説明

焼き菓子類

【課題】口どけ感やしっとり感を経時的に維持できる焼き菓子類を提供する。
【解決手段】(A)小麦粉、(B)α化加工澱粉、及び(C)小麦蛋白を含有し、(A)/(B)質量比が55/45〜85/15であり、かつ(A)と(B)の合計100質量部に対する(C)の含有量が0.5〜4質量部である、菓子用穀物粉組成物を用いて焼き菓子類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き菓子類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼き菓子は軽い食感が求められ、口どけがよく、粉っぽさのないものが求められてきた。
近年、消費者志向は多様化し、既存の概念に捕らわれない新しいタイプの食品、或いはこれまでにない食感の食品が求められる傾向にある。焼き菓子ではソフト化傾向が強まり、口どけの良さと粉っぽさのなさを維持したまま、従来以上にしっとり感があるものが求められるようになっている。
【0003】
これに対し、α化澱粉やα化加工澱粉を配合することによりしっとりした食感を与える技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、小麦粉に対し、α化小麦粉および/またはα化澱粉、及びエーテル化澱粉を添加することにより、しっとりとしてもちもちとした焼き菓子を提供する技術が開示されている。
しかしながら、α化小麦粉および/またはα化澱粉の量は、澱粉系原料100重量部に対し30重量部を超えると膨化が悪く、もちもちした食感が得られず、糊状の食感となる旨が記載されている。また、エーテル化澱粉の配合量が30重量部を超えると固化が悪化し、糊状の食感となる旨が記載されている。このように、α化澱粉や加工澱粉の配合量を多くすることができないという問題があった。また、保存時における食感の維持については記載がない。
【0004】
特許文献2には、原料穀粉100質量部に対してα化した加工ワキシーポテトスターチを0.2〜10質量部配合する技術が開示されている。かかる技術によれば、ソフトでしっとりした食感を有し、経時的品質劣化が抑制されたベーカリー食品が得られる旨の記載がある。
しかしながら、α化した加工ワキシーポテトスターチの配合量を増加させた場合、しっとり感、口どけ感、及び外観が低下するという旨開示があり、加工澱粉の配合量には限界があった。
【0005】
また、特許文献3には、水溶性糊料及び/又はグルテンと、還元水飴等の澱粉糖類を用いるスポンジ菓子、クレープ皮等の焼成菓子の製造方法が開示されている。これによれば、グルテンの添加によりやや固い、しっかりしたクレープ生地を得ることができる旨開示があるが、一方、澱粉糖類が20重量%未満の場合、小麦粉澱粉による老化が起こりやすい旨記載があり、澱粉糖類の併用なくしては、食感の経時的低下を抑制することは困難であった。
【0006】
一方、健康志向という面から、加工澱粉の生理機能が注目されている。
例えば、置換度が0.06であるアセチル化リン酸架橋澱粉、置換度が0.10〜0.14であるヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉について、α-アミラーゼに対する消化抵抗性が示され、食後の急激な血糖値の上昇とそれに伴う高血糖の誘発ならびにインスリンの過剰分泌を防ぐ効果が示唆されている(非特許文献1)。
【0007】
また、ヒドロキシプロピル化された澱粉、アセチル化澱粉及びオクテニルコハク酸化澱粉が肥満予防・改善剤、内臓脂肪蓄積抑制剤として効果を有することが開示されている(特許文献4、5)。特許文献4、5では生理機能を発現するため配合される加工澱粉の配合量の好ましい範囲として20〜100重量%と高濃度での配合の有効性が開示されている。
【非特許文献1】海老原,日本栄養・食糧学会誌,Vol.45(6),p.551(1992).
