説明

無線電力伝送装置および無線電力受信装置

【課題】伝送効率の劣化を抑制しつつ、コイルの共振周波数可変を高粒度で行う。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ループアンテナと、自己共振コイルとを備えた無線電力伝送装置が提供される。前記ループアンテナは、第1線状素子と、前記第1線状素子上に設けられた給電点と、一端が前記第1線状素子の一端に接続された第1の可変インピーダンス素子と、一端が前記第1の可変インピーダンス素子の他端に、他端が前記第1線状素子の他端に電気的に接続された第2の可変インピーダンス素子と、一端が前記第1の可変インピーダンス素子の前記他端に電気的に接続され、他端が前記第1線状素子の前記他端に電気的に接続された第2線状素子と、を含む。前記自己共振コイルは、前記ループアンテナの前記給電点に給電された電力を、前記ループアンテナとの電磁結合を介して受け、受けた電力を磁気共鳴により受信側自己共振コイルに伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線電力伝送装置および無線電力受信装置に関し、特にコイルの共振周波数調整に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴方式で無線電力伝送する場合、コイルの共振周波数が、製造ばらつきや近接する机などの外部環境によって、設計値からずれてしまう。この結果、伝送効率が劣化してしまう。また、伝送したい周波数を変えたい場合に、コイルの共振周波数を可変したい要求がある。
【0003】
従来、コイルにキャパシタを取り付けて、このキャパシタの値を変えることでコイルの共振周波数を可変する方法が報告されている。しかし、この方法では、キャパシタの寄生抵抗によってコイルでの損失が増えて、伝送効率が劣化するという問題があった。
【0004】
また、コイルと結合するループに対して直列にキャパシタを挿入する方法が報告されている。しかし、この方法では、調整量が限られる問題があった。
【0005】
その他、共振周波数の可変量、コイルの小形化、薄型化、軽量化、低損失化、低コスト化、大電力化などが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-106136号公報
【特許文献2】特表2010-520716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであって、伝送効率の劣化を抑制しつつ、コイルの共振周波数可変を高粒度で行うことを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、ループアンテナと、自己共振コイルとを備えた無線電力伝送装置が提供される。
【0009】
前記ループアンテナは、
(A)一対の第1線状素子と、
(B)前記第1線状素子のそれぞれに接続された給電点と、
(C)一端が前記第1線状素子の一端に接続された第1の可変インピーダンス素子と、
(D)一端が前記第1の可変インピーダンス素子の他端に、他端が前記第1線状素子の他端に電気的に接続された第2の可変インピーダンス素子と、
(E)一端が前記第1の可変インピーダンス素子の前記他端に電気的に接続され、他端が前記第1線状素子の前記他端に電気的に接続された第2線状素子と、
を含む。
【0010】
前記自己共振コイルは、前記ループアンテナの前記給電点に給電された電力を、前記ループアンテナとの電磁結合を介して受け、受けた電力を磁気共鳴により受信側自己共振コイルに伝送する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る無線電力伝送装置を示す図。
【図2】ループアンテナの構成例を示す図。
【図3】ループアンテナの他の構成例を示す図。
【図4】ループアンテナの変形例を示す図。
【図5】可変インピーダンス素子の具体例を示す図。
【図6】可変インピーダンス素子の具体例を示す図。
【図7】可変インピーダンス素子の具体例を示す図。
【図8】可変インピーダンス素子の具体例を示す図。
【図9】可変インピーダンス素子の具体例を示す図。
【図10】本発明の実施形態に係る無線電力受信装置を示す図。
【図11】無線電力伝送装置および無線電力受信装置を備えたシステム構成の例を示す図。
【図12】周波数調整手順を説明したフローチャート。
【図13】リレースイッチを利用した可変インピーダンス素子の構成例を示す図。
【図14】MEMSを利用した可変インピーダンス素子の構成例を示す図。
【図15】平面構造を有する無線電力伝送装置の例を示す図。
【図16】無線電力伝送装置の機器への搭載例を示す図。
