイル911と受信コイル912とが固定されており、お互いのコイルの距離は一定である。即ち、機器901とスピーカ902との距離は一定である。しかし、無線でスピーカへ電力と音声信号を送信する用途としては、オーディオ機器とスピーカ間の距離が一定の用途だけではなく、スピーカの配置を自由に変更できるシステムも考えられる。この場合、オーディオ機器とスピーカとの間の距離は、ユーザの使用状況に応じて変化する。上述の電磁誘導方式による無線電力伝送では、送信コイル911と受信コイル912との間の距離を大きくとることが困難である。電磁誘導方式では、コイル間の距離が大きくなると、電力の伝送効率が著しく低下するからである。したがって、コイルを常に近接させた状態での使用が想定されており、コイル間の距離が変化するような用途への適用は難しい。
【0006】
電磁誘導方式以外の無線電力伝送方式として、磁気共振方式による無線電力伝送が知られており、この技術を利用する装置の開発が最近盛んに行われている。磁気共振方式とは、送信コイルおよび受信コイルに夫々キャパシタを直列または並列に接続して共振回路を形成し、磁気によって共振回路間での電力伝送を行う方式である。この技術によれば、より離れた距離に配置された機器間で電力を伝送することが可能になるため、上述のようなオーディオ機器での利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−336513号公報
【特許文献2】特開2009−153056号公報
【特許文献3】特開2007−49437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
磁気共振方式で伝送効率を高く維持するためには、送信側共振回路部から送信回路(電源側)を見たインピーダンスや、受信側共振回路部から受信回路(負荷側)を見たインピーダンスを適切に制御することが望まれる。送信コイル911と受信コイル912に対して、共振器として動作させるために直列にキャパシタを設置する構成の場合、図19(b)に示すようにインピーダンス値が一定の値Aに維持されているときには、図19(a)に示すように、特定の距離xで伝送効率が最大化し最大化効率Bをとるという特徴がある。そのため、送信コイル911と受信コイル912の距離が近づけば近づくほど伝送効率が向上するというわけではない。
【0009】
インピーダンス値の制御を行わない場合には、図19(a)に示すように、距離xから
近づいた場合にも遠ざかった場合にも伝送効率は低下する。したがって、コイル間の距離が変化したときに高い伝送効率を実現するためには、送信側共振回路部から送信回路を見たインピーダンスと、受信側共振回路部から受信回路を見たインピーダンスとを適切に制御することが必要となる。スピーカへの無線電力伝送を考える場合にも、電力の伝送効率を維持するために、送信コイル911と受信コイル912の距離に応じてインピーダンスを変化させることが重要となる。
【0010】
図20(a)および(b)に、送信側共振回路部から送信回路を見たインピーダンスおよび受信側共振回路部から受信回路を見たインピーダンスを適切に制御した場合の、送受信コイル間の距離と伝送効率の関係を示す。図20(b)に示すように、送信側と受信側との双方のインピーダンスを制御する場合(黒丸)、最適なインピーダンス値zは距離が近付くほど大きくなる傾向がある。したがって、距離に応じてインピーダンスを最適値に制御することで、図20(a)において黒丸で示すように、インピーダンス制御を行わずインピーダンス値が固定される場合(白丸)に比べて、距離x以外のときにも伝送効率を高く維持することができる。また、図20(a)および(b)中で黒三角で示すように、どちらか一方(図20(a)および(b)に示す例では送電側)のインピーダンスを制御することによっても、伝送効率の劣化を低減することが可能である。このように、距離が変化する場合に高い伝送効率を実現するためには、インピーダンス制御(インピーダンスマッチング)を行うことが重要である。
【0011】
インピーダンスを制御する場合、可変のインダクタと可変のキャパシタを用いて距離に応じてインピーダンスを連続的に制御することが、伝送効率を可能な限り高く維持するためには適している。しかし、インピーダンスを連続的に変化させる回路構成では、回路規模が大きく、制御が複雑になるため、連続的に制御するのではなく、例えば異なる固定インピーダンスを有する回路素子(キャパシタ、インダクタ)とスイッチを複数設け、ある程度の距離変動が共振回路間に生じた場合に、スイッチを操作して段階的にインピーダンスを切り替えることで、伝送効率を維持しつつ、制御を比較的簡単に行うことが可能である。
【0012】
磁気共振方式を用いて、オーディオ機器本体とスピーカとの間を無線で接続する場合、大きく分けて2通りの方法が考えられる。1つ目は、磁気共振方式によってコイル間で電力を送信するとともに、音声信号を無線LANなどの無線伝送で送受信し、スピーカ側で電力を受電し、受電した電力で回路を駆動し、受信した音声信号を再生する方法である。
【0013】
もう1つの方法は、スピーカを駆動する電力と音声信号を、磁気共振方式を用いて、同時にコイル間で無線伝送する方法である。この方法では、スピーカを駆動するのに必要な電力を、共振回路の共振周波数にあわせた周波数信号を用いて送受共振器間を無線伝送し、かつ音声信号に基づいて周波数信号を例えばAM変調あるいはFM変調してからスピーカへ伝送する。このような技術が例えば特許文献2に示されている。この構成では、スピーカ側の回路は受動回路のみで構成することが可能であり、AM/FM変調信号を復調することで、スピーカに駆動電力を供給するとともに音声信号を再生することが可能となる。
【0014】
なお、無線電力伝送を行わない方式として、音声信号に対応するPWM変調信号を直流電力信号に重畳させることによって、電力とともに音声信号をスピーカに有線で伝送する技術が例えば特許文献3に記載されている。この技術によれば、PWM変調された音声信号を電源回路からの出力に重畳してスピーカへ伝送し、スピーカ側でPWM信号を復調することで、スピーカの駆動電力を有した音声信号を再生することが可能である。音量を調整する場合には、送信側でPWM信号の振幅やパルス幅を変化させることで調整可能である。
【0015】