【特許文献1】特開平8−38028号公報
【特許文献2】特開2007−325526号公報
【特許文献3】特開昭61−187740号公報
【特許文献4】特開2004−269458号公報
【特許文献5】特開2006−76918号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、生理機能の面からは加工澱粉をより多く配合したい場合、口どけ感やしっとり感といった食感やその経時的劣化の防止を実現できる技術が求められていた。
本発明が解決しようとする課題は、口どけ感やしっとり感を経時的に維持できる焼き菓子類の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、加工澱粉を配合した場合に顕著になる粉っぽさと口どけ感の悪化を改善し、かつしっとり感を有する焼き菓子を得るべく検討を行った。上述されるように、グルテンの単独使用は、一般に生地を固くし、また、経時的劣化をもたらすことが知られていた。しかしながら、特定の加工澱粉と特定量のグルテンを併用することにより、これらの食感の改善と経時的維持に効果的であることを見出した。
すなわち、本発明は、(A)小麦粉、(B)α化加工澱粉、及び(C)小麦蛋白を含有し、(A)/(B)質量比が55/45〜85/15であり、かつ(A)と(B)の合計100質量部に対する(C)の含有量が0.5〜4質量部である菓子用穀物粉組成物、並びに当該菓子用穀物粉組成物を用いて製造された焼き菓子類を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粉っぽさのなさと口どけ感を有するとともにしっとり感を有し、それらの食感の経時的劣化が抑制された焼き菓子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の菓子用穀物粉組成物は、(A)小麦粉、(B)α化加工澱粉、及び(C)小麦蛋白を含有するものである。
【0012】
<(A)小麦粉>
小麦粉には、薄力粉、中力粉、準強力粉、及び強力粉があるが、一般に、焼き菓子には薄力粉が用いられる。
薄力粉は、軟質小麦から製造されるものであり、原料として用いられる小麦として、ウエスタン・ホワイト小麦、ホワイトクラブ小麦等が用いられる。本発明に用いる薄力粉は、蛋白含有率が6.5〜9質量%(以下、単に%と言う)の小麦粉が好ましく、6.8〜8.0%のものがより好ましい。
【0013】
<(B)α化加工澱粉>
本発明では、加工澱粉としてα化された加工澱粉を用いる。
α化は澱粉を水存在下で加熱処理を施すことにより、澱粉粒が結晶性を失い、膨潤または溶解しする状態を示し、糊化とも称せられる。α化の程度を示す、α化度は定法であるβ−アミラーゼ・プルラナーゼ法により測定できる(中村道徳,貝沼圭二編,「生物化学実験法19 澱粉・関連糖質実験法」、学会出版センター(1986)、190〜192ページ)。
通常、α化を施されていない澱粉のα化度は10%以下である。
本発明ではしっとり感を発現させる目的でα化度の高い加工澱粉を用いることが好ましい。具体的にはα化度20〜100%が好ましく、更に30〜99%が好ましく、特に40〜98%が好ましい。
【0014】
加工澱粉の種類としては、エステル化澱粉又はエーテル化澱粉が好ましく用いられる。
エステル化澱粉とは、澱粉に対してエステル結合で官能基を付加した澱粉をいう。エステル化としては、アセチル化、オクテニルコハク酸化、リン酸モノエステル化等が挙げられ、澱粉に無水酢酸、オクテニルコハク酸、リン酸塩等を作用させることにより修飾を行うことで得ることができる。リン酸塩としては、オルトリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。エステル化澱粉の例としては、アセチル化澱粉、リン酸化澱粉、コハク酸化澱粉、酢酸化澱粉、硝酸化澱粉およびキサントゲン酸化澱粉が挙げられる。
エーテル化澱粉とは、澱粉に対してエーテル結合で官能基を付加した澱粉をいう。エーテル化澱粉の例としては、カルボキシメチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉およびカルボキシエチル化澱粉が挙げられる。エーテル化澱粉としてはヒドロキシプロピル化澱粉が食感上好ましい。
【0015】
加工の度合いは置換度によって表され、一般にグルコース残基当たりの置換基数により定義される。置換度が大きいものは修飾の度合いが大きいことを表し、この場合、澱粉のα化温度を低下させ、より澱粉を水和膨潤させ、粉っぽくない食感を与えることができる。
本発明の効果は、いずれのα化加工澱粉を用いた場合にも奏されるが、置換度が大きいもの、すなわち0.04を超えるものについても十分に効果が奏される。
