説明

無電解めっき液

【解決手段】本発明の無電解めっき液は、配線構造を有する半導体装置の製造に際して露出した該配線の表面に保護膜を選択的に形成するのに使用される無電解めっき液であって、コバルトイオン、コバルトとは異なる第2の金属のイオン、キレート剤、還元剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよび次式(1)で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムを含有することを特徴としている。


上記式(1)において、R2、R3、R4、R5は、アルキル基、ヒドロキシアルキル基の何れかの基を表す。
【効果】本発明によれば、銅等の配線上に高い選択率でコバルト系合金を保護膜として形成することができ、露出した配線の表面汚染、層間絶縁膜へのエレクトロマイグレーションを防止でき、配線抵抗が増大、配線以外へのめっき金属析出の虞を回避でき、さらに、本発明の無電解めっき液は環境ホルモンとされる成分を含有せず、使用環境への悪影響を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅もしくは銅合金を配線材料とした配線構造を有する半導体装置の製造において、露出した該配線の表面に保護膜を選択的に形成するのに使用される無電解めっき液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板上に形成する高密度集積回路の微細配線は、主にアルミニウム系合金が用いられていた。しかしながら、半導体装置をさらに高速化するためには、配線用材料として、アルミニウム系合金よりも比抵抗の低い銅あるいは銅合金等を用いることが必要になってきている。さらに、特に銅は、エレクトロマイグレーション耐性がアルミニウム系合金に比べて一桁程度高いため、次世代の半導体装置の配線材料として期待されている。
【0003】
半導体装置の銅配線形成プロセスとしては、配線溝およびコンタクトホールに金属を埋込むプロセス(ダマシンプロセス)が採用されている。このダマシンプロセスは、層間絶縁膜に予め形成した配線溝やコンタクトホールに、銅あるいは銅合金等の金属を埋込んだ後、余分な金属を化学的機械的研磨(CMP)によって除去し平坦化するプロセスである。
【0004】
この種の配線にあっては、平坦化後、その配線の表面が外部に露出しており、この上にさらに埋込み配線を形成する場合には、その配線上にさらに層間絶縁膜を形成し配線溝を形成するが、この際に露出した配線の表面汚染や、積層した層間絶縁膜へのエレクトロマイグレーションが懸念されている。そのため、従来、表面が露出している配線形成部のみならず、半導体基板の全表面に窒化シリコン等の配線保護膜を形成することが行われている。
【0005】
しかし、窒化シリコン膜と銅との界面におけるエレクトロマイグレーション耐性が弱く、また、窒化シリコン膜自体が高誘電率であるため、配線遅延( 抵抗R と容量CとによるRC遅延)が大きくなるという問題が生ずる。こうしたRC遅延の改善し、エレクトロマイグレーション耐性に優れており銅の拡散防止性に有効な材料としてコバルトタングステンリン(CoWP)を使用することが提案されている(米国特許第5695810号明細書(特許文献1))。
【0006】
このCoWPは無電解めっきにより選択的に銅配線上のみに成膜できるという利点を有
している。
CoWP無電解めっきを行う場合には、還元剤として次亜リン酸ナトリウムが一般的に
用いられる。ところが次亜リン酸ナトリウムは銅上で反応が進行しない不活性な還元剤であるために、銅上へ直接めっきできないことが知られている(例えばG.O.Mallory, J.B.Hajdu, "Electroless Plating−Fundamentals & Applications−", American Electroplaters And Surface Finishers Society, Florida, page 318,1990;(非特許文献1))。
【0007】
そのため、銅配線上にパラジウムなどのシード層を付与した後に、無電解めっきにより前記CoWP膜を形成することが必要となる。ところが、このようにしてシード層を形成
するパラジウムは、配線層を形成する銅と反応して銅の抵抗を増大させる虞がある。また、配線以外の絶縁物の表面にもパラジウムが付着することがあり、前記CoWP膜が配線
以外の絶縁物表面にも形成される虞がある。このため、微細な配線を形成する際に要求される配線間の絶縁性が低下するという問題がある。
【0008】
このようにパラジウムが銅と反応することによる銅配線への影響を回避するため、触媒としてパラジウムを使用しない還元剤を使用する必要があり、このような還元剤としてジメチルアミンボラン(DMAB)を用いたCoWB 無電解めっき法も提案されている(米国特許第5169680号明細書(特許文献2)、特開2003−49280号公報(特許文献3))。しかしながら、ジメチルアミンボラン(DMAB)は、還元力が強いために無電解めっき液の安定性が劣り、銅配線以外の場所にもコバルトを析出させる場合があるという問題がある。
【0009】
