説明

無臭熟成ニンニクエキス及びその製造方法

【課題】 短期間で生ニンニクを無臭化させ熟成させた無臭熟成ニンニクエキスを提供する。
【解決手段】 可撓性を有する袋体に内挿し密封した、生ニンニクと、水と、野菜、海藻、柑橘類果皮またはこれらの抽出物と、セルラーゼを含む酵素とを、50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の範囲内でセルラーゼを含む酵素の至適温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持し、前記保持後、常圧〜200MPaで50℃〜80℃の温度で1日〜3日加熱処理することを含む手段で生成することにより無臭熟成ニンニクエキスを短期間で生成することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ニンニクを無臭化させ、かつ熟成させてエキス化した無臭熟成ニンニクエキス及びその製造方法に関する。より詳しくは、生ニンニクを、無臭化作用を有する添加物などとともに高圧で熟成及びエキス化を促進させて生成する無臭熟成ニンニクエキス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクは古来食品や薬草として広く用いられてきており、一般に薬用に利用されるときには強精・強壮、栄養、殺菌・毒消し、健胃、強心、利尿、新陳代謝促進などの効果を期待して用いられてきた。しかし、ニンニク特有の臭いのために食用としての利用範囲が限られ、食することを敬遠される人も多かった。
【0003】
近年、生ニンニクに対して種々の調製方法を用いることによって、生ニンニクの含有有効成分を抽出する研究、無臭化の研究、生ニンニクにほとんど含有されていない有効成分を酵素変換などによって増加させるなどのニンニク中に含有される有効成分を富化させる研究、健康食品として飲食しやすいエキス化の研究などが行われてきた。
【0004】
例えば、生ニンニクを温度55〜80℃、湿度70〜95%で8〜30日間で醗酵・熟成させて製造する醗酵黒ニンニク抽出液が開示されている(特許文献1参照)。そして特許文献1には、中国産生ニンニクを温度65℃、湿度85%で30日間の醗酵によりニンニクの鱗茎は真っ黒になり、醗酵黒ニンニク抽出液はニンニク臭がない旨が記載されている。
【0005】
また、醗酵黒ニンニク抽出液は、約30日を要する自己醗酵工程、ペースト化工程、抽出工程、及び遠心分離・濃縮工程を含む工程を経て製造される。
【0006】
また、生ニンニクをこま味(商品名、奥野製薬工業株式会社製)につけ込み常温で3ケ月漬け込む工程、搾り機で絞る工程、そして得られた絞り汁をろ過する工程を含む工程を経て得られる無臭ニンニクエキスが開示されている(特許文献2参照)。そして特許文献2には、製造した無臭ニンニクエキスには生ニンニクには含有されていないアリシンが検出された旨が記載されている。
【0007】
さらに、生ニンニクを水性アルコール中で長期間にわたり抽出・熟成して製造する熟成ニンニク抽出液が知られている(非特許文献1参照)。そして非特許文献1には、熟成ニンニクにはニンニク臭の低減、生ニンニクに本来含有されている有効成分とともに生理活性作用を示す有効成分の生成がなされている旨が記載されている。
【0008】
他には、ニンニクの無臭化技術として、水または調味料に浸したニンニクに、海藻または海藻抽出物を消臭剤として、海藻乾物換算値がニンニクと水または調味料の合計重量の0.001〜3.0重量%になるように混合した後、包装袋または包装容器に密封してから、55〜90℃で3〜60分加熱することによってニンニク臭を消臭化する旨が記載されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−151436号公報
【特許文献2】特開2000−312565号公報
【特許文献3】特開2007―53980号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「ニンニクの科学」湧永製薬株式会社著、朝倉書店出版、2000年6月1日発行、p.107〜108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1による方法においては、生ニンニクを醗酵・熟成させる期間が実施例の記載では30日かかっており醗酵・熟成に多くの日数を要するという問題があった。
【0012】
