説明

焼き付き補正装置、表示装置、画像処理装置及びプログラム

【課題】固定表示部分の焼き付き現象を解消する。
【解決手段】焼き付き補正装置を、(a)画像の表示領域を、指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらす画像ずらし部と、(b)表示画面の最大表示領域を基準に、画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、(c)部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、(d)各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、(e)補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1つの発明は、自発光型の表示装置の焼き付き補正装置に関する。
なお、この発明は、焼き付き補正装置を搭載した表示装置及び画像処理装置としても実現される。また、この発明は、焼き付き補正機能を提供するプログラムとしても実現される。
【背景技術】
【0002】
自発光型の表示装置を構成する発光体は、その発光量と時間に比例して劣化する特性がある。このため、発光体の性能向上が期待されている。
一方で、表示装置に表示される画像の内容は一様ではない。このため、発光体の劣化が部分的に進行し易い。例えば、時刻表示領域の発光体は、他の表示領域の発光体に比べて劣化の進行が速い。
劣化の進行した発光体の輝度は、他の表示領域の輝度に比して相対的に低下する。一般に、この現象は“焼きつき”と呼ばれる。以下、部分的な発光体の劣化を“焼きつき”と表記する。
【0003】
現在、“焼き付き”の改善策として様々な手法が検討されている。以下、そのうちの幾つかを列記する。
例えば、特許文献1には、発光素子の駆動電圧の変化量を検知し、その変化量に応じて定電流駆動信号を制御する手法が開示されている。
また例えば、特許文献2には、エレクトロルミネセンス素子(以下“EL素子”という。)が発光しない間、EL素子が劣化しないように逆バイアスを印加する手法が開示されている。
また例えば、特許文献3には、画素(ピクセル)の保持容量を積極的に放電し、不要な発光時間を抑制する手法が開示されている。
また例えば、特許文献4には、表示装置の使用時間から劣化量を計算して、全ての表示素子の輝度を落とし、表示素子の劣化速度を遅くする手法が開示されている。
また例えば、特許文献5には、画面に一定期間、変化のない映像が入力された場合、全ての表示素子の輝度を落とす手法が開示されている。
【特許文献1】特開平7−36410号公報
【特許文献2】特開2003-150110号公報
【特許文献3】特開2002-169509号公報
【特許文献4】特開2000−356981号公報
【特許文献5】特開平5−61426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる技術は、“焼き付き”の出現の遅延又は、出現した輝度差の拡大防止に効果的である。
しかし依然として、時間が経過すれば“焼き付き”が出現し又は、輝度差が拡大するのを避け得ない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、以上の技術的課題に着目し、以下の技術を提案する。
すなわち、自発光型の表示装置の焼き付き補正装置として、
(a)画像の表示領域を、指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらす表示領域ずらし部と、
(b)表示画面の最大表示領域を基準に、画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
(c)部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
(d)各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
(e)補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と
を有するものを提案する。
【0006】
また、自発光型の表示装置の他の焼き付き補正装置として、
(a)画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
(b)各部分領域の割り当て位置を、画像に対して指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらすように前記領域分割部に指示する部分領域ずらし部と、
(c)部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
(d)各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
(e)補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と
を有するものを提案する。
【0007】
なお、補正値による補正処理は、焼き付き現象の発生し易い静止画領域についてのみ行うのが好ましい。
この場合、各焼き付き補正装置には、各部分領域が静止画領域と動画領域のいずれに対応するかフレーム単位で判定する動き判定部と、動画領域と判定された部分領域の発光量をゼロに変換する一方、静止画領域と判定された部分領域の発光量をそのままとするデータ変換部とを搭載するのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
かかる補正技術の採用により、部分領域間における累積発光量のバラツキを積極的に解消できる。すなわち、発光体の劣化度を表示画面の全体について均一化できる。結果として、表示画面から焼き付き現象そのものを無くすことができる。
