説明

焼結点火炉および焼結鉱の製造方法

【課題】焼結原料に点火するバーナーと少なくとも天井部と側壁部とで構成される点火炉において、設置工期を飛躍的に短縮することができる焼結点火炉および焼結鉱製造方法を提供する。
【解決手段】焼結点火炉1は、焼結原料に点火するバーナ10と、少なくとも天井部20および側壁部30を有する炉壁40とで構成され、天井部および側壁部が別個独立の部材で構成されている。天井部および側壁部とが別個独立の部材で構成されているため、設置現場ではなく、事前に各構成部材を用意できるので工期を飛躍的に短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱を製造するに際し、焼結原料への点火をするための点火炉、および、その点火炉を用いた焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の主原料である焼結鉱は、例えば、ドワイトロイド式焼結機などを用い、粉鉄鉱石、炭材、CaOを含む副原料等を配合した焼結原料をパレット上に充填し、パレットを連続的に移動させることで、焼結原料を点火炉内に移動させ、焼結原料の表層に存在する炭材を点火した後、パレットの下方から空気を吸引することによって焼結原料の内部に存在する炭材を燃焼させて焼結し、得られた焼結ケーキを粉砕・整粒することによって製造される。
【0003】
例えば、特許文献1には、焼結原料を搬送するためのパレットと、パレット上を搬送中の焼結原料に燃焼火炎を当てるための燃焼バーナと、パレット移動速度に応じてバーナの燃料使用量、バーナの高さ及びバーナの角度を制御するための制御手段とを有する点火炉に関する発明が開示されている。
【0004】
特許文献2には、焼結原料の表面に点火するための点火炉と、点火炉の下流側に設置され、パレット幅方向における焼結原料の温度分布を測定するための温度計と、温度計の下流側に焼結パレット幅方向に移動可能に設置された補助バーナと、温度分布に基づいて補助バーナの移動位置を制御するための計算機とを備える焼結鉱の製造装置に関する発明が開示されている。
【0005】
本出願人は、特許文献3において、燃料噴射管と、その外周に一次空気噴出管を備える二重管バーナを複数有し、二重管バーナのそれぞれの火口を、燃料噴射管のピッチPと一次空気供給管の内径Dとの比P/Dが2.2以上3.5以下となるように直線状又は千鳥状に配設し、二重管バーナの火口を挟み、かつ直線スリット状に形成された二次空気噴出口を設けており、二次空気噴出速度が一次空気噴出速度より大きいマルチバーナに関する発明を開示している。
【0006】
【特許文献1】特開平5−196368号公報
【特許文献2】特開2006−194456号公報
【特許文献3】特開2006−132826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および2は、燃焼の進行状況に応じてバーナの条件を調整するものであり、特許文献3は、均一な焼結鉱の燃焼を実現することができるバーナが開示されているが、いずれも点火炉の構成については言及されていない。
【0008】
従来の点火炉としては、一体型の点火炉しか知られていない。従来の一体型点火炉を設置するには、まず、(1)鉄骨の組立、(2)耐火物の施工、(3)耐火物の自然乾燥、火入れ(180℃程度の火入れと600℃程度の火入れ)、(4)周辺設備の組立などを行う必要がある。このため、点火炉を設置するためには、撤去解体工事も含め、3〜6ヶ月程度の期間を要するのが通常である。この工期を短縮できれば、装置の設置コストを低減できると共に、他の焼結装置への負担を軽減できるので、焼結鉱の製造者側のメリットも大きい。
【0009】
また、従来の一体型点火炉では、鉄骨に耐火物を施工、乾燥するため、点火炉の設置後に炉内のサイズを変更することができない。炉内のサイズ(主として幅方向の長さ)を変更することができれば、パレットの蛇行を考慮した幅に合わせることができる。また、増産のためにパレットを拡幅する必要が生じた場合にも対応できる。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するべく、設置工事期間を短縮することができると共に、焼結鉱の生産量に合わせて炉内サイズを調整することができる点火炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく、様々な検討を行った結果、従来の工法では、特に、鉄骨の組立ならびに耐火物の施工および乾燥に多くの時間(通常1.5〜3ヶ月程度)を費やしており、これらの時間を短縮できれば、設置作業の工期を大幅に縮めることができると考え、まず、設置現場での作業を極力少なくすべく、点火炉を構成する様々な部材を事前に製造することとした。
