説明

焦電型赤外線センサおよびその製造方法

【課題】 製造が容易で、製造コストを低減し、さらに視野角と気密性を確保した焦電型赤外線センサおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 受光面に照射された赤外線を検知する焦電体板を少なくとも1個以上有するセンサ素子5と、センサ素子5およびセンサ素子5の出力信号をインピーダンス変換して出力するための手段を実装する回路基板4と、回路基板4を覆い開口部2aを有するケース2と、ケース2に装着された赤外線透過フィルタ3を備える焦電型赤外線センサであって、ケース2は内部方向に開口部2aを備える段差2bを有し、段差2bの底面部の少なくとも一部には溝2cが形成され、段差2bに赤外線透過フィルタ3が装着され、段差2bと赤外線透過フィルタ3の間隙は接着剤7で埋められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦電体板を備えたセンサ素子を実装した焦電型赤外線センサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサの一種である焦電型赤外線センサは、受光面に照射された赤外線を検知する焦電体板を検出画素として備え、人体等から発生する赤外線を検出するセンサとして広く利用されている。
【0003】
従来の焦電型赤外線センサとして、例えば特許文献1の構造が提案されており、以下に説明する。図6は、従来の焦電型赤外線センサの一例を示す断面図である。センサへの入出力を行う端子14を備えたステム15に焦電体板を実装したプリント基板16が組み付けられている。また、赤外線透過用の窓17aを備えた金属製ケース17の内側にシリコンなどからなる赤外線透過フィルタ3が組み付けられている。
【0004】
焦電型赤外線センサは、焦電体板やその他の実装部品が収納されている内部空間に、ガスや水分が侵入すると、絶縁抵抗の劣化や腐食が進行し、長期的な信頼性に影響することがある。このため、焦電型赤外線センサには、外部からガスや水分等が侵入出来ないような気密性が必要となる。
【0005】
焦電型赤外線センサの内部の気密性を保つ為、図6において、金属製ケース17と赤外線透過フィルタ3は隙間の無いように組み付ける必要がある。その為に赤外線透過フィルタ3の全周にエポキシ系接着剤を隙間無く塗布し、硬化させることにより、金属ケース17と気密を保っている。最後にステム15と金属製ケース17とを接合し焦電型赤外線センサが完成する。
【0006】
焦電型赤外線センサに組み付けられる赤外線透過フィルタ3は非常に高価な部材であり、その値段は面積に比例するため、出来るだけ小さい面積とすることが必要である。しかしながら、特許文献1に示したような構成では、赤外線透過フィルタ3は、金属製ケース17の赤外線透過用の窓17aを塞ぐために、赤外線透過用の窓17aよりも長さおよび幅寸法を大きくする必要があり、製造コストが増大する問題が発生していた。
【0007】
上述した問題を解決するために、特許文献2の赤外線センサが提案されている。特許文献2の赤外線センサは、赤外線フィルタとこの赤外線フィルタを収納する開口窓が形成されたケースとを具備したものであって、開口窓内に収納された赤外線フィルタの外表面はケースの外表面と面一状態に配置されており、赤外線フィルタの端面は導電接着剤を用いて開口窓の端縁に固定されている。また、赤外線センサの製造にはセンサ製造用パレットが用いられ、このセンサ製造用パレットは、赤外線フィルタおよびケースの外表面同士が面一状態で当接するパレット底面部を有しており、このパレット底面部には、赤外線フィルタおよび開口窓の対向しあう端面と対応する位置に配置された凹溝が形成されている。
【0008】
特許文献2では、上述したようなセンサ製造用パレットを用いることによって、赤外線フィルタおよびケースの外表面同士が面一となるように、赤外線フィルタをケースの開孔窓の端縁に接着することができ、赤外線フィルタを最小限の大きさとすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−332829号公報
【特許文献2】特開平9−79902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7は、従来の焦電型赤外線センサのケースと赤外線フィルタの接着についての説明図であり、図7(a)は断面図、図7(b)はE部拡大図である。特許文献2に記載されているような従来構造では、ケース2の内側に赤外線透過フィルタ3を配置し、赤外線透過フィルタ3の全周に接着剤7を塗布し硬化する。その為、接着剤7を塗布、硬化を行う際はケース2を上下逆さにした形で行う必要がある。このとき、接着剤7はケース2の上面に滲み出し、赤外線透過するための開口部2aまで至り焦電型赤外線センサの視野角を狭くするという問題がある。
