説明

焼結プロセス操業監視装置、焼結プロセス操業監視方法、及びプログラム

【課題】焼結機における焼結層内の所望の領域での温度分布をオンラインで正確に同定して、焼結機の操業を監視できるようにする。
【解決手段】パレット上に配置された複数の温度測定部で測定された時系列の測定温度データをオンラインで取得し、次いで測定温度データから、焼結層の温度を定量的に表現するパラメータを導出し、当該パラメータから、焼結層を焼結機の機長方向に分けられたゾーン毎に、測定温度データに基づく関数901、902を求める。求めた2つの曲線901、902上の相互に対応する点に基づいて外挿又は内挿を行って、所望の焼結層高さ方向の位置における導出対象温度データを求め、導出対象温度データから、焼結層の温度を定量的に表現するパラメータを導出し、当該パラメータから、導出対象温度データに基づく関数903を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結プロセス操業監視装置、焼結プロセス操業監視方法、及びプログラムに関し、特に、高炉に供給する焼結鉱を生成する焼結機における焼結層の状態を解析するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高炉に供給する焼結鉱を生産する焼結機では、銑鉄の主原料である微粉鉄鉱石を燃料となるコークス等とともに焼き固め、その粒度・強度・化学成分を調整して焼結鉱を製造する。図1に示したようなドワイト・ロイド式の焼結機による焼結鉱の生産方法の概要を説明すると、まず、微粉鉄鉱石を主原料とする焼結原料を、原料供給ホッパから、無端帯状に連結され移動する複数のパレット上へ移動方向上流側で給鉱して焼結原料層を形成し、当該焼結原料層の上部を、点火炉によって着火する。そして、パレットが移動しながら複数のパレットの下方に配置された複数のウインドボックス(風箱)を介して、焼結原料が積載されたパレットを下方から吸気する。これにより、複数のパレットに積載された焼結原料は、焼結機の機長方向に搬送されながら、焼結原料層の上方から下方に向けて焼結反応が進行する。そして、焼結原料層の上部から下部までの焼成が完了すると、得られた焼結鉱が各パレットから順次排鉱される。本願では、焼結反応の進行に際して焼結原料層から焼結鉱層へと変化する材料層を、ともに焼結層と記す。
【0003】
このような焼結機による操業には、以下の(1)〜(3)の事項が求められる。
(1)微粉鉄鉱石の配合割合等の原料条件や操業条件の変動を極力少なくする。
(2)原料条件や操業条件の変動に対し、系全体をうまく制御することで、高炉で還元・溶融するための一定の粒度と強度をもつ焼結鉱を連続的に安定して生産する。
(3)鉄鋼需給の変動や製鉄所の方針等、種々の制約条件のもとで、コストの低減・歩留まりの向上等の操業目標値を最大にするように操業する。
【0004】
また、生産物としての焼結鉱の品質指標には、冷間強度指数(SI:Shutter Index)、還元粉化性指数(RDI:Reduction Disintegration Index)、被還元性指数(RI:Reducibility Index)があり、焼結鉱には、以下の(1)〜(3)を満足するような品質が求められる。
(1)製造後の搬送時や高炉装入時に粉化しないよう十分に大きい冷間強度を焼結鉱が有すること。
(2)高炉内での通気性を確保するため、著しい還元粉化を起こさないような十分に小さい還元粉化性指数を焼結鉱が有すること。
(3)高炉装入物として良好な被還元性を保証できるような十分に大きい被還元性指数を焼結鉱が有すること。
【0005】
微粉鉄鉱石がコークスの燃焼によって適切に溶融・塊成化しているか否かの監視指標として、(焼結層底面における)赤熱帯終点位置を焼結完了点(BTP:Burn Through Point)と定義している。一般的に、このBTPが焼結機のどこに位置されているかを操業管理する。前述したような焼結鉱の品質を満足し、且つ高生産性(高焼結鉱生産量[ton/h])を実現することを操業目標として、基本的にはBTPがなるべく焼結機の排鉱部側に安定的に存在する範囲でパレット速度を最大化するような操業を行う。
そのために、従来は、ウインドボックスにおける排ガス温度が最高となる点がBTPと対応するという仮定のもと、この排ガス温度から、BTPを予測することが行われている。
【0006】
特許文献1では、排ガス温度計で測定された排ガス温度に基づいて、機長方向における温度が最高となる位置を焼結完了点BTPとして求める。また、排ガス温度計で測定された排ガス温度に基づいて、温度上昇開始点から焼結終了点までの間において所定温度になる位置を所定温度位置BRPとして求める。そして、焼結完了点BTPと、所定温度位置BRPとの相関を算出しておき、この相関を利用して、現時点で求められた所定温度位置BRPから焼結完了点BTPを求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−307259号公報
【特許文献2】特開2010−243443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述したように、従来の技術では、ウインドボックスにおける排ガス温度が最高となる点がBTPと対応するという仮定のもと、この排ガス温度から、BTPを予測しているに過ぎない。ウインドボックスの寸法は、機長方向で約5[m]、幅方向で約5[m]あり、このような大きな空間を通過してくる排ガス温度の測定の結果からでは、焼結層における焼成の進行のばらつきを正確に把握することができない。このように従来の技術では、BTPの管理精度に限界がある。
【0009】
そこで、本出願人らは、特許文献2において、焼結機の焼結層の温度を直接的に測定することができる温度測定装置(以下、この温度測定装置を必要に応じて「パレット温度計」と称する)を提案した。さらに、本出願人らは、特願2011−184017号において、パレット温度計により測定された温度データから、焼結層内の物理現象を定量的に表現するパラメータである特徴量を、焼結層のゾーン毎に同定する技術を提案した。
【0010】
この特願2011−184017号に記載の技術によれば、焼結層の底部に相当する位置にパレット温度計の測温体を配置することによって、BTPを直接的に求めることができる。
しかしながら、特願2011−184017号に記載の技術では、パレット温度計の測温体が配置されている箇所の温度データしか得られないため、焼結層内の所望の位置での温度分布を求めることができない。したがって、例えば、焼結層の底部に相当する位置にパレット温度計の測温体を配置しなければ、BTPを求めることが困難である。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、焼結機における焼結層内の所望の領域での温度分布をオンラインで正確に同定して、焼結機の操業を監視できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の焼結プロセス操業監視装置は、無端帯状になるように連結されて周回する複数のパレットのうち、原料給鉱部に位置するパレットに順次焼結原料を給鉱し、当該パレットが移動する過程で当該焼結原料の焼結を行って焼結鉱を生産し、当該パレットが焼結鉱排鉱部に到達すると、順次生産した焼結鉱を排鉱するドワイト・ロイド式の焼結機の操業状態を監視する焼結プロセス操業監視装置であって、前記パレット上に形成されている焼結層内の測定温度データであって、高さ方向及びパレット幅方向のそれぞれに間隔を有して前記パレット上に配置された複数の温度測定部が前記焼結機の原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する間に当該複数の温度測定部によって測定された時系列の測定温度データを収集する測定温度データ収集手段と、前記測定温度データ収集手段により収集された測定温度データを用いて、前記焼結層を焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで区間を初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、赤熱帯、及び焼結完了帯の5つのゾーンに分けるゾーン解析手段と、前記ゾーン毎に個別に設定される関数であって、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータとして、前記複数の温度測定部が配置された高さ位置のそれぞれについて、個別に与えられるパラメータを前記複数の温度測定部によって測定された測定温度データに基づいてそれぞれ同定する測定温度関数のパラメータ同定手段と、前記測定温度関数のパラメータ同定手段により同定されたパラメータが与えられた前記複数の関数上の点であって、前記ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内の温度測定部が配置された高さ位置以外の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する導出対象温度データ導出手段と、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、前記導出対象温度データに基づいて同定する導出対象温度関数のパラメータ同定手段と、前記焼結層内の温度の分布の情報を表示装置に表示する表示手段と、を有し、前記同定されたパラメータが与えられた導出対象温度関数によって、前記焼結層内の高さ方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とする。
また、本発明の焼結プロセス操業監視装置の他の特徴とするところは、前記パレット幅方向で異なる位置の前記測定温度データ又は前記導出対象温度データであって、ゾーン内で相互に対応する位置の前記測定温度データ又は前記導出対象温度データに基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内のパレット幅方向における温度の変化を表す関数を導出するパレット幅方向関数導出手段を有し、前記焼結層内のパレット幅方向における温度の変化を表す関数によって、前記焼結層内のパレット幅方向における温度分布が得られるようにした点にある。さらに、前記指定された高さ位置は、前記焼結層の床部に略対応する位置を含み、前記5つのゾーンの少なくとも1つのゾーンには、赤熱帯が含まれており、前記導出対象温度関数のパラメータ同定手段により同定されたパラメータが与えられた関数は、前記赤熱帯における前記焼結層の床部における機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数を含み、前記パレット幅方向関数導出手段は、前記パレット幅方向で異なる位置の前記導出対象温度データであって、前記赤熱帯の終点に対応する位置の前記導出対象温度データに基づく外挿又は内挿を行って、BTP(Burn Through Point)のパレット幅方向の分布を導出する点にある。
また、本発明の焼結プロセス操業監視装置の他の特徴とするところは、前記焼結層を構成する焼結鉱粒子が球形粒子であるとして取り扱い、前記関数は、球形粒子の熱収支を表す時間微分方程式である点にある。
また、本発明の焼結プロセス操業監視装置の他の特徴とするところは、前記表示手段は、焼結層内の温度が同値である等値線を用いて、前記焼結層内の温度の分布の情報を表示する点にある。
本発明の焼結プロセス操業監視方法は、無端帯状になるように連結されて周回する複数のパレットのうち、原料給鉱部に位置するパレットに順次焼結原料を給鉱し、当該パレットが移動する過程で当該焼結原料の焼結を行って焼結鉱を生産し、当該パレットが焼結鉱排鉱部に到達すると、順次生産した焼結鉱を排鉱するドワイト・ロイド式の焼結機の操業状態を監視する焼結プロセス操業監視方法であって、前記パレット上に形成されている焼結層内の測定温度データであって、高さ方向及びパレット幅方向のそれぞれに間隔を有して前記パレット上に配置された複数の温度測定部が前記焼結機の原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する間に当該複数の温度測定部によって測定された時系列の測定温度データを収集する測定温度データ収集工程と、前記測定温度データ収集工程により収集された測定温度データを用いて、前記焼結層を焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで区間を初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、赤熱帯、及び焼結完了帯の5つのゾーンに分けるゾーン解析工程と、前記ゾーン毎に個別に設定される関数であって、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータとして、前記複数の温度測定部が配置された高さ位置のそれぞれについて、個別に与えられるパラメータを前記複数の温度測定部によって測定された測定温度データに基づいてそれぞれ同定する測定温度関数のパラメータ同定工程と、前記測定温度関数のパラメータ同定工程により同定されたパラメータが与えられた前記複数の関数上の点であって、前記ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内の温度測定部が配置された高さ位置以外の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する導出対象温度データ導出工程と、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、前記導出対象温度データに基づいて同定する導出対象温度関数のパラメータ同定工程と、前記焼結層内の温度の分布の情報を表示装置に表示する表示工程と、を有し、前記同定されたパラメータが与えられた導出対象温度関数によって、前記焼結層内の高さ方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とする。
本発明のプログラムは、無端帯状になるように連結されて周回する複数のパレットのうち、原料給鉱部に位置するパレットに順次焼結原料を給鉱し、当該パレットが移動する過程で当該焼結原料の焼結を行って焼結鉱を生産し、当該パレットが焼結鉱排鉱部に到達すると、順次生産した焼結鉱を排鉱するドワイト・ロイド式の焼結機の操業状態を監視するためのプログラムであって、前記パレット上に形成されている焼結層内の測定温度データであって、高さ方向及びパレット幅方向のそれぞれに間隔を有して前記パレット上に配置された複数の温度測定部が前記焼結機の原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する間に当該複数の温度測定部によって測定された時系列の測定温度データを収集する測定温度データ収集処理と、前記測定温度データ収集処理により収集された測定温度データを用いて、前記焼結層を焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで区間を初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、赤熱帯、及び焼結完了帯の5つのゾーンに分けるゾーン解析処理と、前記ゾーン毎に個別に設定される関数であって、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータとして、前記複数の温度測定部が配置された高さ位置のそれぞれについて、個別に与えられるパラメータを前記複数の温度測定部によって測定された測定温度データに基づいてそれぞれ同定する測定温度関数のパラメータ同定処理と、前記測定温度関数のパラメータ同定処理により同定されたパラメータが与えられた前記複数の関数上の点であって、前記ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内の温度測定部が配置された高さ位置以外の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する導出対象温度データ導出処理と、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、前記導出対象温度データに基づいて同定する導出対象温度関数のパラメータ同定処理と、前記焼結層内の温度の分布の情報を表示装置に表示する表示処理と、をコンピュータに実行させ、前記同定されたパラメータが与えられた導出対象温度関数によって、前記焼結層内の高さ方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゾーン毎に個別に設定される、焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、異なる高さ位置で測定された測定温度データに基づいて、当該高さ位置のそれぞれで同定する。そして、同定した複数の関数上の、ゾーン内の位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、焼結層内の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する。そして、導出した導出対象温度データに基づいて、焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータであって、当該指定された高さ位置におけるパラメータを同定する。したがって、焼結機における焼結層内の高さ方向の温度分布をオンラインで正確に同定して、焼結機の操業を監視することができる。
