説明

焼結鉱の製造方法

【課題】焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減できると共に、資源の有効利用も図れる焼結鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】鉄鉱石、固体燃料、及び石灰石系原料を含む焼結原料を、焼結パレット上に装入して焼結する焼結鉱の製造方法において、固体燃料15の表面を、CaO成分系を30質量%以上含有する製鋼スラグ微粉16で、厚さ50μm以上250μm以下に覆った状態で、固体燃料15を焼結パレット上に装入することにより、焼結時に焼結パレット上で固体燃料15が燃焼する際のNOx発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機で発生する排ガス中のNOxの低減が図れる焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製鉄所では、焼結機を使用して焼結原料を焼結している。
この焼結原料の焼結時に発生する排ガス中には、窒素酸化物(NOx)が含まれているため、発生した排ガスは、窒素酸化物を除去した後に大気へ放散される。窒素酸化物の除去方法としては、例えば、特許文献1に、燃料コークスとCaO−FeO(酸化鉄)系複合酸化物を含有する微粉末触媒からなる擬似粒子を用いて焼結を行う方法が開示されている。
また、製鉄所の製鋼工程からは、製鋼スラグ(例えば、転炉スラグ等)が発生しており、これを路盤材や埋立て材等に使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−60257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に開示された方法は、焼結原料として使用されていないCaO−FeO系複合酸化物を準備する必要があり、新たなコストが生じて経済的でない。
また、製鉄所から発生する製鋼スラグの使用可能な分野には限りがあり、利用用途の更なる拡大が望まれている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減できると共に、資源の有効利用も図れる焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)鉄鉱石、固体燃料、及び石灰石系原料を含む焼結原料を、焼結パレット上に装入して焼結する焼結鉱の製造方法において、
前記固体燃料の表面を、CaO成分系を30質量%以上含有する製鋼スラグ微粉で、厚さ50μm以上250μm以下に覆った状態で、該固体燃料を前記焼結パレット上に装入することにより、焼結時に前記焼結パレット上で前記固体燃料が燃焼する際のNOx発生を抑制することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【0007】
(2)前記鉄鉱石の擬似造粒物の表面に、前記製鋼スラグ微粉で覆われた前記固体燃料を付着させた後、該擬似造粒物を前記焼結パレット上に装入することを特徴とする(1)記載の焼結鉱の製造方法。
【0008】
(3)前記製鋼スラグ微粉で被覆した前記固体燃料の量は、前記焼結パレットに供給する全固体燃料量の30質量%以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の焼結鉱の製造方法。
【0009】
(4)前記製鋼スラグ微粉で前記固体燃料を覆うに際し、該固体燃料と該製鋼スラグ微粉に対する該製鋼スラグ微粉の配合割合を10質量%以上30質量%以下とし、しかも前記製鋼スラグ微粉と前記固体燃料との造粒物の水分含有量が8質量%以上15質量%以下となるように、添加する水分量を調整して、前記製鋼スラグ微粉と前記固体燃料を混練機で混練し造粒することを特徴とする(1)〜(3)記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る焼結鉱の製造方法は、固体燃料の表面を、CaO成分系を30質量%以上含有する製鋼スラグ微粉で、厚さ50〜250μmに覆った状態で、焼結パレット上に装入するので、焼結原料の焼結時に、固体燃料の近傍でカルシウムフェライト(CaO−Fe)を生成できる。このカルシウムフェライトには、固体燃料の燃焼時に発生するNOxの還元作用があり、NOxの一部をNに分解できるため、焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOx量を低減できる。