さらに、生理機能上の観点より、エステル化澱粉の場合、0.04を超えるものが好ましく、0.05〜0.1のものがより好ましく、0.06〜0.09のものがさらに好ましい。また、生理機能上の観点より、エーテル化澱粉の場合は、置換度は0.1を越えるものが好ましく、0.1〜0.5のものがより好ましく、0.1〜0.3であるものがさらに好ましい。
置換度の測定方法は澱粉・関連糖質実験法(中村,貝沼編,前述,1986年)290〜297ページに記載の方法に準じて測定することができる。
【0016】
また、これらのエステル化澱粉又はエーテル化澱粉は、さらに架橋処理を施されたものが好ましい。
架橋処理としては、リン酸架橋、アジピン酸架橋が挙げられる。澱粉から簡単な工程で、高純度で比較的安価に製造できる点から、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉が好ましい。
架橋の程度は、膨潤度で表される。架橋度が高いものは膨潤度が小さく、食感が硬く、粉っぽくなりやすい。一方、架橋度が低いもの、すなわち膨潤度が大きすぎるものは澱粉粒が破裂しやすく、老化を招きやすい。しかしながら、本発明においては(C)小麦蛋白を併用するために、膨潤度の大きい架橋澱粉を使用しても老化を抑制することができ、長期間の保存においても食感に優れた焼き菓子を提供することができる。
これらの観点より、膨潤度は8以上が好ましく、12以上が好ましく、15を超えるものがより好ましい。また、膨潤度は29以下が好ましく、25以下がより好ましい。
なお、膨潤度は、乾燥物換算で試料1.0gを純水100mlに分散し、90℃、30分間加熱後30℃に冷却し、得られた糊化液を遠心分離(3000rpm、10分間)してゲル層と上澄層に分け、ゲル層の重量を測定した値をAとし、重量測定したゲル層を乾固(105℃、恒量)して重量を測定した値をBとした時のA/Bの比率でもって表す。
【0017】
α化加工澱粉の原料としては、例えばワキシーコーン澱粉、コーン澱粉、小麦澱粉、米澱粉、糯米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉等が挙げられる。
【0018】
菓子用穀物粉組成物中の(A)小麦粉と(B)α化加工澱粉の配合比は、(A)/(B)質量比が55/45〜85/15であり、より好ましくは60/40〜80/20である。かかる比率にすることで、食感、特にしっとり感が十分なものとなり、かつ生理機能を十分に期待することができる。
【0019】
<(C)小麦蛋白>
本発明で用いる(C)小麦蛋白は、小麦粉より抽出した蛋白である。小麦蛋白は、蛋白含有率が高いものが良好で、60%以上のものが好ましく、70%以上のものがより好ましい。
小麦蛋白は市販品を用いることができ、例えばグリコ栄養食品株式会社製 A−グルシリーズ(A−グルWP、A−グルG、A−グルK等)、ファイングルVP等が好適に用いられる。
【0020】
(A)小麦粉と(B)α化加工澱粉の合計100質量部(以下、単に部と言う)に対する小麦蛋白の含有量は、0.5〜4部であり、好ましくは0.5〜3部であり、さらに好ましくは0.8〜2部である。配合量を0.5〜4部とすることで、しっとり感向上効果、及びその経時的安定性を得ることができる。
また、上記組成とすることで、(B)α化加工澱粉の置換度が大きい場合においても、加熱時の澱粉粒の崩壊を抑制できる。その結果、老化(経時的に硬くなる)を抑制することができ、同時に口どけ感の向上と粉っぽさの抑制を実現することができる。
【0021】
菓子用穀物粉組成物には、(A)小麦粉、(B)α化加工澱粉、及び(C)小麦蛋白以外に、糖類、油脂類、膨剤、食塩、香料、乳化剤等を任意成分として含有することができる。ここで言う糖類とは甘味の賦与、色つき、保湿性を目的として砂糖、ブドウ糖、水あめ、マルトース、ソルビトール等が用いられる。
これらの任意成分は、(A)小麦粉と(B)α化加工澱粉の合計100部に対して200部以下が好ましく、150部以下がより好ましい。
また、糖類の配合量は(A)小麦粉と(B)α化加工澱粉の合計100部に対して90部以下が好ましく、70部以下がより好ましい。また、油脂類の配合量は(A)小麦粉と(B)α化加工澱粉の合計100部に対して70部以下が好ましく、60部以下がより好ましい。
【0022】
<焼き菓子類>
本発明の菓子用穀物粉組成物を用いて、焼き菓子類を得ることができる。
本発明の焼き菓子類としては、クッキー、ビスケット、ショートブレッド、クラッカー、乾パン、プレッツェル、パイ、カットパン、またはそれらの加工品等が挙げられる。口どけ感や粉っぽさのなさが重視されるという観点より、クッキー、ビスケット、ショートブレッド又はクラッカーが好ましい。