また、補正単位である部分領域と画像との位置関係を相対的にずらすことにより、境界部分の補正効果をぼかすことができる。すなわち、補正単位である部分領域の境界を知覚され難くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、自発光型の表示装置の焼き付きを補正する補正装置と、当該補正装置を搭載した電子機器の実施形態例を説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0010】
(A)用語
以下の説明では、表示パネルを構成する最小表示単位のサブピクセルがマトリクス状に配置されているものとして説明する。
各サブピクセルは、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に対応する。
1つの画素(ピクセル)は、これら各色に対応する3つのサブピクセルにより構成されている。各画素(ピクセル)の表示色は、これらの各色の組み合わせにより表現される。
この明細書では、サブピクセルの輝度を与えるデータをサブピクセルデータと呼ぶ。
なお、R(赤)に対応するサブピクセルデータは、Rサブピクセルデータ、G(緑)に対応するサブピクセルデータは、Gサブピクセルデータ、B(青)に対応するサブピクセルデータは、Bサブピクセルデータと呼ぶ。
また、各画素(ピクセル)に対応する単位での輝度を与えるデータをピクセルデータと呼ぶ。
累積発光量の演算は、これらサブピクセルデータの累積加算により行う。例えば、3つのサブピクセルデータを加算した画素(ピクセル)単位の輝度値(階調データ)の累積加算により行う。
【0011】
後述する各実施形態は、ピクセル単位で累積発光量を揃える場合にも、サブピクセル単位で累積発光量を揃える場合にも同様に適用できる。
なお、ピクセル単位で累積発光量を揃える場合は、対応する発光量をピクセル単位で考えるものとする。
一方、サブピクセル単位で累積発光量を揃える場合は、対応する発光量を各色に対応するサブピクセル単位で考えるものとする。
以下では、重複説明を回避するため、ピクセル単位(画素単位)で累積発光量を揃える場合について説明する。
しかし、前述の通り、各実施形態は、サブピクセル単位(色単位)で累積発光量を揃える場合についても同様に適用できる。
【0012】
(B)画像と部分領域のずらし処理
まず、各実施形態で採用する画像と部分領域との相対的なずらし方法を説明する。
ずらし処理は、部分領域の境界部分の補正効果をぼかす効果がある。また、部分領域の範囲を広げるのと同じ効果がある。
(a)画像の表示領域をずらす方法
図1に、画像の表示領域のずらし処理を示す。図1は、最大表示領域1(固定領域)に対して、画像の表示領域3をずらす様子を表している。図では、最大表示領域1を太枠で示し、表示領域3を白抜きで表している。斜線で示す領域は、画像の表示に使用されていない領域である。
図1は、代表的な4つの表示位置について表している。ここでは、(A)→(B)→(C)→(D)→(A)の順番に表示位置を移動させる場合を考える。
図1(A)は、表示領域3が最大表示領域1の右下隅近くに位置する場合である。図1(B)は、表示領域3が最大表示領域1の左下隅に位置する場合である。図1(C)は、表示領域3が最大表示領域1の左上隅に位置する場合である。図1(D)は、表示領域3が最大表示領域1の右上隅に位置する場合である。
なお、1つの表示位置から次の表示位置への移動は、1回又は複数回のずらし処理により実現される。
ずらし方向は、水平方向、垂直方向又はこれら2方向の組み合わせにより与えられる。
また、ずらし処理のタイミングは、ランダム周期(例えば、数秒から数時間)とする。もっとも、補正周期と対応させることが望ましい。なお、静止画の場合は、周期を短くして累積発光量が偏りを解消するのが望ましい。一方、動画の場合は、周期を長くするのが望ましい。
また、ずらし量は、任意の指定量(例えば、1ピクセルから10ピクセル)とする。ずらし量を大きくすることで、ぼかし効果を高めることができる。もっとも、表示領域を短周期でずらす場合には、ずらし量を小さくする方が視認性を損なわずに済む。一方、表示領域を長周期でずらす場合には、ずらし量が大きくても視認性への影響を限定できる。
【0013】
ところで、補正単位としての部分領域は、最大表示領域1を基準に固定的に与えられる。図2に、部分領域5と表示領域3との対応関係を示す。なお、部分領域5は処理上の区分であり、通常は積極的に表示されることはない。因みに、部分領域5は矩形形状である。図2の場合、水平方向に長い長方形状を使用するが、正方形状でも良い。
ここで、図2(A)〜(D)は、それぞれ図1(A)〜(D)に対応する。図2(A)〜(D)に示すように、表示領域のずらし処理に伴って、各部分領域が処理対象とする部分画像が変化することが分かる。
このため、静止画像が表示される場合でも、各画素の発光量は、複数の部分領域に分散されることになる。
後述するように各部分領域の補正量は、領域内の累積発光量に基づいて計算される。このため、ある画像の影響を隣接する複数の部分領域について平均化する効果が期待される。
なお、図3に示すように、画像の表示領域3が最大表示領域1の外にはみ出すようにずらすことも可能である。
【0014】
(b)部分領域側をずらす方法
図4に、部分領域5のずらし処理を示す。この場合、画像の表示位置は固定である。すなわち、表示領域3は、最大表示領域内の常に同じ位置に表示されるものとする。図4では、最大表示領域を省略している。
図4では、部分領域のずれ(ずらし方向とずらし量)を分かり易くするため、左上隅の部分領域5に斜線を付して示している。
図4は、代表的な4つの表示位置について表している。ここでは、(A)→(B)→(C)→(D)→(A)の順番に表示位置を移動させる場合を考える。
図4(A)に示す部分領域は、図4(D)に示す部分領域の設定位置に対して左下方にずらした状態を示す。図4(B)に示す部分領域は、図4(A)に示す部分領域の設定位置に対して右下方にずらした状態を示す。図4(C)に示す部分領域は、図4(B)に示す部分領域の設定位置に対して左方にずらした状態を示す。図4(D)に示す部分領域は、図4(C)に示す部分領域の設定位置に対して右上方にずらした状態を示す。