また、無電解めっき液には、めっき浴の安定性や析出速度の調整目的でアニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤を添加することが一般的に行われている。良好なめっき浴の安定性や析出速度の適正化に有効なものとして、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびこれらの硫酸エステルやリン酸エステルが使用されることがあるが、これらの化合物質は内分泌撹乱物質(環境ホルモン)であるもしくはその疑いがあるとされ、無電解めっき作業者および周辺環境への影響が懸念される。
【特許文献1】米国特許第5695810号明細書
【特許文献2】米国特許第5169680号明細書
【特許文献3】特開2003−49280号公報
【非特許文献1】G.O.Mallory, J.B.Hajdu, "Electroless Plating−Fundamentals & Applications−", American Electroplaters And Surface Finishers Society, Florida, page 318,1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決することにあり、より具体的には、銅および銅合金からなる配線の汚染や銅の拡散による半導体装置の信頼性の低下を防止し、選択的に配線上のみに均一に拡散防止能を有する保護膜を形成できる無電解めっき液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無電解めっき液は、配線構造を有する半導体装置の製造に際して露出した該配線の表面に保護膜を選択的に形成するのに使用される無電解めっき液であって、コバルトイオン、コバルトとは異なる第2の金属のイオン、キレート剤、還元剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよび次式(1)で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムを含有することを特徴としている。
【0012】
【化3】

【0013】
上記式(1)において、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立に、アルキル基およびヒドロキシアルキル基よりなる群から選らばれる何れかの基を表す。
本発明の無電解めっき液中に含有されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルは、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
【化4】

【0015】
上記式(2)において、R1は、炭素数10以上の炭化水素基を表し、nは5以上30
未満であり、mは1または2である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の無電解めっき液には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが配合されており、このポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを使用することにより、パラジウムを使用することなく、めっき液の安定性が良好で、選択的に配線上のみに均一に拡散防止能を有する保護膜を形成できる無電解めっき液とすることができる。
【0017】
さらに、本発明の無電解めっき液には、pH値を調整するために、上記式(1)で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムが使用されており、pH値の調整剤アルカリ金属を含むpH調整剤を使用していないので、本発明の無電解めっき液を用いて形成された保護膜中にアルカリ金属が含有されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の無電解めっき液について具体的に説明する。
本発明の無電解めっき液は、金属銅あるいは銅合金表面にコバルトを含有する均一に拡散防止能を有する保護膜を形成するのに好適に使用される無電解めっき液である。
【0019】
本発明の無電解めっき液に含有されるコバルトイオンの供給源としては、水溶性のコバルト(II)塩が配合される。その塩としては特に限定されるものではないが、例として硫酸コバルト、塩化コバルト、臭化コバルト、酢酸コバルト、シュウ酸コバルト、硝酸コバルト、水酸化コバルト等を挙げることができる。これらのコバルトイオン供給源である化合物は単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらの例示したコバルト塩のうち、硫酸コバルト、硝酸コバルト、水酸化コバルトが好ましい。配合されるコバルト塩の量は、使用するコバルト塩の種類により適宜決定されるが、コバルトイオンとして、通常は0.001〜1mol/リットル、好ましくは0.01〜1mol/リットルである。
【0020】
本発明の無電解めっき液には、コバルトイオンのほかに第2の金属イオンが含有されて