特許文献2による方法においては、生ニンニクを常温で3ケ月漬け込んだ後に無臭ニンニクエキスを製造するので、ニンニクエキス製造に多くの日数を要するという問題があった。
【0013】
非特許文献1による方法においては、生ニンニクを水性アルコール中で約2年間放置するため、熟成ニンニク抽出液を得るのに多くの日数を要するという問題があった。
【0014】
また、生ニンニクに含有されている有効成分を抽出する媒体としてアルコールを使用すると、通常の飲食物に用いられる場合にはアルコールを除去する工程が必要となるという問題があった。
【0015】
特許文献3による方法においては、室温放置で6ケ月以上の保存が可能な無臭ニンニクを得られるとの記載があるが、ニンニクの形状を保ったままの製造方法であるので、エキス化するためにはエキス化工程が必要になるという問題があった。
【0016】
本発明はこうした点に鑑み、短期間で生ニンニクを熟成させ、無臭化させ、かつエキス化した無臭熟成ニンニクエキス、及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載の無臭熟成ニンニクエキスの発明は、可撓性を有する袋体に内挿し密封した、生ニンニクと、水と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物と、セルラーゼを含む酵素とを、50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の範囲内でセルラーゼを含む酵素の至適温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持し、前記保持後、常圧〜200MPaで50℃〜80℃の温度で1日〜3日加熱処理することを含む手段で生成されることを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の無臭熟成ニンニクエキス製造方法の発明は、可撓性を有する袋体に内挿し密封した、生ニンニクと、水と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物と、セルラーゼを含む酵素とを、50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の範囲内でセルラーゼを含む酵素の至適温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持する工程と、前記保持工程後、常圧〜200MPaで50℃〜80℃の温度で1日〜3日加熱処理する工程を含む工程からなることを特徴とする。
【0019】
請求項3に記載の無臭熟成ニンニクエキスの発明は、請求項1において、可撓性を有する袋体に内挿され密封される内包物が、生ニンニクと、前記生ニンニクの重量に対し10重量%〜500重量%の水と、前記生ニンニク及び水の総重量に対して0.01重量%〜5重量%のセルラーゼを含む酵素と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物である添加物が、前記ニンニク、前記水及び前記添加物との総重量に対して0.1重量%〜90重量%となる添加物とからなることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の無臭熟成ニンニクエキス製造方法の発明は、請求項2において、可撓性を有する袋体に内挿され密封される内包物が、生ニンニクと、前記生ニンニクの重量に対し10重量%〜500重量%の水と、前記生ニンニク及び水の総重量に対して0.01重量%〜5重量%のセルラーゼを含む酵素と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物である添加物が、前記ニンニク、前記水及び前記添加物との総重量に対して0.1重量%〜90重量%となる添加物とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、生ニンニクを無臭化され熟成されたニンニクエキスに生成する期間が最短期間4日でできるという極めて短期間で無臭熟成ニンニクエキスを生成できるという効果を奏する。
【0022】
本発明は、従来の製造方法が熟成工程を経た後に抽出工程を設定するという製造方法であるのに対し、熟成と抽出とを同時に実施することができる製造方法であるという効果がある。
【0023】
食品素材を袋体に内挿し密封して50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持することで、腐敗菌などの細菌類の増殖が大幅に抑制され、または腐敗菌などの細菌類が殺菌されるので、生ニンニクエキスが腐敗しないという効果を奏する。
