説明

焼却炉

【課題】様々な被焼却物を効率良く焼却することができる焼却炉を提供する。
【解決手段】焼却炉100は、被焼却物70を炉本体2内に押し込む被焼却物押し込み装置10と、炉本体2内の被焼却物70に向けて燃焼用空気A1を、被焼却物70の押し込み方向に対して略対向する方向に噴出する散気管20と、散気管設置位置近傍に設置され、炉本体2内の被焼却物70に向けて火炎C1を、散気管20から噴出される燃焼用空気A1の噴出方向と略同じ方向に噴出する助燃バーナ25と、散気管及び助燃バーナ設置位置近傍に設けられ、燃焼排ガスB1を排出する燃焼排ガス排出口8と、を備える。炉本体2は、円筒状に形成されるとともに、横向きに設置され、且つ、軸を中心に回転自在に支持されている。さらに、回転駆動装置15によって炉本体2はその軸を中心に一方向回転又は揺動回転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈芝、刈草、剪定木枝、落ち葉、食品廃棄物、廃紙、布屑、合成樹脂廃棄物、高分子廃棄物、汚泥、廃液(例:廃油、廃水)、動物の死骸、家庭用ゴミなどの様々な被焼却物を焼却する焼却炉に関し、詳述すると、炉本体が一方向回転又は揺動回転する回転式焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の被焼却物を焼却する焼却炉として、例えば、特許第2735911号公報及び特許第2774849号公報に開示されたものが知られている。
【0003】
この焼却炉では、炉本体の一端部に被焼却物供給口が設けられており、更に、炉本体の一端側には、被焼却物供給口を通じて被焼却物を炉本体内に押し込む被焼却物押し込み装置が設置されている。炉本体の他端側には、炉本体内の被焼却物に向けて燃焼用空気を噴出する散気管が設置されている。さらに、炉本体の他端側における散気管設置位置近傍には、炉本体内の被焼却物の燃焼により生じた燃焼ガスを排出する燃焼ガス排出口が設けられている(特許文献1及び2参照)。
【0004】
この焼却炉には次の利点がある。
【0005】
すなわち、散気管から噴出された燃焼用空気は、炉本体内で反転したのち、燃焼排ガスとして燃焼排ガス排出口内に流れ込む。このとき、燃焼排ガスは、散気管から噴出された新鮮な燃焼用空気と、あるいは更に助燃バーナから噴出された火炎とを受けて燃焼される。これにより、該燃焼排ガス中に含まれている有害物質(例:ダイオキシン類、有煙ガス成分)の量を低減できる。
【0006】
また、一般に、炉本体内で焼却灰が被焼却物の表面を覆う状態に被焼却物の表面上に堆積した場合、被焼却物は、燃焼用空気との接触面積が少なくなるので燃焼され難くなる。これに対して、上記の焼却炉によれば、被焼却部の表面上に堆積した焼却灰を、散気管から噴出された燃焼用空気の噴出流圧によって吹き飛ばすことができ、これにより、被焼却物を効率良く焼却することができるという利点がある。
【特許文献1】特許第2735911号公報
【特許文献2】特許第2774849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の焼却炉には次の難点があった。
【0008】
すなわち、炉本体の炉床は平面視四角形状に形成されているため、炉本体の炉床の四つの角隅部では、散気管から噴出された燃焼用空気の噴出速度や噴出量が不足することがある。そのため、炉床の各角隅部に存在する被焼却物の表面上に堆積した焼却灰を、燃焼用空気の噴出流圧で吹き飛ばすことができず、その結果、炉床の各角隅部に未燃物が残存し易かった。
【0009】
さらに、炉本体の炉床に接触している被焼却物は、燃焼用空気との接触面積が少ないので、乾燥され難く、そのため燃焼され難かった。特に、被焼却物が水分を多く含んでいる場合、被焼却物のうち水分含有量が多い部分は被焼却物の下部に溜まるので、水分含有量が多い部分を燃焼するのが困難であった。
【0010】
さらに、重量物(例:砂、石、ガラス、金属)を含む被焼却物を焼却する場合、重量物は重いので被焼却物の下部に溜まり易い。そのため、重量物は、炉外に排出されるまでに長い時間が掛かり、被焼却物の燃焼に対する阻害要因になっていた。
【0011】
この発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、様々な被焼却物を効率良く焼却することができる焼却炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は次の手段を提供する。
【0013】
[1] 炉本体と、
炉本体の一端部に設けられた被焼却物供給口を通じて被焼却物を炉本体内に該炉本体の他端部に向かう方向に押し込む被焼却物押し込み装置と、
炉本体の他端側に設置され、炉本体内の被焼却物に向けて燃焼用空気を、被焼却物押し込み装置による被焼却物の押し込み方向に対して略対向する方向に噴出する散気管と、
炉本体の他端側における散気管設置位置近傍に設置され、炉本体内の被焼却物に向けて火炎を、散気管から噴出される燃焼用空気の噴出方向と略同じ方向に噴出する助燃バーナと、
炉本体の他端側における散気管及び助燃バーナ設置位置近傍に設けられ、炉本体内の被焼却物の燃焼により生じた燃焼排ガスを排出する燃焼排ガス排出口と、
を備えた焼却炉であって、
炉本体は、円筒状に形成されるとともに、横向きに設置され、且つ、軸を中心に回転自在に支持されており、
炉本体の回転速度を制御可能な回転駆動装置によって炉本体がその軸を中心に一方向回転又は揺動回転可能に構成されていることを特徴とする焼却炉。
【0014】
[2] 炉本体は、その内径が該炉本体の一端部から他端部に向かう方向において漸次増大している前項1記載の焼却炉。
【0015】
[3] 散気管は、炉本体の他端側に配置された後側壁部に、該後側壁部の外面側から取り外し可能に設置されるとともに、
散気管に助燃バーナが付設されている前項1又は2記載の焼却炉。
【0016】
[4] 助燃バーナが散気管内に配置されている前項3記載の焼却炉。
【0017】
[5] 燃焼用空気を燃焼排ガスの熱で予め加熱する予熱装置を備えている前項1〜4のいずれかに記載の焼却炉。
【発明の効果】
【0018】
本発明は次の効果を奏する。
【0019】