なお、ずらし処理の方向、タイミング、ずらし量は、画像の表示領域をずらす場合と同様である。
また、1つの設定位置から次の設定位置への移動は、1回又は複数回のずらし処理により実現される。
【0015】
(C)焼き付き補正装置の概念構成
ここでは、焼き付き補正装置として採用する4つの構成例を説明する。なお、焼き付き補正装置は、半導体集積回路の一部、画像処理ボードの一部に搭載される。もっとも、焼き付き補正装置の機能は、プログラム処理によっても実現される。
(a)構成例1
図5に、焼き付き補正装置11の構成例を示す。焼き付き補正装置11は、画像ずらし部13、部分領域化部15、累積加算部17、補正値決定部19、補正処理部21を構成要素に有する補正装置である。
画像ずらし部13は、表示領域のずらし処理を実行する処理デバイスである。ずらし処理には、前述した手法を適用する。画像ずらし部13は、補正値決定部19から与えられる制御情報に基づいてピクセルデータのずらし処理を実行する。
ここで、制御情報とは、例えばずらし方向、ずらし量、ずらし処理のタイミングを指定する情報である。もっとも、ずらし方向やずらし量が予め規定されている場合には、タイミング情報だけが与えられる。ずらし処理後のピクセルデータは、部分領域化部15及び補正処理部21に出力される。
【0016】
部分領域化部15は、画像データを複数の部分領域に分割する処理デバイスである。部分領域化部15は、1つのフレーム画像を複数の部分領域に分割し、部分領域毎の発光量を求める処理を実行する。ここで、各部分領域の発光量は、部分領域内に位置する全てのピクセルデータの加算値として与えられる。
なお、部分領域の大きさ(ピクセル数)は、入力画像の解像度に応じたものを使用する。
累積加算部17は、各フレームについて求められた部分領域毎の発光量をある期間について累積加算し、部分領域別の累積加算値を求める処理デバイスである。累積加算値は、部分領域別に保存される。
【0017】
補正値決定部19は、各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する処理デバイスである。基準値の決め方は、各部分領域間で累積加算値の差分の解消方法に応じて選択する。
例えば、劣化の進んだ部分領域の劣化スピードを低下させることで、画面全体の劣化度を揃える場合であれば、基準値は劣化の最も遅れた部分領域の累積発光量(累積加算値の最小値)に設定する。
また例えば、劣化の遅れた部分領域の劣化スピードを上げることで画面全体の劣化度を揃える場合であれば、基準値は劣化の最も進んだ部分領域の累積発光量(累積加算値の最大値)に設定する。
また例えば、劣化の進行度を目標とする劣化度に収束させる場合であれば、基準値は累積発光量の最大値と最小値の中間値に設定する。
補正処理部21は、各部分領域のピクセルデータを対応する補正値で補正する処理デバイスである。補正処理により、部分領域間における累積発光量の差は縮小する。すなわち、画面全体で発光性能が均一化する。
【0018】
(b)構成例2
図6に、焼き付き補正装置31の構成例を示す。焼き付き補正装置31は、構成例1に静止画領域判定部33を追加した構成の補正装置である。静止画領域判定部33は、部分領域化部15と累積加算部17の中間に配置する。
静止画領域判定部33は、各フレームの静止画領域を判定する処理デバイスである。静止画領域判定部33は、現フレームと前フレームを比較することで、静止画領域か動画像領域かを判断する。因みに、現フレームと前フレームとで発光量が同じ部分領域を静止画領域と判断する。一方、現フレームと前フレームとで発光量が異なる部分領域を動画領域と判断する。
静止画領域判定部33は、動画像領域と判断した部分領域の発光量をゼロに変換する。なお、静止画領域判定部33は、静止画領域と判断した部分領域の発光量はそのまま出力する。
静止画領域判定部33は、補正値の決定に静止画領域の情報だけを反映させる目的で使用される。これは、発光体の劣化は静止画領域で進行するためである。
なお、図5と同じ符号を付した処理デバイスには、構成例1と同じものを使用する。
【0019】
(c)構成例3
図7に、焼き付き補正装置41の構成例を示す。焼き付き補正装置41は、部分領域ずらし部43と、部分領域化部45、累積加算部17、補正値決定部19、補正処理部21を構成要素に有する補正装置である。すなわち、焼き付き補正装置41は、部分領域をずらす場合に適用される補正装置である。
部分領域ずらし部43は、固定領域である表示領域に対して、部分領域のずらし処理を実行する処理デバイスである。ずらし処理には、前述した手法を適用する。部分領域ずらし部43は、補正値決定部19から与えられる制御情報に基づいて部分領域のずらし処理を実行する。
ここで、制御情報とは、例えばずらし方向、ずらし量、ずらし処理のタイミングを指定する情報である。もっとも、ずらし方向やずらし量が予め規定されている場合には、タイミング情報だけが与えられる。ずらし処理後の部分領域の位置情報は、部分領域化部45に与えられる。
部分領域化部45は、1つのフレーム画像を複数の部分領域に分割し、部分領域毎の発光量を求める処理を実行する。ここで、各部分領域の発光量は、部分領域内に位置する全てのピクセルデータの加算値として与えられる。分割単位である部分領域の位置情報は、部分領域ずらし部43から与えられる。
なお、図5と同じ符号を付した処理デバイスには、構成例1と同じものを使用する。
(d)構成例4
図8に、焼き付き補正装置51の構成例を示す。焼き付き補正装置51は、構成例3に静止画領域判定部33を追加した構成の補正装置である。静止画領域判定部33は、部分領域化部45と累積加算部17の中間に配置する。
この静止画領域判定部33は、構成例2と同じである。また、図5と同じ符号を付した処理デバイスには、構成例1と同じものを使用する。
【0020】
(D)実施例
以下、これら4種類の構成例のうち構成例2の実施例を説明する。具体的に、部分領域間で累積発光量の差分を解消する方法の違いに応じて2種類の実施例を説明する。