また、本発明によれば、ゾーン内で相互に対応する位置の測定温度データ又は導出対象温度データに基づく外挿又は内挿を行って、焼結層内のパレット幅方向の温度の変化を表す関数を導出するようにした。したがって、焼結機における焼結層内のパレット幅方向の温度分布をオンラインで正確に同定して、焼結機の操業を監視することができる。
以上により、焼結機における焼結層内の機長方向、高さ方向、及びパレット幅方向の3次元の温度分布をオンラインで正確に同定して、例えば焼結機の操業指標として重要なBTP(Burn Through Point)のパレット幅方向の分布を導出して、焼結機の操業を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示し、焼結機の概略構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、パレット温度計が設置されたパレットの概略構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、パレット温度計の概略構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、焼結プロセス操業監視装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、焼結層を区画するゾーンの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、焼結層のある高さ位置における測定温度データの一例を概念的に示す図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、焼結層内の焼結鉱粒子充填層を概念的に示す図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、焼結層のゾーンIV(赤熱帯)の領域と、測定温度データと、導出対象温度データの一例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態を示し、測定温度データに基づく関数から導出対象温度データに基づく関数を求める様子の一例を概念的に示す図である。
【図10】本発明の実施形態を示し、あるゾーンにおける相互に対応する位置でのパレット幅方向の温度の変化を表す関数の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施形態を示し、焼結層のゾーンIV(赤熱帯)の概略の一例を3次元的に表現して示した図である。
【図12】本発明の実施形態を示し、焼結プロセス操業監視装置の処理動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本出願人は、特許文献2において、焼結層内の温度を、連続して安定的に直接的に測定することができるパレット温度計を提案した。このパレット温度計を用いることにより、焼結層内の温度分布を初めて実測することができた。本発明者らは、このように従来では得られなかった「焼結層内の温度分布の実測値」を鋭意検討することにより、後述するようにして、焼結層内の物理現象を定量的に表現するパラメータを焼結状態の特徴量としてオンラインで正確に同定することができることを見出した。すなわち、従来では、ウインドボックスにおける排ガス温度から、焼結層内の温度を間接的に推測するに留まっているに過ぎず(焼結層内の温度を経験に基づいて求めているに過ぎず)、実プロセスの焼結層内の温度データ実測値に基づく焼結層の状態の理論的な解明は十分に行われていなかった。これに対し、本発明者らは、焼結層内の温度分布の実測値から、焼結層の状態の理論的な解明を行い、その結果に基づいて、焼結層内の物理現象を定量的に表現するパラメータを表現するモデルを構築し、構築したモデルを用いて、焼結層内の物理現象を定量的に表現するパラメータを、焼結状態の特徴量として同定し、これを用いて、焼結機の操業をオンラインで監視できることを見出した。
【0016】
更に、本発明者らは、このようにして焼結機による焼結プロセスの操業状態の特徴量を同定した結果から、焼結層内の所望の領域での2次元又は3次元の温度分布を導出することができることを見出した。これにより、例えば、焼結層全体の温度分布を等値線等で表現したり、焼結層の底部にパレット温度計の測温体を配置しなくてもBTPを求めたりすることができる。そして、これらの情報を表示し、さらにこれらの表示を逐次更新することにより、焼結機の操業をオンラインで監視することができる。
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
<焼結機>
まず、焼結機の概略について説明する。
図1は、焼結機の概略構成の一例を示す図である。図1は、焼結機100をその側方から見た図である。また、図1では、説明の都合上、必要な部分のみを簡略化して示している。
図1において、焼結機100は、複数のパレット110からなるパレット群と、原料供給ホッパ120と、点火炉130と、ウインドボックス140とを備えて構成される。
【0018】
パレット群は、焼結原料を積載して搬送する複数のパレット110を焼結機100の長手方向に移動可能に連結して構成される。図1に示すように、各パレット110は、先端と後端とが連接されて全体として無端帯状になっており、駆動ローラ102a、102bの回転にしたがってエンドレスに焼結機100内を周回する。図1では、駆動ローラ102a、102bが時計回りに回転することによって、パレット群は時計回りに周回している。パレット群を構成するパレット110のうち少なくとも1つのパレット110に、パレット110上に積載された焼結原料の温度を測定する複数のパレット温度計150a〜150f(図2を参照)が設けられる。
【0019】
原料供給ホッパ120は、焼結鉱の原料となる焼結原料を供給する。原料供給ホッパ120は、点火炉130の位置を基準としてパレット群の回転方向上流側に設けられる。原料供給ホッパ120から供給された焼結原料(燃料を含む)は、原料供給ホッパ120の下方を通過するパレット110の収容空間に収容され、パレット群の進行方向へ搬送される。
点火炉130は、パレット110上に積載された焼結原料に着火する点火部である。点火炉130と対向するパレット110上に積載された焼結原料に着火して、焼結原料の焼結過程を開始させる。
【0020】
ウインドボックス140は、焼結原料が積載されたパレット110を下方から吸気するための減圧空間を構成する。ウインドボックス140は、パレット110の下方に設けられた空間であり、ウインドボックス140の上部は、パレット110の底面下部と連通し、ウインドボックス140の下部は、吸気管145に連通している。ウインドボックス140は、吸気管145を介してブロア(図示せず)と接続されており、ブロアによって吸気/排気されることでウインドボックス140の内部空間が減圧される。
【0021】
パレット群の周回中、まず、各パレット110に原料供給ホッパ120から焼結原料が供給され、焼結原料の搬送が開始される。次いで、パレット110の積載する焼結原料の上部が点火炉130により着火されると共に、ウインドボックス140及び吸気管145を介してブロアにより吸気される。これにより、パレット群が移動する間に焼結層の上側表面から下方に燃焼帯を進行させ、焼結鉱を連続的に生産する。生産された焼結鉱は、排鉱部にパレット110が到達すると、パレット110上から排出される。そして、焼結鉱が排出されたパレット110は、原料供給ホッパ120まで周回して搬送される。
【0022】
<パレット温度計>
次に、パレット温度計の概略について説明する。尚、パレット温度計の詳細については、特許文献2に記載されているので、ここでは、その概略のみを説明する。
図2は、パレット温度計が設置されたパレットの概略構成の一例を示す図である。
図2において、パレット110は、複数のグレートバー112と、サイドウォール114と、車輪116と、6個のパレット温度計150a〜150fとを備えて構成される。
【0023】
グレートバー112は、パレット110の底面を構成する部材である。複数のグレートバー112のうち、パレット幅方向(x軸方向)について所定の間隔で6個のグレートバー112の代わりにパレット温度計150a〜150fが配置される。尚、パレット温度計150a〜150fはいずれも同じ構成を有し、以下では「パレット温度計150」とも記す。
サイドウォール114は、複数のグレートバー112によって構成された底面の、パレット幅方向(x軸方向)における両側に設けられた壁板である。サイドウォール114は、パレット110上に積載された焼結原料や生成された焼結鉱がパレット110の進行方向に対して側方向(x軸方向)に落下するのを防止する。
【0024】
車輪116は、パレット110を焼結機100の機長方向(y軸方向)に移動させるための部材である。図2に示す例では、車輪116は、1つのパレット110に対して各サイドウォール114の外側面にそれぞれ2つずつ設けられる。
パレット温度計150は、パレット110に積載された焼結層内の温度を測定する装置である。ここで、焼結層とは、パレット110上に積載された焼結原料の層と、生成された焼結鉱の層との何れの層も含むものとする。パレット温度計150は、前述したように、パレット110の底面を構成するために配列されたグレートバー112と共に配列される。本実施形態では、y軸正方向側のグレートバー列において、パレット幅方向(x軸方向)に6個のパレット温度計150a〜150fを設けるようにしている。具体的に、本実施形態では、y軸正方向側のグレートバー列における、サイドウォール114に直近の位置に、パレット温度計150a、150fが配置されるようにしている。また、相互に隣り合うパレット温度計150の間隔は略同じになるように、各パレット温度計150a〜150fが配置されるようにしている。
【0025】
尚、図2では、パレット温度計150を6個設けた場合を例に挙げて示しているが、1つのパレット110に設けるパレット温度計150の数は、6個に限定されない。パレット幅方向(x軸方向)の所望の位置における高さ方向(z軸方向)の温度分布を求める際には、1つのパレット110に設けるパレット温度計150の数は1個でもよい。ただし、3次元の温度分布を求める際には、パレット幅方向(x軸方向)の複数の位置での温度のデータが必要になるので、1つのパレット110においてパレット幅方向(x軸方向)に設けるパレット温度計150の数は2個以上必要になる。1つのパレット110に複数のパレット温度計150を設ける場合、それら複数のパレット温度計150の配置は、焼結層内のパレット幅方向(x軸方向)の複数の箇所での温度が測定可能な配置であれば、どのような配置であってもよい。そして、1つのパレット110内において複数のパレット温度計150を配置するとき、複数のパレット温度計150を図2で例示するにようにパレット幅方向(x軸方向)に一列に配置してもよいし、機長方向(y軸方向)に対して複数の列を構成した配置であってもよい。また、本実施形態では、1つのパレット110にパレット温度計150を設ける場合を例に挙げて説明するが、パレット温度計150は、全てのパレット110に設けても、一部(複数)のパレット110に設けてもよい。
【0026】
<パレット温度計の構成>
図3は、パレット温度計150の概略構成の一例を示す図である。具体的に図3は、パレット温度計150をy軸方向及びz軸方向の双方に沿うようにして切ったときの断面図である。
パレット温度計150は、高さ方向(z軸方向)で間隔を隔てて配置された2つの温度測定部170a、170bを保持する筐体(スタンド)160と、パレット110上に積載された焼結層内の温度を測定する温度測定部170とを備えて構成される。
【0027】
筐体160は、グレートバー112の基台部と共にパレット110の底面を構成する基台部161と、基台部161からパレット110の収容空間に向かってz軸正方向に突出する突出部162と、グレートバー112と共に筐体160をパレット110の底面に配列するための脚部163a、163bとを備えて構成される。筐体160は、例えば耐熱鋳物であって、各部が一体に形成される。
突出部162の内部には、温度測定部170a、170bが挿通される空間が形成される。すなわち、突出部162の内部には、温度測定部170aが挿入される水平孔164aと、温度測定部170bが挿入される水平孔164bと、水平孔164a、164bと突出部162の底面とを連結する垂直孔165とが形成される。
【0028】
水平孔164a、164bに挿入された温度測定部170a、170bの先端部は、パレット110の進行方向に向かって筐体160から突出している。
また、水平孔164b(の中心)は、基台部161の上面からz軸正方向に向かって30[mm]の位置に形成され、水平孔164a(の中心)は、基台部161の上面からz軸正方向に向かって180[mm]の位置(水平孔164b(の中心)からz軸正方向に向かって150[mm]の位置)に形成されている。水平孔164a、水平孔164bのz軸方向における位置は、測温したい焼結層の位置を規定する。すなわち、これらの水平孔164a、164bに設けられる温度測定部170a、170bによって、パレット110に積載された焼結層内の温度を高さ方向(z軸方向)に複数箇所で測定することができる。
【0029】
尚、ここでは、高さ方向(z軸方向)に間隔を有して2つの水平孔164a、164b(温度測定部170a、170b)を、1つのパレット温度計150に設けるようにした場合を例に挙げて示した。しかしながら、1つのパレット温度計150に設ける温度測定部170の数は2つに限定されない。ある高さにおける、パレット幅方向(x軸方向)及び機長方向(y軸方向)の温度分布を求める場合には、1つのパレット温度計150に設ける温度測定部170の数は1つであってもよい。ただし、3次元の温度分布を求める際には、高さ方向(z軸方向)の複数の位置での温度のデータが必要になるので、1つのパレット温度計150に設ける温度測定部170の数は高さ方向(z軸方向)に2つ以上必要になる。1つのパレット温度計150に複数の温度測定部170を設ける場合、それら複数の温度測定部170の配置は、焼結層内の高さ方向(z軸方向)の複数の箇所での温度が測定可能な配置であれば、どのような配置であってもよい。
【0030】
温度測定部170a、170bは、それぞれ同じ構成を有し、焼結層内の温度を測定する測温体と、測温体を包囲する保護管とを備える。測温体は、例えばシース熱電対である。測温体の後端側には、測定結果を出力するためのリード線178が連結されている。保護管は、測温体の損傷を防止するためのものであり、焼結鉱との接触及び衝突がある環境下で、望ましくは1ヶ月程度以上の長期の連続使用に耐え得る高温耐摩耗性のある材質から形成され、例えば鉄系合金を用いて形成される。また、保護管の厚みは、測温体の感温部のある先端部分が、他の部分よりも薄くなっている。保護管による測温体の感度への影響を低減するためである。
【0031】
水平孔164a、164bの他端側は、z軸方向に延びる垂直孔165に連結されている。垂直孔165の一端側は、基台部161の底面において外部と連通している。垂直孔165は、水平孔164a、164b及び外部と連通し、水平孔164a、164bに挿入された温度測定部170のリード線178をパレット温度計150(筐体160)の外部へ引き出すための孔である。尚、パレット温度計150で測定された温度データは、焼結機の外部に、データ伝送部(図示せず)により取り出される。
【0032】
