説明

焼骨粉体化装置

【課題】散骨に対する認知度が高まり、散骨を希望する人も増加の傾向にあるものの、火葬後の焼骨は骨片形状であり、これをそのまま散骨するのには問題がある。この骨片形状の焼骨を視認できない状態にまでに粉体化して散骨が可能な状態にするための装置を開発する。
【解決手段】本発明は、蓋部11と本体部13とで構成され、該蓋部11を本体部13に被せた際、その内部に一体の収納部15が形成されるように蓋部11と本体部13のそれぞれの内側が凹状に形成されると共に、蓋部11には、駆動源21と支持ロッド24と回転刃25とを主要素とする粉砕攪拌装置2が設けられ、該粉砕攪拌装置2の駆動源21により支持ロッド24を介して回転刃25が収納部15内で回転可能に構成されている焼骨粉体化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葬送の一つである散骨のために焼骨を粉体化する装置に関し、詳しくは、焼骨を回転刃により粉体化処理すると共に土壌菌等により生分解して、焼骨が視認できない状態までに処理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
葬送には多くの手段があるが、日本では火葬がほとんどであり、火葬されて残った焼骨を墓に納めるとともに寺に納骨するのが一般的である。
しかし、昨今、注目されている葬送の一つに散骨がある。
これは、自然葬と言われるもので、遺骨を自然に還し、霊を弔うものである。
飛行機から散骨する宇宙葬(航空葬)、或いは船上から海に散骨する海洋葬などがあり、生前の趣味などに応じた散骨となっている。
【0003】
また、散骨に関しては、1990年代になって国が墓地埋葬法の解釈について、葬送のための節度をもった散骨は問題がないとの見解を示して以来、日本にも確実にこの葬送手段が定着しつつあると言える。
そして、このような散骨に関する技術的提案もなされている。
【0004】
例えば、航空葬について、散骨を航空機から行う場合の器具が提案されている。
特許文献1に見られるように、高速で飛行する航空機からの散骨の困難性、危険性を回避するための散骨器具が提案されている。
また、特許文献2には一定の地域を指定して、その中に散骨を行う墓園形式の手段が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1の航空機から散骨するための器具の提案では、散骨する対象である焼骨については一切触れられていない。
つまり、どのような状態の焼骨を撒くのかについては言及されていない。
また、特許文献2における指定された墓園内に散骨する手段については、散骨希望者の一定の満足は得られるものの、空や海洋に散骨したい願望については、その要望を満たしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−238961号公報
【特許文献2】特開2000−129960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
火葬の際、お骨を拾うと言った表現があるが、拾うことが可能な焼骨は骨片形状をなしていて灰のような粉体ではないのが普通である。
よって、一旦拾って持ち帰る焼骨は、骨片のままの状態が維持され、自然に灰の状態になることはない。
しかし、散骨については骨片形状の焼骨をそのままの状態で撒くことには問題があり、ここに散骨に関する技術的課題がある。
つまり、火葬の際、持ち帰る焼骨は、灰そのものではなく、骨片形状のものであり、これを散骨に適した状態にするには再度、焼いて灰の状態にする等の処理の必要性が出てくる。
しかし、こういった作業を個人で行うのには、心理的、心情的にも無理な面がある。
【0008】
このように、散骨に対する認知度が高まり、希望者も増加の傾向にあるものの、散骨を行うためには解決すべき問題点があった。
つまり、心情的に実施可能な技術的手段により、骨片形状の焼骨を視認できない状態までに粉体化、或いはそれに近い状態に処理する手段が必要となっている。
【0009】
本発明は、以上のような諸事情を背景になされたものである。