【0023】
近年、ビスケット、クッキー及びショートブレッドにおいて、よりソフトな食感が求められており、得られる焼き菓子類の水分率としては5〜15%、好ましくは6〜12%のものが好ましい。保存性を考慮すると得られる焼き菓子類の水分活性が0.4〜0.8、好ましくは0.5〜0.7であることが更に好ましい。
【0024】
本発明における焼き菓子類の原料としては、主原料としての菓子用穀物粉組成物の他に、副材料である糖類、油脂類、卵、水、乳製品、食塩、イースト、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー、甘味料等の中から、適宜必要なものを、さらに使用することができる。更に、レーズン等の乾燥果実、小麦ふすま、全粒粉、チョコレート類等を適宜使用できる。
【0025】
本発明で使用する糖類は、通常焼き菓子類に用いられるすべての糖類を用いることができる。具体的にはグルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、マルトース、ショ糖、麦芽糖、水飴、異性化糖、転化糖、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、デキストリンなどの多糖類、澱粉加水分解物などの還元糖などを使用することができ、これらは1種又は2種以上の混合系で使用することができる。
焼き菓子中の糖類の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100部に対して、菓子用穀物粉組成物中に含まれるもの及びさらに加えたものを合わせて5〜90部であり、更に10〜70部が好ましく、15〜55部が特に好ましい。
【0026】
本発明で使用する油脂類は、動物性、植物性のいずれでも良く、バター、ラード、マーガリン、ショートニングなどの可塑性を持ったもの、液状油、又はそれらに水素添加した硬化油(固体脂)、エステル交換油等、幅広いものを用いることができる。
焼き菓子中の油脂類の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100部に対して、菓子用穀物粉組成物中に含まれるもの及びさらに加えたものを合わせて5〜72部、好ましくは10〜60部、更に20〜55部とすることが好ましい。
【0027】
また、甘味料としてソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウムなどを使用することができる。
【0028】
本発明の態様において、焼き菓子類の製造方法としては、ロータリー、カッチングエンボス、ワイヤーカット、ルートプレスト及びデポジット等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
<小麦粉>
薄力粉(日清製粉(株)製バイオレット、蛋白含有率7.1%)を用いた。
<加工澱粉>
実施例に用いた加工澱粉のアセチル基及びヒドロキシプロピル基の置換度、膨潤度、及びα化度を表1に示す。
ここで、置換度及びα化度の測定方法は前述の文献に記載の方法に準じて測定した。膨潤度の測定方法は前述の方法を用いた。
【0030】
【表1】

【0031】
<小麦蛋白>
A−グルWP(グリコ栄養食品(株)、蛋白含有率78%)を用いた。
【0032】
上記薄力粉、加工澱粉を表2の割合で配合し、穀粉1〜穀粉8の穀物粉組成物を製造した。
さらに、その他の原料を下記割合で配合し、実施例及び比較例のショートブレッドを製造した。
【0033】
<材料組成>
材料a マーガリン 48部
食用加工油脂 3部
上白糖 25部
オリゴ糖 5部
脱脂粉乳 5部
濃縮大豆蛋白 5部
チーズ粉末 8部
乾燥卵白 2部
食塩 1部
材料b 全卵 29部
材料c 穀物粉組成物 100部
材料d 小麦蛋白 0〜3部
【0034】
[ショートブレッドの製造方法]
1)材料a(マーガリン、食用加工油脂、上白糖、オリゴ糖、脱脂粉乳、濃縮大豆蛋白、チーズ粉末、乾燥卵白、食塩)を秤量後ミキサーに入れて低速30秒後、さらに中速にて3分間撹拌を行い生地を調製した。
2)上記1)を低速30秒撹拌しながら、卵(材料b)を溶いたものを3分割して加えた。最初の1回の卵水の添加は添加後、低速30秒撹拌を行い、2回目の添加時に食塩を卵水に溶解させた状態で加え、低速にて30秒撹拌を行った。
上記終了後、ミキサーの壁に付着した油をかき落とした後、最後の卵水を加え、低速30秒撹拌後、さらに均一なクリーム状になるまで中速にて撹拌を行った(中速撹拌時間1分)
3)上記2)に予め混合した材料c及び材料dを入れ、低速45秒撹拌をした。
