説明

焼き菓子類用小麦粉

【課題】さっくりとした食感で、口溶けが良い焼き菓子類が作業性良く得られる、焼き菓子類用小麦粉を提供すること。
【解決手段】バーミュード種、アルルカン種、アパシェ種、カプホーン種、スワッソン種、アリクサン種、アルティゴ種、プレミオ種、セレクト種、ニルヴァーナ種、メンデル種、オスマン種、セザンヌ種、オーブッサン種、アルドリック種、イソングラン種、レシタル種、シデラル種、シャンゴー種、カンレミ種、アズテック種、シャルジェ種、タルドール種、テクセル種、ムニエル種、オルバンティス種、サンカラ種、シピオン種、スポンソ種、バルティモア種、クルト種、ガリビア種、ユーゴ種、マニタル種およびアルトリア種由来の小麦粉の少なくとも1種を50質量%以上含有することを特徴とする焼き菓子類用小麦粉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定種の小麦由来の小麦粉を用いることにより、さっくりとした食感で、口溶けが良い焼き菓子類が作業性良く得られる、焼き菓子類用小麦粉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、焼き菓子類の食感や口溶けなどを向上させるために、様々な方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、POP含有量が焼き菓子用油脂組成物全体中12〜40重量%であり、且つ焼き菓子用油脂組成物に含まれるラウリン酸の含有量が構成脂肪酸全体中2〜15重量%である焼き菓子用油脂組成物が提案されており、該焼き菓子用油脂組成物を焼き菓子用練り込み油脂として用いて焼き菓子を作製することにより、サクサクとした食感で、口溶けの良い焼き菓子類が得られることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、脂質や糖質の配合量を増やすことなく、サクサクした食感を有し口溶けの良い焼き菓子を製造する方法として、焼き菓子生地にセルラーゼを添加することが提案されている。
しかし、従来提案されている方法では、その効果は十分とは言い難く、さらなる改善が求められている。その改善方法は、副材料での改良ではなく、主原料での改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−4806号公報
【特許文献2】特開2005−304441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、さっくりとした食感で、口溶けが良い焼き菓子類が作業性良く得られる、焼き菓子類用小麦粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定種の小麦由来の小麦粉が焼き菓子類用小麦粉として著しく優れていることを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、バーミュード(BERMUDE) 種、アルルカン(ARLEQUIN)種、アパシェ(APACHE)種、カプホーン(CAPHORN) 種、スワッソン(SOISSONS)種、アリクサン(ALIXIAN) 種、アルティゴ(ALTIGO)種、プレミオ(PREMIO)種、セレクト(SELECT)種、ニルヴァーナ(NIRVANA) 種、メンデル(MENDEL)種、オスマン(HAUSSMANN)種、セザンヌ(CEZANNE) 種、オーブッサン(AUBUSSON)種、アルドリック(ALDRIC)種、イソングラン(ISENGRAIN)種、レシタル(RECITAL)種、シデラル(SIDERAL)種、シャンゴー(SHANGO)種、カンレミ(CAMP-REMY)種、アズテック(AZTEC)種、シャルジェ(CHARGER)種、タルドール(TALDOR)種、テクセル(TEXEL)種、ムニエル(MEUNIER)種、オルバンティス(ORVANTIS)種、サンカラ(SANKARA)種、シピオン(SCIPION)種、スポンソ(SPONSOR)種、バルティモア(BALTIMOR)種、クルト(COURTOT)種、ガリビア(GALIBIER)種、ユーゴ(HUGO)種、マニタル(MANITAL)種およびアルトリア(ALTRIA)種由来の小麦粉の少なくとも1種を50質量%以上含有することを特徴とする焼き菓子類用小麦粉を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の焼き菓子類用小麦粉によれば、さっくりとした食感で、口溶けが良い焼き菓子類を作業性良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の焼き菓子類用小麦粉に用いられる小麦粉は、上記の特定種の小麦に由来する小麦粉である。上記の特定種の小麦は、軟質系小麦に属し、蛋白含量が少ない特長を有している。これらの小麦に由来する小麦粉を用いて例えばパン類を製造した場合、得られるパン類は固くなりやすいことが知られている。