【0012】
そして、設置現場で組み立てる鉄骨は、炉体全体を支える部分のみの簡単な構造のみとし、このように事前に組み立てた骨組みに、事前に、鉄骨に耐火物を施工、乾燥させた構成部材を取り付けることとした。こうすることで、設置に要する工期を、撤去解体工事も含め、2週間程度にまで短縮することに成功した。
【0013】
一方、点火炉の構成部材の分割については、事前に製造しやすく、設置現場への運び込み、設置を容易に行えるサイズであること、必要な耐火性能を有していることなどを考慮し、様々な形状を検討した結果、天井部と側壁部とで分離することとした。このような分離方法を採用することにより、側壁部の炉幅方向への移動が可能となるメリットもある。
【0014】
本発明は、このような技術的な知見に基づいて完成したものであり、下記の(1)〜(8)に示す焼結点火炉と、下記の(9)に示す焼結鉱の製造方法を要旨とする。
【0015】
(1)焼結原料に点火するバーナと、少なくとも天井部および側壁部を有する炉壁とで構成される点火炉であって、炉壁の天井部および側壁部が別個独立の部材で構成されている焼結点火炉。
【0016】
(2)更に、焼結原料を載置して移送するパレットを有する焼結機に設置する上記(1)の焼結点火炉。
【0017】
(3)天井部が、つり下げられて構成される上記(1)または(2)の焼結点火炉。
【0018】
(4)天井部が、分離可能な複数の部材で構成されている上記(1)から(3)までのいずれかの焼結点火炉。
【0019】
(5)天井部が、仕切部を介して点火帯および保熱帯に分割されている上記(1)から(4)までのいずれかの焼結点火炉。
【0020】
(6)側壁部が、炉幅方向に移動可能に設けられている上記(1)から(5)までのいずれかの焼結点火炉。
【0021】
(7)バーナの昇降機構を有する上記(1)から(6)までのいずれかの焼結点火炉。
【0022】
(8)点火炉とパレットとの隙間に機械的シールを有する上記(1)から(7)までのいずれかの焼結点火炉。
【0023】
(9)上記(1)から(8)までのいずれかの焼結点火炉を用いて、焼結原料に点火する焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、焼結点火炉に必要な部材を事前に分割製作できるので、現地工事では設置工事期間を数週間程度にまで大幅に短縮することができる。側壁部の拡幅が可能な実施態様によれば、パレットの蛇行を考慮した幅に合わせることができ、また、増産のためにパレットの幅を変更する必要が生じた場合にも対応できる。点火帯と保熱帯とに分割する実施態様によれば、原料表面への点火と着火の持続を効率良くでき、省エネルギー効果が大きくなる。バーナの昇降機構を有する実施態様によれば、焼結鉱の生産量の変化に応じて原料層厚を変動させた場合にも、効果的な原料着火が可能である。点火炉とパレットとの隙間に機械的シールを有する実施態様によれば、空気の侵入を防止し、炉内温度の低下を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1〜3は、本発明に係る焼結点火炉の例を示す模式図であり、図1は、一部を断面図で示した正面図であり、図2は、一部を断面図で示した側面図である。また、図3は、本発明に係る焼結点火炉の一部の構成部材を示す斜視図である。図4は、本発明に係る焼結点火炉の望ましい実施形態の例を示す模式図である。
【0026】
図1〜3に示すように、本発明の焼結点火炉1は、焼結原料に点火するバーナ10と、少なくとも天井部20および側壁部30を有する炉壁40とで構成される点火炉である。この焼結点火炉1においては、天井部20および側壁部30が別個独立の部材で構成されている。また、焼結点火炉1の焼結原料(図示しない)の入口および出口には、前扉51および後扉52がそれぞれ巻取機53、54につり下げられ、可動状態で設けられており、炉内の熱の放出を防止している。巻取機53、54は、チェーンを介して、前扉51、後扉52を保持するものであり、ウィンチの回転によりチェーンを巻き取り、巻き戻しすることにより、焼結原料(図示しない)の厚みに合わせて、前扉51、後扉52を上下できる構成のものが望ましい。
【0027】