[1]の発明では、散気管から噴出された燃焼用空気は、炉本体内で反転したのち、燃焼排ガスとして燃焼排ガス排出口内に流れ込む。このとき、燃焼排ガスは、散気管から噴出された新鮮な燃焼用空気と、あるいは更に助燃バーナから噴出された火炎とを受けて燃焼される。これにより、該燃焼排ガス中に含まれている有害物質(例:ダイオキシン類、有煙ガス成分)の量を大幅に低減できる。
【0020】
さらに、助燃バーナから噴出される火炎の噴出方向が散気管から噴出される燃焼用空気の噴出方向と略同じ方向であるから、火炎は燃焼用空気の流れに沿って進むようになる。したがって、火炎は燃焼用空気の噴出流圧で乱されないで被焼却物に向けて噴出されるとともに、燃焼用空気は火炎の噴出流圧で乱されないで被焼却物に向けて噴出される。これにより、被焼却物が効率良く燃焼される。
【0021】
さらに、炉本体は、円筒状に形成されるとともに、横向きに配置されている。したがって、炉本体の内部には角隅部が存在しない。そのため、炉本体内の被焼却物の表面上に堆積した焼却灰を、散気管から噴出された燃焼用空気の噴出流圧によって、被焼却物の表面全体に亘って確実に吹き飛ばすことができる。これにより、被焼却物の表面全体が燃焼用空気と接触するようになるため、炉本体内に未燃物が残存しなくなり、もって被焼却物を効率良く焼却できる。
【0022】
さらに、焼却炉は、回転駆動装置によって炉本体がその軸を中心に一方向回転又は揺動回転可能に構成されている。したがって、炉本体内の被焼却物から発生した燃焼排ガスの熱で加熱された炉本体の天井部が、炉本体の回転に伴い被焼却物の下側に移動して床部となるので、被焼却物はこの床部の熱で迅速に乾燥され燃焼される。そのため、被焼却物が例えば水分を多く含んだものであっても、これを効率良く焼却できる。
【0023】
特に、炉本体が揺動回転可能に構成されている場合には、焼却時に炉本体を揺動回転させることで、炉本体内の被焼却物を該炉本体の直径方向中央位置に確実に寄せる集めることができる。炉本体内におけるこの位置は、炉本体内において被焼却物を最も効率良く燃焼可能な位置であるから、被焼却物を更に効率良く焼却できる。
【0024】
さらに、回転駆動装置は炉本体の回転速度を制御可能なものなので、被焼却物の種類に応じて炉本体の回転速度を調節することができ、もって様々な被焼却物を確実に効率良く焼却できる。
【0025】
さらに、焼却炉は、被焼却物を炉本体内に該炉本体の他端部に向かう方向に押し込む被焼却物押し込み装置を備えている。したがって、被焼却物として、水分を多く含んでいる被焼却物や、重量物を含んでいる被焼却物を、炉本体の他端部に向かって確実に押し込むことができる。これにより、水分を多く含んでいる被焼却物を効率良く燃焼できるし、重量物を確実に排出できる。
【0026】
[2]の発明では、炉本体は、その内径が該炉本体の一端部から他端部に向かう方向において漸次増大している。したがって、炉本体内の被焼却物が重力の作用によって炉本体の他端部に向かって該炉本体の床部上を滑って移動する。これにより、重量物を更に確実に排出できる。
【0027】
[3]の発明では、散気管は炉本体の他端側に配置された後側壁部に、該後側壁部の外面側から取り外し可能に設置されているので、散気管のメンテナンスやその交換を行う際に、散気管をその設置場所から容易に取り外すことができる。
【0028】
さらに、この散気管に助燃バーナが付設されているので、散気管の取外しを行うことにより、助燃バーナを散気管と一緒に取り外すことができる。そのため、助燃バーナのメンテナンスやその交換を行う際に、助燃バーナをその設置場所から容易に取り外すことができる。
【0029】
[4]の発明では、助燃バーナは散気管内に配置されているので、散気管内を流れる燃焼用空気によって助燃バーナを冷却できる。そのため、助燃バーナの熱損傷を防止できる。
【0030】
[5]の発明では、焼却炉は、燃焼用空気を燃焼排ガスの熱で予め加熱する予熱装置を備えているので、炉本体内に燃焼用空気が噴出されることにより生じることのある炉本体内の温度の低下を抑制でき。もって燃料の消費を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に、本発明の一実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0032】
本実施形態の焼却炉(100)は、刈芝、刈草、剪定木枝、落ち葉、食品廃棄物、廃紙、布屑、合成樹脂廃棄物、高分子廃棄物、汚泥、廃液(例:廃油、廃水)、動物の死骸、家庭用ゴミなどの様々な被焼却物(70)を焼却するものである。
【0033】
この焼却炉(100)は、一次燃焼炉(1)と、回転駆動装置(15)と、被焼却物押し込み装置(10)と、散気管(20)と、助燃バーナ(25)と、一次燃焼用排出口としての共用排出口(8)と、二次燃焼炉(30)とを備えている。
【0034】
一次燃焼炉(1)は、該一次燃焼炉(1)の胴部として炉本体(一次燃焼炉本体)(2)を備えるとともに、この炉本体(2)の内部において被焼却物(70)を燃焼(一次燃焼)して焼却するものである。この炉本体(2)は円筒状であり、詳述すると円錐台筒状である。したがって、この炉本体(2)は、その内径が該炉本体(2)の一端部(前端部)から他端部(後端部)に向かう方向において漸次増大している。
【0035】
この炉本体(2)は、横向きに配置されるとともに、その軸を中心に回転可能に支持されている。本実施形態では、炉本体(2)の軸が水平になるように炉本体(2)が配置されている。(4)は、炉本体(2)の一端側に配置された、一次燃焼炉(1)の前側壁部である。この前側壁部(4)によって炉本体(2)の一端部が回転自在に支持されている。(6)は、炉本体(2)の他端部を回転自在に支持した後支持部である。また、炉本体(2)の他端側には一次燃焼炉(1)(即ち焼却炉(100))の後側壁部(5)が配置されており、すなわち、一次燃焼炉(1)の他端部に後側壁部(5)が配置されている。(17)は、炉本体(2)を支持する複数個(同図では2個)の回転自在な支持ローラである。
【0036】
炉本体(2)の一端部には、断面円形状の被焼却物供給口(3)が設けられている。詳述すると、この被焼却物供給口(3)は、一次燃焼炉(1)の前側壁部(4)をその厚さ方向に貫通して設けられている。
【0037】