しかし、磁気共振方式によって電力と音声信号とを同時に伝送する場合、オーディオ機器本体とスピーカとの間の距離が変化すると、音声が良好に再生されないことがある。特に、上述のようにインピーダンスを制御して伝送効率を向上させる場合に、再生される音声に問題が生じることがあることが本発明者によって確認された。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電磁気共振方式によって電力と音声信号をスピーカに無線伝送するオーディオシステムにおいて音声を良好に再生することができるオーディオシステムを提供することをその目的とする。また、本発明は、このオーディオシステムに用いられる送信側機器およびスピーカを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の無線電力伝送オーディオシステムは、送信側機器と、前記送信側機器に関連付けられたスピーカとを備え、無線により前記送信側機器から前記スピーカに電力および音声信号を伝送する無線電力伝送オーディオシステムであって、前記送信側機器は、前記電力を伝送するために用いられる高周波信号と前記音声信号とから形成される伝送信号を生成する伝送信号生成部と、前記伝送信号を受け取り、前記伝送信号を送出する第1共振回路であって、前記高周波信号の周波数に等しい共振周波数を有する第1共振回路と、前記伝送信号の変化を検出する検出部と、前記伝送信号の信号波形を制御する伝送信号調整部とを備え、前記スピーカは、前記第1共振回路から送出される前記伝送信号の少なくとも一部を、前記共振周波数において磁気共振現象または電界共振現象による結合によって受け取る第2共振回路と、前記第2共振回路からの出力信号に基づいて前記音声信号を再生する音声出力部とを備えている。前記送信側機器および前記スピーカのうちの少なくとも一方は、それぞれに関連付けられた前記第1共振回路または前記第2共振回路に接続されるインピーダンス調整部であって、前記検出部によって検出された前記伝送信号の変化に応じて前記伝送信号が伝送する経路においてインピーダンス値を変化させるインピーダンス調整部を備え、前記伝送信号調整部は、前記インピーダンス調整部が前記インピーダンス値を変化させたときに、前記送信側機器における前記伝送信号の信号波形を変化させる。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記伝送信号生成部は、パルス幅変調された音声信号を生成するPWM信号発生部を含み、前記伝送信号は、前記パルス幅変調された音声信号と前記高周波信号とを乗算することによって得られる。
【0019】
ある好ましい実施形態において、前記伝送信号調整部は、前記パルス幅変調された音声信号の振幅を制御する振幅制御部を有する。
【0020】
ある好ましい実施形態において、前記伝送信号調整部は、前記パルス幅変調された音声信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部を有する。
【0021】
ある好ましい実施形態において、前記検出部は、前記第1共振回路と前記第2共振回路との位置関係によって生じる前記伝送信号の変化を検出し、前記インピーダンス調整部は、前記検出部からの信号に応じて前記インピーダンス値を制御し、かつ、前記伝送信号調整部は、前記検出部からの信号に応じて前記伝送信号の信号波形を制御する。
【0022】
ある好ましい実施形態において、前記検出部は、前記第1共振回路における前記伝送信号の波形の変化から、前記第1共振回路と前記第2共振回路との前記位置関係を検出する。
【0023】
ある好ましい実施形態において、前記検出部は、前記伝送信号生成部における前記伝送信号の波形の変化から、前記第1共振回路と前記第2共振回路との前記位置関係を検出する。
【0024】
ある好ましい実施形態において、前記検出部からの出力に基づいて、前記インピーダンス調整部は前記インピーダンス値を離散的に変化させ、かつ、前記伝送信号調整部は前記伝送信号の信号波形を段階的に変化させる。
【0025】
ある好ましい実施形態において、前記パルス幅変調された音声信号によって規定される、前記伝送信号のパルスとパルスの間の無信号期間において、前記インピーダンス調整部が前記インピーダンス値を変化させる。
【0026】
ある好ましい実施形態において、前記検出部からの信号に基づいて、前記インピーダンス調整部と前記伝送信号調整部とに制御信号を出力する制御部をさらに備え、前記制御部は、記憶部を有し、前記記憶部は、前記検出部によって検出された位置関係と、前記インピーダンス調整部が設定する前記インピーダンス値に対する前記第1共振回路と前記第2共振回路との伝送効率とを記憶し、前記制御部は、前記インピーダンス調整部が前記インピーダンス値を変化させる前と変化させた後とで、前記パルス幅変調された信号の振幅とパルス幅の積が同じ値になるように制御し、これによって、前記音声出力部から出力される音声の音量が同じ音量となる。
【0027】
ある好ましい実施形態において、前記スピーカは、前記インピーダンス調整部を備え、前記送信側機器は、前記スピーカが備える前記インピーダンス調整部に制御信号を送信するための制御信号送信回路を更に備え、前記スピーカが備える前記インピーダンス調整部は、前記制御信号に基づいてインピーダンス値を変化させる。
【0028】
ある好ましい実施形態において、前記送信側機器と前記スピーカとの両方が前記インピーダンス調整部をそれぞれ備えている。
【0029】
ある好ましい実施形態において、前記スピーカは、前記第2共振回路が受け取った信号の包絡線を検出する包絡線検波部と、前記包絡線検波部からの出力に基づいて音声信号を再生する低域通過回路と、前記低域通過回路からの出力に基づいて音声を再生する音声変換部とを有する。
【0030】
本発明の送信側機器は、上記いずれかのオーディオシステムに用いられる前記送信側機器として使用される。
【0031】
本発明のスピーカは、上記いずれかのオーディオシステムに用いられる前記スピーカとして使用される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、オーディオ機器本体(送信側機器)とスピーカとの間の距離が変化した場合などにおいて、伝送効率を維持するようにインピーダンスを変化させるとき、伝送信号の波形(例えばPWMパルス変調された伝送信号においては、PWM変調パルスの振幅やパルス幅)を変化させる。これにより、インピーダンスの切り替えの前後で、音量が不連続に変化することを防止することが可能となり、スピーカ用無線電力伝送装置の性能を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態にかかるオーディオシステムを示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1のオーディオシステムの構成を示す図である。
【図3】インピーダンス変換部の一例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施の形態1のオーディオシステムの制御部の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1のオーディオシステムにおけるインピーダンス切替時の波形変化を示す図である。
【図6】実施の形態1のオーディオシステムの変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態2のオーディオシステムの構成を示す図である。