いる。
本発明において、コバルトとは異なる第2の金属イオンとしては、コバルト以外の元素周期表の第4周期金属、第5周期金属および第6周期金属のイオン、および該金属を含む原子団イオンから選択される。具体的な元素としては、
第4周期のクロム、ニッケル、銅、亜鉛、
第5周期のモリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、
第6周期のタングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金を挙げることができる。本発明では、これらの第2の金属のうち、タングステンおよび/またはモリブデンが好ましい。
【0021】
本発明において、これらの第2の金属のイオンの供給源としては、例えば、
二酸化タングステン、三酸化タングステン、二酸化モリブデンおよび三酸化モリブデン等のような金属酸化物、
五塩化タングステン、六塩化タングステン等のような金属塩、
タングステン酸、モリブデン酸
タングステン酸塩、モリブデン酸塩、
タングストリン酸等のようなヘテロポリ酸及びその塩を挙げることができる。
【0022】
本発明の無電解めっき液には、上記のような第2の金属の量は、0価の金属換算で、通常は0.001〜1mol/リットル、好ましくは0.01〜1mol/リットルの量で使用さ
れる。
【0023】
本発明の無電解めっき液には、コバルト等の金属イオンを安定化させるためにキレート剤が配合される。
本発明で使用することができるキレート剤の例としては、カルボン酸およびその塩、アミノカルボン酸およびその塩、オキシカルボン酸およびその塩等、一般的なキレート剤を使用することができる。特に本発明で使用することができるキレート剤の好適な例としては、酢酸、グリシン、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸、およびそれらの塩、ピロリン酸およびその塩等を挙げることができる。これらのキレート剤は単独であるいは組み合わせて使用することができる。特に本発明ではこれらの中でも特にクエン酸が好ましい。本発明の無電解めっき液中におけるキレート剤の配合量としては、通常は0.001mol/リットル〜2mol/リットル、好ましくは0.01mol/リットル〜1.5mol/リットルである。
【0024】
本発明の無電解めっき液中に含有されるコバルトイオン、第2の金属イオン等の金属イ
オンを露出した配線の表面(被めっき面)に金属として析出させるために還元反応を利用する。本発明の無電解めっき液中で還元反応を進行させるための還元剤は、ナトリウム等のアルカリ金属を含まないものであることが好ましい。
【0025】
このようにアルカリ金属を含有しない還元剤を使用することにより、本発明の無電解めっき液から形成される被覆膜中にアルカリ金属が含有されず、良好な膜特性を有する被覆膜を形成することができる。
【0026】
このような還元剤の例としては、モノアルキルアミンボラン、ジアルキルアミンボランおよびトリアルキルアミンボランを挙げることができ、具体的な例としてはジメチルアミンボラン(Boran-dimethylamine complex, or Dimethylamineborane、以下、DMABと
称す。)を挙げることができる。
【0027】
本発明の無電解めっき液に配合されるジメチルアルキルボランなどの還元剤は、コバルトイオンおよび第2の金属イオンを析出させるための還元剤となるだけでなく、析出形成
される無電解めっき層を構成するコバルト系合金(例えばCoWB)中のホウ素(B)の
供給源としても作用する。
【0028】
また、本発明では好適な還元剤として、次亜リン酸及び次亜リン酸塩を挙げることができる。この場合にも還元剤である次亜リン酸及び次亜リン酸塩も、析出形成される無電解めっき層を構成するコバルト系合金(例えばCoWP)中のリン(P)の供給源としても
作用する。
【0029】
本発明の無電解めっき液中に上記のような還元剤は、通常は0.001mol/リットル〜1mol/リットル、好ましくは0.01mol/リットル〜1mol/リットルの量で配合される。
一般に無電解めっき液には、めっき浴の安定性を確保するために、さらには金属の析出速度を調整するために界面活性剤が配合される。このような目的で無電解めっき液に配合される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などがある。特に無電解めっき液の安定性を確保し、金属の析出速度を適正化するために有効な界面活性剤として、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、および、これらの硫酸エステルあるいはリン酸エステルが使用されている。このような界面活性剤は、円滑に無電解めっきを行うためには必要であるが、他方、無電解めっき液に汎用されている上記の化合物質は内分泌撹乱物質(環境ホルモン)であるとの疑いがあり、無電解めっき作業者及び周辺環境への影響を考慮すると、内分泌攪乱作用のない界面活性剤を使用することが望ましい。
【0030】