回転駆動装置(15)は、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)をその軸を中心に一方向回転させるか、あるいは揺動回転(即ち正逆回転)させるものである。この回転駆動装置(15)は、例えば、回転駆動可能なピニオンギヤ(図示)を有している。そして、このピニオンギヤが、炉本体(2)の外周面に固着された環状のラック(図示せず)に噛合した状態で、一方向に回転駆動したり、あるいは一方向と他方向(即ち正方向と逆方向)に所定時間毎に交互に回転駆動したりすることにより、炉本体(2)を一方向回転させたり、あるいは揺動回転させたりするように構成されている。さらに、この回転駆動装置(15)は、炉本体(2)の回転速度を制御可能なものであり、炉本体(2)の回転速度を制御する回転速度制御装置(16)を有している。
【0038】
被焼却物押し込み装置(10)は、炉本体(2)(一次燃焼炉(1))の被焼却物供給口(3)を通じて被焼却物(70)を炉本体(2)内に該炉本体(2)の他端部に向かう方向に押し込むものである。この押し込み装置(10)は、炉本体(2)の一端側、即ち被焼却物供給口(3)側に設置されている。この押し込み装置(10)は、ホッパ(13)と、ホッパ(13)内に投入された被焼却物(70)を炉本体(2)内に押す棒状の押し部材(11)とを備えている。この押し部材(11)の断面形状は被焼却物供給口(3)の断面形状と同じであり、さらに、この押し部材(11)の断面積は被焼却物供給口(3)の断面積と同じ大きさである。したがって、押し部材(11)が被焼却物(70)を炉本体(2)内に押し込むために被焼却物供給口(3)を通じて炉本体(2)内へ突出移動された状態のもとで、被焼却物供給口(3)が押し部材(11)により閉塞されるものとなされている。なお、(12)は、押し部材(11)を移動させるための駆動源である。この駆動源(12)は油圧シリンダなどから構成されている。
【0039】
なお本実施形態は、被焼却物押し込み装置(10)は、押し部材(11)を有するプッシャ式のものであるが、本発明では、その他に、例えばスクリュー式のものであっても良いし、その他の構造のものであっても良い。
【0040】
また本発明では、被焼却物押し込み装置(10)のホッパ(13)と一次燃焼炉(1)の前側壁部(4)との間に、被焼却物供給口(3)を閉塞する開閉自在なゲート(図示せず)が設置されていても良い。
【0041】
散気管(20)は、炉本体(2)内の被焼却物(70)に向けて一次燃焼用空気(A1)を、被焼却物押し込み装置(10)による被焼却物(70)の押し込み方向に対して対向する方向に噴出するものである。
【0042】
この散気管(20)は、炉本体(2)の他端側に設置されており、詳述すると、一次燃焼炉(1)の後側壁部(5)の下部に、該後側壁部(5)の外面側から取り外し可能に設置されている。すなわち、後側壁部(5)の下部には、散気管(20)を嵌め込む嵌込み孔(5a)が後側壁部(5)をその厚さ方向に貫通して設けられている。そして、この嵌込み孔(5a)内に散気管(20)が後側壁部(5)の外面側から着脱自在にぴったりと嵌め込まれることにより、散気管(20)が後側壁部(5)に設置されている。一方、散気管(20)を嵌込み孔(5a)内から取り出すことにより、散気管(20)を設置場所から取り外すことができるように構成されている。
【0043】
散気管(20)の周面における、被焼却物(70)側に向いた面、即ち一次燃焼炉(1)の内部に向いた面には、複数個(詳述すると多数個)の一次燃焼用空気噴出口(21)が分散して設けられている。図2に示すように、一次燃焼用空気(A1)は、これらの噴出口(21)から被焼却物(70)に向かって、被焼却物(70)の押し込み方向に対向する方向に、散気管(20)を中心とした平面視扇形状に噴出される。これらの噴出口(21)から噴出される一次燃焼用空気(A1)の水平面内での広がり角は、例えば20〜100°(好ましくは40〜80°)で範囲内に設定される。ただし本発明では、一次燃焼用空気(A1)の水平面内での広がり角は上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0044】
助燃バーナ(25)は、炉本体(2)内の被焼却物(70)に向けて火炎(C1)を噴出することにより、被焼却物(70)の助燃を行うものである。この助燃バーナ(25)の火炎(C1)の噴出方向は、被焼却物押し込み装置(10)による被焼却物(70)の押し込み方向に対向する方向であり、すなわち、散気管(20)から噴出される一次燃焼用空気(A1)の噴出方向と同じ方向である。この助燃バーナ(25)はその助燃用燃料に点火する点火手段(図示せず)を有している。
【0045】
この助燃バーナ(25)は、炉本体(2)の他端側における散気管(20)設置位置近傍に設置されている。具体的に示すと、助燃バーナ(25)は散気管(20)に付設されており、詳述すると、助燃バーナ(25)は、散気管(20)の内部に、該散気管(20)と一体化されて配置されている。そして、散気管(20)を上述したようにその設置位置から取り外すことによって、助燃バーナ(25)が散気管(20)と一緒に設置位置から取り外されるものとなされている。
【0046】
共用排出口(8)は、炉本体(2)内の被焼却物(70)の燃焼により生じた一次燃焼排ガス(B1)と、炉本体(2)内の被焼却物(70)の燃焼により生じた焼却灰(71)とを共に炉本体(2)(即ち一次燃焼炉(1))内から二次燃焼炉(30)へ排出するものである。すなわち、この共用排出口(8)は、一次燃焼排ガス排出口として機能する上、更に焼却灰排出口としても機能している。
【0047】
この共用排出口(8)は、炉本体(2)の他端側(後端側)における散気管(20)及び助燃バーナ(25)設置位置近傍に局部的に設けられている。詳述すると、この共用排出口(8)は、一次燃焼炉(1)の水平状の後端炉床部(7)における、散気管(20)及び助燃バーナ(25)設置位置の直下位置に局部的に開口して設けられている。この後端炉床部(7)の上面は共用排出口(8)に向かう方向において下り勾配の傾斜面に形成されている。これにより、後端炉床部(7)の上面上に移動してきた焼却灰(71)は、共用排出口(8)に向かって誘導されたのち共用排出口(8)から下方向に落下される。
【0048】
さらに、この焼却炉(100)は、共用排出口(8)から下方に真っ直ぐに延びた、一次燃焼排ガス(B1)と焼却灰(71)とが共に通る共用排出通路(9)を備えている。すなわち、この共用排出通路(9)は、共用排出口(8)から排出された一次燃焼排ガス(B1)が通る一次燃焼排ガス排出通路として機能する上、更に、共用排出口(8)から排出された焼却灰(71)が通る焼却灰排出通路としても機能している。