このように、製鉄所から発生した製鋼スラグを、焼結鉱の製造に利用することで、焼結時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減できると共に、資源の有効利用も図れる。
【0011】
また、鉄鉱石の擬似造粒物の表面に、製鋼スラグ微粉で覆われた固体燃料を付着させる場合、擬似造粒物中への固体燃料の埋没を抑制できるので、固体燃料の燃焼効率の低下を抑制できる。更に、この固体燃料の表面が製鋼スラグ微粉で覆われているため、固体燃料の燃焼効率が良好であったとしても、カルシウムフェライトの生成によりNOx発生を抑制できる。
【0012】
そして、製鋼スラグ微粉で被覆した固体燃料の量が、焼結パレットに供給する全固体燃料量の30質量%以上である場合、焼結パレットに供給する大部分の固体燃料の近傍で、カルシウムフェライトを生成できる。これにより、焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOxの大部分を分解でき、NOx発生を更に抑制できる。
【0013】
更に、製鋼スラグ微粉で固体燃料を覆うに際し、製鋼スラグ微粉と固体燃料との造粒物の水分含有量が8〜15質量%となるように水分を添加して、製鋼スラグ微粉と固体燃料を混練機で混練し造粒するため、固体燃料表面への製鋼スラグ微粉の付着効果を高めることができる。ここで、固体燃料と製鋼スラグ微粉に対する製鋼スラグ微粉の配合割合を10〜30質量%にすることで、カルシウムフェライトの生成効率が高められ、排ガス中のNOxの分解効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る焼結鉱の製造方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る焼結鉱の製造方法は、焼結原料を焼結機10の焼結パレット上に装入して焼結する方法であり、製鋼スラグ微粉を使用することで、焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減すると共に、資源の有効利用を図る方法である。以下、詳しく説明する。
【0016】
まず、鉄鉱石(例えば、鉄鉱石原料や返鉱等)、コークス(固体燃料の一例)、石灰石系原料(例えば、CaOやCaCO)、及びその他の副原料(例えば、MgO源やSiO源)を、貯留槽11から予め設定した配合割合でそれぞれ切出す。
そして、この鉄鉱石、コークス、石灰石系原料、及びその他の副原料を含む焼結原料を1次ドラムミキサー12へ投入し、これに水分を添加して造粒を行う。更に、これらを、1次ドラムミキサー12の下流側に配置された2次ドラムミキサー13へ投入して、更なる造粒を行う。
【0017】
この造粒を行うに際しては、2台のドラムミキサー12、13を直列に配置して行ったが、3台以上(複数台)のドラムミキサーを直列に配置して行ってもよく、また1台のドラムミキサーのみで行ってもよい。また、この造粒は、擬似造粒物を製造できれば、ドラムミキサー以外の他の造粒機、例えば、レディゲミキサー等を使用することもできる。
これにより、核となる粒子の周囲に粉を付着させ、平均粒径が2〜4mm程度の擬似造粒物を製造することができる。例えば、核となる粒子が粗粒鉄鉱石であれば、その周囲に微粉鉄鉱石や粉コークスが付着し易く、また、核となる粒子が粗粒コークスであれば、その周囲に微粉鉄鉱石が付着し易い。
【0018】
なお、2次ドラムミキサー13内の下流側では、貯留槽14から予め設定した割合で切り出されたコークス(固体燃料の一例)15が供給される。
このコークス15の表面は、製鋼スラグ微粉16で覆われている。製鋼スラグ微粉16には、製鉄所から発生する製鋼スラグ、即ちCaO成分系(例えば、CaOやCa(OH)等)を30質量%以上(好ましくは、下限を35質量%)含有する転炉スラグや電気炉スラグ等を使用できる。なお、製鋼スラグに含まれるCaO成分系の上限は、例えば、50質量%程度であり、また、製鋼スラグには、Fe成分(T.Fe(全鉄)で5質量%以上25質量%以下程度)も含まれている。
これにより、コークス15の燃焼時に発生するNOxの還元作用を備えるカルシウムフェライト(CaO−Fe)を、コークス15の近傍に生成できる。
【0019】
ここで、製鋼スラグ微粉16を、上記した構成に限定したのは、カルシウムフェライトを生成するために必要なCaO成分系の量と、製鉄所から発生する製鋼スラグの成分を考慮したことによる。