すなわち、本発明の目的は、骨片形状の焼骨を、個人の心理的、心情的において実施可能な技術的手段により、焼骨が視認できない状態までに粉体化処理するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、鋭意、研究した結果、蓋部と本体部とで構成される焼骨粉体化装置内の収納部に焼骨Bを納め、これを回転刃5で粉砕すると共に生分解性微生物を繁殖させた分解養土Gと混合攪拌して生分解性微生物の働きで粉体化処理する装置を開発したものである。
【0011】
即ち、本発明は、(1)、蓋部と本体部とで構成され、該蓋部を本体部に被せた際、その内部に一体の収納部が形成されるように蓋部と本体部のそれぞれの内側が凹状に形成されると共に、蓋部には、駆動源と支持ロッドと回転刃とを主要素とする粉砕攪拌装置が設けられ、該粉砕攪拌装置の駆動源により支持ロッドを介して回転刃が収納部内で回転可能に構成されている焼骨粉体化装置に存する。
【0012】
即ち、本発明は、(2)、一体の収納部が長球状である上記(1)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0013】
即ち、本発明は、(3)、粉砕攪拌装置が、支持ロッドに取り付けられた回転刃の下方に攪拌羽を擁している上記(1)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0014】
即ち、本発明は、(4)、粉砕攪拌装置の回転刃、並びに攪拌羽の上下位置調整が可能である上記(3)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0015】
即ち、本発明は、(5)、粉砕攪拌装置が、本体部に蓋部を被せた時にのみ通電作動する安全装置を有している上記(1)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0016】
即ち、本発明は、(6)、粉砕攪拌装置が、収納部内を暖め得るサーモ機構付きヒーターを擁している上記(1)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0017】
即ち、本発明は、(7)、粉砕攪拌装置が、駆動源の回転速度制御機能と作動時間設定機能、並びにヒーター温度制御機能を有する制御部で制御される上記(1)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0018】
即ち、本発明は、(8)、収納部内に、回転軸、伸縮調整部、支持ロッド、並びに支持ロッドで支持される回転刃と攪拌羽が存在するように構成された上記(3)または(4)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0019】
即ち、本発明は、(9)、蓋収納部内に通ずる吸気口と、逆止弁を有する排気口とが選択的に設けられている上記(1)記載の焼骨粉体化装置に存する。
【0020】
なお、本発明の目的に沿ったものであれば上記(1)〜(9)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の焼骨粉体化装置は、焼骨の粉体化処理を、粉砕攪拌装置が設けられた蓋部を本体部に被せて、その内部に形成された収納部内で、蓋部に設けられた駆動源により支持ロッドを介して回転刃を回転し、焼骨の粉体化処理が行えるので、焼骨の粉体化状況が処理者の視覚から遮断されるとともに焼骨や粉体化した焼骨が外部に漏れ出すことがないので、処理を行う者にとって、心情的にも実務的にも極めて都合が良い。
【0022】
そして、本発明の焼骨粉体化装置の収納部が長球状である場合には、焼骨を粉体化するために回転刃を回転した際、焼骨や分解養土が収納部内長球面に沿ってスムースに回転し、粉体化処理が効率的に行えると共に、粉体が収納部内面に付着したり、隅に固着するようなことがなく衛生的で、維持管理に都合が良い。
【0023】
そして、本発明の焼骨粉体化装置の粉砕攪拌装置が、支持ロッドに取り付けられた回転刃の下方に攪拌羽を擁している場合には、焼骨を攪拌羽が上方に巻きあげて混合し、それを回転刃が粉砕することとなり、満遍なく迅速に粉体化処理がなされる利点がある。
また、収納部内に焼骨と分解養土を混入した際には、ゆっくりと攪拌することができ、生分解がより効果的に進行する。
【0024】