本発明では、こうした作業者および周辺環境への影響を考慮して、界面活性剤として内分泌攪乱作用のないポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル系界面活性剤を使用する。
【0031】
本発明で使用されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルはノニオン型アニオン系界面活性剤であり、次式(2)で表すことができる。
【0032】
【化5】

【0033】
上記式(2)において、R1は、炭素数10以上の炭化水素基を表し、nは5以上30
未満であり、mは1または2である。
上記式(2)において、R1で表される炭素数10以上のアルキル基、好ましくは炭素
数10〜30のアルキル基の例としては、デシル基、イソデシル基、ラウリル基、トリデシル基、セチル基、オレイル基およびステアリル基を挙げることができる。上記式(2)におけるR1は、同一の基であってもよいし、複数の基を組み合わされていてもよい。こ
のようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの分子量は通常は400以上である。
【0034】
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの具体的な例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンデシルエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのリン酸ジエステル、ポリオキシエチレントリデシルルエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルのリン酸ジエステルを挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。また、このポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルにはモノエステル、ジエステルなどがあるが、本発明では、モノエステルおよびジエステルはそれぞれ単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。
【0035】
本発明の無電解めっき液に配合されるポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの量は通常は0.0001質量%〜1質量%、好ましくは0.001質量%〜0.5質量%の範囲内にある。本発明において、界面活性剤は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0036】
本発明の無電解めっき液には、pH値を調整するために水酸化テトラアルキルアンモニ
ウムが配合されている。この水酸化テトラアルキルアンモニウムは次式(1)で表すことができる。
【0037】
【化3】

【0038】
上記式(1)において、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立に、アルキル基およびヒドロキシアルキル基よりなる群から選ばれる何れかの基を表す。
この化合物は、アルカリ金属を含まないpH調整剤である。
【0039】
本発明において、pH調整剤として使用される式(1)で表される化合物の例としては
、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、「TMAH」と称す。)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリエチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、水酸化2−ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0040】
上記のような式(1)で表される化合物は、本発明の無電解めっき液のpH値を通常は
5〜14、好ましくは7〜11の範囲内に調整し得る量で使用される。
本発明の無電解めっき液には、上記成分以外に必要に応じて、緩衝剤、腐食防止剤、促進剤等の公知の添加剤を配合することができる。例えばホウ酸は緩衝剤・促進剤として作用する添加剤として挙げられる。
【0041】
本発明の無電解めっき液を用いてコバルト合金めっき被膜を形成する方法としては、予め常法に従い被めっき面の洗浄等の必要な前処理を施した半導体基板を、液温が20~1
00℃、好ましくは35〜90℃の無電解めっき液に必要な膜厚のめっき被膜が形成されるまで浸漬する方法を採用することができる。
【0042】
半導体基板に形成される配線構造を構成する配線材料としては、銅が一般的に使用され、この銅膜は、純銅に限られず、例えば銅−シリコンや銅−アルミニウムなどの銅の含有割合が95質量%以上である銅合金からなっていてもよい。この配線は、配線溝が形成された層間絶縁膜上を、タンタル、チタンなどの硬度の高い金属および/またはそれらの窒化物、酸化物等のバリアメタルにより被覆し、さらに上記配線金属を電解めっき等により堆積した半導体基板を化学的機械的研磨(CMP)するダマシン工法により形成される。