なお、製鋼スラグ微粉16で覆われたコークス15を供給する2次ドラムミキサー13内には、カルシウムフェライトを生成するために必要なFe成分(擬似造粒物中の鉄鉱石)もあるが、上記したFe成分を含有する製鋼スラグ微粉を使用することで、CaO成分系とFeとの接触効率が高められ、カルシウムフェライトの生成効率を更に高めることができる。
【0020】
また、製鋼スラグ微粉16には、製鉄所から発生した製鋼スラグを粉砕機により粉砕したものを使用できるが、粒径0.5mm以下の微粉を60質量%以上含有するものを使用することが好ましい。この製鋼スラグ微粉の一例である乾燥スラグ脱水ケーキ(微粉)の乾粒度測定結果を、表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1に示すように、製鋼スラグ微粉は、粒径0.5mm以下の微粉を60質量%以上含有していることが分かる。なお、平均粒径は0.72mm程度である。
ここで、粒径0.5mm以下の微粉を60質量%以上としたのは、製鋼スラグ微粉の表面積を大きくして、カルシウムフェライトの生成効率を向上させるため、またコークスの粒径(粒径:0.5mmアンダー程度、平均粒径:1.5〜3mm程度)を考慮して付着させ易くするためである。このため、微粉量の上限値については、特に規定していないが、製鋼スラグの粉砕作業の効率等を考慮すれば、90質量%、更には80質量%程度である。
【0023】
なお、製鋼スラグ微粉16で被覆するコークス15の量は、擬似造粒物中へのコークスの埋没を抑制すること等を考慮すれば、焼結パレットに供給する全コークス量の30質量%以上(好ましくは、40質量%以上)とすることが好ましい(100質量%でもよい)。
このため、貯留槽11から1次ドラムミキサー12へ供給されるコークス量は、焼結パレットに供給する全コークス量から、製鋼スラグ微粉16で被覆するコークス15量を差し引いた量(70質量%以下)となる。
【0024】
また、コークス15を被覆する製鋼スラグ微粉16の厚みは、50μm以上250μm以下である。
ここで、コークスを被覆する製鋼スラグ微粉の厚みが50μm未満の場合、製鋼スラグの被覆厚みが薄過ぎるため、CaO成分系の量が少なくなり、その結果、カルシウムフェライトの生成量が少なくなって、排ガス中のNOx量の低減効果が少なくなる。
一方、厚みが250μmを超える場合、製鋼スラグの被覆厚みが厚過ぎるため、焼結パレットに供給された後に、製鋼スラグで被覆されたコークスの着火が難しくなる。
以上のことから、コークスを被覆する製鋼スラグ微粉の厚みを、50μm以上250μm以下としたが、下限を100μm、更には150μmとし、上限を220μm、更には200μmとすることが好ましい。
【0025】
そして、製鋼スラグ微粉16でコークス15を覆うに際しては、製鋼スラグ微粉16とコークス15をレディゲミキサー(混練機の一例)17に供給して混練した後、この混練物をパンペレタイザー18に供給すると共に水分を添加して造粒し、コークス15の周囲に製鋼スラグ微粉16を付着させて、このコークス15を製鋼スラグ微粉16で覆う。なお、製鋼スラグ微粉16とコークス15に添加する水分量は、コークス15表面への製鋼スラグ微粉16の付着効果を高めるため、製鋼スラグ微粉16とコークス15との造粒物の水分含有量が8質量%以上15質量%以下(好ましくは、下限を10質量%、上限を14質量%)となるように、調整することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0026】
ここで、コークス15と製鋼スラグ微粉16の混練は、レディゲミキサーを用いて行ったが、これ以外の他の混練機、例えば、ダウミキサー等を使用することもできる。
上記した方法により、コークス15の表面の全部を、製鋼スラグ微粉16で覆うことができるが、コークス15の表面の一部(例えば、全表面積の20%以上80%以下程度)を、製鋼スラグ微粉16で覆った場合でも、NOx発生の抑制効果は得られる。
【0027】
以上の方法で得られた製鋼スラグ微粉16で覆われたコークス15を、2次ドラムミキサー13内の下流側(排出口から供給口側に向かって5m(2次ドラムミキサーの全長の20%)以内の位置が好ましい)に供給することで、この製鋼スラグ微粉16で覆われたコークス15を、擬似造粒物の表面に付着させることができる。なお、製鋼スラグ微粉16で覆われたコークス15の添加位置は、上記した位置に限定されるものではなく、例えば、2次ドラムミキサー13の下流側に配置された擬似造粒物を搬送するコンベア(図示しない)のベルト上とすることもできる(図1中の点線矢印参照)。