【図17】立体構造を有する無線電力伝送装置の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態1に係る無線電力伝送装置(送電装置)の構成を示す。
【0014】
図1の無線電力伝送装置は、ループアンテナ1101と自己共振コイル1102を備える。図2は、図1の無線電力伝送装置からループアンテナ1101を取り出して示したものである。
【0015】
ループアンテナ1101は、(A)一対の線状素子11と、(B)線状素子11のそれぞれに接続された給電点1104と、(C)一端が線状素子11の一端に接続された第1の可変インピーダンス素子1103と、(D)一端が第1の可変インピーダンス素子1103の他端に、他端が線状素子11の他端に電気的に接続された第2の可変インピーダンス素子1105と、(E)一端が第1の可変インピーダンス素子1103の他端に電気的に接続され、他端が線状素子11の他端に電気的に接続された線状素子(線路)12とを含む。線状素子11は第1の線状素子、線状素子12は第2の線状素子に対応する。
【0016】
第1の可変インピーダンス素子1103は、給電点1104に対して直列に配置されている。第2の可変インピーダンス素子1105は、給電点1104と第1の可変インピーダンス素子1103に対して並列に接続されている。第1の可変インピーダンス素子1103、および第2の可変インピーダンス素子1105はそれぞれインピーダンスが調整可能である。第1の可変インピーダンス素子1103と第2の可変インピーダンス素子1105の値を調整する事によって、自己共振コイル1102の共振周波数を可変にされる。
【0017】
線状素子11,12は、たとえば銅などの金属により形成されたワイヤ(線路)である。線状素子11、12は、1つのワイヤを折り曲げるなどして物理的に一体に形成されてもよいし、半田付けなどにより別々のワイヤを相互接続したものであってもよい。
【0018】
また第2の可変インピーダンス素子1105の一端および他端はそれぞれ、線状素子(線路)を介して、第1の可変インピーダンス素子1103の他端、線状素子11の他端に電気的に接続されてもよい。また、電気的に接続されていればよく、物理的な接続形態として、第2の可変インピーダンス素子1105の一端が、第1の可変インピーダンス素子1103の他端でなく、線状素子12に接続されていてもよく、また、第2の可変インピーダンス素子1105の他端が、線状素子11の他端でなく、線状素子12に接続されていてもよい。
【0019】
自己共振コイル1102は、自己インダクタンスと自己キャパシタンスとによって所定の周波数で共振するコイルである。例えば巻き数がnのコイルである(nは1以上の整数)。なお、自己共振コイル1102の形状は、任意でよい。たとえば円筒形状、四角柱形状、平面スパイラル形状であってもよい。図示の自己共振コイル1102は、平面スパイラル形状を有している。
【0020】
自己共振コイル1102とループアンテナ1101は同一の高さ(同一平面上)に配置され、これにより、本無線電力伝送装置は、平面構造を有している(後述する図15参照)。
【0021】
自己共振コイル1102は、ループアンテナ1101の給電点1104に給電された電力を、ループアンテナ1101との電磁結合により受け、受けた電力を磁気共鳴により受信側自己共振コイルに伝送する。なお、給電点1104へ供給する電力は、ループアンテナ1101に接続される、図示しない高周波エネルギー生成回路により生成される。生成された電力は、同軸ケーブルやマイクロストリップ線路等の給電線路を介して、給電点1104へ供給される。
【0022】
図3は、第1および第2の可変インピーダンス素子の配置の変更例を示す。
【0023】
図3のように、ループアンテナ1301への給電線路1302が長くなるなどにより、ループアンテナ1302の設置スペースが限られている場合には、第1の可変インピーダンス素子1303及び第2の可変インピーダンス素子1304を他の場所(給電線路越し)に置いてもよい。
【0024】
ただし、給電線路1302の長さによってループアンテナ1302のインピーダンスが変化する為、第1の可変インピーダンス素子1303及び第2の可変インピーダンス素子1304の値を、給電線路1302の長さに依存して決定する必要がある。
【0025】
図4は、図1および図2に示した可変インピーダンス配置(給電点に対して直列と並列に可変インピーダンス素子を接続)を、二段構成にしたループアンテナ11101を示す。
【0026】
可変インピーダンス素子1103aが給電点1104に直列に、可変インピーダンス素子1105aが、給電点1104に並列に、追加配置されている。これにより、共振周波数調整をより一層、細かく調整することが可能となる。