【図8】実施の形態2のオーディオシステムにおけるインピーダンス切替時の波形変化を示す図である。
【図9】実施の形態2のオーディオシステムの変形例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態3のオーディオシステムの構成を示す図である。。
【図11】実施の形態3のオーディオシステムの変形例を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態4のオーディオシステムの構成を示す図である。
【図13】実施の形態4のオーディオシステムの変形例を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態5のオーディオシステムの構成を示す図である。
【図15】実施の形態5のオーディオシステムの変形例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6のオーディオシステムの構成を示す図である。
【図17】実施の形態6のオーディオシステムの変形例を示す図である。
【図18】従来のスピーカ用無線電力伝送装置の構成を示す図である。
【図19】磁気共振方式による距離と伝送効率の関係、及び距離とインピーダンス値の関係を示す図である。
【図20】磁気共振方式による距離と伝送効率の関係、及び距離とインピーダンス値の関係を示す図である。
【図21】比較例のスピーカ用無線電力伝送装置の構成を示す図である。
【図22】図21に示す装置におけるインピーダンス切替時の波形変化を示す図である。
【図23】図21に示す装置におけるインピーダンス切替時の音量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
まず、磁気共振方式による無線電力伝送技術を利用したオーディオシステムにおいて生じ得る出力音声の音量変化の問題について説明する。
【0035】
図21は、磁気共振方式を用いて、スピーカを駆動する電力と音声信号とを同時に無線伝送するオーディオシステム900を示す。オーディオシステム900は、送信側機器1とスピーカ(受信側機器)2とを備えており、送信共振回路91と受信共振回路92とがそれぞれに対して設けられている。送信共振回路91と受信共振回路92とを磁気共振現象によって結合させることで、送信側機器1からスピーカ(受信側機器)2に電力および音声信号の無線伝送が行われる。
【0036】
送信共振回路91と受信共振回路92とが共振周波数foで共振する場合、機器1の周期信号発生部61は周波数foの周期信号を発生する。この周期信号は電力の無線伝送に用いられ、例えば数十MHzの周波数を有する。また、PWM信号発生部31は、音声信号111をPWM変調信号に変換する。より具体的には、前述の周期信号を搬送波として、PWM変調信号で振幅変調する。PWM変調信号で振幅変調された信号は、増幅部11で所望の信号振幅に増幅され信号発生部9から出力される。このように、信号発生部9において、音声信号と電力伝送のための(あるいは搬送波としての)周期信号とから形成される伝送信号が生成され、この信号が送信共振回路91から受信共振回路92に無線で伝送される。
【0037】
ここで、図21に示すシステムでは、送信側のインピーダンスを制御するために、送信共振回路91と信号発生部9との間にインピーダンス変換部21が配置されている。送信共振回路91と受信共振回路92との位置関係が変化すると、最適なインピーダンス値からずれるため、送信共振回路91における伝送信号の波形が変化する。検出部71は、その波形変化を検出することによって位置関係を検出する。
【0038】
インピーダンス制御部41は、検出部71の検出結果に基づいて、最適なインピーダンス値になるようにインピーダンス変換部21を制御する。これにより、機器1からスピーカ2へ伝送信号が最適な伝送効率で送られる。
【0039】
受信共振回路92で受信された信号は、整流部32で整流され、その後、包絡線検波部52で、上記整流された受信信号からPWM変調信号が再生される。得られた信号は、低域通過部12で音声帯域の信号だけが透過するように処理され、音声信号が生成される。この信号が最終段の電気/音声変換部62で音声として再生される。
【0040】
上述のとおり、オーディオ機器本体1とスピーカ2の間を、上記磁気共振方式を用いて、電力と音声信号を伝送する場合、オーディオ機器本体1とスピーカ2の間の距離の変化に応じてインピーダンスの制御を行ったとしても、距離に応じてオーディオ機器本体1とスピーカ2の間の伝送効率が変化する。すなわち、図20に示したように、インピーダンス制御が適切に行われている場合であっても、距離が離れるほど次第に伝送効率は低下する。このため、スピーカで受け取る伝送信号の振幅が距離に応じて変動することになり音量が変化してしまう。
【0041】
また、段階的(離散的)にインピーダンスを制御する場合には、図22に示すように、信号生成部9の出力信号の振幅が一定であっても、インピーダンス値を切り替えた瞬間に、伝送効率が不連続に変化する。これにより、受信共振回路92の出力が不連続に変化することになる。結果として、図23に示すように、インピーダンス値の切り替え前後で、音量が不連続に変化するという問題が生じる。
【0042】
以上に説明した問題を鑑みて、本発明者が検討した結果、オーディオ機器本体とスピーカとの間の距離が変化するような場合に、インピーダンスを変化させて伝送効率の低下を抑制しながら、伝送信号の波形を適切に制御することによって、不必要な再生音量の変化を抑制することができることがわかった。
【0043】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0044】
図1は、本発明の実施形態にかかる無線電力伝送オーディオシステム100の構成を模式的に示すブロック図である。図示するように、オーディオシステム100は、送信側機器としてのオーディオ機器本体1と、この機器本体1から無線で電力および音声信号が伝送される受信側機器としてのスピーカ2とから構成されている。
【0045】
オーディオ機器本体1は、伝送信号115を生成する伝送信号生成部9を備える。伝送信号生成部9において、電力伝送のために用いられる高周波信号(周期信号)と音声信号とから伝送信号115が形成される。なお、高周波信号は、音声信号を伝送するための搬送波としての側面を持つ。伝送信号生成部9から出力される伝送信号115は、インピーダンス調整部96が設けられた伝送経路を通って送信側共振回路91に入力される。インピーダンス調整部96は、伝送経路においてインピーダンス値を変化させることができ、例えば、信号生成部9の出力インピーダンスと送信側共振回路91の入力インピーダンスとを整合させるようにインピーダンスの調整を行う。送信側共振回路91は、典型的にはコイル(図示せず)を備えており、高周波信号の周波数foと略同一の共振周波数を有している。なお、本明細書では、高周波信号の周波数foと共振回路の共振周波数とが0%〜3%のずれを有しており略等しい場合に、これらを等しいと称することがある。