4)上記3)を20g秤量し、縦72mm×横22mm×高さ14mmの長方形の焼き型に詰め、剥離紙を敷いた展板にならべ、型に詰めた生地表面に6個の穴をつまようじであけた。展板1枚当たり、4個ずつ3列に並べ、計12個を並べた。
5)上記展板の下にさらに3枚の展板を重ね、表面にアルミホイルをかけた。
6)焼成はオーブン中、160℃にて焼成を行った。アルミホイルをかぶせて20分間焼成、アルミを外した後20分間焼成を行った。
7)焼成後網の上で室温下20分冷却後、チャック付きポリエチレン袋に入れ、20℃恒温室にて1日及び7日間放置し、ショートブレッドサンプルとした。
【0035】
実施例及び比較例の評価として、製造1日後及び7日後におけるショートブレッドサンプルについて、もろさ、粉っぽくなさ、口どけ感、及びしっとり感に関する官能評価を行った。
[官能評価]
5:対照例と比較して非常に良好なレベル
4:対照例と比較して良好なレベル
3:対照例と同等レベル
2:対照例と比較して劣ったレベル
1:対照例と比較して非常に劣ったレベル
尚、7日後の評価については、1日後の対照例の評価を3とし、これに対して相対評価した。
【0036】
実施例1〜5及び比較例1〜3
α化加工架橋澱粉としてα化アセチル化アジピン酸架橋澱粉(1)を用い、薄力粉とα化加工架橋澱粉の比率、及び小麦蛋白の配合量を変化させてショートブレッドサンプルを製造し、官能評価を行った。焼き菓子の原料組成と得られたサンプルの官能評価結果を表3に示す。
【0037】
比較例4
実施例2と同様にして、但し、α化加工架橋澱粉に代えて加工を施していないα化澱粉を用いてショートブレッドサンプルを製造し、官能評価を行った。焼き菓子の原料組成と得られたサンプルの官能評価結果を表3に示す。
【0038】
実施例6〜7
実施例2と同様にして、但し、α化加工架橋澱粉としてα化アセチル化アジピン酸架橋澱粉(2)又はα化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉を用いてショートブレッドサンプルを製造し、官能評価を行った。
焼き菓子の原料組成と得られたサンプルの官能評価結果を表4に示す。
【0039】
比較例5
実施例7と同様に、α化加工架橋澱粉としてα化アセチル化アジピン酸架橋澱粉(2)を用いたが、小麦蛋白を用いずにショートブレッドサンプルを製造し、官能評価を行った。
焼き菓子の原料組成と得られたサンプルの官能評価結果を表4に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
上記の如く、特定のα化加工澱粉、小麦蛋白を本発明の範囲とし、製造した焼き菓子類は、α化加工澱粉が生理機能を発揮するに十分な配合量であるにも関わらず、従来にないしっとり感や口どけ感が向上し、かつその食感を経時的に維持することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)小麦粉、(B)α化加工澱粉、及び(C)小麦蛋白を含有し、
(A)/(B)質量比が55/45〜85/15であり、かつ
(A)と(B)の合計100質量部に対する(C)の含有量が0.5〜4質量部である、菓子用穀物粉組成物。
【請求項2】
α化加工澱粉のα化度が20〜100%である、請求項1記載の菓子用穀物粉組成物。
【請求項3】
α化加工澱粉が、α化エステル化澱粉又はα化エーテル化澱粉である、請求項1又は2記載の菓子用穀物粉組成物。
【請求項4】
α化加工澱粉がα化アセチル化澱粉又はα化ヒドロキシプロピル化澱粉である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の菓子用穀物粉組成物。
【請求項5】
α化加工澱粉が、架橋澱粉である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の菓子用穀物粉組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の菓子用穀物粉組成物を用いて製造される焼き菓子類。
【請求項7】
焼き菓子が、クッキー、ビスケット、ショートブレッド及びクラッカーからなる群より選択されるものである、請求項6記載の焼き菓子類。
【請求項8】
水分率が5〜15質量%である、請求項6又は7記載の焼き菓子類。

【公開番号】特開2010−142127(P2010−142127A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319435(P2008−319435)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】