【0010】
また、上記の特定種の小麦に由来する小麦粉は、蛋白含量が、6〜15質量%であるものが好ましく、7〜11質量%であるものがより好ましい。
上記小麦粉の蛋白含量が少なすぎると、作業性が悪く、また蛋白含量が多すぎると、硬い食感となる。
【0011】
上記の特定種の小麦に由来する小麦粉は、焼き菓子類用小麦粉全量中、50質量%以上含有していることが必要であり、60〜100質量%含有していることが好ましく、80〜100質量%含有していることがより好ましい。
上記小麦粉の含有量が50質量%未満であると、作業性が悪くなり、口溶けが悪くなる。
【0012】
上記の特定種の小麦に由来する小麦粉以外の小麦粉としては、薄力粉、中力粉、強力粉など、特に制限されることなく用いることができるが、薄力粉、中力粉が好ましく、特に薄力粉が好ましい。
【0013】
本発明の焼き菓子類用小麦粉を用いて得られる焼き菓子類としては、例えば、ハードビスケット、ソフトビスケット、クッキー、クラッカーなどのビスケット類、シユークリーム、エクレア、サントノーレ、シーニョ、パリブレストなどのシュー菓子類、パルミエ、ミルフィーユ、アップルパイなどのパイ類、フルーツケーキ、バウムクーヘン、マドレーヌなどのバターケーキ類などが挙げられ、イーストを使用しない焼き菓子類が好ましい。
本発明の焼き菓子類用小麦粉は、従来の焼き菓子類用小麦粉と同様にして焼き菓子類の製造に用いられる。すなわち、本発明の焼き菓子類用小麦粉および目的とする焼き菓子類の種類に応じて他の原料を適宜混合し、常法に従って焼き菓子類を製造することができる。
【0014】
本発明の焼き菓子類用ミックス粉は、小麦粉として、上記の特定種の小麦に由来する小麦粉を含有するものである。
【0015】
本発明の焼き菓子類は、上記の本発明の焼き菓子類用小麦粉または本発明の焼き菓子類用ミックス粉を用い、目的とする焼き菓子類の種類に応じた常法により製造することができる。
なお、本発明の焼き菓子類を製造する際、上記の本発明の焼き菓子類用小麦粉または本発明の焼き菓子類用ミックス粉を用いて作製した菓子生地は、直ちに、成型した後、焼成してもよく、冷凍生地、冷蔵生地として、流通させたり保管したりすることもできる。
【実施例】
【0016】
本発明を具体的に説明するために実施例および比較例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0017】
〔実施例1〕
下記(配合)および(製法)により、ビスケット菓子(クッキー)を製造した。
(配合)
マーガリン 40質量部
砂糖 50質量部
食塩 1質量部
全卵 15質量部
小麦粉 100質量部(アパシェ(APACHE)種由来の小麦粉50質量部およびウエスタンホワイト(WW)由来の小麦粉50質量部)
ベーキングパウダー 1質量部
(製法)
アパシェ(APACHE)種由来の小麦粉50質量部およびウエスタンホワイト(WW)由来の小麦粉50質量部からなる小麦粉100質量部に、ベーキングパウダー(BP)1質量部を加えてよく混合する。別に、砂糖50質量部、食塩1質量部およびマーガリン40質量部をよく混合し、これに全卵15質量部を徐々に加えて混ぜ合わせる。これを上記のBP入りの小麦粉に加えて混ぜ合わせて、生地を調製する。得られた生地を冷蔵庫で冷やしてから伸ばし、型抜きした後、天板に並べ、190℃のオーブンで12分間焼成してクッキーを得る。得られたクッキーは、エッジが立った外観で、さっくりとして、口溶けが良い食感であった。
【0018】
〔比較例1〕
実施例1で用いた小麦粉の代わりに、日清製粉株式会社製「フラワー」(薄力粉)のみを用いた以外は、実施例1と同様にしてクッキーを製造した。
【0019】
