説明

無電解メッキ形成材料、触媒付着用塗布液、無電解メッキ形成方法、およびメッキ方法

【課題】触媒付着性が良好であり、また、触媒付着工程、現像工程その他工程において、触媒付着層が非導電性基材から剥離したりメッキ液に溶出したりすることがなく、さらに絶縁性に優れた無電解メッキ形成材料を提供する。
【解決手段】非導電性基材上に触媒付着層を有する無電解メッキ形成材料において、前記触媒付着層が、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解メッキ可能な処理を非導電性基材に施してなる無電解メッキ形成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解メッキ法は、プラスチック、セラミックス、紙、ガラス、繊維などの非導電性基材表面を導電性表面に変えることができる工業的手法として広く用いられている。特に、非導電性基材表面に電解メッキを施す際に、電解メッキの前処理として非導電性基材上に無電解メッキが施されている。
【0003】
しかし、非導電性基材の表面に無電解メッキを直接施すことは困難である。これは、非導電性基材の基材表面が平滑であるため、無電解メッキの前処理としての触媒層を付着させることが困難なためである。
【0004】
そこで従来は、機械的処理や化学的処理によって非導電性基材を粗面化することにより、基材表面に触媒を付着可能としていた。しかし、基材を粗面化してしまうと全体が不透明となってしまい、透明性が求められる用途に適さないという問題があった。
【0005】
かかる問題を解決するものとして、非導電性基材上に水溶性高分子を含有するゲル状薄膜(触媒付着層)を形成する手段が提案されている(特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−220677号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法は、ゲル状薄膜が触媒を付着するものの、触媒付着工程でゲル状薄膜を触媒浴に浸漬した際や、電解メッキ後の現像工程でゲル状薄膜に現像液が接した際に、ゲル状薄膜が非導電性基材から剥離したり溶出したりしてしまう場合があった。
【0008】
かかる問題を解決するものとして、ゲル状薄膜を硬化させ、触媒浴や現像液に用いられる溶剤に対する耐久性を向上させる手段が考えられる。しかし、ゲル状薄膜を硬化させた場合、ゲル状薄膜と非導電性基材との接着性が低下してしまい、触媒付着工程、現像工程その他工程においてゲル状薄膜が非導電性基材から剥離する現象を十分に防止できない。
【0009】
上記課題を解決するものとして、本発明者は、非導電性基材上に、水酸基を有する樹脂及びイソシアネート系化合物から形成されてなる硬化層、水酸基を含有してなる親水性及び/又は水溶性樹脂から形成されてなる触媒付着層を有する無電解メッキ形成材料を開発した(特願2006−80942:WO2007/108351)。
【0010】
しかし、特願2006−80942の無電解メッキ形成材料は、上記課題を解決するものの、触媒付着層の絶縁性が必ずしも十分でなく、プリント配線板などの絶縁性が求められる用途に適さないという問題があった。従前の無電解メッキ形成材料も同様に触媒付着層の絶縁性が不十分であった。
【0011】
そこで、本発明者は、触媒付着性が良好であり、また、触媒付着工程、現像工程その他工程において、触媒付着層が非導電性基材から剥離したりメッキ液に溶出したりすることがなく、さらに絶縁性に優れた無電解メッキ形成材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の無電解メッキ形成材料は、非導電性基材上に触媒付着層を有する無電解メッキ形成材料において、前記触媒付着層が、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の無電解メッキ形成材料は、好ましくは、前記自己架橋性を有する親水性モノマーが、N−メチロール(メタ)アクリルアミドであることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の無電解メッキ形成材料は、好ましくは、前記親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーとして、自己架橋性を有さない親水性モノマーを含むことを特徴とするものである。
【0015】
本発明の無電解メッキ形成材料は、好ましくは、前記親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーとして、疎水性モノマーを含むことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の無電解メッキ形成材料は、好ましくは、前記自己架橋性を有する親水性モノマーの一部が自己架橋されてなることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の触媒付着用塗布液は、非導電性基材上に無電解メッキ用触媒を付着させるための触媒付着用塗布液であって、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