説明

焦点検出装置およびそれを備えた撮像装置

【課題】焦点検出を良好に行うことのできる焦点検出装置を提供すること。
【解決手段】光学系の像面内に設定された焦点検出位置に対応して設けられた複数対の受光素子列と、前記複数対の受光素子列の出力に基づいて、前記焦点検出位置に対して、前記光学系による像面のずれ量を検出する検出手段と、前記光学系による像のうち特定の対象の像を認識する認識手段と、を備え、前記検出手段は、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と、前記複数対の受光素子列を構成する各受光素子列の像面内の位置とが重なっているか否かに基づいて、前記ずれ量の検出に用いる受光素子列の優先度を決定することを特徴とする焦点検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点調節装置およびそれを備えた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、光学系の像面内に設定された複数の焦点検出位置に対する焦点状態を、位相差検出方式により検出する技術が行われている。このような技術において、焦点状態の検出の対象とする特定被写体を認識し、認識した特定被写体位置に対応する焦点検出位置において、焦点状態の検出を行い、検出した焦点状態に基づいて、焦点調節を行なう技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−298943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、通常、複数の焦点検出位置のそれぞれに対して、位相差検出方式により焦点検出を行うための一対の受光素子列が複数設けられており、認識した特定被写体を捕捉している焦点検出位置に対応する複数対の受光素子列からの出力に基づいて、焦点検出が行われている。しかしながら、上記従来技術においては、認識した特定被写体の位置によっては、焦点検出位置に対応して設けられた複数対の受光素子列のうち一部の受光素子列のみと重なった状態となる場合もあるが、このような場合でも、認識した特定被写体と重ならない位置にある受光素子列の出力も用いて焦点検出演算が行われてしまうため、該受光素子列からの出力の影響により、焦点検出が適切に行われない場合があるという課題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、焦点検出を良好に行うことのできる焦点検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の解決手段によって上記課題を解決する。なお、以下においては、本発明の実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、この符号は本発明の理解を容易にするためだけのものであって発明を限定する趣旨ではない。
【0007】
[1]本発明の焦点検出装置は、光学系の像面内に設定された焦点検出位置に対応して設けられた複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)と、前記複数対の受光素子列の出力に基づいて、前記焦点検出位置に対して、前記光学系による像面のずれ量を検出する検出手段(170)と、前記光学系による像のうち特定の対象の像を認識する認識手段(170)と、を備え、前記検出手段は、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と、前記複数対の受光素子列を構成する各受光素子列の像面内の位置とが重なっているか否かに基づいて、前記ずれ量の検出に用いる受光素子列の優先度を決定することを特徴とする。
【0008】
[2]本発明の焦点検出装置において、前記検出手段(170)が、前記複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)のうち、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と重なる位置にある受光素子列を、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と重ならない位置にある受光素子列と比較して、前記ずれ量の検出に用いる際の優先度を高く設定するように構成することができる。
【0009】
[3]本発明の焦点検出装置において、前記検出手段(170)が、前記複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)のうち、少なくとも二対の受光素子列の出力に基づいて、前記ずれ量の検出を行うように構成することができる。
【0010】
[4]本発明の焦点検出装置において、前記検出手段(170)が、前記複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)のうち、並び方向が同じである少なくとも二対の受光素子列の出力に基づいて、前記ずれ量の検出を行うように構成することができる。
【0011】
[5]本発明の焦点検出装置において、前記複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)による受光条件を制御する受光素子列制御手段をさらに備え、前記受光素子列制御手段(162)が、前記認識手段(170)によって認識された像の像面内の位置と、前記複数対の受光素子列を構成する各受光素子列の像面内の位置とが重なっているか否かに基づいて、前記受光条件を決定する際における、受光素子列の優先度を決定するように構成することができる。
【0012】
[6]本発明の焦点検出装置において、前記受光素子列制御手段が、前記複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)のうち、前記認識手段(170)によって認識された像の像面内の位置と重なる位置にある受光素子列からの出力に基づいて、前記受光条件を決定するように構成することができる。
【0013】
[7]本発明の焦点検出装置において、前記焦点検出位置が、前記光学系の像面内に複数設定されており、かつ、前記複数対の受光素子列(H1,H2,V1,V2)が、各前記焦点検出位置に対応して、それぞれ設けられているように構成することができる。
【0014】
[8]本発明の撮像装置は、上記焦点検出装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の焦点検出装置によれば、焦点検出を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す焦点検出モジュールを示す図である。
【図3】図3は、撮影光学系の撮影画面内に設定された複数の焦点検出エリアの配置例を示す図である。