実施例1および比較例1におけるクッキー製造時の作業性および得られたクッキーの食感について、下記表2および表3に示す評価基準によりパネラー10人に評点させた。その結果(10人の平均値)を下記表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
〔実施例2〕
下記(配合)および(製法)により、シュー菓子(シュー皮)を製造した。
(配合)
全卵 200質量部
小麦粉 100質量部(スワッソン(SOISSONS)種由来の小麦粉10質量部、バーミュード(BERMUDE) 種由来の小麦粉30質量部、アルルカン(ARLEQUIN)種由来の小麦粉40質量部およびウエスタンホワイト(WW)由来の小麦粉20質量部)
水 150質量部
マーガリン 100質量部
(製法)
水150質量部とマーガリン100質量部をボールに入れて沸騰させる。これに、スワッソン(SOISSONS)種由来の小麦粉10質量部、バーミュード(BERMUDE) 種由来の小麦粉30質量部、アルルカン(ARLEQUIN)種由来の小麦粉40質量部およびウエスタンホワイト(WW)由来の小麦粉20質量部からなる小麦粉100質量部を加えてよく混合する。次に全卵200質量部を徐々に加えシュー生地を調製する。このシュー生地を天板の上に絞り、220℃のオーブンで25分間焼成してシュー皮を得る。得られたシュー皮は、さっくりとして、口溶けが良い食感であった。
【0024】
〔比較例2〕
実施例2で用いた小麦粉の代わりに、日清製粉株式会社製「フラワー」(薄力粉)のみを用いた以外は、実施例2と同様にしてシュー皮を製造した。
【0025】
実施例2および比較例2におけるシュー皮製造時の作業性および得られたシュー皮の食感について、上記表2および表3に示す評価基準によりパネラー10人に評点させた。その結果(10人の平均値)を下記表4に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
〔実施例3〕
下記(配合)および(製法)により、パイ菓子(アップルパイ)を製造した。
(配合)
砂糖 3質量部
食塩 1質量部
全卵 10質量部
小麦粉 100質量部(バーミュード(BERMUDE) 種由来の小麦粉20質量部、アルルカン(ARLEQUIN)種由来の小麦粉40質量部、メンデル(MENDEL)種由来の小麦粉30質量部およびアルドリック(ALDRIC)種由来の小麦粉10質量部)
水 55質量部
バター 80質量部
アップルプレザーブ 30g/生地1枚
(製法)
バーミュード(BERMUDE) 種由来の小麦粉20質量部、アルルカン(ARLEQUIN)種由来の小麦粉40質量部、メンデル(MENDEL)種由来の小麦粉30質量部およびアルドリック(ALDRIC)種由来の小麦粉10質量部からなる小麦粉100質量部、砂糖3質量部、食塩1質量部、全卵10質量部および水55質量部を低速で5分間、次いで中速で5分間混捏する。得られた生地を5℃の冷蔵庫で3時間冷蔵する。冷蔵した生地にバター80質量部を用いて3折3回、次いで4折1回行ってロールインする。ロールインした生地を2mm厚に伸ばした後、9cmの正方形にカットし、アップルプレザーブ30gを包み、220℃のオーブンで13分間焼成してアップルパイを得る。得られたアップルパイは、浮きもよく、焼き色もはっきりして、パリッとした食感で、口溶けも良いものであった。
【0028】
〔比較例3〕
実施例3で用いた小麦粉の代わりに、日清製粉株式会社製「フラワー」(薄力粉)のみを用いた以外は、実施例3と同様にしてアップルパイを製造した。
【0029】
実施例3および比較例3におけるアップルパイ製造時の作業性および得られたアップルパイの食感について、上記表2および表3に示す評価基準によりパネラー10人に評点させた。その結果(10人の平均値)を下記表5に示す。


【0030】
【表5】

【0031】
〔実施例4〕
下記(配合)および(製法)により、バターケーキ菓子(マドレーヌ)を製造した。
(配合)
全卵 100質量部
砂糖 100質量部
蜂蜜 30質量部
小麦粉 100質量部(カプホーン(CAPHORN) 種由来の小麦粉100質量部)
BP 2質量部
バター 100質量部
(製法)