【0046】
また、スピーカ2は、搬送波の周波数foと略同一の共振周波数を有する受信側共振回路92を備える。受信側共振回路92もまた、典型的には、コイル(図示せず)を備えている。また、スピーカ2は、受信側共振回路92で受け取った伝送信号115から音声を再生する音声再生部66を備える。
【0047】
送信側共振回路91と受信側共振回路92との間で、上記共振周波数での磁気共振現象による結合を生じさせる。これによって、無線により高い伝送効率で、オーディオ機器本体1からの伝送信号115をスピーカ2に伝送することができる。なお、本発明の実施形態では、送信側共振回路91と受信側共振回路92とをコイルを用いて磁気共振現象によって結合させる形態を説明するが、送信側共振回路と受信側共振回路とで極板間を電界共振現象により結合することによって電力を無線伝送する構成もあり得る。
【0048】
本実施形態において、オーディオ機器本体1は、伝送信号115の波形の変化を検出することができる検出部71を備えている。検出部71は、例えば、送信側共振回路91に接続されており、送信側共振回路91からの信号出力(電圧、電流、波形自体など)を所定のタイミングでモニタする公知の検出回路を用いて構成され得る。
【0049】
上述のように、オーディオ機器本体1とスピーカ2との距離が変わるとき、送信側と受信側(すなわち共振系全体)で共振周波数におけるインピーダンスのずれが生じることによって伝送信号115の伝送効率が低下する。また、インピーダンスのずれが生じていると、機器本体1およびスピーカ2において伝送信号115の波形も変化する。したがって、検出部71で伝送信号115の波形変化を検出することによって、共振系のインピーダンスが適切な状態ではないことを判断し、かつ、その変化に基づいて機器本体1とスピーカ2との距離を推定することが可能である。
【0050】
本実施形態では、検出部71からの出力に基づいて、インピーダンス調整部96が、伝送信号が伝播する経路におけるインピーダンス値を変化させる。ここで、伝送信号が伝送(伝播)する経路とは、オーディオ機器本体1における伝送信号生成部9と送信側共振回路91との間の伝送経路、スピーカ2における受信側共振回路92と受電部との間の伝送経路を含むものとする。なお、図1に示す形態では、機器本体1においてインピーダンス調整部96が設けられた形態が示されているが、後述するように、スピーカ2側にインピーダンス調整部を設ける構成としてもよい。また、機器本体1とスピーカ2との双方にインピーダンス調整部を設ける構成としてもよい。
【0051】
なお、本明細書では、磁気(電界)共振現象による結合によって受信側共振回路において生成される信号をスピーカ側での伝送信号と呼んでいる。本実施形態では、スピーカにおける伝送信号とは、受信側共振回路から出力される、その包絡線がPWM変調された音声信号に対応する高周波である。
【0052】
インピーダンス調整部96が、伝播経路において、オーディオ機器本体1とスピーカ2とにおいてインピーダンス整合が実現するようにインピーダンス値を変化させることによって伝送効率が向上する。すなわち、インピーダンス調整部96は、伝送信号の伝送効率を向上させるようにインピーダンスの調整を行う。しかし、伝送効率が向上すると、図22および図23を用いて説明したように再生される音声の音量が変化する。特に、インピーダンス調整部96が、離散的にインピーダンスを変化させるような回路で構成されている場合には音量の急激な変化が発生する。
【0053】
この音量の変化を抑制するために、オーディオ機器本体1は、伝送信号115の波形を調整するように設けられた伝送信号調整部98を備える。伝送信号調整部98は、検出部71からの出力に基づいて、インピーダンス調整部96が伝送路のインピーダンスを制御するときに、伝送信号115の振幅などを調整する。例えば、電力伝送に用いる周期信号(搬送波)とパルス幅変調(PWM)された音声信号とを組み合わせて伝送信号を形成する場合、伝送信号調整部98は、伝送信号の振幅またはパルス幅(デューティー比)を制御する。なお、上記のようにして形成された伝送信号は、典型的には、その包絡線がPWM信号を示しており、この包絡線によって規定されるPWM信号が音声信号に対応する。伝送信号のパルス幅を制御するという場合、このPWM信号のパルス幅を制御することを意味する。
【0054】
インピーダンス調整部96がインピーダンス値を変化させて伝送効率を向上させるとき、伝送信号調整部98は、例えば、伝送信号115の振幅を低下させる、または、伝送信号115のパルス幅を狭くするように動作する。これによって、スピーカ2において再生される音声が不必要に変化することを防止することができる。また、インピーダンス整合が適切に行われているため伝送効率の低下が抑制される。
【0055】
なお、図1において伝送信号調整部98は、音声信号と電力信号とから形成された伝送信号115を直接調整するように示されているが、このような形態に限らず、音声信号を生成する回路において信号の調整を行う形態であってもよく、伝送信号の波形を調整できる限り、任意の構成を採用し得る。
【0056】
このように、本実施形態のオーディオシステム100によれば、オーディオ機器本体(送信側機器)1とスピーカ2との間の距離(これらの相対位置)等が変化するような場合にも、伝送効率の低下を抑制しながら、より向上した音声再生を行うことが可能になる。また、オーディオシステム100は、送信側機器1とスピーカ2との相対位置の変化だけでなく、他の外的要因によって伝送効率が低下するような場合にも好適に用いられ得る。例えば、送信側機器1とスピーカ2との間に障害物が介在することで伝送効率が低下しており、伝送路でインピーダンス値を変化させることで伝送効率の向上が見込めるような場合には、本実施形態のオーディオシステム100が適切に利用される。
【0057】
以下、より具体的な本発明の実施の形態を説明する。
【0058】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1における無線電力伝送オーディオシステム(スピーカ用無線電力伝送装置)のブロック構成を示す。実施の形態1のオーディオシステムは、送信側機器(オーディオ機器本体)1とスピーカ(受信側機器)2とから構成される。
【0059】
機器1は、PWM信号発生部31、周期信号発生部61、増幅部11を含む信号発生部(伝送信号生成部)9と、送信共振回路91とを備える。機器1はまた、信号発生部9と送信共振回路91との間において、インピーダンス調整を行うためのインピーダンス変換部21およびインピーダンス制御部41を備える。本明細書では、インピーダンス変換部21とインピーダンス制御部41と併せてインピーダンス調整部と呼ぶ場合がある。機器1はさらに、伝送信号の波形を検出する検出部71、振幅制御部81、および制御部101を備える。制御部101は、検出部71からの出力に基づいて、振幅制御部81とインピーダンス制御部41とを制御するように構成されている。