【図4】図4は、本実施形態における、撮影光学系の撮影画面内における、ラインセンサ対の配置例を示す図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るカメラの動作を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本実施形態に係る追尾制御初期処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、本実施形態に係る追尾演算処理を示すフローチャートである。
【図8】図8(A)〜図8(D)は、追尾被写体領域と、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2による検出領域との重なり方の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下においては、本発明を一眼レフデジタルカメラに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。ただし本発明は、銀塩フィルムカメラなどのその他の撮像装置にも適用することができる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る一眼レフデジタルカメラ1を示すブロック図であり、本発明の焦点検出装置および撮像装置に関する構成以外のカメラの一般的構成については、その図示と説明を一部省略する。
【0019】
本実施形態の一眼レフデジタルカメラ1(以下、単にカメラ1という。)は、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とを備え、カメラボディ100とレンズ鏡筒200とは着脱可能に結合されている。本実施形態のカメラ1においては、レンズ鏡筒200は、撮影目的などに応じて、交換可能となっている。
【0020】
レンズ鏡筒200には、レンズ211,212,213、および絞り220を含む撮影光学系が内蔵されている。
【0021】
フォーカスレンズ212は、レンズ鏡筒200の光軸L1に沿って移動可能に設けられ、エンコーダ260によってその位置が検出されつつフォーカスレンズ駆動モータ230によってその位置が調節される。
【0022】
このフォーカスレンズ212の光軸L1に沿う移動機構の具体的構成は特に限定されない。一例を挙げれば、レンズ鏡筒200に固定された固定筒に回転可能に回転筒を挿入し、この回転筒の内周面にヘリコイド溝(螺旋溝)を形成するとともに、フォーカスレンズ212を固定するレンズ枠の端部をヘリコイド溝に嵌合させる。そして、フォーカスレンズ駆動モータ230によって回転筒を回転させることで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212が光軸L1に沿って直進移動することになる。なお、レンズ鏡筒200にはフォーカスレンズ212以外のレンズ211,213が設けられているが、ここではフォーカスレンズ212を例に挙げて本実施形態を説明する。
【0023】
上述したようにレンズ鏡筒200に対して回転筒を回転させることによりレンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212は光軸L1方向に直進移動するが、その駆動源としてのフォーカスレンズ駆動モータ230がレンズ鏡筒200に設けられている。フォーカスレンズ駆動モータ230と回転筒とは、たとえば複数の歯車からなる変速機で連結され、フォーカスレンズ駆動モータ230の駆動軸を何れか一方向へ回転駆動すると所定のギヤ比で回転筒に伝達され、そして、回転筒が何れか一方向へ回転することで、レンズ枠に固定されたフォーカスレンズ212が光軸L1の何れかの方向へ直進移動することになる。なお、フォーカスレンズ駆動モータ230の駆動軸が逆方向に回転駆動すると、変速機を構成する複数の歯車も逆方向に回転し、フォーカスレンズ212は光軸L1の逆方向へ直進移動することになる。
【0024】
フォーカスレンズ212の位置はエンコーダ260によって検出される。既述したとおり、フォーカスレンズ212の光軸L1方向の位置は回転筒の回転角に相関するので、たとえばレンズ鏡筒200に対する回転筒の相対的な回転角を検出すれば求めることができる。
【0025】
本実施形態のエンコーダ260としては、回転筒の回転駆動に連結された回転円板の回転をフォトインタラプタなどの光センサで検出して、回転数に応じたパルス信号を出力するものや、固定筒と回転筒の何れか一方に設けられたフレキシブルプリント配線板の表面のエンコーダパターンに、何れか他方に設けられたブラシ接点を接触させ、回転筒の移動量(回転方向でも光軸方向の何れでもよい)に応じた接触位置の変化を検出回路で検出するものなどを用いることができる。
【0026】
フォーカスレンズ212は、上述した回転筒の回転によってカメラボディ100側の端部(至近端ともいう)から被写体側の端部(無限端ともいう)までの間を光軸L1方向に移動することができる。ちなみに、エンコーダ260で検出されたフォーカスレンズ212の現在位置情報は、レンズ制御部250を介して後述するカメラ制御部170へ送出される。そして、この情報に基づいて演算されたフォーカスレンズ212の駆動量Δdが、レンズ駆動制御部165からレンズ制御部250を介して送出され、これに基づいて、フォーカスレンズ駆動モータ230は駆動する。
【0027】
絞り220は、上記撮影光学系を通過して、カメラボディ100に備えられた撮像素子110に至る光束の光量を制限するとともにボケ量を調整するために、光軸L1を中心にした開口径が調節可能に構成されている。絞り220による開口径の調節は、たとえば自動露出モードにおいて演算された適切な開口径が、カメラ制御部170からレンズ制御部250を介して送出されることにより行われる。また、カメラボディ100に設けられた操作部150によるマニュアル操作により、設定された開口径がカメラ制御部170からレンズ制御部250に入力される。絞り220の開口径は図示しない絞り開口センサにより検出され、レンズ制御部250で現在の開口径が認識される。
【0028】
一方、カメラボディ100は、被写体からの光束を撮像素子110、ファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導くためのミラー系120を備える。このミラー系120は、回転軸123を中心にして被写体の観察位置と撮影位置との間で所定角度だけ回転するクイックリターンミラー121と、このクイックリターンミラー121に軸支されてクイックリターンミラー121の回動に合わせて回転するサブミラー122とを備える。図1においては、ミラー系120が被写体の観察位置にある状態を実線で示し、被写体の撮影位置にある状態を二点鎖線で示す。
