説明

焼却設備及びその運転方法

【課題】焼却炉の燃焼室冷却方式に空冷壁を採用した際に、空冷壁通過後の温風を有効利用し、ごみ質に応じた燃焼を可能にする焼却設備及びその運転方法を提供する。
【解決手段】焼却設備1は、焼却炉2と、該焼却炉の炉壁に設けられた空冷壁3と、前記空冷壁冷却後の温風を一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する分配供給手段と、を備える焼却設備を提供する。焼却設備の運転方法は、焼却物の発熱量を検出し、前記空冷壁冷却後の温風を、検出した焼却物の発熱量に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却設備及びその運転方法に係り、詳しくは、空冷壁方式の焼却炉を備える焼却設備及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却炉の炉体を冷却する方法として、水冷壁方式と空冷壁方式とが知られている。
【0003】
近年では、廃熱回収率を向上させるため、水冷方式を採用することが多いが、特に処理量が100(トン/日)程度より小さい中小規模炉においては、燃焼物の発熱量が下がった際または焼却処理負荷率が下がった際に、排ガス温度が低下してダイオキシン対策のための排ガス条件(二次燃焼室にて850℃以上、2秒滞留)を維持できなくなるため、助燃材(灯油やガス等)を多く使用して、排ガス温度を上げる必要があった。この課題は、焼却炉の一次燃焼室を水冷壁ではなく耐火物構造として空冷壁を設ける構造とし、吸収熱量を水冷壁方式に比べて低くすることにより、解決できる。
【0004】
空冷壁での冷却を確実に行うため、焼却物の発熱量にかかわらず、空冷壁へは一定量の空気が挿入される。
【0005】
従来、空冷壁を冷却した後の温風は、そのエネルギーを回収することなく大気へ放出されるか若しくは白煙防止用空気の一部として用いられてきた(例えば、特許文献1等)。しかし、空冷壁を冷却した後の温風を白煙防止用空気として用いるかそのまま大気開放したのでは、空冷壁にて回収した熱は、廃熱ボイラで熱回収されず、有効利用されない。
【0006】
そのため、空冷壁を冷却した後の温風を燃焼空気として炉内に挿入する事例も見られる(例えば、特許文献2〜5)。
【0007】
近年の焼却炉は、ごみ質に応じて、発熱量が低い場合は一次燃焼空気の温度を高くし、発熱量が高い場合は一次燃焼空気温度を低くする運転がなされる。ここで、ごみ質とは、ごみの持つ物理的性質及び化学的性質の総称である。ごみの持つ物理的性質には、ごみの種類及び組成、かさ比重、さらに水分、可燃分、灰分のいわゆる3成分などがあり、化学的性質には、元素組成、発熱量などがある。ごみ質の傾向として、例えば、紙、プラスチックが多く、厨芥や不燃物の少ないごみは発熱量が高く、ゴミ中の水分の割合が高いほど発熱量が低い。ごみ質の分析において最も重要なものはごみの発熱量である。
【0008】
ごみ質は、種々の方法によって知得することができる。例えば、特許文献6では、新たにホッパにごみが投入される直前・直後のごみの表面形状を、ホッパ上方に設置される走査型のレーザー式レベル計で検出される距離分布により算出し、この表面距離に基づき投入されたごみの容積を算出するとともに、この算出されたごみの容積とホッパ内に投入されるごみの重量とに基づき、新たに投入されるごみ比重・熱量を算出し、これらのデータを投入毎に分類して記憶し、これらのデータに基づき供給熱量を算出する。
【0009】
また、例えば、特許文献7では、焼却炉のホッパ内に投入されるごみの重量と、ホッパ内に貯留されている投入直前のごみの総容積と、投入直後の総容積と、ホッパ内部で生じるごみ圧縮によるホッパ内部のごみ移動量と、ホッパへ投入される投入ごみ重量とによりごみ質を推定する。ごみの総容量は、走査型レーザーレベル計を用いることにより算出する。
【0010】
他の方法として、例えば、特許文献8では、火格子の平均温度と通風量から、火格子通過熱量を演算し、火格子通過熱量によって燃焼物の発熱量の増減を把握する。
【0011】
その他、ごみの発熱量を知る方法として、例えば、ボンブ熱量計により発熱量を測定する方法、元素分析(化学成分分析)から各成分の理論発熱量計算により算出する方法、ごみ3成分からの発熱量推算式から算出する方法、等が知られている(非特許文献1等)。
