説明

焼結用原料の製造方法

【課題】擬似粒子の表面に、石灰石系粉原料および固体燃料系粉原料を外装処理するに際し、超微粉石灰石さらには高カーボンダストを有効活用することにより、従来に比べて生産性を向上させることができる焼結用原料の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄鉱石及びSiO2含有原料を造粒して得た擬似粒子の表面に、石灰石系粉原料を供給して石灰石系粉原料の内層を形成し、ついで固体燃料系粉原料を供給して石灰石系粉原料の内層の上に固体燃料系粉原料の外層を形成するに際し、
上記石灰石系粉原料として、超微粉石灰石を5〜40mass%の割合で配合したものを用いると共に、固体燃料系粉原料として、高カーボンダストを5〜40mass%の割合で配合したものを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクペレタイザーを用いて造粒したのち、下方吸引式のドワイトロイド式焼結機を用いて高炉用焼結鉱を製造する焼結用原料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉用原料として用いられる焼結鉱は、一般的に以下のような焼結原料の処理方法を経て製造されている。
即ち、まず粒径が10mm以下の鉄鉱石、及び珪石、蛇紋岩又はニッケルスラグなどからなるSiO2含有原料、及び石灰石などのCaOを含有する石灰石系粉原料、及び粉コークス又は無煙炭などの熱源となる固体燃料系粉原料を、ドラムミキサーを用いて、これに適当量の水分を添加して混合、造粒して擬似粒子と呼ばれる造粒物を形成する。この擬似粒子からなる配合原料は、ドワイトロイド式焼結機のパレット上に適当な厚さ、例えば500〜700mmになるように装入して表層部の固体燃料に着火し、着火後は下方に向けて空気を吸引しながら固体燃料を燃焼させ、その燃焼熱によって配合した焼結原料を焼結させて焼結ケーキとする。この焼結ケーキは、破砕、整粒され、一定の粒径以上の焼結鉱を得る。一方、それ未満の粒径のものは返鉱となり、焼結原料として再利用される。
【0003】
このようにして製造された成品焼結鉱の被還元性は、従来から指摘されているように、特に高炉の操業を大きく左右する因子となる。焼結鉱の被還元性は、高炉でのガス利用率を介して燃料比と良好な負の相関があり、焼結鉱の被還元性を向上させると、高炉での燃料比は低下する。更に、製造された成品焼結鉱の冷間強度も高炉での通気性を確保する上で重要な因子であり、各々の高炉では、冷間強度の下限基準を設けて操業を行っている。従って、高炉にとって望ましい焼結鉱とは、被還元性に優れ、冷間強度が高いものであると言える。
【0004】
そこで、焼結鉱を製造するプロセスの事前処理として膨大な設備を必要とせず、鉄鉱石とSiO2含有原料を、石灰石系原料と固体燃料系原料から分離して段階的に擬似粒子にすることにより、塊表面には強度の高いカルシウムフェライト(CF)を、一方、塊内部に向かっては被還元性の高いヘマタイト(He)を選択的に生成された構造の焼結鉱を製造し、冷間強度を向上させ、且つ焼結鉱の被還元性を改善することができる焼結用原料の製造方法として、下記特許文献1〜3にかかわる技術を完成させた。
【0005】
また、微粉鉄鉱石と粗粒鉄鉱石とからなる粉状鉄鉱石と、石灰石及び生石灰とをミキサーで混合し、混合物を第1ペレタイザーで水を加えて造粒し、造粒した擬似粒子をスクリーンによって篩い分け、篩い上を第2ペレタイザーに装入して、造粒物の表面に粉コークスを被覆するようにした所謂HPS(Hybrid Pelletized Sinter)法と称される焼結用原料の製造方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
前記特許文献4に記載される焼結用原料の製造方法は、焼結用原料の造粒にディスクペレタイザーを使用しており、このディスクペレタイザーを使用することにより、微粉であるペレットフィードを含む鉄鉱石を造粒することができ、このHPS法と特許文献1〜3に記載される焼結用原料の製造方法とを組み合わせることにより、ペレットフィード等の微粉を含む鉄鉱石の造粒が可能となる。
【0007】