【0049】
二次燃焼炉(30)は、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)の下側に、共用排出通路(9)と連通して設置されている。詳述すると、この共用排出通路(9)は、共用排出口(8)から二次燃焼炉(30)の天井部に該二次燃焼炉(30)と連通状態に延びている。
【0050】
この二次燃焼炉(30)は、共用排出口(8)から共用排出通路(9)を通じて下方向に二次燃焼炉(30)内に排出された一次燃焼排ガス(B1)を二次燃焼するとともに、更に、共用排出口(8)から共用排出通路(9)を通じて排出された焼却灰(71)を溶融状態に加熱するものである。すなわち、この二次燃焼炉(30)は、その内部温度が例えば1300℃以上になるように構成されており、これにより二次燃焼炉兼溶融炉としても機能するものとなされている。なお、図1において、(32)は、焼却灰(71)又は焼却灰(71)が溶融した溶融物(72)を収容する収容部である。この収容部(32)は二次燃焼炉(30)の下側に設置されている。
【0051】
二次燃焼炉(30)は、二次燃焼用散気管(40)と、二次燃焼バーナ(45)とを備えている。
【0052】
二次燃焼用散気管(40)は、共用排出通路(9)を通じて二次燃焼炉(30)内に上から下方向に排出された一次燃焼排出ガス(B1)及び焼却灰(71)に向けて、二次燃焼用空気(A2)を水平方向に噴出するものである。
【0053】
この二次燃焼用散気管(40)は、二次燃焼炉(30)の側壁部(31)に、該側壁部(31)の外面側から取り外し可能に設置されている。すなわち、二次燃焼炉(30)の側壁部(31)には、二次燃焼用散気管(40)を嵌め込む嵌込み孔(31a)が側壁部(31)をその厚さ方向に貫通して設けられている。そして、この嵌込み孔(31a)内に二次燃焼用散気管(40)が、側壁部(31)の外面側から着脱自在にぴったりと嵌め込まれることにより、二次燃焼用散気管(40)が側壁部(31)に設置されている。 一方、二次燃焼用散気管(40)を嵌込み孔(31a)内から取り出すことにより、二次燃焼用散気管(40)を設置場所から取り外すことができるように構成されている。
【0054】
二次燃焼用散気管(40)の周面における、二次燃焼炉(30)の内部に向いた面には、複数個(詳述すると多数個)の二次燃焼用空気噴出口(41)が分散して設けられている。二次燃焼用空気(A2)は、これらの噴出口(41)から二次燃焼用散気管(40)を中心とした平面視扇形状に噴出される。これらの噴出口(41)から噴出される二次燃焼用空気(A2)の水平面内での広がり角は、例えば20〜100°(好ましくは40〜80°)で範囲内に設定される。ただし本発明では、二次燃焼用空気(A2)の水平面内での広がり角は上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0055】
二次燃焼バーナ(45)は、共用排出通路(9)を通じて二次燃焼炉(30)内に上から下方向へ排出された一次燃焼排出ガス(B1)及び焼却灰(71)に向けて、火炎(C2)を水平方向に噴出するものである。この二次燃焼バーナ(45)の火炎(C2)の噴出方向は、二次燃焼用散気管(40)から噴出される二次燃焼用空気(A2)の噴出方向と同じ方向である。この二次燃焼バーナ(45)はその燃料に点火する点火手段(図示せず)を有している。
【0056】
この二次燃焼バーナ(45)は二次燃焼用散気管(40)に付設されており、詳述すると、二次燃焼バーナ(45)は、二次燃焼用散気管(40)の内部に、該二次燃焼用散気管(40)と一体化されて配置されている。そして、二次燃焼用散気管(40)を上述したようにその設置位置から取り外すことによって、二次燃焼バーナ(45)が二次燃焼用散気管(40)と一緒に設置位置から取り外されるものとなされている。
【0057】
(34)は、二次燃焼炉(30)から排出された二次燃焼排ガス(B2)が通過する二次燃焼排ガス排出通路である。この排出通路(34)と二次燃焼炉(30)内部との境界位置には、二次燃焼排ガス(B2)の流れに対する邪魔板(33)が配置されている。
【0058】
さらに、この焼却炉(100)は、集塵装置(50)と、捕集煤塵供給装置(55)と、予熱装置(51)と、燃焼用空気供給装置(52)と、冷却塔(53)とを備えている。
【0059】
集塵装置(50)は、二次燃焼炉(30)から排出された二燃焼排ガス(B2)中に含まれる飛灰等の煤塵を捕集するものである。この集塵装置(50)は、サイクロン式のものであり、本実施形態では、複数のサイクロンを有している。また、この集塵装置(50)は例えば耐火材により形成されている。(50a)は、二次燃焼炉(30)から排出された二次燃焼排ガス(B2)を集塵装置(50)に導入する導入管である。
【0060】
捕集煤塵供給装置(55)は、集塵装置(50)で捕集された捕集煤塵を二次燃焼炉(30)内に供給するものである。この捕集煤塵供給装置(55)は、集塵装置(50)で捕集された煤塵を集塵装置(50)から二次燃焼炉(30)に搬送するパイプコンベヤ、ベルトコンベヤなどの様々なコンベヤからなる搬送装置(56)を有している。そして、この捕集煤塵供給装置(55)は、搬送装置(56)により集塵装置(50)から二次燃焼炉(30)に搬送された煤塵を二次燃焼炉(30)内に供給するように構成されている。
【0061】
燃焼用空気供給装置(52)は、新鮮な外部空気を、一次燃焼用空気(A1)や二次燃焼用空気(A2)などの燃焼用空気として予熱装置(51)に供給するものであり、例えばブロアにより構成されている。(52a)は、新鮮な外部空気を燃焼用空気供給装置(52)から予熱装置(51)に導入する導入管である。
【0062】
予熱装置(51)は、燃焼用空気供給装置(52)により予熱装置(51)に供給された一次燃焼用空気(A1)や二次燃焼用空気(A2)などの燃焼用空気を、二次燃焼炉(30)から排出された二次燃焼排ガス(B2)の熱で予め加熱するものである。本実施形態では、予熱装置(51)は、集塵装置(50)を通過し該集塵装置(50)により煤塵が捕集除去された二次燃焼排ガス(B2)の熱で、一次燃焼用空気(A1)や二次燃焼用空気(A2)などの燃焼用空気を予め加熱するように構成されている。(51a)は、集塵装置(50)を通過した二次燃焼排ガス(B2)を予熱装置(51)に導入する導入管であり、(51b)は、該導入管(51a)内を流れる二次燃焼排ガス(B2)の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサである。