【0029】
ミラー系120は、被写体の観察位置にある状態では光軸L1の光路上に挿入される一方で、被写体の撮影位置にある状態では光軸L1の光路から退避するように回転する。
【0030】
クイックリターンミラー121はハーフミラーで構成され、被写体の観察位置にある状態では、被写体からの光束(光軸L1)の一部の光束(光軸L2,L3)を当該クイックリターンミラー121で反射してファインダ135および測光センサ137へ導き、一部の光束(光軸L4)を透過させてサブミラー122へ導く。これに対して、サブミラー122は全反射ミラーで構成され、クイックリターンミラー121を透過した光束(光軸L4)を焦点検出モジュール161へ導く。
【0031】
したがって、ミラー系120が観察位置にある場合は、被写体からの光束(光軸L1)はファインダ135、測光センサ137および焦点検出モジュール161へ導かれ、撮影者により被写体が観察されるとともに、露出演算やフォーカスレンズ212の焦点調節状態の検出が実行される。そして、撮影者がレリーズボタン(不図示)を全押しするとミラー系120が撮影位置に回動し、被写体からの光束(光軸L1)は全て撮像素子110へ導かれ、撮影した画像データを図示しないメモリに保存する。
【0032】
クイックリターンミラー120で反射された被写体からの光束は、撮像素子110と光学的に等価な面に配置された焦点板131に結像し、ペンタプリズム133と接眼レンズ134とを介して観察可能になっている。このとき、透過型液晶表示器132は、焦点板131上の被写体像に焦点検出エリアマークなどを重畳して表示するとともに、被写体像外のエリアにシャッター速度、絞り値、撮影枚数などの撮影に関する情報を表示する。これにより、撮影者は、撮影準備状態において、ファインダ135を通して被写体およびその背景ならびに撮影関連情報などを観察することができる。
【0033】
測光センサ137は、二次元カラーCCDイメージセンサなどで構成され、撮影の際の露出値を演算するため、撮影画面を複数の領域に分割して領域ごとの輝度に応じた測光信号を出力する。また、測光センサ137は、被写体認識用の撮像素子も兼ねており、撮影光学系により焦点板131上に結像された被写体像を電気信号に変換して画像信号を出力する。測光センサ137で検出された信号はカメラ制御部170へ出力され、自動露出制御および被写体認識処理に用いられる。
【0034】
焦点検出モジュール161は、被写体光を用いた位相差検出方式による自動合焦制御を実行するための焦点検出素子であり、サブミラー122で反射した光束(光軸L4)の撮像素子110の撮像面と光学的に等価な位置に固定されている。
【0035】
図2は、図1に示す焦点検出モジュール161の構成例を示す図である。本実施形態の焦点検出モジュール161は、コンデンサレンズ161a、一対の開口が形成された絞りマスク161b、一対の再結像レンズ161cおよび一対のラインセンサ161dを有し、フォーカスレンズ212の射出瞳の異なる一対の領域を通る一対の光束をラインセンサ161dで受光して得られる一対の像信号の位相ずれを周知の相関演算によって求めることにより焦点調節状態を検出する。
【0036】
そして、図2に示すように被写体Pが撮像素子110の等価面(予定結像面)161eで結像すると合焦状態となるが、フォーカスレンズ212が光軸L1方向に移動することで、結像点が等価面161eより被写体側にずれたり(前ピンと称される)、カメラボディ100側にずれたりすると(後ピンと称される)、ピントずれの状態となる。
【0037】
なお、被写体Pの結像点が等価面161eより被写体側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて短くなり、逆に被写体像Pの結像点がカメラボディ100側にずれると、一対のラインセンサ161dで検出される一対の像信号の間隔Wが、合焦状態の間隔Wに比べて長くなる。
【0038】
すなわち、合焦状態では一対のラインセンサ161dで検出される像信号がラインセンサの中心に対して重なるが、非合焦状態ではラインセンサの中心に対して各像信号がずれる、すなわち位相差が生じるので、この位相差(ずれ量)に応じた量だけフォーカスレンズ212を移動させることでピントを合わせる。
【0039】
ここで、撮影光学系の撮影画面50内に設定された複数の焦点検出エリアの配置例を図3に示す。図3に示すように、撮影光学系の撮影画面50内には複数の焦点検出エリアAFPが設定されており、後述するように、焦点検出モジュール161には、各焦点検出エリアAFPに対応して、それぞれ4対のラインセンサ161dが複数備えられており、これにより、各焦点検出エリアAFPにおける像信号を取得できるようになっている。本実施形態では、図3にAFP1〜AFP11で示すように、11点の焦点検出エリアAFPが設けられ、それぞれの位置が撮像素子110の撮像範囲の所定位置に対応している。なお、焦点検出エリアAFPの個数および配置は、図3に示す態様に限定されるものではない。
【0040】
図4に、本実施形態における、撮影光学系の撮影画面50内における、ラインセンサ161dの配置例を示す。本実施形態においては、図4に示すように、焦点検出モジュール161には、各焦点検出エリアAFPに対応して、それぞれ4対のラインセンサ161dが複数備えられており、これにより、各焦点検出エリアAFPにおける像信号を取得できるようになっている。具体的には、図3に示す焦点検出エリアAFP2を例示して説明すると、図4に示すように、撮影画面50内において、焦点検出エリアAFP2に対応して設けられた4対のラインセンサが、H1,H2,V1,V2で示される位置に存在している。言い換えると、各対となるラインセンサ161dの撮影画面50内における位置(撮影画面50中における、各対となるラインセンサ161dが被写体を捕捉可能な位置)が、図4中における、H1,H2,V1,V2で示される位置に存在しており、これら4対のラインセンサ161dによって、焦点検出エリアAFP2における像信号を取得できるようになっている。同様に、焦点検出エリアAFP2以外のAFP1,AFP3〜AFP11においても、図3、図4に示すように、各焦点検出エリアAFPに対応して、それぞれ4対のラインセンサ161dが配置されており、これにより、各焦点検出エリアAFPにおける像信号を取得できるようになっている。なお、図4に示す例においては、各焦点検出エリアAFPに対して、4対のラインセンサ161dが配置されているような例を示したが、ラインセンサ161dの数は4対に限定されず、任意の数とすることができる。本実施形態においては、以下、これらH1,H2,V1,V2に対応するラインセンサ対を、ラインセンサ対H1,H2,V1,V2とする。
【0041】