【0012】
しかしながら、空冷壁を冷却した後の温風を燃焼空気として炉内に挿入する従来の事例では、空冷壁出口の空気を単純に一次燃焼空気又は二次燃焼空気として炉内に挿入している。そのため、例えば、高質ごみの燃焼時にはストーカを空冷してストーカの損傷を防止するために一次燃焼空気の温度を低くしたい場合があるが、空冷壁出口の温風を単純に一次燃焼空気として炉内に挿入したのでは、一次燃焼空気の温度が高くなり、温度を下げることが困難となる。また、空冷壁出口の温風を単純に二次燃焼空気として炉内に挿入しているだけでは、発熱量が低い場合に、二次燃焼空気の必要量も減少するため、空冷壁の冷却空気量よりも二次燃焼空気量の方が少なくなり、空冷壁を冷却した後の温風を二次燃焼空気として全量利用できないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000−297918号公報
【特許文献2】特開昭57−10015号公報
【特許文献3】特開昭58−22818号公報
【特許文献4】実公昭60−9559号公報
【特許文献5】実開昭63−190723号公報
【特許文献6】特許第3926173号公報
【特許文献7】特許第3928709号公報
【特許文献8】特許第4448799号公報
【非特許文献1】タクマ環境技術研究会編、「ごみ焼却技術 絵とき基本用語[改訂増補版]」、オーム社、平成15年8月25日、p.54〜p.63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来の問題に鑑みて、焼却炉の燃焼室冷却方式に空冷壁を採用した際に、空冷壁通過後の温風を有効利用し、ごみ質に応じた燃焼を可能にする焼却設備及びその運転方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するため、第1の手段として、焼却炉と、該焼却炉の炉壁に設けられた空冷壁と、前記空冷壁冷却後の温風を一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する分配供給手段と、を備えることを特徴とする焼却設備を提供する。
【0016】
また、本発明は、第2の手段として、上記第1の手段において、前記分配供給手段が、前記焼却炉において焼却される焼却物の発熱量を検出する熱量検出手段と、前記空冷壁冷却後の温風を前記熱量検出手段の検出値に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する制御手段と、を備えることを特徴とする焼却施設を提供する。
【0017】
また、本発明は、第3の手段として、上記第2の手段において、前記制御手段が、前記熱量検出手段の検出値が所定値を越えたときに、前記空冷壁冷却後の温風の二次燃焼空気への分配供給比率が一次燃焼空気への分配供給比率に対して高くなるように制御することを特徴とする焼却設備を提供する。
【0018】
また、本発明は、第4の手段として、上記第2又は第3の手段において、炉外空気取入口と前記焼却炉の一次燃焼空気導入口との間に接続された第1ダクトと、該第1ダクトと前記焼却炉の前記二次燃焼空気導入口との間に接続された第2ダクトと、前記第2ダクト接続位置より下流側の前記第1ダクトに介在された一次送風機と、前記第2ダクトに介在された二次送風機と、を更に備え、前記分配供給手段は、前記空冷壁の温風排気口と前記二次送風機より上流部の前記第2ダクトとの間に接続された温風ダクトを備え、前記制御手段は、該熱量検出手段の検出値に応じて前記一次送風機及び二次送風機の少なくとも一方を制御することを特徴とする焼却設備を提供する。
【0019】
また、本発明は、第5の手段として、上記第4の手段において、前記制御手段が、前記熱量検出手段によって検出された発熱量が所定値以下であるときには、二次送風機の流量<空冷壁冷却後の温風流量<一次送風機の流量の関係(1)によって制御し、発熱量が所定値を超えた時には、空冷壁冷却後の温風流量<二次送風機の流量<一次送風機の流量の関係によって制御することを特徴とする焼却設備を提供する。
【0020】