【0024】
超高圧下で活性化する分解酵素を選択し使用することによって、生ニンニク自体に含有されている酵素及び添加する分解酵素によって熟成がすすみ、熟成ニンニクエキス中には、生ニンニクに含有されていた有効成分が多く含まれ、さらに生ニンニクには含有されていなかった新規な有効成分が生成され含まれるという効果を奏する。
【0025】
また、無臭熟成ニンニクエキスの臭いについては、ニンニクエキス自体にニンニク特有の刺激臭がなくなっており、かつ無臭熟成ニンニクエキスを飲食した後も口内にニンニク特有の臭いが生じることはないという効果を奏する。
【0026】
無臭熟成ニンニクエキスを抽出させるための媒体として、非特許文献1に記載されているような水性アルコール液を必要としないので、アルコールの除去工程が不要という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
無臭熟成ニンニクエキスは、塊状または破砕した生ニンニクと、野菜、海藻、柑橘類及びこれらの抽出物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種の添加物と、セルラーゼを含む酵素と、水とを、50MPa〜200MPaで、30℃〜60℃の範囲内の酵素の至適温度で2日〜6日保持した後に、常圧〜200MPaで、50℃〜80℃で1日〜3日加熱処理することを含む手段で生成される。
【0029】
塊状の生ニンニクを原料として生成する無臭熟成ニンニクエキスの実施形態について説明する。
【0030】
生ニンニクは塊のままでもよいし、破砕してもよい。生ニンニクを破砕する場合はフードプロセッサーで破砕する。
【0031】
生ニンニクの重量に対して10重量%〜500重量%の水を加える。水は水道水、市販の純水、井戸水、蒸留水、湧水など水であればよい。水を加えることによって、取得するときの通常の形態が粉末状である酵素とニンニクとの接触効果を高めるという効果が生じ、加える水の量を調整することによって、ニンニクエキスの濃度を変えることができるという効果を奏する。
【0032】
そして、生ニンニクと水との総重量に対して0.01重量%〜5重量%に相当するセルラーゼを含む酵素を加える。
【0033】
さらに、生ニンニク、水及び添加物との総重量に対して0.1重量%〜90重量%となる、消臭効果を有する添加物を加える。
【0034】
本発明において、セルラーゼを含む酵素はセルラーゼ類を含む酵素であれば特に制限はなく、処理条件に応じて、トリコデルマ属、アクレモニニウム属、アスペルギルス属、ファネロケエテ属、トラメテス属などに由来するセルラーゼ製剤であればよい。
【0035】
本発明において、消臭効果を有する添加物としては、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物があり、野菜としては、パセリ、セロリ、三つ葉などのセリ科植物、タマネギなどのネギ科植物、マッシュルームなどのきのこ科植物があり、柑橘類としては、ミカン、レモン、ネーブル、オレンジ、ザボン、グレープフレーツなどの柑橘類があり、海藻としては、アオサ、ヒトエグサ、スジアオノリ、ウスバアオノリ、ボウアオノリ、イワズタなどの緑藻類、ワカメ、昆布、モズク、ヒジキ、アラメ、ホンダワラ、マツモ、カジメなどの褐藻類、及びオゴノリ、アサクサノリ、スサビノリ、テングサ、フノリ、ツノマタ、キリンサイ、エゴノリなど紅藻類がある。消臭効果を有する添加物は、前記添加物からなる群のうち選ばれた少なくとも1種の添加物であればよく、前記添加物にはニンニクエキス自体の消臭化及びニンニクエキスを食した後における消臭化の効果がある。
【0036】
本発明において、海藻、野菜または柑橘類の抽出物としては、海藻、野菜または柑橘類を水または湯に浸して抽出した抽出液、または前記抽出液から生成した粉末、または前記抽出液または前記粉末のいずれかを主原料とする液、粉末または固形物であればよい。
【0037】
前記生ニンニク、前記水、前記酵素、及び前記添加物との混合物を、可撓性を有する袋体に内挿し空気を排して密封する。
【0038】
袋体内の空気を排する方法としては空気を排除する方法であればどんな方法でもよい。例えば、袋体内の空気が少量になるまで、真空包装機などを使用して袋体内の空気を吸引する方法、袋体を挟む手段や手などを使用して袋体内の空気を押し出す方法などが挙げられる。
【0039】