しかしながら、近年、鉄鉱石原料の価格が、開発当初と大きく変わってきており、原料の配合構成も大きく変化した。もともと、前記特許文献1〜3に記載のプロセスは、当時安価であった微粉鉄鉱石(平均粒径:150μm以下)のペレットフィードの使用拡大と焼結鉱の高品質化を目的に開発された。しかし、現在では微粉鉄鉱石の価格が上昇したために使用量が減少し、ペレタイザーにおける造粒強度が低下している。そのため、前記特許文献1〜3に記載される焼結用原料の製造方法をそのまま用いると、造粒粒子径が小さいままで操業することになり、通気性が悪く、焼成ムラが発生しやすくなることが判明し、改良の必要のあることが分かった。
【0008】
上記の問題を解決するものとして、発明者らは先に、特許文献5において
「 鉄鉱石、SiO2含有原料、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料からなる焼結原料を準備し、
前記鉄鉱石、SiO2含有原料と石灰石系粉原料を撹拌混合用ドラムミキサーで混合して、混合原料を生成し、
前記混合原料をディスクペレタイザーで造粒し、造粒粒子を生成し、
前記造粒粒子を外層形成用ドラムミキサーに供給し、
前記外層形成用ドラムミキサーに供給された造粒粒子に、前記外層形成用ドラムミキサーの排出口側から、前記固体燃料系粉原料を添加し、前記固体燃料系粉原料の添加から外層形成用ドラムミキサーからの排出までの40秒以下で10秒以上の外装時間の間に前記造粒粒子の表面に固体燃料系粉原料層を形成する
ことを特徴とする焼結用原料の製造方法。」(請求項1)
を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3755452号公報
【特許文献2】特許第3794332号公報
【特許文献3】特許第3656632号公報
【特許文献4】特公平2−4658号公報
【特許文献5】特開2011−032577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上掲した特許文献5の開発により、造粒にディスクペレタイザーを用いた場合でも、良好な原料を効率よく製造可能な焼結用原料の製造が可能となった。
【0011】
本発明は、上記特許文献5に開示された技術の改良に係るもので、石灰石系粉原料の一部として超微粉石灰石を活用することによって、造粒粒子の強度向上、ひいては焼結用原料の生産性の向上を図ろうとするものである。
また、本発明は、従来は焼結機でムラ焼けが発生するためにその使用が制限されていた微粉コークスなどを有効活用することによって、焼結鉱の生産性を大幅に向上させることができる焼結用原料の有利な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
さて、本発明者らは、石灰石系粉原料と固体燃料系粉原料を除く焼結原料を造粒し、得られた造粒粒子(以下、擬似粒子という)の表面に、石灰石系粉原料と固体燃料系粉原料を付着させる、いわゆる外装処理を行なう際に生産性を向上させる技術について、鋭意検討を行った。
その結果、石灰石系粉原料中に超微粉石灰石を適量配合することによって、造粒時におけるCF融液の生成が促進されて外殻層の強度が向上すると共に、焼結時における通気性が改善されて、焼結用原料の生産性が向上することを新たに見出した。
また、本発明者らは、CDQなどで発生する微粉コークスなどの高カーボンダストを、適正な割合で、従来の粉コークス、無煙炭などに代表される固体燃料系粉原料と共に併用して、擬似粒子の表面に付着させるようにすれば、燃焼性および造粒強度が大幅に向上し、その結果、焼結用原料の生産性が向上するとの知見を得た。
なお、本発明によれば、上記したCDQなどで発生する微粉コークスのほか、C濃度が50mass%以上の微粉も使用可能であることが究明されたので、これらを総称して高カーボンダストと称する。
本発明は、これらの知見に基づいてなされたものである。
【0013】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.鉄鉱石、SiO2含有原料、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料からなる焼結原料を準備し、
上記鉄鉱石及びSiO2含有原料を撹拌混合用ドラムミキサーで混合して、混合原料を生成し、
上記混合原料をディスクペレタイザーで造粒して、擬似粒子を生成し、
上記擬似粒子を外層形成用ドラムミキサーに供給し、
上記外層形成用ドラムミキサーに供給された擬似粒子に、上記外層形成用ドラムミキサーの装入口側から上記石灰石系粉原料を添加すると共に、上記外層形成用ドラムミキサーの排出口側から上記固体燃料系粉原料を添加して、上記擬似粒子の表面に石灰石系粉原料層及び固体燃料系粉原料層を形成するに際し、