(a)実施例1
(1)使用する補正の処理概念
この実施例では、劣化の進んだ部分領域の劣化スピードを低下させることで、画面全体の劣化度を揃える手法を適用する。
すなわち、全ての部分領域の中で累積発光量が最も小さいものを基準値に設定し、基準値に対する累積発光量の乖離度が大きい部分領域ほど、対応する本来のピクセルデータから大きな補正値を減算する場合について説明する。
図9に、当該補正処理のイメージを示す。図9は、自発光型の表示装置を、ある期間に亘って点灯させた場合における、部分領域別の累積発光量の推移例を示す。
図9の横軸は、点灯時間を表す。この例の場合、点灯時間は200フレームである。
図9の縦軸は、部分領域別の累積発光量に対応する。
図9の場合、累積発光量を、各部分領域に対応するピクセルデータの累積加算値として与える。因みに、200フレーム点灯後の部分領域2の累積加算値(カウント値)は2500であり、部分領域1の累積加算値(カウント値)は50である。
【0021】
ここでは、部分領域1が、累積発光量の基準値を与える。すなわち、部分領域1が、累積加算値の最小値を与える部分領域となる。更に換言すると、部分領域1は、劣化が最も少ない部分領域に対応する。
これに対し、部分領域2は、基準値以外の部分領域に対応する。すなわち、部分領域2は、部分領域1よりも累積加算値が多く、劣化がより進んでいる部分領域に対応する。
図9の場合、累積加算値の差は、2450である。この差を、200フレーム期間で解消するものとすると、1フレーム当たりの補正値は12.25 (=2450÷200)となる。
従って、この補正処理では、かかる補正値が部分領域2のピクセルデータからそれぞれ減算される。因みに、部分領域1に対するピクセルデータの補正値はゼロである。
図10に、補正開始後の入出力特性を示す。ここで、部分領域1に対応する入出力特性を細線で示す。また、部分領域2に対応する補正前の入出力特性を破線で示す。また、部分領域2に対応する補正開始後の入出力特性を太線で示す。
図10に示すように、部分領域1に対する入出力特性は補正の開始前後で変化しない。しかし、部分領域2に対する入出力特性は、補正の開始前後で下方にシフトする。
これは、各ピクセルデータの値が補正値だけ小さい値に変換されるためである。例えば、補正開始前のピクセルデータの平均階調値が255の場合、補正開始後の平均階調値は242.75(=255−12.25)となる。
【0022】
そもそも部分領域2は、仮に部分領域1と同じ値のピクセルデータが与えられたとしても、発光素子の劣化のために部分領域1と同じ輝度を発生することはできない。すなわち、破線と細線で示す発光能力の違いが認められる。加えて、補正の開始後は、部分領域2の出力輝度が更に低下する。このことは、コントラスト差が大きくなることを意味する。
しかし、かかる補正処理の結果、部分領域2における劣化の進行速度は、部分領域1よりも確実に遅くなる。このため、補正処理の継続により、部分領域2の劣化度(残存寿命)を部分領域1の劣化度(残存寿命)と同じ又はほぼ同程度に近づけることができる。
図11に、その様子を示す。補正開始時点t1において、部分領域1と部分領域2の寿命差が認められる。
しかし、補正終了時点t2において、部分領域1と部分領域2の寿命差は理想的には解消する。すなわち、補正期間の間に、全ての部分領域の劣化度が、最も劣化の進んでいなかった部分領域1の劣化度と一致する。
このことは、図12に示すように、部分領域1の入出力特性と部分領域2の入出力特性がほぼ一致することを意味する。
従って、ピクセルデータとして同じ階調値が与えられた場合、同じ出力輝度が得られる状態になる。出力輝度が同じであれば、焼き付き現象は知覚されない。これが補正の原理である。
【0023】
因みに、焼き付き現象を1回の補正期間で解消するのであれば、補正期間中における新たな寿命差の発生を除くため、全ての部分領域に同じ階調値のピクセルデータ(例えば、ブルーバック)を与えるのが望ましい。
一方、通常画面を使用して補正を行う場合には、補正期間中に新たな寿命差が発生するのを避け得ないため、補正処理を繰り返し実行する必要がある。なお、補正処理を繰り返し実行することにより、寿命差をほぼ同じ範囲に収束させることができる。焼き付き現象は、寿命差がほぼ同じ(入出力特性が同じ)になることで知覚されなくなる。
以上のように、この補正処理は、画像の表示に実際に用いたピクセルデータの情報を基に部分領域別の補正値を決定するため、累積発光量の差分を正確に測定できる。
また、この補正処理の場合、補正期間を短くすれば、補正処理をリアルタイムで実行することもできる。リアルタイムで焼き付きを補正することにより、長時間に亘って寿命差(入出力特性の差)が発生しないようにできる。
また、補正期間は、自由に設定できる。すなわち、適用する表示装置の画面の大きさやシステム構成に応じて最適化できる。
【0024】
(2)装置構成
図13に、この補正処理に対応した焼き付き補正装置の構成例を示す。
この焼き付き補正装置61は、画像ずらし部63と、部分領域化部65と、静止画領域判定回路67と、累積加算回路69と、差分値算出回路71と、補正値算出回路73と、補正処理回路75とで構成される。
まず、画像ずらし部63では、画像の表示領域のずらし処理が実行される。
次に、部分領域化部65において、部分領域毎に各フレームの発光量が算出される。
図14に、部分領域化部65の構成例を示す。部分領域化部65は、領域分割回路65Aと部分領域内加算回路65Bで構成される。
【0025】
領域分割回路65Aは、フレームメモリに取り込んだピクセルデータを、図15(A)に示すように部分領域別に分割して出力する機能を実現する。また、部分領域内加算回路65Bは、部分領域別に出力されたピクセルデータを加算して部分領域単位の発光量を生成する機能を実現する。
図15は、表示素子の部分拡大図である。格子で囲まれた個々の領域がピクセルの1つ1つに対応する。この実施例では、3行×3列で与えられる9個のピクセルを1つの部分領域として扱う。