また、筐体160には、水平孔164a、164bの一部と交わるようにx軸方向に延びる貫通孔166a、166bが形成される。貫通孔166a、166bには、水平孔164a、164bに挿入された温度測定部170a、170bを固定する固定部材180a、180bが挿入されている。温度測定部170a、170bの、筐体160から突出する部分には、焼結原料の荷重から多大な荷重がかかる。このとき、温度測定部170a、170bが筐体160から脱落しないように、筐体160と、温度測定部170a、170bとが固定部材180a、180bによって固定されるようにしている。
【0033】
<焼結プロセス操業監視装置>
図4は、焼結プロセス操業監視装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。焼結プロセス操業監視装置400は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、及び各種のインターフェースを備えたコンピュータ装置を用いることにより実現することができる。
【0034】
図4に示すように、焼結プロセス操業監視装置400には、パレット温度計150で測定された焼結層内の温度データが、パレット温度計150から直接又は間接的に入力される。また、焼結プロセス操業監視装置400には、プロセスコンピュータ450から、焼結機100の操業データが入力される。また、焼結プロセス操業監視装置400は、入力装置460からユーザによる指示を受け付ける。また、焼結プロセス操業監視装置400は、後述するようにして計算された「焼結機100における焼結層内の温度分布」等を表示装置470に表示する。以下、焼結プロセス操業監視装置400の各機能について説明する。
【0035】
[温度データ収集部401]
温度データ収集部401は、パレット温度計150で測定された焼結層内の温度の時系列データが上記のデータ伝送部経由で入力され、HDD等に記憶する。ここで、本実施形態では、温度データ収集部401は、どのパレット温度計150のどの温度測定部170で測定された温度データであるのかが識別できるように、各温度データを記憶する。例えば、パレット温度計150毎、温度測定部170毎に温度データを記憶するデータベースに各温度データを記憶することができる。また、本実施形態では、温度データ収集部401は、パレット温度計150a〜150fが、原料給鉱部(端)から焼結鉱排鉱部(端)まで移動したときに得られた温度データを1単位としてHDD等に記憶する。ここでは、点火炉130の真下の位置を原料給鉱部とする。以下の説明では、パレット温度計150で測定された焼結層内の温度データを必要に応じて「測定温度データ」と称する。本実施形態では、6個のパレット温度計150a〜150fの夫々が2つの温度測定部170a、170bを有しているので、12個の測定温度データ群が得られる。
【0036】
[ゾーン解析部402]
ゾーン解析部402は、パレット温度計150a〜150fで測定された測定温度データに基づいて、焼結層の各ゾーンの始点温度θp,is[℃]、終点温度θp,ie[℃]、ゾーン通過時間ti[sec]、平均パレット速度vp[m/sec]、及びゾーン長li[m]等を求める。ここで、iは、ゾーンを識別するものであり、1〜5の整数となる。
ここで、ゾーン通過時間tiとは、パレット温度計150a〜150f(の測温体)が各ゾーンを通過するのに要した時間をいう。平均パレット速度vpとは、パレット温度計150a〜150f(の測温体)が原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動している間のパレット110の平均速度をいう。ゾーン長liは、パレット温度計150a〜150fの測温体が配置されている高さにおける、各ゾーンの機長方向の長さをいう。
尚、以後の説明において、「パレット温度計150a〜150fで測定された測定温度データ」をまとめて「パレット温度計150で測定された測定温度データ」として説明するが、本実施形態では、パレット幅方向(x軸方向)に複数配置するパレット温度計150a〜150fにおいて、それぞれ個別に同じ処理を実施する。
【0037】
本実施形態では、ゾーン解析部402は、焼結機100で焼結されている焼結層を5つのゾーン(i=1〜5)に分けるようにしている。以下に、これらのゾーンについて説明する。
図5は、焼結層を区画するゾーンの一例を示す図である。
図5において、焼結層は、焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部までが5つのゾーンI〜Vにより区画される。ゾーンIは、初期原料帯であり、焼結層に何も反応が起こっていない領域である。ゾーンIIは、水分凝縮帯であり、焼結層に含まれる水分が凝縮して気化する領域である。ゾーンIIIは、乾燥帯であり、水分が気化した焼結層が乾燥する領域である。ゾーンIVは、赤熱帯であり、乾燥後の焼結層内で燃料が着火し、焼結原料が焼結する領域である。ゾーンVは、焼結完了帯であり、燃料が全て燃え尽きて焼結反応が完了後に空冷され、焼結鉱が生成されている領域である。i=1〜5は、それぞれゾーンI〜Vに対応するものである。言い換えれば、あるパレット上の焼結層は焼結反応の進行につれて、当初は全体がゾーンI(初期原料帯)に属し、その後ゾーンII(水分凝縮帯)、III(乾燥帯)、IV(赤熱帯)が上部から下部へ移動していき、焼結の完了によって全体がゾーンV(焼結完了帯)で占められる。図5に示すように、赤熱帯ゾーンIVの底部の終点(焼結完了帯ゾーンVの始点)が焼結完了点(BTP)となる。
【0038】
図6は、焼結層のある高さ位置における測定温度データの一例を概念的に示す図である。
〔始点温度θp,is、終点温度p,ie、ゾーン通過時間ti
(ゾーンI)
まず、パレット温度計150の測定結果から、ゾーンI(初期原料帯)に相当する温度の波形(温度と時間との関係)を確認することができなかった。そこで、本実施形態では、ゾーンIを省略して取り扱うこととする。すなわち、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)の初期値(時間ta=0における測定温度θp(0))を、ゾーンII(水分凝縮帯)の始点温度θp,2sとする。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIの始点温度θp,1sと、ゾーンIの終点温度θp,1eとを以下の(1)式のように設定する。
θp,1s=θp,1e=θp(0) ・・・(1)
【0039】
また、ゾーン解析部402は、ゾーンIのゾーン通過時間t1を以下の(2)式のように設定する。
1=0 ・・・(2)
尚、以下に示す時間taは、このゾーン通過時間t1=0と設定した時間をta=0として基準とした時間である。
【0040】
(ゾーンII)
前述したように、ゾーン解析部402は、ゾーンIの終点温度θp,1eを、ゾーンII(水分凝縮帯)の始点温度θp,2sとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIIの始点温度θp,2sを以下の(3)式のように設定する。
θp,2s=θp,1e ・・・(3)
また、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)の最小値θp,minを、ゾーンIIの終点温度θp,2eとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIIの終点温度θp,2eを以下の(4)式のように設定する。
θp,2e=θp,min=θp(ta,min) ・・・(4)
ここで、時間ta,min[sec]は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)が最小値θp,minとなったときの時間である。
さらに、ゾーン解析部402は、ゾーンIIのゾーン通過時間t2を、以下の(5)式のように設定する。
2=ta,min ・・・(5)
【0041】
(ゾーンIII)
ゾーン解析部402は、ゾーンIIの終点温度θp,2eを、ゾーンIII(乾燥帯)の始点温度θp,3sとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIIIの始点温度θp,3sを以下の(6)式のように設定する。
θp,3s=θp,2e ・・・(6)
また、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)が、予め定められている焼結原料の着火温度θc,f[℃]になったときの温度を、ゾーンIIIの終点温度θp,3eとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIIIの終点温度θp,3eを以下の(7)式のように設定する。
θp,3e=θc,f=θp(ta,cf) ・・・(7)
ここで、時間ta,cf[sec]は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)が、焼結原料の着火温度θc,fとなったときの時間である。
さらに、ゾーン解析部402は、ゾーンIIIのゾーン通過時間t3を、以下の(8)式に従って計算し設定する。
3=ta,cf−ta,min ・・・(8)
ただし、ta,min<ta,cf<ta,maxの関係が成立するものとする(ta,max[sec]は、後述するようにパレット温度計150の測定温度データθp(ta)が最大値θp,maxとなったときの時間である)。
【0042】
(ゾーンIV)
ゾーン解析部402は、ゾーンIIIの終点温度θp,3eを、ゾーンIV(赤熱帯)の始点温度θp,4sとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIVの始点温度θp,4sを以下の(9)式のように設定する。
θp,4s=θp,3e ・・・(9)
また、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)の最大値θp,maxを、ゾーンIVの終点温度θp,4eとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンIVの終点温度θp,4eを以下の(10)式のように設定する。
θp,4e=θp,max=θp(ta,max) ・・・(10)
ここで、時間ta,max[sec]は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)が最大値θp,maxとなったときの時間である。
さらに、ゾーン解析部402は、ゾーンIVのゾーン通過時間t4を、以下の(11)式に従って計算し設定する。
4=ta,max−ta,cf ・・・(11)
【0043】
(ゾーンV)
後述するように、本実施形態では、ゾーンI〜IV(初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、及び赤熱帯)の温度分布を求めるので、ゾーンV(焼結完了帯)については必ずしも求める必要はない。しかしながら、本実施形態は、ゾーンV(焼結完了帯)の温度分布を求めることを排除するものではない。また、平均パレット速度vp等を求める際には、ゾーンVの情報(ta,5等)を用いることができる。したがって、ゾーンVの温度分布を求めるための情報の導出についても説明する。
【0044】
ゾーン解析部402は、ゾーンIVの終点温度θp,4eを、ゾーンVの始点温度θp,5sとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンVの始点温度θp,5sを以下の(12)式のように設定する。
θp,5s=θp,4e ・・・(12)
また、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)の極小値θ´p,minを、ゾーンVの終点温度θp,5eとして設定する。すなわち、ゾーン解析部402は、ゾーンVの終点温度θp,5eを以下の(13)式のように設定する。
θp,5e=θ´p,min=θp(t´a,min) ・・・(13)
ただし、ta,max<t´a,min<ta,eの関係が成立するものとする。
ここで、時間t´a,min[sec]は、図6に例示するパレット温度計150の測定温度データθp(ta)が極小値θ´p,minとなったときの時間である。
さらに、ゾーン解析部402は、ゾーンVのゾーン通過時間t5を、以下の(14)式に従って計算し設定する。
5=t´a,min−ta,max ・・・(14)
【0045】
〔平均パレット速度vp
ゾーン解析部402は、以下の(15)式に従って、平均パレット速度vpを計算する。
p=la,5/ta,5 ・・・(15)
ここで、la,5[m]は、パレット温度計150(の測温体)が原料給鉱部(端)から焼結鉱排鉱部(端)まで移動する間の機長方向における長さであり、予め設定されるものである。また、ta,5[sec]は、パレット温度計150(の測温体)が前記機長方向の長さla,5を移動している間の時間であり、各ゾーンのゾーン通過時間tiの和として、以下の(16)式で求められる。
a,5=t1+t2+t3+t4+t5 ・・・(16)
後述するように本実施形態では、ゾーンI〜IV(初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、及び赤熱帯)の温度分布を求めることにより、BTPを導出する。よって、平均パレット速度vpを以下の(15´)式、(16´)式に従って計算するようにしてもよい。
p=la,4/ta,4 ・・・(15´)
a,4=t1+t2+t3+t4 ・・・(16´)
【0046】
〔ゾーン長li
ゾーン解析部402は、以下の(17)式に従って、各ゾーンのゾーン長liを計算する。
i=ti×vp ・・・(17)
【0047】
尚、本実施形態では、ゾーン解析部402は、ゾーンIのゾーン位置la,1を0(ゼロ)に設定する。ここで、ゾーンiのゾーン位置la,iは、原点(点火炉130から焼結原料が点火される位置(原料給鉱部))からゾーンiの終点までの機長方向における距離を示すものである。
具体的にゾーン解析部402は、ソーンiのゾーン位置la,i[m]を、以下の(18)式で計算する。
a,i=Σlm (Σはm=1からi(1≦i≦5)までのlmの総和)・・・(18)
ゾーン解析部402は、以上の処理を、全てのパレット温度計150a〜150fについて個別に行う。
【0048】
[規定データ設定部403]
規定データ設定部403は、ユーザによる入力装置460の操作に基づいて、各種の定数と、必要に応じてこれらの定数の温度依存関数とを設定(HDD等に記憶)する。これらの定数や温度依存関数は、公知の文献に示されているものや、過去の知見から得られたものを採用することができる。
【0049】
規定データ設定部403は、焼結鉱粒子(焼結層を構成する粒子)の密度ρp[kg/m3]を設定する。本実施形態では、焼結鉱粒子の密度ρpとして、ゾーンI〜Vで共通の値を用いるようにしているが、ゾーン毎に個別の値を用いても構わない。
【0050】
また、規定データ設定部403は、焼結鉱粒子の直径Dp,i[m]を設定する。本実施形態では、焼結鉱粒子の直径Dp,iとして、ゾーンI〜V毎に値を設定するようにしているが、ゾーンI〜Vで共通の値を用いても構わない。
図7は、焼結層内の焼結鉱の粒子充填層を概念的に示す図である。図7に示すように、本実施形態では、解析に際し、同じゾーン内では、焼結鉱粒子802のそれぞれが同じ直径Dp,iを有する球であるとしているが、焼結鉱粒子それぞれを表現する立体形状として他の多面体や曲面体を用いても構わない。尚、図7において、上から下に向かう矢印801は、空気の流れを示している。
【0051】
また、規定データ設定部403は、燃料(粉コークス)のモル重量Wc[kg/mol]、密度ρc[kg/m3]及び燃焼熱量Qc[J/mol]をそれぞれ設定する。
また、規定データ設定部403は、焼結原料の着火温度θc,f[℃]を設定する。本実施形態では、焼結原料の着火温度θc,fは、(7)式に示したように、ゾーンIIとゾーンIIIとの境界を規定するための温度として用いる(図6も参照)。尚、ゾーンIIとゾーンIIIとの境界を規定するための温度には、必要に応じて別の温度を用いても構わない。
【0052】
また、規定データ設定部403は、水のモル重量Ww[kg/mol]及び蒸発潜熱Qw[J/mol]をそれぞれ設定する。
【0053】
さらに、本実施形態では、規定データ設定部403は、焼結鉱粒子の比熱Cp[kJ/(kg・K)]、水の密度ρw[kg/m3]、空気の密度ρg[kg/m3]、定圧比熱Cpg[kJ/(kg・K)]、粘性率μg[Pa・s]及び熱伝導率λg[W/(m・K)]のそれぞれを、温度θ[℃]に依存する特性を有するものとして設定する。例えば、これらのそれぞれを、温度θ[℃]を独立変数とする低次の線形多項式として設定する。これらの線形多項式は、例えば、公知の文献の物性値のデータ表の値を近似関数化することにより得られる。