の無電解メッキの形成方法は、本発明の無電解メッキ形成材料の触媒付着層に触媒を付着させた後、無電解メッキを行うことを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のメッキ方法は、非導電性基材上に触媒付着層が形成されてなる無電解メッキ形成材料の、触媒付着層に触媒を付着するステップ(1)と、触媒を付着した無電解メッキ形成材料をメッキすべき金属化合物を含む無電解メッキ液に浸漬し、無電解メッキを行うステップ(2)と、無電解メッキが形成された無電解メッキ形成材料を電解メッキ浴に浸漬し通電して電解メッキを行うステップ(3)とを含む非導電性基材のメッキ方法において、前記無電解メッキ形成材料として、本発明の無電解メッキ形成材料を用いたことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のメッキ方法は、非導電性基材上に触媒付着層が形成されてなる無電解メッキ形成材料の、触媒付着層に触媒を付着するステップ(1)と、触媒を付着した無電解メッキ形成材料をメッキすべき金属化合物を含む無電解メッキ液に浸漬し、無電解メッキを行うステップ(2)と、無電解メッキが形成された無電解メッキ形成材料を電解メッキ浴に浸漬し通電して電解メッキを行うステップ(3)とを含む非導電性基材のメッキ方法において、前記無電解メッキ形成材料として、非導電性基材の表面に本発明の触媒付着用塗布液を塗布することにより触媒付着層を形成した無電解メッキ形成材料を用いたことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のメッキ方法は、好ましくは、前記無電解メッキ形成材料を加熱し、親水性(メタ)アクリル系樹脂の架橋を進行させるステップ(4)を含むことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明のメッキ方法は、好ましくは、前記ステップ(4)は、ステップ(1)の後であってステップ(3)の前に行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の無電解メッキ形成材料は、触媒付着層が、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことから、触媒付着性能が良好であり、触媒付着層が非導電性基材から剥離したりメッキ液に溶出したりすることがなく、さらに絶縁性が良好でありメッキ層が変色することもない。
【0024】
また、本発明の無電解メッキの形成方法によれば、非導電性基材上に短時間で容易に無電解メッキを形成することができ、かつ作業中に非導電性基材上の触媒付着層が剥離してしまうこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
まず、本発明の無電解メッキ形成材料について説明する。本発明の無電解メッキ形成材料は、非導電性基材上に触媒付着層を有する無電解メッキ形成材料において、前記触媒付着層が、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことを特徴とするものである。以下、本発明の無電解メッキ形成材料の実施の形態について説明する。
【0026】
非導電性基材としては、ポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、液晶ポリマー(LCP)、ポリオレフィン、セルロース樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどのプラスチックフィルム、ガラス、セラミックス、紙、繊維などがあげられる。これらの中でも、メッキ形成後に非導電性基材側から良好な金属光沢を観察するという点で、プラスチック、ガラスなどの透明基材が好適に使用できる。また、非導電性基材は、平面状のものに限られず、立体形状のものであってもよい。
【0027】
非導電性基材は、触媒付着層との接着性を向上させるための易接着処理を施したものでもよい。易接着処理としては、コロナ放電処理やプラズマ処理などがあげられる。
【0028】
また、非導電性基材が不透明でも構わない場合には、基材表面をあらしたものでもよい。基材表面をあらしておけば、基材の表面粗さに起因して触媒付着層の表面をあらすことができ、触媒を付着させやすくすることができる。
【0029】
触媒付着層は、無電解メッキに対して触媒活性を有する金属微粒子(触媒)を付着させる役割を有するものである。本発明では、このような触媒付着層として、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むものを用いることから、触媒付着性能が良好であり、触媒付着層が非導電性基材から剥離したりメッキ液に溶出したりすることがなく、かつ絶縁性を良好にすることができる。また、触媒付着層の組成によっては、メッキ層の触媒付着層との界面が黒っぽく変色することがあるが、本発明で用いる触媒付着層によれば、メッキ層の触媒付着層との界面の変色を防止できる。
【0030】