カプホーン(CAPHORN) 種由来の小麦粉100質量部にBPを2質量部加えてよく混合する。全卵100質量部に砂糖100質量部および蜂蜜30質量部をよく混合する。これに上記のBP入りの小麦粉を加えてよく混ぜ合わせる。溶かしたバター100質量部を徐々に加え均一になるまでよく混ぜ合わせる。得られた生地を5℃の冷蔵庫で1時間冷蔵する。冷蔵した生地をマドレーヌ型に絞り、190℃のオーブンで15分間焼成してマドレーヌを得る。得られたマドレーヌは、エッジがはっきりとした外観で、ほろほろっとして口溶けが良い食感であった。
【0032】
〔比較例4〕
実施例4で用いた小麦粉の代わりに、日清製粉株式会社製「フラワー」(薄力粉)のみを用いた以外は、実施例4と同様にしてマドレーヌを製造した。
【0033】
実施例4および比較例4におけるマドレーヌ製造時の作業性および得られたマドレーヌの食感について、上記表2および表3に示す評価基準によりパネラー10人に評点させた。その結果(10人の平均値)を下記表6に示す。
【0034】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーミュード(BERMUDE) 種、アルルカン(ARLEQUIN)種、アパシェ(APACHE)種、カプホーン(CAPHORN) 種、スワッソン(SOISSONS)種、アリクサン(ALIXIAN) 種、アルティゴ(ALTIGO)種、プレミオ(PREMIO)種、セレクト(SELECT)種、ニルヴァーナ(NIRVANA) 種、メンデル(MENDEL)種、オスマン(HAUSSMANN)種、セザンヌ(CEZANNE) 種、オーブッサン(AUBUSSON)種、アルドリック(ALDRIC)種、イソングラン(ISENGRAIN)種、レシタル(RECITAL)種、シデラル(SIDERAL)種、シャンゴー(SHANGO)種、カンレミ(CAMP-REMY)種、アズテック(AZTEC)種、シャルジェ(CHARGER)種、タルドール(TALDOR)種、テクセル(TEXEL)種、ムニエル(MEUNIER)種、オルバンティス(ORVANTIS)種、サンカラ(SANKARA)種、シピオン(SCIPION)種、スポンソ(SPONSOR)種、バルティモア(BALTIMOR)種、クルト(COURTOT)種、ガリビア(GALIBIER)種、ユーゴ(HUGO)種、マニタル(MANITAL)種およびアルトリア(ALTRIA)種由来の小麦粉の少なくとも1種を50質量%以上含有することを特徴とする焼き菓子類用小麦粉。
【請求項2】
請求項1に記載の焼き菓子類用小麦粉を含有することを特徴とする焼き菓子類用ミックス粉。
【請求項3】
請求項1に記載の焼き菓子類用小麦粉または請求項2に記載の焼き菓子類用ミックス粉を用いて得られた焼き菓子類。
【請求項4】
バーミュード(BERMUDE) 種、アルルカン(ARLEQUIN)種、アパシェ(APACHE)種、カプホーン(CAPHORN) 種、スワッソン(SOISSONS)種、アリクサン(ALIXIAN) 種、アルティゴ(ALTIGO)種、プレミオ(PREMIO)種、セレクト(SELECT)種、ニルヴァーナ(NIRVANA) 種、メンデル(MENDEL)種、オスマン(HAUSSMANN)種、セザンヌ(CEZANNE) 種、オーブッサン(AUBUSSON)種、アルドリック(ALDRIC)種、イソングラン(ISENGRAIN)種、レシタル(RECITAL)種、シデラル(SIDERAL)種、シャンゴー(SHANGO)種、カンレミ(CAMP-REMY)種、アズテック(AZTEC)種、シャルジェ(CHARGER)種、タルドール(TALDOR)種、テクセル(TEXEL)種、ムニエル(MEUNIER)種、オルバンティス(ORVANTIS)種、サンカラ(SANKARA)種、シピオン(SCIPION)種、スポンソ(SPONSOR)種、バルティモア(BALTIMOR)種、クルト(COURTOT)種、ガリビア(GALIBIER)種、ユーゴ(HUGO)種、マニタル(MANITAL)種およびアルトリア(ALTRIA)種由来の小麦粉の少なくとも1種を50質量%以上含有する小麦粉を、焼き菓子類用小麦粉として使用することを特徴とする小麦粉の使用。

【公開番号】特開2013−70626(P2013−70626A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209621(P2011−209621)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(301049777)日清製粉株式会社 (128)
【Fターム(参考)】