説明

無鉛低融点ガラス組成物

【課題】
電子材料基板を封着するための低融点ガラスであって、実質的にPbOを含まない無鉛低融点ガラスが望まれている。
【解決手段】質量%でSiOを0〜8、Bを2〜12、ZnOを2〜7、RO(MgO+CaO+SrO+BaO)を0.5〜3、CuOを0.5〜5、Biを80〜90、Feを0.1〜3、Alを0.1〜3含むことを特徴とする低融点ガラス組成物及びそれを用いた導電性ペースト材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、蛍光表示パネル、エレクトロクロミック表示パネル、発光ダイオード表示パネル、ガス放電式表示パネル等に代表される電子材料基板用の絶縁性被膜材料及び封着材料として用いられる無鉛低融点ガラス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子部品の接着や封着材料として、或いは電子部品に形成された電極や抵抗体の保護や絶縁のための被服材料としてガラスが用いられている。特に近年の電子部品の発達に伴い、プラズマディスプレイパネル、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、蛍光表示パネル、エレクトロクロミック表示パネル、発光ダイオード表示パネル、ガス放電式表示パネル等、多くの種類の表示パネルが開発されている。
【0003】
これらに用いられるガラスは、その用途に応じて化学耐久性、機械的強度、流動性、電気絶縁性等種々の特性が要求されるが、特に、封着材料として用いる場合、低温での流動性が重要なファクターとして挙げられる。流動性が不十分な場合、シール部分からのリークの恐れがあり、表示パネルで求められる特性が得られない。それゆえ何れの用途においてもガラスの融点を下げる効果が極めて大きいPbOを多量に含有した低融点ガラスが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながらPbOは、人体や環境に与える弊害が大きく、近年その採用を避ける趨勢にあり、PDPを始めとする電子材料では無鉛化が検討されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−52621号公報
【特許文献2】特開2000−219536号公報
【特許文献3】特開平9−227214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉛成分はガラスを低融点とするうえで重要な成分ではあるものの、人体や環境に与える弊害が大きく、近年その採用を避ける趨勢にあり、PDPを始めとする電子材料では無鉛ガラスが求められている。
【0007】
PbO系に替わる無鉛組成では、不安定なガラスが多く、高温で処理された場合、焼成途中で結晶化し、その機能が十分発揮されない。
【0008】
すなわち、上記特開2001−52621号公報は、低融点ガラスとしての効果は認められるが、鉛を含んでいるという基本的な問題がある。
【0009】
さらに、上記特開2000−219536号公報及び上記特開平9−227214号公報は、鉛を含んでいないが、不安定なガラスであり、高温で処理された場合、焼成途中で結晶化し、その機能が十分発揮されない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、質量%でSiOを0〜8、Bを2〜12、ZnOを2〜7、RO(MgO+CaO+SrO+BaO)を0.5〜3、CuOを0.5〜5、Biを80〜90、Feを0.1〜3、Alを0.1〜3含むことを特徴とする無鉛低融点ガラス組成物である。
【0011】
また、1〜40質量%の耐火物フィラーを含有することを特徴とする上記の無鉛低融点ガラス組成物である。
【0012】
さらに、上記の無鉛低融点ガラス組成物を使っていることを特徴とする電子材料用基板である。
【0013】
さらに、上記の無鉛低融点ガラス組成物を使っていることを特徴とするディスプレイ用パネルである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、プラズマディスプレイパネル、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンスパネル、蛍光表示パネル、エレクトロクロミック表示パネル、発光ダイオード表示パネル、ガス放電式表示パネル等に代表される電子材料において、高温時に結晶しにくく安定な無鉛低融点ガラス組成物を得ることが出来る。さらに、実質的に鉛成分を含まないため人体や環境に与える弊害がない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、質量%でSiOを0〜8、Bを2〜12、ZnOを2〜7、RO(MgO+CaO+SrO+BaO)を0.5〜3、CuOを0.5〜5、Biを80〜90、Feを0.1〜3、Alを0.1〜3含むことを特徴とする無鉛低融点ガラス組成物である。
【0016】
また、1〜40wt%の耐火物フィラーを含有することを特徴とする上記の無鉛低融点ガラス組成物である。
【0017】
SiOはガラス形成成分であり、別のガラス形成成分であるBと共存させることにより、安定したガラスを形成することができるもので、0〜8%(質量%、以下においても同様である)の範囲で含有させる。8%を越えると、ガラスの軟化点が上昇し、成形性、作業性が困難となる。より好ましくは、0〜4%の範囲である。
【0018】
はガラス形成成分であり、ガラス溶融を容易とし、ガラスの熱膨張係数において過度の上昇を抑え、かつ、焼付け時にガラスに適度の流動性を与え、ガラスの誘電率を低下させるものである。ガラス中に2〜12%の範囲で含有させるのが好ましい。2%未満ではガラスの流動性が不充分となり、焼結性が損なわれる。他方12%を越えるとガラスの軟化点が上昇し、成形性、作業性が困難となる。より好ましくは4〜8%の範囲である。
【0019】
ZnOはガラスの軟化点を下げ、熱膨張係数を適宜範囲に調整するもので、ガラス中に2〜7%の範囲で含有させる。2%未満では上記作用を発揮しえず、7%を越えるとガラスが不安定となり失透を生じ易い。より好ましくは3〜7%の範囲である。
【0020】
RO(MgO+CaO+SrO+BaO)はガラスの軟化点を下げ、適度に流動性を与え、熱膨張係数を適宜範囲に調整するもので、0.5〜3%の範囲で含有させる。3%を超えると熱膨張係数が高くなり過ぎる。より好ましくは1〜3%の範囲である。
【0021】
CuOはガラスの溶融時或いは焼成時の失透を抑制するもので、0.5〜5%の範囲で含有させる。5%を超えるとガラスの安定性を低下させる。より好ましくは、1〜3%の範囲である。
【0022】
Biはガラスの軟化点を下げ、流動性を与え、熱膨張係数を適宜範囲に調整するもので、80〜90%の範囲で含有させることが望ましい。80%未満では上記作用を発揮しえず、90%を超えると熱膨張係数が高くなり過ぎる。より好ましくは83〜88%の範囲である。
【0023】
Feはガラスの溶融時或いは焼成時の失透を抑制するもので、0.1〜3%の範囲で含有させる。3%を超えるとガラスの安定性を低下させる。より好ましくは、0.1〜2%の範囲である。
【0024】
Alはガラスの溶融時或いは焼成時の失透を抑制するもので、0.1〜3%の範囲で含有させる。3%を超えるとガラスの安定性を低下させる。より好ましくは、0.1〜2%の範囲である。
【0025】
この他にも、一般的な酸化物で表すIn、TiO、SnO、TeOなどを上記性質を損なわない範囲で適宜加えてもよい。
【0026】
実質的にPbOを含まないことにより、人体や環境に与える影響を皆無とすることができる。ここで、実質的にPbOを含まないとは、PbOがガラス原料中に不純物として混入する程度の量を意味する。例えば、低融点ガラス中における0.3質量%以下の範囲であれば、先述した弊害、すなわち人体、環境に対する影響、絶縁特性等に与える影響は殆どなく、実質的にPbOの影響を受けないことになる。
【0027】
さらに上記ガラスに、1〜40wt%の耐火物フィラーを含有することもできる。耐火物フィラーを含有させることにより、熱膨張係数を調整することが可能で、また、機械的強度を向上させることが可能となる。40wt%以上で封着材料としての流動性が低下しリークの原因となる。好ましくは3〜20%の範囲である。耐火物フィラーとしては、コーディエライト、β−ユークリプタイト、ジルコン、ムライト、アルミナ等が使用できる。
【0028】
本発明の無鉛低融点ガラス組成物は、電子材料用基板、ディスプレイ用パネルに対して好適に使用出来る。
【0029】
本発明の無鉛低融点ガラス組成物は、粉末化して使用されることが多い。この粉末化されたガラスは、必要に応じて耐火物フィラー、耐熱顔料等と混合され、次に有機オイルと混練してペースト化されるのが一般的である。
【0030】
ガラス基板としては透明なガラス基板、特にソーダ石灰シリカ系ガラス、または、それに類似するガラス(高歪点ガラス)、あるいは、アルカリ分の少ない(又は殆ど無い)アルミノ石灰ホウ珪酸系ガラスが多用されている。
【実施例】
【0031】
以下、実施例に基づき、説明する。
【0032】
まず、ガラス粉末は、実施例に記載した所定組成となるように各種無機原料を秤量、混合して原料バッチを作製する。この原料バッチを白金ルツボに投入し、電気加熱炉内で1000〜1300℃、1〜2時間で加熱溶融して表1の実施例1〜7、表2の比較例1〜4に示す組成のガラスを得た。ガラスの一部は型に流し込み、ブロック状にして熱物性(熱膨張係数、軟化点)測定用に供した。残余のガラスは急冷双ロール成形機にてフレーク状とし、粉砕装置で平均粒径1〜4μm、最大粒径10μm未満の粉末状に整粒した。
【0033】
なお、軟化点は、熱分析装置TG―DTA(リガク(株)製)を用いて測定した。また、熱膨張係数は、熱膨張計を用い、5℃/分で昇温したときの30〜300℃での伸び量から求めた。
【0034】
得られたガラス粉末について、ハンドプレス機を用いて、10mm×10mmφの円筒状にプレス成形し、450℃−30分間焼成した。また耐火物フィラーとしてβ−ユークリプタイト粉末を所定比で混合し、同様にプレス成形体を450℃−30分間焼成した。
【0035】
プレス成形体の焼成後の広がり度合いは、ガラスの結晶化度や流動性に密接に関わっており、焼成後に十分広がっているものを〇(流動性が高い)、広がりが不十分なものを×(流動性が低い)とした。
(結果)
低融点ガラス組成および、各種試験結果を表に示す。
【表1】