【0028】
そして、この製鋼スラグ微粉16で覆われたコークス15を、擬似造粒物の表面に付着させた状態で、供給装置(例えば、ドラムフィーダ等)を介して焼結パレット上に装入する。
これにより、焼結時に、コークスの近傍でカルシウムフェライトが生成し、コークスの燃焼時に発生するNOxの一部をNに分解できるため、焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOx量を低減できる。なお、上記したNOx量の低減効果を得るためには、製鋼スラグ微粉でコークスを覆うに際し、コークスと製鋼スラグ微粉に対する製鋼スラグ微粉の配合割合を、10質量%以上30質量%以下(好ましくは、下限を15質量%、上限を25質量%)の範囲で設定するのがよい。
【実施例】
【0029】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
まず、製鋼スラグ微粉によるコークスの被覆条件を、以下に示す。
ここでは、混練機で混練した後、直径が5m、傾斜角度が57度のパンペレタイザーを使用し、回転数を8rpm(回/分)にして、製鋼スラグ微粉の被覆を行った。なお、使用したコークスの粒度分布を表2に、製鋼スラグA〜Dの各主成分を表3に、製鋼スラグA〜Dの各粒度分布を表4に、それぞれ示す。
【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
【表4】

【0033】
次に、鉄鉱石、コークス、石灰石系原料、及びその他の副原料を含む焼結原料の造粒条件を、以下に示す。
ここでは、内径が4.8m、長さが17.1mの1次ドラムミキサーを使用し、回転数を6rpmにして、上記した焼結原料の造粒を行った。そして、この造粒が終了した後、内径が5.4m、長さが26mの2次ドラムミキサーを使用し、回転数を6rpmにして、1次ドラムミキサーで処理した焼結原料の造粒を行った。
なお、上記した製鋼スラグ微粉で被覆されたコークスは、2次ドラムミキサーで造粒される擬似造粒物に添加した。
【0034】
上記した方法で製造した擬似造粒物を、DL式焼結機の焼結パレット上に装入して焼結させた。
なお、焼結機は、有効面積が660m、焼結パレットの搬送速度が2〜5m/分、擬似造粒物の装入層厚が550〜750mmである。また、排ガス中のNOx量の測定は、常圧式化学発熱方式の測定形式を採用した(株)島津製作所製の測定器を用い、焼結排ガスの煙道で行った。
まず、表2に示す粒度分布を備えたコークス、及び表3、表4に示す製鋼スラグA〜Dを用いた試験条件と試験結果を、表5、表6にそれぞれ示す。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
なお、表5、表6において、被覆造粒物の欄に記載した「製鋼スラグ量(質量%)」は、製鋼スラグでコークスを覆うに際し、コークスと製鋼スラグに対する製鋼スラグの配合割合を示したものである。また、「コークス量(質量%)」は、焼結パレットに供給する全コークス量に対する製鋼スラグで被覆したコークス量の割合である。そして、「含有水分量」は、製鋼スラグとコークスとの造粒物の水分含有量であり、「被覆厚さ」は、コークスの表面を覆った製鋼スラグの厚みである。
また、表5、表6において、焼結原料の欄に記載した「被覆造粒物の添加位置」は、製鋼スラグで被覆したコークスの擬似造粒物への添加位置であり、2次ドラムミキサー内の下流側、即ち2次ドラムミキサーの排出口から3m上流側の位置(DM下流)と、2次ドラムミキサーの下流側に設けられたコンベアのベルト上(DM後BC)とした。
【0038】
表5、表6に示す実施例1〜12は、コークスの表面を、CaO成分を30質量%以上含有する製鋼スラグA、B、Dで、厚さ50μm以上250μm以下(ここでは、80〜200μm)に覆ったため、発生するNOx量を、表6に示す従来例よりも低減できた。
特に、製鋼スラグで覆われたコークスの添加位置を、実施例4のように、ベルトコンベア上とすることで、実施例2のように、2次ドラムミキサー内の下流側とした場合よりも、排ガス中のNOx量の低減効果が得られた。
これは、製鋼スラグで覆われたコークスをベルトコンベア上で添加することで、製鋼スラグがコークスの周囲から剥げ落ちることを抑制でき、その結果、コークスの周囲で満遍なくカルシウムフェライトを生成できたことによる。