また、伸縮調整部を擁している場合には、回転刃、攪拌羽ともにその位置調整が可能であるので、処理する焼骨の量に応じて最適な位置に設定することで粉体化処理がより効果的に進む利点がある。
【0025】
そして、本発明の焼骨粉体化装置の粉砕攪拌装置が、本体部に蓋部を被せた時にのみ通電作動する安全装置を有している場合には、回転刃で怪我をするなどの事故が起こらず極めて安全である。
【0026】
そして、本発明の焼骨粉体化装置の粉砕攪拌装置が、収納部を暖めるサーモ機構付きヒーターを擁している場合には、外気温が低い場合でも、生分解性微生物が最も活性化し易い最適温度に収納部内環境を保つことができるので、生分解性微生物が死滅したり、粉体化処理の遅効現象が見られず、効果的な粉体化処理が可能となる。
【0027】
そして、本発明の焼骨粉体化装置は、粉砕攪拌装置が、駆動源の回転速度制御機能と作動時間設定機能、並びにヒーター温度制御機能とを有する制御部で制御されるので、一旦、駆動源の回転速度や作動時間の設定やサーモ機構付きヒーターの温度設定を行えば、その後は自動的に粉体化処理が行え、効率的で便利である。
【0028】
そして、蓋収納部に、蓋収納部内に通ずる吸気口と、逆止弁を有する排気口とが選択的に設けられている場合には、収納部内への空気の取り入れや排気を可能とし、分解養土の微生物の養生に都合が良い。
また、排気口のみを設定した場合には、収納部内のガス圧が高まった際、ガスの排気を可能として収納部内のガス圧の上昇による事故を回避することができる。
排気口には逆止弁が設けられていて微生物が嫌気性のものである場合には、空気の進入を回避できる。
【0029】
そして、本発明の焼骨粉体化装置が、その収納部内には支持ロッドで支持される回転刃と攪拌羽のみが存在するように構成され、粉砕攪拌装置の駆動源関連機器は収納部外に位置するように設置されている場合には、駆動源関連機器設置域と粉体化処理域が確実に分離され、粉体が飛び散ることによる駆動源関連機器等への障害が全く無く、焼骨粉体化装置の維持管理に便利で、衛生的であり、故障が発生しにくい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、焼骨粉体化装置1の外観実態模式図である。
【図2】図2は、焼骨粉体化装置1の断面実態模式図である。
【図3】図3は、粉砕攪拌装置2を擁する蓋部11の下面実態模式図である。
【図4】図4は、焼骨粉体化装置1の側面実態説明図である。
【図5】図5は、リング状パッキンPを有する本体部13と蓋部11Aの実態説明図である。
【図6】図6は、リブ付きの焼骨粉体化装置1の正面模式図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6のリブ部の部分断面拡大模式図である。
【図8】図8は、粉砕攪拌装置2を擁しない提出用の焼骨粉体化装置1の外観模式図である。
【図9】図9は、収納部14の形状例模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0032】
(第1の実施の形態)
本実施の形態における焼骨粉体化装置1は、図1の外観実態模式図に示すように底面が正方形の正四角柱状の外観をなし、蓋部11と本体部13とで構成される。
そして、蓋部11は留め具(図示しない)により本体部13に取り外し自在に取り付けられる。
【0033】
そして、図2の断面実態模式図に示すように、蓋部11と本体部13の内側(すなわち内壁)が、それぞれ凹状の球面状に形成され、蓋収納部12と本体収納部14が形成される。
また、本体部13の上端にはリング状パッキンPが設けられている。
本体部13に蓋部11を被せた際には、蓋収納部12と本体収納部14が合体し、一体の長球状の収納部15が形成される。
収納部15の内面は、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂、或いはこれらの樹脂を用いた複合材料で形成されることが好ましく、また、焼骨粉体化装置1の外側は、収納部15と同様か、もしくは鋼板、アルミ板等が使用されることが好ましい。
【0034】
そして、蓋部11には粉砕攪拌装置2が設けられる。
粉砕攪拌装置2は、駆動源21と、支持ロッド24と、回転刃25と、制御部Cとを主構成要素としている。