超高圧装置を使用して、密封された袋体を、50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の範囲内でセルラーゼを含む酵素の至適温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持する。
【0040】
菌類は大気圧などの圧力下では増殖するが、一般的な腐敗菌、例えばバチルス属に属する菌などは50MPa以上になると菌類の増殖が抑制または滅菌されるので、50MPa以上に保持することにより、腐敗菌などの細菌類の増殖を抑制または滅菌させることができる。
【0041】
保持する温度及び圧力については、酵素自体によって活性化する温度範囲が異なることと、圧力によって同じ酵素でも活性化する温度が変化することから、選択した酵素の種類に応じて適正な温度及び圧力を設定すればよい。
【0042】
また、50MPa以上〜200MPa未満の圧力において活性化するセルラーゼを含む酵素を加えることにより、生ニンニクの熟成がすすむ。
【0043】
また、消臭効果を有する添加物の添加量が、生ニンニク、水及び前記添加物との総重量に対して0.1重量%未満では充分な消臭効果がなく、添加量が増加すると消臭効果が高まることから、0.1重量%以上であればいくらでもよいので前記添加物の添加量の範囲を0.1重量%〜90重量%とする。
【0044】
2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持した後、さらに消臭効果及び熟成効果を高めるために加熱処理を実施する。ここで、加熱処理時の圧力については、常圧で加熱処理することができ、また超高圧処理時の圧力を保持したまま昇温させて加熱処理することもできるので、加熱処理時の圧力範囲を常圧〜200MPaとする。
【0045】
加熱処理は、前記袋体を常圧〜200MPaで50℃〜80℃で1日〜3日保持して実施する。このとき前記袋体を超高圧装置内に内在させたままで加熱させても、前記袋体を超高圧装置内から取り出して加熱させてもよい。
【0046】
次に、前記袋体から内容物を取り出し固液分離して無臭熟成ニンニクエキスが生成される。固液分離方法は、遠心分離、濾過、あるいは遠心分離及び濾過の組み合わせなど、固体と液体とが混在している中から液化しないまま残っている固体と液体とを分離するする方法であればよい。
【0047】
次に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例により限定されるものでない。
【実施例1】
【0048】
実施例1は、生ニンニクを破砕して使用する場合の実施例である。
【0049】
青森産の塊状の生ニンニクを粒ごとに分離して皮を剥き、前記皮を剥いた生ニンニクをフードプロセッサー(型式MK−K48−W ナショナル製)で破砕した。
【0050】
前記破砕した生ニンニクの重量に対して等重量となる水を加える。そして、生ニンニクと水との総重量に対して、酵素の割合が1.0重量%になるように、植物組織分解酵素「商品名まるごと酵素D(株式会社超臨界技術研究所製)」の酵素を添加した。
【0051】
そして、前記生ニンニクと水との総重量に対して、添加物として1重量%の昆布、ワカメ、もずく、三つ葉、レモン果皮をそれぞれ添加した。
【0052】
そして、破砕された生ニンニクと、水と、前記それぞれの添加物と、前記「まるごと酵素D」の酵素との混合物を、可撓性を有する袋体に内挿し空気を排して密封した。
【0053】
超高圧装置「商品名まるごとエキス(株式会社東洋高圧製)」を使用して、密封された袋体を、100MPaの圧力で50℃の温度に制御した状態で3日保持した。
【0054】
3日保持した後、超高圧装置内から袋体を取り出し、前記袋体を70℃または80℃に設定したウーターバス(型式TR−1A アズワン社製)に浸漬し3時間〜68時間静置した。
【0055】
静置後、袋体内の内容物30mlを遠沈管に測りとり、遠心分離機(型式H−19F コクサン社製)に取付け、3500rpmで10分間遠心分離させ、さらに上澄み液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の無臭熟成ニンニクエキスを官能評価及び濃度測定し、その結果を表1に表す。ここで、表1は破砕された生ニンニクを使用した場合である。
【0056】
ニンニク特有の刺激臭については生ニンニクと同じ強さを10、極めてわずかな臭いを1、無臭を無とし評価点1〜10間で段階的に評価し、甘味臭については甘味臭が極めて強いのを5、わずかに感じられるのを1とし評価点1〜5間で段階的に評価した。