親水性(メタ)アクリル系樹脂は、構成モノマーとして、少なくとも自己架橋性を有する親水性モノマーを含む。自己架橋性を有する親水性モノマーを含むことにより、架橋度合いを工程の段階に応じて調整することができる。言い換えると、触媒付着層の触媒付着性、溶出防止性および絶縁性を工程の段階に応じて調整することができる。例えば、触媒付着前の段階では一部の自己架橋性を有する親水性モノマーのみを架橋させておき(未架橋の自己架橋性を有する親水性モノマーを残しておき)、触媒付着後に架橋を進行させるようにすれば、触媒の付着を良好しつつ、かつ前記性能と相反する性能である触媒付着層の溶出防止性や絶縁性を架橋の進行により向上させることができる。また、自己架橋性モノマーのため、構成モノマーとして自己架橋性を有しない親水性モノマーを有していた場合、当該親水性モノマーの親水性を損なうことなく架橋を進めることができる。また、元来親水性のモノマーであることから、自己架橋した後でも疎水性モノマーに比べて触媒付着性が良好であるため、触媒付着層を触媒付着性に優れつつ溶出防止性および絶縁性に優れるものとしやすくできる。
【0031】
自己架橋性を有する親水性モノマーとしては、重合性二重結合を有しかつ自己架橋性を有するモノマーが用いられる。このようなモノマーとしては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどメチロール基を含むモノマーの1種又は2種以上を用いることができる。また、自己架橋性を有する親水性モノマーの中でも、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのような(メタ)アクリル基を有するモノマーは、触媒付着性やメッキ層の変色防止性に優れる点で好ましい。
【0032】
自己架橋性を有する親水性モノマーは、触媒付着前や触媒付着後に架橋させることができる。また、自己架橋は一度に完全に架橋させなくても、触媒付着前と触媒付着後に段階を分けて架橋させることもできる。実際の架橋のタイミングは、他の種類のモノマーとの兼ね合いにもよる。すなわち、親水性(メタ)アクリル系樹脂が自己架橋性を有する親水性モノマーのみからなる場合、溶出防止性を確保するため触媒付着前に一部のモノマーを架橋させておく必要がある。親水性(メタ)アクリル系樹脂が他に疎水性モノマーを含む場合には、両者の割合にもよるが必ずしも触媒付着前に架橋させる必要はない。親水性(メタ)アクリル系樹脂が他に自己架橋性を有しない親水性モノマーを含む場合には、両者の割合にもよるが触媒付着前に全て架橋させても構わない。このように、自己架橋性を有する親水性モノマーを架橋させるタイミングは、親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーの種類に応じて、適宜調整して行うことができるが、触媒付着前に第一段階の架橋を行い、触媒付着後に第二段階の架橋を行う方法が好ましい。このように段階を分けて架橋させることにより、触媒の付着を良好しつつ、メッキ浴に触媒付着層が溶出するのを防止し、かつ架橋の進行により触媒付着層の絶縁性を向上させやすくすることができる。 さらに、自己架橋性を有する親水性モノマーを用いることにより、無電解メッキによるメッキ層やその後の電解メッキによるメッキ層を割れにくくすることができる。
【0033】
自己架橋性を有する親水性モノマーは、90〜130℃で5〜60分程度加熱することによりほぼ完全に自己架橋させることができる。段階を踏んで架橋させる場合には、例えば最初に60〜100℃で0.5〜5分程度の加熱を行い、次いで90〜130℃で5〜60分程度加熱すればよい。
【0034】
親水性(メタ)アクリル系樹脂は、構成モノマーとして、自己架橋性を有さない親水性モノマーを含むことが好ましい。自己架橋性を有さない親水性モノマーを含むことにより、自己架橋性を有する親水性モノマーの架橋が進みすぎた場合であっても、触媒付着層に触媒付着性を備えさせることができる。
【0035】
自己架橋性を有さない親水性モノマーとしては、重合性二重結合を有し、かつカルボキシル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、アミノ基、スルホン酸基、ポリエチレンオキサイド基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基などを有するモノマーなどを用いることができる。このようなモノマーとしては、「2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレート類」、「カルボキシル基を含むアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステルなどのエチレン性不飽和カルボン酸」、「アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類」、「N−メチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルアミノエステル類」、「N−(2−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアルキルアミノ基を有する不飽和アミド類」、「ビニルピリジン等のモノビニルピリジン類」、「ジメチルアミノエチルビニルエーテルなどのアルキルアミノ基を有するビニルエーテル類」、「ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリロイルアミノ−2−メチルプロパンスルホン酸、およびその塩等のスルホン基を有するもの」、「ビニルピロリドン」などの1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