【0027】
本例では、2段構成を示したが、同様にして、3段以上の構成も可能である。
【0028】
図5、図6、図7、図8は、第1および第2可変インピーダンス素子の具体例を示す。
【0029】
図5の例では、第1の可変インピーダンス素子1401は容量値可変キャパシタで構成されており、第2の可変インピーダンス素子1402も容量値可変キャパシタで構成されている。1404はループアンテナ、1403は給電点を示す。
【0030】
図6の例では、第1の可変インピーダンス素子1501は容量値可変キャパシタで構成されており、第2の可変インピーダンス素子1502は容量値可変インダクタで構成されている。1504はループアンテナ、1503は給電点を示す。
【0031】
図7の例では、第1の可変インピーダンス素子1601は容量値可変インダクタで構成されており、第2の可変インピーダンス素子1602は容量値可変キャパシタで構成されている。1604はループアンテナ、1603は給電点を示す。
【0032】
図8の例では、第1の可変インピーダンス素子1701は容量値可変インダクタで構成されており、第2の可変インピーダンス素子1702も容量値可変インダクタで構成されている。1704はループアンテナ、1703は給電点を示す。
【0033】
図5〜図8では、第1および第2の可変インピーダンス素子はそれぞれ単一の素子で構成されたが、複数の素子で構成されてもよい。
【0034】
図9に、複数の素子により、第1の可変インピーダンスを構成する例を示す。
【0035】
図9では、複数の素子(可変インピーダンス素子)1801を複数個直列に接続した素子列を複数並列接続することにより、第1の可変インピーダンス素子を実現している。第2の可変インピーダンス素子も同様にして構成することが可能である。これにより耐電圧および耐電流を高めることができる。
【0036】
すなわち、素子1801を複数個直列に接続することにより、素子1個に掛かる電圧を低減させる事が出来る。また、素子1801を複数個直列に接続した物を複数個並列に接続する事で、素子1個に流れる電流を低減させる事が出来る。これにより、素子1個分の耐電圧値・耐電流値以上の電圧・電流を使用する事が可能となる。
【0037】
ここで第1および第2の可変インピーダンス素子の値を調整することで、共振周波数を高い粒度で設定できることについて、説明する。
【0038】
例えば、自己共振コイル1102の周波数ずれが無く整合状態となっている場合、共振周波数faでのインピーダンスを2+0jとする。また、外部要因等の影響により自己共振コイル1102の共振周波数がずれた場合、元々の共振周波数faでのインピーダンスが1-0.5jになったとする。この時、周波数faでのインピーダンスは2+0jからずれてしまっている為に不整合状態となり、電力伝送効率が低下する。
【0039】
調整の手順としては例えば、直列に接続された第1の可変インピーダンス素子1103の値を調整し、インピーダンスを1-0.5jから1-jに調整する。この時のアドミタンスを1/(1-j) より求めると、0.5+0.5jとなる。次に、並列に接続された第2の可変インピーダンス素子1105の値を調整し、アドミタンスを0.5+0.5jから0.5+0jに調整する。この時のインピーダンスを1/(0.5+0j)より求めると、2+0jとなる。以上の手順で、第1の可変インピーダンス素子1103および第2の可変インピーダンス素子1105の値を調整することで、共振周波数faでの整合を取る事が出来、伝送効率が改善出来る。調整の手順は、第2の可変インピーダンス素子1105の値を調整後した後に第1の可変インピーダンス素子1103の値を調整しても良い。
【0040】
また、可変インピーダンス素子の可変範囲の最小値をZMIN、最大をZMAXとすると、可変インピーダンス素子の値の初期値は可変範囲の中点である(ZMIN+ZMAX)/2に設定しておく。これにより、可変インピーダンス素子の値を増加方向および減少方向のどちらにでも調整することが出来るようになり、調整範囲を広げることが出来る。
【0041】
図10は、本発明の実施形態1に係る無線電力受信装置(受電装置)の構成を示す。基本的に図1の伝送装置と同様の構成であり、給電点が負荷に置き換わっている点が、異なっている。ただし給電点と負荷と名称は異なっているものの、実装では同一の構成を採用することも可能である。
【0042】
図10の無線電力受信装置は、自己共振コイル1909と、ループアンテナ1908を備える。
【0043】
自己共振コイル1909は、磁気共鳴により送信側の自己共振コイルから電力を受ける。
【0044】
