説明

焼結用原料の製造方法

【課題】固体燃料系粉原料、又は石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着する前の擬似粒子の強度を向上し、生産性を向上することが可能な焼結用原料の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄鉱石及びSiO2 含有原料を製造用水分と共にドラムミキサー1で混合して粗粒の鉄鉱石からなる核鉱石4の周りにSiO2 含有層5を形成して擬似粒子3を造粒し、次いでドラムミキサー1に粉末状の転炉スラグを添加してSiO2 含有層5の表面に高強度の転炉スラグコーティング層7を形成して造粒物粒子8を造粒し、その後、ドラムミキサー1に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を添加して混合すると、造粒工程で得られる焼結用原料10は、SiO2 含有層5とCaO含有層9との間に転炉スラグコーティング層7を有する四層構造となり、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料の取り込み量を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下方吸引のドワイトロイド式焼結機を用いて高炉用焼結鉱を製造する場合の焼結用原料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉用原料として用いられる焼結鉱は、一般的に以下のような焼結原料の処理方法を経て製造されている。即ち、まず粒径が10mm以下の鉄鉱石、及び珪石、蛇紋岩、又はニッケルスラグなどからなるSiO含有原料、及び石灰石などのCaOを含有する石灰石系粉原料、及び粉コークス又は無煙炭などの熱源となる固体燃料系粉原料をドラムミキサーに装入し、これに適当量の水分を添加して混合、造粒して焼結用原料となる造粒物を形成する。鉄鉱石は、鉱石だけでなく、後述する返鉱も含まれる。この造粒物粒らなる焼結用原料は、ドワイトロイド式焼結機のパレット上に適当な厚さ、例えば500〜700mmになるように層状に積載される。次いで、パレット上に積載された焼結用原料層の上層部に分布する固体燃料系粉原料に着火し、着火後は下方に向けて空気を吸引しながら固体燃料系粉原料を燃焼させ、パレットの移動に伴って燃焼を次第に下層に且つ前方に進ませ、その燃焼熱によって配合した焼結用原料を焼結させて焼結ケーキとする。その際、鉄鉱石に含まれるヘマタイトと石灰石系粉原料や鉄鉱石に含まれるCaOとが反応してカルシウムフェライト融液(以下、CF融液という)を生成し、そのCF融液が焼結用原料の結合に寄与する。この焼結ケーキは、破砕、整粒され、所定の粒径を有する焼結鉱を得る。一方、所定の粒径に満たないものは返鉱となり、焼結原料として再利用される。
【0003】
焼結用原料を焼結する際、前記固体燃料系粉原料の燃焼性をよくするために焼結用原料の表面に当該固体燃料系粉原料を付着させる技術と共に、前記CF融液を焼結用原料の表面に選択的に生成させることができれば当該CF融液の機能を活用することによって焼結鉱を効率よく製造できるばかりでなく、焼結用原料に配合する各種素材の使用量を削減することができるとして、CF融液を焼結用原料の表面に選択的に生成させる技術が検討されている。
【0004】
例えば、前者を目的とする下記特許文献1では、固体燃料系粉原料を除き、鉄鉱石、SiO2 含有原料、及び石灰石系粉原料をドラムミキサーの装入口から装入して混合、造粒し、その擬似粒子が排出口に到達するまでの滞留時間10〜120秒となる位置で固体燃料系粉原料を添加する技術が開示されている。この技術によって得られる焼結用原料は、鉄鉱石とSiO2 含有原料、石灰石系粉原料が造粒された擬似粒子の表面に固体燃料系粉原料が付着している。これにより、固体燃料系粉原料が擬似粒子内に取り込まれないため、擬似粒子表層部分で固体燃料系粉原料が燃焼し、燃焼性が大きく改善されるほか、粉コークスや無煙炭などの難造粒性の固体燃料系粉原料を除いた擬似粒子径の増大を図ることが可能となった。
【0005】
また、後者を目的とする下記特許文献2では、鉄鉱石、及びSiO2 含有原料をドラムミキサーの装入口から装入して混合、造粒し、その擬似粒子が排出口に到達するまでの滞留時間10〜90秒となる位置で石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を添加する技術が開示されている。この技術によって得られる焼結用原料は、鉄鉱石とSiO2 含有原料の擬似粒子の表面に石灰石系粉原料と固体燃料系粉原料が付着している。従って、この焼結用原料を焼結すると、CF融液が焼結用原料の表面に選択的に生成され、強度の弱いカルシウムシリケート生成が抑制され、焼結鉱の製造効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3794332号公報