尚、これらのそれぞれの温度依存特性を非線形多項式で近似関数化して用いても構わないし、公知の文献の物性値のデータ表をそのまま用いたデータテーブル参照方式によって用いても構わない。また、これらのそれぞれのいくつか又は全ての温度依存特性は小さいものとして、ある値で代表させて用いても構わない。
また、規定データ設定部403は、例えば、ユーザによる入力装置460の操作の内容に基づいて、機長、すなわち原料給鉱部(端)から焼結鉱排鉱部(端)までの機長方向における長さla,5[m]を設定する。
さらに、規定データ設定部403は、例えば、ユーザによる入力装置460の操作の内容に基づいて、基台部161の上面の位置と、温度測定部170a、170b(の中心)のz軸方向における位置を設定する。尚、本実施形態では、温度測定部170b(の中心)から温度測定部170a(の中心)までのz軸方向における距離が150[mm]であるとする。
【0054】
[初期値設定部404]
初期値設定部404は、ユーザによる入力装置460の操作に基づいて、各ゾーンI〜Vについて、空気流入温度θgi,i[℃]、形状係数φs,i[−]の初期値θgi,i,0、φs,i,0を設定(HDD等に記憶)する。これらの値としては、過去の知見から得られた値を採用する。ここで、空気流入温度θgi,iは、各ゾーンI〜Vの焼結層内(のパレット温度計150の測温体が配置されている位置)に流入する空気の温度である。また、形状係数φs,iは、焼結鉱粒子の直径Dp,iに掛ける係数であり0〜1の間の値を有する。前述したように、本発明者らは、焼結層内の機長方向における温度分布を解析した結果と実測した結果とを比較した結果、焼結鉱粒子の伝熱に寄与する表面積が変化しないまま加熱・冷却が進行する場合と、変化しながら加熱・冷却が進行する場合とがあることを見出した。このような傾向は焼結完了帯で顕著となった。このことから、本発明者らは、焼結鉱粒子が融着を起こすこと等により、焼結鉱粒子の形状や焼結層内の粒子充填構造が変化し、図7に示したそれぞれの焼結鉱粒子の表面積の全てが伝熱に寄与しないと仮定した。そこで、焼結鉱粒子の表面積のうち、伝熱に寄与する面積を導出すべく、本発明者らは、本実施形態において、形状係数φs,iを導入した。
【0055】
[操業データ収集部405]
操業データ収集部405は、プロセスコンピュータ450から、圧力損失(ブロア吸引圧)ΔP[Pa]と、焼結層の層厚L[m]と、初期水分比Kw0[−]と、初期燃料比Kc0[−]が入力され、HDD等に記憶する。ここで、水分比Kwとは、焼結機100の前処理の造粒過程(造粒機、ミキサー)で投入する水分の焼結原料に対する重量比[kg-water/kg-焼結原料]である。また、燃料比Kcとは、焼結原料に対する燃料(粉コークス)の重量比[kg-coke/kg-焼結原料]である。
【0056】
[モデル格納部406]
本発明者らは、パレット温度計150の測定温度データから、焼結層内の機長方向における温度が指数関数的に変化するという知見を得た。また、伝熱工学における粒子体の熱収支を表す時間微分方程式の解析解の一般解には指数関数の項が含まれることが知られている。これらのことを考慮して、本発明者らは、伝熱工学における粒子体の熱収支を表す時間微分方程式の解析解により、焼結層内の機長方向における温度の変化を求めることを見出した。また、焼結層を構成する焼結鉱粒子を粒子体とみなした場合、粉体工学(粒子充填層工学)における知見から、本発明者らは、粒子充填層における流動抵抗、すなわち圧力損失ΔP[Pa]を焼結層の層厚L[m]で除した圧力変化率ΔP/L[Pa/m]を、焼結層内(パレット温度計150の測温体が配置されている位置)に流入する空気流速vg,i[m/sec]に関する多項式関数f1で表現することを見出した。
【0057】
〔粉体工学における粒子充填層内の圧力変化率と流速に関する関係式〕
粉体工学における粒子充填層内の圧力変化率と流速に関する関係は、以下の(19)式で表される。
【0058】
【数1】

【0059】
(19)式において、カンマの後のiは、前述したようにゾーンを識別するものである(i=1〜5はそれぞれゾーンI〜Vに対応する)。vg,iは、ゾーンiの焼結層内(パレット温度計150の測温体が配置されている位置)に流入する空気の流速(空気流速)[m/sec]である。ここで、Ckは圧力変化率ΔP/L[Pa/m]を表現する多項式関数の各項の係数であり、kは多項式関数を構成する空気流速vg[m/sec]の次数で、nは多項式関数の最高次数で、焼結鉱の粒子充填層の各ゾーンを模擬した粒子充填層の流動抵抗実験結果や公知の文献に記載のデータ表の値を多項式関数近似することによって、予め決定しておく。本実施形態では、(19)式で例示した如く、圧力変化率ΔP/L[Pa/m]を空気流速vg,iの線形多項式関数として表現し、例えばNewton法による収束計算法を用いて、空気流速vg,iをゾーン毎に計算するようにしている。次数nが低次であれば、解析的に空気流速vg,iを求解してもよい。また、(19)式は圧力変化率ΔP/L[Pa/m]を空気流速vg,iの線形多項式関数として表現した例を示しているが、(19)式のような線形多項式関数でなく、圧力変化率ΔP/L[Pa/m]を空気流速vg,iの非線形多項式関数で表現しても構わない。この場合は、例えば二分法のような収束計算法を用いて、空気流速vg,iをゾーン毎に計算することができる。或いは、粒子充填層内の圧力変化率と流速の関係式として一般に知られているErgunの式に前記定義の形状係数φs,iを付加して用いた式で空気流速vg,iをゾーン毎に計算しても構わない。尚、Ergunの式は、例えば「Ergun, S. : Fluid Flow through Packed Columns, Chem. Eng. Prog., Vol.48(1952), pp.89-94」に記載されている。
【0060】
〔伝熱工学に関する式;焼結鉱粒子の熱収支を表す時間微分方程式〕
本実施形態では、焼結鉱粒子と空気の対流熱伝達における焼結鉱粒子の熱収支を表す時間微分方程式を、以下の(20)式で表すものとする。
【0061】
【数2】

【0062】
(20)式においても、カンマの後のiは、ゾーンを識別するものである(i=1〜5はそれぞれゾーンI〜Vに対応する)。また、θp,i(t)は、各ゾーンiの始点を通過した時間を基準(すなわち、t=0)とする時間tにおけるゾーンiの焼結層内(のパレット温度計150の測温体が配置されている位置)の温度[℃]である。また、hi[W/(m2・K)]は、焼結鉱粒子まわりの対流熱伝達率であり、以下の(21)式で表される。
【0063】
【数3】

【0064】
(21)式に示すNuiは、焼結鉱粒子まわりの平均ヌッセルト数[−]である。また、(22)式に示すNuiは、例えば、焼結鉱粒子を球形と仮定したときの、焼結鉱球形粒子まわりの流体による対流熱伝達特性を、固体球まわりの平均ヌッセルト数として表現したものを例示したものである。一般に、伝熱工学における対流熱伝達について、固体球まわりの流体による対流熱伝達特性、すなわち固体球まわりの平均ヌッセルト数は、固体球まわりの流体の流速vを固体球径Dp等で無次元化表現するレイノルズ数Re[−]と、流体の物性値である粘性率μ、定圧比熱Cp、熱伝導率λを総括して無次元化表現するプラントル数Pr[−]との関数で表現できることが知られている。
そこで、本発明者らは、焼結層を構成する焼結鉱粒子まわりの対流熱伝達特性も同様にして、焼結層内(パレット温度計150の測温体が配置されている位置)に流入する空気の流速vg,i[m/sec]に関するレイノルズ数Reiと当該空気の物性値に関するプラントル数Priの関数f2で表現できることを見出し、焼結鉱の粒子充填層の各ゾーンを模擬した粒子充填層の対流熱伝達特性実験結果や公知の文献に記載のデータ表の値から当該関数の係数を同定し、予め決定しておく。本実施形態では、予め係数を決定しておいた(22)式を用いてNuiを決定し、その値を(21)式に代入することによって、hiの値を求めるようにしている。
尚、(22)式には、Nuiの必要に応じて任意の関数形を用いることが可能である。或いは、伝熱工学における固体球まわりの流体による対流熱伝達特性、すなわち固体球まわりの平均ヌッセルト数の特性式として一般に知られているRanz-Marchallの式や、当該式中の係数の値を焼結鉱の粒子充填層の各ゾーンを模擬した粒子充填層の対流熱伝達特性実験結果や公知の文献に記載のデータ表の値から必要に応じて同定した式を用いても構わない。尚、Ranz-Marchallの式は、例えば「Ranz, W. E. and Marsha11, W. R. : Evaporation from Drops I&II, Chem. Eng. Prog., Vol.48(1952), pp.141-146, 173-180」に記載されている。
また、Vp,iは、ゾーンiにおける焼結鉱粒子の体積[m3]であり、Ap,iは、ゾーンiにおける焼結鉱粒子の伝熱表面積[m2]である。本実施形態では、焼結鉱粒子を球形粒子とし、前記定義の形状係数φs,iを用いて伝熱表面積を定義して用いることとする。このとき、焼結鉱粒子の体積Vp,i及び伝熱表面積Ap,iは、それぞれ以下の(23)式、(24)式で表され、焼結鉱球形粒子まわりの空気のレイノルズ数Rei及びプラントル数Priは、(A)式、(B)式で表される。
【0065】
【数4】

【0066】
Rei=(vg,i・Dp,i・ρg,i)/μg,i ・・・(A)
Pri=(μg,i・Cp,i)/λg,i ・・・(B)
【0067】
また、Rwは、水分気化速度[mol/sec]であり、Rcは、燃料燃焼速度[mol/sec]である。
本実施形態では、(20)式の微分方程式を、各ゾーンの始点温度を直前のゾーンの終点温度(最終到達温度)とする境界条件で解くことにより、各ゾーンiの焼結層内の温度θp,i(t)を解析解としてそれぞれ求めることとする。この解析解において、以下の(25)式に示す時定数Ti[sec]を定義する。また、(25)式に(24)式を代入して、形状係数φs,iについて解くと、以下の(26)式に示す形状係数φs,iを求めることができる。
【0068】
【数5】

【0069】
〔水分凝縮帯(ゾーンII)における焼結鉱粒子の水分の質量収支を表す時間微分方程式〕
本実施形態では、焼結鉱粒子の水分の質量収支を表す時間微分方程式を、以下の(27)式で表すものとする。
【0070】
【数6】

【0071】
ここで、Kw(t)[−]は、ゾーンIIの始点を通過した時間を基準とする時間tにおける水分比である。水分比の定義は前述した通りである。水分凝縮帯であるゾーンIIの終点(t=t2)では水分は全て蒸発しているので、Kw(t2)=0となる。この条件のもとで、例えば水分気化速度RwがゾーンIIにおいて一定であると仮定して、(27)式を水分比Kw(t)について解くことにより解析解、すなわちゾーンIIにおける水分比の時間変化を求めることができる。この場合、解析解の一般解は1次関数である。或いは、水分気化速度RwがゾーンII内で一定であると仮定せずに任意の関数形を設定して(27)式を水分比Kw(t)について解いても構わない。尚、(27)式のこの他の変数は前述した通りである。
【0072】
〔赤熱帯(ゾーンIV)における焼結鉱粒子の燃料の質量収支を表す時間微分方程式〕
本実施形態では、焼結鉱粒子の燃料の質量収支を表す時間微分方程式を、以下の(28)式で表すものとする。
【0073】
【数7】

【0074】
ここで、Kc(t)[−]は、ゾーンIVの始点を通過した時間を基準とする時間tにおける燃料比である。燃料比の定義は前述した通りである。赤熱帯であるゾーンIVの終点(t=t4)では燃料は全て燃焼しているので、Kc(t4)=0となる。この条件のもとで、例えば燃料燃焼速度RcがゾーンIVにおいて一定であると仮定して、式(28)を燃料比Kc(t)について解くことにより解析解、すなわちゾーンIVにおける燃料比の時間変化を求めることができる。この場合、解析解の一般解は1次関数である。或いは、燃料燃焼速度RcがゾーンIV内で一定であると仮定せずに任意の関数形を設定して(28)式を燃料比Kc(t)について解いても構わない。尚、(28)式のこの他の変数は前述した通りである。
【0075】
尚、モデル格納部406には、前述した(19)式〜(28)式そのものの他に、(19)式〜(28)式に基づく各ゾーンI〜V毎の式、例えば各ゾーンI〜Vにおける(20)式の微分方程式を前記記載の境界条件でθp,i(t)について解いた式、Kw(t2)=0として(27)式の微分方程式をKw(t)について解いた式、Kc(t4)=0として(28)式の微分方程式をKc(t)について解いた式等を記憶しておいてもよい。
【0076】
[オンライン計算処理部407]
[[概要]]
オンライン計算処理部407で行われる処理の概要の一例を説明する。
まず、オンライン計算処理部407は、ゾーン解析部402で解析された結果と、操業データ収集部405で収集されたデータと、規定データ設定部403及び初期値設定部404で設定されたデータとを取得する。オンライン計算処理部407は、取得したデータを、モデル格納部406に記憶されたモデルに適用して、「温度測定部170a、170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数(モデル式)θp,iA(tiA)、θp,iB(tiB)を定めるパラメータ」を、各ゾーンII〜IVのそれぞれにおいて同定する。
【0077】
次に、オンライン計算処理部407は、同定したパラメータを使って、「『温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)』と『温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)』」を、例えば、(20)式で例示する時間微分方程式の解として、各ゾーンII〜IVのそれぞれにおいて求める。
【0078】
次に、オンライン計算処理部407は、「『温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)上の点』と、当該点とゾーン内における位置が相互に対応する『温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)上の点』」を、各ゾーンII〜IVのそれぞれにおいて抽出する。例えば、時間tの最大値と最小値を含み、且つ、それぞれの時間隔が略等間隔になる20個の時間における温度を抽出する。そして、オンライン計算処理部407は、抽出した「温度と時間」の値から外挿又は内挿を行って、「測定温度データが得られていない『焼結層の高さ方向(z軸方向)の位置』における温度データ」を、各ゾーンII〜IVのそれぞれにおいて導出する。以下の説明では、測定温度データが得られていない「焼結層の高さ方向(z軸方向)の位置」における温度データを、必要に応じて、「導出対象温度データ」と称する。そして、オンライン計算処理部407は、当該位置における「導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)」を定めるパラメータを導出する。そして、オンライン計算処理部407は、導出したパラメータを使って、「測定温度データが得られていない『焼結層の高さ方向(z軸方向)の位置』における導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)」を、各ゾーンII〜IVのそれぞれにおいて求める。
【0079】
ここで、オンライン計算処理部407は、IIゾーンにおけるパラメータとして、空気流入速度θgi,2、水分気化速度Rw、対流熱伝達率h2、時定数T2、形状係数φs,2及び空気流束vg,2を同定する。
また、オンライン計算処理部407は、IIIゾーンにおけるパラメータとして、空気流入温度θgi,3、時定数T3、形状係数φs,3及び空気流束vg,3を同定する。
また、オンライン計算処理部407は、IVゾーンにおけるパラメータとして、空気流入速度θgi,4、燃料燃焼速度Rc、対流熱伝達率h4、時定数T4、形状係数φs,4及び空気流束vg,4を同定する。
尚、本実施形態では、オンライン計算処理部407は、Vゾーンについては、前述した処理を行わないが、Vゾーンについても処理する場合、Vゾーンにおけるパラメータとして、空気流入温度θgi,5、時定数T5、形状係数φs,5及び空気流束vg,5を同定する。
【0080】
また、オンライン計算処理部407は、同一の高さ位置にある温度データ(測定温度データ、又は導出対象温度データ)であって、ゾーン内での位置が相互に対応する温度データから、(m−1)次多項式関数を導出して内挿又は外挿を行い、焼結層のパレット幅方向(x軸方向)の位置における温度を求める。ここで、mは、1つのパレット110において、パレット幅方向(x軸方向)に配置されているパレット温度計150の数であり、本実施形態では6になる。