従って、部分領域化部65は、図15(B)に示すように、部分領域内の9個のピクセルデータの加算値を、部分領域に対応する発光量として扱う。
図16に、具体例を示す。例えば図16(A)の場合、左上隅の部分領域に対応する9個のピクセルデータは、“ 1”、“ 226”、“ 36”、“28”、“68”、“ 191”、“87”、“49”、“28”を階調値とする。
この場合、部分領域化部65は、図16(B)に示すように、9個の階調値の加算値 714(= 1+ 226+36+28+68+ 191+87+49+28)を部分領域に対応する発光量として出力する。
【0026】
静止画領域判定回路67は、部分領域単位で静止画部分を認識し、これを累積加算回路69に与える処理回路である。
図17に、静止画領域判定回路67の一例を示す。図17に示す静止画領域判定回路67は、フレームメモリ67A、67Bと、動き判定回路67Cと、データ変換回路67Dとで構成される。フレームメモリ67Aは、現フレームの発光量を保存する記憶装置である。フレームメモリ67Bは、1フレーム前の発光量を保存する記憶装置である。
動き判定回路67Cは、フレームメモリ67Bに保存されている前フレームと、フレームメモリ67Aに保存される現フレームとを比較して静止画領域と動画領域を区分する処理回路である。具体的には、図18(A)に示すように、動き判定回路67Cが、前フレームと現フレームを比較し、対応するサブピクセルの入力サブピクセルデータが同じか否か判断する。
動き判定回路67Cは、前後のフレームで対応する部分領域の発光量が同じか否かを判定する。2つの発光量が同じ場合、動き判定回路67Cは静止画領域と判定する。一方、2つの発光量が異なる場合、動き判定回路67Cは動画領域と判定する。判定結果はデータ変換回路67Dに与えられる。
データ変換回路67Dは、動画領域の発光量をゼロに書き換える一方、静止画領域の発光量をそのまま出力する。
【0027】
累積加算回路69には、データ変換回路67Dから各フレームの発光量が入力される。累積加算回路69は、現フレームの発光量が入力されるたび、前フレームまでの累積加算値に現フレームの発光量を加算し、累積加算値を更新する。かかる演算は、内部メモリと加算器を用いて実現できる。
差分値算出回路71では、簡易的な差分値の算出処理が実行される。図19に、差分値の算出処理例を示す。
差分値算出回路71は、隣接する部分領域どうしで累積発光量を比較し、その差分値の最大値を算出する。例えば、図19(A)の場合、左上隅の部分領域と周囲の3つの部分領域との差分値は、“3120”、“420”、“2122”である。
従って、差分値算出回路71は、左上隅の部分領域に、図19(B)に示すように、その最大値である“3120”を対応付ける。なお、周囲のうちで累積発光量が最も小さい部分領域には、差分値としてゼロを設定する。
もっとも、より正確な値を求める上では、全ての部分領域を対象として累積発光量の最小値を求め、各部分領域の累積発光量との差分を算出すれば良い。
【0028】
補正値算出回路73は、補正期間内に与える補正値を算出する処理回路である。補正値算出回路73は、各部分領域に対応する差分値を補正期間のフレーム数で割り算し、その値を各部分領域に対する補正値とする。
図20に、補正期間のフレーム数を131とした場合の1フレーム当たりの補正値を示す。なお、図20(A)は、差分値算出回路71で算出された差分値の一覧であり、図20(B)は、補正値算出回路73で算出された補正値の一覧である。図20(B)では、除算演算の結果を四捨五入して整数値で表している。
補正処理回路75は、現フレームのピクセルデータから対応する部分領域の補正値を減算する処理回路である。この減算処理は、補正期間(図20の場合、131フレーム)について実行される。
なお、補正期間の終了後は、新たな補正期間が開始されるまでの間、ピクセルデータがそのまま出力される。
以上のように、焼き付き補正装置に必要な演算自体は非常に簡単である。従って、従来装置のような複雑な演算やメモリを必要としない。また、従来装置のように高性能のCPU(central processing unit )や大規模ロジック回路も必要としない。
因みに、回路構成が簡単に済む結果、この焼き付き補正装置を既存の基板上に実装する場合にも、タイミングジェネレータ等の半導体集積回路の一部分に実装することができる。すなわち、特別な周辺回路を必要とすることなく実装できる。
【0029】
(b)実施例2
(1)使用する補正の処理概念
この実施例では、劣化の遅れた部分領域の劣化スピードを上げることで、画面全体の劣化度を揃える手法を適用する。
すなわち、全ての部分領域の中で累積発光量が最も大きいものを基準値に設定し、基準値に対する累積発光量の乖離度が大きい部分領域ほど、対応する本来のピクセルデータに大きな補正値を加算する場合について説明する。
図21に、当該補正処理のイメージを示す。図21は、自発光型の表示装置を、ある期間に亘って点灯させた場合における、部分領域別の累積発光量の推移例を示す。
図21の横軸は、点灯時間を表す。この例の場合、点灯時間は200フレームである。
図21の縦軸は、部分領域別の累積発光量に対応する。
図21の場合、累積発光量を、各部分領域に対応するピクセルデータの累積加算値として与える。因みに、200フレーム点灯後の部分領域2の累積加算値(カウント値)は2500であり、部分領域1の累積加算値(カウント値)は50である。
【0030】
ここでは、部分領域2が、累積発光量の基準値を与える。すなわち、部分領域2が、累積加算値の最大値を与える部分領域となる。更に換言すると、部分領域2は、劣化が最も進んだ部分領域に対応する。
これに対し、部分領域1は、基準値以外の部分領域に対応する。すなわち、部分領域1は、部分領域2よりも累積加算値が小さく、劣化が遅れている部分領域に対応する。
図21の場合、累積加算値の差は、2450である。この差を、200フレーム期間で解消するものとすると、1フレーム当たりの補正値は12.25 (=2450÷200)となる。