上記石灰石系粉原料に対して、超微粉石灰石を5〜40mass%の割合で併用することを特徴とする焼結用原料の製造方法。
【0014】
2.前記固体燃料系粉原料に対して、高カーボンダストを5〜40mass%の割合で併用することを特徴とする前記1に記載の焼結用原料の製造方法。
【0015】
3.前記超微粉石灰石の大きさが50μm以下であることを特徴とする前記1または2に記載の焼結用原料の製造方法。
【0016】
4.前記高カーボンダストは、大きさが50μm以下で、かつC濃度が50mass%以上であることを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【0017】
5.前記撹拌混合用ドラムミキサーで混合する混合原料には、高カーボンダストを含有させないことを特徴とする前記1乃至4のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【0018】
6.前記擬似粒子に対して添加する焼結用の原料について、その添加から、前記外層形成用ドラムミキサーの排出口に至る間の滞留時間が10〜40秒であることを特徴とする前記1乃至5のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【0019】
7.前記高カーボンダストが、CDQ集塵粉、鉄粉製造時の集塵粉および貯骸槽の集塵粉うちから選んだ一種または二種以上であり、C濃度を50mass%以上に調整されたものであることを特徴とする前記1乃至6のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従い、石灰石系粉原料として超微粉石灰石を活用することにより、造粒時におけるCF融液の生成が促進されて外殻層の強度が向上すると共に、焼結時における通気性が向上し、もって焼結用原料の生産性を向上させることができる。
また、本発明に従い、上記した超微粉石灰石だけでなく、固体燃料系粉原料として高カーボンダストを活用した場合、高カーボンダストは、擬似粒子表面に外装されるため、擬似粒子径を大きく保つことができるだけでなく、擬似粒子内に内装されないため、燃焼性が向上し、外装時間も短縮することができる。そして、通常の固体燃料と併用することから、微粉である高カーボンダストの飛散などが抑制されハンドリングが容易となる。
さらに、外装時、固体燃料空隙部分に高カーボンダストが充填される形で外装されるため、外装部分の強度も上昇し、その結果、擬似粒子の強度が向上し、また焼結機供給時の粉発生も軽減される。加えて、焼結時における焼けムラの発生を確実に阻止することができる。
その他、燃料としては、C濃度が50mass%以上であれば焼結用凝結材として使用可能であり、またC濃度が50mass%未満であっても、他のC濃度が50mass%以上の微粉と混合してC濃度を50mass%以上に調整してやれば、使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の焼結用原料の製造方法を適用したディスクペレタイザー付き製造工程の一実施形態の説明図である。
【図2】超微粉石灰石を併用した粉石灰石を外装した本発明に従う擬似粒子における超微粉石灰石の配合率と、造粒強度および燃焼溶融帯圧損との関係を示す図である。
【図3】粉コークスの粒径と燃焼帯移動速度(燃焼速度)との関係を示す図である。
【図4】超微粉石灰石を併用した粉石灰石および高カーボンダストを併用した粉コークスを外装した本発明に従う擬似粒子における高カーボンダストの配合率と、燃焼速度および層内最高到達温度との関係を示す図である。
【図5】超微粉石灰石を併用した粉石灰石および高カーボンダストを併用した粉コークスを外装した本発明に従う擬似粒子および高カーボンダストを内装した擬似粒子の、造粒後における造粒強度および焼結後における焼結強度を比較して示す図である。
【図6】従来法に従い、高カーボンダストを内装した擬似粒子の断面のイメージ図(a)およびその表層部拡大図(b)である。
【図7】本発明に従い、超微粉石灰石を含む粉石灰石を外装したのち、さらに高カーボンダストを含む粉コークスを外装した擬似粒子の断面のイメージ図(a)およびその表層部拡大図(b)である。
【図8】本発明に従い、高カーボンダストを併用した粉コークスを外装した場合および従来法に従い、通常の粉コークスを外装した場合における、外装造粒時間と焼結生産性との関係を比較して示した図である。