【0057】
また、無臭熟成ニンニクエキスの成分濃度を、Brix計(型式RP−101α アタゴ社製)を用いて評価した。
【0058】
また、表1における常圧加熱処理の前工程である超高圧処理の条件は100MPa、50℃、3日である。表1において添加量は重量%で、温度は℃で表示し、試料番号0は生ニンニクを破砕してセルラーゼを含む酵素水に浸漬した状態から無処理のまま取り出した試料である。
【0059】
【表1】

【0060】
表1より、超高圧処理後に常圧加熱処理を実施した試料のいずれもが、破砕した生ニンニクでいずれの処理も実施しない試料(試料番号0)に比較して、明らかな刺激臭の低減効果が認められる。
【0061】
表1より、消臭効果を有する添加物を添加した場合と無添加の場合の刺激臭を比較すると、試料番号1の評価3に対し試料番号2乃至7のいずれの評価も無又は1であるので、昆布、ワカメ、もずく、三つ葉、レモンなどの添加による消臭効果が認められる。
【0062】
表1より、常圧加熱処理時の加熱温度の違いによる刺激臭の消臭効果をワカメで比較すると、温度80℃の試料番号3の評価1に対し、温度70℃の試料番号10は評価2であったことから、常圧加熱処理時の加熱温度を80℃に設定した方が消臭効果を有する。
【0063】
表1より、常圧加熱処理時の処理時間の違いによる刺激臭の消臭効果を処理温度80℃のワカメで比較すると、処理時間が3時間の試料番号8の評価2、処理時間が6時間の試料番号9評価2、処理時間が20時間の試料番号3の評価1であり、また処理温度が70℃のときのワカメで比較すると、処理時間が20時間の試料番号10の評価2、処理時間が68時間の試料番号11評価1であることから、加熱温度が同一であれば、加熱時間設定が長いほど消臭効果が高いことが確認できる。
【0064】
表1より、甘味臭についてはすべての試料で匂うことが認められ、かつ加熱処理時間と甘味臭との関係については試料番号10の20時間と試料番号11の68時間との比較により加熱処理時間が長いほど甘味臭が増すことが認められる。また、加熱温度と甘味臭との関係については試料番号3の80℃と試料番号10の70℃との比較により加熱温度が高いほど甘味臭が増すことが認められる。
【0065】
また、超高圧処理及び常圧加熱処理の過程において、いずれの試料にも熟成が進んでいる表れとして褐変が生じた。
【0066】
そこで、熟成の効果を確認するために、表1における試料番号1(添加剤なし)に含有されている有効成分シクロアリインの測定(地方独立行政法人青森県産業技術センター農産物加工研究所で測定)を行い、その結果を表2に示す。なお、有効成分シクロアリインには血栓予防効果があることが知られている。
【0067】
【表2】

【0068】
表2より、本発明である無臭熟成ニンニクは生ニンニクに比較して約3倍の濃度のシクロアリインを蓄積していることが認められ、これによって明らかに超高圧処理及び加熱処理によるシクロアリインの増量効果が認められた。
【0069】
さらに、生成した無臭熟成ニンニクエキスを食した直後、3時間後及び6時間後において口臭が全くしないことも確認した。
【実施例2】
【0070】
実施例2は、生ニンニクを塊のままで使用する場合の実施例である。
【0071】
青森産の塊状の生ニンニクをそのまま使用した。
【0072】
塊状の生ニンニクの重量に対して等重量となる水を加えた。そして、生ニンニクと水との総重量に対して、酵素の割合が1.0重量%になるように、植物組織分解酵素「商品名まるごと酵素D(株式会社超臨界技術研究所製)」の酵素を添加した。
【0073】
そして、塊状の生ニンニクと、水と、消臭効果を有する添加物との総重量に対して、0.5重量%の昆布、三つ葉、レモン、マッシュルーム、セロリ、パセリをそれぞれ添加物として添加した。
【0074】
そして、塊状の生ニンニクと、水と、前記それぞれの添加物と、「まるごと酵素D」の酵素との混合物を、可撓性を有する袋体に内挿し空気を排して密封した。
【0075】
超高圧装置「商品名まるごとエキス(株式会社東洋高圧製)」を使用して、密封された袋体を、100MPaの圧力で50℃の温度に制御した状態で3日保持した。
【0076】
3日保持した後、超高圧装置内から袋体を取り出し、前記袋体を80℃に設定したウーターバス(型式TR−1A アズワン社製)に浸漬し20時間静置した。
【0077】