また、ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、並び方向が同じ横方向であるラインセンサ対H1,H2、および並び方向が同じ縦方向であるV1,V2は、それぞれ、その出力を平均処理することにより平均値を求めたり、あるいは、その出力を加算することにより加算値を算出できるように構成されている。
【0042】
図1に戻り、AF−CCD制御部162は、オートフォーカスモードにおいて、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dのゲインや蓄積時間を制御するもので、焦点検出モジュール161に備えられたラインセンサ161dにて検出された像信号を、各焦点検出エリアAFPに対応させて読み出し、デフォーカス演算部163へ出力する。
【0043】
デフォーカス演算部163は、AF−CCD制御部162から送られてきた各焦点検出エリア51に対応した像信号のずれ量をデフォーカス量dfに変換し、これをレンズ駆動量演算部164へ出力する。
【0044】
レンズ駆動量演算部164は、デフォーカス演算部163から送られてきたデフォーカス量に基づいて、当該デフォーカス量に応じたレンズ駆動量Δdを演算し、これをレンズ駆動制御部165へ出力する。
【0045】
レンズ駆動制御部165は、レンズ駆動量演算部164から送られてきたレンズ駆動量Δdに基づいて、レンズ制御部250を介して、フォーカスレンズ駆動モータ230へ駆動指令を送出し、レンズ駆動量Δdだけフォーカスレンズ212を移動させる。
【0046】
撮像素子110は、カメラボディ100の、被写体からの光束の光軸L1上であって、レンズ211,212,213を含む撮影光学系の予定焦点面となる位置に設けられ、その前面にシャッター111が設けられている。この撮像素子110は、複数の光電変換素子が二次元に配列されたものであって、二次元CCDイメージセンサ、MOSセンサまたはCIDなどで構成することができる。この撮像素子110で光電変換された電気画像信号は、カメラ制御部170で画像処理されたのち図示しないメモリに保存される。なお、撮影画像を格納するメモリは内蔵型メモリやカード型メモリなどで構成することができる。
【0047】
操作部150は、シャッターレリーズボタンや撮影者がカメラ1の各種動作モードを設定するための入力スイッチを備えており、連続撮影モードの選択や、自動露出モード/マニュアル露出モードの切換、さらには、オートフォーカスモード/マニュアルフォーカスモードの切換や、また、オートフォーカスモードの中でも、追尾対象となる特定被写体を認識し、追尾するための被写体追尾モードの設定が行えるようになっている。また、シャッターレリーズボタンのスイッチは、ボタンの半押しでONとなる第1スイッチSW1と、ボタンの全押しでONとなる第2スイッチSW2とを含む。この操作部150により設定されたシャッターレリーズボタンのスイッチSW1,SW2および各種モードはカメラ制御部170へ送信される。
【0048】
カメラボディ100にはカメラ制御部170が設けられている。カメラ制御部170はマイクロプロセッサとメモリなどの周辺部品から構成され、レンズ制御部250と電気的に接続され、このレンズ制御部250から、レンズ鏡筒200の焦点調節範囲の情報などを含むレンズ情報を受信するとともに、レンズ制御部250へデフォーカス量や絞り制御信号などの情報を送信する。また、カメラ制御部170は、上述したように撮像素子110から画像情報を読み出すとともに、必要に応じて所定の情報処理を施し、図示しないメモリに出力する。さらに、カメラ制御部170は、操作部150により、被写体追尾モードが選択されている場合には、測光センサ137からの画像信号を受信し、受信した画像信号に基づき、撮影画面50内に存在する特定被写体を検知し、これを追尾する被写体追尾処理を行う。また、カメラ制御部170は、これらに加えて、撮影画像情報の補正やレンズ鏡筒200の焦点調節状態、絞り調節状態などを検出するなど、カメラ1全体の制御を司る。
【0049】
次に、本実施形態に係るカメラ1の動作例を説明する。図5〜図7は、本実施形態に係るカメラ1の動作を示すフローチャートである。以下においては、操作部150により、被写体追尾モードが選択されている場合における、焦点調節動作について説明する。
【0050】
まず、ステップS1では、カメラ制御部170が、撮影者によりシャッターレリーズボタンの半押し(第1スイッチSW1のオン)がされたかどうかを判断し、第1スイッチSW1がオンした場合はステップS2へ進み、第1スイッチSW1がオンしていない場合はステップS1で待機する。
【0051】
ステップS2では、図6に示す追尾制御初期処理が実行されたか否かの判定が行なわれる。追尾制御初期処理が実行されていない場合には、ステップS3に進み、追尾制御初期処理が行われる。一方、追尾制御初期処理が既に行実行されている場合には、ステップS4に進む。たとえば、第1スイッチSW1がオンした直後においては、追尾制御初期処理が実行されていないと判断され、ステップS3に進む。
【0052】
ステップS2において、追尾制御初期処理が実行されていないと判断された場合には、ステップS3に進み、図6に示す追尾制御初期処理が実行される。具体的には、まず、図6に示すステップS301において、測光センサ137により被写体追尾用の初期画像の取得が行なわれる。
【0053】
次いで、ステップS302では、カメラ制御部170により、測光センサ137により取得された追尾初期画像中において、特定被写体(たとえば、人物の顔など)が存在する焦点検出エリアAFPの位置に対応する位置の画像を、被写体色情報(色情報および輝度情報)として記憶する処理が行なわれる。
【0054】
ステップS303では、カメラ制御部170により、特定被写体が存在する焦点検出エリアAFPの位置周辺部において、ステップS302で記憶した被写体色情報と同様の色情報を示す同色情報領域を検出する処理が行われる。
【0055】
ステップS304では、カメラ制御部170により、ステップS303において検出された同色情報領域を、初期の追尾被写体領域に設定する処理が行なわれる。
【0056】
ステップS305では、カメラ制御部170により、追尾初期画像中の追尾被写体領域の画像を次回の追尾処理に用いるテンプレート画像として、記憶する処理が行なわれる。
【0057】
そして、ステップS306では、カメラ制御部170により、ステップS304で設定した追尾被写体領域を中心に前後左右に所定画素(たとえば、2画素)ずつ拡大した領域を探索領域に設定する処理が行なわれる。以上のようにして、追尾制御初期処理が実行される。
【0058】
一方、図5に示すステップS2において、上述した追尾制御初期処理が実行されていると判断された場合には、ステップS4に進み、図7に示す追尾演算処理が実行される。具体的には、まず、図7に示すステップS401において、測光センサ137により被写体追尾用の画像の取得が行なわれる。
