説明

焼き菓子用油脂組成物

【課題】 作業性がよく、サクサクとした食感で、咀嚼時にねちゃつかず、歯に付着し難い、口溶けの良いサブレ、ビスケット、クッキー等の焼き菓子類、更にはこれらを製造可能とする焼き菓子用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】 POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、且つ焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が構成脂肪酸全体中2〜15重量%である焼き菓子用油脂組成物を用いて焼き菓子を作製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き菓子用練り込み油脂に適した油脂組成物及びその油脂組成物を使用した焼き菓子に関する。
【0002】
焼き菓子生地に練り込まれる油脂は、主にショートニングが多い。また、伝統的な高級焼き菓子にはバターが使われている。最近は、マーガリンの風味技術の進歩にともない、乳製品、その他の呈味素材、フレーバー等を配合した高級マーガリンの使用も増加している。
【0003】
ショートニングは、焼き菓子の食感にサクサク感を付与する。しかし咀嚼時に食感がねちゃつき、歯に付着する場合がある。一方、バターや高級マーガリンは、風味の点では満足できるが、焼き菓子は固い食感となってしまい、ショートニング同様、歯に付着する場合がある。このような、問題を解決するために種々の検討がなされてきている。
【0004】
例えば、レシチンを酵素的加水分解することで製造したリゾリン脂質を添加する方法(特許文献1)、対称型トリグリセリドを含有し、HLBが3〜13の乳化剤を添加した油脂組成物を菓子製品表面に接触させる方法(特許文献2)が開示されているが、いずれも乳化剤を含有し、口溶けが悪くなり、風味も油脂本来のものでなくなるため好ましくない。
【0005】
また起泡したクリームを含有させる方法(特許文献3)、油中水型エマルジョンを掻き取り式連続冷却捏和装置を用いて一定の冷却条件で得られる油脂組成物を用いる方法(特許文献4)が開示されているがいずれも使用される油脂についての硬さについての記載はない。
【0006】
また、従来の油脂添加の欠点を解決するものとして、SFCが一定の比率以下の練り込み油脂を配合し、ホスホリパーゼA2で酵素処理を実施する方法(特許文献5)がある。これは、酵素を使用する点で厳しい温度管理が求められる。また、C14以下飽和脂肪酸2〜50%、C20以上飽和脂肪酸1〜50%のランダムエステル交換油脂を用いる方法(特許文献6)、ラウリン酸を4〜40%、炭素数16以上の飽和脂肪酸を20〜80%含有する油脂混合物を、ランダム化率が5〜75%となるようにエステル交換する方法(特許文献7)等がなされているが、エステル交換を必要とする点で、コストがかかる。またこれらいずれにおいても食感、風味の問題は十分改善されていない。
【0007】
一般的にマーガリンは、原料油脂に水素添加して硬化した油脂と植物油を混合して製造されるが、該硬化油には多量のトランス酸が含まれる。しかし最近、トランス酸の多量摂取により動脈硬化や心筋梗塞のリスクが高められる可能性が示唆されており(非特許文献1など)、米国の食品医薬局(FDA)は2006年頭より食品などへのトランス酸含量の表示を義務付けられたり(2003年7月11日付け規則)、世界保健機構(WHO)より摂取エネルギーの1%未満(おおよその1日の摂取量としては2g強まで)にするよう勧告が出されている。しかし、マーガリン中のトランス酸量を減らそうとすると、通常硬くなって作業性が悪くなったり、食感が損なわれるなど問題があった。そこで、トランス酸含量が少なくても物性が損なわれていないマーガリンが望まれている。
【特許文献1】特開2000−270759号公報
【特許文献2】特開2006−271305号公報
【特許文献3】特開2001−286256号公報
【特許文献4】特開2001−346514号公報
【特許文献5】特開平10−191871号公報
【特許文献6】特開平09−165595号公報
【特許文献7】特開2000−212590号公報