本発明に係る焼結点火炉1においては、天井部20と側壁部30とが別個独立の部材で構成されているため、設置現場ではなく、事前に各構成部材を用意できる。従って、設置工期を飛躍的に短縮できる。
【0028】
図1および2に示すように、パレット60を有する点火炉であれば、焼結原料(図示しない)を載置して加熱炉内へ移送し、加熱炉内を図の白抜矢印の方向に移動させつつ、点火すると共に、パレット60の下部から空気を吸引することで、連続的に焼結原料を燃焼させることができる。
【0029】
ここで、図2に示すように、天井部20は、仕切部26を介して点火帯(図2において仕切部26より左側の領域)および保熱帯(図2において仕切部26より右側の領域)に分割されていることが望ましい。これにより、点火帯で原料表面に着火し、保熱体で着火した表面を保持することができる。
【0030】
天井部20および側壁部30の構造としては、特に制約はないが、省エネルギーを考慮して、炉内側から耐火レンガなどを使用した耐火層、耐火断熱レンガ、断熱レンガ、セラミックファイバなどの断熱性の良い材料で構成される耐火断熱層、および、鉄皮などで構成される外殻層を有するものを採用することができる。ただし、本発明においては、天井部20および側壁部30を別個に製造し、用意する必要がある。
【0031】
天井部20は、図3などに示されるように、分離可能な複数の部材で構成されていることが望ましい。即ち、天井部20としては、例えば、第1天井用部材21、第2天井用部材22、第3天井用部材23と、前壁24、後壁25、仕切部26を有し、第1天井用部材21および第2天井用部材22の間には、バーナ(図示しない)を設置するためのバーナ設置部27を有するものを用いることができる。このように、天井部20を更に複数の部材に分離することにより、各部材の搬送を容易にすると共に、設置作業時の作業性を向上させることができる。
【0032】
天井部20は、例えば、図4に示されるように、天井部20の上面側をH型鋼などの梁70に固定し、梁70を支柱80に取り付け、側壁部30の上に載せるのではなく、つり下げて構成されるのがよい。このような構成とすると、側壁部30の負担を軽減するというメリットがある。また、側壁部30を炉幅方向(図4の白抜矢印の方向)に移動可能に設けることが可能となる。このように、側壁部30の炉幅方向の移動が可能となれば、パレットの蛇行を考慮した幅に合わせることができる。また、増産のためにパレットを拡幅する必要が生じた場合にも対応できる。
【0033】
例えば、図4に示すように、ボルトなどで構成される位置調整治具33、34と、側壁部30を摺動可能に支持する側壁ガイド81を設けることで、側壁部30を炉幅方向に移動可能とすることができる。ここで、パレットの蛇行は、百mm程度以下であるため、その対応には、数mm〜数十mm程度の位置調整ができる位置調整治具33、34と側壁ガイド81を用意すればよい。しかし、増産対応のためにパレットを拡幅する場合には、数百mm程度拡幅されることになるため、予め支柱80の設置間隔を広げるなど、より長い幅に対応できるような設計が必要である。従って、パレットの拡幅に対応するためには、支柱80の設置間隔を広げると共に、数百mm程度の位置調整ができる治具33、34と側壁ガイド81を用意する必要がある。
【0034】
ここで、天井部20と側壁部30との隙間には、断熱材で構成されるシール部材90を挟み込むのがよい。また、側壁部30およびパレット60の隙間から熱が放出するのを防止して、主として側壁部30付近の侵入空気を防止するべく、側壁部30の下方にプレート状のシール部材91を設けて、機械的にシールするのがよい。シール部材91は、加熱炉の天井部20の前壁24から後壁25の間の保熱をするのに十分な長さを有するものが望ましい。また、パレット60の側面を傷つけないためには、ワイヤ状のシール部材(ワイヤープレート)を用いるのがより望ましい。
【0035】
なお、側壁部30についても、天井部20と同様の理由から、複数の部材、例えば、図3に示されるような第1側壁用部材31および第2側壁用部材32で構成されるものが望ましい。また、前扉51および後扉52についても、複数の部材で構成されているものが望ましい。
【0036】