【0060】
また、スピーカ2は、受信共振回路92、整流部32、包絡線検波部52、低域通過部12、電気信号変換部(電気/音声変換部)62を備える。
【0061】
送信共振回路91および受信共振回路92のそれぞれは、送信コイル(または受信コイル)と、送信コイル(または受信コイル)に直列または並列に接続されたキャパシタ、インダクタ、またはその組合せによって構成される共振回路である。
【0062】
各インダクタは、良好な導電率を有する銅や銀などの導電体から好適に形成され得る。また、リッツ線などを用いて送信コイルや受信コイルを形成すれば、単位長さ辺りの導体損失を低減できるため、直列共振回路、および並列共振回路のQ値を向上させることができ、より高い効率で電力伝送が可能になる。
【0063】
送信共振回路91と受信共振回路92とは、共振周波数foを有するように構成されている。これらは、共振周波数foにおいて磁気共振現象で磁気的に結合され、非接触に周期信号を伝送する。機器1の周期信号発生部61は、上記共振周波数foと等しい周波数foを有する周期的な信号(例えば数十MHzの高周波信号)を電力を伝送するために用いる信号として生成する。
【0064】
なお、送信共振回路91と受信共振回路92との共振周波数foに基づいて、周期信号発生部61が生成する周期信号の周波数が規定されている。典型的には、これらは等しく設定され、これらの周波数が等しいと言う場合には、共振回路の共振周波数と周期信号の周波数とが上述のように0%〜3%のずれを有する場合を意味する。
【0065】
機器1からスピーカ2へ伝送する音声信号111は、PWM信号発生部31でPWM変調信号に変換された後、乗算部において周期信号発生部61の出力(搬送波)と掛け合わされる。これにより、図5に示すような、周波数foの搬送波がPWM変調信号で振幅変調(AM)されて形成された伝送信号が生成される。この伝送信号は、増幅部11で所望の振幅に増幅され、信号発生部9から出力される。
【0066】
音声信号111は、例えば、送信側機器(オーディオ機器本体)1に外部的に接続された携帯音楽再生機器や表示装置などからの出力であってよい。また、音声信号111は、送信側機器1内において再生されたアナログまたはデジタルの音声信号であってよい。また、搬送波として用いられる電力伝送用の高周波信号は、例えば、その周波数が数十MHzに設定されるのに対し、PWM信号発生部31で生成されたPWM信号(パルス幅変調された音声信号)の周波数は高くとも数百KHz程度に設定されている。
【0067】
磁気共振方式においては、伝送効率を向上させるために、送信共振回路91から送信回路を見たインピーダンスと、受信共振回路92から受信回路を見たインピーダンスとの両方、もしくはどちらか一方のインピーダンスを制御することが重要である。本実施の形態1では、送信共振回路91から送信回路を見たインピーダンスを制御する構成を採用しており、信号発生部9(増幅部11)と送信共振回路91との間にインピーダンス変換部21が配置されている。
【0068】
インピーダンス変換部21の構成としては、可変インダクタや可変キャパシタによって連続的にインピーダンスを制御する構成や、固定のインダクタやキャパシタを複数用いて離散的なインピーダンス値を設定し、個々スイッチで切り替えることで段階的、離散的にインピーダンスを制御する構成が考えられる。
【0069】
図3にインピーダンス変換部21の回路構成の一例を示す。図に示すように、インピーダンス変換部21は、グランドに接続された並列コンデンサ群C10およびこれらを切り替えるスイッチ410と、直列コンデンサ群C20およびこれらを切り替えるスイッチ420と、直列インダクタ群L10およびこれらを切り替えるスイッチ430とを有する。コンデンサ群C10、C20およびインダクタ群L10のそれぞれは、キャパシタンスまたはインダクタンスが互いに異なる複数のコンデンサまたは複数のインダクタから構成される。スイッチ410、420、430をインピーダンス制御部41からの制御信号によって適宜切り替えることで、回路のインピーダンス値を切り替えることができる。これにより、送信側機器とスピーカとのインピーダンス整合を行うことが可能である。このように構成されたインピーダンス変換部21を用いる場合、インピーダンス値が複数の値のうちの一つに選択的に設定され、インピーダンス値は離散的に変化する。
【0070】
再び図2を参照する。送信共振回路91から出力された伝送信号は、スピーカ2の受信共振回路92で受信される。受信された伝送信号は、整流部32で整流され、包絡線検波部52においてPWM信号が再生される。低域通過部12では、音声帯域の信号だけを透過することで音声信号を再生することができる。低域通過部12を通過した信号は、最終段の電気/音声変換部62で音声として再生される。
【0071】
送信共振回路91と受信共振回路92との位置関係によって、最適な伝送効率となるためのインピーダンス値からずれると、送信共振回路91における伝送信号の波形パラメータ(電圧値や電流値、波形の形そのものなど)が変化する。検出部71でその波形変化を検出することで位置関係の変化を検出し、制御部101に検出結果を出力する。
【0072】
制御部101は、図4に示すように、処理部171と記憶部151とから構成され、記憶部151には、インピーダンス値と、送信共振回路91の波形パラメータと、送信/受信共振回路91、92の距離との関係が予め記憶されている。
【0073】
処理部171は、設定されているインピーダンス値と送信共振回路91の波形パラメータ(電圧値や電流値、波形の形そのものなど)とから、これらに関連付けられた送信/受信共振回路91、92の距離(伝送距離)を求める。
【0074】
送信共振回路91と受信共振回路92の位置関係が変化する場合、制御部101の処理部171は、伝送効率が最適となるようにインピーダンス調整部のインピーダンス値を制御する。このとき、インピーダンス値を制御することで伝送効率が変わるため、図22および図23に示したように、結果としてスピーカの出力音量が変化してしまう。出力音量の変化を避けるためには、伝送効率が上がったときに、その分、信号発生部9の出力振幅を下げることが好ましい。このようにすれば、図5に示すように、受信共振回路の出力信号が、インピーダンス値の切り替えの前後で不連続に変化することなく、結果としてスピーカ2の出力音量を一定のまま保つことができることになる。上述のとおり、記憶部151には、インピーダンス値と、送信共振回路91の波形パラメータと、送信/受信共振回路91、92の距離との関係が予め記憶されており、その情報に加えて、設定されるインピーダンス値と伝送距離、そしてそのときに得られる最大の伝送効率の関係も記憶されている。
【0075】