【非特許文献1】Tatematsu et al., Journal of Health Science, 50:108-111, 2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、作業性がよく、サクサクとした食感で、咀嚼時にねちゃつかず、歯に付着し難い、口溶けの良いサブレ、ビスケット、クッキー等の焼き菓子類、更にはこれらを製造可能とする焼き菓子用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、焼き菓子用油脂組成物に特定量のPOPを含有し、且つ特定量のラウリン酸を含有していると、特定条件下での破断応力が特定の範囲になり、作業性が良く、且つサクサクとした食感で、咀嚼時にねちゃつかず、歯に付着し難い、口溶けの良い焼き菓子類が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の第一は、POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、且つ焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が構成脂肪酸全体中2〜15重量%である焼き菓子用油脂組成物に関する。好ましい実施態様は、パーム中融点分別油の含有量が、焼き菓子用油脂組成物全体中20〜50重量%である上記記載の焼き菓子用油脂組成物に関する。より好ましくは、冷却捏和後20℃保管条件下で、7日目の破断応力が5.0N〜200Nであり、溶解徐冷後20℃保管条件下で、油相部の7日目の破断応力が0.1N〜5.0Nである上記記載の焼き菓子用油脂組成物、更に好ましくは、トランス型脂肪酸含量が、焼き菓子用油脂組成物全体中3.0重量%以下である、上記記載の焼き菓子用油脂組成物、に関する。本発明の第二は、上記記載の焼き菓子用油脂組成物を用いることを特徴とする焼き菓子に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の焼き菓子用油脂組成物を用いると、作業性が良く、サクサクとした食感で、咀嚼時にねちゃつかず、歯に付着し難い、口溶けの良いサブレ、ビスケット、クッキー等の焼き菓子類を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の焼き菓子用油脂組成物は、POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、且つ焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が構成脂肪酸全体中2〜15重量%であることが好ましい。そしてより好ましくはパーム中融点分別油の含有量が油脂組成物全体中20〜50重量%である。また、本発明の焼き菓子用油脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限り必要に応じて前記以外の油脂や乳化剤を含有しても良い。そして、該焼き菓子用油脂組成物は、冷却捏和後20℃保管条件下で、7日目の破断応力が5.0N〜200Nであり、且つ溶解徐冷後20℃保管条件下で、油相部の7日目の破断応力が0.1N〜5.0Nであることが好ましい。
【0013】
本発明のPOPとは、構成脂肪酸の1,3位がパルミチン酸であり、2位がオレイン酸であるトリグリセリドのことで、その含有量は焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%が好ましい。
【0014】
また本発明の焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が、構成脂肪酸全体中2〜15重量%であることが好ましく、2.4〜5.3重量%がより好ましい。ラウリン酸を多く含む油脂としては、例えばヤシ油、パーム核油などが挙げられ、それらの分別油や硬化油も好適に用いることができる。2重量%より少ない、又は、15重量%より多いと、本発明の効果を発揮できなくなる場合がある。
【0015】
POP含有量やラウリン酸の含有量が前記範囲を満たしていれば、その他に特に限定はないが、パーム中融点分別油の含有量が、焼き菓子用油脂組成物全体中20〜50重量%であると、POP含有量を容易に前記範囲に調整することができるので好ましい。
【0016】