【図9】各焼結用原料(発明例2,3および比較例3)を焼結したときの焼結時間、歩留りおよび生産性について調べた結果を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体的に説明する。
図1に、本発明に従う、焼結用原料の好適製造工程を模式で示す。
図中、符号1は撹拌混合用ドラムミキサー、2はディスクペレタイザー、3は外層形成用ドラムミキサー、4は無端移動グレート式焼成炉、5は点火炉、そして6が固体燃料系粉原料の供給装置、7が石灰石系粉原料の供給装置である。
【0023】
以下、図1に示した焼結用原料の製造工程を、より具体的に説明する。
図1に示すとおり、鉄鉱石とSiO2含有原料を撹拌混合用ドラムミキサー1に供給し、添加される水と共に撹拌混合して、混合原料を生成する。
この混合原料は、ディスクペレタイザー2に供給され、このディスクペレタイザー2で造粒し、擬似粒子を生成する。生成された擬似粒子は、外層形成用ドラムミキサー3に供給される。
外層形成用ドラムミキサー3では、ディスクペレタイザー2で造粒された擬似粒子に対し、ドラムミキサー3の装入口側で石灰石系粉原料を供給して石灰石の下地層を形成し、ついでドラムミキサー3の排出口側で固体燃料系粉原料である粉コークスを供給して石灰石の下地層の上にコークスの外層を形成する。なお、固体燃料系粉原料の供給装置6や石灰石系粉原料の供給装置7としては、コンベヤや噴射ノズルなどが有利に適合する。
この外層形成用ドラムミキサー3で、石灰石系粉原料の内層および固体燃料系粉原料の外層からなる外殻層が形成された焼結用原料は、下方吸引式のドワイトロイド式焼結機4に装入される。このドワイトロイド式焼結機4では、点火炉5で焼結用原料の粉コークスに添加されて、焼成が行われる。
【0024】
ドワイトロイド焼結機4では、点火炉5で粉コークスに点火した後、ブロワーで下方から吸引しつつ、コンベヤで焼結用原料を搬送しながら焼成する。焼結された焼結原料は焼結ケーキとなり、この焼結ケーキを破砕、整粒して、例えば4mm以上の粒径の焼結鉱を高炉に供給し、それ以外のものを返鉱として鉄鉱石相当の焼結用原料として再利用する。従って、本発明で述べる焼結原料中の鉄鉱石とは返鉱を含むものである。
【0025】
ところで、従来、外装処理に使用する石灰石系粉原料4および固体燃料系粉原料5の平均粒径は、いずれも250μm〜2.0mm程度であった。
このように、従来使用されてきた石灰石系粉原料および固体燃料系粉原料の平均粒径は比較的大きかったこともあって、必ずしも強固な外殻層を形成することができなかった。また、燃焼速度についても十分に満足のいく速度は得られなかった。
【0026】
そこで、発明者らは、この問題を解消すべく種々検討を重ねた結果、石灰石系粉原料中に適量の超微粉石灰石を混在させると、比較的粒径の大きな石灰石の空隙に超微粉石灰石が効果的に侵入し、造粒の際に強固な石灰石系粉原料の内層が形成されることが判明した。
また、同様に、従来は微細すぎるとして、その使用を見合わせていた高カーボンダストを、適正な割合で混在させると、比較的粒径の大きな炭素原料の空隙に微細な高カーボンダストが侵入して、強固な固体燃料系粉原料の外層が形成されることが判明した。
その結果、造粒強度および燃焼性が大幅に向上し、生産性も格段に向上すること究明されたのである。
【0027】
図2に、本発明に従い、超微粉石灰石を併用した粉石灰石および粉コークスを外装した擬似粒子の造粒強度および燃焼溶融帯圧損に及ぼす影響について調べた結果を、擬似粒子における超微粉石灰石の配合率との関係で示す。なお、超微粉石灰石としては篩下50μmの微粉を用いた。また、擬似粒子における全石灰石量は10mass%の一定とした。
同図に示したとおり、超微粉石灰石を外装した本発明に従う擬似粒子では、超微粉石灰石の配合率が高くなるに従って造粒強度は上昇し、燃焼溶融帯圧損は低下している。しかしながら、超微粉石灰石の配合率が4mass%(全石灰石に対する併用割合:40mass%)を超えると過溶融状態となり、燃焼溶融帯圧損が増加し始める。
【0028】
従って、本発明では、石灰石系粉原料における超微粉石灰石の配合割合(併用割合)は5〜40mass%の範囲に限定した。というのは、石灰石系粉原料において、超微粉石灰石の配合率が5mass%に満たないと外殻層を強化するという所望の効果が得られず、一方40mass%を超えると過溶融状態となり、燃焼溶融帯の圧損が増加するからである。
【0029】
次に、図3に、粉コークスの粒径と燃焼帯移動速度(以下、単に燃焼速度という)との関係について調べた結果を示す。