【0059】
次いで、ステップS402において、カメラ制御部170により、追尾画像の探索領域から、カメラ制御部170に記憶されたテンプレート画像と同じサイズの領域を順次切り出し、切り出した画像とテンプレート画像とについて、対応する画素ごとに画像情報(色情報および輝度情報)の差分を算出し、全画素に対する差分の総和を求める処理が行なわれる。
【0060】
次いで、ステップS403では、カメラ制御部170は、画像情報の差分の総和が最も小さい切り出し画像を選択し、選択した切り出し画像の領域を新しい追尾被写体領域に設定する。なお、ここで、新たに設定した追尾被写体領域の画像を新たなテンプレート画像として設定するように構成してもよい。
【0061】
ステップS404では、カメラ制御部170により、ステップS403で設定した追尾被写体領域を中心に前後左右に所定画素(たとえば、2画素)ずつ拡大した領域を探索領域に設定する処理が行なわれる。以上のようにして、追尾演算処理が実行される。
【0062】
次いで、ステップS5では、カメラ制御部170により、上述したステップS304またはステップS403で設定された追尾被写体領域と、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2による検出領域との重なりを検出する処理が行われる。以下においては、図3に示す各焦点検出エリアAFPのうち、上述したステップS304またはステップS403で設定された追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPを、被写体捕捉エリアAFP_objとして説明する。ここで、図8(A)〜図8(D)は、追尾被写体領域と、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2による検出領域との重なり方の一例を示す図である。なお、図8(A)〜図8(D)においては、追尾被写体領域の一例として、矩形状の領域を例示して示したが、このような形状に特に限定されるものではない。
【0063】
たとえば、図8(A)に示す場面においては、カメラ制御部170は、追尾被写体領域と、被写体捕捉エリアAFP_objに対応して設けられた全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2とが重なっていると判断する。一方、図8(B)に示す場面においては、カメラ制御部170は、被写体捕捉エリアAFP_objに対応して設けられた各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、ラインセンサ対H1,H2,V1のみが追尾被写体領域と重なっており、ラインセンサ対V2については、追尾被写体領域と重なっていないと判断する。また、図8(C)に示す場面においては、カメラ制御部170は、被写体捕捉エリアAFP_objに対応する各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、ラインセンサ対H1,H2のみが追尾被写体領域と重なっており、ラインセンサ対V1,V2については、追尾被写体領域と重なっていないと判断する。さらに、図8(D)に示す場面においては、カメラ制御部170は、焦点検出エリアAFPに対応して設けられた各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、ラインセンサ対H1のみが追尾被写体領域と重なっており、ラインセンサ対H2,V1,V2については、追尾被写体領域と重なっていないと判断する。このように、ステップS5では、カメラ制御部170は、追尾被写体領域と、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2による検出領域との重なりを検出する。なお、図8(A)〜図8(D)においては、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2による検出領域のうち、追尾被写体領域と重なっているものについて、ハッチングを付して示した。また、本実施形態では、追尾被写体領域と、各ラインセンサ対の検出領域とがその少なくとも一部において重なっているものについて、これらが重なっていると判断したが、たとえば、重なっている面積が所定面積未満(たとえば、焦点検出が可能であると判断できるような面積未満)である場合には、これらが重なっていないと判断するような構成としてもよい。
【0064】
次いで、ステップS6では、AF−CCD制御部162による、焦点検出モジュール161のラインセンサ161dの蓄積時間の設定およびゲインの調整が行なわれ、これに基づいて、ラインセンサ161dによる電荷の蓄積が行われる。
【0065】
ここで、本実施形態においては、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFP(被写体捕捉エリアAFP_obj)に対応する各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2の蓄積時間およびゲインは、上述したステップS5の検出結果に基づいて決定される。具体的には、本実施形態では、上述したステップS5の検出結果に基づいて、被写体捕捉エリアAFP_objに対応する各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2の蓄積時間およびゲインを設定する際に用いるラインセンサ対の優先度を設定し、設定した優先度に基づいて、蓄積時間およびゲインの設定を行なう。表1に、ラインセンサ対の優先度の設定方法の一例を示す。
【表1】

【0066】
すなわち、たとえば、図8(A)に示す場面においては、カメラ制御部170は、被写体捕捉エリアAFP_objに対応する全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2が追尾被写体領域と重なっているため、全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2について、優先度を「高」に設定する。また、図8(B)に示す場面においては、カメラ制御部170は、ラインセンサ対H1,H2,V1のみが追尾被写体領域と重なっており、ラインセンサ対V2については、追尾被写体領域と重なっていないため、ラインセンサ対H1,H2,V1については、優先度を「高」に設定する一方で、ラインセンサ対V2については、優先度を「低」に設定する。同様に、図8(C)に示す場面においては、ラインセンサ対H1,H2については、優先度を「高」に設定する一方で、ラインセンサ対V1,V2については、優先度を「低」に設定し、さらには、図8(D)に示す場面においては、ラインセンサ対H1については、優先度を「高」に設定する一方で、ラインセンサ対V1については、優先度を「低」に設定する。