これらの中でも、触媒付着性やメッキ層の変色防止性に優れる(メタ)アクリル基を有するモノマーが好適であり、その中でも、水酸基を有する(メタ)アクリレート類が特に好適である。
【0037】
親水性(メタ)アクリル系樹脂は、構成モノマーとして、疎水性モノマーを含むことが好ましい。疎水性モノマーを含むことにより、触媒付着層の溶出防止性を調整しやすくすることができる。
【0038】
疎水性モノマーとしては、重合性二重結合を有し、かつ親油性の炭化水素基、芳香環基、または脂環基を有するものなどを用いることができる。このようなモノマーとしては、「メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸グリシジル」、「スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル類」、「塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類」、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、クロロプレン、(メタ)アクリロニトリルなどの1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
これらの中でも、触媒付着性やメッキ層の変色防止性に優れる(メタ)アクリル基を有するモノマーが好適であり、その中でも、アルキル(メタ)アクリレートが特に好適である。また、(メタ)アクリル酸グリシジルは、上述した自己架橋性を有する親水性モノマーと同じく自己架橋可能であり、同様の効果(絶縁性の向上等)を発揮可能である点で好ましい。
【0040】
親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーは、少なくとも上述した自己架橋性を有する親水性モノマーを用い、必要に応じて自己架橋性を有さない親水性モノマーや疎水性モノマーを用いるが、前記構成モノマーのうち少なくとも1種は(メタ)アクリル基を有するモノマーを用いる。また、(メタ)アクリル基を有するモノマーは、触媒付着性やメッキ層の変色防止性を良好にするため、親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成する全モノマーのうち50mol%以上とすることが好ましく、60mol%以上とすることがより好ましい。
【0041】
(メタ)アクリル基を有するモノマーはいずれのモノマーであっても良いが、触媒付着性やメッキ層の変色防止性の観点から、自己架橋性および非自己架橋性の親水性モノマーが(メタ)アクリル基を有するモノマーであることが好ましく、さらに疎水性モノマーを含めた全てのモノマーが(メタ)アクリル基を有するモノマーであることがより好ましい。
【0042】
親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーの割合は、以下のようにすることが好ましい。まず、自己架橋性を有する親水性モノマーの割合は、他のモノマーである自己架橋性を有さない親水性モノマー及び/又は疎水性モノマーを含む場合、溶出防止性および絶縁性を向上させるため、全体の5mol%以上とすることが好ましく、10mol%以上とすることがより好ましい。また、自己架橋性を有さない親水性モノマーおよび疎水性モノマーの割合は、自己架橋性を有する親水性モノマーの割合や架橋のさせ方により異なるため一概には言えない。すなわち、自己架橋性を有する親水性モノマーは、架橋していない部分は専ら親水性モノマーとして働くが、架橋した部分は疎水性モノマーとして働くからである。
【0043】
親水性(メタ)アクリル系樹脂としては、自己架橋性を有する親水性モノマーを単独重合させたもの、あるいは自己架橋性を有する親水性モノマーと、自己架橋性を有さない親水性モノマーおよび/または疎水性モノマーとを共重合させてなる樹脂があげられる。さらに、親水性(メタ)アクリル系樹脂としては、一種のモノマー(自己架橋性を有する親水性モノマー、自己架橋性を有さない親水性モノマーあるいは疎水性モノマー)から枝部分となるマクロモノマーを合成し、当該マクロモノマーと幹部分となる他のモノマーとを共重合させてなる櫛形樹脂があげられる。これらの中でも、分子相互が絡み合うことにより触媒付着層の溶出防止性に優れる櫛形樹脂が好ましい。
【0044】
櫛形樹脂の幹部分となるモノマーは何れのモノマーであっても良いが、疎水性モノマーから幹部分を構成することが好ましい。このように基本骨格となる幹部分を疎水性モノマーから構成して、枝部分で親水性を発現させることにより、親水性を高めて触媒付着性を向上させる一方で、相反する性能である触媒付着層の溶出も防止しやすくすることができる。
【0045】
親水性(メタ)アクリル系樹脂の数平均分子量は3千〜8万であることが好ましい。3千以上とすることにより容易に皮膜化でき、8万以下とすることにより加工性が容易な粘性にできる。