【0011】
また、ケース2を逆さにして接着を行うという作業のもうひとつの問題として、ケース2と赤外線透過フィルタ3の接着と、センサ内部に配置されている回路基板4とセンサ素子5の接着とを同時に行うことが出来ないということがある。このため、製造工程が煩雑になるとともに、接着工程での硬化時間が上述した二箇所の接着の度に必要となり、接着硬化時間の増大により製造コストが高くなるという問題も発生する。
【0012】
特許文献2に記載されている方法は、赤外線フィルタの面積を最小限とすることには有効であるが、上述したようなケースを上下逆さにして接着する工程としており、特許文献1と同様に接着剤の滲み出しによる視野角への影響、製造工程の煩雑さや製造コストの増大という問題がある。また、赤外線透過フィルタをケース接着する工程においては、センサ製造用パレットのような特別な治具が必要となっており、これも製造工程の煩雑さや製造コストの増大に影響する可能性がある。
【0013】
また、実使用時の外部環境やリフロー等の製造工程などの、加熱や冷却によってケースが膨張または収縮し、センサ内部の容積が変化するような場合を想定した際、焦電型赤外線センサの気密性を得るためには、赤外線フィルタとケースの接着は強固に行う必要がある。しかし、特許文献2では、赤外線フィルタのケースとの接着部分は、赤外線フィルタの端面のみであるため、接着強度に対する課題が残っている。
【0014】
そこで、本発明の目的は、製造が容易で、製造コストを低減し、さらに視野角と気密性を確保した焦電型赤外線センサおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明による焦電型赤外線センサは、ケースの上面に開口部を形成した段差を有し、前記段差の底面部の少なくとも一部には溝が形成され、前記段差に赤外線透過手段を装着し、前記段差を封止樹脂で埋める構造を特徴としている。
【0016】
すなわち、本発明によれば、受光面に照射された赤外線を検知する焦電体板を少なくとも1個以上有するセンサ素子と、前記センサ素子および前記センサ素子の出力信号をインピーダンス変換して出力するための手段を実装する回路基板と、前記回路基板を覆い開口部を有するケースと、前記ケースに装着された赤外線透過フィルタを備える焦電型赤外線センサであって、前記ケースは内部方向に前記開口部を備える段差を有し、前記段差の底面部の少なくとも一部には溝が形成され、前記段差に前記赤外線透過フィルタが装着され、前記段差と前記赤外線透過フィルタの間隙は封止樹脂で埋められることを特徴とする焦電型赤外線センサが得られる。
【0017】
また、本発明によれば、前記段差の底面部は、前記溝を境界として、開口部側に位置する内側部と段差側面側に位置する外側部を有し、前記内側部には前記赤外線透過フィルタが接触し、前記外側部と前記赤外線透過フィルタの間には間隙を備えることを特徴とする上記の焦電型赤外線センサが得られる。
【0018】
また、本発明によれば、前記溝は、前記底面部の少なくとも一箇所を連続して一周することを特徴とする上記の焦電型赤外線センサが得られる。
【0019】
また、本発明によれば、前記溝は、前記底面部の少なくとも一箇所を一周する複数の集合であることを特徴とする上記の焦電型赤外線センサが得られる。
【0020】
また、本発明によれば、前記開口部は、前記センサ素子の長さおよび幅寸法より大きく、前記赤外線透過フィルタの長さおよび幅寸法よりも小さいことを特徴とする上記の焦電型赤外線センサが得られる。
【0021】
また、本発明によれば、受光面に照射された赤外線を検知する焦電体板を少なくとも1個以上有するセンサ素子と、前記センサ素子および前記センサ素子の出力信号をインピーダンス変換して出力するための手段を実装する回路基板と、前記回路基板を覆い開口部を有するケースと、前記ケースに装着された赤外線透過フィルタを備える焦電型赤外線センサの製造方法であって、前記ケースに内部方向に開口部を備える段差を形成し、前記段差の底面部の少なくとも一部に溝を形成し、前記段差に前記赤外線透過フィルタを装着し、前記段差と前記赤外線透過フィルタの間隙を封止樹脂で埋めることを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の構成により、赤外線透過フィルタ等の赤外線透過手段をケースに接着する際に、上下逆さにする必要がないため、製造が容易となる。また、センサ素子と回路基板、ケースと赤外線透過手段の2つの接着工程を同時に行うことが出来る為、製造コストも低減できる。さらに、接着剤等の封止樹脂の滲み出しが生じても、封止樹脂は段差の底面部に形成した溝により塞き止められ、開口部まで至ることが無く、焦電型赤外線センサの視野角を狭くすることもない。