従って、この補正処理では、かかる補正値が部分領域1のピクセルデータにそれぞれ加算される。因みに、部分領域2に対するピクセルデータの補正値はゼロである。
図22に、補正開始後の入出力特性を示す。ここで、部分領域2に対応する入出力特性を細線で示す。また、部分領域1に対応する補正前の入出力特性を破線で示す。また、部分領域1に対応する補正開始後の入出力特性を太線で示す。
図22に示すように、部分領域2に対する入出力特性は補正の開始前後で変化しない。しかし、部分領域1に対する入出力特性は、補正の開始前後で上方にシフトする。
これは、各ピクセルデータの値が補正値だけ大きい値に変換されるためである。例えば、補正開始前のピクセルデータの平均階調値が255の場合、補正開始後の平均階調値は267.25(=255+12.25)となる。
【0031】
そもそも部分領域1は、仮に部分領域2と同じ値のピクセルデータが与えられたとしても、発光素子の劣化が少ないため部分領域2よりも高輝度で発光する。
すなわち、破線と細線で示す発光能力の違いが認められる。加えて、補正の開始後は、部分領域1の出力輝度が更に上げられる。このことは、コントラスト差が大きくなることを意味する。
しかし、かかる補正処理の結果、部分領域1における劣化の進行速度は、部分領域2よりも確実に早くなる。
このため、補正処理の継続により、部分領域1の劣化度(残存寿命)を部分領域2の劣化度(残存寿命)と同じ又はほぼ同程度に近づけることができる。
図23に、その様子を示す。補正開始時点t1において、部分領域1と部分領域2の寿命差が認められる。
しかし、補正終了時点t2において、部分領域1と部分領域2の寿命差は理想的には解消する。すなわち、補正期間の間に、全ての部分領域の劣化度が、最も劣化が進んでいた部分領域2の劣化度と一致する。
このことは、図24に示すように、部分領域1の入出力特性と部分領域2の入出力特性がほぼ一致することを意味する。
従って、ピクセルデータとして同じ階調値が与えられた場合、同じ出力輝度が得られる状態になる。出力輝度が同じであれば、焼き付き現象は知覚されない。これが補正の原理である。
【0032】
因みに、焼き付き現象を1回の補正期間で解消するのであれば、補正期間中における新たな寿命差の発生を除くため、全ての部分領域に同じ階調値のピクセルデータ(例えば、ブルーバック)を与えるのが望ましい。
一方、通常画面を使用して補正を行う場合には、補正期間中に新たな寿命差が発生するのを避け得ないため、補正処理を繰り返し実行する必要がある。なお、補正処理を繰り返し実行することにより、寿命差をほぼ同じ範囲に収束させることができる。焼き付き現象は、寿命差がほぼ同じ(入出力特性が同じ)になることで知覚されなくなる。
以上のように、この補正処理は、画像の表示に実際に用いたピクセルデータの情報を基に部分領域別の補正値を決定するため、累積発光量の差分を正確に測定できる。
また、この補正処理の場合、補正期間を短くすれば、補正処理をリアルタイムで実行することもできる。リアルタイムで焼き付きを補正することにより、長時間に亘って寿命差(入出力特性の差)が発生しないようにできる。
また、補正期間は、自由に設定できる。すなわち、適用する表示装置の画面の大きさやシステム構成に応じて最適化できる。
(2)装置構成
図25に、この補正処理に対応した焼き付き補正装置の構成例を示す。
この焼き付き補正装置81の基本的な構成は、実施例1(図13)と同じである。違いは、差分値算出回路71において基準値を累積加算値の最大値とする点と、補正処理回路83として現フレームのピクセルデータに対応する部分領域の補正値を加算する処理回路を用いる点のみである。その他は、実施例1と同じであるので説明は省略する。
【0033】
(E)システム例
続いて、前述した焼き付き補正装置や焼き付き補正プログラムの実装例を説明する。
ここでは、自発光型の表示装置と、画像信号を発生する画像処理装置とが別筐体である場合について説明する。
勿論、自発光型の表示装置と画像処理装置を1つの筐体内に搭載する電子機器にも実装できる。
(a)表示装置搭載型
図26に、焼き付き補正装置91を表示装置93に搭載するシステム例を示す。自発光型の表示装置93と画像処理装置95は、有線通信路又は無線通信路経由で接続する。その接続形態は直接接続でも、LAN接続でも良い。
図27に、自発光型の表示装置93の機能ブロック構成を示す。この種の表示装置93には、例えばCRT(cathode lay tube)、PDP(plasma display panel)、EL(electroluminescence display )、FED(field
emission display)がある。
表示装置93は、これら各種の表示方式に対応した表示デバイス93Aと、その駆動回路93Bと、焼き付き補正装置91を有してなる。
駆動回路93Bは、駆動対象である表示デバイス93Aに応じたものが用いられる。また、画像処理装置95は周知の回路構成で良い。
このシステム例の場合、画像処理装置95が、接続先の表示装置に応じた画像信号を出力する。画像信号はアナログ形式でも、デジタル形式でも良い。
表示装置93は、画像処理装置95から画像信号を入力すると、各サブピクセルに対応する入力サブピクセルデータについて、前述した焼き付き補正処理を実行する。
この補正処理後のピクセルデータが駆動回路93Bに与えられ、表示デバイス93Aが駆動される。かくして、画像が表示される。
【0034】
(b)画像処理装置搭載型
図28に、焼き付き補正装置101を画像処理装置103に搭載するシステム例を示す。この場合も、画像処理装置101と自発光型の表示装置105の接続は、有線接続でも無線接続でも良い。勿論、その接続形態は直接接続でも、LAN接続でも良い。
図29に、自発光型の表示装置105に接続される画像処理装置103の機能ブロック構成を示す。通常、画像処理装置103は、非自発光型の表示装置(例えば、液晶ディスプレイ装置)にも接続可能である。
従って、図29の機能ブロック構成は、画像信号の出力装置として自発光型の表示装置105が接続されている場合の構成である。