本発明の、焼き菓子用油脂組成物には、パーム中融点分別油、ヤシ油、パーム核油以外にも、パーム油、パーム中融点分別油以外のパーム分別油、さらには従来マーガリンやショートニングに用いられる、いかなる油脂を使用してもよく、例えば、亜麻仁油、桐油、サフラワー油、かや油、胡桃油、芥子油、向日葵油、綿実油、菜種油、大豆油、辛子油、カポック油、米糠油、胡麻油、落花生油、オリーブ油、椿油、茶油、ひまし油、葡萄油、カカオ脂、シア脂、コクム脂、ボルネオ脂等の植物油脂や、魚油、鯨油、牛脂、乳脂、豚脂、鶏油、卵黄油、羊油等の動物油脂挙げられ、また、これらの油脂をエステル交換したものや、硬化、分別したもの等、通常食用に供されるすべての油脂類を用いる事が可能で、それらの群より選ばれる少なくとも1種がある。また、その他必要に応じて水、乳化剤、乳製品、食塩、砂糖、シロップ、香料、着色料、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0017】
本発明で使用できる乳化剤については特に限定されず、例えば通常使用されるグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられ、少なくとも1種用いることができる。
【0018】
本発明の焼き菓子用油脂組成物中のトランス型脂肪酸含量は、人体への影響を考慮すると少なければ少ない程良く、できるだけ硬化油の使用量を減らして3.0重量%以下に調整することが好ましく、より好ましくは0.9重量%以下であり、製造のし易さ及び効果の観点から、0.5〜0.9重量%がさらに好ましい。なお、本発明の焼き菓子用油脂組成物を用いる限り、それは容易に達成できる。
【0019】
本発明の焼き菓子用油脂組成物は、冷却捏和後20℃保管条件下で、7日目の破断応力が5.0N〜200Nであり、また溶解徐冷後20℃保管条件下で、油相部の7日目の破断応力が0.1N〜5.0Nであることが好ましく、POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、ラウリン酸の含有量が焼き菓子用油脂組成物に含まれる構成脂肪酸全体中2〜15重量%であれば、上記物性を有するように調整することは容易に成し得る。これは、焼き菓子用油脂組成物において、冷却捏和後20℃保管条件下で7日目、即ち製造後の破断応力は5.0N〜200Nで、程良い硬さを有することを意味し、溶解徐冷後20℃保管条件下で油相部の7日目、即ち調理により一旦溶融してからの破断応力が0.1N〜5.0Nで、程良い柔らかさとなることを意味する。
【0020】
本発明における冷却捏和後20℃保管条件下で、7日目の破断応力(以下、捏和後破断応力ともいう)の測定は、特に限定はないが、例えば次のようにして実施できる。常法に従い作製した焼き菓子用油脂組成物を20℃にて7日間保管し、円柱型プランジャーの全面が接触できる大きさに切り出して、20℃に温調された部屋で、クリープメータ(製品名:RE2−3305、株式会社山電製)を用いて、円柱型プランジャー:直径16mm、測定速度を5mm/s、測定歪率:試料高さの80%の条件で破断応力を測定する。
【0021】
本発明における溶解徐冷後20℃保管条件下で、油相部の7日目の破断応力(以下、徐冷後破断応力ともいう)の測定は、特に限定はないが、例えば次のようにして実施できる。まず、焼き菓子用油脂組成物を適当な大きさに切り出して、70℃で完全に溶解し、油相と水相に分離したら、油相部のみ25gを直径が8.5cm、高さが1.3cmの容器に移し、70℃で30分間保温して完全に溶解させた後、35℃恒温槽に静置で1時間保管し、更に20℃恒温槽に静置で7日間保管し、得られた試料を容器に入ったままの状態で破断応力を測定する。なお、焼き菓子用油脂組成物が水分を含まない場合は、油相と水相を分離する必要は生じない。
【0022】
上記条件で実施した場合の本発明の焼き菓子用油脂組成物の破断応力は、冷却捏和後には5.0〜200Nであり、溶解徐冷後に0.1N〜5.0Nであれば、所望の効果を発揮する。冷却捏和後の破断応力が5.0Nより低い、或いは200Nを超える場合は、製菓作業性で劣る場合がある。溶解徐冷後の油相部の破断応力が0.1Nより少ない場合は、できた焼き菓子の食感が非常にガリガリしたものとなる場合があり、溶解徐冷後の油相部の破断応力が5.0Nを超える場合は、できた焼き菓子の食感がさくさくとする傾向にあるが、咀嚼時にねちゃつき、歯に付着しやすくなる場合がある。
【0023】
本発明の焼き菓子用油脂組成物の製造方法は、特に限定はないが、以下に例示する。全ての油脂原料に、必要に応じて、水、乳化剤、呈味物質を添加して混合撹拌して乳化させ、エマルションを得る。殺菌工程を経てから、急冷可塑化する。急冷可塑化の方法には、通常マーガリンやショートニングを作製する手法を用いることが出来る。具体的には、ボテーター、コンビネーター、オンレーター、パーフェクター等の掻き取り式チューブラー冷却器(Aユニット)において急冷し、ピンマシン(Bユニット)で捏和可塑化する方法が挙げられる。その他の方法として急冷可塑化時に所定の条件で加圧晶析を行ない、油脂組成物を得ることができる。