ループアンテナ1908は、(A)負荷1911と、(B)一端が負荷1911の一端に接続された第3可変インピーダンス素子1910と、(C)一端が第3の可変インピーダンス素子1901の他端に、他端が負荷1911の他端に電気的に接続された第4の可変インピーダンス素子1912と、(D)一端が第3の可変インピーダンス素子1910の他端に電気的に接続され、他端が負荷1911の他端に電気的に接続された線状素子22と、を含む。
【0045】
ループアンテナ1908は、自己共振コイル1909と電磁結合することにより電力(高周波エネルギー)を受け、受けた電力を、負荷1911を介して、後段に出力する。後段には、たとえば、ループアンテナ1908に接続される、高周波エネルギーを直流に変換する整流回路や、整流回路の出力電流を利用して動作する電子回路、あるいは、整流回路の出力電流で充電される2次電池などが、配置されることができる。
【0046】
可変インピーダンス素子の具体的な実装や、共振周波数調整は、無線電力伝送装置の場合と同様のことが適用可能であり、したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0047】
図11は、図1の構成を含む無線電力伝送装置1901と、図10の構成を含む無線電力受信装置1902とを示す。分かり易さのため、送信側のループアンテナおよび自己共振コイルを、ここでは送電ループアンテナおよび自己共振送電コイルと呼び、受信側のループアンテナおよび自己共振コイルを、受電ループアンテナおよび自己共振受電コイルと呼ぶ。図1および図10と同一の要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0048】
無線電力伝送装置1901は、送電ループアンテナ1101と、自己共振送電コイル1102と、制御回路1913と、無線回路1914と、アンテナ1915を備える。
【0049】
無線電力受信装置1902は、受電ループアンテナ1908と、自己共振受電コイル1909と、アンテナ1919と、無線回路1918と、制御回路1917と、受電電力測定部1916を備える。
【0050】
以下、両装置間で電力伝送を行うときの動作例、および共振周波数調整の手順の一例を説明する。
【0051】
送電ループアンテナ1101と自己共振送電コイル1102(共振器)は電磁的に結合しており、高周波エネルギーが送電ループアンテナ1101へ給電点1104を介して供給される。送電ループアンテナ1101へ供給された高周波エネルギーの一部は、電磁誘導によって、自己共振送電コイル1102(共振器)に伝送される。
【0052】
自己共振送電コイル1102(共振器)と自己共振受電コイル1909(共振器)は磁気的に結合をしており、自己共振送電コイル1102(共振器)の高周波エネルギーの一部が磁気共鳴によって自己共振受電コイル1909(共振器)へ伝送される。
【0053】
受電ループアンテナ1908と自己共振受電コイル1909(共振器)は電磁的に結合しており、自己共振受電コイル1909(共振器)の高周波エネルギーの一部が電磁誘導によって受電ループアンテナ1908へ伝送され、受電ループアンテナ1908の負荷1911から高周波エネルギーを取り出す事が出来る。
【0054】
ここで、自己共振送電コイルと自己共振受電コイルの共振周波数fは、主に自身が持つインダクタンスLと線間の容量Cで決定され、次式で表わされる。
【数1】

【0055】
また、自己共振送電コイルと自己共振受電コイルが同一周波数で動作する時に、送受電間の電力伝送効率が最大となる。
【0056】
ループアンテナのインダクタンスをLa、自己共振コイルのインダクタンスをLcとすると、ループアンテナと自己共振コイル間の結合係数kと相互インダクタンスMの関係は、次式で表わされる。
【数2】

【0057】
相互インダクタンスMは、ループアンテナと自己共振コイル間の距離を変える事で調整する事が出来、無線電力伝送装置と無線電力無線電力受信装置の相互インダクタンスMをそれぞれ調整してインピーダンス整合を取る事により伝送効率を高く維持する事が出来る。すなわち、ループアンテナを用いる事によりインピーダンス変換を行っている。
【0058】
なお、図11においては、送電ループアンテナ1102の給電点1104に接続される、高周波エネルギー供給回路は省略している。また、受電ループアンテナ1908から取り出される高周波エネルギーを直流に変換する整流回路や、整流回路の出力電流を利用して動作する電子回路、あるいは、整流回路の出力電流で充電される2次電池は、省略している。
【0059】
図12に、無線電力伝送装置および無線電力受信装置間で行われる共振周波数調整の手順を示す。
【0060】