この画像処理装置103は、画像処理回路103Aと、焼き付き補正装置101を有してなる。なお、図29においては、周知の回路構成を省略して示している。画像処理回路103Aは、搭載される電子機器(画像処理装置103)の形態に応じた画像処理を実行する。例えば、画像の撮像、再生、編集その他の処理を実行する。
このシステム例の場合、画像処理装置103の筐体内で焼き付き補正処理が実行される。すなわち、画像処理回路103Aから出力された画像信号は、出力インターフェースとの間に配置された焼き付き補正回路101に入力される。
焼き付き補正回路101は、当該画像信号の各ピクセルデータについて、前述した焼き付き補正処理を実行する。このシステム例の場合、表示装置105は、入力された画像信号を周知の信号処理を経て表示デバイスに表示する。
この種の画像処理装置103には、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の撮像装置(カメラユニットだけでなく、記録装置と一体に構成されているものを含む。)、コンピュータ(サーバーを含む。)、各種の情報処理端末(携帯型のコンピュータ、携帯電話機、携帯型のゲーム機、電子手帳等)、各種画像の再生装置(ホームサーバーを含む。)、画像編集装置、ゲーム機の適用が可能である。
【0035】
(F)実施形態の効果
以上の実施形態のように、各部分領域の累積発光量を静止画信号について算出したことにより、部分的な輝度劣化の原因となる静止画信号を積極的に補正できる。すなわち、かなり正確に輝度劣化を補正できる。
また、ピクセルデータを部分領域単位で補正することにより、フレームメモリを大幅に削減できる。
また、部分領域と画像の表示領域との関係を周期的にずらすことにより、隣接する部分領域の境界部分に対する補正効果をぼかすことができる。このように、焼き付き補正の単位が大きくても、部分領域の境界部分で焼き付きが目立つ可能性を効果的に低減できる。
また、補正期間を短くして、リアルタイムで焼き付きを補正することにより、長期間補正しても、ずれのない補正を行うことができる。
【0036】
また、補正期間を自由に変えることにより、システムの規模を常に最適化できる。これにより、補正期間を変えても、焼き付き補正に支障が出ないようにできる。
また、従来技術のように、劣化したピクセルの輝度を上げる(寿命の劣化を促進させる)焼き付き補正を行わないので、発光体の寿命を縮めずにする。
また、どのような用途に使用しても、固定表示部分の輝度劣化を目立たなくできる。
また、フレームメモリを2枚用意するだけで、部分領域毎に輝度劣化のばらつきを抑制できるため実用的である。
【0037】
(G)他の実施形態
(a)前述の実施形態では、部分領域の補正方法として、劣化度の最も進んだもの又は劣化度の最も遅れたものを基準として、部分領域のピクセルデータを補正する場合について説明した。
しかし、全ての部分領域の累積発光量が等しくなるように補正する方法は、これらに限らない。例えば、累積発光量の最大値と最小値の中間値を基準値に定め、基準値よりも劣化の進んだ部分領域に対しては、劣化スピードが低下するように補正し、基準値よりも劣化の遅れた部分領域に対しては劣化スピードが上がるように補正しても良い。
このようにしても、焼き付き現象を原理的に解消することができる。
(b)前述の実施形態では、焼き付き補正装置をハードウェア的に実現する場合について説明したが、コンピュータプログラムとして実現する場合にも適用し得る。この場合、焼き付き補正装置の各機能をプログラムにより実現すれば良い。
(c)前述の実施形態には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】画像の表示領域のずらし例を示す概念図である。
【図2】画像の表示領域と部分領域との対応関係の遷移を示す図である。
【図3】画像の表示領域のずらし例を示す概念図である。
【図4】部分領域のずらし例を示す概念図である。
【図5】焼き付き補正装置の1つの構成例を示す図である。
【図6】焼き付き補正装置の1つの構成例を示す図である。
【図7】焼き付き補正装置の1つの構成例を示す図である。
【図8】焼き付き補正装置の1つの構成例を示す図である。
【図9】部分領域における累積発光量の遷移を示す図である。
【図10】補正前後での入出力特性の変化を示す図である。
【図11】補正による発光体の寿命の遷移関係を示す図である。
【図12】補正終了後の入出力特性を示す図である。
【図13】焼き付き補正装置の実施例を示す図である。
【図14】部分領域化部の構成例を示す図である。
【図15】部分領域別の発光量の生成原理を示す図である。
【図16】部分領域別の発光量の算出例を示す図である。
【図17】静止領域判定回路の構成例を示す図である。
【図18】静止領域判定回路の処理例を示す図である。
【図19】差分値算出回路の処理例を示す図である。
【図20】補正値算出回路の処理例を示す図である。
【図21】部分領域における累積発光量の遷移を示す図である。
【図22】補正前後での入出力特性の変化を示す図である。
【図23】補正による発光体の寿命の遷移関係を示す図である。
【図24】補正終了後の入出力特性を示す図である。
【図25】焼き付き補正装置の実施例を示す図である。
【図26】表示装置搭載型のシステム例を示す図である。
【図27】自発光型の表示装置の機能ブロック構成を示す図である。
【図28】画像処理装置搭載型のシステム例を示す図である。
【図29】画像処理装置の機能ブロック構成を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1 最大表示領域
3 表示領域
5 部分領域
13 画像ずらし部
15 部分領域化部
17 累積加算部
19 補正値決定部
21 補正処理部
33 静止画領域判定部
53 部分領域ずらし部
55 部分領域化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の表示領域を、指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらす画像ずらし部と、