また、製鋼スラグ微粉でコークスを覆うに際し、実施例2〜9に示すように、製鋼スラグA、Dを使用した場合、コークスと製鋼スラグに対して製鋼スラグの配合割合を10質量%以上30質量%以下(ここでは、20〜23質量%)とすることで、コークスに対する製鋼スラグの接触効率が高められ、実施例1、10と比べてNOx量の低減効果が得られた。
【0039】
一方、表6に示す比較例1、3〜5は、コークスの表面を覆う製鋼スラグAの厚さが、10μm未満であり、製鋼スラグの被覆厚みが薄過ぎるため、カルシウムフェライトの生成量が少なくなって、排ガス中のNOx量の低減効果が少なくなった。
また、表6に示す比較例2は、コークスの表面を覆う製鋼スラグAの厚さが、最適範囲の上限である250μmを超え、製鋼スラグの被覆厚みが厚過ぎるため、製鋼スラグで被覆されたコークスの着火が難しくなり、焼結鉱の歩留低下が発生した。
そして、表6に示す比較例6は、使用した製鋼スラグが、含まれるCaO成分の最適範囲の下限30質量%を下回った製鋼スラグCであったため、カルシウムフェライトの生成量が少なくなって、排ガス中のNOx量の低減効果が少なくなった。
【0040】
以上のことから、本発明の焼結鉱の製造方法を用いることで、焼結鉱の歩留低下を招くことなく、焼結原料の焼結時に発生する排ガス中のNOxを経済的に低減できると共に、資源の有効利用も図れることを確認できた。
【0041】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼結鉱の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、製鋼スラグ微粉で覆われた状態のコークスを、ドラムミキサー内の下流側に供給し、鉄鉱石の擬似造粒物の表面に付着させた後、焼結パレット上に装入する方法について説明した。しかし、この方法に限定されるものではなく、例えば、擬似造粒物を造粒するドラムミキサーの出側から、焼結パレット上方の供給装置(ホッパー)までの間に設けたベルトコンベア上の擬似造粒物上に、製鋼スラグ微粉で覆われたコークスを供給した後、これを焼結パレット上に供給することも、また擬似造粒物と製鋼スラグ微粉で覆われたコークスとを、別々のホッパーから焼結パレット上に供給することもできる。
【符号の説明】
【0042】
10:焼結機、11:貯留槽、12、13:ドラムミキサー、14:貯留槽、15:コークス(固体燃料)、16:製鋼スラグ微粉、17:レディゲミキサー(混練機)、18:パンペレタイザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄鉱石、固体燃料、及び石灰石系原料を含む焼結原料を、焼結パレット上に装入して焼結する焼結鉱の製造方法において、
前記固体燃料の表面を、CaO成分系を30質量%以上含有する製鋼スラグ微粉で、厚さ50μm以上250μm以下に覆った状態で、該固体燃料を前記焼結パレット上に装入することにより、焼結時に前記焼結パレット上で前記固体燃料が燃焼する際のNOx発生を抑制することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の焼結鉱の製造方法において、前記鉄鉱石の擬似造粒物の表面に、前記製鋼スラグ微粉で覆われた前記固体燃料を付着させた後、該擬似造粒物を前記焼結パレット上に装入することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の焼結鉱の製造方法において、前記製鋼スラグ微粉で被覆した前記固体燃料の量は、前記焼結パレットに供給する全固体燃料量の30質量%以上であることを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法において、前記製鋼スラグ微粉で前記固体燃料を覆うに際し、該固体燃料と該製鋼スラグ微粉に対する該製鋼スラグ微粉の配合割合を10質量%以上30質量%以下とし、しかも前記製鋼スラグ微粉と前記固体燃料との造粒物の水分含有量が8質量%以上15質量%以下となるように、添加する水分量を調整して、前記製鋼スラグ微粉と前記固体燃料を混練機で混練し造粒することを特徴とする焼結鉱の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36464(P2012−36464A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178774(P2010−178774)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】