【0063】
予熱装置(51)により予め加熱された燃焼用空気は、燃焼用空気供給管(51c)内を通って散気管(20)と二次燃焼用散気管(40)と後述する二次燃焼用空気補給装置(65)とにそれぞれ供給される。(51d)は、この供給管(51c)内を流れる燃焼用空気の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサである。
【0064】
冷却塔(53)は、予熱装置(51)を通過した二次燃焼排ガス(B2)を冷却するものである。本実施形態では、冷却塔(53)は例えば水冷式のものである。(53a)は、予熱装置(51)を通過した二次燃焼排ガス(B2)を冷却塔(53)に導入する導入管である。
【0065】
なお、図1において、(60)は、助燃バーナ(25)用燃料と二次燃焼バーナ(45)用燃料を貯留する燃料タンクである。(61)は、燃料タンク(60)内の燃料をそれぞれ助燃バーナ(25)及び二次燃焼バーナ(45)に搬送する燃料搬送管である。この各燃料搬送管(61)には燃料搬送ポンプ(61a)が介設されている。
【0066】
(65)は二次燃焼用空気補給装置である。この補給装置(65)は、二次燃焼炉(30)から排出された二次燃焼排ガス(B2)中の酸素濃度に基づいて、二次燃焼用空気を二次燃焼炉(30)(又は共用排出通路(9))内に補給するものである。この補給装置(65)は、酸素濃度検出センサ(65a)と、二次燃焼炉(30)内に二次燃焼用空気を噴出供給するノズル(65c)と、該ノズル(65c)から噴出される二次燃焼用空気の噴出量を調節する電動バルブ(65b)とを有している。そして、この補給装置(65)は、二次燃焼排ガス排出通路(34)内を通過する二次燃焼排ガス(B2)中の酸素濃度が酸素濃度検出センサ(65a)により検出されるとともに、このセンサ(65a)により検出された酸素濃度に基づいて電動バルブ(65b)が開閉動作し、これにより、ノズル(65c)から噴出される二次燃焼用空気の噴出量が自動調節されるように構成されている。
【0067】
(66a)は、散気管(20)に供給される一次燃焼用空気(A1)の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサであり、(66b)は、該一次燃焼用空気(A1)の噴出量を調節するバルブである。
【0068】
(67a)は、二次燃焼用散気管(40)に供給する二次燃焼用空気(A2)の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサであり、(67b)は、該二次燃焼用空気(A2)の噴出量を調節するバルブである。
【0069】
(68)は、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)内の温度及び圧力を検出する温度・圧力センサである。
【0070】
次に、本実施形態の焼却炉(100)の動作を以下に説明する。
【0071】
まず、回転駆動装置(15)を作動させることにより、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)をその軸を中心に所定の回転速度で一方向回転又は揺動回転させる。炉本体(2)の回転速度は、被焼却物(70)の種類に応じて様々に設定されるものである。炉本体(2)の回転速度の望ましい範囲は、次のとおりである。すなわち、炉本体(2)を一方向回転させる場合には、炉本体(2)の回転速度は例えば12〜120h-1の範囲に設定されるのが望ましい。一方、炉本体(2)を揺動回転させる場合には、炉本体(2)の回転速度(詳述すると揺動回転角速度)は、例えば−180°〜+180°(即ち、−πrad〜+πrad)の揺動回転角度範囲内において4320〜43200°/hの範囲に設定されるのが望ましい。ただし本発明では、炉本体(2)の回転速度は上記の範囲内であることに限定されるものではない。なお、炉本体(2)の回転速度は、回転駆動装置(15)の回転速度制御装置(16)により制御できる。
【0072】
次いで、被焼却物(70)をホッパ(13)内に投入する。そして、被焼却物押し込み装置(10)の駆動源(12)を作動させることにより、該押し込み装置(10)の押し部材(11)を一次燃焼炉(1)の炉本体(2)内に向かって前進させる。これにより、被焼却物(70)が被焼却物供給口(3)を通じて炉本体(2)内に該炉本体(2)の他端部(即ち後端部)に向かう方向に所定の速度で押し込まれていく。なお、被焼却物(70)の押し込み速度は、被焼却物(70)の種類に応じて様々に設定されるものであり、例えば0.1〜2m/hの範囲に設定される。ただし本発明では、被焼却物(70)の押し込み速度は上記の範囲内であることに限定されるものではない。
【0073】
こうして被焼却物(70)を炉本体(2)内に押し込みながら、炉本体(2)内の被焼却物(70)に向けて散気管(20)から一次燃焼用空気(A1)を、被焼却物押し込み装置(10)による被焼却物(70)の押し込み方向に対して対向する方向に噴出する。さらに、助燃バーナ(25)の助燃用燃料に点火し、次いで炉本体(2)内の被焼却物(70)に向けて助燃バーナ(25)から火炎(C1)を、被焼却物押し込み装置(10)による被焼却物(70)の押し込み方向に対して対向する方向、すなわち散気管(20)から噴出された一次燃焼用空気(A1)の噴出方向と同じ方向に噴出する。
【0074】
すると、火炎(C1)と一次燃焼用空気(A1)とを受けて被焼却物(70)が燃焼され、これにより該被焼却物(70)の助燃が行われる。そして、被焼却物(70)が自燃可能な温度(例えば約800°)に到達すると、助燃バーナ(25)から噴出される火炎(C1)を消す。これ以後は、散気管(20)から一次燃焼用空気(A1)を噴出させた状態のままで、被焼却物(70)を燃焼(自燃)させる。被焼却物(70)の燃焼により生じた一次燃焼排ガス(B1)は、炉本体(2)内で上昇する。これにより、炉本体(2)の天井部(2a)が一次燃焼排ガス(B1)の熱で加熱される。
【0075】