ステップ001で周波数調整を開始する。すなわち、無線電力伝送装置1901の制御回路1913と、無線電力受信装置1902の制御回路1918間の情報のやり取りにより、周波数調整モードに入る。第1〜第4の可変インピーダンス素子の初期値は、それぞれの調整可能な最大値と最小値の中間値に設定される。
【0061】
ステップ101で、制御回路1913が、第1の可変インピーダンス素子の値を、調整可能範囲の値の5%増やす。高周波エネルギー生成回路が、制御回路1913の指示に従って、増加後の値の高周波エネルギーを、送電ループアンテナ1101に供給する。供給された高周波エネルギーは、自己共振送電コイル1102、自己共振受電コイル1909、受電ループアンテナ1908を介して取り出され、受電電力測定部1916により測定される。無線電力受信装置1902の制御回路1917は、測定された受電電力の値を、無線回路1918およびアンテナ1919を介して、無線電力伝送装置1901に送信する。無線電力伝送装置1901では、アンテナ1915および無線回路1914を介して、当該測定された受電電力の値が、制御回路1913に受信される。
【0062】
ステップ102で、制御回路1913は、伝送効率が改善したか検査する。伝送効率は受信電力値/送信電力値により計算してもよいし、送信電力値が一定であるならば、受信電力値そのものを伝送効率として用いてもよい。伝送効率が改善した場合はステップ201へ進む。伝送効率が改善しない場合はステップ103で、制御回路1913は、第1の可変インピーダンス素子の値をステップ101での調整前の値から、調整可能範囲の値の5%減らす。その結果、伝送効率が改善する場合にはステップ201へ進む。伝送効率が改善しない場合にはステップ105で、制御回路1913は、第1の可変インピーダンス素子の値をステップ101での調整前の値に戻しステップ201へ進む。
【0063】
次に、ステップ201で、制御回路1913は、第2の可変インピーダンス素子の値を、調整可能範囲の値の5%増やす。その結果、伝送効率が改善する場合はステップ301へ進む。伝送効率が改善しない場合はステップ303で、第2の可変インピーダンス素子の値をステップ201での調整前の値から、調整可能範囲の値の5%減らす。その結果、伝送効率が改善する場合にはステップ301へ進む。伝送効率が改善しない場合にはステップ205で、第2の可変インピーダンス素子の値をステップ201での調整前の値に戻しステップ301へ進む。この際、制御回路1913は、第3および第4可変インピーダンス素子の値の調整指示を、無線電力受信装置1902の制御回路1917に、アンテナ1915を介して送信する。
【0064】
次に、ステップ301で、制御回路1917は、第3の可変インピーダンス素子の値を、調整可能範囲の値の5%増やす。増やした旨を無線電力伝送装置1901の制御回路1913に送り、上記と同様にして、電力伝送を行う。その結果、伝送効率が改善する場合はステップ401へ進む。伝送効率が改善しない場合はステップ303で、制御回路1917は、第3の可変インピーダンス素子の値をステップ301での調整前の値から、調整可能範囲の値の5%減らす。その結果、伝送効率が改善する場合にはステップ401へ進む。伝送効率が改善しない場合にはステップ305で、第3の可変インピーダンス素子の値をステップ301での調整前の値に戻しステップ401へ進む。
【0065】
次に、ステップ401で第4の可変インピーダンス素子の値を、制御回路1917は、調整可能範囲の値の5%増やす。その結果、伝送効率が改善する場合はステップ501へ進む。伝送効率が改善しない場合はステップ403で、第4の可変インピーダンス素子の値をステップ401での調整前の値から、調整可能範囲の値の5%減らす。その結果、伝送効率が改善する場合にはステップ501へ進む。伝送効率が改善しない場合にはステップ405で、第4の可変インピーダンス素子の値をステップ401での調整前の値に戻しステップ501へ進む。
【0066】
ステップ501では、第1〜第4の可変インピーダンス素子を、これまでのステップで決定した値へ設定して、電力伝送を行い、電力伝送効率が所望の値以上か、制御回路1913にて判定する。電力伝送効率が所望の値以上の場合にはステップ701へ進み、周波数調整を終了する。電力伝送効率が所望の値未満の場合には、ステップ601へ進む。
【0067】
ステップ601では、制御回路1913が、第1から第4の可変インピーダンス素子の値を全通り試したか検査し、試した場合には、ステップ701へ進み周波数調整を終了し、これまで試した中で最も伝送効率の高い値の組み合わせを第1〜第4の可変インピーダンス素子に対して適用する。全通り試していない場合には、ステップ101へ戻る。