【0046】
触媒付着層には上述した親水性(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、ポリウレタン系樹脂などがあげられる。これら親水性(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂は親水性であっても疎水性であっても構わないが、溶出を防ぐため非水溶性であることが好ましい。但し、他の樹脂を含有させる場合でも、上述した親水性(メタ)アクリル系樹脂は、触媒付着層を構成する全樹脂の50重量%以上含まれることが好ましく、80重量%以上含まれることがより好ましく、90重量%以上含まれることがさらに好ましい。
【0047】
触媒付着層の厚みは親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーの種類などにより異なるため一概には言えないが、0.05〜3μmが好ましく、0.05〜0.5μmがより好ましい。0.05μm以上とすることにより、触媒を付着しやすくすることができ、3μm以下とすることにより、後述するパターン形成時に側面から現像液が進入して触媒付着層が剥離することを防止したり、絶縁特性の低下を防止することができる。また、0.5μm以下とすることにより、触媒付着層上に形成する無電解メッキ層および電解メッキ層を割れにくくすることができる。
【0048】
触媒付着層は、当該層を構成する樹脂などの材料を適当な溶媒に溶解させた塗布液を、バーコーティング法などの公知の塗布法により非導電性基材上に塗布し、乾燥すること、あるいは、非導電性基材を構成する材料と触媒付着層を構成する材料とを共押し出しして成形することなどにより形成することができる。なお、触媒付着層は非導電性基材上の全面に設けられている必要はなく、一部分に設けられていてもよい。触媒付着層を非導電性基材の一部分に設けることにより、当該部分に選択的に触媒を付着させることができ、ひいては当該部分に選択的に無電解メッキ、電解メッキを行うことができる。
【0049】
以上、本発明の無電解メッキ形成材料の実施の形態として、触媒付着層を説明したが、上記触媒付着層を形成するための塗布液は、任意の被メッキ材料に塗布して無電解メッキ用触媒を付着させるための触媒付着用塗布液とすることができる。この触媒付着用塗布液を、上述した非導電性基材と同様の材料からなる任意の被メッキ材料の表面に塗布することにより、或いは被メッキ材料を触媒付着用塗布液に浸漬することにより、触媒付着層を形成し、無電解メッキ形成材料とすることができる。
【0050】
以上のように、本発明の無電解メッキ形成材料あるいは本発明の触媒付着用塗布液により表面に触媒付着層を形成した被メッキ材料は、触媒付着層に自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことから、触媒付着性能が良好であり、触媒付着層が非導電性基材から剥離したりメッキ液や触媒液に溶出したりすることがなく、さらに絶縁性が良好でありメッキ層が変色することもない。
【0051】
次に、本発明の無電解メッキの形成方法およびメッキ方法の実施の形態について説明する。
【0052】
本発明の無電解メッキの形成方法およびメッキ方法は、上述した本発明の無電解メッキ形成材料または触媒付着用塗布液を用いることが特徴であり、まず、無電解メッキ形成材料の触媒付着層に、あるいは触媒付着用塗布液を塗布した被メッキ材料の表面に、触媒を付着させる。
【0053】
無電解メッキに対して触媒活性を有する金属微粒子(触媒)は、金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、イリジウム、オスミウム、白金などを単独又は混合して用いることができる。これら触媒はコロイド溶液として用いることが好ましい。触媒のコロイド溶液を製造するには、触媒を含有する水溶性塩を水に溶解させ、界面活性剤を加えて激しく撹拌しながら還元剤を添加する方法が一般的であるが、他の公知の方法を用いてもよい。
【0054】
無電解メッキ形成材料の触媒付着層に触媒を付着させるには、この触媒のコロイド溶液を用いて、感受性化処理(センジタイジング)、活性化処理(アクチベーティング)を順次行う方法、あるいはキャタライジング、アクセレーティングを順次行う方法があげられる。本発明では、触媒付着層として触媒の付着性に優れた樹脂を用いていることから、触媒付着工程を極めて短時間で済ますことができ、また、短時間のため触媒付着層が触媒液に溶出することを防止することができる。
【0055】
なお、触媒付着層に触媒を付着させる前に、無電解メッキ形成材料に対して、酸/アルカリ洗浄で脱脂処理を行うことが好ましい。本発明では、触媒付着層として親水性樹脂を用いていることから、脱脂処理も極めて短時間で済ますことができる。
【0056】
また、一般的には、触媒付着層に触媒を付着させる前に、脱脂処理の他にさらにコンディショニングやプレディップという工程を行うが、本発明では、触媒付着層としてぬれ性に優れた樹脂を用いていることから、当該工程を省略することができる。
【0057】