本発明に係る加熱炉に使用するバーナとしては特に制約はなく、通常用いられているバーナを使用することができるが、特に、燃料噴射管11の外周に一次空気噴出管12を同心状に配置した複数の二重管バーナを直線状または千鳥状に配設し、二重管バーナ群を挟み込むようスリット状に二次空気噴出口13を設けて、二次空気により火炎がカーテン状となるように規制することとしたマルチバーナを用いるのが好ましい。また、バーナ10の火口位置を調整するための昇降装置14を有しているものが望ましい。これは、焼結原料の厚さがその生産量によって変動するため、焼結原料の表面とバーナ火口との距離を調整する場合に有効である。また、バーナ10とバーナ設置部27との隙間には、シール部材が挟み込まれていることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、焼結点火炉に必要な部材を事前に分割製作できるので、現地工事では設置工事期間を数週間程度にまで大幅に短縮することができる。側壁部の拡幅が可能な実施態様によれば、パレットの蛇行を考慮した幅に合わせることができ、また、増産のためにパレットの幅を変更する必要が生じた場合にも対応できる。点火帯と保熱帯とに分割する実施態様によれば、原料表面への点火と着火の持続を効率良くでき、省エネルギー効果が大きくなる。バーナの昇降機構を有する実施態様によれば、焼結鉱の生産量の変化に応じて原料層厚を変動させた場合にも、効果的な原料着火が可能である。点火炉とパレットとの隙間に機械的シールを有する実施態様によれば、空気の侵入を防止し、炉内温度の低下を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る焼結点火炉の例を示す正面図(一部断面図)
【図2】本発明に係る焼結点火炉の例を示す側面図(一部断面図)
【図3】本発明に係る焼結点火炉の一部の構成部材を示す斜視図
【図4】本発明に係る焼結点火炉の望ましい実施形態の例を示す模式図
【符号の説明】
【0039】
1 本発明の焼結点火炉
10 バーナ
11 燃料噴射管
12 一次空気噴出管
13 二次空気噴出口
14 昇降装置
20 天井部
21 第1天井用部材
22 第2天井用部材
23 第3天井用部材
24 前壁
25 後壁
26 仕切部
27 バーナ設置部
30 側壁部
31 第1側壁用部材
32 第2側壁用部材
40 炉壁
51 前扉
52 後扉
53、54 巻取機
60 パレット
70 梁
80 支柱
81 側壁ガイド
90、91 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結原料に点火するバーナと、少なくとも天井部および側壁部を有する炉壁とで構成される点火炉であって、炉壁の天井部および側壁部が別個独立の部材で構成されていることを特徴とする焼結点火炉。
【請求項2】
更に、焼結原料を載置して移送するパレットを有する焼結機に設置することを特徴とする請求項1に記載の焼結点火炉。
【請求項3】
天井部が、つり下げられて構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼結点火炉。
【請求項4】
天井部が、分離可能な複数の部材で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の焼結点火炉。
【請求項5】
天井部が、仕切部を介して点火帯および保熱帯に分割されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の焼結点火炉。
【請求項6】
側壁部が、炉幅方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の焼結点火炉。
【請求項7】
バーナの昇降機構を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の焼結点火炉。
【請求項8】
点火炉とパレットとの隙間に機械的シールを有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の焼結点火炉。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の焼結点火炉を用いて、焼結原料に点火することを特徴とする焼結鉱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107066(P2010−107066A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276967(P2008−276967)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(592201575)住金マネジメント株式会社 (7)
【Fターム(参考)】