オンライン計算処理部407は、パレット温度計150a〜150fの温度測定部170a、170bで測定された測定温度データのそれぞれについて以上の処理を個別に行う。
以上の処理を、パレット温度計150を具備したパレット110が焼結機100を1スイープする毎に逐次行うことにより、焼結層の任意の位置における温度(焼結層全体の3次元温度分布)を逐次得ることができる。
【0081】
[[パラメータの同定]]
次に、前述したゾーンII〜IVにおける温度データ(測定温度データ及び導出対象温度データ)に基づく関数θp,2A(t2A)、θp,2B(t2B)、θp,2C(t2C)、θp,3A(t3A)、θp,3B(t3B)、θp,3C(t3C)、θp,4A(t4A)、θp,4B(t4B)、θp,4C(t4C)を定めるパラメータを同定する処理の一例を説明する。尚、ここではゾーンVにおける温度データに基づく関数θp,5A(t5A)、θp,5B(t5B)、θp,5C(t5C)を定めるパラメータを同定する処理の一例も説明する。前述したように本実施形態では、ゾーンIの始点温度θp,1sと、ゾーンIの終点温度θp,1eとをゾーンII(水分凝縮帯)の始点温度θp,2sとし((1)式を参照)、且つ、ゾーンIのゾーン通過時間t1を0(ゼロ)としている((2)式を参照)。したがって、ゾーンIにおける温度θp,1(t)を定めるパラメータについては同定しない。
【0082】
(ゾーンII)
オンライン計算処理部407は、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,2、空気の粘性率μg,2及び焼結鉱粒子の粒子径Dp,2」と、初期値設定部404で設定された「形状係数の初期値φs,2,0」と、操業データ収集部405で得られた「圧力損失ΔP及び焼結層の層厚L」とにより(19)式からゾーンIIにおける空気流速vg,2を計算する。
【0083】
次に、オンライン計算処理部407は、初期値設定部404で設定された「初期水分比Kw0」と、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンIIのゾーン通過時間t2」と、規定データ設定部403で設定された「水の密度ρw、及び水のモル重量Ww」と、(23)式で計算される「ゾーンIIにおける焼結鉱粒子の体積Vp,2」とにより(27)式に基づく式から水分気化速度Rwを計算する。
【0084】
次に、オンライン計算処理部407は、前述したようにして計算した「ゾーンIIにおける空気流速vg,2」と、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,2、粘性率μg,2、熱伝導率λg,2及び定圧比熱Cp,2、及び焼結鉱粒子の直径Dp,2」とにより(22)式からNu2を求める。そして、オンライン計算処理部407は、(21)式から対流熱伝達率h2を計算する。
また、オンライン計算処理部407は、初期値設定部404で設定された「形状係数の初期値φs,2,0」と、規定データ設定部403で設定された「ゾーンIIにおける焼結鉱粒子の直径Dp,2」とにより(24)式からゾーンIIにおける焼結鉱粒子の伝熱表面積Ap,2を求める。
【0085】
そして、オンライン計算処理部407は、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンIIの終点温度θp,2e」と、規定データ設定部403で設定された「水分蒸発潜熱Qw」と、前述したようにして計算された「水分気化速度Rw」、「対流熱伝達率h2」及び「ゾーンIIにおける焼結鉱粒子の伝熱表面積Ap,2」とにより(20)式、(27)式に基づく式からゾーンIIの空気流入温度θgi,2の中間計算値θgi,2,tmpを求める。
【0086】
次に、オンライン計算処理部407は、(25)式より、ゾーンIIにおける時定数T2を計算する。そして、オンライン計算処理部407は、(26)式より、形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmpを求める。そして、オンライン計算処理部407は、形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,2(最初は初期値φs,2,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下であるか否かを判定する。
【0087】
この判定の結果、形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,2との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下でない場合、オンライン計算処理部407は、それまでに設定されている形状係数φs,2を、中間計算値φs,2,tmpに置き換える(最初は初期値φs,2,0を中間計算値φs,2,tmpに置き換える)。そして、オンライン計算処理部407は、この中間計算値φs,2,tmpに置き換えた形状係数φs,2を用いて、前述した「空気流速vg,2」、「水分気化速度Rw」、「空気流入温度θgi,2の中間計算値θgi,2,tmp」、「形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmp」を再度求める。オンライン計算処理部407は、このような処理を、形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,2との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になるまで繰り返し行う。
【0088】
そして、形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,2との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になると、オンライン計算処理部407は、空気流入温度θgi,2の中間計算値θgi,2,tmpと、それまでに設定されている空気流入温度θgi,2(最初は初期値θgi,2,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下であるか否かを判定する。この判定の結果、空気流入温度θgi,2の中間計算値θgi,2,tmpと、それまでに設定されている空気流入温度θgi,2との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下でない場合、オンライン計算処理部407は、それまでに設定されている空気流入温度θgi,2を、中間計算値θgi,2,tmpに置き換える(最初は初期値θgi,2,0を中間計算値θgi,2,tmpに置き換える)。そして、オンライン計算処理部407は、この中間計算値θgi,2,tmpを用いて、前述した「空気流速vg,2」、「水分気化速度Rw」、「空気流入温度θgi,2の中間計算値θgi,2,tmp」、「形状係数φs,2の中間計算値φs,2,tmp」の計算を繰り返し行う。
【0089】
そして、ゾーンIIの空気流入温度θgi,2の中間計算値θgi,2,tmpと、それまでに設定されているゾーンIIの空気流入温度θgi,2(最初は初期値θgi,2,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になると、オンライン計算処理部407は、そのときに得られた「空気流速vg,2」、「水分気化速度Rw」、「空気流入温度θgi,2」、「形状係数φs,2」を最終計算値として確定し、これらを同定パラメータとしてパラメータ蓄積部408に記憶する。
【0090】
(ゾーンIII)
オンライン計算処理部407は、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,3、空気の粘性率μg,3及び焼結鉱粒子の粒子径Dp,3」と、初期値設定部404で設定された「形状係数の初期値φs,3,0」と、操業データ収集部405で得られた「圧力損失ΔPと焼結層の層厚L」とにより(19)式からゾーンIIIにおける空気流速vg,3を計算する。
【0091】
前述したように本実施形態では、乾燥帯であるゾーンIIIの空気流入温度θgi,3は、赤熱帯であるゾーンIVの空気流入温度θgi,4と等しいと仮定している。そこで、オンライン計算処理部407は、ゾーンIIIの空気流入温度θgi,3として、ゾーンIVの空気流入温度θgi,4を設定する。ゾーンIVの空気流入温度θgi,4を求め方については後述する。尚、空気流入温度θgi,3には、他の知見等に基づき、空気流入温度θgi,4以外の別の温度を設定しても構わない。
【0092】
次に、オンライン計算処理部407は、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンIIIの始点温度θp,3s及び終点温度θp,3e」と、初期値設定部404で設定された「空気流入温度θgi,3,0」と、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンIIIのゾーン通過時間t3」とを用いてゾーンIIIにおける時定数T3を求める。また、オンライン計算処理部407は、「焼結鉱粒子の比熱Cp,3」を規定データ設定部403から読み取る。
【0093】
また、オンライン計算処理部407は、前述したようにして計算した「ゾーンIIIにおける空気流速vg,3」と、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,3、粘性率μg,3、熱伝導率λg,3及び定圧比熱Cpg,3、及び焼結鉱粒子の直径Dp,3」とにより(22)式からNu3を求める。そして、オンライン計算処理部407は、(21)式から対流熱伝達率h3を計算する。
【0094】
そして、オンライン計算処理部407は、(23)式〜(26)式より、形状係数φs,3の中間計算値φs,3,tmpを求める。そして、オンライン計算処理部407は、形状係数φs,3の中間計算値φs,3,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,3(最初は初期値φs,3,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下であるか否かを判定する。
この判定の結果、形状係数φs,3の中間計算値φs,3,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,3との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下でない場合、オンライン計算処理部407は、それまでに設定されている形状係数φs,3を、中間計算値φs,3,tmpに置き換える(最初は初期値φs,3,0を中間計算値φs,3,tmpに置き換える)。そして、オンライン計算処理部407は、この中間計算値φs,3,tmpに置き換えた形状係数φs,3を用いて、前述した「空気流速vg,3」、「形状係数φs,3の中間計算値φs,3,tmp」を再度求める。オンライン計算処理部407は、このような処理を、形状係数φs,3の中間計算値φs,3,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,3との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になるまで繰り返し行う。
【0095】
そして、形状係数φs,3の中間計算値φs,3,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,3との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になると、オンライン計算処理部407は、そのときに得られた「空気流速vg,3」、「形状係数φs,3」を最終計算値として確定し、これらを同定パラメータとしてパラメータ蓄積部408に記憶する。
【0096】
(ゾーンIV)
オンライン計算処理部407は、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,4、空気の粘性率μg,4及び焼結鉱粒子の粒子径Dp,4」と、初期値設定部404で設定された「形状係数の初期値φs,4,0」と、操業データ収集部405で得られた「圧力損失ΔPと焼結層の層厚L」とにより(19)式からゾーンIVにおける空気流速vg,4を計算する。
【0097】
次に、オンライン計算処理部407は、初期値設定部404で設定された「初期燃料比Kc0」と、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンIVのゾーン通過時間t4」と、規定データ設定部403で設定された「燃料の密度ρc、及び燃料のモル重量Wc」と、(23)式で計算される「ゾーンIVにおける焼結鉱粒子の体積Vp,4」とにより(28)式に基づく式から燃料燃焼速度Rcを計算する。
【0098】
次に、オンライン計算処理部407は、前述したようにして計算した「ゾーンIVにおける空気流速vg,4」と、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,4、粘性率μg,4、熱伝導率λg,4及び定圧比熱Cpg,4、及び焼結鉱粒子の直径Dp,4」とにより(22)式からNu4を求める。そして、オンライン計算処理部407は、(21)式から対流熱伝達率h4を計算する。
また、オンライン計算処理部407は、初期値設定部404で設定された「形状係数の初期値φs,4,0」と、規定データ設定部403で設定された「ゾーンIVにおける焼結鉱粒子の直径Dp,4」とにより(24)式からゾーンIVにおける焼結鉱粒子の伝熱表面積Ap,4を求める。
【0099】
そして、オンライン計算処理部407は、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンIVの終点温度θp,4e」と、規定データ設定部403で設定された「燃料の燃焼熱量Qc」と、前述したようにして計算された「燃料燃焼速度Rc」、「対流熱伝達率h4」及び「ゾーンIVにおける焼結鉱粒子の伝熱表面積Ap,4」とにより(20)式、(28)式に基づく式からゾーンIVの空気流入温度θgi,4の中間計算値θgi,4,tmpを求める。
【0100】
次に、オンライン計算処理部407は、(25)式より、ゾーンIVにおける時定数T4を計算する。そして、オンライン計算処理部407は、(26)式より、形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmpを求める。そして、オンライン計算処理部407は、形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,4(最初は初期値φs,4,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下であるか否かを判定する。
【0101】
この判定の結果、形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,4との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下でない場合、オンライン計算処理部407は、それまでに設定されている形状係数φs,4を、中間計算値φs,4,tmpに置き換える(最初は初期値φs,4,0を中間計算値φs,4,tmpに置き換える)。そして、オンライン計算処理部407は、この中間計算値φs,4,tmpに置き換えた形状係数φs,4を用いて、前述した「空気流速vg,4」、「燃料燃焼速度Rc」、「空気流入温度θgi,4の中間計算値θgi,4,tmp」、「形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmp」を再度求める。オンライン計算処理部407は、このような処理を、形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,4との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になるまで繰り返し行う。
【0102】