同図に示したとおり、粉コークスの粒径が小さくなればなるほど、粉コークスの比表面積は増大し、また雰囲気温度も高温になるため、燃焼速度は上昇する。
従って、かような超微粉・高反応性炭材(高カーボンダスト)を適正な割合で併用することにより、燃焼速度の向上が期待できるわけである。
【0030】
図4に、本発明に従い、超微粉石灰石を併用した粉石灰石および高カーボンダストを併用した粉コークスを外装した擬似粒子の燃焼速度および層内最高到達温度に及ぼす影響について調べた結果を、擬似粒子における高カーボンダストの配合率との関係で示す。なお、高カーボンダストとしては篩下50μmの微粉を用いた。また、擬似粒子における全石灰石量は10mass%、粉コークスの配合割合は5mass%の一定とした。
同図に示したとおり、高カーボンダストを外装した本発明に従う擬似粒子では、高カーボンダストの配合率が0.25mass%以上、すなわち全カーボン(固体燃料系粉原料)のうち高カーボンダストの配合割合が5mass%以上になると燃焼速度は上昇し、それに伴って層内最高到達温度も上昇する。しかしながら、高カーボンダストの配合割合が2mass%(粉コークスに対する併用割合:40mass%)を超えると、層内最高到達温度は低下し始める。
【0031】
従って、固体燃料系粉原料における高カーボンダストの配合割合(併用割合)は5〜40mass%の範囲とすることが好ましい。というのは、固体燃料系粉原料において、高カーボンダストの配合率が5mass%に満たないと燃焼性や造粒強度の改善が十分とはいえず、一方40mass%を超えると燃焼溶融帯の幅が拡大し、焼結層内における圧損が増加する弊害が生じるからである。
【0032】
次に、図5に、本発明に従い、超微粉石灰石を併用した粉石灰石および高カーボンダストを併用した粉コークスを外装した場合の擬似粒子の造粒強度と、その後に焼結を行った場合の焼結強度について調べた結果を示す。
なお、図5には、比較のため、高カーボンダストを擬似粒子の内部に内装した場合の擬似粒子の造粒強度および焼結強度について調べた結果も併せて示す。
また、造粒強度および焼結強度はそれぞれ、以下に示す推定式(数1、数2)に基づいて推定した。
【0033】
[数1]
・造粒強度の推定式
σ=6・ψ・S・{(1−ε)/ε}・{(γcosθ)/d}
ここで、σ:擬似粒子の強度(N)、ψ:液体の充満度(-)、S:粉体の表面積(m2)、ε:擬似粒子の空隙率(-)、γ:水の表面張力(N/m)、θ:水との接触角(°)、d:擬似粒子径(m)
【0034】
[数2]
・焼結強度の推定式
σt=σ0・exp(-c・P)
ここで、σt:引張強度(MPa)、σ0:基質強度(MPa)、P:空隙率(-)、c:定数(-)
【0035】
同図に示したとおり、本発明に従い、超微粉石灰石および高カーボンダストを外装した場合には、擬似粒子の造粒強度が格段に向上した。この理由は、疎水性の炭材が外装されることによって、濡れ性が大きく改善されたことによるものと考えられる。
また、本発明に従った場合には、擬似粒子の焼結強度も格段に向上したが、この理由は、空隙率の低下に起因するものと考えられる。すなわち、本発明に従い、超微粉石灰石および高カーボンダストを適量併用した場合には、通常の粉石灰石および粉コークスの空隙に、微細な粉石灰石および高カーボンダストが侵入し、その結果、カーボン焼成後に生じる空隙(破壊起点)の生成が抑制されたことによるものと考えられる。
【0036】
図6(a)および図7(a)に、従来法に従い、超微粉・高反応性炭材(高カーボンダスト)を内装した擬似粒子および本発明に従い、超微粉石灰石を含む石灰石系粉原料の内層と超微粉・高反応性炭材(高カーボンダスト)を含む固体燃料系粉原料の外層からなる外殻層を形成した擬似粒子の断面のイメージを比較して示す。また、図6(b)および図7(b)は、各断面の表層部を拡大して示したものである。
図6(b)と図7(b)を比較すれば明らかなように、従来法に従う擬似粒子では、高カーボンダストが内部に点在しているのに対し、本発明に従う擬似粒子では、超微粉石灰石が石灰石系粉原料の間隙に侵入した内層と、高カーボンダストが粉コークスの間隙に侵入した外層が形成されていることが分かる。
【0037】
このように、擬似粒子について、本発明に従う粒子構造とすることにより、造粒強度および焼結強度の向上、燃焼速度の上昇、外装造粒時間の短縮化が図れ、その結果、生産性の格段の向上が達成されるのである。
すなわち、超微粉石灰石の適量添加により、造粒時におけるCF融液の生成が促進されて強度の弱いカルシウムシリケートの生成が抑制される結果、擬似粒子の強度が向上し、また焼結時における通気性が向上する結果、焼結用原料の生産性が向上するのである。