【0024】
加圧晶析とは、融解したエマルジョンを冷却晶析させる時に、強制的に加圧することをいう。ここで、加圧は冷却と同時に開始してもよいが、エマルジョンを予め結晶が析出しない程度に冷却した後に加圧して晶析を行った方が、得られる結晶が微細となり、より好ましい物性となるだけではなく、加圧時間の短縮や晶析時間の短縮等の利点があるため好ましい。尚、本発明におけるエマルジョンとは、油相中に水相が粒子として分散して乳状をなすものをいう。
【0025】
本発明の油脂組成物を用いて、常法に従って、クッキー、ビスケット、パイ、クラッカー、プレッツェル、バターケーキ、スポンジケーキ等の焼き菓子類を作製することができる。また前記焼き菓子類に液糖、洋酒等を塗布することもできる。この処理で更に咀嚼時に食感がねちゃつかず、歯に付着し難い、口溶けの良い焼き菓子ができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらにより何ら限定を受けるものではない。尚、以下の記載において、特に断わらない限り、「部」、「%」は全て「重量部」、「重量%」を表す。
【0027】
<食感評価>
実施例・比較例で得られたクッキーを10人の熟練したパネラ−に食べてもらい、食感をねちゃつき、歯への付着、口溶けに分けて評価して、その結果を集約した。その際の評価基準は以下の通りである。食感のねちゃつきは、1:非常にねちゃつく、2:ややねちゃつく、3:普通、4:ややねちゃつかない、5:非常にねちゃつかない。歯への付着は、1:非常に付着する、2:やや付着する、3:普通、4:やや付着しない、5:非常に付着しない。口溶けは、1:非常に悪い、2:やや悪い、3:普通、4:やや良い、5:非常に良い。
【0028】
<作業性評価>
実施例・比較例のクッキー作製時において、作業性についても評価した。その際の評価基準は、以下の通りである。1:非常に悪い、2:やや悪い、3:普通、4:やや良い、5:非常に良い。
【0029】
<捏和後破断応力測定>
実施例・比較例で得られた焼き菓子用油脂組成物を20℃にて7日間保管し、直径5.5cm、高さ3.5cmに切り出して、20℃に温調された部屋で、物性測定装置クリープメータ(製品名:RE2−3305、株式会社山電製)を用いて、円柱型プランジャー:直径16mm、測定速度を5mm/s、測定歪率:試料高さの80%の条件で測定した。
【0030】
<徐冷後破断応力測定>
実施例3及び比較例3で得られた焼き菓子用油脂組成物を適当な大きさに切り出して、70℃で完全に溶解し、油相と水相に分離したら、油相部のみ25gを直径が8.5cm、高さが1.3cmの容器に移し、70℃で30分間保温して完全に溶解させた後、35℃恒温槽に静置で1時間保管し、更に20℃恒温槽に静置で7日間保管し、得られた試料を用いて20℃に温調された部屋で、物性測定装置クリープメータ(製品名:RE2−3305、株式会社山電製)を用いて、円柱型プランジャー:直径16mm、測定速度を5mm/s、測定歪率:試料高さの80%の条件で測定した。
【0031】
実施例1,2及び比較例1,2については、得られた焼き菓子用油脂組成物を適当な大きさに25g切り出して、直径が8.5cm、高さが1.3cmの容器に入れ、70℃で30分間保温して完全に溶解させた後、35℃恒温槽に静置で1時間保管し、更に20℃恒温槽に静置で7日間保管し、得られた試料を用いて20℃に温調された部屋で、物性測定装置クリープメータ(製品名:RE2−3305、株式会社山電製)を用いて、円柱型プランジャー:直径16mm、測定速度を5mm/s、測定歪率:試料高さの80%の条件で測定した。
【0032】
(実施例1) 焼き菓子用油脂組成物1の作製
表1の配合に従って調合油を作製した。この調合油を60℃に温度を調節し、プロペラミキサーにて攪拌混合した後、常法通り掻き取り式チューブラー冷却捏和装置にて冷却捏和して、焼き菓子用油脂組成物1を得た。得られた焼き菓子用油脂組成物1のPOP含量、ラウリン酸含量、捏和後破断応力、徐冷後破断応力、トランス型脂肪酸含量を表1に示した。
【0033】
【表1】

【0034】
(実施例2) 焼き菓子用油脂組成物2の作製
表1の配合に従って、精製豚脂を配合せず、その他の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして焼き菓子用油脂組成物2を得た。得られた焼き菓子用油脂組成物2のPOP含量、ラウリン酸含量、捏和後破断応力、徐冷後破断応力、トランス型脂肪酸含量を表1に示した。