そして、形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,4との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になると、オンライン計算処理部407は、空気流入温度θgi,4の中間計算値θgi,4,tmpと、それまでに設定されている空気流入温度θgi,4(最初は初期値θgi,4,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下であるか否かを判定する。この判定の結果、空気流入温度θgi,4の中間計算値θgi,4,tmpと、それまでに設定されている空気流入温度θgi,4との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下でない場合、オンライン計算処理部407は、それまでに設定されている空気流入温度θgi,4を、中間計算値θgi,4,tmpに置き換える(最初は初期値θgi,4,0を中間計算値θgi,4,tmpに置き換える)。そして、オンライン計算処理部407は、中間計算値θgi,4,tmpに置き換えた空気流入温度θgi,4を用いて、前述した「空気流速vg,4」、「燃料燃焼速度Rc」、「空気流入温度θgi,4の中間計算値θgi,4,tmp」、「形状係数φs,4の中間計算値φs,4,tmp」の計算を繰り返し行う。
【0103】
そして、ゾーンIVの空気流入温度θgi,4の中間計算値θgi,4,tmpと、それまでに設定されているゾーンIVの空気流入温度θgi,4(最初は初期値θgi,4,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になると、オンライン計算処理部407は、そのときに得られた「空気流速vg,4」、「燃料燃焼速度Rc」、「空気流入温度θgi,4」、「形状係数φs,4」を最終計算値として確定し、これらを同定パラメータとしてパラメータ蓄積部408に記憶する。
【0104】
(ゾーンV)
オンライン計算処理部407は、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,5、空気の粘性率μg,5及び焼結鉱粒子の粒子径Dp,5」と、初期値設定部404で設定された「形状係数の初期値φs,5,0」と、操業データ収集部405で得られた「圧力損失ΔPと焼結層の層厚L」とにより(19)式からゾーンVの空気流速vg,5を計算する。
【0105】
前述したように本実施形態では、焼結完了帯であるゾーンVの空気流入温度θgi,5は、水分凝縮帯であるゾーンIIの空気流入温度θgi,2と等しいと仮定している。そこで、オンライン計算処理部407は、空気流入温度θgi,5として、ゾーンIIの空気流入温度θgi,2を設定する。ゾーンIIの空気流入温度θgi,2の求め方は前述した通りである。尚、空気流入温度θgi,5には、他の知見等に基づき、空気流入温度θgi,2以外の別の温度を設定しても構わない。
【0106】
次に、オンライン計算処理部407は、ゾーン解析部402で得られた「ゾーンVの始点温度θp,5s及び終点温度θp,5eと、初期値設定部404で設定された「空気流入温度θgi,5,0」とを用いてゾーンVの時定数T5を求める。また、オンライン計算処理部407は、「焼結鉱粒子の比熱Cp,5」を規定データ設定部403から読み取る。
【0107】
また、オンライン計算処理部407は、前述したようにして計算した「ゾーンVの空気流速vg,5」と、規定データ設定部403で設定された「空気の密度ρg,5、粘性率μg,5、熱伝導率λg,5及び定圧比熱Cpg,5、及び焼結鉱粒子の直径Dp,5」とにより(22)式からNu5を求める。そして、オンライン計算処理部407は、(21)式から対流熱伝達率h5を計算する。
【0108】
そして、オンライン計算処理部407は、(23)式〜(26)式より、形状係数φs,5の中間計算値φs,5,tmpを求める。そして、オンライン計算処理部407は、形状係数φs,5の中間計算値φs,5,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,5(最初は初期値φs,5,0)との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下であるか否かを判定する。
この判定の結果、形状係数φs,5の中間計算値φs,5,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,5との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下でない場合、オンライン計算処理部407は、それまでに設定されている形状係数φs,5を、中間計算値φs,5,tmpに置き換える(最初は初期値φs,5,0を中間計算値φs,5,tmpに置き換える)。そして、オンライン計算処理部407は、この中間計算値φs,5,tmpに置き換えた形状係数φs,5を用いて、前述した「空気流速vg,5」、「形状係数φs,5の中間計算値φs,5,tmp」を再度求める。オンライン計算処理部407は、このような処理を、形状係数φs,5の中間計算値φs,5,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,5との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になるまで繰り返し行う。
【0109】
そして、形状係数φs,5の中間計算値φs,5,tmpと、それまでに設定されている形状係数φs,5との差の絶対値が収束判定基準値EPS以下になると、オンライン計算処理部407は、そのときに得られた「空気流速vg,5」、「形状係数φs,5」を最終計算値として確定し、これらを同定パラメータとしてパラメータ蓄積部408に記憶する。
【0110】
[[測定温度データに基づく関数の導出]]
次に、オンライン計算処理部407は、以上のようにして同定された「各ゾーンII〜IV(V)におけるパラメータ」をそれぞれ(20)式で例示する時間微分方程式の解として得られる関数に適用して、各ゾーンII〜IV(V)における「『温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)』と『温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)』」を求める。ここで、iは、既に説明したようにゾーンを識別するものであり、1〜5の整数となる。
【0111】
[[処理の流れ]]
以上の[[パラメータの同定]]と[[測定温度データに基づく関数の導出]]は、例えば、以下の順序で行われる。
(1)焼結機100において、焼結原料を積載して搬送する無端帯状のパレット群の中から、パレット温度計150を装備したパレット110を1つ指定する。
(2)(1)で指定したパレット110に配置された複数のパレット温度計150a〜fの中から、パレット温度計150を1つ指定する。
(3)(2)で指定したパレット温度計150の中から、一方の温度測定部170を指定する。
(4)(3)で指定したパレット温度計150の温度測定部170(例えば温度測定部170a)で得られた測定温度データについての、ゾーン解析部402で解析された結果を使って、パラメータを同定し、測定温度データに基づく関数(例えばθp,iA(tiA))を導出する。
(5)(3)で指定したパレット温度計150の他方の温度測定部170(例えば温度測定部170b)で得られた測定温度データについての、ゾーン解析部402で解析された結果を使って、パラメータを同定し、測定温度データに基づく関数(例えばθp,iB(tiB))を導出する。
尚、パラメータの同定に際し、導出する対象の関数から明らかに外れている測定温度データについては採用しないようにする。
【0112】
(6)(1)で指定したパレット110に配置された複数のパレット温度計150a〜fの中から、(2)で指定したパレット温度計150以外の、未指定のパレット温度計150を1つ指定する。
(7)(6)で指定したパレット温度計150に対して、(3)〜(5)の処理を行う。
(8)(1)で指定したパレット110に配置された複数のパレット温度計150a〜fの中から、未指定のパレット温度計150がなくなるまで(6)、(7)の処理を繰り返し行う。
本実施形態では、(1)で指定するパレット温度計150を装備したパレット110において、パレット温度計150の数が6個であるので、(3)〜(5)の処理が6回行われることになる。
また、焼結機100において、焼結原料を積載して搬送する無端帯状のパレット群において、パレット温度計150を装備したパレット110が複数ある場合には、その数(回数)だけ(1)〜(8)の処理を繰り返し行う。
【0113】
例えば、ゾーンIV(赤熱帯)における「『温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)』と『温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)』」は、それぞれ(−tiA/T4A)および(−tiB/T4B)を変数とする指数関数で表される。
【0114】
当該関数それぞれにおいて、添字Aは、温度測定部170aが配置されている位置のものであることを示し、添字Bは、温度測定部170bが配置されている位置のものであることを示す。また、時間t4A、t4Bは、それぞれ、パレット温度計150の温度測定部170a、170bがゾーンIVに入ったときの時間を0(ゼロ)としたときの時間である。このことは、他のゾーンII〜IV(V)の温度θp,iA(tiA)、θp,iB(tiB)についても同じである。
【0115】
[[導出対象温度データを定めるためのパラメータの同定]]
オンライン計算処理部407は、各ゾーンII〜IV(V)における「温度測定部170a、170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)、θp,iB(tiB)」のうち、同一のパレット温度計150から得られたものを選択する。
次に、オンライン計算処理部407は、温度測定部170a、170bの位置の情報を、規定データ設定部403から読み出す。例えば、オンライン計算処理部407は、基台部161の上面から温度測定部170b(の中心)までのz軸方向における距離(前述したように本実施形態では30[mm])と、温度測定部170b(の中心)から温度測定部170a(の中心)までのz軸方向における距離(本実施形態では150[mm])とを、温度測定部170a、170bの位置の情報の一例として、規定データ設定部403から読み出す。
【0116】
次に、オンライン計算処理部407は、「温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)上の点」と、当該点とゾーン内での位置が相互に対応する「温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)上の点」との組を複数抽出する。前述したように本実施形態では、各ゾーンII〜IV(V)における時間tの最大値と最小値を含み、且つ、それぞれの時間隔が略等間隔になる20個の時間における温度を、それぞれの関数θp,iA(tiA)、θp,iB(tiB)から抽出する。オンライン計算処理部407は、この処理をゾーンII〜IV(V)に個別に行う。
【0117】
次に、オンライン計算処理部407は、例えば、抽出した点の組の値に対して外挿又は内挿を行って、z軸方向の所定の位置における導出対象温度データを求める。オンライン計算処理部407は、この処理をゾーンII〜IV(V)毎に個別に行う。
次に、オンライン計算処理部407は、導出対象温度データを使って、前記z軸方向の指定された位置における導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)を定めるためのパラメータを同定する。このパラメータの同定は、例えば、前述した[[パラメータの同定]]で説明したのと同じ方法で行うことができる。オンライン計算処理部407は、この処理をz軸方向に任意の所定の位置における導出対象温度データに対して実施し、z軸方向に任意の所定の位置における関数θp,iC(tiC)を定めるためのパラメータを同定することができる。そして、オンライン計算処理部407は、この処理をゾーンII〜IV(V)毎に個別に行う。尚、パラメータの同定に際し、導出する対象の関数から明らかに外れている導出対象温度データについては採用しないようにする。
【0118】
[[導出対象温度データに基づく関数の導出]]
次に、オンライン計算処理部407は、以上のようにして同定された「各ゾーンII〜IV(V)におけるパラメータ」をそれぞれ(20)式で例示する時間微分方程式の解として得られる関数に適用して、「z軸方向の指定された位置における導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)」を、各ゾーンII〜IV(V)においてそれぞれ求める。
【0119】
例えば、ゾーンIVにおける「z軸方向の指定された位置における導出対象温度データに基づく関数θp,4C(t4C)」は、(−t4C/T4C)を変数とする指数関数で表される。
【0120】
オンライン計算処理部407は、以上の処理を、全てのパレット温度計150a〜150fについて実行する。
【0121】
[[焼結層の高さ方向における所望の位置での温度の導出方法の一例]]
図8は、焼結層のゾーンIV(赤熱帯)の領域と、測定温度データと、導出対象温度データの一例を示す図である。
図8に示す例では、温度測定部170aにより測定されたゾーンIVの測定温度データに基づく関数901と、温度測定部170bにより測定されたゾーンIVの測定温度データに基づく関数902とが得られたものとする。また、図8に示す例では、基台部161の上面(焼結層の床部)から温度測定部170b(の中心)までのz軸方向における距離をLBCと表記し、温度測定部170b(の中心)から温度測定部170a(の中心)までのz軸方向における距離をLABと表記している。
【0122】
また、図8に示す例では、温度測定部170aがゾーンIVに入った地点をA1で表記し、温度測定部170aがゾーンIVから出た地点をA2で表記している。同様に、温度測定部170bがゾーンIVに入った地点をB1で表記し、温度測定部170bがゾーンIVから出た地点をB2で表記している。
【0123】
図8の点A1と点A2とを結ぶ直線と、点B1と点B2とを結ぶ直線と、で囲まれる領域(図8の斜線で示す領域)がゾーンIVに対応する。尚、図8の横軸は時間であるので、当該時間と、平均パレット速度vpとを掛け合わせることにより、当該時間を、原料給鉱部からの距離に換算することができる。また、全てのパレット温度計150a〜150fについて図8の斜線で示す領域を求め、それらの領域の関数を基にパレット幅方向に内挿又は外挿を行うことで、ゾーンIVの3次元空間を得ることができる。このことは、その他のゾーンについても同じである。
【0124】
図9は、測定温度データに基づく関数901、902から導出対象温度データに基づく関数903を求める様子の一例を概念的に示す図である。
図9において、例えば、測定温度データに基づく関数901上の点901eは、温度測定部170aがゾーンIVから出た地点における測定温度データによるものである。また、測定温度データに基づく関数902上の点902eは、温度測定部170bがゾーンIVから出た地点における測定温度データによるものである。よって、これらの点901e、902eは、ゾーンIVにおける位置が相互に対応する点となる。
【0125】
また、本実施形態では、基台部161の上面(焼結層の床部)から温度測定部170b(の中心)までのz軸方向における距離をLBCは30[mm]であり、温度測定部170b(の中心)から温度測定部170a(の中心)までのz軸方向における距離をLABは150[mm]である。よって、以下の(29)式が成り立つ。
AB:LBC=5:1 ・・・(29)
また、図5に示したように、各ゾーンI〜IVは、下部であるほど(焼結層の底部に近い位置であるほど)機長方向の長さが長くなることが知られている。
【0126】
以上のことから、点901e、902eを結ぶ直線を、点902eの方向に外挿し、点901e、902eを結ぶ直線の長さの1/5の長さになる点903eを導出対象温度データ903eとする。このような処理を、例えば、時間t4A、t4Bの最大値と最小値を含み、且つ、それぞれの時間隔が略等間隔になる20個の時間について行い、20個の導出対象温度データを求め、それらから、導出対象温度データに基づく関数903を求める。尚、点901e、902eの間の高さの点を導出対象温度データとする際には、点901e、902eに基づく内挿を行うようにする。さらに、求めたい導出対象温度データ点903eの高さが点901eよりも上にある場合には、点901e、902eを結ぶ直線を、点901eの方向に外挿を行うようにする。