また、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)内で被焼却物(70)を燃焼させる前に、又はその途中で、二次燃焼炉(30)の二次燃焼用散気管(40)から二次燃焼用空気(A2)を噴出する。さらに、二次燃焼バーナ(45)から火炎(C2)を、二次燃焼用散気管(40)から噴出された二次燃焼用空気(A2)の噴出方向と同じ方向に噴出する。
【0076】
一次燃焼炉(1)の炉本体(2)内では、散気管(20)から噴出された一次燃焼用空気(A1)は、被焼却物(70)に向けて吹き付けられて被焼却物(70)の燃焼を生じさせる。その結果、一次燃焼用空気(A1)が、被焼却物(70)の燃焼により生じた一次燃焼排ガス(B1)となる。さらに、一次燃焼用空気(A1)の噴出流圧によって、被焼却物(70)の表面上に堆積した焼却灰が被焼却物(70)の表面全体に亘って吹き飛ばされる。その後、一次燃焼排ガス(B1)は、吹き飛ばされた焼却灰と一緒に被焼却物供給口(3)に向かって流れようとするが、該被焼却物供給口(3)が被焼却物押し込み装置(10)の押し部材(11)によって閉塞されているので行き場がない。その結果、一次燃焼排ガス(B1)がその噴出方向とは反対の方向に向きを変える(即ち反転する)。そして、この一次燃焼排ガス(B1)は、炉本体(2)の天井部(2a)に沿って流れたのち、後側壁部(5)に沿って下方に流れる。そして最終的に、この一次燃焼排ガス(B1)が共用排出口(一次燃焼排ガス排出口)(8)内に流れ込む。
【0077】
ここで、この共用排出口(8)は、上述したように炉本体(2)の他端側における散気管(20)及び助燃バーナ(25)設置位置近傍に設けられており、詳述すると、散気管(20)及び助燃バーナ(25)設置位置の直下位置に設けられている。したがって、この共用排出口(8)に向かって流れる一次燃焼排ガス(B1)は、その略全部が、共用排出口(8)内に流れ込む直前で、散気管(20)から噴出された新鮮な一次燃焼用空気(A1)を直近位置で受けて、あるいは更に助燃バーナ(25)から噴出された火炎(C1)を直近位置で受けて燃焼される。これにより、一次燃焼排ガス(B1)中に含まれている有害物質(例:ダイオキシン類、有煙ガス成分)の量が低減される。
【0078】
さらに、炉本体(2)内で被焼却物(70)の燃焼により生じた焼却灰(71)は、被焼却物押し込み装置(10)による被焼却物(70)の押し込み動作に伴い、共用排出口(8)に向かって徐々に移動していき、最終的に共用排出口(8)内へ落下する(即ち共用排出口(8)内に入る)。
【0079】
こうして炉本体(2)内の一次燃焼排ガス(B1)と焼却灰(71)は共に、共用排出口(8)から共用排出通路(9)を通じて二次燃焼炉(30)内にその上から下方向に排出される。そして、一次燃焼排ガス(B1)と焼却灰(71)は共に、二次燃焼炉(30)内において、二次燃焼用散気管(40)から噴出された二次燃焼用空気(A2)と二次燃焼バーナ(45)から噴出された火炎(C2)とを同時に受けて再度、燃焼(二次燃焼)される。これにより、一次燃焼排ガス(B1)中に残存している有害物質の量が更に低減する。こうして有害物質の量が低減した一次燃焼排ガス(B1)は、二次燃焼排ガス(B2)として、邪魔板(33)の隙間を通過したのち、集塵装置(50)に導入される。一方、焼却灰(71)は、該焼却灰(71)中に含まれている未燃物が燃焼されて完全(略完全)に除去されるとともに、二次燃焼炉(30)内で溶融し、溶融物(72)として収容部(32)内に収容される。
【0080】
集塵装置(50)に導入された二次燃焼排ガス(B2)は、集塵装置(50)によって二次燃焼排ガス(B2)中に含まれている飛灰等の煤塵が捕集され、もって二次燃焼排ガス(B2)から煤塵が除去される。
【0081】
次いで、この二次燃焼排ガス(B2)は、集塵装置(50)から予熱装置(51)に導入される。そして、予熱装置(51)によって二次燃焼排ガス(B2)の熱で、燃焼用空気供給装置(52)から予熱装置(51)に供給された燃焼用空気が予め加熱される。加熱された燃焼用空気は、一次燃焼用空気(A1)及び二次燃焼用空気(A2)として、それぞれ散気管(20)及び二次燃焼用散気管(40)に供給され、また必要に応じて二次燃焼用空気補給装置(65)に供給される。
【0082】
次いで、この二次燃焼排ガス(B2)は、予熱装置(51)から冷却塔(53)に導入される。そして、二次燃焼排ガス(B2)が冷却塔(53)により冷却され、その後、バグフィルタ、誘引排風器及び煙突を順次通って外部へ排出される。
【0083】
一方、集塵装置(50)で捕集された飛灰等の煤塵には、集塵装置(50)内部で煤塵が冷却される過程で生成されたダイオキシン類等の有害物質が含まれている。この有害物質を除去するため、集塵装置(50)で捕集された煤塵は、捕集煤塵供給装置(55)の搬送装置(56)により集塵装置(50)から二次燃焼炉(30)に搬送される。そして、搬送された煤塵が捕集煤塵供給装置(55)により二次燃焼炉(30)内に供給される。これにより、煤塵が二次燃焼炉(30)内で燃焼され、その結果、煤塵中に含まれている有害物質(ダイオキシン類等)の量が大幅に低減されるとともに、煤塵は溶融し、溶融物(72)として収容部(32)内に収容される。
【0084】
而して、上記焼却炉(100)には次の利点がある。
【0085】
この焼却炉(100)では、散気管(20)から噴出された一次燃焼用空気(A1)は、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)内で反転したのち、一次燃焼排ガス(B1)として共用排出口(一次燃焼排ガス排出口)(8)内に流れ込る。このとき、一次燃焼排ガス(B1)は、共用排出口(8)内に流れ込む直前で、散気管(20)から噴出された新鮮な一次燃焼用空気(A1)と、あるいは更に助燃バーナ(25)から噴出された火炎(C1)とを受けて燃焼される。これにより、該一次燃焼排ガス(B1)中に含まれているダイオキシン類等の有害物質の量を大幅に低減できる。
【0086】
さらに、助燃バーナ(25)から噴出される火炎(C1)の噴出方向が散気管(20)から噴出される一次燃焼用空気(A1)の噴出方向と同じ方向であるから、火炎(C1)は一次燃焼用空気(A1)の流れに沿って進むようになる。したがって、火炎(C1)は一次燃焼用空気(A1)の噴出流圧で乱されることなく被焼却物(70)に向けて噴出されるとともに、一次燃焼用空気(A1)は火炎(C1)の噴出流圧で乱されることなく被焼却物(70)に向けて噴出される。これにより、被焼却物(70)が効率良く燃焼される。