【0067】
そして、本実施形態では、たとえば、上記方法にしたがって、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、優先度が「高」と設定されたラインセンサ対による出力が適正なものとなるように、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPに対応する全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2の蓄積時間およびゲインの設定を行なう。具体的には、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、優先度が「高」と判断されたラインセンサ対の前回処理時の出力に基づいて、ラインセンサ対H1,H2,V1,V2の蓄積時間およびゲインの設定を行なう。すなわち、たとえば、図8(C)に示す場面においては、ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、ラインセンサ対H1,H2のみの前回処理時の出力に基づいて、被写体捕捉エリアAFP_objに対応する全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2の蓄積時間およびゲインを設定する。
【0068】
ステップS7では、AF−CCD制御部162が、ラインセンサ161dで蓄積された信号情報を、撮影画面50内に設定された各焦点検出エリアAFPに対応させて読み出し、デフォーカス演算部163へ出力する。
【0069】
ステップS8では、デフォーカス演算部163により、撮影光学系の撮影画面50中に設定された各焦点検出エリアAFPについて、位相差検出方式による像ズレ量の演算が行われ、各焦点検出エリアのデフォーカス量dfが算出される。算出されたデフォーカス量dfは、カメラ制御部170およびレンズ駆動量演算部164に出力される。
【0070】
ここで、本実施形態においては、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFP(被写体捕捉エリアAFP_obj)におけるデフォーカス量dfを算出する際には、上述したステップS5の検出結果を考慮して算出を行う。具体的には、本実施形態では、上述したステップS5の検出結果に基づいて、上述したステップS6と同様にして、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2について優先度を設定し、設定した優先度に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。
【0071】
たとえば、図8(A)に示す場面においては、被写体捕捉エリアAFP_objに対応して設けられた全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2の優先度が「高」に設定されるため、全てのラインセンサ対H1,H2,V1,V2の出力に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。具体的には、この図8(A)に示す場面においては、並び方向が同じ横方向であるラインセンサ対H1,H2の出力を、単純平均する処理を行なうとともに、並び方向が同じ縦方向であるラインセンサ対V1,V2の出力を、単純平均する処理を行なう。そして、この図8(A)に示す場面においては、得られたラインセンサ対H1,H2の出力の単純平均値およびラインセンサ対V1,V2の出力の単純平均値に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。
【0072】
一方、図8(B)に示す場面においては、ラインセンサ対H1,H2,V1については、優先度が「高」に設定される一方で、ラインセンサ対V2については、優先度が「低」に設定される。そのため、この図8(B)に示す場面においては、優先度が「高」であるラインセンサ対H1,H2,V1の出力に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。具体的には、この図8(B)に示す場面においては、並び方向が同じ横方向であるラインセンサ対H1,H2の出力を、単純平均する処理を行なう。そして、この図8(B)に示す場面においては、得られたラインセンサ対H1,H2の出力の単純平均値およびラインセンサ対V1の出力値に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。すなわち、この図8(B)に示す場面においては、デフォーカス量dfの算出を行なう際には、並び方向が同じ横方向であり、かつ、ともに優先度が「高」に設定されたラインセンサ対H1,H2については出力を単純平均する処理を行ない、得られた単純平気値を用いる一方で、並び方向が縦方向のラインセンサ対V1,V2については、ラインセンサ対V2の優先度が「低」となるため、ラインセンサ対V2の出力を用いず、ラインセンサ対V1の出力値のみを用いる。
【0073】
また、図8(C)に示す場面においては、ラインセンサ対H1,H2については、優先度が「高」に設定される一方で、ラインセンサ対V1,V2については、優先度が「低」に設定される。そのため、この図8(C)に示す場面においては、優先度が「高」であるラインセンサ対H1,H2の出力に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。具体的には、この図8(C)に示す場面においては、並び方向が同じ横方向であるラインセンサ対H1,H2の出力を、単純平均する処理を行なう。そして、この図8(C)に示す場面においては、得られたラインセンサ対H1,H2の出力の単純平均値に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。すなわち、この図8(C)に示す場面においては、並び方向が同じ横方向であり、かつ、ともに優先度が「高」であるラインセンサ対H1,H2については出力を単純平均する処理を行ない、得られた単純平気値のみを用いて、デフォーカス量dfの算出を行なうものであり、並び方向が縦方向のラインセンサ対V1,V2については、いずれも優先度が「低」であるため、これらラインセンサ対V1,V2については、デフォーカス量dfの算出には用いない。
【0074】
さらに、図8(D)に示す場面においては、ラインセンサ対H1については、優先度が「高」に設定される一方で、ラインセンサ対H2,V1,V2については、優先度が「低」に設定される。そのため、この図8(D)に示す場面においては、優先度が「高」であるラインセンサ対H1の出力値のみに基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。すなわち、この図8(D)に示す場面においては、優先度が「高」であるラインセンサ対H1の出力値のみを用いて、デフォーカス量dfの算出を行なうものであり、優先度が「低」であるラインセンサ対H2,V1,V2については、デフォーカス量dfの算出には用いない。