【0043】
ここで、上記バリアメタル膜を形成する金属は純品に限られず、例えばタンタル−ニオブなどの合金であってもよい。また、バリアメタル膜が窒化物によって形成される場合に、窒化タンタルや窒化チタンなども必ずしも純品である必要はない。このバリアメタル膜の材質は、タンタルおよび/または窒化タンタルであることが特に好ましい。バリアメタル膜は、タンタル、チタンなどのうちの1種により形成されることが多いが、異なる材質、例えばタンタル膜と窒化タンタル膜との両方がバリアメタル膜として同一基板上に形成されていてもよい。
【0044】
また、層間絶縁膜としては、化学蒸着法などの真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(PETEOS膜(Plasma Enhanced-TEOS膜) 、HDP膜(High Density Plasma Enhanced-TEOS膜)、熱CVD法により得られる酸化シリコン膜など)、SiO2に少量のホウ素およびリンを添加したホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiO2にフッ素をドープしたFSG(Fluorine-doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Silicon nitrideなどを挙げることができる。
【0045】
さらに、低誘電率の層間絶縁膜としては、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、H2O、オゾン、アンモニアなどの存在下で、アルコキシシラン、シラン、アルキ
ルシラン、アリールシラン、シロキサン、アルキルシロキサンなどの珪素含有化合物をプラズマ重合して得られる重合体からなる層間絶縁膜、さらにはポリシロキサン、ポリシラザン、ポリアリーレンエーテル、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド、シルセスキオキサンなどからなる層間絶縁膜も使用することができる。
【0046】
さらに、上記低誘電率の酸化シリコン系絶縁膜は、原料を例えば回転塗布法によって基体上に塗布した後、酸化性雰囲気において加熱することにより得ることができる。このようにして得られる低誘電率の酸化シリコン系絶縁膜としては、トリエトキシシランを原料
とするHSQ膜(Hydrogen Silsesquioxane膜)、テトラエトキシシランと少量のメチル
トリメトキシシランを原料とするMSQ膜(Methyl Silsesquioxane膜)、その他のシラ
ン化合物を原料とする低誘電率の絶縁膜を挙げることができる。こうした素材からからなる低誘電率の絶縁膜に、適当な有機ポリマー粒子などを混合して用いることにより、有機ポリマー粒子が加熱工程で焼失して空孔が形成され、こうした空孔が形成されることにより絶縁膜の誘電率がさらに低くなる。
【0047】
また、低誘電率の絶縁膜は、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリレンエーテル系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ベンゾシクロブテンポリマーなどの有機ポリマーを原料として形成することもできる。
【0048】
本発明の無電解めっき液は、このような銅配線が露出した半導体基板に対して、非常に高い選択率で、銅配線上に拡散防止膜材料であるコバルト系合金からなるシード層を形成するのに適している。
【実施例】
【0049】
次に本発明を実施例を示してさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)無電解めっき液の調製
容量5000mlのガラス製ビーカーに80℃に加熱した2000mlの25質量%のTMAH水溶液を入れ、このTMAH水溶液に150gの三酸化タングステンを添加して溶解させた。
【0050】
次に、別の容量5000mlのガラス製ビーカーに、500mlの25質量%のTMAH水溶液、850gのクエン酸、150gのホウ酸、および180gの硫酸コバルト七水和物を入れて溶解させた。
【0051】
次いで、上記のようにして調製した2つの溶液を混合した後、この混合液に3gのポリオキシエチレンラウリルエーテルのリン酸モノエステルとジエステルとの混合物(第一工業製薬株式会社製、製品名;プライサーフA219B)を加えて溶解させた。
【0052】
さらに得られた混合液に脱イオン水および25質量%TMAH水溶液を用いて、混合溶
液のpH値が9.0および総容量が10リットルになるように調整した。
こうして調製しためっき液に、20gのDMABを溶解し、めっき液−1を調製した。
【0053】
(2)無電解めっき液の安定性評価
清浄なガラス製試験管に調製しためっき液−1を25ml量り採り、これに無電解めっき反応の開始触媒となる0.02g/リットルの濃度の塩化パラジウム水溶液0.2mlを加え均一な溶液とした後、80℃に加熱し、めっき液の状態の変化を観察した。調製しためっき液の安定性が不充分な場合には、塩化パラジウムの存在下加熱することで、還元反応が開始し金属が析出することになる。