【0023】
また、段差の底面部は、前記溝を境界とした内側部と外側部を有し、段差に赤外線透過手段を装着したときに、外側部と赤外線透過手段の間には間隙を備えている構造としているため、封止樹脂が間隙を通じて溝に流れ込む。この構造により、ケースの段差と赤外線透過手段との接着面を大きくすることが可能となり、接着強度が向上し気密性を確保することが出来る。
【0024】
また、段差底面部に形成された開口部は、センサ素子の長さおよび幅寸法より大きく、赤外線透過フィルタの長さおよび幅寸法より小さい、すなわち、センサ素子<開口部<赤外線透過フィルタ<段差となっていることから、回路基板に、センサ素子、ケース、赤外線透過フィルタの順に組み立てることが出来るため、製造が容易となる。且つ、ケースに開口部を有する段差を設け、開口部をセンサ素子に近づけ、開口部の外側に赤外線透過フィルタを配置することにより、従来の視野角を確保した状態で、開口部を小さくすることが出来る為、赤外線透過フィルタの面積も小さくなり、資材費が低減できる。従って、従来と同等の視野角を確保し、かつ製造コストの低減が可能となる。
【0025】
以上のように、本発明によれば、製造が容易で、製造コストを低減し、さらに視野角と気密性を確保した焦電型赤外線センサおよびその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る焦電型赤外線センサの外観を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)は斜視図。
【図2】本発明に係る焦電型赤外線センサの分解斜視図。
【図3】本発明の焦電型赤外線センサの構造を説明する図で、図3(a)は図1のA−A線断面図で、図3(b)はB部拡大図。
【図4】本実施の形態に係る溝の形状の例を示したケース外観平面図であり、図4(a)は、連続して一周する形状を示す図、図4(b)は、複数の溝を形成し一周する形状を示す図。
【図5】赤外線透過フィルタの配置場所と視野角の関係を示す説明図で、図5(a)はケース開口部と視野角の関係を示す説明図、図5(b)は赤外線透過フィルタをケースの内側に配置した場合を示す説明図、図5(c)は赤外線透過フィルタをケースの外側に配置した場合を示す説明図。
【図6】従来の焦電型赤外線センサの一例を示す断面図。
【図7】従来の焦電型赤外線センサのケースと赤外線フィルタの接着についての説明図であり、図7(a)は断面図、図7(b)はE部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず図1および図2を用いて、本発明に係る焦電型赤外線センサの全体構成について説明する。図1は、本発明に係る焦電型赤外線センサの外観を示す図で、図1(a)は平面図、図1(b)は斜視図である。図2は、本発明に係る焦電型赤外線センサの分解斜視図である。
【0028】
図1に示すように、本発明の焦電型赤外線センサ1は、入出力を行う入出力用端子4bとグランド用端子4aを備えた回路基板4の上に、赤外線透過フィルタ3を装着したケース2が組みつけられる。
【0029】
さらにその内部構成は、図2に示すように、センサ素子5と、センサ素子5の出力信号をインピーダンス変換して出力するための手段として用いられるFET6と、センサ素子5およびFET6を実装し、入出力用端子4bとグランド用端子4aを備える回路基板4と、そして、回路基板4の上にセンサ素子5を覆うように組み付けられ、上部に開口部2aを有するケース2と、特定範囲の波長を持つ赤外線をケース2内部に透過させる赤外線透過手段として赤外線透過フィルタ3を備えている。
【0030】
センサ素子5は、焦電体基板5aの受光面に設置された表面電極5bと、表面電極5bと焦電体基板5aを挟んで対抗する裏面電極(図示しない)を形成した焦電体板5cを備えている。本実施の形態では、焦電体板5cは1個としたが、用途により、焦電体基板5aに表面電極5bと裏面電極を複数組形成し、複数個としてもよい。焦電体基板5aの材質としては、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウム等の強誘電体セラミックス、タンタル酸リチウム等の単結晶、ポリフッ化ビニリデン等の有機材料が用いられ、本実施の形態ではチタン酸ジルコン酸鉛を使用した。また、センサ素子5は裏面電極で回路基板4のセンサ素子実装用ランド4cと接続される。接続には導電性接着剤を使用するのが好ましい。
【0031】
ケース2は、センサ素子5に対して周囲環境からの電磁ノイズが影響を与えないように、センサ素子5の周囲を覆う目的で回路基板4の上に設置されている。回路基板4とケース2は、半田または溶接などで組み付けられる。電磁ノイズからの保護という目的からケース2の材質は、銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、錫等の金属または合金、これら金属のメッキを施した樹脂または金属が好ましい。本実施の形態では、銅と亜鉛の合金である黄銅にニッケルメッキを施したものを使用した。