一方、高カーボンダストの添加により、疎水性の炭材が外装されることによって、濡れ性が大きく改善される結果、造粒強度が格段に向上し、また通常の粉コークスの空隙に、微細な高カーボンダストが侵入する結果、カーボン焼成後に生じる空隙(破壊起点)の生成が抑制されて、擬似粒子の焼結強度が格段に向上し、さらに擬似粒子の外装造粒時間を従来に比べて約1/2程度まで短縮することができる。
【0038】
また、本発明において、超微粉石灰石としては、大きさが50μm以下とすることが好ましい。というのは、超微粉石灰石の大きさが50μmを超えると外装される石灰石と最密充填せず、粒子表面での被覆性が低下する傾向があるからである。なお、超微粉石灰石の大きさの好適下限は10μm以下である。
ここに、超微粉石灰石の大きさとは、超微粉石灰石が球状の場合には円相当径、一方非球形の場合には、篩い目径と定義する。
上記した超微粉石灰石としては、次表1に示すものが使用可能である。
【0039】
【表1】

【0040】
同様に、本発明において、高カーボンダストは、大きさが50μm以下でかつ、C濃度が50mass%以上であることが好ましい。というのは、高カーボンダストの大きさが50μmを超えると外装される粉コークスと最密充填せず、粒子表面での被覆性が低下する傾向があるからである。なお、高カーボンダストの大きさの好適下限は10μm以下である。
一方、高カーボンダストC濃度が50mass%に満たないと燃焼熱が小さく、さらに共存するスラグ成分・灰分により、粉コークスの燃焼性が阻害されるという不利が生じる。
ここに、高カーボンダストの大きさの定義は、超微粉石灰石の場合と同じである。
【0041】
上記した高カーボンダストとしては、CDQ集塵粉、鉄粉製造時の集塵粉および貯骸槽の集塵粉からなるグループから選択された少なくとも一つであり、C濃度が50mass%以上に調整されたものが特に好適である。
表2に、CDQ集塵粉、鉄粉製造時の集塵粉および貯骸槽の集塵粉の好適成分例を示す。
【0042】
【表2】

【0043】
なお、前掲図1に示したところにおいて、所定の外装時間を確保する位置に固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料を搬送するためには、搬送装置(たとえばベルトコンベア,スクリューコンベア等)を外層形成用ドラムミキサー内に挿入しなければならない。しかしながら、外層形成用ドラムミキサー内は多量の粉塵が浮遊しているので、ベルトコンベアを使用すると、ベルトに駆動力を供給するモーターやローラーの故障頻度が高まる。
【0044】
この点、スクリューコンベアは、多数のローラーを設置する必要がなく、構造が単純であるため、外層形成用ドラムミキサー内に挿入しても故障し難く、安定して稼動できる。スクリューコンベアを外層形成用ドラムミキサー内に挿入すれば、その先端位置を調整して所定の位置に固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料を添加することが可能である。その場合は、衝撃が緩和(自然落下の衝撃のみ)されるので、擬似粒子の崩壊を防止できる。また、固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料の崩壊も防止でき、予め調整した粒径を維持できる。従って、搬送手段としてはスクリューコンベアを使用するのが好ましい。
【0045】
また、外装処理に使用する固体燃料系粉原料の平均粒径は250μm〜2.5mm、石灰石系粉原料の平均粒径は250μm〜5.0mm程度とするのが好ましい。固体燃料系粉原料の平均粒径が2.5mmを超えたり、石灰石系粉原料の平均粒径が5.0mmを超えると、固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料の粗大な粒子が増加するので、擬似粒子の表面に、短時間で均一に被覆するのは困難になる。一方、いずれも平均粒径が250μm未満では、固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料とも微細な粒子が増加し、擬似粒子に不可避的に存在する隙間から侵入して、内部にも固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料が混入した焼結用原料となる。そのような焼結用原料を焼結すると、CF融液を焼結用原料の表面に選択的に生成させる効果は得られない。