また、本発明は、第6の手段として、上記第2又は第3の手段において、炉外空気取入口と前記焼却炉の一次燃焼空気導入口との間に接続された第1ダクトと、該第1ダクトと前記焼却炉の前記二次燃焼空気導入口との間に接続された第2ダクトと、前記第2ダクト接続位置より下流側の前記第1ダクトに介在された一次送風機と、前記第2ダクトに介在された二次送風機と、を更に備え、前記分配供給手段は、前記空冷壁冷却後の温風を前記第2ダクト接続位置より下流側の前記第1ダクトに供給する第1温風ダクトと、前記空冷壁冷却後の温風を前記二次送風機より上流部の前記第2ダクトに供給する第2温風ダクトと、前記第1温風ダクトに介在された第1ダンパと、前記第2温風ダクトに介在された第2ダンパと、を備え、前記制御手段は、前記熱量検出手段の検出値に応じて前記第1ダンパ及び第2ダンパの少なくとも一方を制御することを特徴とする焼却設備を提供する。
【0021】
また、本発明は、第7の手段として、上記第1〜第6の手段の何れかにおいて、一次燃焼空気を予熱する一次燃焼空気予熱器を更に備えることが好ましい。
【0022】
また、本発明は、第8の手段として、上記第1〜第7の手段の何れかにおいて、廃熱回収ボイラを更に備えることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、第9の手段として、空冷壁方式の焼却炉を備える焼却設備の運転方法であって、焼却物の発熱量を検出し、前記空冷壁冷却後の温風を、検出した焼却物の発熱量に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給することを特徴とする前記運転方法を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、第10の手段として、上記第9の手段において、前記検出された発熱量が所定値を越えたときに、前記空冷壁冷却後の温風を、一次燃焼空気に優先して二次燃焼空気に分配供給することを特徴とする運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、前記空冷壁冷却後の温風を焼却物のごみ質に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給することができるので、空冷壁通過後の温風を有効利用し、ごみ質に応じた燃焼が可能となる。
【0026】
また、空冷壁冷却後の温風を一次燃焼空気及び二次燃焼空気の少なくとも一方に利用することにより、温風のエネルギーを廃熱ボイラで回収することが可能となり、ボイラ蒸発量が増加し、熱回収率が向上する。
【0027】
また、空冷壁冷却後の温風を一次燃焼空気及び二次燃焼空気の少なくとも一方に利用することにより、一次燃焼空気又は二次燃焼空気を予熱器で予熱する場合に、予熱器において予熱のために用いられる蒸気量を削減することができる。
【0028】
また、空冷壁冷却後の温風を(一次燃焼空気よりも)二次燃焼空気に優先的に供給することにより、高質ごみ時に一次燃焼空気温度を比較的高くすることなく、空冷壁での回収熱を炉内に挿入することができる。
【0029】
また、蒸気タービン駆動式発電機が併設されている焼却炉では、蒸気タービン入口の蒸気量が増加し、発電量が増加する。
【0030】
また、ごみ質に応じ、空冷壁出口の温風を、一次燃焼空気と二次燃焼空気とに分配する比率を制御することにより、効果的に熱回収効果を得ることができる。
【0031】
さらに、空冷壁冷却後の温風を、一次燃焼空気よりも二次燃焼空気に優先して用いる、或いは、ダンパを用いて一次燃焼空気と二次燃焼空気への分配比率を制御することにより、焼却物の発熱量が上昇しても二次燃焼空気を増加するように制御することで、一次燃焼空気に供される温風を減らして一次燃焼空気温度を下げることができ、それにより火格子の損傷を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る焼却設備の第1実施形態を示すシステム図である。
【図2】図1の焼却設備の通常時の運転状態を示すシステム図である。
【図3】図1の焼却設備の高質ゴミ焼却時の運転状態を示すシステム図である。
【図4】本発明に係る焼却設備の第2実施形態を示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の好適な実施形態について、以下に図面を参照して説明する。なお、全図及び全実施形態を通じ、同一及び類似の構成部分には同符号を付して重複説明を省略することがある。