【0068】
以上の手順で共振周波数調整を行い、電力伝送を行うことで、高い受電電力が得られることとなる。言い換えれば、無線電力伝送装置と無線電力受信装置の共振周波数が最適化された状態で、電力伝送が可能となる。
【0069】
図13に、リレースイッチを利用した可変インピーダンス素子の構成例を示す。この構成を、第1〜第4の可変インピーダンス素子の各々の構成として、適用可能である。
【0070】
可変インピーダンス素子2101は、インピーダンス素子2102とリレースイッチ2103が直列接続されたリレーユニット2104と、インピーダンス素子2105とリレースイッチ2106が直列接続されたリレーユニット2107と、インピーダンス素子2108とリレースイッチ2109が直列接続されたリレーユニット2110とが、並列接続して構成されている。
【0071】
可変インピーダンス素子2101の値は、リレースイッチ2103とリレースイッチ2106とリレースイッチ2109を切り替える事により可変である。オンにするリレースイッチは1つでもよいし、2つ、または3つのリレースイッチを同時にオンしてもよい。インピーダンス素子2102とインピーダンス素子2105とインピーダンス素子2108は、それぞれ異なる値のインピーダンス素子で構成されていてもよい。
【0072】
インピーダンス素子2102とインピーダンス素子2105とインピーダンス素子2108は、それぞれキャパシタやインダクタであっても良い。
【0073】
また、リレーユニット2104とリレーユニット2107とリレーユニット2110が直列に接続されていても良い。
【0074】
図14に、MEMS(微小電気機械式システム)を利用した可変インピーダンス素子の構成例を示す。この構成を、第1〜第4の可変インピーダンス素子の各々の構成として、適用可能である。
【0075】
可変インピーダンス素子3101は、MEMSキャパシタ3102で構成されている。MEMS(微小電気機械式システム)キャパシタ3102はリレースイッチ等を必要とせず、寄生抵抗が小さいので、伝送効率を高効率化する事が可能となる。
【0076】
図15に、本発明の実施形態2に係る無線電力伝送装置4101を示す縦断面図である。
【0077】
自己共振コイル4102は平面状に巻かれており、自己共振コイル4102とループアンテナ4103は同一の高さ(同一平面上)に配置されている。自己共振コイル4102とループアンテナ4103は、ここでは薄い誘電体に埋め込まれている。自己共振コイル4102とループアンテナ4103をそれぞれ同一平面上に配置する事で、無線電力伝送装置4101の厚さの増大を最小化出来、これにより薄型機器へ内蔵する事が可能となる。
【0078】
なお、前述したように、実施形態1で示した図1の無線電力伝送装置も、図15と同様に、自己共振コイルとループアンテナが同一の高さに配置され、自己共振コイルが平面状に巻かれている。
【0079】
図16は、ノートPC(パーソナルコンピュータ)等の液晶ディスプレイ4201の背面に、無線電力伝送装置4202を内蔵した場合の設置例を示している。
【0080】
無線電力伝送装置4202の設置場所が限られている場合には、液晶ディスプレイ4201の背面に自己共振コイル4203とループアンテナ4204のみを設置し、可変インピーダンス素子及び制御回路4205を液晶ディスプレイが無いふち部分へ設置する事で、薄型化が可能となる。
【0081】
図17に、本発明の実施形態3に係る無線電力伝送装置を示す。
【0082】
自己共振コイル5101は立体ヘリカル構造を有している。立体ヘリカル構造にする事で、平面構造のコイル(図15参照)に比べて、自己インダクタンスLを大きくする事が出来、伝送効率を高くする事が出来る。自己共振コイル5101とループアンテナ5102は同一平面上に無くても良い。
【0083】
5103は第1の可変インピーダンス素子、5104は第2の可変インピーダンス素子、5105は給電点を表す。
【0084】
なお本例では、ループアンテナ5102および自己共振コイル5101は、円状の平面形状を有している(図1ではループアンテナおよび自己共振コイルの平面形状は、矩形である)。
【0085】
以上のように、本発明の実施形態によれば、第1および第2の可変インピーダンス素子をループアンテナに配置したことにより、自己共振コイルの共振周波数調整を高粒度で(きめ細やかに)、行うことができる。このとき、従来のように自己共振コイルにキャパシタを取り付けることはないため、伝送効率の劣化を生じさせない。よって、伝送劣化を抑制しつつ、自己共振コイルの共振周波数調整を、高粒度で(きめ細やかに)、行うことができる。
【0086】