ここで、伝送効率と、送信共振回路91における伝送信号の振幅との積が、インピーダンス値の切り替えの前後で略同じであれば、スピーカ2の出力音量がほぼ変化しない。そこで、処理部171は、インピーダンス値を切り替える場合、伝送効率と送信共振回路91における伝送信号振幅の積が略同じになるように、新しく設定する増幅率とインピーダンス値とを決定し、振幅制御部81とインピーダンス制御部41とにそれぞれ出力する。
【0076】
ここで本実施の形態1では、パルス幅変調信号によって音声信号を伝送しているので、パルスとパルスの間に無信号期間が繰返し発生する。インピーダンス値の切替を、パルスが存在する期間(パルス幅変調信号がハイ状態の期間)に行うと、切り替え時の回路動作が雑音として生じる可能性があるため、パルスとパルスの間の無信号期間(ロー状態の期間)において、制御部101は、振幅制御部81とインピーダンス制御部41とに、それぞれ、増幅率、インピーダンス値を切り替えるように制御する制御信号を送る。振幅制御部81は増幅部11の増幅率を制御し、インピーダンス制御部41はインピーダンス変換部21のインピーダンス値を制御する。
【0077】
以上に説明したオーディオシステムによれば、機器1とスピーカ2の間の距離が変化した場合に、最適な伝送効率となるようにインピーダンス値を切り替えることで、伝送効率の低下を抑制することができる。加えて、インピーダンス値を変化させたときに、増幅部11の増幅率を制御することで、インピーダンス値の切り替えの前後でスピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能である。
【0078】
なお、本実施の形態1では、送信共振回路91における伝送信号の波形パラメータを検出部71で検出していたが、図6に示すように、増幅部11における伝送信号の波形パラメータを検出部71で検出する構成であってもよい。
【0079】
なお、本実施の形態1では、スピーカ2において受信共振回路92の出力側に整流部32を配置する構成としたが、受信共振回路92の出力を直接包絡線検波部52に入力する構成であってもよい。
【0080】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2における無線電力伝送オーディオシステムのブロック構成を示す。図7において、実施の形態1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0081】
実施の形態1では、インピーダンス値の切り替えの前後で出力音量が変化しないように、信号発生部9の増幅部11における伝送信号の増幅率を変化させた。これに対して、本実施の形態2では、PWM信号発生部31で音声信号111を変調するときに、PWM変調信号のパルス幅を制御することで再生音声の音量の変化を抑制する。
【0082】
検出部71の検出結果からインピーダンス値を制御するとき、制御部101は、PWMパルス幅制御部51に対して、PWM信号発生部31でPWM変調するときの変調比率(音声信号111の入力値に対して、パルス幅をどれだけの値にするかの比率)を切り替える。実施の形態1においては、信号発生部9の出力振幅を、伝送効率と送信共振回路91での信号振幅の積が一定になるように変化させることで、受信共振回路92の出力が不連続に変化しないようにしていた。本実施の形態では、図8に示すように、インピーダンス値の切り替えによって伝送効率が変化した(図8に示す例では伝送効率が上がる)場合に、インピーダンス値の切り替えの前後で受信共振回路92における出力振幅の変動を、パルス幅を減少させることによって抑制する。
【0083】
PWM変調パルスのパルス幅を制御して小さくし(Ta→Tb)、受信共振回路92の出力の、信号振幅とパルス幅の積が略同一となるようにパルス幅を制御する。
【0084】
スピーカ2では、受信共振回路92の後段に低域通過部12が設けられているので、信号振幅とパルス幅の積が略同一であるPWMパルスは、信号振幅が異なっていても同じ情報を有することになる。したがって、インピーダンスの切り替えの前後で、スピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能となる。
【0085】
以上に説明したように、機器1とスピーカ2の間の距離が変化した場合において、最適な伝送効率となるようにインピーダンス値を切り替えたときに、音声信号111をPWM変調するときの変調比率を制御することで、インピーダンス値の切り替えの前後で、スピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能となる。
【0086】
なお、本実施の形態2では、送信共振回路91の波形パラメータ(信号波形)を検出部71で検出していたが、図9に示すように、増幅部11の波形パラメータを検出部71で検出する構成であってもよい。
【0087】
なお、本実施の形態1では、スピーカ2において受信共振回路92の出力に整流部32を配置したが、受信共振回路92の出力を直接包絡線検波部52に入力する構成であってもよい。
【0088】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3における無線電力伝送オーディオシステムのブロック構成を示す。図10において、実施の形態1および2と同じ構成要素については同じ符号を用い説明を省略する。
【0089】
実施の形態1および2では、インピーダンス調整部を機器1側にだけに設ける構成としていたが、本実施の形態3では、機器1とスピーカ2との両方にインピーダンス調整部(インピーダンス変換部21、22など)を設ける構成となっている。
【0090】
受信共振回路92で受信したPWM変調信号は、整流器32で整流される。このとき、電力再生部82において、伝送信号の一部から電力として利用できるエネルギーが再生され、PWM変調信号としてインピーダンス変換部22に出力される。
【0091】
電力再生部82で再生した電力は、制御信号受信回路部122、インピーダンス変換部22、インピーダンス制御部42を駆動するための電力として使用される。機器1では、実施の形態1および2と同様に、送信共振回路91における波形パラメータの変化を検出部71で検出し、制御部101は検出結果に基づいてインピーダンス値と振幅制御部81を制御する。
【0092】
本実施の形態では、受信側でもインピーダンス値を制御するために、制御部101が、制御信号送信回路121を介して、インピーダンス制御部42を制御するための制御信号を制御信号受信回路122に送信する。制御信号送信回路121から制御信号受信回路122への制御信号の送信は、任意の公知の通信技術を用いて行うことができる。
【0093】
インピーダンス制御部42は、受信した制御信号に従ってインピーダンス変換部22のインピーダンス値を制御・変換する。このようにして、送受信機両方においてインピーダンス値を制御することが可能となる。
【0094】