【0087】
さらに、炉本体(2)は、円筒状に形成されるとともに、横向きに配置されている。したがって、炉本体(2)の内部には角隅部が存在しない。そのため、炉本体(2)内の被焼却物(70)の表面上に堆積した焼却灰を、散気管(20)から噴出された一次燃焼用空気(A1)の噴出流圧によって、被焼却物(70)の表面全体に亘って確実に吹き飛ばすことができる。これにより、被焼却物(70)の表面全体が一次燃焼用空気(A1)と接触するようになるため、炉本体(2)内に未燃物が残存しなくなり、もって被焼却物(70)を効率良く焼却できる。
【0088】
さらに、焼却炉(100)は、回転駆動装置(15)によって炉本体(2)がその軸を中心に一方向回転又は揺動回転可能に構成されている。したがって、炉本体(2)内の被焼却物(70)から発生した一次燃焼排ガス(B1)の熱で加熱された炉本体(2)の天井部(2a)が、炉本体(2)の回転に伴い被焼却物(70)の下側に移動して床部(2b)となるので、被焼却物(70)はこの床部(2b)の熱で迅速に乾燥され燃焼される。そのため、被焼却物(70)が例えば水分を多く含んだものであっても、これを効率良く焼却できる。
【0089】
特に、炉本体(2)が揺動回転可能に構成されている場合には、焼却時に炉本体(2)を揺動回転させることで、炉本体(2)内の被焼却物(70)を該炉本体(2)の直径方向中央位置に確実に寄せる集めることができる。炉本体(2)内におけるこの位置は、炉本体(2)内において被焼却物(70)を最も効率良く燃焼可能な位置であるから、被焼却物(70)を更に効率良く焼却できる。
【0090】
さらに、回転駆動装置(15)は炉本体(2)の回転速度を制御可能なものなので、被焼却物(70)の種類に応じて炉本体(2)の回転速度を調節することができ、もって様々な被焼却物(70)を確実に効率良く焼却できる。
【0091】
さらに、焼却炉(100)は、被焼却物(70)を炉本体(2)内に該炉本体(2)の他端部に向かう方向に押し込む被焼却物押し込み装置(10)を備えている。したがって、被焼却物(70)として、水分を多く含んでいる被焼却物や、重量物を含んでいる被焼却物を、炉本体(2)の他端部に向かって確実に押し込むことができる。これにより、水分を多く含んでいる被焼却物を効率良く燃焼できるし、重量物を共用排出口(8)に確実に排出できる。
【0092】
また、炉本体(2)は、その内径が該炉本体(2)の一端部から他端部に向かう方向において漸次増大している。したがって、炉本体(2)内の被焼却物(70)が重力の作用によって炉本体(2)の他端部に向かって該炉本体(2)の床部(2b)上を滑って移動する。これにより、重量物を更に確実に共用排出口(8)に排出できる。
【0093】
また、散気管(20)は炉本体(2)の他端側に配置された後側壁部(5)に、該後側壁部(5)の外面側から取り外し可能に設置されているので、散気管(20)のメンテナンスやその交換を行う際に、散気管(20)をその設置場所から容易に取り外すことができる。
【0094】
さらに、この散気管(20)に助燃バーナ(25)が付設されているので、散気管(20)の取外しを行うことにより、助燃バーナ(25)を散気管(20)と一緒に取り外すことができる。そのため、助燃バーナ(25)のメンテナンスやその交換を行う際に、助燃バーナ(25)をその設置場所から容易に取り外すことができる。
【0095】
また、助燃バーナ(25)は散気管(20)内に配置されているので、散気管(20)内を流れる一次燃焼用空気(A1)によって助燃バーナ(25)を冷却できる。そのため、助燃バーナ(25)の熱損傷を防止できる。
【0096】
また、焼却炉(100)は、一次燃焼用空気(A1)を二次燃焼排ガス(B2)の熱で予め加熱する予熱装置(51)を備えているので、炉本体(2)内に一次燃焼用空気(A1)が噴出されることにより生じることのある炉本体(2)内の温度の低下を抑制できる。その結果、炉本体(2)の内部を高温状態に維持でき、もって燃料の消費を低減できる。
【0097】
さらに、一次燃焼炉(1)内の被焼却物(70)の燃焼により生じた一次燃焼排ガス(B1)及び焼却灰(71)を共に排出する共用排出口(一次燃焼排出ガス排出口)(8)は、一次燃焼炉(1)の後側壁部(5)に設けられるのではなく、一次燃焼炉(1)の他端部における散気管(20)及び助燃バーナ(25)設置位置の直下位置に設けられている。したがって、一次燃焼炉(1)内の一次燃焼排ガス(B1)は、その略全部が、共用排出口(8)内に流れ込む直前で、散気管(20)から噴出された新鮮な一次燃焼用空気(A1)と、あるいは更に助燃バーナ(25)から噴出された火炎(C1)とを確実に受ける。これにより、一次燃焼排ガス(B1)中に含まれている有害物質の量を確実に低減できる。
【0098】
さらに、共用排出口(8)は一次燃焼排ガス(B1)と焼却灰(71)を共に排出するものである。したがって、焼却灰(71)が共用排出口(8)から共用排出通路(9)を通じて二次燃焼炉(30)内に排出される途中で、焼却灰(71)が一次燃焼排ガス(B1)の熱で加熱されて高温状態に維持される。すなわち、焼却灰(71)の二次燃焼炉(30)内への排出途中で焼却灰(71)の温度が低下するのを防止でき、これにより、焼却灰(71)中に残存している未燃物を二次燃焼炉(30)内で確実に燃焼できる。
【0099】
さらに、一次燃焼排ガス(B1)を二次燃焼炉(30)によって二次燃焼することにより、一次燃焼排ガス(B1)中に残存している有害物質の量を大幅に低減できる。
【0100】
また、二次燃焼炉(30)は、更に、共用排出通路(9)を通じて排出された焼却灰(71)を溶融状態に加熱するものであることから、焼却灰(71)を二次燃焼炉(30)により溶融できる。
【0101】
また、二次燃焼炉(30)は、二次燃焼用散気管(40)と二次燃焼バーナ(45)を備えているので、一次燃焼排ガス(B1)中に残存している有害物質の量を確実に大幅に低減できる。
【0102】
さらに、二次燃焼バーナ(45)から噴出される火炎(C2)の噴出方向が二次燃焼用散気管(40)から噴出される二次燃焼用空気(A2)の噴出方向と同じ方向であるから、火炎(C2)は二次燃焼用空気(A2)の流れに沿って進むようになる。したがって、火炎(C2)は二次燃焼用空気(A2)の噴出流圧で乱されることなく一次燃焼排ガス(B1)及び焼却灰(71)に向けて噴出されるとともに、二次燃焼用空気(A2)は火炎(C2)の噴出流圧で乱されることなく一次燃焼排ガス(B1)及び焼却灰(71)に向けて噴出される。これにより、一次燃焼排ガス(B1)中に残存している有害物質の量を更に確実に大幅に低減できるし、焼却灰(71)中に残存している未燃物を確実に燃焼できる。