触媒付着層に触媒を付着させた後は、無電解メッキを行う。無電解メッキは例えば、メッキすべき金属の水溶性化合物(通常は金属塩)、錯化剤、pH調整剤、還元剤およびメッキ助剤を含む無電解メッキ浴中に、触媒を付着させた無電解メッキ形成材料を浸漬することにより行うことができる。浴組成、温度、pH、浸漬時間などの諸条件を調整することにより、無電解メッキの厚みを調整することができる。
【0058】
無電解メッキのメッキ用金属としては、無電解銅、無電解ニッケル、無電解銅・ニッケル・リン合金、無電解ニッケル・リン合金、無電解ニッケル・ホウ素合金、無電解コバルト・リン合金、無電解金、無電解銀、無電解パラジウム、無電解スズなどがあげられる。
【0059】
錯化剤、pH調整剤、メッキ助剤、還元剤は従来公知のものを使用することができる。
【0060】
無電解メッキを形成した後は、必要に応じて電解メッキを行う。この電解メッキに先立って、触媒付着層の架橋を進行させることが好ましい。架橋は、例えば触媒付着層の無電解メッキ形成材料を加熱することにより進行させる。加熱温度はや加熱時間は上述したとおりである。
【0061】
自己架橋性モノマーは加熱しなくてもある程度架橋は進行するが、加熱することにより架橋を促進し、触媒付着層の無電解メッキ浴や電解メッキ浴への溶出を防止するとともに、絶縁性を高めることができる。また、触媒付着層の硬度が高くなるため、無電解メッキ層や電解メッキ層の割れを防止することができる。
【0062】
架橋を進行させるタイミングは特に限定されないが、メッキ層の割れを防止するためには、触媒付着層に触媒を付着した後、電解メッキを行う前であることが好ましい。例えば無電解メッキの直前や電解メッキの直前に行うことができる。
【0063】
電解メッキは、無電解メッキが形成された無電解メッキ形成材料を、公知の電解メッキ浴に浸漬して通電することにより行うことができる。電流密度や通電時間を調整することにより、電解メッキの厚みを調整することができる。
【0064】
電解メッキの形成後は、必要に応じてパターン処理を行う。パターン処理は、例えば、電解メッキ上にフォトレジストを塗布し、露光を行い、露光部分あるいは未露光部分のフォトレジストを、電解メッキ、無電解メッキ、触媒付着層とともに現像液により除去することにより行うことができる。
【0065】
以上のように、無電解メッキあるいは無電解メッキおよび電解メッキが形成された無電解メッキ形成材料は、プリント配線板、電磁波シールド部材、面状発熱体、帯電防止シート、アンテナなどに用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0067】
1.親水性(メタ)アクリル系樹脂a〜dの合成
(1)冷却管および攪拌装置を備えた反応容器中に、N−メチロールアクリルアミド(自己架橋性を有する親水性モノマー)とメチルメタクリレート(疎水性モノマー)とを、5:5のモル比で混入し、さらに希釈溶媒として酢酸エチルを加えて反応モノマー濃度を50%とした。次いで、窒素ガスで反応容器内を充分に置換した後、オイルバスにて反応溶液の温度を60〜90℃に加熱した。加熱後、モノマー量に対して0.15%の重合開始剤を添加し、反応を6〜8時間継続させて共重合させ、親水性(メタ)アクリル系樹脂a(固形分50%)を得た。
(2)N−メチロールアクリルアミドとメチルメタクリレートとのモル比を2:8に変更した他は上記と同様にして、親水性(メタ)アクリル系樹脂b(固形分50%)を得た。
(3)上記(1)および(2)において、N−メチロールアクリルアミド(自己架橋性を有する親水性モノマー)の代わりに、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート(自己架橋性を有さない親水性モノマー)を用いて、親水性(メタ)アクリル系樹脂c(固形分50%)および親水性(メタ)アクリル系樹脂d(固形分50%)を得た。
【0068】
2.無電解メッキ形成材料の作製
[実施例1]
厚み100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)の一方の面に、親水性(メタ)アクリル系樹脂aを溶媒で希釈してなる触媒付着層塗布液を塗布し、90℃で3分加熱し、厚み1μmの触媒付着層を形成し、実施例1の無電解メッキ形成材料を得た。
【0069】
[実施例2]
実施例1の親水性(メタ)アクリル系樹脂aを親水性(メタ)アクリル系樹脂bに変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の無電解メッキ形成材料を得た。
【0070】
[実施例3]
実施例1の親水性(メタ)アクリル系樹脂aを下記の樹脂に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3の無電解メッキ形成材料を得た。
<実施例3の樹脂>
・親水性(メタ)アクリル系樹脂
(ケミトリーL-40M:綜研化学社、櫛形樹脂、疎水性モノマーの割合86mol%)
(枝成分:N−メチロールアクリルアミドおよび2−ヒドロキシルエチルメタクリレート/何れも親水性モノマー、幹成分:メチルメタクリレート/疎水性モノマー)
【0071】
[比較例1]
実施例1の親水性(メタ)アクリル系樹脂aを親水性(メタ)アクリル系樹脂cに変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の無電解メッキ形成材料を得た。