制御部101の記憶部151には、送受信機の各々のインピーダンス値と、送信共振回路91の波形パラメータと、送信/受信共振回路91、92の距離との関係が予め記憶されている。これらの情報に加えて、設定される送受信機の各々のインピーダンス値と伝送距離、そしてそのときに得られる最大の伝送効率の関係も記憶されており、実施の形態1と同様に、インピーダンス値の切り替えの前後で、スピーカ2の出力音量が不連続に変化しないように、インピーダンス制御部41、42や振幅制御部81を同時に切り替える制御を行う。送受信機のインピーダンス値を制御することで、送信共振回路91と受信共振回路92との間での伝送効率を向上させることが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。
【0095】
以上に説明したように、機器1とスピーカ2の間の距離が変化した場合において、最適な伝送効率となるように送受信機両方のインピーダンス値を切り替えたときに、増幅部11の増幅率を制御することで、インピーダンス値の切り替えの前後でスピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能となる。
【0096】
なお、本実施の形態3では、送信共振回路91の波形パラメータを検出部71で検出していたが、図11に示すような、増幅部11の波形パラメータを検出部71で検出する構成であってもよい。
【0097】
また、本実施の形態3では、スピーカ2において、受信共振回路92の出力が整流部32において整流される構成を示したが、受信共振回路92の出力が直接包絡線検波部52に入力する構成であってもよい。
【0098】
(実施の形態4)
図12および13は、本発明の実施の形態4における無線電力伝送オーディオシステムのブロック構成を示す。図12および13において、実施の形態1〜3と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0099】
実施の形態3では、インピーダンス値の切り替えの前後で出力音量が変化しないように、送信共振回路91(もしくは増幅部11)における波形パラメータを検出部71で検出し、信号発生部9の増幅部11の増幅率を変化させたが、本実施の形態4では、PWM信号発生部31で音声信号111を変調するPWM変調信号のパルス幅を制御することで、出力音量の変化が生じないようにする構成となっている。本実施の形態4では、実施の形態3と同様に、送受信機両方のインピーダンスを制御し、かつ実施の形態2と同様に、PWM変調信号のパルス幅を制御することで、送受信両方のインピーダンス値の切り替えの前後で、スピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能となる。
【0100】
(実施の形態5)
図14および15は、本発明の実施の形態5における無線電力伝送オーディオシステムのブロック構成を示す。図14および15において、実施の形態1〜4と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0101】
実施の形態1および2では、インピーダンス変換部が機器1側にだけ設けられている構成を示し、実施の形態3および4では、インピーダンス変換部が機器1とスピーカ2との送受信機両方に設けられている構成を説明したが、本実施の形態5では、スピーカ2側だけにインピーダンス変換部22が配置される構成となっている。
【0102】
実施の形態3と異なる点は、送信共振回路91の波形パラメータを検出部71で検出して、制御部101が制御する対象が、実施の形態3では、送受信機両方のインピーダンス制御部41、42と振幅制御部81であったが、本実施の形態5では、受信機(スピーカ)2側のインピーダンス制御部42と振幅制御部81となっている。前述のとおり、送受信機両方のインピーダンス値を制御する方が伝送効率は高く設定できるが、送信、受信のどちらか一方の制御でも伝送効率の劣化を防ぐことができる。
【0103】
制御部101は、検出部71の検出結果に基づいて、振幅制御部81とインピーダンス制御部42を制御し、スピーカ2側のインピーダンス値の切り替えの前後で、スピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能となる。
【0104】
(実施の形態6)
図16および図17は、本発明の実施の形態6における無線電力伝送オーディオシステムのブロック構成である。図16および図17において、実施の形態1〜5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0105】
実施の形態5では、インピーダンス値の切り替えの前後で出力音量が変化しないように、送信共振回路91(もしくは増幅部11)における伝送信号の波形パラメータを検出部71で検出し、信号発生部9の増幅部11の増幅率を変化させた。これに対して、本実施の形態6では、PWM信号発生部31で、音声信号111を変調するPWM変調信号のパルス幅を制御することで、出力音量の変化が生じないようにする構成となっている。本実施の形態6では、実施の形態5と同様に、受信(スピーカ)側のインピーダンス値を制御し、かつ実施の形態2および4と同様に、PWM変調信号のパルス幅を制御することで、受信(スピーカ2)側のインピーダンス値の切り替えの前後で、スピーカ2の出力音量が不連続に変化することを防ぐことが可能となる。
【0106】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限られない。本発明のオーディオシステムは、設置型のスピーカを備えるシステムだけではなく、例えば、イヤフォンやヘッドフォンなどの携帯性を有する小型スピーカを内蔵する機器にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明にかかる無線電力伝送オーディオシステムでは、送信側機器とスピーカの間の距離が変化した場合などにおいて、伝送効率を維持するようにインピーダンスを変化させるときに、伝送信号の波形(例えば、PWM変調パルスの振幅やパルス幅)を変化させることで、インピーダンスの切り替えの前後で、音量が不連続に変化することを防止することが可能である。このように構成されたオーディオシステムでは、持ち運び可能なスピーカを用いる場合にも音量を安定させることができる。また、送信側機器とスピーカとが無線で接続されているので、サラウンドシステムなどにおいて多数のスピーカを設置する場合に好適に利用される。さらに、スピーカの角度を変化させるような場合にも本発明は好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0108】
1 送信側機器
2 スピーカ
9 伝送信号生成部
11 増幅部
12 低域通過部
21、22 インピーダンス変換部
31 PWM信号発生部
32 整流部
41、42 インピーダンス制御部
51 PWMパルス幅制御部