【0127】
図8に示す例では、基台部161の上面(焼結層の床部、すなわちz=0)において、IVゾーンの導出対象温度データに基づく関数903を求めた例を示す。基台部161の上面(焼結層の床部)におけるゾーンIVの開始地点をC1で表記し、終了地点をC2で表記する。この基台部161の上面(焼結層の床部)におけるゾーンIVの終了地点C2がBTPに対応する。
尚、曲線903を求めるに際し、図9に示す例では、説明のため、指定した一つのパレット温度計150の測定温度データ901、902及び導出対象温度データ903について、これらのゾーンIVの開始地点の温度θp,4sA、θp,4sB、θp,4sCの点が一致する例を示しているが、サンプリング誤差や測定ノイズによる誤差等の外乱により、これらの点が一致しない場合には、例えば、これらの点が一致するように、θp,4sA、θp,4sB、θp,4sC値を変更したりすることができる。
オンライン計算処理部407は、以上の処理を、全てのパレット温度計150a〜150fについて個別に行う。
【0128】
[[焼結層のパレット幅方向における所望の位置での温度の導出]]
前述したように、本実施形態では、指定した一つのパレット温度計150において、焼結層の高さ方向における所望の位置での温度を、焼結層内の物理現象を定量的に表現するパラメータを表現するモデルに基づいて求めるようにした。本実施形態では、これに加えて、焼結層のパレット幅方向における所望の位置での温度を、焼結層の同一の高さ位置における温度データ(測定温度データ、導出対象温度データ)に基づき、空間的に補間して求めるようにする。
【0129】
具体的に説明すると、本実施形態では、オンライン計算処理部407は、まず初めに、各ゾーンII〜IV(V)における指定する機長方向のy座標位置について、同一の焼結層高さ位置での温度データとして、焼結層高さ位置が相互に対応する温度データ(測定温度データ、導出対象温度データ)を、前記同定したパラメータに基づく関数θp,ijA(tiA)、θp,ijB(tiB)、θp,ijC(tiC)と前記指定した機長方向y座標位置に対応する時間tiA、tiB、tiCの情報から抽出又は生成する。
ここで、iは前述したようにゾーンを識別するものであり(i=1〜5はそれぞれゾーンI〜Vに対応する)、jはパレット幅方向(x軸方向)に配置されているパレット温度計150を識別する1〜mまでの整数値である。本実施形態ではm=6であり、j=1〜6がそれぞれパレット温度計150a〜fに対応する。
次に、オンライン計算処理部407は、前記抽出したm個の温度データから、各ゾーンII〜IV(V)における指定する機長方向のy座標位置について、同一の焼結層高さ位置における焼結層のパレット幅方向(x軸方向)の温度分布を表現する(m−1)次の多項式関数を導出する。このとき、(m−1)次の多項式関数の係数はm個の温度データから代数的に求めることができるし、必要に応じて最小二乗法等を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
図10は、あるゾーンにおけるある機長方向位置での同一の焼結層高さ位置のパレット幅方向の温度の変化を表す関数の一例を示す図である。
図10において、温度データ1101〜1107は、同一の焼結層高さ位置の温度データであり、曲線1100が、それらから導出された多項式関数を示している。
尚、本実施形態では、サイドウォール114に直近の位置にパレット温度計150a、150fを配置しているので、サイドウォール114に直近の領域における焼結層の温度も直接的に且つ正確に測定することができる。
そして、本実施形態では、前述した各ゾーンII〜IV(V)において指定する機長方向位置について、同一の焼結層高さ位置での温度データの抽出又は生成にあたっては、各ゾーンII〜IV(V)における時間tの最大値と最小値を含み、且つ、それぞれの時間隔が略等間隔になる時間における温度データを抽出又は生成するようにして、それぞれ同一の焼結層高さ位置における焼結層のパレット幅方向(x軸方向)の温度分布を表現する(m−1)次の多項式関数を導出することにより、これら導出した(m−1)次の多項式関数を用いて、最終的に、焼結層のパレット幅方向(x座標)・機長方向(y座標)・高さ方向(z座標)における所望の位置での焼結層の温度を得る。
【0131】
[[BTPの導出]]
以上のようにして、焼結層のパレット幅方向(x座標)・機長方向(y座標)・高さ方向(z座標)における所望の位置での焼結層の温度が得られるので、オンライン計算処理部407は、焼結層内の3次元温度分布を得ることができる。この他に、本実施形態では、オンライン計算処理部407は、焼結機の操業指標として重要なBTPを導出するようにしている。
そのために、本実施形態では、オンライン計算処理部407は、一つのパレット温度計150で得られた基台部161の上面(焼結層の床部、すなわちz=0)におけるIIゾーン〜IVゾーンの導出対象温度データに基づく関数(θp,2C(t2C)、θp,3C(t3C)、θp,4C(t4C))をゾーンの境界で繋ぐ。次に、オンライン計算処理部407は、当該繋いだ関数から、ゾーンIVのゾーン通過時間t4C及びゾーン境界時間ta,4Cを求め(図6や(11)式を参照)、ゾーンIVのゾーン通過時間t4C又はゾーン境界時間ta,4Cと平均パレット速度vpとを掛け合わせることによりBTPを導出する。このとき、平均パレット速度vpは、パレット温度計150が焼結鉱排鉱部に到達後に(15)式及び(16)式で算出して用いてもよいし、パレット温度計150がIVゾーンから出た時点で(15´)式及び(16´)式で算出して用いてもよい。
オンライン計算処理部407は、このようなBTPの導出を、パレット幅方向(x軸方向)に配置されているm個のパレット温度計150毎に実施し、それぞれで得られたパレット幅方向(x軸方向)のm個のBTPを用いて、パレット幅方向(x軸方向)のBTP分布を表現する(m−1)次の多項式関数を導出する。これにより、本実施形態では、BTPのパレット幅方向(x軸方向)の分布を導出することができる。
【0132】
本実施形態では、オンライン計算処理部407は、パレット温度計150が原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する度に(1スイープする度に)、「焼結層の各ゾーンI〜Vの領域」と、「焼結層の任意の位置における温度(焼結層全体の3次元温度分布)」と、「BTPのパレット幅方向(x軸方向)分布」とを繰り返し導出する。
【0133】
[オンライン操業監視表示部409]
オンライン操業監視表示部409は、オンライン計算処理部407で得られた「『焼結層の各ゾーンI〜Vの領域』と、『焼結層の任意の位置における温度(焼結層全体の3次元温度分布)』と、『BTPのパレット幅方向(x軸方向)分布』とに基づいて、それらを表示する表示データを生成して表示装置470に表示する。
【0134】
図11は、焼結層のゾーンIVの概略の一例を3次元的に表現して示した図である。図11において、パレット幅方向(x軸方向)の側面と底面とを斜線で示した領域がゾーンIV(赤熱帯)となる。また、図11では図示を省略するが、この領域内における温度の分布を、例えば、温度が同値である任意の等値線の表示や、所定の温度範囲毎の色分け表示等を行うことによって、表示することができる。尚、温度の分布を表示する方法は、公知の技術で実現できるので、その詳細な説明を省略する。等値線については、例えば、特許第3814143号公報に記載の技術を用いて探索することができる。
【0135】
また、図11において、BTPの表記の横に付されている矢印が指している破線1201がBTPのパレット幅方向(x軸方向)分布となる。これにより、オペレータは、パレット幅方向(x軸方向)にBTPがどのように分布しているのかを把握することができる。尚、図11では、BTPのパレット幅方向(x軸方向)分布を表現する破線1201を直線で示しているが、オンライン計算処理部407におけるBTPのパレット幅方向(x軸方向)分布の導出結果によっては、当該破線1201は曲線になる。このことは、後述の[変形例]で述べるように、ゾーンIVの側面を構成する直線1202a〜1202eについても同じである。
【0136】
本実施形態では、オンライン計算処理部407は、パレット温度計150が原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する度に(1スイープする度に)、「焼結層の各ゾーンI〜Vの領域」と、「焼結層の任意の位置における温度(焼結層全体の3次元温度分布)」と、「BTPのパレット幅方向(x軸方向)分布」とを得る。よって、オンライン操業監視表示部409は、これらの情報が得られる度に(パレット温度計150が1スイープする度に)、表示の更新を行うことができる。また、このとき、パレット温度計150を装備するパレット110は、無端帯状に連結されて周回する複数のパレットの中で1つに限定される必要はなく、複数設置し、各パレットのスイープを追いながら、前記表示の更新を行うことができる。
【0137】
尚、ここでは、ゾーンIVについてのみ、領域と温度の分布との表示を行う場合を例に挙げて説明した。しかしながら、その他のゾーンについても、ゾーンIVと同様に、領域と温度の分布とを表示するようにしてもよい。また、ゾーンI〜Vのうちの全部又は一部の複数のゾーンについて、それらのゾーンの領域と温度の分布とを組み合わせて同時に(例えば同じ画面上に)表示するようにしてもよい。
【0138】
[動作フローチャート]
次に、図12のフローチャートを参照しながら、焼結プロセス操業監視装置400の処理動作の一例を説明する。
まず、ステップS1において、事前設定が行われる。具体的に説明すると、規定データ設定部403は、ユーザによる入力装置460の操作に基づいて、各種の定数と必要に応じてその温度依存特性関数とを設定(HDD等に記憶)する。
次に、ステップS2において、初期値設定が行われる。具体的に説明すると、初期値設定部404は、ユーザによる入力装置460の操作に基づいて、各ゾーンI〜Vについて、空気流入温度θgi,0[℃]、形状係数φs,i,0[−]を設定(HDD等に記憶)する。
【0139】
次に、温度データ収集部401は、パレット温度計150が、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動したときに得られたパレット温度計150の測定温度データθp(ta)(1スイープ分のデータ)を取得するまで待機する。パレット温度計150の測定温度データθp(ta)が得られると(ステップS3)、ステップS4に進む。ステップS4に進むと、操業データ収集部405は、プロセスコンピュータ450から入力されてHDD等に記憶しておいた操業データとして、圧力損失(ブロア吸引圧)ΔP[Pa]と、焼結層の層厚L[m]と、初期水分比Kw0[−]と、初期燃料比Kc0[−]とを読み出す。
【0140】
次に、ステップS5において、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)に基づいて、各ゾーンの境界の温度(ゾーン境界温度)θp(0)、θp(ta,min)、θp(ta,cf)、θp(ta,max)θp(t´a,max)と、ゾーン境界時間ta,1(=0)、ta,2(=ta,min)、ta,3(=ta,cf)、ta,4(=ta,max)、ta,5(=t´a,min)とを読み出す。
次に、ステップS6において、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)に基づいて、各ゾーンの始点温度θp,is((1)式、(3)式、(6)式、(9)式、(12)式)・終点温度θp,ie((1)式、(4)式、(7)式、(10)式、(13)式)と、ゾーン通過時間ti((2)式、(5)式、(8)式、(11)式、(14)式)とを設定する。
【0141】
次に、ステップS7において、ゾーン解析部402は、パレット温度計150の測定温度データθp(ta)に基づいて、(15)式の計算を行って、平均パレット速度vpを設定する。また、ゾーン解析部402は、ゾーン通過時間tiと平均パレット速度vpとに基づいて、(17)式の計算を行って、各ゾーンのゾーン長liを設定する。また、ゾーン解析部402は、各ゾーンのゾーン長liに基づいて(18)式の計算を行って、各ゾーンのゾーン位置la,iを設定する。
【0142】
次に、ステップS8において、オンライン計算処理部407によって、上述したようにII〜IVゾーンのオンライン計算処理が行われ、「各ゾーンI〜IVの測定温度データに基づく関数(θp,2A(t2A)、θp,3A(t3A)、θp,4A(t4A)、θp,2B(t2B)、θp,3B(t3B)、θp,4B(t4B))と、導出対象温度データに基づく関数(θp,2C(t2C)、θp,3C(t3C)、θp,4C(t4C))」を得る。
【0143】
次に、ステップS9において、オンライン計算処理部407は、ステップS8で得られた「各ゾーンI〜IVの測定温度データに基づく関数(θp,2A(t2A)、θp,3A(t3A)、θp,4A(t4A)、θp,2B(t2B)、θp,3B(t3B)、θp,4B(t4B))と、導出対象温度データに基づく関数(θp,2C(t2C)、θp,3C(t3C)、θp,4C(t4C))」に基づいて、各ゾーンI〜IVにおける焼結層内の3次元温度分布と、BTPのパレット幅方向(x軸方向)分布と、を含む操業監視情報を生成する。
【0144】
次に、ステップS10において、オンライン操業監視表示部409は、操業監視情報に基づく表示データを生成して表示装置470に表示する(図11を参照)。
最後に、ステップS11において、温度データ収集部401は、焼結機100の操業監視を終了するか否かを判定する。この判定の結果、焼結機100の操業監視を終了しない場合には、ステップS3に戻り、次のスイープ分のデータに基づく焼結機100の操業監視を行う。一方、焼結機100の操業監視を終了する場合には、図12のフローチャートによる処理を終了する。
【0145】
[まとめ]
以上のように本実施形態では、パレット温度計150が、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動したときに得られたパレット温度計150の温度測定部170a、170bで測定された測定温度データをオンラインで取得する。そして、測定温度データから、焼結層の温度を定量的に表現するパラメータを導出し、当該パラメータから、測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)、θp,iB(tiB)を求める。そして、求めた2つの関数上の、ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づいて外挿又は内挿を行って、所望の高さ方向(z軸方向)の位置における導出対象温度データを求める。そして、導出対象温度データから、焼結層の温度を定量的に表現するパラメータを導出し、当該パラメータから、導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)を求める。このような導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)の導出を、パレット110のパレット幅方向(x軸方向)に並べられた全てのパレット温度計150a〜150fについてゾーン毎に行う。したがって、焼結層内のパレット幅方向(x座標)・機長方向(y座標)・高さ方向(z座標)における所望の位置での焼結層の温度、すなわち焼結層内の3次元温度分布をオンラインで正確に導出することができ、導出した焼結層内の3次元温度分布に基づき、温度の等値線や所定の温度範囲毎の色分け表示等を行うことによって、焼結機の操業をオンラインで正確に監視することができる。
【0146】
また、本実施形態では、ゾーンIVの終点の位置におけるパレット幅方向(x軸方向)の焼結層の温度の分布を求めることにより、BTPのパレット幅方向の分布をオンラインで正確に導出することができ、導出したBTPのパレット幅方向分布に基づき、BTPの表示等を行うことによって、焼結機の操業をオンラインで正確に監視することができる。
【0147】
[変形例]