【0075】
本実施形態では、以上のようにして、被写体捕捉エリアAFP_objにおけるデフォーカス量dfの算出を行なう。なお、上述した例では、並び方向が同じであり、かつ、ともに優先度が「高」であるラインセンサ対について、その出力を単純平均する処理を行なうような構成を例示したが、単純平均処理に代えて、加算処理や加算平均処理を行なうような構成としてもよい。
【0076】
次いで、ステップS9では、図3に示す焦点検出エリアAFPのうち、予め定められた所定数の焦点検出エリアについて、デフォーカス量演算が終了したか否かの判定が行なわれる。予め定められた所定数の焦点検出エリアについて、デフォーカス量演算が終了した場合には、ステップS11に進み、一方、終了していない場合には、ステップS7に戻り、ステップS7、S8において、AFF−CCD信号の読出しおよびデフォーカス量演算が繰り返し実行される。なお、予め定められた所定数の焦点検出エリアについて、デフォーカス量演算が終了したか否かの判定は、たとえば、追尾被写体領域と重なっている全ての焦点検出エリアAFPについて、デフォーカス量演算が終了したか否かに基づいて判断してもよいし、あるいは、図3に示す全ての焦点検出エリアAFP(合計11点)について、デフォーカス量演算が終了したか否かに基づいて判断してもよい。
【0077】
ステップS10では、カメラ制御部170により、ステップS8で算出されたデフォーカス量dfに基づいて、図3に示す焦点検出エリアAFPのうち、焦点調節に用いるための焦点検出エリアを決定する処理が行なわれる。本実施形態では、たとえば、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFP(被写体捕捉エリアAFP_obj)が存在する場合には、被写体捕捉エリアAFP_objを、焦点調節に用いるための焦点検出エリアとして決定することができる。また、被写体捕捉エリアAFP_objが複数存在する場合には、たとえば、ステップS8で算出されたデフォーカス量dfに基づいて、焦点状態が最も至近側に位置する被写体捕捉エリアAFP_objを、焦点調節に用いるための焦点検出エリアとして決定することができる。また、被写体捕捉エリアAFP_objが存在しない場合には、前回処理以前に、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPにおいて算出されたデフォーカス量dfと最も近いデフォーカス量が算出された焦点検出エリアを、焦点調節に用いるための焦点検出エリアとして決定したり、あるいは、焦点状態が最も至近側に位置する焦点検出エリアAFPを、焦点調節に用いるための焦点検出エリアとして決定することができる。
【0078】
ステップS11では、レンズ駆動量演算部164が、ステップS10にて選択された焦点調節に用いるための焦点検出エリアのデフォーカス量dfに応じたレンズ駆動量Δdを演算し、これをレンズ駆動制御部165へ出力する。
【0079】
ステップS12では、レンズ駆動制御部165により、ステップS11にて算出されたレンズ駆動量Δdに基づいて、レンズ制御部250を介して、フォーカスレンズ駆動モータ230へ駆動指令が送出され、フォーカスレンズ212の移動が行われる。そして、再び、ステップS1に戻り、上述した処理が繰り返し行なわれる。
【0080】
以上のように、本実施形態に係るカメラ1は動作する。
【0081】
本実施形態においては、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPにおけるデフォーカス量dfを算出する際に、追尾被写体領域と、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2による検出領域との重なりを検出し、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、追尾被写体領域と重なっているものを優先度「高」に設定し、重なっていなものを優先度「低」に設定し、設定した優先度に基づいて、デフォーカス量dfの算出を行なう。具体的には、各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2のうち、優先度「高」に設定されたラインセンサ対のみを用いて、デフォーカス量dfの算出を行なう。そのため、本実施形態によれば、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPにおけるデフォーカス量dfを算出する際に、追尾被写体領域と重なっておらず、優先度「低」に設定されたラインセンサ対を、デフォーカス量dfから除くことができ、これにより、追尾被写体領域と重なっていないラインセンサ対からのデータの影響を受けることなく、デフォーカス量dfを算出することができ、その結果として、デフォーカス量dfの算出精度を向上させることができる。また、追尾被写体領域と重なっておらず、優先度「低」に設定されたラインセンサ対をデフォーカス量dfから除くことにより、優先度「低」に設定されたラインセンサ対の出力データに対する演算負荷を軽減することができ、これにより、デフォーカス量dfを演算する際の演算時間を短縮することができる。
【0082】
加えて、本実施形態においては、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPにおける各ラインセンサ対H1,H2,V1,V2の蓄積時間およびゲイン(受光条件)を設定する際に、追尾被写体領域と重なっており、優先度「高」に設定されたラインセンサ対の前回処理時の出力に基づいて、蓄積時間およびゲインの設定を行なう。そのため、本実施形態によれば、デフォーカス量dfを演算する際に用いるラインセンサ対に対して適切な蓄積時間およびゲインを設定することができ、これにより、追尾被写体に基づく像信号を適切に取得することができ、その結果として、デフォーカス量dfを演算する際の演算精度を向上させることができる。
【0083】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0084】
たとえば、上述した実施形態では、追尾被写体領域と重なっている焦点検出エリアAFPにおけるデフォーカス量dfを算出する際に、優先度「高」に設定されたラインセンサ対のみを用いて、デフォーカス量dfを算出する態様を例示したが、優先度「高」に設定されたラインセンサ対に加えて、優先度「低」に設定されたラインセンサ対を用いて、デフォーカス量dfを算出するような態様としてもよい。
【0085】