【0034】
図1は、本発明に係る焼却設備の第1実施形態を示すシステム図である。図1に示されているように、焼却設備1は、焼却炉2と、焼却炉2の炉壁に設けられた空冷壁3と、を備えている。
【0035】
図示例の焼却炉2は、代表的なストーカ炉である。焼却炉2は、ごみピット(図示せず。)からホッパ2aを介してごみが供給される。なお、ごみピットは、焼却施設に搬入されたごみを一時的に貯留し、ごみ質を調整しつつホッパ2aから焼却炉2に供給するために設けられる設備である。
【0036】
焼却炉2は、一次燃焼空気導入口2b及び二次燃焼空気導入口2cを備えている。焼却炉2の一次燃焼空気導入口2bに第1ダクト4が接続されて、第1ダクト4は、前記ごみピットに設けられた炉外空気取入口(図示せず。)に接続されている。焼却炉2の二次燃焼空気導入口2cに第2ダクト5が接続され、第2ダクト5は第1ダクト4に接続されている。第1ダクト4には、第2ダクト5の接続位置より下流側の位置に、一次送風機6が介在されている。第2ダクト5には、二次送風機7が介在されている。
【0037】
空冷壁3は、耐火物構造とした焼却炉2の炉壁の燃焼室内部に冷却空気通路(図示せず。)を設けることにより形成され得る。空冷壁3は、冷却空気導入口3aと温風排気口3bとを備えている。空冷壁3の冷却空気導入口3aには第3ダクト8が接続され、第3ダクト8には、空冷壁3に冷却空気を送るための空冷壁用送風機9Fが接続されている。空冷壁3の温風排気口3bには温風ダクト9が接続され、温風ダクト9は二次送風機7より上流部の第2ダクト5に接続されている。
【0038】
焼却設備1は、空冷壁3を冷却した後の温風を、ごみ質に応じて、一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する分配供給手段を備えている。前記分配供給手段は、空冷壁3の温風排気口3bと二次送風機7より上流部の第2ダクト5との間に接続された温風ダクト9を備えている。また、前記分配供給手段は、焼却炉2において焼却される焼却物の発熱量を検出する熱量検出手段と、空冷壁3を冷却した後の温風を前記熱量検出手段の検出値に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する制御手段10と、を備えている。
【0039】
前記熱量検出手段は、焼却物の燃焼時の発熱量を把握するための公知の手段、例えば、上記した特許文献6〜8に開示された手段、或いは、ボンブ熱量計により発熱量を測定する手段、元素分析(化学成分分析)から各成分の理論発熱量計算により算出する手段、ごみ3成分からの発熱量推算式から算出する手段などを用いることができる。図示例では、前記熱量検出手段として、走査型レーザーレベル計11、ごみ搬送クレーン(付図示)に付設された重量計12、回転式ごみ速度計13を用い、これらの計測値から制御手段の演算装置により熱量を演算する手段(特許文献6,7参照)を採用している。
【0040】
一次送風機6は、図外のごみピットから第1ダクト4を通じて誘引した空気を、一次燃焼空気導入口2bを通じて、焼却炉2のストーカ(火格子)下部に供給する。一次燃焼空気は、ストーカ上のごみを一次燃焼(分解燃焼)させる。
【0041】
また、二次送風機7は、第2ダクト5を通じて誘引した空気を、二次燃焼空気導入口2cを通じて、焼却炉2のストーカ上部の二次燃焼(ガス燃焼)室に二次燃焼空気として吹き込む。
【0042】
第1ダクト4には、一次燃焼空気予熱器14を介在させることができる。さらに、必要に応じて、第2ダクト5に、仮想線で図示した二次燃焼空気予熱器15を介在させることもできる。また、この種のストーカ式の焼却炉2は、一般に、排ガスの廃熱を回収するための廃熱回収ボイラ(図示せず。)が付設される。
【0043】
上記構成を有する焼却設備の運転方法の一例について、説明する。
【0044】
図2は、通常運転時、即ち、前記熱量検出手段によって得られた焼却物の発熱量が例えば8400(kJ/kg)以下であるときの運転状態を示している。
【0045】
図2において、ごみピット(付図示)内の温度、即ち、ごみピットの炉外空気取入口(図示せず。)から第1ダクト4に誘引される空気の温度は20℃である。各機器は、以下のように設定されている。