駆動源21には直流モーターMを使用している。
支持ロッド24は直流モーターMの回転軸22に伸縮調整部23を介して取り付けられ、その下端近傍に取り付けられた回転刃25に直流モーターMの回転を伝える。
【0035】
粉砕攪拌装置2の電源には交流が用いられ、交流を直流化して直流モーターMを作動させる。
直流モーターMの作動は、蓋部11の上面に設けられた制御部Cにより制御される。
制御部Cにはタイマー機能を含む回転速度制御機能があり、電圧制御による回転速度の設定、制御を行い、タイマー機能により回転速度毎の作動時間の設定、停止等の制御を行う。
制御部Cにより、焼骨Bの粉体化処理に適した回転速度の設定や作動時間の設定を行う。
回転刃25の刃の形状に関しては、2枚刃、3枚刃等多様なタイプが採用可能であるが、本実施の形態では2枚刃を使用している。
【0036】
直流モーターMは、蓋部11の裏面中央で、蓋収納部12の外側に取り付けられ、直流モーターMの回転軸22が蓋収納部12内に貫通している。
この貫通箇所にはブッシュ(図示しない)がはめ込まれ、回転軸の回転を阻害しないで気密性を保持できるように構成されている。
【0037】
そして、この回転軸22に伸縮調整部23を介して支持ロッド24が取り付けられ、その下方近傍に回転刃25が取り付けられるのは上記のとおりである。
伸縮調整部材23は、回転軸22と支持ロッド24を両端から挿入し得る中空管に固定用ネジFが設けられていて、回転軸22と支持ロッド24とをネジ固定する。
伸縮調整は、中空管への支持ロッド24の出し入れによって行う。
【0038】
蓋部11は、回転刃25を本体収納部14に納められた焼骨B層内に納まる位置に伸縮調整部材23により位置調整がなされて後、本体部13に被せられ、留め具によりセットされる。
制御部Cの回路(図示しない)には、安全装置Sが設けられている。
本体部13に蓋部11をセットした時にのみ通電作動する回路となっていて、意図しない通電による回転刃25の回転事故を防止する。
【0039】
なお、本実施の形態、並びに後述する実施の形態では図の複雑化を避けるために配線、制御部Cの詳細については、図示しないこととする。
【0040】
図3に、粉砕攪拌装置2を擁する蓋部11の下面実態模式図を示す。
蓋部11の下方から見て、回転刃25、攪拌羽26(第2の実施の形態で説明する)が蓋収納部12の中央部に位置する支持ロッド24に取り付けられている。
図3に示してあるサーモ機構付きヒーターT、吸気口27、排気口28については、後述する実施の形態で説明する。
【0041】
そして、図4の焼骨粉体化装置1の側面実態説明図に示すように、支持ロッド24に取り付けられる回転刃25と、攪拌羽26(第2の実施の形態で説明する)は、支持ロッドを上下することにより上下位置の調節(実線と破線)が可能となっている。
【0042】
次に、図5に焼骨粉体化装置1の本体部13と粉砕攪拌装置2を備えない蓋部11Aの実態説明図を示す。
前述するように、粉砕攪拌装置2を備えない蓋部11Aは依頼者に提供するための提出用の蓋部11Aである。
本体部13の上端面の本体収納部14周縁にリング状パッキンPが取り付けられている。
このことで、本体部13に蓋部11を被せた際、収納部15内の気密性が維持される。
リング状パッキンPは、蓋部11Aに取り付けられても良い。
また、本体部13の側面には名前を記載する記名枠部Nを設け、識別に利便性を図っている。
【0043】
このように設定された焼骨粉体化装置1の粉砕攪拌装置2については、駆動源21(M)や制御関連機器は、蓋収納部12の外側に設けられる。
このことで、駆動源21等の機器と焼骨粉体化処理域が完全に分離され、粉体の飛散による機器等への障害や故障が抑えられることとなる。
【0044】
(第2の実施の形態)
本実施の形態における焼骨粉体化装置1の構成は、基本的に第1の実施の形態で示したものと同様の構成であるが、これに加えて、本実施の形態では、粉砕攪拌装置2の支持ロッド24に取り付けられた回転刃25の下側に一定の距離をおいて攪拌羽26を設けている。
この攪拌羽26については、第1の実施の形態で用いた図2、図3に既に記載されているとおりである。
【0045】