すなわち、たとえば、図8(B)に示す場面において、並び方向が同じ縦方向であり、かつ、優先度がそれぞれ「高」および「低」であるラインセンサ対V1,V2について、優先度「高」であるラインセンサ対V1の出力と、優先度「低」であるラインセンサ対V2の出力とを、重み付け処理をして、加算または加算平均するような処理をしてもよい。具体的には、優先度「高」であるラインセンサ対V1の出力の重みを、優先度「低」であるラインセンサ対V2の出力の重みよりも高く設定し、これらを加算または加算平均するような処理をしてもよい。
【0086】
また、たとえば、図8(C)に示す場面において、並び方向が同じ縦方向であり、かつ、ともに優先度「低」であるラインセンサ対V1,V2の出力の単純平均値(あるいは、加算値や加算平均値)を算出し、ラインセンサ対V1,V2の出力の単純平均値(あるいは、加算値や加算平均値)と、並び方向が同じ横方向であり、かつ、ともに優先度「高」であるラインセンサ対H1,H2の出力の単純平均値とに基づいて、デフォーカス量dfを算出してもよい。なお、この場合においては、優先度「低」であるラインセンサ対V1,V2の出力の単純平均値よりも、優先度「高」であるラインセンサ対H1,H2の出力の単純平均値を優先するような処理を施すことが望ましい。また、図8(D)に示す場面においても、上記図8(B)、図8(C)と同様とすることももちろん可能である。
【0087】
あるいは、図8(B)、図8(C)および図8(D)に示す各場面において、優先度が「高」であるラインセンサ対に基づいて、デフォーカス量dfを算出した結果、十分な信頼性を有するデフォーカス量が得られなかった場合にのみ、優先度が「低」であるラインセンサ対に基づいて、デフォーカス量dfを算出するような構成としてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態においては、位相差検出方式による焦点検出を行うための焦点検出モジュール161を、撮像素子110とは別に設けるような構成を例示したが、たとえば、撮像素子110を構成する撮像画素のうち一部を、位相差検出方式による焦点検出を行うための焦点検出用の画素列で置換し、これにより、図4に示すような位置に焦点検出用の画素列が配置されるような態様としてもよい。
【0089】
さらに、上述した実施形態においては、レンズ一体型のデジタルカメラ1を例示して説明したが、レンズ交換型のデジタルカメラや、携帯電話機などに内蔵される小型カメラモジュールなどにも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…一眼レフデジタルカメラ
100…カメラボディ
110…撮像素子
150…操作部
161…焦点検出モジュール
161d…ラインセンサ
H1,H2,V1,V2…ラインセンサ対
162…AF−CCD制御部
163…デフォーカス演算部
164…レンズ駆動量演算部
165…レンズ駆動量制御部
170…カメラ制御部
200…レンズ鏡筒
212…フォーカスレンズ
230…フォーカスレンズ駆動モータ
250…レンズ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の像面内に設定された焦点検出位置に対応して設けられた複数対の受光素子列と、
前記複数対の受光素子列の出力に基づいて、前記焦点検出位置に対して、前記光学系による像面のずれ量を検出する検出手段と、
前記光学系による像のうち特定の対象の像を認識する認識手段と、を備え、
前記検出手段は、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と、前記複数対の受光素子列を構成する各受光素子列の像面内の位置とが重なっているか否かに基づいて、前記ずれ量の検出に用いる受光素子列の優先度を決定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点検出装置において、
前記検出手段は、前記複数対の受光素子列のうち、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と重なる位置にある受光素子列を、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と重ならない位置にある受光素子列と比較して、前記ずれ量の検出に用いる際の優先度を高く設定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の焦点検出装置において、
前記検出手段は、前記複数対の受光素子列のうち、少なくとも二対の受光素子列の出力に基づいて、前記ずれ量の検出を行うことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の焦点検出装置において、
前記検出手段は、前記複数対の受光素子列のうち、並び方向が同じである少なくとも二対の受光素子列の出力に基づいて、前記ずれ量の検出を行うことを特徴とする焦点検出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記複数対の受光素子列による受光条件を制御する受光素子列制御手段をさらに備え、
前記受光素子列制御手段は、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と、前記複数対の受光素子列を構成する各受光素子列の像面内の位置とが重なっているか否かに基づいて、前記受光条件を決定する際における、受光素子列の優先度を決定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の焦点検出装置において、
前記受光素子列制御手段は、前記複数対の受光素子列のうち、前記認識手段によって認識された像の像面内の位置と重なる位置にある受光素子列からの出力に基づいて、前記受光条件を決定することを特徴とする焦点検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の焦点検出装置において、
前記焦点検出位置は、前記光学系の像面内に複数設定されており、かつ、前記複数対の受光素子列は、各前記焦点検出位置に対応して、それぞれ設けられていることを特徴とする焦点検出装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の焦点検出装置を備えたことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−73140(P2013−73140A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213817(P2011−213817)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】