本実施形態では、1つのパレット温度計150に、2つの温度測定部170a、170bを設けた場合を例に挙げて説明した。前述したように1つのパレット温度計150に設ける温度測定部170の数は2つに限定されない。1つのパレット温度計150に、高さ方向(z軸方向)にn(nは3以上の整数)個の温度測定部170を設ける場合には、次のようにして導出対象温度データを求めることができる。例えば、n個の温度測定部170で測定された測定温度データに基づくn個の曲線上の相互に対応する点に基づいて外挿又は内挿を行って、所望の高さ方向の位置における導出対象温度データを求める。すなわち、n個の温度測定部170で測定された測定温度データに基づくn個の曲線上の相互に対応する点から(n−1)次多項式関数で表される曲線を求める。そして、求めた曲線上の点であって、n個の温度測定部170の高さ方向の位置と、所望の高さ方向の位置とにより定まる点を導出対象温度データとして求める。この場合、例えば、図8に示す斜線の領域を区画する直線(点A1、B1、C1を結ぶ曲線、点A2、B2、C2を結ぶ直線)は曲線で表される。
【0148】
また、本実施形態では、各ゾーンを一つの区分として取り扱い、前記焼結層内の物理現象を定量的に表現するパラメータである焼結状態の特徴量を同定する一例を示したが、必要に応じてゾーンI〜Vのそれぞれを機長方向で2つ以上の区分に分割し、各区分について、各区分の始点及び終点の温度、物性値及び(19)式〜(28)式を用い、前記と同様の手順によって、各ゾーン内の各区分毎に前記特徴量を同定しても構わない。
【0149】
また、本実施形態を実現するためには、焼結層内の機長方向における温度分布の実測データを取得することは必須であるが、当該温度分布を測定する装置は、必ずしもパレット温度計150である必要はない。パレット温度計150以外の温度計で当該温度分布を測定することができれば、当該温度計を用いるようにしてもよい。
【0150】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0151】
[本発明と実施形態との対応関係]
<請求項1、4、5>
温度測定部は、例えば、温度測定部170a、170bを用いることにより実現される。
測定温度データ収集手段は、例えば、温度データ収集部401を用いることにより実現される。
ゾーン解析手段は、例えば、ゾーン解析部402を用いることにより実現される。
測定温度関数のパラメータ同定手段は、例えば、オンライン計算処理部407が、各ゾーンII〜IVにおける「『温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)』と『温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)』」を定めるパラメータを同定することにより実現される。また、このパラメータが、測定温度関数のパラメータ同定手段により同定されるパラメータの一例である。
導出対象温度データ導出手段は、例えば、オンライン計算処理部407が、温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)と、温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)とから、ゾーンにおける位置が相互に対応する点(例えば図9の点901a、902a)を抽出し、抽出した点に基づく外挿又は内挿を行って、オペレータ等によって指定された高さ位置における点(例えば図9の点903a)を導出することにより実現される。
導出対象温度関数のパラメータ同定手段は、例えば、オンライン計算処理部407が、各ゾーンII〜IVにおける「導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)を定めるパラメータを同定することにより実現される。また、このパラメータが、導出対象温度関数のパラメータ同定手段により同定されるパラメータの一例である。
表示手段は、例えば、オンライン操業監視表示部409を用いることにより実現される。
焼結層内の高さ方向における温度分布は、例えば、温度測定部170aが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iA(tiA)と、温度測定部170bが配置されている位置での測定温度データに基づく関数θp,iB(tiB)と、導出対象温度データに基づく関数θp,iC(tiC)とから、同値の温度の等値線を探索することにより実現される。
<請求項2>
パレット幅方向関数導出手段は、例えば、オンライン計算処理部407が、同一の高さ位置の温度データ(測定温度データ、導出対象温度データ)から得られた多項式関数(例えば図10の曲線1100等)を導出することにより実現される。また、この多項式関数が、焼結層内のパレット幅方向における温度の変化を表す関数の一例である。
焼結層内のパレット幅方向における温度分布は、例えば、多項式関数(例えば図10の曲線1100等)で表現することが可能であるし、更に、例えば、焼結層内の同一高さにおいて、機長方向に複数地点のパレット幅方向の温度分布を示す前記多項式関数で構成される温度分布から、同値の温度の等値線を探索することにより実現される。
<請求項3>
赤熱帯における前記焼結層の床部における機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数は、例えば、図8等に示す導出対象温度データに基づく関数903により実現される。
赤熱帯の終点(BTP)に対応する位置の導出対象温度データは、例えば、導出対象温度データ903aにより実現される。そして、パレット幅方向の異なる位置で導出対象温度データ903aを求めることにより(例えば、図10に示す温度データ1101〜1107を求めることにより)、パレット幅方向で異なる位置の導出対象温度データの一例が得られる。したがって、赤熱帯の終点(BTP)に対応する位置で、図10に示すような温度データ1101〜1107を求めることにより、パレット幅方向で異なる位置の導出対象温度データであって、赤熱帯の終点(BTP)に対応するパレット幅方向の異なる位置の導出対象温度データの一例が得られる。
【符号の説明】
【0152】
100 焼結機
102 駆動ローラ
110 パレット
120 原料供給ホッパ
130 点火炉
140 ウインドボックス
145 吸気管
150a〜150f パレット温度計
170a、170b 温度測定部
400 焼結プロセス操業監視装置
401 温度データ収集部
402 ゾーン解析部
403 規定データ設定部
404 初期値設定部
405 操業データ収集部
406 モデル格納部
407 オンライン計算処理部
408 パラメータ蓄積部
409 オンライン操業監視表示部
450 プロセスコンピュータ
460 入力装置
470 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯状になるように連結されて周回する複数のパレットのうち、原料給鉱部に位置するパレットに順次焼結原料を給鉱し、当該パレットが移動する過程で当該焼結原料の焼結を行って焼結鉱を生産し、当該パレットが焼結鉱排鉱部に到達すると、順次生産した焼結鉱を排鉱するドワイト・ロイド式の焼結機の操業状態を監視する焼結プロセス操業監視装置であって、
前記パレット上に形成されている焼結層内の測定温度データであって、高さ方向及びパレット幅方向のそれぞれに間隔を有して前記パレット上に配置された複数の温度測定部が前記焼結機の原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する間に当該複数の温度測定部によって測定された時系列の測定温度データを収集する測定温度データ収集手段と、
前記測定温度データ収集手段により収集された測定温度データを用いて、前記焼結層を焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで区間を初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、赤熱帯、及び焼結完了帯の5つのゾーンに分けるゾーン解析手段と、
前記ゾーン毎に個別に設定される関数であって、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータとして、前記複数の温度測定部が配置された高さ位置のそれぞれについて、個別に与えられるパラメータを前記複数の温度測定部によって測定された測定温度データに基づいてそれぞれ同定する測定温度関数のパラメータ同定手段と、
前記測定温度関数のパラメータ同定手段により同定されたパラメータが与えられた前記複数の関数上の点であって、前記ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内の温度測定部が配置された高さ位置以外の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する導出対象温度データ導出手段と、
前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、前記導出対象温度データに基づいて同定する導出対象温度関数のパラメータ同定手段と、
前記焼結層内の温度の分布の情報を表示装置に表示する表示手段と、を有し、
前記同定されたパラメータが与えられた導出対象温度関数によって、前記焼結層内の高さ方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とする焼結プロセス操業監視装置。
【請求項2】
前記パレット幅方向で異なる位置の前記測定温度データ又は前記導出対象温度データであって、ゾーン内で相互に対応する位置の前記測定温度データ又は前記導出対象温度データに基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内のパレット幅方向における温度の変化を表す関数を導出するパレット幅方向関数導出手段を有し、
前記焼結層内のパレット幅方向における温度の変化を表す関数によって、前記焼結層内のパレット幅方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の焼結プロセス操業監視装置。
【請求項3】
前記指定された高さ位置は、前記焼結層の床部に略対応する位置を含み、
前記5つのゾーンの少なくとも1つのゾーンには、赤熱帯が含まれており、
前記導出対象温度関数のパラメータ同定手段により同定されたパラメータが与えられた関数は、前記赤熱帯における前記焼結層の床部における機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数を含み、
前記パレット幅方向関数導出手段は、前記パレット幅方向で異なる位置の前記導出対象温度データであって、前記赤熱帯の終点に対応する位置の前記導出対象温度データに基づく外挿又は内挿を行って、BTP(Burn Through Point)のパレット幅方向の分布を導出することを特徴とする請求項2に記載の焼結プロセス操業監視装置。
【請求項4】
前記焼結層を構成する焼結鉱粒子が球形粒子であるとして取り扱い、
前記関数は、球形粒子の熱収支を表す時間微分方程式であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の焼結プロセス操業監視装置。
【請求項5】
前記表示手段は、焼結層内の温度が同値である等値線を用いて、前記焼結層内の温度の分布の情報を表示することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の焼結プロセス操業監視装置。
【請求項6】
無端帯状になるように連結されて周回する複数のパレットのうち、原料給鉱部に位置するパレットに順次焼結原料を給鉱し、当該パレットが移動する過程で当該焼結原料の焼結を行って焼結鉱を生産し、当該パレットが焼結鉱排鉱部に到達すると、順次生産した焼結鉱を排鉱するドワイト・ロイド式の焼結機の操業状態を監視する焼結プロセス操業監視方法であって、
前記パレット上に形成されている焼結層内の測定温度データであって、高さ方向及びパレット幅方向のそれぞれに間隔を有して前記パレット上に配置された複数の温度測定部が前記焼結機の原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する間に当該複数の温度測定部によって測定された時系列の測定温度データを収集する測定温度データ収集工程と、
前記測定温度データ収集工程により収集された測定温度データを用いて、前記焼結層を焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで区間を初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、赤熱帯、及び焼結完了帯の5つのゾーンに分けるゾーン解析工程と、
前記ゾーン毎に個別に設定される関数であって、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータとして、前記複数の温度測定部が配置された高さ位置のそれぞれについて、個別に与えられるパラメータを前記複数の温度測定部によって測定された測定温度データに基づいてそれぞれ同定する測定温度関数のパラメータ同定工程と、
前記測定温度関数のパラメータ同定工程により同定されたパラメータが与えられた前記複数の関数上の点であって、前記ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内の温度測定部が配置された高さ位置以外の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する導出対象温度データ導出工程と、
前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、前記導出対象温度データに基づいて同定する導出対象温度関数のパラメータ同定工程と、
前記焼結層内の温度の分布の情報を表示装置に表示する表示工程と、を有し、
前記同定されたパラメータが与えられた導出対象温度関数によって、前記焼結層内の高さ方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とする焼結プロセス操業監視方法。
【請求項7】
無端帯状になるように連結されて周回する複数のパレットのうち、原料給鉱部に位置するパレットに順次焼結原料を給鉱し、当該パレットが移動する過程で当該焼結原料の焼結を行って焼結鉱を生産し、当該パレットが焼結鉱排鉱部に到達すると、順次生産した焼結鉱を排鉱するドワイト・ロイド式の焼結機の操業状態を監視するためのプログラムであって、
前記パレット上に形成されている焼結層内の測定温度データであって、高さ方向及びパレット幅方向のそれぞれに間隔を有して前記パレット上に配置された複数の温度測定部が前記焼結機の原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで移動する間に当該複数の温度測定部によって測定された時系列の測定温度データを収集する測定温度データ収集処理と、
前記測定温度データ収集処理により収集された測定温度データを用いて、前記焼結層を焼結機の機長方向に、原料給鉱部から焼結鉱排鉱部まで区間を初期原料帯、水分凝縮帯、乾燥帯、赤熱帯、及び焼結完了帯の5つのゾーンに分けるゾーン解析処理と、
前記ゾーン毎に個別に設定される関数であって、前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータとして、前記複数の温度測定部が配置された高さ位置のそれぞれについて、個別に与えられるパラメータを前記複数の温度測定部によって測定された測定温度データに基づいてそれぞれ同定する測定温度関数のパラメータ同定処理と、
前記測定温度関数のパラメータ同定処理により同定されたパラメータが与えられた前記複数の関数上の点であって、前記ゾーン内での位置が相互に対応する点に基づく外挿又は内挿を行って、前記焼結層内の温度測定部が配置された高さ位置以外の指定された高さ位置の温度データである導出対象温度データを導出する導出対象温度データ導出処理と、
前記焼結層内の機長方向の温度の変化を定量的に表現する関数のパラメータを、前記導出対象温度データに基づいて同定する導出対象温度関数のパラメータ同定処理と、
前記焼結層内の温度の分布の情報を表示装置に表示する表示処理と、をコンピュータに実行させ、
前記同定されたパラメータが与えられた導出対象温度関数によって、前記焼結層内の高さ方向における温度分布が得られるようにしたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83400(P2013−83400A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223791(P2011−223791)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】