【0072】
[比較例2]
実施例1の親水性(メタ)アクリル系樹脂aを親水性(メタ)アクリル系樹脂dに変更した以外は実施例1と同様にして比較例2の無電解メッキ形成材料を得た。
【0073】
[比較例3]
厚み100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)の一方の面に、下記処方の硬化層塗布液を塗布し、100℃で30秒間乾燥させ、厚み1μmの硬化層を形成した。硬化層形成後直ちに硬化層上に下記処方の触媒付着層塗布液を塗布し、110℃で5分間乾燥させ、厚み1.5μmの触媒付着層を形成し、比較例3の無電解メッキ形成材料を得た。
【0074】
<硬化層塗布液>
・ポリエステル樹脂 10部
(バイロン200:東洋紡績社、固形分100%)
・イソシアネート系化合物 1部
(タケネートD160N:三井化学ポリウレタン社)
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 40部
・アノン 10部
【0075】
<触媒付着層塗布液>
・ポリビニルアルコール 1部
(ゴーセノールNH20:日本合成化学工業社)
・水 9部
【0076】
[比較例4]
比較例3の硬化層塗布液のポリエステル樹脂を、同じくポリエステル樹脂(エリーテルUE3350:ユニチカ社、固形分100%)に変更し、イソシアネート系化合物の添加量を14部に変更した以外は比較例3と同様にして比較例4の無電解メッキ形成材料を得た。
【0077】
実施例1〜3および比較例1〜4の無電解メッキ形成材料に下記の(1)〜(4)の工程を行い、触媒付着層上に無電解メッキ、電解メッキを形成した。
【0078】
(1)脱脂処理:アルカリ水溶液を用いて60秒脱脂処理を行った。
(2)触媒付与:触媒浴としてパラジウムおよびスズ混合のコロイド溶液を用い、感受性化処理を60秒、活性化処理を30秒順次行った。
(3)無電解メッキ:下記組成の無電解メッキ浴を用い、浴温60℃、浸漬時間15分の条件で無電解メッキを行った。
<無電解メッキ浴>
・硫酸銅五水和物 0.03M
・EDTA四水和物 0.24M
・ホルマリン 0.20M
・ジピリジル 10ppm
・界面活性剤 100ppm
(4)電解メッキ:電解メッキ浴として硫酸銅メッキ浴(キューブライトTHプロセス:在原ユージライト社)を用い、約30μmの厚みとなるまで電解メッキを行った。
【0079】
無電解メッキ、電解メッキが形成された実施例1〜3および比較例1〜4の無電解メッキ形成材料について以下(1)〜(5)の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(1)メッキの均一性
メッキが均一に形成されているかについて目視で評価を行った。ムラなく均一にメッキが形成されているものを「○」、ムラがあり不均一なものを「×」とした。
【0081】
(2)接着性
メッキ面に隙間間隔1mmの桝目が100個できるように切れ目を入れ、切れ目を入れた箇所にセロハン粘着テープを貼って剥がした後に、膜(電解メッキ、無電解メッキ、触媒付着層、硬化層)が非導電性基材に接着している面積割合を目視で観察した。
【0082】
(3)溶出防止性
純水に10分間浸漬した後、取り出して十分に乾燥させ、浸漬前からの重量変化を測定した。その結果、触媒付着層が溶出せず重量変化がないものを「○」、触媒付着層の重量の20%以上が溶出したものを「×」とした。
【0083】
(4)絶縁性(表面抵抗率)
実施例1〜3および比較例1〜4の無電解メッキ形成材料について、無電解メッキを形成した後に130℃で5分間、追加熱処理を行い、その後に電解メッキを形成した。電解メッキ形成後さらにレジスト膜をメッキ面に塗布し、酸エッチングによりパターンを形成後、レジスト膜をアルカリで剥離した。その後、メッキパターンがエッチングで除去されて露出した触媒付着層の表面抵抗率(JIS K7194:1994)を測定した。また、触媒付着層形成直後の触媒付着層の表面抵抗率を測定した。追加熱処理の前後で、表面抵抗率が10の何乗台から10の何乗台に変化したかを表1に示す。なお、表1の左の数値は触媒付着層形成直後の数値であり、右の数値は追加熱処理後の数値である。左の数値より右の数値が大きければ、追加熱処理により絶縁性が向上していることを示すことになる。なお、表中の数値の単位は「Ω/□」である。
【0084】
(5)メッキ層の変色
無電解メッキを施した直後のメッキ層の色を基材側から観察した。その結果、メッキ層の色が鮮やかな銅色であったものを「○」、黒ずんでいたものを「×」とした。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1〜3の無電解メッキ形成材料は、触媒付着層が自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含んでいることから、触媒付着性(上記結果の「均一性」および「接着性」)および触媒付着層の溶出防止性を満足しながらも、架橋を進行させることにより前記性能と相反する性能である絶縁性を良好にできるものであった(追加熱処理により表面抵抗率が10の11乗台から10の14乗台に上昇)。また、実施例1〜3の無電解メッキ形成材料は、メッキ層の触媒付着層との界面が変色することもなかった。