攪拌羽26の形状については刃が形成されていない2枚羽や3枚羽、或いはその他の形状のものが採用可能である。
本実施の形態では2枚羽を採用している。
回転刃25、並びに攪拌羽26は個別に支持ロッド24上をスライドさせて、図示しないネジ等で固定することにより上下の位置調整が可能となっているし、伸縮調整部23によって支持ロッド24の上下動を行い、回転刃25、攪拌羽26の両者の同時の位置調整も可能である。
回転刃25と攪拌羽26によってより効率的に粉体化が遂行される。
攪拌羽26の制御については、回転刃25と同様に制御部Cによって、回転速度の設定やタイマー機能による回転速度毎の作動時間の設定、停止等の制御を行う。
焼骨Bを粉砕する際には、回転刃25と共に高速回転を行うが、後述する微生物を含む分解養土Gによる分解工程ではゆっくりと回転刃25、攪拌羽26を回転させて分解を進行させる役割を果たす。
【0046】
(第3の実施の形態)
本実施の形態では、図2の断面実態模式図に示すように、上記1、2の実施の形態における焼骨粉体化装置1の蓋部11に吸気口27と排気口28が設けられる。
吸気口27は、蓋収納部12内に通じていて空気の取り入れや排気を可能とするが、後述する分解養土Gの微生物が嫌気性のものである場合には排気口28のみとする。
本焼骨粉体化装置1の本体部13の上端面にはリング状パッキンPを取り付けられていて収納部15の機密性が保持されているので、逆止弁29を有する排気口28を設けて空気の進入を防止すると共に、収納部15内のガス圧が高まった場合に、ガスの排気を可能として収納部15内のガス圧の上昇による事故を回避している。
吸気口27、排気口28ともに粉体が漏出しないように蓋収納部12側に微細孔フィルター(図示しない)が設けられる。
更に、本実施の形態では、収納部15内を一定の温度に保つヒーター温度制御機能を有するサーモ機構付きヒーターTを選択的に取り付け可能としている。
【0047】
(第4の実施の形態)
本実施の形態では、図6の正面模式図に示すように本体部13の上端面外周にリブ部Rを設ける。
ここで蓋部としては粉砕攪拌装置2を備えた蓋部11や粉砕攪拌装置2を備えない蓋部11Aである。
図7(A)の部分断面拡大模式図に示すように、本体部13の上端面より突き出たリブRを形成し、蓋部11(11A)を開けた際に、本体部13の上端面に付着している粉体が外側にこぼれ落ちるのを防止している。
また、図7(B)の部分断面拡大模式図に示すように、本体部13の上端面を内側に傾斜させて形成することで、本体部13の上端面に乗った粉体は、蓋部11(11A)が開けられた際にリブによる外側への落下防止と共に、少しの振動を与えることで本体収納部15内に落下する。
上端面を内側に傾斜させて形成した場合は、蓋部11(11A)の端面も本体部13の上端面に合うよう斜めに形成される。
リブ部Rを擁した本実施の形態においてもリング状パッキンPが、本体部13の上端面に設けられることには変わりはない。
【0048】
以上、第1、2、3、4の実施の形態に示した焼骨粉体化装置1に焼骨Bが納められ、粉体化処理が行われる。
本焼骨粉体化装置1は、焼骨Bを粉体化すると共に、これを微生物の働きにより生分解して焼骨Bが焼骨片として視認できない状態までに処理することを目的とし、そのために焼骨Bと共に微生物を含む分解養土Gを収納部15内に納め、一定の期間、分解作用させる。
【0049】
微生物としては、土壌菌、セルロース分解菌、酢酸菌等がある。
これらを一種類、或いは複数種類を組み合わせて、微生物が繁殖可能な、栄養素、水分を有する養土を一定の温度環境下において繁殖させ、これを分解養土Gとして使用する。
分解養土Gについては、粉砕する焼骨Bの量や状態等に応じて、微生物の状態や処理能力の変化を常に注視し、処理に好適な状態を維持すべく、その都度、栄養素や水分の補給を適宜行う。
そして、微生物が好気性菌である場合には、蓋部11に上記の吸気口27を設け、微生物が嫌気性である場合には、吸気口27は取り付けず、上記の逆止弁29を有する排気口28を取り付けることが好ましい。
【0050】
なお、本焼骨粉体化装置1において、リング状パッキンPを採用しない場合には、吸気口27を設けない場合でも、蓋部11と本体部13の突き合わせ端面からの微少な空気の出入りがあり、好気性菌が死滅することはない。