52 包絡線検波部
61 周期信号発生部
62 電気/音声変換部
71 検出部
81 振幅制御部
82 電力再生部
91 送信(側)共振回路
92 受信(側)共振回路
96 インピーダンス調整部
101 制御部
111 音声信号
115 伝送信号
121 制御信号送信回路部
122 制御信号受信回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側機器と、前記送信側機器に関連付けられたスピーカとを備え、無線により前記送信側機器から前記スピーカに電力および音声信号を伝送する無線電力伝送オーディオシステムであって、
前記送信側機器は、
前記電力を伝送するために用いられる高周波信号と前記音声信号とから形成される伝送信号を生成する伝送信号生成部と、
前記伝送信号を受け取り、前記伝送信号を送出する第1共振回路であって、前記高周波信号の周波数に等しい共振周波数を有する第1共振回路と、
前記伝送信号の変化を検出する検出部と、
前記伝送信号の信号波形を制御する伝送信号調整部と
を備え、
前記スピーカは、
前記第1共振回路から送出される前記伝送信号の少なくとも一部を、前記共振周波数において磁気共振現象または電界共振現象による結合によって受け取る第2共振回路と、
前記第2共振回路からの出力信号に基づいて前記音声信号を再生する音声出力部と
を備えており、
前記送信側機器および前記スピーカのうちの少なくとも一方は、それぞれに関連付けられた前記第1共振回路または前記第2共振回路に接続されるインピーダンス調整部であって、前記検出部によって検出された前記伝送信号の変化に応じて前記伝送信号が伝送する経路においてインピーダンス値を変化させるインピーダンス調整部を備え、
前記伝送信号調整部は、前記インピーダンス調整部が前記インピーダンス値を変化させたときに、前記送信側機器における前記伝送信号の信号波形を変化させるオーディオシステム。
【請求項2】
前記伝送信号生成部は、パルス幅変調された音声信号を生成するPWM信号発生部を含み、
前記伝送信号は、前記パルス幅変調された音声信号と前記高周波信号とを乗算することによって得られる請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記伝送信号調整部は、前記パルス幅変調された音声信号の振幅を制御する振幅制御部を有する請求項2に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記伝送信号調整部は、前記パルス幅変調された音声信号のパルス幅を制御するパルス幅制御部を有する請求項2または3に記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記検出部は、前記第1共振回路と前記第2共振回路との位置関係によって生じる前記伝送信号の変化を検出し、
前記インピーダンス調整部は、前記検出部からの信号に応じて前記インピーダンス値を制御し、かつ、前記伝送信号調整部は、前記検出部からの信号に応じて前記伝送信号の信号波形を制御する請求項1から4のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記検出部は、前記第1共振回路における前記伝送信号の波形の変化から、前記第1共振回路と前記第2共振回路との前記位置関係を検出する請求項5に記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記検出部は、前記伝送信号生成部における前記伝送信号の波形の変化から、前記第1共振回路と前記第2共振回路との前記位置関係を検出する請求項5に記載のオーディオシステム。
【請求項8】
前記検出部からの出力に基づいて、前記インピーダンス調整部は前記インピーダンス値を離散的に変化させ、かつ、前記伝送信号調整部は前記伝送信号の信号波形を段階的に変化させる請求項1から7のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項9】
前記パルス幅変調された音声信号によって規定される、前記伝送信号のパルスとパルスの間の無信号期間において、前記インピーダンス調整部が前記インピーダンス値を変化させる請求項2から4のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項10】
前記検出部からの信号に基づいて、前記インピーダンス調整部と前記伝送信号調整部とに制御信号を出力する制御部をさらに備え、
前記制御部は、記憶部を有し、
前記記憶部は、前記検出部によって検出された位置関係と、前記インピーダンス調整部が設定する前記インピーダンス値に対する前記第1共振回路と前記第2共振回路との伝送効率とを記憶し、
前記制御部は、前記インピーダンス調整部が前記インピーダンス値を変化させる前と変化させた後とで、前記パルス幅変調された信号の振幅とパルス幅の積が同じ値になるように制御し、これによって、前記音声出力部から出力される音声の音量が同じ音量となる請求項2から4のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項11】
前記スピーカは、前記インピーダンス調整部を備え、
前記送信側機器は、前記スピーカが備える前記インピーダンス調整部に制御信号を送信するための制御信号送信回路を更に備え、
前記スピーカが備える前記インピーダンス調整部は、前記制御信号に基づいてインピーダンス値を変化させる請求項1から10のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項12】
前記送信側機器と前記スピーカとの両方が前記インピーダンス調整部をそれぞれ備えている請求項1から11のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項13】
前記スピーカは、
前記第2共振回路が受け取った信号の包絡線を検出する包絡線検波部と、
前記包絡線検波部からの出力に基づいて音声信号を再生する低域通過回路と、
前記低域通過回路からの出力に基づいて音声を再生する音声変換部と
を有する請求項1から12のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のオーディオシステムに用いられる前記送信側機器。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかに記載のオーディオシステムに用いられる前記スピーカ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−147417(P2012−147417A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244726(P2011−244726)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】