【0054】
しかし、めっき液−1は80℃加熱後20分以上金属の析出による濁りの発生も無く、充分な安定性を有することが判った。
(3)めっき性能評価
市販されている、めっきにより銅箔層が形成されたシリコン基板を5cm四方の試験片に切り取り、脱イオン水にて洗浄後、精密天秤にてその質量(W1)を測定した。
【0055】
次いで、この試験片を80℃に加熱した100mlのめっき液−1に20分間浸漬した。
試験片を取り出し、脱イオン水にて洗浄すると、試験片の表面は銀色の鏡面に変化しており、銅の表面にコバルト系合金がめっきされたことが判る。
【0056】
20分経過後、洗浄後の試験片の質量(W2)を精密天秤にて測定し、めっき前後の質量変化(W2−W1)からめっきされた金属の量を算出し、めっき時間および試験片面積からめっき速度を算出した。
【0057】
めっき液−1のめっき速度は、0.4nm/secであった。
次いで、JSR株式会社製銅用CMPスラリー(製品名;CMS7401およびCMS7452)とバリアメタル用CMPスラリー(製品名;CMS8401およびCMS8452)を用いて研磨し、絶縁膜上に銅配線が露出したパターン付シリコン基板(ATDF製銅ダマシン配線付基板、854CMP001)を用意し、3cm四方の試験片に切り取った。この試験片を脱イオン水にて洗浄後80℃に加熱した100mlのめっき液−1に一分間浸漬した。
【0058】
脱イオン水にて再度洗浄後、めっきされた試験片を走査型電子顕微鏡にて観察し、本来めっきされてはならない絶縁膜上には、金属が析出していないことを確認した。
〔実施例2〕
(1)無電解めっき液の調製
容量5000mlのガラス製ビーカーに、150gの三酸化タングステンおよび2000mlの25質量%のTMAH水溶液を入れ、80℃に加熱して溶解させた。
【0059】
次に、別の容量5000mlのガラス製ビーカーに、800gのクエン酸、60gの水酸化コバルトを入れ、2000mlの脱イオン水を加えて溶解させた。
次いで、上記のようにして調製した2つの溶液を混合した後、この混合溶液に3000mlの25質量%のTMAH水溶液、300mlの50質量%の次亜リン酸水溶液、150g
のホウ酸を加えて溶解させた。
【0060】
さらに、この溶液に30gのDMABおよび1gのHLB値10.5のポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、製品名;フォスファノールRS−610)を加えて溶解させた。
【0061】
その後、脱イオン水および25質量%TMAH水溶液を用いて、混合溶液のpH値が9
.0および総容量が10リットルになるように調整し、めっき液−2を調製した。
そして、実施例1と同様の方法にて、無電解めっき液の安定性およびめっき性能を評価し、表−1に示す結果を得た。
【0062】
〔実施例3〕
(1)無電解めっき液の調製
容量5000mlのガラス製ビーカーに80℃に加熱した2000mlの25質量%のTMAH水溶液を入れ、このTMAH水溶液に150gの三酸化タングステンを加えて溶解させた。
【0063】
次に、別の容量5000mlのガラス製ビーカーに、3500mlの25質量%のTMAH水溶液を入れ、このTMAH水溶液に、850gのクエン酸、150gのホウ酸、および180gの硫酸コバルト七水和物を加えて溶解させた。
【0064】
次いで、上記のようにして調製した2つの溶液を混合した後、この混合液に150mlの50質量%の次亜リン酸水溶液、10gのN-(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン‐N,N',N'−三酢酸、および、0.1gのHLB値13.3のポリオキシエチレントリデ
シルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、製品名;フォスファノールRS−710)を加えて溶解させた。
【0065】
さらに、この溶液に10gのDMABを加え、その後、脱イオン水および25質量%T
MAH水溶液を用いて、混合溶液のpH値が9.0および総容量が10リットルになるように調整し、めっき液−3を調製した。
【0066】
このめっき液-3について、実施例1と同様の方法にて、無電解めっき液の安定性およ
びめっき性能を評価し、表−1に示す結果を得た。
〔比較例1〕
実施例2記載のめっき液の調製手順のうち、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのリン酸モノエステルとジエステルの混合物(第一工業製薬株式会社製、製品名;プライサーフA219B)を用いなかった以外は、同じ配合にてめっき液−4を調製した。
【0067】
〔比較例2〕
実施例2記載のめっき液の調製手順のうち、HLB値10.5のポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、製品名;フォスファノールRS−610)の代わりにポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業株式会社製、製品名;フォスファノールRE−610)を用いた以外は、同じ配合にてめっき液−5を調製した。