【特許文献2】特許第3755452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献に代表される従来の焼結用原料の製造方法には、特に固体燃料系粉原料、或いは石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着する前の擬似粒子の強度の面で改善の余地がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、固体燃料系粉原料、或いは石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着する前の擬似粒子の強度を向上し、もって生産性を向上することが可能な焼結用原料の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鉄鉱石、SiO2 含有原料、及び石灰石系粉原料からなる造粒物の擬似粒子の表面に固体燃料系粉原料を付着させる処理、或いは鉄鉱石、及びSiO2 含有原料からなる造粒物の擬似粒子の表面に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着させる処理、所謂外装処理を行う際の生産性向上技術について鋭意検討した。その結果、固体燃料系粉原料、或いは石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着する前の擬似粒子の強度を向上することができれば、固体燃料系粉原料、或いは石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料の擬似粒子内部への取り込み量を低減し、生産性が向上することを見出し、その擬似粒子の強度向上に転炉スラグ粉末を用いることに着目した。転炉スラグ粉末は、所謂自硬性を有しており、この転炉スラグ粉末で擬似粒子をコーティングすれば擬似粒子強度が向上し、後に添加される固体燃料系粉原料、或いは石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料の擬似粒子内部への取り込み量を低減することができ、これにより生産性が向上する。本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の焼結用原料の製造方法は、下方吸引のドワイトロイド式焼結機を用いて焼結鋼を製造するプロセスの事前処理として原料をドラムミキサーに装入して造粒する焼結用原料の製造方法であって、前記ドラムミキサーの装入口から固体燃料系粉原料を除く鉄鉱石及びSiO2 含有原料を装入して造粒し、前記ドラムミキサー内にて造粒された擬似粒子に対し、転炉スラグを添加して前記擬似粒子の表層に付着し、その後、固体燃料系粉原料を添加して、前記ドラムミキサーの排出口に至る間に前記擬似粒子の最表層に固体燃料系粉原料を付着することを特徴とするものである。
【0010】
また、下方吸引のドワイトロイド式焼結機を用いて焼結鋼を製造するプロセスの事前処理として原料をドラムミキサーに装入して造粒する焼結用原料の製造方法であって、前記ドラムミキサーの装入口から石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を除く鉄鉱石及びSiO2 含有原料を装入して造粒し、前記ドラムミキサー内にて造粒された擬似粒子に対し、転炉スラグを添加して前記擬似粒子の表層に付着し、その後、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を添加して、前記ドラムミキサーの排出口に至る間に前記擬似粒子の最表層に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
而して、本発明の焼結用原料の製造方法によれば、ドラムミキサーの装入口から固体燃料系粉原料を除く鉄鉱石及びSiO2 含有原料を装入して造粒し、造粒された擬似粒子に対し、転炉スラグを添加して擬似粒子の表層に付着し、その後、固体燃料系粉原料を添加して、ドラムミキサーの排出口に至る間に擬似粒子の最表層に固体燃料系粉原料を付着することとしたため、転炉スラグでコーティングされた擬似粒子の強度が向上し、固体燃料系粉原料の擬似粒子内への取り込み量を低減して生産性が向上すると共に、焼結機供給時の粉発生も低減される。
【0012】
また、ドラムミキサーの装入口から石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を除く鉄鉱石及びSiO2 含有原料を装入して造粒し、造粒された擬似粒子に対し、転炉スラグを添加して擬似粒子の表層に付着し、その後、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を添加して、ドラムミキサーの排出口に至る間に擬似粒子の最表層に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着することとしたため、転炉スラグでコーティングされた擬似粒子の強度が向上し、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料の擬似粒子内への取り込み量を低減して生産性が向上すると共に、焼結鉱製造時のCF融液の生成が促進され、強度の弱いカルシウムシリケートの生成が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の焼結用原料の製造方法を適用した焼結用原料製造工程の一実施形態の説明図である。
【図2】図1の焼結用原料製造工程で製造される粒子の説明図である。
【図3】焼結鉱製造工程で得られる焼結鉱の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の焼結用原料の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の焼結用原料の製造方法が適用された焼結用原料製造工程の説明図である。本実施形態では、図1aに示すように、例えば直径10mm以下の鉄鉱石とニッケルスラグなどのSiO2 含有原料を適当量の製造用水分と共にドラムミキサー1の装入口2から装入し、ドラムミキサー1を所定速度で回転させることで混合、造粒し、粗粒の鉄鉱石からなる核鉱石の周りにSiO2 含有層が形成された二層構造の擬似粒子が造粒される。
【0015】