【表2】

表1における実施例1〜7に示すように、本発明の組成範囲内においては、結晶化度合いが低く、流動性が高い。つまり電子材料基板やディスプレイパネル用の封着材料として好適である。
【0036】
他方、本発明の組成範囲を外れる表2における比較例1〜4は、焼成時の結晶化が顕著である、又は好ましい物性値を示さず、封着材料としては適用し得ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン半導体基板を用いる太陽電池用の導電性ペーストに含まれる低融点ガラスにおいて、その組成が、実質的に鉛成分を含まず、質量%で、
SiO 0〜8、
2〜12、
Al 0.1〜3、
ZnO 2〜7、
RO(MgO、CaO、SrO、BaOより選択される1種以上の合計) 0.5〜3、
CuO 0.5〜5、
Bi 80〜90、
Fe 0.1〜3、
を含むことを特徴とする無鉛低融点ガラス。
【請求項2】
1〜40質量%の耐火物フィラーを含有することを特徴とする請求項1に記載の無鉛低融点ガラス組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の無鉛低融点ガラス組成物を使用していることを特徴とする電子材料用基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無鉛低融点ガラス組成物を使っていることを特徴とするディスプレイ用パネル。



【公開番号】特開2012−12231(P2012−12231A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147805(P2010−147805)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】