静置後、袋体内の内容物30mlを遠沈管に測りとり、遠心分離機(型式H−19F コクサン社製)に取付け、3500rpmで10分間遠心分離させ、さらに上澄み液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の無臭熟成ニンニクエキスを官能評価及び濃度測定し、その結果を表3に表す。ここで、表3は塊状の生ニンニクを使用した場合であり、評価方法は表1と同じである。
【0078】
また、表3における超高圧処理の条件は100MPa、50℃、3日であり、常圧時の加熱処理の条件は温度80℃、1日である。表3において添加量は重量%で表示する。
【0079】
【表3】

【0080】
表3より、超高圧処理後に常圧で加熱処理することの効果を検証するために、試料番号1と試料番号2とを比較すると、常圧における加熱処理によっていずれも生ニンニクの刺激臭を低下させており、また甘味臭が増加しており、超高圧処理後に加熱処理することの効果があらわれている。
【0081】
表3より、消臭効果を有する添加物の種類によっては、添加物固有の香りを発現する添加物も認められた。
【0082】
表3より、添加物別の消臭効果をみると、添加物が無添加の場合である試料番号2はニンニク臭が評価2であるのに対し、添加物を添加した場合である試料番号3乃至8のいずれの評価も一部に評価1がみられたがほとんどが評価無であった。これにより、野菜、海藻及び柑橘類果皮からなる群の中から選択した添加物を添加すると消臭効果があることが認められる。
【0083】
表3より、甘味臭についてはすべての試料についてわずかであるが匂うことが確認できた。
【0084】
なお、試料の色はいずれも熟成がすすんだ結果として濃い褐色へ変化しており、実施例2で生成した無臭熟成ニンニクエキスを食した直後、3時間後及び6時間後とも口臭が全くしなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する袋体に内挿し密封した、生ニンニクと、水と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物と、セルラーゼを含む酵素とを、50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の範囲内でセルラーゼを含む酵素の至適温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持し、前記保持後、常圧〜200MPaで50℃〜80℃の温度で1日〜3日加熱処理することを含む手段で生成されることを特徴とする無臭熟成ニンニクエキス。
【請求項2】
可撓性を有する袋体に内挿し密封した、生ニンニクと、水と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物と、セルラーゼを含む酵素とを、50MPa以上〜200MPa未満の圧力で30℃〜60℃の範囲内でセルラーゼを含む酵素の至適温度に制御した状態で2日〜6日、好ましくは3日〜4日保持する工程と、前記保持工程後、常圧〜200MPaで50℃〜80℃の温度で1日〜3日加熱処理する工程を含む工程からなることを特徴とする無臭熟成ニンニクエキス製造方法。
【請求項3】
可撓性を有する袋体に内挿され密封される内包物が、生ニンニクと、前記生ニンニクの重量に対し10重量%〜500重量%の水と、前記生ニンニク及び水の総重量に対して0.01重量%〜5重量%のセルラーゼを含む酵素と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物である添加物が、前記ニンニク、前記水及び前記添加物との総重量に対して0.1重量%〜90重量%となる添加物とからなることを特徴とする請求項1に記載の無臭熟成ニンニクエキス。
【請求項4】
可撓性を有する袋体に内挿され密封される内包物が、生ニンニクと、前記生ニンニクの重量に対し10重量%〜500重量%の水と、前記生ニンニク及び水の総重量に対して0.01重量%〜5重量%のセルラーゼを含む酵素と、野菜、海藻、柑橘類またはこれらの抽出物である添加物が、前記ニンニク、前記水及び前記添加物との総重量に対して0.1重量%〜90重量%となる添加物とからなることを特徴とする請求項2に記載の無臭熟成ニンニクエキス製造方法。

【公開番号】特開2011−167114(P2011−167114A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33105(P2010−33105)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(510039286)
【出願人】(509245533)
【Fターム(参考)】