【0046】
一次送風機6: 設定流量9500mN/時(標準立方メートル/時)
二次送風機7: 設定流量5810mN/時
空冷壁用送風機9F: 設定流量7200mN/時
一次燃焼空気予熱器14: 設定温度140℃
制御手段10は、各機器6、7、9F、14を上記の各設定値となるように制御する。上記設定により、空冷壁用送風機9Fによって押し出された空気は、空冷壁3で熱交換した後、温風となって7200mN/時の流量で第2ダクト5に送られる。ここで、二次送風機7の流量5810mN/時<空冷壁用送風機9Fの流量7200mN/時<一次送風機6の流量9500mN/時であるから、空冷壁用送風機9Fによって第2ダクト5に送られた温風は、二次送風機7と第1ダクト4とに分配され、二次送風機7に5810mN/時が送られ、一次送風機6に誘引される第1ダクト4に1390mN/時が送られる。ごみピットの炉外空気取入口(付図示)から誘引される空気と空冷壁3で加熱された温風とが混合することで、一次送風機6の入口空気温度は32℃になっている。
【0047】
次に、焼却物の発熱量が上昇した場合、前記熱量検出手段によって得られた炉内焼却物の発熱量が例えば11500(kJ/kg)を越えた場合に、図3に示すように、制御手段10によって各機器6、7、14が例えば以下のように設定に変更されて制御される。
【0048】
一次送風機6: 設定流量11590mN/時
二次送風機7: 設定流量8180mN/時
一次燃焼空気予熱器14:停止
なお、空冷壁用送風機9Fの流量は、焼却炉2の炉体の冷却を確実に行うため、焼却物の発熱量にかかわらず、常に一定流量(7200mN/時)に制御されている。
【0049】
図3に示されているように、(空冷壁用送風機9Fの流量7200mN/時)<(二次送風機7の流量8180mN/時)<(一次送風機6の流量11590mN/時)であるから、空冷壁用送風機9Fによって第2ダクト5に送られた温風は、全て二次送風機7に誘引されるとともに、不足分(8180mN−7200mN=980mN)が第1ダクト4から第2ダクト5へ誘引される。第2ダクト5内において、空冷壁3で加熱された温風とごみピットから誘引された常温空気とが混合することにより、その混合空気温度は90℃となって二次送風機7から押し出されて、二次燃焼空気導入口2cに送られる。空冷壁3で加熱された温風が第1ダクト4に流入しないため、一次燃焼空気予熱器14を停止させることで、低温(20℃)の一次燃焼空気をストーカ下部の一次燃焼室に送ることができ、火格子の損傷を防止し得る。
【0050】
上記のように、ごみ質に応じて、空冷壁冷却後の温風を、一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給するので、空冷壁通過後の温風を有効利用し、ごみ質に応じた燃焼を可能にする。
【0051】
また、空冷壁用送風機9Fから押し出された冷却空気は、焼却炉2の空冷壁3を通過する際の熱交換により温風となる。この温風は、空冷壁3から温風ダクト9を通じて、二次送風機7の吸引口に接続されている第2ダクト5に挿入され、二次空気として利用される。そのため、温風の熱エネルギーは、系外へ排出されることなく、廃熱ボイラ等で熱回収することにより、有効利用できる。また、二次燃焼空気予熱器15を併設する場合は、二次燃焼空気予熱器15の入口空気温度を高くすることができることから、空気予熱の蒸気量を削減できるとともに、空気予熱器の小型化が図れる。
【0052】
さらに、空冷壁3を冷却した温風のうち、二次空気として利用される分以外の余剰分は、一次送風機6へと流入させ、一次燃焼空気として利用することにより、一次燃焼空気予熱器14の空気温度が上昇し、一次燃焼空気予熱器14において一次燃焼空気を予熱するための蒸気量を削減することができる。この場合、一次燃焼空気予熱器14の熱交換量を小さくすることができることから、一次燃焼空気予熱器14を小型化できる。
【0053】
そして、燃焼物の発熱量が上昇した場合は、二次燃焼空気が増加するよう自動制御し、一次燃焼空気として使用される温風の量を減らして一次燃焼空気温度を下げることにより、火格子の損傷を回避することができる。
【0054】