【0087】
比較例1、2の無電解メッキ形成材料は、触媒付着層が親水性(メタ)アクリル系樹脂を含んでいるものの、当該樹脂が自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含んでいないことから、絶縁性を良好にできないものであった(追加熱処理しても表面抵抗率は10の12乗台のまま)。
【0088】
比較例3、4の無電解メッキ形成材料は、触媒付着層が、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含んでいないことから、絶縁性を良好にできないものであった(追加熱処理しても表面抵抗率は10の10乗台のまま)。また、比較例3、4の無電解メッキ形成材料は、メッキ層の触媒付着層との界面が変色してしまうものであった。
【0089】
[メッキ層のひび割れの考察]
上記(4)のように追加熱処理後に電解メッキが形成された実施例1〜3および比較例1〜4の無電解メッキ形成材料の電解メッキ面表面のひび割れを観察した。その結果、自己架橋が進行した実施例1〜3の無電解メッキ形成材料は殆どひび割れることなく、自己架橋を起こさない比較例1〜4の無電解メッキ形成材料に対する優位性が確認された。
また、実施例1〜3の無電解メッキ形成材料の触媒付着層の厚み(1.0μm)を、0.7μm、0.5μm、0.2μm、0.05μmに変更したものを作製し、電解メッキ面のひび割れを観察した。その結果、触媒付着層の厚みが薄くなるほどひび割れを起こしにくいことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性基材上に触媒付着層を有する無電解メッキ形成材料において、前記触媒付着層が、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことを特徴とする無電解メッキ形成材料。
【請求項2】
前記自己架橋性を有する親水性モノマーが、N−メチロール(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項1記載の無電解メッキ形成材料。
【請求項3】
前記親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーとして、自己架橋性を有さない親水性モノマーを含むことを特徴とする請求項1記載の無電解メッキ形成材料。
【請求項4】
前記親水性(メタ)アクリル系樹脂を構成するモノマーとして、疎水性モノマーを含むことを特徴とする請求項1記載の無電解メッキ形成材料。
【請求項5】
前記自己架橋性を有する親水性モノマーの一部が自己架橋されてなることを特徴とする請求項1記載の無電解メッキ形成材料。
【請求項6】
非導電性基材上に無電解メッキ用触媒を付着させるための触媒付着用塗布液であって、自己架橋性を有する親水性モノマーを構成モノマーとして含む親水性(メタ)アクリル系樹脂を含むことを特徴とする触媒付着用塗布液。
【請求項7】
請求項1から5何れか1項記載の無電解メッキ形成材料の触媒付着層に触媒を付着させた後、無電解メッキを行うことを特徴とする無電解メッキの形成方法。
【請求項8】
非導電性基材上に触媒付着層が形成されてなる無電解メッキ形成材料の、触媒付着層に触媒を付着するステップ(1)と、触媒を付着した無電解メッキ形成材料をメッキすべき金属化合物を含む無電解メッキ液に浸漬し、無電解メッキを行うステップ(2)と、無電解メッキが形成された無電解メッキ形成材料を電解メッキ浴に浸漬し通電して電解メッキを行うステップ(3)とを含む非導電性基材のメッキ方法において、前記無電解メッキ形成材料として、請求項1から5何れか1項記載の無電解メッキ形成材料を用いたことを特徴とするメッキ方法。
【請求項9】
非導電性基材上に触媒付着層が形成されてなる無電解メッキ形成材料の、触媒付着層に触媒を付着するステップ(1)と、触媒を付着した無電解メッキ形成材料をメッキすべき金属化合物を含む無電解メッキ液に浸漬し、無電解メッキを行うステップ(2)と、無電解メッキが形成された無電解メッキ形成材料を電解メッキ浴に浸漬し通電して電解メッキを行うステップ(3)とを含む非導電性基材のメッキ方法において、前記無電解メッキ形成材料として、非導電性基材の表面に請求項6記載の触媒付着用塗布液を塗布することにより触媒付着層を形成した無電解メッキ形成材料を用いたことを特徴とするメッキ方法。
【請求項10】
前記無電解メッキ形成材料を加熱し、前記親水性(メタ)アクリル系樹脂の架橋を進行させるステップ(4)を含むことを特徴とする請求項8又は9記載のメッキ方法。
【請求項11】
前記ステップ(4)は、ステップ(1)の後であってステップ(3)の前に行うことを特徴とする請求項10記載のメッキ方法。

【公開番号】特開2008−214749(P2008−214749A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22568(P2008−22568)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【出願人】(502273096)株式会社関東学院大学表面工学研究所 (52)
【Fターム(参考)】