【0032】
また、ケース2の上面には、赤外線透過フィルタ3の面積より大きい段差2bが形成されており、段差2bの底面部に開口部2aが位置する構造となっている。段差2bの底面部には溝2cが形成されており、この溝2cが形成された底面部に、赤外線透過フィルタ3の片面の外周部分が対向するように配置される。さらに、赤外線透過フィルタ3と段差2bの間隙に封止樹脂として接着剤(図示せず)を流し込み、赤外線透過フィルタ3がケース2に固定される構造となる。
【0033】
次に、ケース2の段差2bと、段差2bの底面部に形成された溝2cについて、図3を用いて詳細に説明する。図3は、本発明の焦電型赤外線センサの構造を説明する図で、図3(a)は図1のA−A線断面図で、図3(b)はB部拡大図である。
【0034】
先に説明したとおり、ケース2の上面には、開口部2aを備えた段差2bが形成されており、この段差に赤外線透過フィルタ3が装着されている。段差2bの底面部には、溝2cが形成されている。赤外線透過フィルタ3と段差2bの間隙に接着剤7が埋められている。ケース2は、回路基板4上に搭載されたセンサ素子5とFET6を覆うように配置され、回路基板4と接合されている。センサ素子5は、回路基板4に導電性接着剤8で固定されている。
【0035】
本実施の形態では、赤外線透過フィルタ3を長さ4.0mm、幅3.2mmとし、これに対して、段差2bの底面部寸法は長さ4.4mm、幅3.6mmとした。赤外線透過フィルタ3の厚さと段差2bの深さは、ともに0.5mmとした。段差2bの底面部に設けた開口部2aは、ケース2内に赤外線を取り込む目的で、センサ素子5の長さおよび幅寸法よりも大きくするのが好ましく、本実施の形態では、センサ素子5を長さ3mm、幅2mmとし、これに対して、開口部2aの大きさを長さ3.2mm、幅2.4mmとした。すなわち、長さおよび幅寸法は、センサ素子5<開口部2a<赤外線透過フィルタ3<段差2bとなり、焦電型赤外線センサを組み立てる際は、回路基板4の上に、センサ素子5、ケース2、赤外線透過フィルタ3の順に積み上げるように組み立てることが出来る。ケース2と赤外線透過フィルタ3を固定する接着剤7と、センサ素子5と回路基板4を接続する導電性接着剤8について、硬化条件が類似もしくは同一のものを選択することにより、2箇所の同時硬化も可能である。この構成により、製造方法が容易となり、製造コストを低減できる。
【0036】
図3に示すように、ケース2に設けられた段差2bの底面部には、溝2cが形成されている。段差2bには赤外線透過フィルタ3が組み付けられる。赤外線透過フィルタ3を固定し、またセンサ内部を気密にするため、段差2bと赤外線透過フィルタ3の間隙は接着剤7等の封止樹脂で隙間無く埋められる。その際に、接着剤7は段差底面部にある溝2cで塞き止められ、開口部2aまで至らず、赤外線透過フィルタ3に滲み出すことが無い構造となっている。この構造により、焦電型赤外線センサ1の視野角を狭くすることもない。
【0037】
また、図3(b)に示すように、段差2bの底面部は、溝2cを境界として、開口部2a側に位置する内側部と段差2bの側面側に位置する外側部とで、赤外線透過フィルタ3の接着面からの距離が異なる構造となっている。即ち、内側部は赤外線透過フィルタ3と接触し、外側部は赤外線透過フィルタ3と間隙を設けて構成されている。この構造により、意図的に接着剤7を溝2cに流し込むことが可能となり、ケース2と赤外線透過フィルタ3の接着面積を大きくし、接着強度を向上することが可能となる。
【0038】
図4は、本実施の形態に係る溝の形状の例を示したケース外観平面図であり、図4(a)は、連続して一周する形状を示す図、図4(b)は、複数の溝を形成し一周する形状を示す図である。段差2bの底面部に形成される溝は、図4(a)に示すように、底面部を連続して一周するような形状の溝12cとしても良いし、図4(b)に示すように、線状または点状の溝を複数形成し、底面部を一周するような形状の溝22cとしても良い。さらには、例えば、一周する溝を複数形成しても良いし、線状または点状に一周する溝を複数形成しても良く、本実施の形態に限定されるものではない。
【0039】
次に、赤外線透過フィルタの配置場所と視野角の関係について図5を用いて説明する。図5は、赤外線透過フィルタの配置場所と視野角の関係を示す説明図で、図5(a)はケース開口部と視野角の関係を示す説明図、図5(b)は赤外線透過フィルタをケースの内側に配置した場合を示す説明図、図5(c)は赤外線透過フィルタをケースの外側に配置した場合を示す説明図である。