近年の焼却設備では焼却炉の廃熱を利用した蒸気タービンにより発電する発電機が併設されることが多いが、斯かる発電機が併設された焼却設備の場合、廃熱ボイラの蒸気量が増加し、予熱器で使用される蒸気量が減少すれば、タービン入口蒸気量が増加し、発電量を増加させることができる。
【0055】
例えば、処理規模100(トン/24時間)の焼却炉を2炉配置し、ボイラ条件4MPa、400℃の発電機を併設した焼却施設(空気予熱は一次燃焼空気予熱器のみ。二次燃焼空気予熱器無し。)であれば、従来の焼却炉で捨てていた空冷壁での交換熱量約1.5(GJ/時間)を有効利用できるため、ボイラ発熱量は平均で約230(kg/時間)増加させることができる。また、空気予熱器の交換熱量が小さくなり、伝熱面積を約10%小さくすることができる。
【0056】
本発明の上記焼却設備は、水冷壁を採用した場合と比べても、廃熱ボイラ蒸発量は同程度である上、水冷壁を採用した場合と比べて、焼却量の負荷率が低いか又は焼却物の発熱量が低い場合でも、助燃せずにダイオキシンガイドラインを遵守した焼却炉の運転が可能となる。
【0057】
次に、本発明に係る焼却設備の第2実施形態を、図4を参照しつつ説明する。第2実施形態の焼却設備1Aは、分配供給手段が、空冷壁3を冷却した後の温風を第2ダクト5の接続位置より下流側の第1ダクト4に供給する第1温風ダクト9aと、空冷壁3を冷却した後の温風を二次送風機7より上流部の第2ダクト5に供給する第2温風ダクト9bと、第1温風ダクト9aに介在された第1ダンパ20と、第2温風ダクト9bに介在された第2ダンパ21と、を備えている。
【0058】
また、熱量検出手段の検出値に応じて第1ダンパ20及び第2ダンパ21を制御することにより、空冷壁冷却後の温風を一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配する流量比率を制御する。前記熱量検出手段は、上記第1実施形態と同様、公知の手段を採用することができる。
【0059】
図示例において、第1温風ダクト9aと第2温風ダクト9bとは、共通の温風ダクト9abを途中下流位置で分岐させることによって構成されているが、共通部分を有しない別個の2本のダクトによって構成することもできる。
【0060】
斯かる構成の第2実施形態の焼却設備1Aによれば、例えば、前記熱量検出手段の検出値が所定値以下の場合、第1ダンパ20及び第2ダンパ21を適宜開度に制御することにより、温風の一部を一次燃焼空気に供給して一次燃焼空気の温度を上昇させるとともに、二次燃焼空気にも温風の残部を供給して高温の二次燃焼空気を供給することができる。
【0061】
前記熱量検出手段の検出値が所定値を超えた場合、即ち、高質ごみを検知した場合には、第1ダンパ20の通過流量に比して第2ダンパ21の通過流量が大きくなるように第1ダンパ20及び第2ダンパ21を制御して、二次燃焼空気量を増加させて温風の大部分(若しくは全量)を二次燃焼空気として利用することにより、一次燃焼空気として使用する温風の量を少なく(若しくは全く無く)し、一次燃焼空気の温度を低くする。これにより、火格子の損傷を回避することができる。その他、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。例えば、上記第1実施形態の焼却設備は制御手段によって送風機の回転数を制御することにより温風の分配制御する構成を開示し、上記第2実施形態の焼却設備は制御手段によってダンパの開閉度合いを制御することにより温風を分配制御する構成を開示しているが、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせて温風を分配制御する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1A 焼却設備
2 焼却炉
3 空冷壁
4 第1ダクト
5 第2ダクト
6 一次送風機
7 二次送風機
8 第3ダクト
9、9ab 温風ダクト
9a 第1温風ダクト
9b 第2温風ダクト
9F 空冷壁用送風機
10 制御手段
14 一次燃焼空気予熱器
15 二次燃焼空気予熱器
20 第1ダンパ
21 第2ダンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却炉と、該焼却炉の炉壁に設けられた空冷壁と、前記空冷壁冷却後の温風を一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する分配供給手段と、を備えることを特徴とする焼却設備。