なお、上記の発明は無線電力伝送以外の用途であっても利用することが出来る。例えば、伝送する高周波を変調することで無線通信を行うことができる。この場合には、送受信のハードウエアとして無線通信用を利用すればよい。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一対の第1線状素子と、
(B)前記第1線状素子のそれぞれに接続された給電点と、
(C)一端が前記第1線状素子の一端に接続された第1の可変インピーダンス素子と、
(D)一端が前記第1の可変インピーダンス素子の他端に、他端が前記第1線状素子の他端に電気的に接続された第2の可変インピーダンス素子と、
(E)一端が前記第1の可変インピーダンス素子の前記他端に電気的に接続され、他端が前記第1線状素子の前記他端に電気的に接続された第2線状素子と、
を含むループアンテナと、
前記ループアンテナの前記給電点に給電された電力を、前記ループアンテナとの電磁結合を介して受け、受けた電力を磁気共鳴により受信側自己共振コイルに伝送する自己共振コイルと、
を備えた無線電力伝送装置。
【請求項2】
前記第1の可変インピーダンス素子は、容量値可変キャパシタまたは容量値可変インダクタで構成されており、
前記第2の可変インピーダンス素子は、容量値可変キャパシタまたは容量値可変インダクタで構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項3】
前記第1および第2の可変インピーダンス素子の少なくとも一方は、インピーダンス素子とリレースイッチが直列接続されたリレーユニットが複数並列接続されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項4】
前記第1および第2の可変インピーダンス素子は、MEMS(微小電気機械式システム)キャパシタで構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項5】
前記自己共振コイルは平面スパイラル形状を有し、前記ループアンテナと同じ高さに位置する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項6】
前記自己共振コイルは、立体ヘリカル構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送装置。
【請求項7】
磁気共鳴により送信側自己共振コイルから電力を受ける自己共振コイルと、
(A)負荷と、
(B)一端が前記負荷の一端に接続された第3可変インピーダンス素子と、
(C)一端が前記第3の可変インピーダンス素子の他端に、他端が前記負荷の他端に電気的に接続された第4の可変インピーダンス素子と、
(D)一端が前記第3の可変インピーダンス素子の前記他端に電気的に接続され、他端が前記負荷の前記他端に電気的に接続された線状素子と、
を含み、前記自己共振コイルと電磁結合することにより前記電力を受け、前記電力を前記負荷を介して出力するループアンテナと、
を備えた無線電力受信装置。
【請求項8】
前記第3の可変インピーダンス素子は、容量値可変キャパシタまたは容量値可変インダクタで構成されており、
前記第4の可変インピーダンス素子は、容量値可変キャパシタまたは容量値可変インダクタで構成されている、
ことを特徴とする請求項7に記載の無線電力受信装置。
【請求項9】
前記第3および第4の可変インピーダンス素子の少なくとも一方は、インピーダンス素子とリレースイッチが直列接続されたリレーユニットが複数並列接続されたものである、
ことを特徴とする請求項7に記載の無線電力受信装置。
【請求項10】
前記第3および第4の可変インピーダンス素子は、MEMS(微小電気機械式システム)キャパシタで構成される
ことを特徴とする請求項7に記載の無線電力受信装置。
【請求項11】
前記自己共振コイルは平面スパイラル形状を有し、前記ループアンテナと同じ高さに位置する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線電力受信装置。
【請求項12】
前記自己共振コイルは、立体ヘリカル構造を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線電力受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−143074(P2012−143074A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294070(P2010−294070)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】