なお、焼結用原料全体に対する固体燃料系粉原料および石灰石系粉原料の配合割合はそれぞれ、固体燃料系粉原料:3.0〜6.0mass%、石灰石系粉原料:6.0〜12.0mass%程度とすることが好ましい。さらに好ましくは固体燃料系粉原料:3.5〜5.0mass%、石灰石系粉原料:6.5〜10.0mass%の範囲である。
【0046】
さらに、外装時間が10秒未満では、擬似粒子の表面を均一に被覆できなくなる。外装時間が50秒を超えると、固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料を添加した後で擬似粒子が崩壊して再度造粒されるので、固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料が擬似粒子の内部に混入する。その結果、擬似粒子の表面を均一に被覆できなくなるばかりでなく、内部にも固体燃料系粉原料や石灰石系粉原料が混入した焼結用原料となる。従って、外装時間は10〜50秒程度とするのが好ましい。より好ましくは10〜40秒の範囲であり、さらに好ましくは15〜30秒の範囲である。
【0047】
図8に、本発明に従い、高カーボンダストを併用した粉コークスを外装した擬似粒子および従来法に従い、通常の粉コークスを外装した擬似粒子の好適外装造粒時間について調べた結果を、焼結生産性との関係で示す。なお、本発明に従う擬似粒子において、粉コークスに対する高カーボンダストの配合割合は10mass%とした。
同図に示したとおり、従来の擬似粒子の好適外装造粒時間が40秒前後であったのに対し、本発明に従う擬似粒子の好適外装造粒時間は20〜25秒程度とあり、外装造粒時間を大幅に短縮することができた。
このようにして外装処理における外装時間を短縮することによって、外層形成用ドラムミキサーの生産性を向上することができる。しかも、得られた焼結用原料を焼結すると、CF融液を焼結用原料の表面に選択的に生成させて、焼結鉱を効率良く製造することもできる。
【実施例】
【0048】
実施例1
図1に示したように、鉄鉱石およびSiO2含有原料を装入口から撹拌混合用ドラムミキサー1に装入して、混合原料を生成した。なお、SiO2含有原料としては、珪石あるいはニッケルスラグを使用した。ついで、この混合原料をディスクペレタイザー2に装入し、このディスクペレタイザー2内で造粒して擬似粒子とした。ついで、得られた擬似粒子を外層形成用ドラムミキサー3に装入し、この擬似粒子が外層形成用ドラムミキサー3の排出口に到達するまでの滞留時間が40秒となる位置で、石灰石系粉原料として平均粒径:1.2mmの石灰石:8mass%と平均粒径:50μmの超微粉石灰石:2mass%(全石灰石に対する併用割合:20%)を添加し、また外層形成用ドラムミキサー3の排出口に到達するまでの滞留時間が20秒となる位置で、固体燃料系粉原料として平均粒径:0.9mmの粉コークス:4mass%と平均粒径:50μmの高カーボンダスト:1mass%(全コークスに対する併用割合:20%)を添加した。また、具体的な添加は、装入口あるいは排出口から外層形成用ドラムミキサー3内の長手方向に進退可能に配置したスクリューコンベアの先端位置を調整して添加した。したがって外装時間は40秒(石灰石系粉原料)、20秒(固体燃料系粉原料)である。
これを発明例1とする。
【0049】
一方、比較例1として、発明例1と同様、鉄鉱石およびSiO2含有原料を装入口から撹拌混合用ドラムミキサー1に装入して、混合原料を生成したのち、ディスクペレタイザー2に装入し造粒して、擬似粒子とした。ついで、得られた擬似粒子を外層形成用ドラムミキサー3に装入し、この擬似粒子が外層形成用ドラムミキサー3の排出口に到達するまでの滞留時間が80秒となる位置で、平均粒径:1.2mmの石灰石:10mass%を添加し、また外層形成用ドラムミキサー3の排出口に到達するまでの滞留時間が50秒となる位置で、固体燃料系粉原料として平均粒径:0.9mmの粉コークス:5mass%を添加した。
【0050】
また、比較例2として、外装時間を40秒(石灰石系粉原料)、20秒(固体燃料系粉原料)とする他は、比較例1と同じ条件で焼結用原料を製造した。
【0051】
発明例1および比較例1,2の焼結用原料を焼結したところ、発明例1と比較例1の焼結用原料では、十分な強度を有する焼結鉱が得られた。これは、CF融液が焼結用原料の表面に生成されたことを示している。
【0052】