【0035】
(実施例3) 焼き菓子用油脂組成物3の作製
表1の配合に従って、まず乳化剤を混合した調合油を作製した。この油相83.5部に対して水16.5部を添加し、約60℃に温度を調節し、プロペラミキサーにて攪拌混合した後、常法通り掻き取り式チューブラー冷却捏和装置にて冷却捏和して、焼き菓子用油脂組成物3を得た。得られた焼き菓子用油脂組成物3のPOP含量、ラウリン酸含量、捏和後破断応力、徐冷後破断応力、トランス型脂肪酸含量を表1に示した。
【0036】
(比較例1) 焼き菓子用油脂組成物4の作製
表1の配合に従って、パーム中融点分別油、精製豚脂及び精製ヤシ油を配合せず、その他の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして焼き菓子用油脂組成物4を得た。得られた焼き菓子用油脂組成物4のPOP含量、ラウリン酸含量、捏和後破断応力、徐冷後破断応力、トランス型脂肪酸含量表1に示した。
【0037】
(比較例2) 焼き菓子用油脂組成物5の作製
表1の配合に従って、精製パーム油の代わりに硬化大豆油を80部配合し、パームダブルオレインの配合量を20部にした以外は、比較例1と同様にして焼き菓子用油脂組成物5を得た。得られた焼き菓子用油脂組成物5のPOP含量、ラウリン酸含量、捏和後破断応力、徐冷後破断応力、トランス型脂肪酸含量を表1に示した。
【0038】
(比較例3) 焼き菓子用油脂組成物6の作製
表1の配合に従って、パーム中融点分別油、パームステアリン及び精製ヤシ油を配合せず、精製パーム油の配合量を25部に変更し、硬化大豆油を25部配合した以外は、実施例3と同様にして、焼き菓子用油脂組成物6を得た。得られた焼き菓子用油脂組成物6のPOP含量、ラウリン酸含量、捏和後破断応力、徐冷後破断応力、トランス型脂肪酸含量を表1に示した。
【0039】
(実施例4〜6,比較例4〜6) クッキーの作製
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた焼き菓子用油脂組成物1〜6を使用し、表2の配合でクッキーを作製した。
【0040】
クッキー生地の調製は、焼き菓子用油脂組成物、上白糖、全脂練乳をホバートミキサー(ビーター使用)でよく摺り合わせ、重炭酸アンモニウムを溶解した全卵を少しずつ添加し、攪拌混合で均一にした後、予め混合しておいた薄力粉と脱脂粉乳を合わせることにより行った。この生地を冷蔵庫で一旦休ませてからシーターで延ばして型抜きし、180℃で11分間焼成を行い、クッキーを得た。焼き菓子用油脂組成物の作業性評価及び得られたクッキーの官能評価結果を表2に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
表2から明らかなように、本発明品を使用した時、作業性が良く、食感がサクサクとした、咀嚼時に食感がねちゃつかず、歯に付着し難い、口溶けの良いサブレ、ビスケット、クッキー等の焼き菓子類を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、且つ焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が構成脂肪酸全体中2〜15重量%である焼き菓子用油脂組成物。
【請求項2】
パーム中融点分別油の含有量が、焼き菓子用油脂組成物全体中20〜50重量%である請求項1に記載の焼き菓子用油脂組成物。
【請求項3】
冷却捏和後20℃保管条件下で、7日目の破断応力が5.0N〜200Nであり、溶解徐冷後20℃保管条件下で、油相部の7日目の破断応力が0.1N〜5.0Nである請求項1又は2に記載の焼き菓子用油脂組成物。
【請求項4】
トランス型脂肪酸含量が、焼き菓子用油脂組成物全体中3.0重量%以下である、請求項1〜3何れかに記載の焼き菓子用油脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の焼き菓子用油脂組成物を用いることを特徴とする焼き菓子。

【公開番号】特開2010−4806(P2010−4806A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168121(P2008−168121)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】