【0068】
比較例1〜2についても、それらの評価結果を表−1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
以上の結果から、実施例1〜3は比較例1との対比より、充分なめっき速度を有しながら、めっき処理を安定に行うに足りる充分な安定性を有しており、さらには、本来の目的である、銅もしくは銅合金を配線材料とした配線構造を有する半導体基板上の露出した該
配線の表面のみに銅の拡散防止能を有する保護膜を選択的に形成する能力を有していることが判る。
また、比較例2との対比からは、従来の界面活性剤を使用しためっき液と同等以上のめっき液安定性を有していることが判り、さらには、露出した銅配線上のみにめっきする選択性が向上していることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
銅もしくは銅合金を配線材料とした配線構造を有する半導体装置の製造において、露出した該配線の表面に銅の拡散防止能を有する保護膜を選択的に形成するために、無電解めっきによる保護膜形成が有効な手段として提案されている。本発明の無電解めっきは、コバルトイオン、コバルトとは異なる第2の金属のイオン、キレート剤、還元剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよび次式R2345NOH(式中、R2
、R3、R4、R5は前記と同義)で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムを含有す
ることにより、優れた選択性をもって銅等の配線上のみにコバルト系合金を保護膜として形成することができ、露出した配線の表面汚染や、積層した層間絶縁膜へのエレクトロマイグレーションを防止することができる。また、パラジウム等のシード層を必要としないため、配線抵抗が増大する虞や、配線以外の絶縁物上へのパラジウム付着による配線以外へのめっき金属析出の虞を回避することができる。さらには、従来のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルやポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の内分泌撹乱物質(環境ホルモン)を使用することなく、これらの性能を達成することができるため、無電解めっき作業者および周辺環境への影響を抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線構造を有する半導体装置の製造に際して露出した該配線の表面に保護膜を選択的に形成するのに使用される無電解めっき液であって、コバルトイオン、コバルトとは異なる第2の金属のイオン、キレート剤、還元剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルおよび次式(1)で表される水酸化テトラアルキルアンモニウムを含有することを特徴とする無電解めっき液;
【化1】

(上記式(1)において、R2、R3、R4、R5は、それぞれ独立に、アルキル基およびヒドロキシアルキル基よりなる群から選らばれる何れかの基を表す。)。
【請求項2】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルが下記式(2)で表されることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき液;
【化2】

(上記式(2)において、R1は、炭素数10以上の炭化水素基を表し、nは5以上3
0未満であり、mは1または2である。)
【請求項3】
上記式(2)中のR1で表される炭化水素基が、デシル基、イソデシル基、ラウリル基
、トリデシル基、セチル基、オレイル基およびステアリル基よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であることを特徴とする請求項2記載の無電解めっき液。
【請求項4】
前記コバルトとは異なる第2の金属が、コバルト以外の元素周期表の第4周期金属、第5周期金属または第6周期金属であることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき液。
【請求項5】
上記コバルトとは異なる第2の金属が、タングステンおよび/またはモリブデンであり、これらの第2の金属のイオンの供給源が、
二酸化タングステン、三酸化タングステン、二酸化モリブデンおよび三酸化モリブデンからなる金属酸化物、
五塩化タングステンおよび六塩化タングステンからなる金属塩、
タングステン酸、モリブデン酸、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、タングストリン酸のヘテロポリ酸およびタングストリン酸のヘテロポリ酸の塩よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項4記載の無電解めっき液。
【請求項6】
上記還元剤がアルキルアミンボランであることを特徴とする請求項1記載の無電解めっき液。