【請求項2】
前記分配供給手段は、前記焼却炉において焼却される焼却物の発熱量を検出する熱量検出手段と、前記空冷壁冷却後の温風を前記熱量検出手段の検出値に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給する制御手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の焼却施設。
【請求項3】
前記制御手段は、前記熱量検出手段の検出値が所定値を越えたときに、前記空冷壁冷却後の温風の二次燃焼空気への分配供給比率が一次燃焼空気への分配供給比率に対して高くなるように制御することを特徴とする請求項2に記載の焼却設備。
【請求項4】
炉外空気取入口と前記焼却炉の一次燃焼空気導入口との間に接続された第1ダクトと、該第1ダクトと前記焼却炉の前記二次燃焼空気導入口との間に接続された第2ダクトと、前記第2ダクト接続位置より下流側の前記第1ダクトに介在された一次送風機と、前記第2ダクトに介在された二次送風機と、を更に備え、
前記分配供給手段は、前記空冷壁の温風排気口と前記二次送風機より上流部の前記第2ダクトとの間に接続された温風ダクトを備え、
前記制御手段は、該熱量検出手段の検出値に応じて前記一次送風機及び二次送風機の少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の焼却設備。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記熱量検出手段によって検出された発熱量が所定値以下であるときに、二次送風機の流量<空冷壁冷却後の温風流量<一次送風機の流量となるように制御し、
発熱量が所定値を超えた時に、空冷壁冷却後の温風流量<二次送風機の流量<一次送風機の流量となるように制御することを特徴とする請求項4に記載の焼却設備。
【請求項6】
炉外空気取入口と前記焼却炉の一次燃焼空気導入口との間に接続された第1ダクトと、該第1ダクトと前記焼却炉の前記二次燃焼空気導入口との間に接続された第2ダクトと、前記第2ダクト接続位置より下流側の前記第1ダクトに介在された一次送風機と、前記第2ダクトに介在された二次送風機と、を更に備え、
前記分配供給手段は、前記空冷壁冷却後の温風を前記第2ダクト接続位置より下流側の前記第1ダクトに供給する第1温風ダクトと、前記空冷壁冷却後の温風を前記二次送風機より上流部の前記第2ダクトに供給する第2温風ダクトと、前記第1温風ダクトに介在された第1ダンパと、前記第2温風ダクトに介在された第2ダンパと、を備え、
前記制御手段は、前記熱量検出手段の検出値に応じて前記第1ダンパ及び第2ダンパの少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項2又は3に記載の焼却設備。
【請求項7】
一次燃焼空気を予熱する一次燃焼空気予熱器を更に備えることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の焼却設備。
【請求項8】
廃熱回収ボイラを更に備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の焼却設備。
【請求項9】
空冷壁方式の焼却炉を備える焼却設備の運転方法であって、焼却物の発熱量を検出し、前記空冷壁冷却後の温風を、検出した焼却物の発熱量に応じて一次燃焼空気及び二次燃焼空気へ分配供給することを特徴とする前記運転方法。
【請求項10】
前記検出された発熱量が所定値を越えたときに、前記空冷壁冷却後の温風を、一次燃焼空気に優先して二次燃焼空気に分配供給することを特徴とする請求項9に記載の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87977(P2012−87977A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234258(P2010−234258)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】