次に、図1bに示すように、ドラムミキサー1内に転炉スラグを添加し、前記二層構造の擬似粒子の表面に転炉スラグを付着させる。この転炉スラグは、粒径が3mm以下の粉末状であり、自硬性があるため、二層構造の擬似粒子の表面に転炉スラグの強固なコーティング層を形成し、これにより強度の高い三層構造の造粒物粒子が造粒される。
次に、図1cに示すように、ドラムミキサー1内に石灰石系粉原料及び粉コークスなどの固体燃料系粉原料を添加し、前記三層構造の造粒物粒子の最表面に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料からなるCaO含有層が形成された四層構造の焼結用原料が製造される。この四層構造の焼結用原料は、従来と同様に、ドワイトライド式焼結機で焼結されて焼結鉱となる。その際、焼結用原料の最表層の固体燃料系粉原料が燃焼し、その燃焼熱で焼結が行われる。また、焼結用原料の最表層に石灰石系粉原料が付着している本実施形態の焼結用原料では、前述したCF融液が原料の表面に生成され、これにより強度の弱いカルシウムシリケートの生成が抑制され、焼結鉱の生産性が向上する。このように、焼結用原料の最表層に石灰石系粉原料が付着していることは有効であるが、石灰石系粉原料は必須ではない。従って、石灰石系粉原料を焼結用原料の最表層に付着させない場合には、石灰石系粉原料を用いず、固体燃料系粉原料だけを添加すればよい。
【0016】
図2aには、前記図1aの工程で造粒された二層構造の擬似粒子3を示す。この二層構造の擬似粒子3は、粗粒の鉄鉱石からなる核鉱石4の周りにSiO2 含有層5が形成されている。図2bには、前記図1bの工程で造粒された三層構造の造粒物粒子8を示す。この三層構造の造粒物粒子8は、前記二層構造の擬似粒子3の表面に高強度の転炉スラグコーティング層7が形成され、これにより造粒物粒子8の強度が向上されている。図2cには、前記図1cの工程で造粒された四層構造の焼結用原料10を示す。この四層構造の造粒物粒子10は、前記三層構造の造粒物粒子8の最表面に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料からなるCaO含有層9が形成され、これにより燃焼性と生産性が向上される。
【0017】
このように直径10mm以下の鉄鉱石とSiO2 含有原料、石灰石系粉原料、固体燃料系粉原料を製造用水分と共にドラムミキサー1で混合して焼結鉱の焼結用原料を製造する際に、鉄鉱石及びSiO2 含有原料を製造用水分と共にドラムミキサー1で混合して粗粒の鉄鉱石からなる核鉱石4の周りにSiO2 含有層5を形成して擬似粒子3を造粒し、次いでドラムミキサー1に粉末状の転炉スラグを添加してSiO2 含有層5の表面に転炉スラグコーティング層7を形成して造粒物粒子8を造粒し、その後、ドラムミキサー1に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を添加して混合すると、造粒工程で得られる焼結用原料10は、SiO2 含有層5とCaO含有層9との間に転炉スラグコーティング層7を有する四層構造となる。従って、このような構造の焼結用原料10をドワイトロイド式焼結機で焼結処理すると、焼結工程で得られる焼結鉱の構造が図3に示すような構造、即ち表層部が引張強度の高いカルシウムフェライトCFで形成され、内部が被還元性の高いヘマタイトHeで形成された構造となるので、焼結鉱の表層部に強度の弱いカルシウムシリケートが生成されることを抑制することができ、これにより被還元性に優れ、且つ冷間強度の高い焼結鉱を安定して得ることができ、結果的に生産性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0018】
1はドラムミキサー、2は装入口、3は擬似粒子、4は核鉱石、5はSiO2 含有層、7は転炉スラグコーティング層、8は造粒物粒子、9はCaO含有層、10は焼結用原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方吸引のドワイトロイド式焼結機を用いて焼結鋼を製造するプロセスの事前処理として原料をドラムミキサーに装入して造粒する焼結用原料の製造方法であって、前記ドラムミキサーの装入口から固体燃料系粉原料を除く鉄鉱石及びSiO2 含有原料を装入して造粒し、前記ドラムミキサー内にて造粒された擬似粒子に対し、転炉スラグを添加して前記擬似粒子の表層に付着し、その後、固体燃料系粉原料を添加して、前記ドラムミキサーの排出口に至る間に前記擬似粒子の最表層に固体燃料系粉原料を付着することを特徴とする焼結用原料の製造方法。
【請求項2】
下方吸引のドワイトロイド式焼結機を用いて焼結鋼を製造するプロセスの事前処理として原料をドラムミキサーに装入して造粒する焼結用原料の製造方法であって、前記ドラムミキサーの装入口から石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を除く鉄鉱石及びSiO2 含有原料を装入して造粒し、前記ドラムミキサー内にて造粒された擬似粒子に対し、転炉スラグを添加して前記擬似粒子の表層に付着し、その後、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を添加して、前記ドラムミキサーの排出口に至る間に前記擬似粒子の最表層に石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料を付着することを特徴とする焼結用原料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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