【0103】
また、二次燃焼用散気管(40)は二次燃焼炉(30)の側壁部(31)に該側壁部(31)の外面側から取り外し可能に設置されているので、二次燃焼用散気管(40)のメンテナンスやその交換を行う際に、二次燃焼用散気管(40)をその設置場所から容易に取り外すことができる。
【0104】
さらに、この二次燃焼用散気管(40)に二次燃焼バーナ(45)が付設されているので、二次燃焼用散気管(40)の取外しを行うことにより、二次燃焼バーナ(45)を二次燃焼用散気管(40)と一緒に取り外すことができる。そのため、二次燃焼バーナ(45)のメンテナンスやその交換を行う際に、二次燃焼バーナ(45)をその設置場所から容易に取り外すことができる。
【0105】
また、焼却炉(100)は、二次燃焼用空気(A2)を二次燃焼排ガス(B2)の熱で予め加熱する予熱装置(51)を備えているので、二次燃焼炉(30)内に二次燃焼用空気(A2)が噴出されることにより生じることのある二次燃焼炉(30)内の温度の低下を抑制できる。その結果、二次燃焼炉(30)の内部を高温状態に維持でき、もって燃料の消費を低減できる。
【0106】
また、焼却炉(100)は、集塵装置(50)と捕集煤塵供給装置(55)を備えているので、集塵装置(50)で捕集された煤塵を二次燃焼炉(30)により燃焼できる。これにより、煤塵中に含まれている有害物質の量を大幅に低減できる。
【0107】
以上で本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に示したものに限定されるものではなく、様々に設定変更可能である。
【0108】
例えば、本発明では、焼却炉(100)は二次燃焼炉(30)を備えていないものであっても良い。
【0109】
また、本実施形態では、燃焼排ガス排出口(8)は、炉本体(2)の他端側における散気管(20)及び助燃バーナ(25)設置位置の直下位置に設けられているが、本発明では、その他に、例えば、燃焼排ガス排出口(8)は、炉本体(2)の他端側に配置された後側壁部(5)の下部に設けられていても良い。
【0110】
また、本実施形態では、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)は、その軸が水平方向の横向きに配置されているが、本発明では、その他に、例えば、一次燃焼炉(1)の炉本体(2)は、その軸が水平方向に対して傾斜した状態の横向きに配置されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、刈芝、刈草、剪定木枝、落ち葉、食品廃棄物、廃紙、布屑、合成樹脂廃棄物、高分子廃棄物、汚泥、廃液(例:廃油、廃水)、動物の死骸、家庭用ゴミなどの様々な被焼却物を焼却する焼却炉に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る焼却炉の概略縦断面図である。
【図2】図2は、同焼却炉の概略水平断面図である。
【符号の説明】
【0113】
100…焼却炉
1…一次燃焼炉
2…炉本体
3…被焼却物供給口
5…後側壁部
8…共用排出口(一次燃焼排ガス排出口)
9…共用排出通路
10…被焼却物押し込み装置
11…押し部材
15…回転駆動装置
16…回転速度制御装置
20…散気管
25…助燃バーナ
30…二次燃焼炉
31…側壁部
40…二次燃焼用散気管
45…二次燃焼バーナ
50…集塵装置
51…予熱装置
52…燃焼用空気供給装置
53…冷却塔
55…捕集煤塵供給装置
70…被焼却物
71…焼却灰
72…溶融物
A1…一次燃焼用空気
A2…二次燃焼用空気
B1…一次燃焼排ガス
B2…二次燃焼排ガス
C1…火炎
C2…火炎

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体(2)と、
炉本体の一端部に設けられた被焼却物供給口(3)を通じて被焼却物(70)を炉本体内に該炉本体の他端部に向かう方向に押し込む被焼却物押し込み装置(10)と、
炉本体の他端側に設置され、炉本体内の被焼却物に向けて燃焼用空気(A1)を、被焼却物押し込み装置による被焼却物の押し込み方向に対して略対向する方向に噴出する散気管(20)と、
炉本体の他端側における散気管設置位置近傍に設置され、炉本体内の被焼却物に向けて火炎(C1)を、散気管から噴出される燃焼用空気の噴出方向と略同じ方向に噴出する助燃バーナ(25)と、
炉本体の他端側における散気管及び助燃バーナ設置位置近傍に設けられ、炉本体内の燃焼排ガス(B1)を排出する燃焼排ガス排出口(8)と、
を備えた焼却炉(100)であって、
炉本体(2)は、円筒状に形成されるとともに、横向きに設置され、且つ、軸を中心に回転自在に支持されており、
炉本体の回転速度を制御可能な回転駆動装置(15)によって炉本体がその軸を中心に一方向回転又は揺動回転可能に構成されていることを特徴とする焼却炉。
【請求項2】
炉本体(2)は、その内径が該炉本体の一端部から他端部に向かう方向において漸次増大している請求項1記載の焼却炉。
【請求項3】
散気管(20)は、炉本体の他端側に配置された後側壁部(5)に、該後側壁部の外面側から取り外し可能に設置されるとともに、
散気管に助燃バーナ(25)が付設されている請求項1又は2記載の焼却炉。
【請求項4】
助燃バーナ(25)が散気管(20)内に配置されている請求項3記載の焼却炉。
【請求項5】
燃焼用空気(A1)を燃焼排ガス(B2)の熱で予め加熱する予熱装置(51)を備えている請求項1〜4のいずれかに記載の焼却炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−2691(P2008−2691A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169579(P2006−169579)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(393002210)
【出願人】(506211986)
【Fターム(参考)】