【0040】
センサ素子5の受光面11から所望の視野角10を得ようとしたとき、図5(a)に示すように、ケースに設けた開口部9が、受光面11に近いほど、開口部を小さくでき、すなわち開口部を覆うように配置する赤外線透過フィルタ3の面積を小さくできる(C<D)。一方、赤外線透過フィルタ3は開口部9を塞ぐ役割を果たすことから、赤外線透過フィルタ3の長さおよび幅寸法は、開口部9よりも大きいのが好ましい。従って、赤外線透過フィルタ3は、図5(b)に示すようにケースの内側、または図5(c)に示すようにケースの外側に取り付ける必要がある。上述したように、開口部をよりセンサ素子5の受光面11に近づけるためには、図5(c)のケース2の外側に赤外線透過フィルタ3を設けるのが好ましい。さらに、図5(c)の構造により、視野角を確保した状態で、赤外線透過フィルタ3の面積を小さくすることが可能となる。
【0041】
本発明は、ケース2に段差を設けたため、センサ素子5の受光面11に開口部を近づけることが可能となり、また、ケース2の外側に赤外線透過フィルタ3を配置する構造であるため、図5(c)の構造が得られ、視野角を確保した状態で、赤外線透過フィルタ3の面積を小さくすることが可能となり、製造コストが低減できる。
【0042】
以上のように、本発明によれば、製造が容易で、製造コストを低減し、さらに視野角と気密性を確保した焦電型赤外線センサおよびその製造方法を提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0043】
1 焦電型赤外線センサ
2 ケース
2a、9 開口部
2b 段差
2c、12c、22c 溝
3 赤外線透過フィルタ
4 回路基板
4a グランド用端子
4b 入出力用端子
4c センサ素子実装用ランド
5 センサ素子
5a 焦電体基板
5b 表面電極
5c 焦電体板
6 FET
7 接着剤
8 導電性接着剤
10 視野角
11 受光面
14 端子
15 ステム
16 プリント基板
17 金属製ケース
17a 赤外線透過用の窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面に照射された赤外線を検知する焦電体板を少なくとも1個以上有するセンサ素子と、前記センサ素子および前記センサ素子の出力信号をインピーダンス変換して出力するための手段を実装する回路基板と、前記回路基板を覆い開口部を有するケースと、前記ケースに装着された赤外線透過フィルタを備える焦電型赤外線センサであって、前記ケースの内部方向に前記開口部を備える段差を有し、前記段差の底面部の少なくとも一部には溝が形成され、前記段差に前記赤外線透過フィルタが装着され、前記段差と前記赤外線透過フィルタの間隙は封止樹脂で埋められることを特徴とする焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
前記段差の底面部は、前記溝を境界として、開口部側に位置する内側部と段差側面側に位置する外側部を有し、前記内側部には前記赤外線透過フィルタが接触し、前記外側部と前記赤外線透過フィルタの間には間隙を備えることを特徴とする請求項1に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
前記溝は、前記底面部の少なくとも一箇所を連続して一周することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
前記溝は、前記底面部の少なくとも一箇所を一周する複数の集合であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項5】
前記開口部は、前記センサ素子の長さおよび幅寸法より大きく、前記赤外線透過フィルタの長さおよび幅寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項6】
受光面に照射された赤外線を検知する焦電体板を少なくとも1個以上有するセンサ素子と、前記センサ素子および前記センサ素子の出力信号をインピーダンス変換して出力するための手段を実装する回路基板と、前記回路基板を覆い開口部を有するケースと、前記ケースに装着された赤外線透過フィルタを備える焦電型赤外線センサの製造方法であって、前記ケースに内部方向に開口部を備える段差を形成し、前記段差の底面部の少なくとも一部に溝を形成し、前記段差に前記赤外線透過フィルタを装着し、前記段差と前記赤外線透過フィルタの間隙を封止樹脂で埋めることを特徴とする焦電型赤外線センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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