しかし、吸気口27を設けて空気を積極的に取り入れることにより、好気性菌の働きがより良くなり焼骨Bの生分解が促進される。
【0051】
なお、本焼骨粉体化装置1においては2種類の蓋部11、11Aを備えることが好ましい。
つまり、一つは蓋収納部12を有するのみの蓋部11Aであり、他の一つは、蓋部11Aに粉砕攪拌装置2が設けられた蓋部11である。
前者は、依頼者に提供するための提出用の蓋部11Aであり、図8の外観模式図に示すように提出用の蓋部11Aを本体部13と組み合わせて依頼者に提出する。
また、後者は図2、図3、図4に示すように粉体処理のための粉砕攪拌装置2を有する処理専用の蓋部11であり、繰り返し使用するものである。
提出用の蓋部11Aを用意することでコストの低減化が図られ、汎用化に効果がある。
【0052】
次に、本焼骨粉体化装置1を用いた焼骨Bの粉体化処理について、その使用例を示す。
使用例として対象にする装置は、上記したすべての機能を備えた焼骨粉体化装置1である。
つまり、蓋収納部12には選択的に吸気口27、排気口28が設けられていて、処理専用の蓋部11には回転刃25、攪拌羽26を有する粉砕攪拌装置2が設けられていて、収納部15内はサーモ機構付きヒーターTで温度制御が可能となっている。
そして、これらの作動は制御部Cの回転速度制御機能、作動時間設定機能、ヒーター温度制御機能によって制御される。
これらの機能はデジタル方式で設定数値を確認しながら行える。
【0053】
こうした構成の焼骨粉体化装置1において、その収納部15内に焼骨Bを納める。
焼骨Bの量に応じて回転刃25、攪拌羽26は、焼骨B層内に納まるように位置調整が行われ、回転刃25、攪拌羽26を回転させて焼骨Bを粉砕する。
焼骨Bは、回転刃25でカット粉砕されると同時に、その下方に設けられた攪拌羽26によって上方に向かって攪拌、巻き上げられて回転刃25への接触を高められ、粉砕の効率化が図られる。
【0054】
この後、収納部15内に、粉砕された焼骨Bの略3倍量の分解養土Gを投入する。ここで、焼骨Bの粉砕については、先に焼骨Bのみを粉砕しても良いし、焼骨Bと分解養土Gを同時に投入して粉砕処理を行っても良い。
ここで、本分解養土Gは、生分解性微生物が培養されている養土である。
そして、制御部Cのタイマー機能を含む回転速度制御機能により例えば1時間間隔で5分間、回転刃25、並びに攪拌羽26が作動するようにセットすると共に、回転速度を1分間に20回転レベルに設定してゆっくりと攪拌する。
サーモ機構付きヒーターTについては、ヒーター温度制御機能により分解養土Gが略22度の温度に保たれるようにセットし、生分解性微生物が活性化し易い環境設定を行う。
この温度設定については使用する微生物によって適温の状態に設定する。
【0055】
このような条件で、2〜3週間、処理を続けることにより、焼骨Bを略視認できない状態までに粉体化し、散骨が可能な状態にすることが可能となる。
処理中は、蓋部11と本体部13の内壁は、言うなれば卵形の長球状に構成されているので、内部を分解養土G等がスムースに回転し、付着することもなく、粉体化処理は効果的に進行する。
この後、処理専用の蓋部11を提出用の蓋部11Aに取り替えて依頼者に提供することとなる。
【0056】
以上、本発明をその実施の形態を例に説明したが、本発明は要旨の変更のない限り、実施の形態のみに限定されるものではなく多様な変形例が可能である。
本実施の形態では、依頼者から粉体化処理を依頼され、処理の後、依頼者に提供するために焼骨粉体化装置1を使用するシステムを念頭におき説明したが、粉砕攪拌装置2を擁する焼骨粉体化装置1そのものを依頼者に提供し、粉体化処理を依頼者自らが行うことも当然可能である。
【0057】
そして、制御部Cにおける各機能はデジタル方式を採用しているが、ボリューム調整等によるアナログ方式でも当然良い。
また、本焼骨粉体化装置1の各構成要素は上記実施の形態にこだわらず、多様な組み合わせ、変形が可能である。
例えば、粉砕攪拌装置2が制御機能を有しない駆動源21によって回転刃25のみが回転するシンプル構造の焼骨粉体化装置1が汎用タイプとして提供可能であるし、制御部Cを有するタイプにおいては、制御部Cと焼骨粉体化装置1が別体であっても当然良い。
【0058】