表示画面の最大表示領域を基準に、前記画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と
を有することを特徴とする自発光型の表示装置の焼き付き補正装置。
【請求項2】
画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
各部分領域の割り当て位置を、前記画像に対して指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらすように前記領域分割部に指示する部分領域ずらし部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と
を有することを特徴とする自発光型の表示装置の焼き付き補正装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焼き付き補正装置は、
各部分領域が静止画領域と動画領域のいずれに対応するかフレーム単位で判定する動き判定部と、
動画領域と判定された部分領域の発光量をゼロに変換する一方、静止画領域と判定された部分領域の発光量をそのままとするデータ変換部と
を更に有することを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の焼き付き補正装置は、
色別に各部分領域の補正値を決定し、画像データを補正する
ことを特徴とする焼き付き補正装置。
【請求項5】
画像の表示領域を、指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらす画像ずらし部と、
表示画面の最大表示領域を基準に、前記画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と、
前記補正処理部で補正された画像データを入力し、対応する画像を画面上に表示する表示デバイスと
を有することを特徴とする自発光型の表示装置。
【請求項6】
画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
各部分領域の割り当て位置を、前記画像に対して指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらすように前記領域分割部に指示する部分領域ずらし部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と、
前記補正処理部で補正された画像データを入力し、対応する画像を画面上に表示する表示デバイスと
を有することを特徴とする自発光型の表示装置。
【請求項7】
画像の表示領域を、指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらす画像ずらし部と、
表示画面の最大表示領域を基準に、前記画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と、
前記補正処理部で補正された画像データを、自発光型の表示デバイスに出力する出力部と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
画像を複数の部分領域に分割する領域分割部と、
各部分領域の割り当て位置を、前記画像に対して指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらすように前記領域分割部に指示する部分領域ずらし部と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする累積処理部と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する補正値決定部と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する補正処理部と、
前記補正処理部で補正された画像データを、自発光型の表示デバイスに出力する出力部と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
自発光型の表示デバイスを駆動する画像データを処理対象とするコンピュータに、
画像の表示領域を、指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらす処理と、
表示画面の最大表示領域を基準に、前記画像を複数の部分領域に分割する処理と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする処理と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する処理と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
自発光型の表示デバイスを駆動する画像データを処理対象とするコンピュータに、
画像を複数の部分領域に分割する処理と、
各部分領域の割り当て位置を、前記画像に対して指定されたずらし量だけ水平方向又は垂直方向に順次ずらすように前記領域分割部に指示する処理と、
前記部分領域を構成する全ピクセルの発光量をある期間について累積し、部分領域別の累積発光量とする処理と、
各部分領域の累積発光量と基準値を比較し、基準値に対する乖離度が大きい部分領域ほど大きな値を補正値に決定する処理と、
補正期間中、決定した補正値により対応する部分領域内の画像データを補正し、部分領域間の累積発光量のバラツキを解消する処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2006−18131(P2006−18131A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197590(P2004−197590)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】