しかしながら、比較例2の焼結用原料から製造した焼結鉱は、発明例1や比較例1の焼結用原料を用いた焼結鉱に比べて、強度が劣っていた。これは、擬似粒子の表面に石灰石系粉原料と固体燃料系粉原料を均一に被覆できなかったために、CF融液の生成にムラが生じたことを示している。
【0053】
つまり、本発明によれば、焼結用原料を製造する際に外装時間を短縮でき、しかもその焼結用原料を焼結することによって、十分な強度を有する焼結鉱を得ることができる。
【0054】
実施例2
実施例1と同様にして、表3に示す種々の焼結用原料(発明例2,3および比較例3)を製造した。各焼結用原料における素材の配合割合は表3に示すとおりである。
発明例2は、全石灰石に対して超微粉石灰石を20mass%併用した場合、発明例3は、全石灰石に対して超微粉石灰石を20mass%併用すると共に、全コークスに対して高カーボンダストを20mass%併用した場合である。なお、外装時間はいずれも、粉石灰石が40秒、粉コークスが20秒とした。
かくして得られた各焼結用原料を焼結したときの焼結時間、歩留りおよび生産性について調べた結果を、比較して図9示す。
【0055】
【表3】

【0056】
図9に示したとおり、発明例2,3はいずれも、比較例3に比べて、焼結時間が短く、かつ歩留りが高く、しかも高い生産性を得ることができた。特に超微粉石灰石と高カーボンダストを活用した発明例3は、超微粉石灰石のみを活用した発明例2と比べても、焼結時間、歩留りおよび生産性の全ての点で勝っていた。
【符号の説明】
【0057】
1 撹拌混合用ドラムミキサー
2 ディスクペレタイザー
3 外層形成用ドラムミキサー
4 無端移動グレート式焼成炉
5 点火炉
6 固体燃料系粉原料の供給装置
7 石灰石系粉原料の供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石、SiO2含有原料、石灰石系粉原料及び固体燃料系粉原料からなる焼結原料を準備し、
上記鉄鉱石及びSiO2含有原料を撹拌混合用ドラムミキサーで混合して、混合原料を生成し、
上記混合原料をディスクペレタイザーで造粒して、擬似粒子を生成し、
上記擬似粒子を外層形成用ドラムミキサーに供給し、
上記外層形成用ドラムミキサーに供給された擬似粒子に、上記外層形成用ドラムミキサーの装入口側から上記石灰石系粉原料を添加すると共に、上記外層形成用ドラムミキサーの排出口側から上記固体燃料系粉原料を添加して、上記擬似粒子の表面に石灰石系粉原料層及び固体燃料系粉原料層を形成するに際し、
上記石灰石系粉原料に対して、超微粉石灰石を5〜40mass%の割合で併用することを特徴とする焼結用原料の製造方法。
【請求項2】
前記固体燃料系粉原料に対して、高カーボンダストを5〜40mass%の割合で併用することを特徴とする請求項1に記載の焼結用原料の製造方法。
【請求項3】
前記超微粉石灰石の大きさが50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結用原料の製造方法。
【請求項4】
前記高カーボンダストは、大きさが50μm以下で、かつC濃度が50mass%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【請求項5】
前記撹拌混合用ドラムミキサーで混合する混合原料には、高カーボンダストを含有させないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【請求項6】
前記擬似粒子に対して添加する焼結用の原料について、その添加から、前記外層形成用ドラムミキサーの排出口に至る間の滞留時間が10〜40秒であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。
【請求項7】
前記高カーボンダストが、CDQ集塵粉、鉄粉製造時の集塵粉および貯骸槽の集塵粉うちから選んだ一種または二種以上であり、C濃度を50mass%以上に調整されたものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の焼結用原料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36048(P2013−36048A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162717(P2011−162717)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】