更に駆動源21は必ずしも処理専用の蓋部11裏面に取り付けられる必要はなく蓋部11表面に取り付けられても良い。
また、収納部15の形状についても、粉体が回転刃25、攪拌羽26によって巻き上げられた際に回転しやすい形状で、しかも粉体が付着しづらい形状を最良とするが、その形状を限定するものではない。
例えば、図9の本体収納部14の形状例模式図に示すように直方体状であっても当然良い。
この時、蓋収納部12の形状も、本体収納部14の形状に合致する直方体状のものになる。
また、焼骨粉体化装置1の外観形状についても、例えばデザインを重視した各種形状のものが当然採用可能である。
また、粉砕攪拌装置2を備える蓋部11や粉砕攪拌装置2を備えない蓋部11Aを中空の構造の例で示したが、無垢であっても良く、詰め物を充填したりしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の焼骨粉体化装置1は、一定の寸法、形状を有する物体を粉砕し、これを生分解性微生物の作用を利用して粉体化する装置であるので、犬、猫、鳥などの鳥獣やペット等にも当然使用可能である。
また、本焼骨粉体化装置1が有する機能は、生分解性微生物に関する研究機器等としても採用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・焼骨粉体化装置
11・・・蓋部(粉砕攪拌装置2を備える)
11A・・・蓋部(粉砕攪拌装置2を備えない)
12・・・蓋収納部
13・・・本体部
14・・・本体収納部
15・・・収納部
2・・・粉砕攪拌装置
21・・・駆動源
22・・・回転軸
23・・・伸縮調整部
24・・・支持ロッド
25・・・回転刃
26・・・攪拌羽
27・・・吸気口
28・・・排気口
29・・・逆止弁
B・・・焼骨
C・・・制御部
F・・・固定用ネジ
G・・・分解養土
M・・・直流モーター
N・・・記名枠部
P・・・リング状パッキン
S・・・安全装置
T・・・サーモ機構付きヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部と本体部とで構成され、該蓋部を本体部に被せた際、その内部に一体の収納部が形成されるように蓋部と本体部のそれぞれの内側が凹状に形成されると共に、蓋部には、駆動源と支持ロッドと回転刃とを主要素とする粉砕攪拌装置が設けられ、該粉砕攪拌装置の駆動源により支持ロッドを介して回転刃が収納部内で回転可能に構成されていることを特徴とする焼骨粉体化装置。
【請求項2】
一体の収納部が長球状であることを特徴とする請求項1記載の焼骨粉体化装置。
【請求項3】
粉砕攪拌装置が、支持ロッドに取り付けられた回転刃の下方に攪拌羽を擁していることを特徴とする請求項1記載の焼骨粉体化装置。
【請求項4】
粉砕攪拌装置の回転刃、並びに攪拌羽の上下位置調整が可能であることを特徴とする請求項3記載の焼骨粉体化装置。
【請求項5】
粉砕攪拌装置が、本体部に蓋部を被せた時にのみ通電作動する安全装置を有していることを特徴とする請求項1記載の焼骨粉体化装置。
【請求項6】
粉砕攪拌装置が、収納部内を暖め得るサーモ機構付きヒーターを擁していることを特徴とする請求項1記載の焼骨粉体化装置。
【請求項7】
粉砕攪拌装置が、駆動源の回転速度制御機能と作動時間設定機能、並びにヒーター温度制御機能を有する制御部で制御されることを特徴とする請求項1記載の焼骨粉体化装置。
【請求項8】
収納部内に、回転軸、伸縮調整部、支持ロッド、並びに支持ロッドで支持される回転刃と攪拌羽が存在するように構成されたことを特徴とする請求項3または4記載の焼骨粉体化装置。
【請求項9】
蓋収納部内に通ずる吸気口と、逆止弁を有する排気口とが選択的に設けられていることを特徴とする請求項1記載の焼骨粉体化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−121014(P2012−121014A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276366(P2010−276366)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(507016535)
【Fターム(参考)】